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Specification :複合多孔体およびその製造方法、並びにこれを用いた有機物質変換方法

Country 日本国特許庁(JP)
Gazette 特許公報(B2)
Patent Number 特許第5194249号 (P5194249)
Publication number 特開2005-314208 (P2005-314208A)
Date of registration 平成25年2月15日(2013.2.15)
Date of issue 平成25年5月8日(2013.5.8)
Date of publication of application 平成17年11月10日(2005.11.10)
Title of the invention, or title of the device 複合多孔体およびその製造方法、並びにこれを用いた有機物質変換方法
IPC (International Patent Classification) C01B  37/02        (2006.01)
B01J  29/035       (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
B01J  35/10        (2006.01)
B01J  37/00        (2006.01)
C02F   1/28        (2006.01)
C02F   1/30        (2006.01)
C02F   1/72        (2006.01)
C04B  38/00        (2006.01)
FI (File Index) C01B 37/02
B01J 29/035 M
B01J 35/02 J
B01J 35/10 301G
B01J 37/00 A
C02F 1/28 A
C02F 1/30
C02F 1/72 101
C04B 38/00 304Z
Number of claims or invention 12
Total pages 17
Application Number 特願2004-311071 (P2004-311071)
Date of filing 平成16年10月26日(2004.10.26)
Exceptions to lack of novelty of invention 特許法第30条第1項適用 2004年1月22日 日本セラミックス協会基礎科学部会発行の「第42回セラミックス基礎科学討論会講演要旨集」に発表
Application number of the priority 2004097135
Priority date 平成16年3月29日(2004.3.29)
Claim of priority (country) 日本国(JP)
Date of request for substantive examination 平成19年3月28日(2007.3.28)
Patentee, or owner of utility model right 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
Inventor, or creator of device 【氏名】犬丸 啓
【氏名】山中 昭司
【氏名】笠原 隆
【氏名】安井 元隆
Representative 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
【識別番号】100080034、【弁理士】、【氏名又は名称】原 謙三
【識別番号】100113701、【弁理士】、【氏名又は名称】木島 隆一
【識別番号】100116241、【弁理士】、【氏名又は名称】金子 一郎
Examiner 【審査官】西山 義之
Document or reference 国際公開第03/087002(WO,A1)
特開2004-026636(JP,A)
特開2001-246261(JP,A)
特表2003-512992(JP,A)
特開平10-226514(JP,A)
特開平11-188377(JP,A)
Field of search C01B 33/20-39/54
B01J 21/00-38/74
Scope of claims 【請求項1】
液体、ゾル、またはゲル状の合成媒体中で複合多孔体を形成する複合多孔体の製造方法において、
多孔体の骨格が生成する前に合成媒体に固体微粒子を混合分散させる工程と、
固体微粒子が分散した合成媒体中で、多孔体の骨格を生成させることにより多孔体と固体微粒子とが複合化した複合多孔体を形成させる工程と、を含み、
上記多孔体が、メソ多孔質シリカ、あるいはメソ多孔質シリカアルミナであり、かつ、上記固体微粒子が光触媒機能を有するものであり、
上記多孔体が、アルキル鎖の炭素数が10である直鎖アルキルトリメチルアンモニウムブロミドを鋳型として合成される無機多孔体であり、
上記固体微粒子の添加量が、上記多孔体の原料と上記固体微粒子との合計量に対して、60重量%以上であることを特徴とする複合多孔体の製造方法。
【請求項2】
超音波をかけて固体微粒子を分散させることを特徴とする請求項1に記載の複合多孔体の製造方法。
【請求項3】
上記固体微粒子が、二酸化チタンであることを特徴とする請求項1または2に記載の複合多孔体の製造方法。
【請求項4】
上記固体微粒子の平均粒径が、2nm以上50000nm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の複合多孔体の製造方法。
【請求項5】
上記多孔体が、平均細孔直径が0.5nm以上100nm以下の多孔体であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の複合多孔体の製造方法。
【請求項6】
上記多孔体の平均細孔直径が1.5nm以上であることを特徴とする請求項5に記載の複合多孔体の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の複合多孔体の製造方法により製造され、
メソ多孔質シリカあるいはメソ多孔質シリカアルミナである多孔体と、固体微粒子とが複合化されており、上記固体微粒子が光触媒機能を有するものであり、
上記固体微粒子の含有量が、上記多孔体の原料と上記固体微粒子との合計量に対して、60重量%以上であることを特徴とする複合多孔体。
【請求項8】
メソ多孔質シリカあるいはメソ多孔質シリカアルミナである多孔体と、
多孔体の細孔直径よりも大きい直径の固体微粒子と、を含むことを特徴とする請求項7に記載の複合多孔体。
【請求項9】
上記固体微粒子が、二酸化チタンであることを特徴とする請求項7または8に記載の複合多孔体。
【請求項10】
上記多孔体が、平均細孔直径が0.5nm以上100nm以下の多孔体であることを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の複合多孔体。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか1項に記載の複合多孔体を、有機物質を含む試料液と接触させ、当該複合多孔体に上記固体微粒子を活性化する波長領域の光を照射することにより、当該試料液中の有機物質を反応させることを特徴とする有機物質変換方法。
【請求項12】
上記有機物質が、4-n-へプチルアニリンである、請求項11に記載の有機物質変換方法。
Detailed description of the invention 【技術分野】
【0001】
本発明は、複合多孔体およびこれを用いた有機物質変換方法に関し、特に環境浄化や水中の有害物質除去に有用な複合多孔体および有機物質変換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境問題への関心が高まり、地球規模での環境保全が叫ばれる中、産業活動に伴い廃棄される種々の有害化学物質が問題となっている。上記有害化学物質としては、例えば、内分泌攪乱物質(以下、環境ホルモンという。)や有機塩素化合物などの難分解性物質が挙げられ、これらは河川等の水環境から検出されている。特に、環境ホルモンであるノニルフェノールなどのアルキルフェノール群は、微量でも内分泌攪乱性を有するため、生態系に対する影響が懸念されている。このような状況を鑑み、廃水処理、浄化プロセスにおいて高性能な浄化を行い、これらの物質を除去することが求められている。
【0003】
従来の浄化技術としては、有害物質を分解する方法や、多孔体等で吸着して除去する方法がある。有害物質を分解する方法としては、活性汚泥を用いる方法、触媒を用いた湿式酸化法、オゾンによる酸化除去法、光触媒法が挙げられる。
【0004】
活性汚泥法は、汚泥中の微生物の作用を利用して有機物を分解し除去する方法である。湿式酸化法は、貴金属触媒などの共存下、酸素又は他の酸化剤を用いて有機物を酸化し分解するものである。オゾン酸化法は、オゾンの酸化力を利用して有機物を水中で酸化し分解して除去する。光触媒法は、半導体系の光触媒に光を照射し触媒表面で水から生成するヒドロキシラジカル等の作用により有機物を分解して除去する。
【0005】
そして、さらに吸着・分解を組み合わせて除去効果を高める方法として、吸着作用のある多孔体表面に光触媒を担持させる方法が提案されている(特許文献1~6参照)。担持の方法としては、特許文献1には、RFスパッタリング法や蒸着、イオンプレーティングの方法が記載されており、特許文献2~5には、多孔体に光触媒を含浸あるいはコーティングさせて加熱焼成する方法が記載されている。また、特許文献6には、ファンデルワールス力によって凝集したシリカ粒子に、焼結により膜状の光触媒成分を担持させることが記載されている。

【特許文献1】特開2002—95976(公開日:2002年4月2日)
【特許文献2】特開2003—73997(公開日:2003年3月12日)
【特許文献3】特開2002—45650(公開日:2002年2月12日)
【特許文献4】特開2002—285691(公開日:2002年10月3日)
【特許文献5】特開2002—138376(公開日:2002年5月14日)
【特許文献6】特許第3231733号(公開日:2000年10月10日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~6の方法のような、多孔体の表面に光触媒をコーティングする方法で、吸着・分解作用を有する光触媒複合体を製造しようとすると、光触媒物質を多孔体に10重量%より多く担持させることができず、十分な触媒作用が得られなかった。また、光触媒の担持量を調節することができず、触媒作用の強さを調節することもできなかった。
【0007】
また、光触媒を多孔体にコーティングした場合は、光触媒物質の結晶が乱れ、本来の分解能を発揮できないという問題もあった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、多孔体に、高い結晶性を保ちながら多量の固体微粒子を担持した複合多孔体およびその製造方法、並びにそれを用いた有機物質変換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らはこのような課題を解決するために、多孔体形成後に固体微粒子を付与するのでなく、多孔体の骨格が形成される前に、多孔体の原料もしくは多孔体が生成する溶液、ゾル、ゲル等の合成媒体に固体微粒子を混ぜ込んで、固体微粒子を含んだ多孔体を形成することで、より良好な有機物質の吸着・分解機能を有する複合多孔体が製造できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の複合多孔体の製造方法は、液体、ゾル、またはゲル状の合成媒体中で、複合多孔体を形成する複合多孔体の製造方法であって、多孔体の骨格が生成する前に合成媒体に固体微粒子を混合分散させる工程と、固体微粒子が分散した合成媒体中で、多孔体の骨格を生成させることにより多孔体と固体微粒子とが複合化した複合多孔体を形成させる工程と、を含むことを特徴としている。
【0011】
ここで、「合成媒体」とは、液体またはゾル、ゲルの中で多孔体を形成する場合の、液体、ゾル、もしくはゲルを指す。
【0012】
これによれば、多孔体の原料が固化成形される前の合成媒体に固体微粒子が混合されているので、固体微粒子が合成媒体中に分散して存在し、この合成溶媒中で多孔体の原料が固化されることで、固体微粒子と多孔体とが複合化した、つまり多孔体と固体微粒子とが一体的に結合した複合多孔体が形成される。
【0013】
なお、多孔体の材料は、固体微粒子が添加される前の合成媒体に含まれていてもよく、固体微粒子を分散させた後に、合成媒体に添加してもよい。
【0014】
これにより、簡単な製造手順で多孔体と固体微粒子との複合体が形成できるとともに、多孔体の表面積に関わらず、所望の量の固体微粒子を多孔体に付与できる。
【0015】
また、このような方法で複合化することで、多量に固体微粒子を付与しても多孔体の細孔構造が保たれ、さらに、多孔体成形後に固体微粒子を付加する場合と比べ、固体微粒子の結晶構造が良好になるので、その機能が損なわれることがない。
【0016】
なお、上記固体微粒子が光触媒機能を有するものであれば、複合多孔体は、多孔体で吸着された有機物質を固体微粒子が他の物質へ変換するので、有害な有機物質の除去あるいは有機物質からの有用物質の合成が可能となる。このとき、多孔体と親和性が高い有機分子が、多孔体に選択的に吸着、変換されるので、分子選択的な変換機能が実現できる。
【0017】
さらに、上記方法で製造することにより、固体微粒子を多孔体細孔表面に付着させる工程が必要なくなるとともに、多孔体の表面積に関わらず、所望の量の固体微粒子を多孔体に付与でき、所望の有機物質変換能力を多孔体に付与することができる。
【0018】
また、このような方法で複合化することで、多孔体の細孔構造が保たれ、さらに、固体微粒子の結晶構造が良好になるので、有機物の吸着・変換性能も向上する。
【0019】
上記混合工程においては、超音波をかけて固体微粒子を分散させることで、混合液中に固体微粒子が良好に分散し、均等に固体微粒子が分散した複合多孔体を製造できる。
【0020】
上記固体微粒子としては二酸化チタンを使用することがより好ましい。これによれば、多孔体に吸着された有機物質を良好に他の物質に変換することができる。
【0021】
また、上記固体微粒子の平均粒径が、2nm以上50000nm以下であれば、良好に固体微粒子を多孔体に複合化できる。
【0022】
光触媒などでは固体微粒子の表面積が大きい方が好ましい。この観点からは微粒子の粒径は小さい方がよい。また、光触媒では微粒子の結晶性が高いほうが好ましく、この観点からは、微粒子の粒径は小さすぎない方がよい。光触媒としての用途ならば、微粒子径はさらに好ましくは、2nm以上5000nm以下、さらに好ましくは、5nm以上1000nm以下である。
【0023】
また、上記固体微粒子の添加量は、多孔体の原料と固体微粒子との合計量に対して、10重量%以上であることが望ましい。これによれば、複合多孔体に含まれる固体微粒子の量が十分に多くなるので、固体微粒子の機能が良好に発揮される。例えば、固体微粒子が光触媒機能を有する物質である場合、有害な有機物質の除去や化合物の変換が効果的に行える。
【0024】
上記多孔体は、多孔質シリカ、合成ゼオライト、多孔質アルミナ、多孔質シリカアルミナから選ばれる少なくとも1つの多孔体であることが好ましく、メソ多孔質シリカ、あるいはメソ多孔質シリカアルミナであることがより好ましい。これによれば、良好な吸着機能を有する複合多孔体が製造できる。
【0025】
また、上記多孔体が、平均細孔直径が0.5nm以上100nm以下の多孔体であること、好ましくは、平均細孔直径が1.5nm以上であることにより良好な吸着機能を有する複合多孔体が製造できる。
【0026】
また、本発明の複合多孔体は、上記製造方法により製造されているので、所望の量の固体微粒子を多孔体に付与できる。したがって、固体微粒子の機能が良好に発揮できる複合多孔体となる。

【0027】
また、本発明の複合多孔体は、多孔体の細孔直径よりも大きい直径固体微粒子を含ませることができる。従来の方法では、多孔体生成後に複合化を行うため、細孔径より大きな微粒子は複合化できない。このため、微粒子の結晶性が乱れやすく、高い光触媒活性が得られない。また、本発明の方法では、多孔体の細孔径や表面積に制限されることなく、固体微粒子の粒径や含有量を自由に選択することができる。
【0028】
本発明の有機物質変換方法は、上記複合多孔体を試料液と接触させ、固体微粒子にその固体微粒子を活性化する波長領域の光を照射することにより、試料液中の有機物質を反応させるものである。
【0029】
これによれば、上記複合多孔体が試料液に接触することで、試料液中の有機物質が多孔体に吸着され、固体微粒子に光をあてて活性化することで、固体微粒子により試料中の有機物質が他の物質に変換される。したがって、有害な有機物質の除去あるいは、有機物質からの有用物質の合成を、効果的に行うことができる。このとき、多孔体と親和性が高い有機分子が、多孔体に選択的に吸着、変換されるので、分子選択的な変換機能が実現できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の複合多孔体の製造方法は、以上のように、液体、ゾル、またはゲル状の合成媒体中で、複合多孔体を形成する複合多孔体の製造方法であって、多孔体の骨格が生成する前に合成媒体に固体微粒子を混合分散させる工程と、固体微粒子が分散した合成媒体中で、多孔体の骨格を生成させることにより多孔体と固体微粒子とが複合化した複合多孔体を形成させる工程と、を含んでいる。それゆえ、複合多孔体に固体微粒子を任意の量だけ含有させられる。また、多孔体成形後に固体微粒子を付加する場合と比べ、固体微粒子の結晶性が良好になる。よって、固体微粒子の機能を良好に発揮できる。

【0031】
また、本発明の複合多孔体は、以上のように、多孔体と、多孔体の細孔直径よりも大きい直径の固体微粒子と、を含むものである。従来の方法では、多孔体生成後に複合化を行うため、細孔径より大きな微粒子は複合化できない。このため、微粒子の結晶性が乱れやすく、高い光触媒活性が得られない。しかし、本発明の方法では、多孔体の細孔径や表面積に制限されることなく、固体微粒子の粒径や含有量を自由に選択することができる。
【0032】
また、本発明の有機物質変換方法は、上記複合多孔体を試料液と接触させ、上記複合多孔体にその固体微粒子を活性化する波長領域の光を照射することにより、上記試料液中の有害物質を分解している。これによれば、上記複合多孔体が試料液に接触することで、多孔体に有機物質が吸着され、固体微粒子に光を当てて活性化することで、吸着した有機物質が効果的に他の物質に変換される。このとき、多孔体と親和性が高い有機分子が、多孔体に選択的に吸着、変換されるので、分子選択的な変換機能が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の複合多孔体の製造方法は、多孔体が固化形成される前の、多孔体の原料が液体の状態で固体微粒子と混合・分散させ、多孔体の原料を固化させることで複合多孔体を製造する方法である。このようにして製造された複合多孔体は、複合多孔体に固体微粒子を任意の量を含有させられ、また、多孔体成形後に固体微粒子を付加する場合と比べ、固体微粒子の結晶性が良好になる。
【0034】
本発明の複合多孔体の製造方法は、主に、混合工程と、形成工程とに分けられる。
【0035】
上記混合工程では、液体、ゾル、またはゲル状の合成媒体に、固体微粒子を混合する。このとき、多孔体の原料は、固体微粒子を混合する前にあらかじめ合成媒体に添加されていてもよく、固体微粒子混合後に添加していても構わない。
【0036】
上記多孔体の原料としては、多孔体を形成するものであれば特に限られるものではないが、テトラエトキシシランのような金属アルコキシドやケイ酸ナトリウムのような金属塩、その他金属酢酸塩やアセチルアセトン錯体などの有機金属化合物や、これらを含むゾルやゲルが挙げられる。
【0037】
また、金属酸化物などの固体微粒子を多孔体原料として用いることもできる。この微粒子は、複合化する微粒子とは異なり、合成媒体内でいったん溶解し、多孔体の骨格を形成する原料となる。
【0038】
また、この多孔体の原料は、金属酸化物からなる多孔体、多孔質シリカ、ゼオライト、多孔質アルミナ、シリカアルミナ等からなる多孔体、あるいは、これらの混合物からなる多孔体を形成できる材料が挙げられ、特にシリカアルミナの多孔体を形成するものが好ましい。中でも、有機物を鋳型として合成される無機多孔体、特にメソ多孔体が、特に好ましい。その理由は、細孔径が均質となり、特定の分子を吸着する分子選択性が発現しやすいからである。
【0039】
また、上記固体微粒子としては、マグネシア、アルミナ、シリカ、リン酸アルミニウム、ホウ素、炭素、窒化シリコン、窒化アルミニウムなど無機の酸化物、塩化物、窒化物、ホウ化物、炭化物、硫化物などのほか、ポリエチレンなどの樹脂の粒子など、有機物を用いることも可能であるが、特に光触媒機能を有する微粒子であることが好ましい。光触媒機能を有する微粒子(以下、光触媒微粒子)としては、半導体としての特性を有し光触媒特性を持つとされるものであれば、あらゆるものが使用可能である。なかでも、金属硫化物や金属酸化物が好ましく、チタニア、ジルコニア、酸化ニオブ、酸化タングステン等の金属酸化物が最も好ましい。具体的なものとしては、TiO2,SrTiO3,WO3,Fe23,Bi23,MoS2,CdS,CdSe,GaP,GaAs,MoSe2,CdTe,Nb25,Ta25,NbとTaの複合酸化物の他、H3PW1240やH3PMo1240などのヘテロポリ酸及びそれらの塩などを挙げることができる。なかでも、光触媒活性が高いことが知られているTiO2(二酸化チタン)が好ましい。なお、光触媒粒子としては、凝集していない細かい粒子状のもの(例えば独デグサ社製のP-25)を用いることが好ましい。
【0040】
固体微粒子としては、平均粒径が2nm以上50000nm以下の細孔を形成するものであることが好ましい。下限としては、5nm以上がより好ましく、10nm以上がさらに好ましい。上限としては、5000nm以下がより好ましく、1000nm以下がさらに好ましい。
【0041】
固体微粒子の平均直径が上記範囲より小さいと微粒子の結晶性が悪くなり、光触媒活性が低くなる。上記範囲より大きいと微粒子の表面積が小さくなるため、やはり触媒活性が低くなる。
【0042】
固体微粒子の添加割合は、多孔体の原料と固体微粒子との合計量に対して、10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上にするのがより好ましく、50重量%以上にするのが好ましい。上限としては98重量%以下にするのがより好ましく、95重量%以下にするのがさらに好ましい。これにより、固体微粒子が良好かつ効果的に機能を発揮する。
【0043】
固体微粒子が光触媒粒子である場合、含有量が10重量%以下であると、複合多孔体の有機物質を変換する能力が十分でなく、有害な有機物質の除去や有用物質の合成が十分に行えない。また、光触媒粒子は上記範囲より多く含ませても、効果をそれ以上に向上させることはできないので、コストの面から上記上限より小さくすることが好ましい。
【0044】
なお、混合工程では、この他に水等の溶媒や、pHを調節するための酸および塩基、微粒子の分散性や多孔体との親和性を向上させるための界面活性剤等を加えてもよい。
【0045】
また、混合工程においては、固体微粒子に超音波をかけることにより、より良好に固体微粒子が混合液に分散させるようにしてもよい。
【0046】
次に、形成工程にて、多孔体の原料を固化して、固体微粒子が複合化した多孔体を成形する。
【0047】
ここで、多孔体の原料を固化することで、複合多孔体が固化し、多孔体の骨格を形成させることで、複合多孔体が固体として成形される。多孔体の骨格を形成させる反応条件は多孔体や原料の種類により様々であり、それぞれに適した条件が選ばれる。例えば、テトラエトキシシランを原料にシリカ多孔体を合成するときは、水の存在下、室温~80℃程度で行われる。ケイ酸塩を含むゲルから多孔体を合成する場合は、耐圧容器(オートクレーブ)を用いて、100℃~150℃の温度で水熱合成される。また、多孔体の骨格を形成させるときには、鋳型となる有機化合物を共存させてもよい。特に、メソ多孔シリカやシリカアルミナを多孔体として用いる場合は、直鎖アルキル基を持つ界面活性剤が鋳型剤としてよく用いられる。
【0048】
得られた複合多孔体は、有機物や鋳型剤を取り除くために焼成されることが多い。このとき、加熱焼成の時間や温度は、多孔体が良好に形成できるように適宜設定すればよい。例えば、温度は、多孔体材料が150℃以上、より好ましくは250℃以上となるようにすればよい。また、上限としては1000℃以下、より好ましくは800℃以下とすればよい。焼成の時間としては、1時間から10時間程度が好ましい。
【0049】
以上のような工程で製造された複合多孔体は、固体微粒子の含有割合が多くても、多孔体の細孔が保たれており、固体微粒子の結晶も崩れていないので、効果的に有機物質の変換等の機能を発揮する複合多孔体となる。しかも、多孔体の細孔構造が崩れていないので、有機物質を吸着する機能をも有する。
【0050】
この多孔体としては、平均細孔直径が0.5nm以上100nm以下であることが好ましい。下限としては、1nm以上がより好ましく、1.5nm以上がさらに好ましい。上限としては、50nm以下がより好ましく、10nm以下がさらに好ましい。多孔体の細孔の平均直径が上記範囲より小さくても、大きくても、有機物質の吸着を良好に行うことができない。なお、実施例に用いたような比較的小さい分子が吸着対象であれば、直径0.5nm-500nm、さらに好ましくは1nm-50nmの範囲にある細孔を有する多孔体が通常用いられる。また、溶液の拡散を促進したり流路を確保する観点からは、上記より大きな細孔を含んでいた方が有利であり、上記のような細孔に加えて直径1マイクロメートル以上の大きな細孔を含む多孔体を用いることもできる。
【0051】
また、上記した工程で製造された複合多孔体は、多孔体と、多孔体の細孔径よりも大きい固体微粒子と、を含んでいるので、固体微粒子の多孔体との接触面積が小さくても、より多くの固体微粒子を多孔体に担持できるようになる。また、固体微粒子が多孔体の細孔径よりも大きい場合、従来の、多孔体の細孔より小さい粒径の固体微粒子が、多孔体細孔内にコーティングされている場合と比べ、固体微粒子の結晶構造に与える影響が少ないので、固体微粒子の機能が良好に発揮させる。つまり、複合多孔体に含まれる固体微粒子の量が多く、多孔体、固体微粒子が良好に形成される複合多孔体となる。
【0052】
この場合、多孔体細孔の直径が平均直径0.5nm以上100nm以下であり、かつ、固体微粒子の平均粒径が2nm以上50000nm以下であることが好ましく、多孔体細孔の直径が平均直径1nm以上100nm以下であり、かつ、固体微粒子の平均粒径が10nm以上500nm以下であることがより好ましい。これにより、固体微粒子を良好に担持できる。
【0053】
そして、以上のような複合多孔体は、試料液に接触させながら固体微粒子を活性化する波長領域の光を照射されることで、試料液中の有機物質を変換できる。これにより、試料液中に含まれる有害な有機物質を除去することや、試料液中に含まれる有機物質から有用物質を合成することができる。
【0054】
さらに、多孔体表面に、特定の有機物質と選択的に結合したり、親和性の高い有機基を付与することで、多孔体の選択的吸着能力を高めてもよい。
【0055】
なお、本発明の複合多孔体の製造方法は、多孔体と、固体微粒子とを複合化した光触媒複合体の製造方法であって、溶媒に、多孔体の原料と、固体微粒子とを混合した混合液を製造する工程と、当該混合液中の多孔体原料を固化する工程、とを含むものであってもよい。
【0056】
また、本発明の複合多孔体の製造方法は、固体として生成する前の多孔体の原料と、分散された固体微粒子と、を含む溶液を製造する工程と、当該溶液中の多孔体の原料を固化することで、多孔体と固体微粒子とを複合化した複合多孔体を形成する工程、とを含むものであってもよい。
【0057】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0058】
以下に、固体微粒子として光触媒粒子を使用した本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
〔製造方法〕
本実施例の複合多孔体の製造方法を図1を用いて説明する。
【0060】
多孔体の鋳型となる界面活性剤として、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(C16TMABr)4.4gを脱イオン水250mlに溶解した後、TiO粉末(P-25(商品名):アナターゼ型二酸化チタンとルチン型二酸化チタンの両方を成分として含む)を加え、超音波をかけて分散させた。このときの、P-25の添加量は、0.86g、あるいは2.1g、7.3g、19.5gの4種類のものを用意した。次に、アンモニア水を加えて溶液のpHを11.8に調整した後、テトラエトキシシラン(Si(OC)を一気に加えた。これにより、テトラエトキシシランの加水分解が起こり上記界面活性剤のミセルの周りにシリカが形成された。
【0061】
この混合溶液を約1時間攪拌後、ろ過して生成物を回収し、一晩加熱乾燥した後、540℃で焼成して、メソ多孔体シリカ-TiO複合体(以下、MPS-TiO)を得た。得られたMPS-TiO中のTiOの含有量は、それぞれ、15重量%、30重量%、60重量%、80重量%である(以下、それぞれMPS-TiO(xwt%)x=15,30,60,80と称する)。また、比較例として、上記製造方法において、P-25を加えないメソ多孔体シリカ(以下MPS)を合成した。
【0062】
上記した4種類のMPS-TiO、あるいは、MPSの窒素吸着を測定した結果を図2の吸着脱着等温線に示す。図2は、横軸が相対圧を、縦軸が窒素吸着量(1gあたりの吸着窒素の体積)を示している。これによると、TiOの含有量に関わらず、すべてのMPS-TiOで、メソ多孔体に特有の吸着脱着等温線(すなわち、相対圧0.3付近で毛管凝縮による吸着量の増加が見られ、それ以上の相対圧では吸着量の変化がほとんどない吸着脱着等温線)となっており、上記製造方法のMPS-TiOは、TiOの含有量を高めても、メソ多孔体の構造を保っていることを示していた。また、TiOの含有量が増えるにしたがって、細孔容量の減少が見られるが、これは単位重量あたりでのMPSの割合が減少しているためである。
【0063】
また、上記した4種類のMPS-TiO、あるいは、MPSの細孔半径の分布を調べた。これによると、TiOの含有量に関わらず、すべてのMPS-TiOで、2.6~3.0nmの細孔が形成されており、これからも、上記製造方法のMPS-TiOは、TiOの含有量を高めても、メソ多孔体の構造が保たれていることが示された。
【0064】
さらに、上記した4種類のMPS-TiOおよびMPSのXRDパターンを測定した。低角度側のXRDパターン(図3(a))より、ピーク強度はTiO含有量が増加するにつれて減少しているものの、MPSの細孔の配列に特有のピークが見られる。したがって、上記製造方法のMPS-TiOで細孔が保たれていることが分かる。一方、高角度側のXRDパターン(図3(b))では、P-25に由来するTiOの結晶のピークが観察できた。
【0065】
以上の結果から、4種類のMPS-TiOは、いずれも、TiO粒子がメソ多孔シリカの内部に取り込まれた形で多孔体細孔を保ちながら複合化している事がわかる。
【0066】
〔実験例1〕
上記のように製造した4種のMPS-TiOについて、4-n-プロピルフェノールと4-n-ヘプチルフェノールとをほぼ等濃度で有する混合液300mlに対する吸着分解能を測定した。比較例として、MPSとP-25を実施例と同量混合したものを用いた。
【0067】
上記混合液に、MPS-TiO(15wt%)を30mg投入し、300Wのキセノンランプで光照射した場合の有機化合物の濃度変化を図4に示す。なお、横軸は光照射開始時を0時間とする時間経過である。これによると、両有機化合物の濃度が光照射直後から減少し始めた。また、減少速度は、4-n-プロピルフェノールが3時間で7.5ppmから4ppmへ減少するのに対し、4-n-ヘプチルフェノールが3時間で7ppmから0.5ppmへ減少し、4-n-ヘプチルフェノールを選択に分解している事がわかる。
【0068】
次に、上記混合液に、MPS-TiO(30wt%)を投入した場合の同様の濃度変化を図5(a)に示す。これも、4-n-プロピルフェノールに比べ、4-n-ヘプチルフェノールの減少速度が有意に早く、4-n-ヘプチルフェノールを選択に分解していた。また、MPS-TiO(15wt%)よりも分解速度が速かった。
【0069】
ここで、MPS-TiO(30wt%)の比較例として、MPSを21mgとP-25を9mg(P-25の量は全体の30wt%となる)の混合物を投入した場合の、有機化合物の濃度変化を測定した(図5(b))。この場合は、4-n-プロピルフェノールと4-n-ヘプチルフェノールとの減少速度にほとんど違いはなく、選択的分解は行われていなかった。つまり、P-25を別々にではなく、本発明のように多孔体に複合させることで、4-n-ヘプチルフェノールの分解を促進させる一方、4-n-プロピルフェノールの分解を抑制する、という選択的分解が行われる。
【0070】
また、上記混合液に、MPS-TiO(60wt%)を投入した場合の有機化合物の濃度変化(図6)も、4-n-プロピルフェノールに比べ、4-n-ヘプチルフェノールの減少速度が有意に早く、4-n-ヘプチルフェノールを選択に分解していた。また、MPS-TiO(30wt%)よりも分解速度が速かった。
【0071】
上記混合液に、MPS-TiO(80wt%)を投入した場合の同様の濃度変化(図7(a))も、4-n-プロピルフェノールに比べ、4-n-ヘプチルフェノールの減少速度が有意に早く、4-n-ヘプチルフェノールを選択に分解していた。また、MPS-TiO(30wt%)よりも分解速度が速く、MPS-TiO(60wt%)と同程度の分解速度であった。
【0072】
ここで、MPS-TiO(80wt%)の比較例として、MPSを6mgとP-25を24mg(P-25の量は全体の80wt%となる)の混合物を投入した場合の、有機化合物の濃度変化を測定した(図7(b))。これによると、4-n-プロピルフェノールと4-n-ヘプチルフェノールとの減少速度にほとんど違いはなく、選択的分解は行われていないことが分かる。
【0073】
以上の実験から、TiOは、多孔体と複合化することによって初めて分子選択的分解をし、その分解速度は含有するTiOに比例して高まる傾向にあることが示された。
【0074】
このような分子選択的分解の機構を探るため、4-n-プロピルフェノールと4-n-ヘプチルフェノールとに対する、MPSの吸着量を測定した。ここでは、混合水溶液70mlにMPS100mgを加え、吸着開始時と吸着平衡時との溶液濃度の差から吸着量を測定した。
【0075】
これによると、4-n-プロピルフェノールの、平衡濃度4.20×10-5mol/gの溶液での吸着量が約0.5×10-5mol/gであったのに対し、4-n-ヘプチルフェノールの、平衡濃度1.40×10-5mol/gの溶液での吸着量が約1.2×10-5mol/gであった。つまり、4-n-ヘプチルフェノールは、4-n-プロピルフェノールに比べて平衡濃度が低いにも拘わらず、MPSに対して非常によく吸着している。よって、MPS-TiOにおける分子選択的分解は、MPSの分子選択的吸着がMPS-TiOでも機能しており、MPSに選択的に吸着した有機物質を光触媒が分解したためであると考えられる。
【0076】
〔実験例2〕
次に、MPS-TiO(60wt%)を30mgと、比較例としてのMPSを12mgとP-25を16mg(P-25の量は全体の60wt%となる)の混合物について、フェノール系有機物混合液、またはアニリン系有機物混合液に投入して、その選択的分解特定を調べた。
【0077】
上記フェノール系有機物混合液としては、フェノール1.60×10-5mol/l、4-n-プロピルフェノール1.51×10-5mol/l、4-n-ヘプチルフェノール1.39×10-5mol/l、ノニルフェノール1.39×10-5mol/lの混合水溶液300mlを用いた。これに、MPS-TiO(60wt%)を30mg投入した場合の各有機物の濃度変化を表したのが図8(a)である。一方、MPSとP-25との混合物を投入したのが図8(b)である。
【0078】
これによると、MPSとP-25との混合物を投入した場合はどれもほぼ同じ速度で濃度が減少しているのに対し、MPS-TiO(60wt%)を投入した場合には、炭素鎖の長い4-n-ヘプチルフェノールおよびノニルフェノールの濃度減少速度が高く、炭素鎖の短いフェノール、4-n-プロピルフェノールの減少速度は比較的遅かった。
【0079】
したがって、本発明の製造方法でMPSに光触媒を複合化することで、フェノール系有機物の中では炭素鎖の長い有機物を選択的にMPSの細孔内に濃縮し、これを光触媒粒子が分解していると考えられる。
【0080】
また、上記アニリン系有機物混合液としては、p-トルイジン1.87×10-5mol/l、4-n-ブチルアニリン2.24×10-5mol/l、4-n-ヘプチルアニリン2.21×10-5mol/lの混合水溶液300mlを用いた。これに、MPS-TiO(60wt%)を30mg投入した場合の各有機物の濃度変化を表したのが図9(a)である。一方、MPSとP-25との混合物を投入したのが図9(b)である。
【0081】
これによると、アニリン系有機物においては、MPSとP-25との混合物を投入した場合はそれほど速い速度で濃度が減少しなかった4-n-ブチルアニリンが、MPS-TiO(60wt%)を投入した場合には、減少速度が上がっていた。
【0082】
したがって、本発明の製造方法でMPSに光触媒を複合化することで、アニリン系有機物に対しても炭素鎖の長い有機物を選択的に吸着除去できる効果があるものと思われる。
【0083】
ここで、実験例1と同様に、上記アニリン類に対する、MPSの吸着量を測定した。これによると、p-トルイジンの、平衡濃度1.66×10-5mol/gの溶液での吸着量が約0.8×10-5mol/gであったのに対し、4-n-ブチルアニリンの、平衡濃度1.02×10-5mol/gの溶液での吸着量が約1.2×10-5mol/g、4-n-ヘプチルアニリンの、平衡濃度0.541×10-5mol/gの溶液での吸着量が約1.3×10-5mol/gであった。つまり、長鎖のアニリン類は、p-トルイジンに比べて平衡濃度が低いにも拘わらず、MPSに対して非常によく吸着している。よって、MPS-TiOにおける分子選択的分解は、MPSの分子選択的吸着がMPS-TiOでも機能しており、MPSに選択的に吸着した有機物質を光触媒が分解したために起こると考えられる。
【0084】
〔実験例3〕
MPS-TiOの細孔径を制御することが、分子選択性に与える効果を調べるために、以下の実験を行った。
【0085】
本実験例においては、多孔体の鋳型となる界面活性剤として、アルキル鎖の炭素数の異なる界面活性剤を用いた。複合多孔体の製造方法は、上記製造方法の項において説明した方法と同様にして行った。
【0086】
界面活性剤の直鎖アルキルトリメチルアンモニウムブロミド(アルキル鎖の炭素数xが8、10、及び16のもの)を、イオン交換水に溶かし、アンモニア水でpHを11.8に調整した後、TiO粉末P-25を加え超音波をかけて分散させた。次に、このようにして分散させたものに、テトラエトキシシランを加え、約1時間攪拌した後、生成物をろ過して回収した。当該回収した生成物を一晩乾燥させた後、540℃で6時間焼成してTiOを60wt%含んだMPS(x)TiOを得た(xは鋳型として用いた界面活性剤の炭素数を示しており、本実験例ではx=8、10及び16である)。
【0087】
アニリン系有機物混合液300mlに、上記のようにして合成した複合多孔体の試料(MPS(x)TiO)30mgを加え、攪拌しながら300WのXeランプ(波長200nm~900nm)により光を照射し、各アニリン系有機物の濃度の経時変化を調べた。アニリン系有機物混合液としては、p-トルイジン、4-n-ブチルアニリン、及び4-n-ヘプチルアニリンの各濃度を2.5×10-5mol/lに調整したものを用いた。また、各アニリン系有機物の濃度測定は、液体クロマトグラフを用いて行った。
【0088】
上記の方法によりMPS(10)-TiOについて測定した結果を、図10(a)に示す。また、比較例として、MPS(10)-TiOと同じ組成にして、MPS(10)とP-25とを機械的に混合した機械混合物についても、同様の測定を行なった。その結果を図10(b)に示す。図10(a)及び(b)のグラフから、本発明の実施例であるMPS(10)-TiOは、比較例である機械混合物よりも、4-n-ヘプチルアニリンの分解が加速されている一方、p-トルイジンの分解が減速されていることが分かる。
【0089】
また、上記のMPS(10)-TiOと同様にして、MPS(8)-TiO、MPS(16)-TiOについても測定を行なった。その結果、P-25と複合化した多孔体の細孔径の大きさが異なるMPS(x)-TiO(x=8,10,16)の試料のいずれについても、3つのアニリン系有機物の分解速度は、4-n-ヘプチルアニリン>4-n-ブチルアニリン>p-トルイジンの順に速いことが示された。
【0090】
各複合多孔体の各アニリン系有機物の分解速度を、同組成の機械混合物の分解速度に対する比(以下、「分解速度比」という。)で表した結果を表1に示す。ここで、複合多孔体の分解速度と、組成が同じ機械混合物の分解速度とが同じ場合、分解速度比(複合多孔体/機械混合物)が1になるから、分解速度比が1より大きければ、複合化により分解が加速されることを示し、分解速度比が1より小さければ、複合化により分解が減速されることを示している。なお、表1に記載した細孔直径及び細孔容積の値は何れも、N吸着測定によって算出したものである。
【0091】
【表1】
JP0005194249B2_000002t.gif

【0092】
表1に示すように、MPS(10)-TiOでは4-n-ヘプチルアニリンの分解速度比が1.35であり分解が加速されている一方、p-トルイジンの分解速度比が0.27であり分解が減速されている。このように、本実験例において測定したMPS(x)-TiOのうち、最も明確なアニリン系有機物に対する分子選択性が認められたものは、MPS(10)-TiOであった。
【0093】
また、MPS(16)-TiOでは、複合化により、4-n-ヘプチルアニリン及び4-n-ブチルアニリンの分解が加速される一方、p-トルイジンの分解が減速された。これは、細孔径が変化することにより、細孔内への競争分子吸着・濃縮の選択性が、変化したためと考えられる。
【0094】
また、MPS(8)-TiOでは、4-n-ヘプチルアニリン、4-n-ブチルアニリン、及びp-トルイジンのいずれの分解速度比も1未満であり、複合化によって分解が減速されていることが分かる。これは、MPS(8)-TiOの細孔直径は1.3nmとMPS(10)-TiOに比べて小さいから、アニリン系有機物と接触できるTiOの露出面積も小さくなり、この結果、複合多孔体の活性自体が低くなったためと考えられる。
【0095】
以上のように、本実験例の結果によれば、アニリン系有機物を選択的に分解するためには、光触媒機能を有する固体微粒子と複合化する多孔体としては、平均細孔直径が1.5nm以上のものが好適であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の複合多孔体は、固体微粒子を多量に含有でき、固体微粒子の結晶性も良好にできる。したがって、固体微粒子として光触媒機能を用いた場合は、有機物質を選択的かつ迅速に他の化合物へと変換することができる。よって、有害な有機物質の選択的分解ができ、水や空気から極低濃度の有害物質を除去することができる。この技術は、あらゆる分野での浄化、有害物質除去に利用することができる。特に上水浄化や下水処理等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施例に係る複合多孔体の製造方法を示すものである。
【図2】本発明の実施例の複合多孔体と、比較例のシリカ系多孔体とに、窒素吸着させた場合の吸着脱着等温線を示す図面である。
【図3】本発明の実施例の複合多孔体と比較例のシリカ系多孔体とについてのXRD測定結果を示す図面であり、図3(a)が低角側、図3(b)高角側のXRD測定結果を示している。
【図4】4-n-プロピルフェノールと4-n-ヘプチルフェノールとを含む溶液に、本発明の実施例の複合多孔体であるMPS-TiO(15wt%)を添加したときの、それぞれの有機物質の濃度変化を示す図面である。
【図5】4-n-プロピルフェノールと4-n-ヘプチルフェノールとを含む溶液に、本発明の実施例の複合多孔体であるMPS-TiO(30wt%)を添加し(図5(a))、あるいは、MPSとTiOとを別に添加し(図5(b))、光照射したときの、それぞれの有機物質の濃度変化を示す図面である。
【図6】4-n-プロピルフェノールと4-n-ヘプチルフェノールとを含む溶液に、本発明の実施例の複合多孔体であるMPS-TiO(60wt%)を添加し、光照射したときの、それぞれの有機物質の濃度変化を示す図面である。
【図7】4-n-プロピルフェノールと4-n-ヘプチルフェノールとを含む溶液に、本発明の実施例の複合多孔体であるMPS-TiO(80wt%)を添加し(図7(a))、あるいは、MPSとTiOとを別に添加し(図7(b))、光照射したときの、それぞれの有機物質の濃度変化を示す図面である。
【図8】種々のフェノール類有機物質を含む溶液に、本発明の実施例の複合多孔体を添加し(図8(a))、あるいは、MPSとTiOとを別に添加し(図8(b))、光照射したときの、それぞれの有機物質の濃度変化を示す図面である。
【図9】種々のアニリン類有機物質を含む溶液に、本発明の実施例の複合多孔体を添加し(図9(a))、あるいは、MPSとTiOとを別に添加し(図9(b))、光照射したときの、それぞれの有機物質の濃度変化を示す図面である。
【図10】種々のアニリン類有機物質を含む溶液に光活性物質を添加して、光照射を行ったときの、各有機物質の濃度変化を示すグラフであり、(a)は、本発明の実施例の複合多孔体(MPS(10)-TiO)を光活性物質として添加した場合のグラフを示しており、(b)は、光活性物質としてMPS(10)とTiOとを機械的に混合した混合物を添加した場合のグラフを示している。
Drawing
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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