テクニカル・アイ(特許目利きによるコラム)

キトサン・コーティングによる繊維、フィルムの表面改質

技術の背景

本技術は、静岡県立大学環境科学研究所で研究がなされていた高機能キチン・キトサンに関するものである。キトサンは、甲殻類から得られるキチンの脱アセチル化物であり、部分的に脱アセチル化したものはDACと呼ばれ、それらは、生体適合性が優れた分子量5万~50万程度の天然高分子である。またキトサンやDACには生分解性があり、抗アレルギー性や抗菌性等の作用を示すことから、医薬品、食品、繊維、膜などを開発する研究が盛んになって来ている。最近は特定保健用食品として低コレステロール作用、尿酸値改善作用にも期待されている。

 


技術内容・特徴

キトサンを繊維やフィルムの表面にコーティングし、高機能素材を開発する試みは多方面で研究されている。しかし、キトサンはキチンと同様に一般的な有機溶剤に溶けないため、塩酸や酢酸、乳酸等の有機酸に溶解し利用されている。製糸、製膜は可能であるが、残存する酸の影響がありまた、出来た糸や膜は容易に水に溶けるという問題があった。
本技術はキトサンをゲル化した後、水中に懸濁し、炭酸ガスをバブリングすることにより溶解し、製品から残存する酸・塩基の影響を除外するものである。セルロース繊維である脱脂綿、ガーゼ、紙等をキトサン-炭酸ガス水溶液(0.5%)に浸した後、乾燥することにより繊維の深部にまで強固なコーティングが可能となった。(図1)

コーティングした脱脂綿の蛍光顕微鏡写真(図1)

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本処理によりキトサンの抗菌性等の機能が洗濯等により損なわれることなく長時間持続可能となった。
一方、合成繊維・プラスティック等では本処理では強固なコーティングは不可能であるため、図2、3に示す新規キトサン高分子界面活性剤を開発した。界面活性剤:洗浄剤、乳化剤、起泡剤、分散剤、表面処理剤等として繊維、合成樹脂、農薬、食品、化粧品などの分野で使用される。



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キトサン界面活性剤は下記の特徴を有することを確認した。
・1%添加により安定した乳化力を保持できる。
・安全性の確認 :変異原性試験、皮膚一次刺激性試験、連続皮膚刺激性試験、皮膚感作性試験、急性毒性試験、眼粘膜刺激性試験、ヒトパッチテスト
・生分解性:一般的な河川水中の微生物で容易に分解される。キトサンと同程度の速度
・抗菌性:大腸菌、黄色ぶどう球菌、MRSAに対してキトサン以上の抗菌性を示す。 
・PP製不織布へコーティングしても効果は維持された。



特許・文献情報

発明の名称および出願番号

1 キトサンまたはDACの水溶解方法とその水溶液、キトサンまたはDAC水溶液による膜の形成方法と固体表面の被覆方法並びに糸の形成方法
特願2001-366335(特開2002-241405)

2 キトサンまたはDACの炭酸ガスとの水溶液によるキトサンまたはDAC処理紙の製造方法
特願2001-366338(特開2003-166197)

3 キトサン誘導体とキトサン高分子界面活性剤
特願2004-056846(特開2005-213494)

4 キトサン-揮発性物質組成物と徐放性担体並びに抗菌加工法
特願2004-042125(特開2005-232063)

5 キトサン被覆機能物品とその製造方法
特願2004-042127(特開2005-232615)

出願人: 独立行政法人科学技術振興機構
発明者: 吉岡 寿、酒井康雄 他



応用分野

本技術は(紙)オムツ、ナプキン、(ウエット)ティッシュ等の衛生材料、生理用品、マスク、ガーゼ、脱脂綿、敷布等の医療用資材、肌着類(皮膚の弱い人・アトピー等のアレルギーの人)



関連技術・市場規模

キチン・キトサンの素材市場は、化粧品・トイレタリー分野を中心に、150億円程度と安定しており、市場規模に占めるウエイトも高くなっている。

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キチン・キトサンは、応用範囲も広く、多方面で研究が進められており、今後新たな機能性研究の進展により、市場拡大につながる期待の持てる素材である。特に、化粧品・トイレタリー分野においては、今後も安定した売上が見込まれる。

編集: 元 技術移転プランナー 吉田 長作
問合せ先 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 知的財産マネジメント推進部
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