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組織特異的なアイソフォームの関与する新しい細胞内ネットワークの解明

研究報告コード R070000181
整理番号 R070000181
掲載日 2008年4月11日
研究者
  • 西 毅
研究者所属機関
報告名称 組織特異的なアイソフォームの関与する新しい細胞内ネットワークの解明
報告概要 細胞は細胞膜によって外界から隔離され、その生命活動を効率良く行なうために非常に厳密にpHを調節している。特に細胞内膜系においては、それぞれのコンパートメントにおいて微妙に異なるpHが維持されており、このpHの差が細胞の機能の維持、エンドサイトーシス、細胞内膜系への蛋白質の選別輸送、神経伝達物質を初めとする様々な物資やイオンの取込みなど、多様な生理現象に重要な役割を果たしている。しかし、この細胞内小胞のpHの調節の仕組みは未だに良く分かっていない。細胞がそのpHを酸性に維持するためには絶えず濃度勾配に逆らったプロトンの輸送が必要である。これを行うのがプロトン輸送性ATPaseで、胃酸分泌酵素であるH+/K+-ATPaseおよび液胞型プロトン輸送性ATPase(V-ATPase)などが知られている。V-ATPaseはいろいろな細胞内膜系、例えば、エンドソーム、リソソーム、クラスリン被覆小胞、シナプス小胞やクロマフィン顆粒等の分泌顆粒、酵母や植物の液胞等に存在し、ATPの加水分解のエネルギーを用いてプロトンを輸送することにより、それらの小胞内部を酸性に保っている。また、腎臓、破骨細胞、マクロファージなどでは細胞膜上に存在し、これが尿の酸性化、骨の分解、細胞内pHの維持に関与している。V-ATPaseは13種のサブユニットから成る酵素で、ATPase活性を持つV1(サブユニットAからH)とそれに共役してプロトンを輸送するVo(a,d,c,c',c”)の2つのドメインから成り立っている。ほ乳類においては、これまで異なる細胞内顆粒や細胞膜に発現しているV-ATPaseのサブユニットはすべて同じものであると思われていたが、各サブユニットに複数のアイソフォームが存在し、これが細胞特異的または細胞内小胞特異的なこの酵素の機能に関与している可能性が明らかになってきた。特にaサブユニットは、多くのアイソフォームを持ち、その一つであるa3への変異が大理石病の原因遺伝子であることが、この遺伝子のknock-outマウス、oc/ocマウスや患者の遺伝子の解析から明らかになった。またa4への変異がrenal acidosisの原因であることも明らかになった。これらの結果はaサブユニットのアイソフォームがV-ATPaseの複合体をそれぞれの目的の場所への局在化に働いており、a3およびa4の機能欠失の場合それぞれの細胞の端頂膜にV-ATPaseが存在できないことが病気の原因であることを示唆している。このaサブユニットの局在の調節機構を明らかにすることで、これらの病気の治療に役立つ可能性がある。さらに最近、V-ATPaseのサブユニットではなく、病気や細胞の機能に必要な因子がV-ATPaseのドメインやサブユニットに結合している例が数多く報告された。これらはV-ATPaseとの関係からV-ATPase自身の活性の調節に関与するものと、それら蛋白質の機能発現にV-ATPaseとの相互作用が必要であるものに分けられる。前者に含まれるものにユビキチンリガーゼのサブユニットであるSkp1pとRAVEおよびaldolaseがありこれは酵母において飢餓状態に起きるV-ATPaseのVoからのV1ドメインの解離を調節している可能性が報告された。後者には、HIVが細胞内に侵入するために必要なのNef、E5 oncoprotein、PDEFレセプター、インテグリンのβ1サブユニット、ecto-ATPase、PDZドメイン結合蛋白質であるNHE-RF、アクチンフィラメント、カルシュウムチャンネルなどの細胞間、細胞内外の情報伝達に関係している分子との直接結合することが報告された。また、これまで単独で細胞内膜系に存在することが分かっていたが、役割の明らかで無かったVoドメインが、酵母の液胞を用いた系でカルモジュリンと相互作用し膜融合の中心として働いていることが示された。このことは、aサブユニットのそれぞれのアイソフォームを含むV-ATPaseの複合体と相互作用する因子を探すことが、それぞれ異なるコンパートメントでの異なるpHやその酸性環境を介した様々な生理現象の調節にかかわる因子、細胞内膜への蛋白質の局在に関与する因子を明らかにし、これまで関係があるとは思われていなかった現象との係わりを明らかにできると考えられる。本研究では、V-ATPaseのサブユニットのアイソフォームの解析により、異なる細胞や細胞内小器官でのV-ATPaseの働きを明らかにし、それらの正常な機能および異常が引き起こす様々な病気との関係をも明らかする事を目的とした。
研究分野
  • 細胞生理一般
関連発表論文 (1) Y. Kubo, S. Sekiya, M. Ohigashi, C. Takenaka, K. Tamura, S. Nada, T. Nishi, A. Yamamoto and A. Yamaguchi: ABCA5 resides in lysosomes and ABCA5 knockout mice develop lysosomal disease-like symptoms. Mol. Cell. Biol. 25: 4138-4149, 2005
(2) 西毅:サブユニットアイソフォームによるV-ATPaseの局在と活性の制御。生化学 77: 354-358, 2005
(3) 横山謙、西毅:精巧で巧妙な仕組みを持つプロトンポンプ、V型ATPase。蛋白質核酸酵素 49: 2035-2043,2004
(4) T. Nishl, S. Kawasaki-Nishi and M Forgac: The first putative transmembrane segment of subunit c"(Vma16p) of the yeast V-ATPase is not necessary for function. Gordon Research Coference "Molecular and Cellular Bioenergetics" Boston, USA (2003)
(5) S. Kawasaki-Nishi, T. Nishi and A. Yamaguchi: Analysis of the mechanism of proton translocation through the integral V0 domain of the vacuolar (H+)-ATPase. Third 21st Century COE "Towards Creating New Industries Based on Inter-Nanoscience" International Symposium, Shiga (2004)
(6) 西毅、西(川崎)晶子、山口明人、Michael Forgac:V-ATPaseのdサブユニットはATP加水分解とプロトン輸送の共役に重要な役割を果たしている。第77回日本生化学会大会 横浜(2004)
研究制度
  • 戦略的創造研究推進事業 さきがけタイプ(旧若手個人研究推進事業を含む)/情報と細胞機能
研究報告資料
  • 西 毅. 組織特異的なアイソフォームの関与する新しい細胞内ネットワークの解明. 個人型研究さきがけタイプ 「情報と細胞機能」領域 研究報告会 講演要旨集 第2期研究者(研究期間2001-2004), 2006. p.31 - 33.

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