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原子時計精度での超高分解能レーザー分光計測

研究報告コード R090000065
掲載日 2009年4月3日
研究者
  • 御園 雅俊
研究者所属機関
  • 福岡大学 理学部応用物理学科
報告名称 原子時計精度での超高分解能レーザー分光計測
報告概要 多原子分子の超高分解能レーザー分光による精密計測の重要性が高まっている。たとえば、環境ホルモン等による環境汚染が深刻な社会問題となっているが、多くの汚染物質については、その光化学的な研究はなされてはおらず、分解のメカニズムは末だ不明である。このような環境汚染物質や生体分子の光化学的な性質を研究するためには、それらの物質の基礎となる基本的な多原子分子の分光学的性質を研究することがきわめて重要である。多原子分子の電子励起状態間の相互作用や解離のダイナミクスは、励起準位の微小なシフトや広がり、分裂等として現れるため、高分解能レーザー分光によってこれらを精密に計測する必要がある。このような微小な効果の精密な計測において重要となるのが、優れた精度を持つ光波長の目盛、すなわち、波長標準(周波数標準)である。多原子分子の電子励起状態におけるダイナミクスを詳細に研究するためには、従来にない精確さを持つ光周波数の目盛が必要となる。この光周波数の目盛として有力なのが光周波数コムである。光周波数コムは、図1に示すように、一定の間隔で並んだ櫛型のモード群からなるスペクトルを持つものである。この光周波数コムを利用すれば、優れた精度を持つ分光計測の目盛が得られる。この光周波数コムのモードを目盛として利用するには、モード間隔(frep)と、キャリア・エンベロープオフセット周波数(fCEO)の安定化が必要となる。本研究では、この安定化の基準として、GPS衛星に搭載されたセシウム原子時計を利用した。セシウム原子時計は、時間の単位「秒」の定義にも使用されている究極の精度を持つものである。セシウム原子時計を自前で用意せずに、GPS衛星から送られてくる信号を利用したため、安価にシステムを構成することが可能となった。また、精度の高い基準器ほど校正が困難になるが、GPS衛星に搭載されているセシウム原子時計は常に校正されているので、本研究で得られるスペクトルも常に最高の精度で校正することができる。このようにして、原子時計から光周波数の正確な目盛を得ることができる。分光の対象は、ナフタレン等の多原子分子である。このような分子の電子励起状態では、項間交差や一重項状態間の相互作用など、興味深い現象が観測されている。多原子分子の中ではシンプルな分子を研究することで、生体分子や環境汚染物質など、より複雑な分子の中で起こっている基礎的な過程を研究することが可能となる。
画像

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関連発表論文 ・M. Okubo, J. G. Wang, M. Baba, M. Misono, S. Kasahara, and H. Kato, “Doppler-free two-photon excitation spectroscopy and the Zeeman effects of the S11B1u(v21=1)←S01Ag(v=0)band of naphthalene-d8,” J. Chem. Phys. 122, 144303(2005).
研究制度
  • 戦略的創造研究推進事業 さきがけタイプ(旧若手個人研究推進事業を含む)/構造機能と計測分析
研究報告資料
  • 御園 雅俊. 原子時計精度での超高分解能レーザー分光計測. さきがけ「構造機能と計測分析」領域 一期生研究報告会 講演要旨集. p.9 - 10.

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