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蛋白質電顕画像を用いた自動 in silico 擬似結晶構造解析法の開発

研究報告コード R090000059
掲載日 2009年3月13日
研究者
  • 小椋 俊彦
研究者所属機関
  • 産業技術総合研究所 脳神経情報研究部門
報告名称 蛋白質電顕画像を用いた自動 in silico 擬似結晶構造解析法の開発
報告概要 生物の多様な機能の多くは、その基本コンポーネントであるタンパク質の働きを介して実現されている。個々の蛋白質は、精緻な3次元構造を特異的に形成することで極めて複雑な機能を発現している。そのため、生体内の生理機能や生化学反応、さらに病理の解明や薬理特性の解析においては、タンパク質の3次元構造を解明することが極めて重要となる。タンパク質分子の3次元構造を決定する単粒子構造解析法は、透過型電子顕微鏡で撮影されたタンパク質画像を用いて構造解析を行う。電顕によるタンパク質画像は、タンパク質が電子線に極めて弱いため、電子線照射量を弱めたり重金属による染色を施すため、極めてノイズが高くそのままの画像で構造を調べることは不可能である。そのため、電子顕微鏡画像より切り出した数千から数万のタンパク粒子画像の位置や角度を推定し、これが一致するもの同士を加算平均することでノイズを減少させる。この平均画像を基に三次元構造を再構築する。従って、結晶サンプルが必要なく、精製されたタンパク質さえあれば3次元構造を決定することが可能である。こうした特長は、極めて結晶化が困難な膜タンパク質の構造解析に特に有効である。しかしながら、分解能は15Å程度とX線結晶構造解析よりも悪く、解析期間も人的作業が多数入るため数年を要していた。特に、解析初期の粒子画像の拾い上げや3次元角度の推定は手作業により行われており、多大な時間と労力が必要とされている。こうした問題を解決するためには、画像情報処理方法の自動化と高速・高精度化が必要不可欠である。本研究では、単粒子構造解析にNeural-NetworkやSimulated-Annealing等の柔軟な情報処理の方法論を導入することで従来法を凌ぐ手法の開発に成功した。さらに、新規に開発した手法を用いて様々なタンパク質の構造解析を進めた。現在、新規のタンパク質の解析期間は、本解析手法を用いることで2ケ月程度に短縮された。しかしながら、より理想的な解析では、その場でタンパク質を観察しその場で解析できることが重要となる。これを達成するためには、実験により観察されるタンパク質の画像ノイズを低下させコントラストを向上させる必要がある。タンパク質のその場観察を可能とするため、本研究では、タンパク質をダメージ無く高コントラストで観察する新しい方法の開発を進めた。本さきがけ研究の期間中に2種類の測定方法を開発した、一つは2本のプローブを用いた観察方法であり、もう一方は走査型電子顕微鏡(SEM)による新規の観察方法である。これらの方法を生物試料に応用し高コントラストの画像を得ることができた。今後は、こうした新しい観察手法による画像と単粒子構造解析の自動解析技術を融合させることで、その場観察・その場3次元構造解析の実現を目指す予定である。
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関連発表論文 ・T. Ogura, ‘A high contrast method of unstained biological samples under a thin carbon film by scanning electron microscopy’, Biochem. Bioohys. Res. Commun., Vol.377, p79-84(2008)
・K. Mio, Y. Kubo, T. Ogura, T. Yamamoto, F. Arisaka and C. Sato, ‘The motor protein prestin is a bullet-shaped molecule with inner cavities’, J. Biol. Chem., Vol.283, pl137-1145(2008)
・Y. Maruyama, T. Ogura, K. Mio, S. Kiyonaka, K. Kato, Y. Mori and C. Sato, ‘Three-dimensional reconstruction using transmission electron microscopy reveals a swollen, Bell-Shaped structure of transient receptor potential melastatin type2 cation channel’, J. Biol. Chem., Vol.282, p36961-36970(2007)
・M. Yazawa, C. Ferrante, J. Feng, K. Mio, T. Ogura, M. Zhang, P. Lin, Z. Pan, S. Komazaki, K. Kato, M. Nishi, X. Zhao, N. Weisleder, C. Sato, J. Ma and H. Takeshima, ‘TRIC channels are essential for Ca2+ handling in intracellular stores’, Nature, Vol.448, p78-82(2007)
・K. Mio, T. Ogura, S. Kiyonaka, Y. Hiroaki, Y. Tanimura, Y. Fujiyoshi, Y. Mori and C. Sato, ‘The TRPC3 channel has a large intenal chamber surrounded by signal sensing antennas’, J. Mol. Biol., Vol.367, p373-383(2007)
・T. Ogura and C. Sato., ‘A fully automatic 3D reconstruction method using simulated annealing enables accurate posterioric angular assignment of protein projections’, J. Struct. Biol., Vol.156, p371-386(2006)
・T. Ogura, K. Mio, I. Hayashi, H. Miyashita, R. Fukuda, R. Kopan, T. Kodama, T. Hamakubo, T. Iwatsubo, T. Tomita and C. Sato, ‘Three-dimensional structure of the γ-secretase complex’, Biochem. Biophys. Res. Commun, Vol.343, p525-534(2006)
研究制度
  • 戦略的創造研究推進事業 さきがけタイプ(旧若手個人研究推進事業を含む)/生命現象と計測分析
研究報告資料
  • 小椋 俊彦. 蛋白質電顕画像を用いた自動 in silico 擬似結晶構造解析法の開発. さきがけ 3領域合同研究報告会 講演要旨集「生命現象と計測分析」. p.41 - 44.

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