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生体分子計測用THz帯CARS分光イメージング装置の開発

研究報告コード R090000053
掲載日 2009年3月13日
研究者
  • 谷 正彦
研究者所属機関
  • 福井大学 遠赤外領域開発研究センター
報告名称 生体分子計測用THz帯CARS分光イメージング装置の開発
報告概要 タンパク質などの生体高分子は、水素結合やファンデルワールス力、疎水性相互作用など比較的弱い相互作用を媒介として,機能発現に必要な固有構造を形成あるいは変化させており、その相互作用のエネルギーはちょうどテラヘルツ(THz)帯に対応している。また室温の300Kを周波数に換算すると約6THz(=200cm-1, ~25meV)であるが、タンパク質などの生体分子は室温における熱揺らぎ程度の大きさのエネルギーを巧みに利用して機能発現あるいは構造変化を行っていると考えられている。したがって6THz付近またはそれ以下の周波数の大振幅振動モードが生体分子の構造変化と機能に大きく関与しているのではないかと推定されている。実際、タンパク質の基準モード計算では、分子全体が大きく振動するモードがTHz領域で確認されている[1-2]。また振動の周波数が低いほど振幅および非調和性が大きくなり、サブTHz(<30cm<sup>-1</sup>)の領域のモードが分子全体のエントロピーすなわち熱力学的特性を支配していることが示唆されている[1]。このようなことからTHz帯の振動スペクトルはタンパク質を含む生体分子の機能やダイナミクスを探る上で重要な情報を提供するものと考えられる。しかし残念ながらこのようなタンパク質分子全体のdelocalizedした低振動数モードの研究は実験的にはあまり進んでいない。ヘムタンパクなど一部のタンパク質のlocalizeした振動モード(porphyrin構造とそれに結合するligand間の振動モードなど)がpump-Probe的な手法(Impulsive stimulated Raman scattering)で観測されている程度である[3]。一方、このような生体分子機能に関連した低振動数モードを中性子散乱分光により観測する試みが計画されている[4]。中性子散乱分光は波数Qと周波数のをパラメーターとする動的構造因子(Dynamical structure factor)S(Q, ω)を観測することで、モード密度分布が直接得られる優れた手法であるが、大規模な施設を必要とするため、一般にマシンタイムが限られ、多くのデータを取得することが困難であり、必要とされる試料の量も一般に多い。筆者は近年開発されたTHz領域の赤外吸収分光法であるテラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS)を用いてタンパク質などの生体分子のスペクトルを測定し、低振動数モードのダイナミクスを調べる試みを行ってきた。その結果、中性子散乱と同様、振動モードの密度分布を反映した生体分子のスペクトルが得られること、またそれらの振動モードがTHz帯で大きな非調和性を示すことを示唆する結果をタンパク質(乾燥または一部水和状態の試料)の温度依存吸収スペクトルから得ている。これらの結果はTHz帯の吸収スペクトル分光が中性子散乱分光と同様な情報を与えることを示唆している。しかし、THz-TDSのような赤外吸収分光では、より自然状態に近い水溶液中での生体分子の分光は、水の強い吸収のために容易ではない。そこで赤外吸収分光と並ぶもうひとつの振動分光であるラマン分光を水和状態、あるいは水溶液状態の生体分子のTHz帯振動スペクトルの測定に用いることが考えられる。ラマン分光ではプローブとして水に対して吸収のほとんどない可視あるいは近赤外光を用いることができ、また空間分解能も高い(~1μm)。一方、自発ラマン散乱の強度は一般に小さいため、イメージングや迅速性が求められる計測には向かない。コヒーレントラマン散乱を利用すれば、信号強度を飛躍的に高めることができる。そこで筆者はコヒーレントラマン分光法のひとつであるCoherent Anti-Stokes Raman Spectroscopy(CARS)をTHz帯の生体分子計測に適用することで、タンパク質などの生体分子のTHz帯(<6THz=200cm<sup>-1</sup>)の振動モードの観測を通して、生体分子の低振動モードダイナミクスを探り、さらには生体分子の構造と機能との関連を調べることができるのではないかと考えた。また、もしTHz帯で生体分子固有のスペクトルが得られれば,それを利用した生体分子の分光イメージングも可能になるはずである。CARS分光では振動モードをPump光及びStokes光で励起し、エネルギーと波数保存則を満たす方向に放射されるコヒーレントラマン散乱を観測する。(i)通常のラマン散乱より10<sup>4</sup>~10
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関連発表論文 ・Tani, et al.: “Time-domain CARS signal detection for THz vibrational spectroscopy uslng chirped fs-pulses,” p.275-276, Proceedings of the 21st International Conference on Raman Spectroscopy(21st August 2008, West London, UK)
研究制度
  • 戦略的創造研究推進事業 さきがけタイプ(旧若手個人研究推進事業を含む)/生命現象と計測分析
研究報告資料
  • 谷 正彦. 生体分子計測用THz帯CARS分光イメージング装置の開発. さきがけ 3領域合同研究報告会 講演要旨集「生命現象と計測分析」. p.17 - 20.

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