テクニカル・アイ(特許目利きによるコラム)

室の伝達特性の測定を必要としない残響時間推定法

技術の背景

コンサートホールなどの残響時間測定はインパルス性音源信号を用いて室内空間の伝達特性を測定することを基本としているが、本技術は話者音声などの日常的な観測信号から残響時間をブラインド推定する新しいアルゴリズムを提案している。これによりコンパクト、簡便で携帯可能な測定装置でリアルタイムに、かつ人のいる空間でも残響時間の計測が可能となる。

技術内容・特徴

本技術は北陸先端科学技術大学院大学鵜木准教授の研究室で研究開発されたものである。残響時間は室内音場を評価する最も基本的な概念で、室内に放射された音が平衡状態に達したのち音を停止し、その後の残響エネルギー密度が音源停止直前のエネルギー密度に比し-60dBになるまでの時間を秒単位で表したものである。測定法はISO3382で規格化されており、通常は(図1)に示すような測定システムを測定する室内に持ち込んで行っている。精密な測定には音響信号に広いダイナミックレンジが要求され、背景雑音(暗騒音)を低減するため人を排除した空間で行うことになり、装置、手間とも大がかりになるとともに測定可能対象も限定されることになる。
 これに対し本技術は、従来法で利用されるインパルス性音源信号を利用するのではなく、日常的に身の回りに存在する音(特に音声)を収録し、その残響の影響を受けた信号(残響音声)から残響時間をブラインド推定する新規な手法である。このアルゴリズムは音響工学、デジタル信号処理に基づく残響音声回復法の基礎研究から生まれたものである。また出願特許の調査結果においてもその新規性が認められ特許成立の可能性が高いと確認されている。
LH-2009-024_01.gif
(図2)に音声を音源とした場合の残響時間を推定した例を示す。赤線が本提案の手法であり、残響時間の推定が精度良く行われていることがわかる。(青線は鵜木准教授の以前の手法による推定結果を示す。)
LH-2009-024_02.gif

特許・文献情報

発明の名称:「残響時間推定装置及び残響時間推定方法」
出願番号  :特願2008-95540
出願人   :北陸先端科学技術大学院大学
発明者   :鵜木祐史、平松壮太
関連文献  :Sota Hiramatsu and Masashi Unoki, “A study on the blind estimation of reverberation time in room acoustics,” Journal of Signal Processing, Vol.12, No.4, 323-326, July 2008



応用分野

残響時間測定は、良好な音響特性が要求されるコンサートホールや演劇場などの施設で必要とされるが、本技術を提供すれば常時、リアルタイムにその計測が可能となる。また最近はホームシアターで臨場感、立体感の音響空間を再現したい要求もあり、簡易に残響時間を測定する本技術はニーズがあると思われる。また、メッセージを正確に伝達するため音声明瞭度を要求する施設(学校、工場、駅構内、店舗など)の音響設備の設計、配置にもコンパクトで携帯可能な本技術による残響時間計測手法は有用であると想定できる。

関連技術・市場情報

本技術はシミュレーションでその有用性が確認されている段階であり、実用化のためには装置の試作、検証が必要である。



編集: 技術移転プランナー 牧本三夫
問合せ先 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 産学連携展開部
〒102-0076 東京都千代田区五番町7
E-mail: e-mail address TEL: 0120-679-005 FAX: 03-5214-8399

PAGE TOP