TOP > 研究報告検索 > 機能性RNAによる代謝調節の分子基盤の解析

機能性RNAによる代謝調節の分子基盤の解析

研究報告コード R090000040
掲載日 2009年3月13日
研究者
  • 稲田 利文
研究者所属機関
  • 名古屋大学 大学院理学研究科
報告名称 機能性RNAによる代謝調節の分子基盤の解析
報告概要 1. 代謝ストレスに応答した遺伝子発現制御と新規機能性RNAの探索
私は、環境応答の代表例である大腸菌グルコース効果の分子機構の解析を行い、以下を明らかにした。1)一般的に受け入れられているcAMPによる制御ではなく、グルコースによる他の糖の輸送阻害がグルコース応答の主因である。2)解糖系中間産物の蓄積という代謝ストレスに応答して機能性RNAが発現し、グルコーストランスポーターの発現が転写後段階で抑制される。本研究では、この研究を真核生物で発展させ、解糖系中間産物の蓄積という代謝ストレスに応答した遺伝子発現、特に機能性RNAを介した翻訳制御について明らかにすることを目標とした。具体的には、申請者が開発した迅速なポリソーム解析法を中心に、解糖系代謝遺伝子の欠損変異株における代謝遺伝子の発現を、翻訳段階での制御を中心に解析し、代謝産物の変化情報に基づく新たな細胞機能の解明を目指した。近年、代謝産物がRNAに直接結合して構造を変化させ、翻訳段階で遺伝子を制御することが原核生物で明らかになり、リボスイッチという概念が提唱されている。リボスイッチは主にシス因子として機能し、代謝産物への結合を介して下流の遺伝子の翻訳開始効率を制御している。真核生物には同様のRNA分子は同定されていなかったため、本研究により特定の代謝産物結合する真核生物におけるリボスイッチが明らかになることが期待された。
2. 遺伝子発現の正確性を保証する品質管理機構の解析
遺伝情報の担い手であるmRNAが正確に合成され、正しく局在し制御を受けることは、生命現象の基礎であり極めて重要である。一方DNA変異等に起因する異常mRNAは、生命活動を担うタンパク質の発現量や活性の低下を介して、様々な悪影響を細胞にもたらたす可能性がある。最も劇的なアミノ酸配列の変化を引き起こす変異は、塩基の欠失や挿入による読み枠のずれ(フレームシフト変異)であり、かつ多くの場合には正常な位置より上流で翻訳が終結する。また、強制的に翻訳を終結させるナンセンス変異や終止コドンを失った場合にも、異常な長さのタンパク質が発現される。これらの変異の結果として共通する性質は、終止コドンの位置の異常による翻訳終結の異常であり、その遺伝子産物が発現した場合には正常なタンパク質の活性を阻害する可能性がある。しかしながら、細胞の持つ品質管理機構によって異常タンパク質の発現が強く抑制され、細胞は生存可能となる。ナンセンス変異を持ったmRNAは、NMD(nonsense-mediated decay;ナンセンス変異依存分解系)と呼ばれる特異的分解系によって速やかに分解される。終止コドンの位置が異常であるmRNAとして、最も極端なケースは終止コドン自体を含まないmRNAである。最近真核生物におけるノンストップmRNA特異的な分解系NSD(nonstop decay;ノンストップ分解系)が発見された。申請者は、ノンストップmRNAの翻訳と分解について解析し、ノンストップmRNA由来の翻訳産物が非常に低いレベルに抑制されることを最近明らかにした。また、リボソームの動態を解析することにより、リボソームがmRNAの3’端で停滞する結果、ノンストップmRNAの翻訳効率が顕著に低下することを明らかにした。この品質管理機構における翻訳開始以降の段階での新たな制御機構の分子メカニズムを明らかにすることを目標に解析を行った。
画像

※ 画像をクリックすると拡大します。

R090000040_01SUM.gif R090000040_02SUM.gif R090000040_03SUM.gif
関連発表論文 (1)Nukazuka, A. Fujisawa, H. Inada, T. Oda, Y. Takagi, S. Semaphorin controls epidermal morphogenesis by stimulating mRNA translation via eIF2 in Caenorhabditis elegans. Genes Dev. 22:1025-1036. (2008)
(2)Ito-Harashina, S., Kuroha, K., Tatematsu, T. and *Inada, T. Translation of poly(A) tail plays crucial roles in nonstop mRNA surveillance via translation repression and protein destabilization by proteasome in yeast. Genes Dev. 21:519-524. ( 2007)
研究制度
  • 戦略的創造研究推進事業 さきがけタイプ(旧若手個人研究推進事業を含む)/代謝と機能制御
研究報告資料
  • 稲田 利文. 機能性RNAによる代謝調節の分子基盤の解析. さきがけ 3領域合同研究報告会 講演要旨集「代謝と機能制御」. p.13 - 16.

PAGE TOP