TOP > 国内特許検索 > 有機ハロゲン化合物の水熱酸化処理方法及びその触媒 > 明細書

Specification :有機ハロゲン化合物の水熱酸化処理方法及びその触媒

Country 日本国特許庁(JP)
Gazette 特許公報(B2)
Patent Number 特許第5901791号 (P5901791)
Date of registration 平成28年3月18日(2016.3.18)
Date of issue 平成28年4月13日(2016.4.13)
Title of the invention, or title of the device 有機ハロゲン化合物の水熱酸化処理方法及びその触媒
IPC (International Patent Classification) C02F   1/72        (2006.01)
B01J  35/04        (2006.01)
B01J  23/72        (2006.01)
FI (File Index) C02F 1/72 ZABZ
B01J 35/04 B
B01J 23/72 M
Number of claims or invention 6
Total pages 12
Application Number 特願2014-548500 (P2014-548500)
Date of filing 平成25年11月1日(2013.11.1)
International application number PCT/JP2013/079676
International publication number WO2014/080739
Date of international publication 平成26年5月30日(2014.5.30)
Application number of the priority 2012254011
Priority date 平成24年11月20日(2012.11.20)
Claim of priority (country) 日本国(JP)
Date of request for substantive examination 平成27年4月8日(2015.4.8)
Patentee, or owner of utility model right 【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
Inventor, or creator of device 【氏名】米谷 紀嗣
Representative 【識別番号】100151965、【弁理士】、【氏名又は名称】松井 佳章
【識別番号】100103436、【弁理士】、【氏名又は名称】武井 英夫
【識別番号】100108693、【弁理士】、【氏名又は名称】鳴井 義夫
Examiner 【審査官】金 公彦
Document or reference 特表2007-514515(JP,A)
国際公開第2012/133006(WO,A1)
特開2001-149958(JP,A)
米国特許出願公開第2009/0250404(US,A1)
独国特許出願公開第4118626(DE,A1)
特開2011-072692(JP,A)
特開平06-023375(JP,A)
特開2001-232379(JP,A)
Field of search C02F 1/70- 1/78
B01J 21/00-38/74
DWPI(Thomson Innovation)
Scope of claims 【請求項1】
有機ハロゲン化合物を分解処理する方法において、酸化銅(I)(CuO)からなる触媒及び過酸化水素の存在下に、有機ハロゲン化合物を圧力0.1~50MPa、温度100℃から200℃に加熱して、フェントン法を利用した水熱酸化反応を行わせることを特徴とする有機ハロゲン化合物の分解処理方法。
【請求項2】
有機ハロゲン化合物を120℃から200℃に加熱することを特徴とする請求項1に記載の有機ハロゲン化合物の分解処理方法。
【請求項3】
水熱酸化反応を行わせる反応器内の圧力が、加熱温度での水の平衡蒸気圧以上であってその近辺圧力であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機ハロゲン化合物の分解処理方法。
【請求項4】
前記酸化銅(I)(CuO)からなる触媒が、多孔状焼結体であり、反応容器内に保持固定された状態で水熱酸化反応を行わせることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物の分解処理方法。
【請求項5】
前記請求項1~4のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物の分解処理方法で使用する触媒であって、該触媒が酸化銅(I)(CuO)からなる触媒であることを特徴とする水熱酸化反応触媒。
【請求項6】
前記酸化銅(I)(CuO)からなる触媒が、多孔状焼結体であることを特徴とする請求項5に記載の水熱酸化反応触媒。
Detailed description of the invention 【技術分野】
【0001】
本発明は、フェントン法を利用した有機ハロゲン化合物の水熱酸化処理方法及びその処理方法に用いる触媒に関するものであり、詳しくは、クロロベンゼン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、PCB(polychlorinated biphenyl)、ダイオキシンなどの有機塩素化合物、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロブタン、クロロジフルオロメタンなどのフッ素化炭化水素類、ペルフルオロアルキルスルホン酸、ペルフルオロアルキルカルボン酸などのフッ素系界面活性剤、ペルフルオロポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系潤滑油などの有機フッ素化合物を含む有機ハロゲン化合物を分解して無害化する処理方法及びその処理方法に用いる触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
有機塩素化合物には種々の化合物が存在するが、いずれの化合物も環境面や健康面からさまざまな問題点が指摘されており、有効な分解処理方法が切望されているところである。
ハイテク工場を始めとする各種事業所から排出される排水や洗浄液はトリクロロエチレン等の有機塩素化合物やフッ素系界面活性剤、フッ素系潤滑剤などの有機フッ素化合物で汚染されていることが多い。これらの排水や洗浄液に含まれる有機ハロゲン化合物による土壌汚染、地下水汚染などの環境問題も懸念されるところであり、さらに、それらの化合物による中枢神経障害や肝機能障害の可能性も指摘されているところである。また、フッ素化炭化水素類はオゾン層破壊の原因物質として指摘されているものであり、それらの無害化も課題となっている。
【0003】
PCBは過去において変圧器の電気絶縁油(トランス油)として使用されていたが、その有害性が認識されるようになってからはその使用が禁止され、それまで使用されていたPCBは、まとめて所定の場所に保管されている。
そして、そのPCBの一部は燃焼方法により処理されたことがあるものの、無害化することは必ずしも容易ではないのが実情である。
また、ダイオキシン類はポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)をまとめてダイオキシン類と呼んでおり、2つのベンゼン核が酸素を介して結合した構造を持つ化合物でベンゼン核に結合する塩素の数とその結合位置で異なる多数の種類が存在し、ごみ焼却炉などから生成する毒性を有する化合物である。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2001-29969号公報
【特許文献2】特開2006-231119号公報
【特許文献3】特開平5-212389号公報
【特許文献4】特開平11-262780号公報
【0005】

【非特許文献1】Savare P.E.,Organic chemical reactions in supercritical water,Chem.Rev.99,603-621(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の有機ハロゲン化合物、例えば、ハロゲン化炭化水素等で汚染された
排水や洗浄液を処理する場合、比較的安価な排水処理技術である凝集沈殿・濾過処理法、活性炭吸着法、生物分解処理法などが用いられることが多いが、これらの方法では有機ハロゲン化合物を完全に取り除くことはできない。
上記方法以外では、オゾン・紫外線処理法(特許文献1)や水熱酸化法(非特許文献1)などが用いられることもあるが、これらの方法はいずれも設備が高価であり、工程も複雑となることから運転コストも高価なものとなる。
【0007】
PCB、ダイオキシン等の有害な難分解性有機塩素化合物の処理方法としては、高温下で燃焼する方法、活性炭で吸着する方法、放射線照射方法、過酸化物による化学的処理方法、酸化チタンを用いた光触媒法、超臨界水酸化法、水熱酸化法、フェントン法、超音波処理法、微生物処理方法などが排水処理の場合と同様に検討されているが、設備コスト、運転コスト、難分解性有機塩素化合物の分解率などの点において、なんらかの問題を含んでおり、必ずしも満足できるものではないのが実情である。また、上述のとおり、フッ素化有機化合物の無害化処理も課題となっている。
【0008】
上記の方法の中では、安全かつ迅速に分解処理可能な「超臨界水酸化法」、すなわち、気液の臨界点(374℃、22.1MPa)を超えた水を反応場として用いる方法、さらに、臨界点以下も含む広い温度圧力領域で高温高圧水を反応場に用い有害物質を酸化分解する「水熱酸化法」が注目されている。
また、鉄イオンと過酸化水素が反応し、高い酸化分解能力を有する水酸化ラジカルを生成するフェントン反応を汚染水などの処理に応用するフェントン法も注目されている技術である。
【0009】
しかし、有機ハロゲン化合物を完全に分解するには、通常、超臨界水酸化法で採用する臨界点(374℃)以上の反応温度を必要とし、そのため、多量のエネルギーを消費するだけでなく、高温高圧条件に耐えるように複雑かつ高価な装置を設計しなければならず、使用中の劣化が激しく装置寿命もかなり短くなる。
そこで、水熱酸化法では、その反応温度を下げるためにチタニア及びアルミナにルテニウム、パラジウムなどの貴金属を担持した触媒、白金、ゼオライトのような触媒(特許文献2)、チタン、ケイ素、ジルコニウムまたはセリウムにマンガン、鉄、コバルト、銅などの遷移金属を含有させた触媒(特許文献3)が検討されてきており、後者の触媒を使用した場合では、反応温度250℃でトリクロロエチレンを70~90%除去することに成功している。
【0010】
しかし、上記の従来技術では反応温度を大幅に下げて、特に反応温度を200℃以下に下げて、かつ、難分解性有機ハロゲン化合物を完全分解することには未だ成功しておらず、必ずしも満足できるものとは言えないのが実情である。
この反応温度が200℃以下であることは、装置の簡素化や長寿命化を実現するための重要な目安となるものである。
本発明者は、これまでに銅をドープした三酸化タングステンや二酸化チタンを触媒に用い、反応温度200℃でクロロベンゼンの完全分解に成功し、すでに特許出願を行なっている(特願2011-72548号)。
【0011】
しかし、上記出願発明では、長時間処理を行うと触媒にドープされた銅が徐々に溶出し、触媒活性が低下するという問題点があり、また、触媒調整法も複雑であり、一層の簡素化が求められているところであり、反応温度についても、より低温領域での分解反応を実施できる触媒系が求められている。
一方、フェントン法によって有機ハロゲン化合物を分解処理する試みも行われており、フェントン法をベースに鉄または銅化合物を担持したゼオライトを触媒に用いて有機ハロゲン化合物を分解処理する手法が提案されている(特許文献4)。
しかし、この方法の実施例では、銅化合物として塩化銅(II)を用いるものは、3日間に及ぶ長時間の反応でも除去率は90%程度にとどまっており、ハイテク工場などで多量に排出される廃液・排水などを処理するには、より一層短時間で迅速に処理するできる能力が求められている。
【0012】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、大きな設備コストや運転コストを必要とせず、効率よく有機ハロゲン化合物を分解処理して無害化することが可能なフェントン法を利用した有機ハロゲン化合物の水熱酸化処理方法及びその処理方法に用いる触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の有機ハロゲン化合物の分解方法では、フェントン法を利用した水熱酸化方法による処理において、独自に見出した酸化銅触媒を用いることにより、従来必須であった高温反応条件が不要となり、大幅に低下した反応温度での処理が可能となることで、処理時の消費エネルギーの大幅な削減、装置の簡素化と長寿命化を実現したものである。
【0014】
本発明では、酸化銅をベースとする触媒を用いることで、銅イオンと過酸化水素のフェントン型反応により高い酸化分解能力を有する水酸化ラジカルを反応場中に生じさせ、これにより有機ハロゲン化合物の水熱酸化反応を促進させるものである。
この方法により反応温度を200℃以下に下げても有機ハロゲン化合物をほぼ100%の分解率で処理することが可能になり、従来例に比べて、装置の簡素化や長寿命化等において大きな改善効果を有するものである。
【0015】
さらに、処理時間も従来のフェントン法と比べて格段に短くなるので(約2分間)、多量の廃液・排水処理を可能とするものである。
本発明のポイントは、酸化銅(I)、酸化銅(II)等の酸化銅を触媒に使用することにある。酸化銅そのものを触媒に使用することで、触媒調整法が格段に簡素化されると同時に、触媒活性を長時間維持することが可能になった。
なお、処理時における触媒の使用法には、排水や廃液に触媒を直接懸濁させて使用する方法と、反応器内に触媒を充填・固定する方法がある。ここで、後者の方法を採用する場合、触媒を不活性雰囲気中650℃で約1時間加熱し多孔状焼結体とすることで、触媒の活性を失うことなく、反応器内での触媒と反応基質との良好な接触を長時間安定して維持することが可能である。
【0016】
特に、酸化銅(I)の触媒活性は極めて高く、反応温度を133℃まで下げてもクロロフェノールをほぼ100%分解することが可能となった。
また、反応器内圧力を反応温度における水の平衡蒸気圧直上まで下げてもクロロフェノールを効率よく分解できることが判った。具体例を挙げて説明すると、170℃における水の平衡蒸気圧は約0.8 MPaであるが、反応温度170℃、圧力0.9 MPaでクロロフェノールをほぼ100%分解することが可能であった。
本発明により、従来、有機ハロゲン化合物の分解処理に必要であった高温高圧反応条件が不要になるため、処理時の大幅な消費エネルギー低減、装置の簡素化と長寿命化を実現できることが期待される。
【0017】
なお、フェントン法では、上記の酸化銅以外にも様々な銅化合物が触媒として使用でき、それらの銅化合物としては、例えば、硝酸銅、塩化銅、硫酸銅などが挙げられるが、本発明においては酸化銅を使用することにより、より好ましい結果が得られる。
具体的には、本発明は、(1)有機ハロゲン化合物を分解処理する方法において、酸化銅からなる触媒及び過酸化水素の存在下に、有機ハロゲン化合
物を100℃から200℃に加熱して、フェントン法を利用した水熱酸化反応を行わせることを特徴とする有機ハロゲン化合物の分解処理方法である。
また、(2)有機ハロゲン化合物を120℃から200℃に加熱することを特徴とする(1)に記載の有機ハロゲン化合物の分解処理方法である。
また、(3)水熱酸化反応を行わせる反応器内の圧力が、加熱温度での水の平衡蒸気圧以上であってその近辺圧力であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の有機ハロゲン化合物の分解処理方法である。
【0018】
また、(4)前記酸化銅からなる触媒が、酸化銅(I)又は/及び酸化銅(II)からなる触媒であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物の分解処理方法である。
さらに、(5)前記酸化銅からなる触媒が、多孔状焼結体であり、反応容器内に保持固定された状態で水熱酸化反応を行わせることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物の分解処理方法である。
また、(6)前記(1)~(5)のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物の分解処理方法で使用する触媒であって、該触媒が酸化銅からなる触媒であることを特徴とする水熱酸化反応触媒である。
また、(7)前記酸化銅からなる触媒が、酸化銅(I)又は/及び酸化銅(II)からなる触媒であることを特徴とする(6)に記載の水熱酸化反応触媒である。
また、(8)前記酸化銅からなる触媒が、多孔状焼結体であることを特徴とする(6)又は(7)に記載の水熱酸化反応触媒である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単な装置を用いた短時間の処理で、有機ハロゲン化合物を効率良く分解処理することが可能である。酸化銅触媒、すなわち、酸化銅(I)又は/及び酸化銅(II)からなる触媒の存在下、中でも酸化銅(I)からなる触媒の存在下で水熱反応処理を実施することにより、さらに短い滞留時間で効率的に有機ハロゲン化合物を分解処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】水熱酸化反応装置の概略図である。
【図2】他の水熱酸化反応装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の処理方法では、有機ハロゲン化合物を含む被処理水を圧力ポンプにより反応器内に導入し、さらに、酸化銅触媒、過酸化水素を反応器内に添加し、圧力0.1~50MPa、好ましくは、0.3~30MPa、温度20~200℃、好ましくは100~200℃で、さらに好ましくは120~200℃で1~5分、フェントン法を利用した水熱酸化反応を連続的に行なう。
水熱酸化反応器内圧力を反応温度における水の平衡蒸気圧以上に設定した場合、有機ハロゲン化合物を効率よく分解することが可能になる。特に反応装置の簡素化の観点からは、圧力を平衡蒸気圧直上、すなわち、平衡蒸気圧以上であってその近辺圧力に設定することが好ましい。ここで、近辺圧力とは、平衡蒸気圧から概ね1MPa以内の圧力を指す。

有機ハロゲン化合物の分解反応に必要な過酸化水素量は化学量論的に決まるが、実際には、有機ハロゲン化合物の完全酸化に必要な化学量論量の概ね80~100%が好ましい範囲である。
触媒使用量は1~10g/Lの範囲が好ましく、1g/L以下の場合は活性が不十分であり、また、10g/L以上使用しても活性に差がなく、反応操作も難しくなる。

【0022】
処理対象の有機ハロゲン化合物の例としては、以下の化合物を挙げることができる。
例えば、有機塩素化合物の例としては、1,1-ジクロロエチレン、ジクロロメタン、トリハロメタン、トランス-1,2-ジクロロエタン、シス-1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、1,1,1-トリクロロエタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、トリクロロエタン、1,2-ジクロロプロペン、ブロモジクロロメタン、シス-1,3-ジクロロプロペン、トランス-1,3-ジクロロプロペン、1,1,2-トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジブロモジクロロメタン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼンなどの塩素化炭化水素、また、クロロフェノール、DDT、BHC、PCB、ダイオキシン類などが挙げられる。
また、有機フッ素化合物としては、例えば、パーフルオロ炭化水素類、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンなどのHFC類、クロロジフルオロメタン、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタンなどの塩素化フッ素化炭化水素類を含むフッ素化炭化水素類、さらに、ペルフルオロアルキルスルホン酸、ペルフルオロアルキルカルボン酸などに代表されるフッ素系界面活性剤、ペルフルオロポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレンなどに代表されるフッ素系潤滑剤が挙げられるが、有機塩素化合物、有機フッ素化合物ともこれらに限定されない。

【0023】
フェントン法では触媒として、鉄化合物以外に酸化銅(I)、酸化銅(II)、硝酸銅、塩化銅及び硫酸銅等の銅化合物が使用できるが、本発明においては、これらの銅化合物の中で、酸化銅(I)、酸化銅(II)が、本発明において好ましく使用でき、特に酸化銅(I)が好ましく使用できる。また、これらの酸化銅としては、市販のものが使用できるので、従来技術に比べて、触媒調整を格段に簡素化することができる。
なお、触媒を反応器に充填・固定する際は、反応基質との良好な接触を維持するため、触媒を多孔状焼結体として使用することが好ましい。

【0024】
一般に、水熱酸化反応では、酸化剤としてオゾン、酸素、過酸化水素などが使用できるが、本発明の水熱酸化反応では、触媒として酸化銅を使用するので、酸化剤に過酸化水素を用いることで、酸化力の強いヒドロキシラジカル(・OH)を発生するフェントン反応を利用できるため好ましい結果が得られる。

【0025】
酸化剤に過酸化水素を用いた場合の分解率向上のメカニズムは、必ずしも明らかではないが、概ね以下のとおりのものと考えられる。
水熱酸化法による酸化分解は、酸化剤である過酸化水素の熱分解(式1)により生成したヒドロキシラジカル(・OH)が有機ハロゲン化合物を攻撃することで進行する。

+ △ → 2・OH (1)


【0026】
さらに、本発明では触媒に酸化銅を使用することから、銅と過酸化水素との間でフェントン反応が進行し、ヒドロキシラジカルの生成が一層促進されるものと考えられる。
その反応は、以下の式(2)及び(3)で表される反応である。

【0027】

Cu(II) + H→ Cu(I)+ HO・+ H (2)

Cu(I)+ H → Cu(II)+ HO- + HO・(3)

【0028】
本発明の水熱酸化法では、触媒として酸化銅(I)を用いた場合に特に触媒活性が高く、反応温度が130℃程度であっても、短時間で有機ハロゲン
化合物をほぼ100%分解処理することが可能である。
反応器内圧力は反応温度における水の平衡蒸気圧以上であればよく、特に平衡蒸気圧直近の圧力に設定した場合、反応器の大幅な簡素化が可能である。
また、処理時に有害な副生成物が生じないか検証するため、TOC分析を行った。その結果、TOC分解率は80%~90%に達しており、分解された有機ハロゲン化合物の大部分は水や二酸化炭素にまで無機化されていることが明らかとなった。すなわち、本発明の水熱酸化法では、有害な副生成物を抑制することが可能である。
さらに、触媒を反応器に充填・固定する場合、触媒を多孔状焼結体とすることで活性を失うことなく、反応器内での触媒と反応基質との良好な接触を長時間安定して維持することが可能である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を示してさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1及び比較例1,2で使用した反応装置は、図1の概略図に示す装置であり、実施例2~4で使用した反応装置は、図2の概略図に示す装置である。
なお、以下の実施例1~3では、1mMの4-クロロフェノール(有機塩素化合物:以下、クロロフェノールと表記する)を含有する水溶液を試料として用いた。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
[触媒]
キシダ化学(株)より購入した酸化銅(I)および酸化銅(II)をそのまま触媒として使用した。
【実施例】
【0031】
[有機ハロゲン化合物の分解]
有機ハロゲン化合物のモデル物質としてクロロフェノールを用い、フェントン法を利用した水熱酸化法による分解処理を行った。
1mMのクロロフェノール水溶液に、5.6 mg/Lの酸化銅(I)又は3.1 mg/Lの酸化銅(II)と酸化剤として10mMの過酸化水素を加えた試料を調製し、HPLCポンプとセパレーターを用いて圧力30 MPa、流速0.5cm/minでハステロイ製反応器に連続注入した。
反応温度を室温~200℃の間で変化させた。
【実施例】
【0032】
なお、反応器内容積は約1cmなので、反応時間はおよそ2minである。
反応器を通過した試料は冷却系とフィルターを経て、圧力調整弁の出口から回収された。反応後の試料中のクロロフェノール濃度を測定するため、ニトロベンゼンで目的物質を抽出した後、ガスクロマトグラフィー(FID検出器)で定性定量分析を行った。
各反応温度(20~200℃)におけるクロロフェノールの分解率を表1に示す。
反応温度200℃では酸化銅(I)(CuO)と酸化銅(II)(CuO)のどちらを用いてもほぼ100%の分解率を達成した。とくに酸化銅(I)(CuO)は活性が高く、反応温度が133℃であっても、166℃や200℃の場合と同様に、ほぼ100%の分解率を達成することができた。
【実施例】
【0033】
[比較例1,2]
比較のために、触媒を使用せず酸化剤も加えなかった比較例1(無触媒・無酸化剤)と酸化剤を添加しているが触媒を使用しなかった比較例2(H)の結果も合わせて表1に示す。
【実施例】
【0034】
上記の実験結果から明らかなように、本発明では、触媒に酸化銅を用いることにより、無触媒・無酸化剤の比較例1、無触媒の比較例2に比べ、酸化
銅(I)、酸化銅(II)のいずれの場合においても優れた分解能力を示している。
特に、触媒に酸化銅(I)(CuO)を用いた場合は、200℃よりもはるかに低い反応温度133℃、反応時間2minで、ほぼ100%の分解率を達成することができ、反応温度を大幅に下げることが可能なった。
また、本発明では、酸化銅そのものを触媒として用いるので、従来技術に比べて触媒調整法が格段に簡素化されると同時に、長時間処理による触媒の劣化を防ぐことも可能になった。
これらのことにより、プロセスのさらなる省エネルギー化、反応装置のさらなる簡素化と長寿命化を実現することができる。
【実施例】
【0035】
[実施例2]
図2に示す触媒充填床流通式反応装置を用いクロロフェノールの分解処理を行った。本装置は,触媒を充填した管型反応器に試料溶液を連続注入し,溶液中の汚染物質を分解処理する構造になっている。反応器はチタン製チューブ(外径6.0mm,内径4.0mm,長さ25cm)で,内部に触媒である酸化銅(I)粉末4 gを充填し,両端にインラインフィルター(SS-4FWS-05, Swagelok Co.)を装着した。
なお、触媒が反応器から漏れ出すことを防止するため,触媒を650℃で軽く焼結した。
また、温度を一定に保つため反応器全体を塩浴装置(東洋高圧(株),TSV-3)内に浸漬した。
【実施例】
【0036】
試料溶液はクロロフェノール(1 mM),過酸化水素(14 mM)を脱イオン蒸留水に溶解したものであり,これをHPLCポンプを用いて反応器へ連続注入した。反応後の試料溶液は冷却系と背圧弁を通って反応系外へ排出される。反応後の試料中のクロロフェノールをニトロベンゼンで抽出し、実施例1と同様の方法で定性定量分析を行った。また、試料中の全有機炭素量(TOC)をTOC測定装置(TOC-V CSH,島津製作所)を用いて測定した。TOCの分解率を(TOC-TOC)/ TOC×100から算出した。
【実施例】
【0037】
TOCは未反応試料中のTOC、TOCは反応後試料中の残存TOCである。
反応温度200℃,圧力10MPa,流量1.0 cm/minの条件で,試料溶液を22時間連続処理した場合の、クロロフェノール分解率とTOC分解率の経時変化を表2に示す。クロロフェノール分解率はほぼ100%で一定であり、TOC分解率も85~90%前後を推移している。22時間の連続処理後も酸化銅(I)は高い活性を維持しており,チタン製反応器にも異常はまったく見られなかった。以上の結果より、本手法が工業的応用において非常に有用であることが確認された。
【実施例】
【0038】
[実施例3]
反応器内の圧力の最適条件を調査するため,反応温度200℃,圧力1.6 MPa,流量1.0 cm/minおよび,反応温度170℃、圧力0.
9 MPa,流量1.0 cm/minの条件でクロロフェノールの分解処理を行った。これらの反応条件は水の平衡蒸気圧曲線近傍の高圧側に位置している。
なお,用いた装置や分析方法は実施例2と同じである。
表3と表4に各反応条件におけるクロロフェノール分解率とTOC分解率の経時変化を示す。反応温度200℃,圧力1.6 MPaではクロロフェノール分解率は約96%であり、TOC分解率も80%前後を推移している。反応条件を170℃、0.9 MPaまで下げた場合でもクロロフェノール分解率はほぼ100%に達した。
また、TOC分解率は処理開始直後で75%とやや低いものの、処理時間が長くなるにつれて上昇し、最終的には83%に達した。以上の結果は、反応器内圧力を反応温度における平衡蒸気圧以上に設定すれば十分であることを示している。
【実施例】
【0039】
【表1】
JP0005901791B2_000002t.gif
表1 各反応温度、条件におけるクロロフェノールの分解率
【実施例】
【0040】
【表2】
JP0005901791B2_000003t.gif
表2 クロロフェノールの分解率とTOC分解率の経時変化
【実施例】
【0041】
【表3】
JP0005901791B2_000004t.gif
表3 クロロフェノールの分解率とTOC分解率の経時変化
(反応温度200℃,圧力1.6 MPa)
【実施例】
【0042】
【表4】
JP0005901791B2_000005t.gif
表4 クロロフェノールの分解率とTOC分解率の経時変化
(反応温度170℃,圧力0.9 MPa)
【実施例】
【0043】
[実施例4]
本発明が多様な有機ハロゲン化合物の処理に適用できることを実証するため、トリクロロエチレン(3mM)、過酸化水素(10mM)を脱イオン蒸留水に溶解した試料溶液の分解処理を行った。用いた装置や分析方法は実施例2と同じである。
ただし、試料溶液からトリクロロエチレンが揮発するのを防ぐため、試料溶液および反応後に回収した溶液を氷冷しながら実験を行った。反応条件は、反応温度200℃、圧力10MPa、流量1.0cm/minである。
トリクロロエチレンの分解率は90~98%を推移し、処理時間が長くなるにつれて上昇する傾向を示した。この結果より、本発明によってトリクロロエチレンの分解処理が可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の有機ハロゲン化合物の分解方法は、水熱酸化方法による処理においてフェントン反応を利用し、新たに見出した酸化銅触媒を用いることにより、従来必須であった高温反応条件が不要となり、大幅に低下した反応温度での処理を可能としたことで、処理時の消費エネルギーの大幅な削減、装置の簡素化と長寿命化を実現したものである。
その結果、大きな設備コストや運転コストを必要とせず、効率よく有機ハロゲン化合物を水熱酸化分解処理して無害化することが可能となり、排水処理施設や有機ハロゲン化合物の分解処理施設での活用が期待できる。
Drawing
【図1】
0
【図2】
1