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ユビキタス時代のソフトウェアノンストップ運用支援

研究報告コード R070000221
整理番号 R070000221
掲載日 2008年4月11日
研究者
  • 橋本 政朋
研究者所属機関
報告名称 ユビキタス時代のソフトウェアノンストップ運用支援
報告概要 近年、ユビキタスコンピューティング(Ubiquitous Computing)という概念が注目を集めています。ユビキタスコンピューティングとは、1980年代後半に入力デバイスのマウスを実用化したことでも有名なXeroxのPalo Alto研究所で提唱された概念です。これからは生活の至る所に埋め込まれたコンピュータが連携することで、利用者は複雑な操作をせずとも適切な情報サービスを時と場所を選ばず受けられるようになるであろうことが予見されていました。この10年以上も前に生み出された概念は、ここ数年のコンピュータ小型化技術、ネットワーク技術やセンサ技術などの著しい発展により急速に現実味を帯びてきています。例えば、VICSと連係して道路状況に応じて経路探索を行なうカーナビは既に実用化され普及しています。他にもユビキタスコンピューティングの実現普及に向けた研究が内外で活発に続けられています。このユビキタスコンピューティングを本格的に実現普及してゆく上で鍵となる技術要素には幾つかありますが、ここではソフトウェアの無停止運用技術に注目し、さらに停止要因の中でも主にソフトウェアのアップデートを取り上げます。通常アップデート作業は、対象ソフトウェアの稼働を止めてしまい、最初から実行をやり直すことを余儀なくされます。しかしながらその一方で、バグの修正や機能拡張のためソフトウェアのアップデートは今後も必要でありつづけると考えられます。ネットワークが高密度化し、コンピュータウィルスの感染経路や情報漏洩の経路が益々増えてしまうことにもなるため、セキュリティを高める意味でもアップデートは益々重要となるでしょう。サービスを終了させてしまうことなくソフトウェアをアップデートする方法は今までにも幾つか提案されてきました。例えば、電話交換システムなどのミッションクリティカルなシステムで利用されるハードウェアの冗長化という手段があります。ところが、このような方法をユビキタス環境中の全てのコンピュータに適用することは現実的ではありません。途方もないコストがかかってしまうからです。ハードウェアに頼らず、ソフトウェアのみで実現する方法も幾つか提案されています。例えば、クライアントサーバモデルにおいて、クライアントとサーバとのセッション(一連のやりとり)が十分短ければ、単純にサーバを再起動すれば間に合います。しかし、ユビキタス環境ではセンサ情報のやりとりなど、セッションが長くなる場合もあります。そのような場合に対処可能な方法は、大別すると、動的ロード・リンクに基づく方法と実行状態移送に基づく方法とに分けられます。動的ロード・リンクに基づく方法は、機能拡張に向いています。例えばウェブブラウザのプラグイン機構が挙げられます。プラグインをブラウザに動的にロード・リンクすることでそれまで表示できなかった画像形式の表示が可能となります。この場合アップデートの単位はプラグインということになります。ただ、それだけではバグの修正等には使えません。機能を拡張するだけでなく、元々あったプログラムの一部を置き換えてしまうことができるシステムも提案されていますが、置き換えた部分とそれ以外の部分との間で整合性をとるためのプログラムを付け足す場合があり、繰り返しアップデートを行うと、どんどんプログラムが大きくなってしまい、実行速度も低下する可能性があります。実行状態移送に基づく方法では、プログラムを継ぎ接ぎするのではなく、実行状態を再利用することで無停止アップデートを実現します。プログラムの実行は、コンピュータの中枢であるCPU(中央演算処理装置)がプログラムを読み、メモリ(記憶装置)から必要な情報を読み出したり、様々な計算を行ったり、その結果をメモリに格納したりして進んで行きます。実行状態とは、CPUが処理しているプログラムの場所やメモリの中身などの情報です。今、あるプログラム、AがコンピュータCで実行中であるとします。ここで、新しいプログラムへとアップデートするとします。このためには先ず、プログラムの実行を一時停止させ、実行状態Sを取り出します。通常Sは新しいバージョンの実行にはそのまま使えないため変換しS'を得ます。CにA'とS'とをセットし実行を再開すれば、一時停止こそしますが、サービスとしては無停止なアップデートを実現することができます。この方法ではプログラムが無用に大きくなることはありません。但し、既存の方法では、アップデートのタイミングに制限がありました。この研究では、サービスの停止を伴わないアップデートを安全に実施するためのシステムを安価に実現することを目指しています。このために実行状態移送に基づく方法を改良した新しい方法を考案します。また、本研究ではさらに、実行状態移送を異なる種類のコンピュータ間でも行えるようにすることで、アプリケーションの移動も同時に実現します。これによりコンピュータの交換も、それが提供するサービスを止めること無く実施することができます。このようなアップデートを動的移行と呼びます。例えば図1では、三目並べの盤面の状態が旧コンピュータから新コンピュータへと移送され、かつバージョンも新しくなっています。これは説明のための例に過ぎませんが、ユビキタス環境で稼動するソフトウェア、特にサーバのノンストップ運用を支援することで、ユビキタスコンピューティングの本格的普及の一助となることが期待されます。
画像

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研究分野
  • 計算機システム運用管理
関連発表論文 (1) 中島秀之,橋本政朋.日常生活のための知的情報基盤.情報処理学会誌.Vol.43,No.5. 2002.
(2) 橋本政朋.移動計算に基づく実行時更新の実現(仮).(投稿予定)
(3) 橋本政朋.プログラムの実行時更新を支援するプログラミング言語系の構築に向けて.PPL2002.
研究制度
  • 戦略的創造研究推進事業 さきがけタイプ(旧若手個人研究推進事業を含む)/機能と構成
研究報告資料
  • 橋本 政朋. ユビキタス時代のソフトウェアノンストップ運用支援. 個人型研究(さきがけタイプ)情報・知能分野 研究報告会 先進情報システムとその構成に向けて 「機能と構成」領域 講演要旨集 第Ⅱ期研究者(研究期間2001-2004), 2004. p.43 - 51.

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