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生命活動のプログラム 発生・分化を規定する新規シグナル伝達ネットワーク

研究報告コード R990004206
掲載日 2001年2月6日
研究者
  • 松本 邦弘
研究者所属機関
  • 名古屋大学大学院理学研究科
研究機関
  • 名古屋大学大学院理学研究科
報告名称 生命活動のプログラム 発生・分化を規定する新規シグナル伝達ネットワーク
報告概要 チロシンキナーゼ型細胞増殖因子受容体のシグナル伝達系路として、Ras-Raf-MAPキナーゼカスケードが、1990年代前半に解明されたことが生物学上の一大契機となり、シグナル伝達研究は生命科学の1つの先端的研究を担うようになった。本研究において、発生および分化を制御するシグナル伝達系路解明を第一の目標とし、第二に分子遺伝学的手法と生化学的手法により、さらに新規シグナル伝達分子群を見出し、新たな研究領域を創出することを目指した。本年度、線虫における研究が端緒となり、動物の形態形成を制御する新たなシグナル伝達系路を見出した。1個の受精卵から完全な体が形成される過程において、細胞は分裂増殖を繰り返し、それぞれに異なる運命を与えられることにより多様に分化していく。今回、この細胞の運命決定に重要な働きをしている、新しいシグナル伝達の仕組みが明らかになった。この発見は、線虫の発生における形態形成に異常のある突然変異株の解析のきっかけとしてなされた。線虫の筋肉と腸を構成する細胞群は、もともと1つの細胞に由来する。この細胞が2つに分裂する際に、一方の細胞は将来筋肉に、もう一方は腸になるように運命決定の情報が与えられている。この筋肉と腸の分化の方向を決定する情報には2つの異なる伝達経路が関係していることが明らかになった。1つは既に知られているWntと呼ばれる分泌性蛋白質が関係した経路で、もう1つがTAK1とNLKというMAPキナーゼ関連蛋白質が関係する経路である。さらに、NLKは細胞の運命決定に関与する遺伝子の発現を調節している転写因子の働きを、直接的に制御していることが明らかになった。これらの結果から、TAK1→NLK→TCF→遺伝子の発現→細胞の運命決定という情報伝達経路が、発生の過程において重要な働きをしていることを示している。これらの研究成果は、動物の形を作る発生のプログラムの解明に大きく貢献するものと考える。
研究分野
  • 酵素一般
  • 細胞生理一般
  • 生物学的機能
  • 細胞分裂・増殖
関連発表論文 (1)Ninomiya-Tsuji, J., Kishimoto, K., Hiyama, A., Inoue, J., Cao, Z. and Matsumoto, K. The kinase TAK1 can activate the NIK-IκB as well as the MAP kinase cascade in the IL-1 signalling pathway. Nature, 398: 252-256 (1999).
(2)Menegini, M.D., Ishitani, T., Carter, C., Hisamoto, N., Ninomiya-Tsuji, J., Thorpe, J., Matsumoto, K. and Bowerman, B. MAP Kinase and Wnt Pathways converge to downregulate an HMG-domain repressor in C. elegans. Nature, 399: 793-797 (1999).
(3)Ishitani, T., Ninomiya-Tsuji, J., Nagai, S., Nishita, M., Menegini, M., Barker, N., Waterma, M., Bowerman, B., Clevers, H., Shibuya, H. and Matsumoto, K. The TAK1-NLK-MAPK related pathway antagonizes signalling between β-catenin and the transcription factor TCF. Nature, 399: 798-802 (1999).
(4)Adachi-Yamada, T., Fujimura-Kamada, K., Nishida, Y. and Matsumoto, K. Distortion of proximodistal information causes JNK-dependent apoptosis in Drosophila wing. Nature, 400: 166-169 (1999).
(5)Yamaguchi, K., Nagai, S., Ninomiya-Tsuji, J., Nishita, M., Tamai, K., Irie, K., Ueno, N., Nishida, E., Shibuya, H. and Matsumoto, K. XIAP, a cellular member of the inhibitor of apoptosis protein family, links the receptors to TAB1-TAK1 in the BMP signaling pathway. EMBO J., 18: 179-187 (1999).
(6)Kawasaki M., Hisamoto N., Iino Y., Yamamoto M., Ninomiya-Tsuji J. and Matsumoto, K. A Caenorhabditis elegans JNK signal transduction pathway regulates coordinated movement via type-D GABAergic motor neurons. EMBO J., 18: 3604-3615 (1999).
(7)Suzanne, M., Irie, K., Glise, B., Agnes, F., Mori, E., Matsumoto, K. and Noselli, S. The Drosophila p38 MAPK pathway is required during oogenesis for asymmetric development. Genes & Dev., 13: 1464-1474 (1999)
(8)Adachi-Yamada, T., Nakamura, M., Irie, K., Tomoyasu, Y., Sano, Y., Mori, E., Goto, S., Ueno, N., Nishida, Y. and Matsumoto, K. p38 mitogen-Activated Protein Kinase can be Involved in transforming growth factor β superfamily signal transduction in Drosophila wing morphogenesis. Mol. Cell. Biol., 19: 2322-2329 (1999).
研究制度
  • 戦略的基礎研究推進事業、研究領域「生命活動のプログラム」研究代表者 松本 邦弘(名古屋大学大学院理学研究科)/科学技術振興事業団
研究報告資料
  • 松本 邦弘. 生命活動のプログラム 発生・分化を規定する新規シグナル伝達ネットワーク. 戦略的基礎研究推進事業 平成10年度 研究年報,1999. p.50 - 53.

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