テクニカル・アイ(特許目利きによるコラム)

音響系・通信系のための高性能適応アルゴリズム

技術の背景

音響システムや通信システムなど時間的に環境が変化し、システム・パラメータが変動する場合はその変動するパラメータの値を推定し、補償を行ってシステムを安定制御する必要がある。このような処理を行う場合、高速性と計算量はトレード・オフの関係にあり、従来より計算量を抑え、かつ安定で追随の早いアルゴリズムの実現が要望されている。


技術内容・特徴

このようなシステム同定技術は(図1)に示すように従来から多くの提案がなされ実用化もされているが、高速性と計算量の両立という観点からはまだまだ改善の余地がある。本技術は岩手大学西山清教授の研究によるもので、高速H∞(H-Infinity)フィルタを基礎とする新しい概念による計算量の少ない高速高性能適応アルゴリムを提供するものである。
高速制御(高速追随性)の要求される時変システムの典型的な例にエコー・キャンセラーがあるが、(図2)にハンズフリー携帯電話への応用を想定した場合の構成例とその評価系を示す。DSPに実装して試作検証した結果、従来の正規化LMS法と比較しほぼ同等の計算量で追随性を大幅に高速化できることを実証している。また(図3)に示すように携帯電話でしばしば問題となるダブルトーク時におけるキャンセル性能の劣化も問題ないことが確認されている。



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(図1)時変システムのシステム同定手法



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(図2)エコー・キャンセラの構成と評価系


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(図3)ダブルトーク時におけるエコー・キャンセル効果


特許・文献情報

発明の名称: System Identification Method
出願番号: United States Patent, No.7039567
出願人: JST(科学技術振興機構)
発明者: Kiyoshi Nishiyama (西山 清)
関連特許: 特願2000-323958、特願2005-513012、PCT/JP2007/058033
関連文献:K.Nishiyama;“An H∞ Optimization and Its Fast Algorithm for Time-Variant System Identification”, IEEE Transaction on Signal Processing, vol.52, 5, pp.1335-1342, May 2004


応用分野

応用例として携帯電話のエコー・キャンセラーを示しているが、カラオケ等の音響システム、TV会議システム、能動騒音制御システム、デジタル補聴器など音の入出力を有する音響機器、システムのほとんどすべてに適用可能なアルゴリズムである。ただし、それぞれのシステムに対してアルゴリズムの最適化を行うことは要求される。



関連技術・市場情報

新規技術であるためエコー・キャンセラーなどの既存分野より騒音制御や音場制御システムなど新規分野での実用化が先行することも想定される。


編集: 技術移転プランナー 牧本三夫
問合せ先 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 産学連携展開部
〒102-0076 東京都千代田区五番町7
E-mail: e-mail address TEL: 0120-679-005 FAX: 03-5214-8399

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