テクニカル・アイ(特許目利きによるコラム)

新規微生物を用いたブドウ病害防除剤

技術の背景

生物農薬市場は、約10億円(平成19農薬年度)にとどまっているが、有機・減農薬栽培を志向する生産者の増加や、残留農薬に関する最近の消費者意識の向上により、微生物農薬への注目度は今後ますます高まっていくと推定される。微生物農薬は化学農薬と比較して、(1)自然界に存在する微生物を利用するため人体等への影響が小さい、(2)宿主特異性が高く標的病原菌が明確であり、多重散布が防げるなどの大きなメリットがある。本技術は新規微生物Bacillus subtilis KS1株を分離し、それらのブドウべと病への効果を明らかにしている。

技術内容・特徴

発明者が発見している新規KS1株は、ブドウ灰色かび病菌に対して、生育抑制効果を示し、さらに圃場で自然発生した「ブドウべと病」をも抑制している。特にブドウべと病に対しては、市販微生物農薬では10%程度の発症率低減効果しかないが、当該微生物の菌体培養液を用いた場合、実験圃場ではほとんどべと病が発生しておらず、効果が大であると認められる。使用する場合の当該微生物菌体の濃度等、検討すべき項目は多いが、かなりの効果を持つ微生物薬剤であり、本特許の実用化が期待される。



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現在べと病は、世界的にボルドー液(硫酸銅主体の溶液)で防除されているが、本法が実用化されれば、ワインの品質向上にも多大な貢献が期待できる。特に、白ワインにおいてチオール基を持つワイン香り成分(注記)の減少が防止できる。
注記 主要香り成分:柑橘様香気(3-mercapto-1-hexanol)
閾値が低く少量でも香りを感じられる一方、チオール基をもつため、硫酸銅に含まれる銅イオンにより容易に芳香を失う。

特許・文献情報

発明の名称:
新規微生物及び、この微生物を用いた植物病害防除剤
出願番号:特願2008-181449
出願人:国立大学法人 山梨大学
発明者:高柳勉、鈴木俊二、古屋誠一
通常の微生物農薬がほとんど効かない病害において、Bacillus subtilis KS1株の効果が大である。
寄託されているKS1株は、申請者らによって新たに見出された株である。従来、微生物によるべと病菌に対する防除効果についての報告(特許・文献)は見あたらない。


関連技術・市場情報

従来、灰色かび病には効果のある微生物が発見されていたが、べと病に関する微生物農薬は未だ開発されていない。ブドウ灰色かび病に関しては、Bacillus subtilisを利用した微生物農薬、ボトキラー水和剤(出光興産)、エコショット水和剤(クミアイ化学)、インプレッション水和剤(エスディー・エスバイオテック)の各薬剤が販売されている。
 最終的に、ワイン用ブドウ病害防除に本微生物農薬は寄与する。世界のワイン販売額は、2008年度において約12兆円の巨大市場であり、中国等の新興国での伸びが大きい(世界全体での白ワイン販売額は約3.5兆円程度)。なお国内での2008年度販売量は、全体454億円(内、白ワイン121億円)と推定されており、日本と比較して圧倒的に世界全体での販売量が大きいことがわかる。従って、今後本技術の海外ワイン産地での展開が期待される。現在、当該微生物農薬の製造・販売に携わる企業等を募集中である。


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編集: 技術移転プランナー 谷村 修也
問合せ先 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 知的財産マネジメント推進部
〒102-8666 東京都千代田区四番町5-3
E-mail: e-mail address TEL: 03-5214-8293 FAX: 03-5214-8476

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