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Specification :アミノ酸結晶の製造方法及びタンパク質結晶の製造方法

Country 日本国特許庁(JP)
Gazette 特許公報(B1)
Patent Number 特許第5924723号 (P5924723)
Date of registration 平成28年4月28日(2016.4.28)
Date of issue 平成28年5月25日(2016.5.25)
Title of the invention, or title of the device アミノ酸結晶の製造方法及びタンパク質結晶の製造方法
IPC (International Patent Classification) C07C 227/42        (2006.01)
C07C 229/08        (2006.01)
C07K   1/14        (2006.01)
FI (File Index) C07C 227/42
C07C 229/08
C07K 1/14
Number of claims or invention 2
Total pages 7
Application Number 特願2015-551082 (P2015-551082)
Date of filing 平成27年7月27日(2015.7.27)
International application number PCT/JP2015/071240
Application number of the priority 2014176697
Priority date 平成26年8月31日(2014.8.31)
Claim of priority (country) 日本国(JP)
Date of request for substantive examination 平成27年11月6日(2015.11.6)
Patentee, or owner of utility model right 【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人 千葉大学
Inventor, or creator of device 【氏名】尾松 孝茂
【氏名】宮本 克彦
Accelerated examination, or accelerated appeal examination 早期審査対象出願
Representative 【識別番号】100121658、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 昌義
Examiner 【審査官】品川 陽子
Document or reference 国際公開第2013/046257(WO,A1)
国際公開第2013/055859(WO,A1)
JEFFRIES, G. M. et al.,J. Phys. Chem. B,2007年,111,p.2806-2812
GARETZ, B. A. and MATIC, J.,PHYSICAL REVIEW LETTERS,2002年,89(17),p.(175501-1)-(175501-4)
滝澤 隼 他,光波の角運動量転写によるシリコン螺旋円錐ナノ結晶,第61回応用物理学会春季学術講演会 講演予稿集,2014年 3月,p.04-271(19p-D1-13)
Field of search C07C 227/42
C07C 229/08
C07K 1/30
CAplus/CASREACT(STN)
JSTPlus(JDreamIII)

Abstract 光渦の新たな応用の可能性を提供する。そのため、本発明の一観点にかかるアミノ酸結晶の製造方法は、光渦を、アミノ酸飽和溶液に照射して、アミノ酸飽和溶液中にアミノ酸結晶を形成することを特徴とする。また、本観点において、限定されるわけではないが、アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリン、並びにこれらの誘導体、の少なくともいずれかの少なくともいずれかであることが好ましい。
Scope of claims 【請求項1】
光渦を、グリシン飽和溶液に照射して、前記グリシン飽和溶液中にグリシンの結晶を形成する、グリシン結晶の製造方法。
【請求項2】
前記光渦は、円偏光である請求項1記載のグリシン結晶の製造方法。
Detailed description of the invention 【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸結晶の製造方法及びタンパク質結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光渦は、位相特異点に由来する角運動量(軌道角運動量)及びドーナツ型強度分布という特徴的な性質をもった光波である。
【0003】
光渦の代表例としては、例えばラゲールガウスビームを挙げることができる(例えば下記非特許文献1参照)。ラゲールガウスビームは、円筒座標系における波動方程式の固有解であり、回転中心の周りで1波長伝搬するごとに2πの整数倍だけ位相が回転する周期的境界条件を満たす。このため、量子数L(l=1,2,3…)を用いて軌道角運動量の大きさを表すことが可能である。光渦の波面はらせん形状を有しており、この法線方向と光の伝搬方向のベクトル差で与えられる方向に軌道角運動量が働く。
【0004】
また光渦は、光の放射圧を利用した光マニピュレーション、位相特異点を利用した高解像度顕微鏡、軌道角運動量を積極的に利用した光渦アブレーション加工などに利用することができ、今後の工業的な利用が大きく期待される。
【0005】
光渦を発振させる公知の技術として、例えば下記特許文献1に記載の装置を例示することができる。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】WO2012/169578
【0007】

【非特許文献1】L. Allen, M. W. Beijersbergen, R. J. C. Spreeuw, and J. P. Woerdman, “Orbital angular momentum of light and the transformation of Laguerre-Gaussian laser modes,” Phys. Rev. A 45, 8185-8189 (1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1、非特許文献1に記載の技術は光渦の発振方法そのものに主眼をおいた技術であり、上記に列挙する光マニピュレーション等を含め、光渦を用いる応用については検討の余地が残る。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、光渦の新たな応用の可能性を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題について本発明者らが鋭意検討を進めていたところ、アミノ酸飽和溶液又はタンパク質飽和溶液に光渦を照射すると、このアミノ酸飽和溶液中又はタンパク質飽和溶液中にアミノ酸結晶体又はタンパク質結晶体が形成されることを発見し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の一観点にかかるアミノ酸結晶の製造方法は、光渦を、アミノ酸飽和溶液に照射して、アミノ酸飽和溶液中にアミノ酸結晶を形成することを特徴とする。
【0012】
また本観点において、限定されるわけではないが、アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリン、並びにこれらの誘導体、の少なくともいずれかの少なくともいずれかであることが好ましい。
【0013】
また本観点において、光渦は円偏光であることが好ましい。
【0014】
また本発明の他の一観点にかかるタンパク質結晶の製造方法は、光渦を、タンパク質飽和溶液に照射して、前記タンパク質飽和溶液中にタンパク質の結晶を形成することを特徴とする。
【0015】
また本観点において、光渦は、円偏光であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上、本発明により、光渦の新たな応用の可能性を提供することができる。また、本発明により提供されるアミノ酸結晶、タンパク質結晶は単結晶性が高く、他のアミノ酸結晶、タンパク質結晶の製造方法に比べ大きな単結晶を短時間で形成可能であり、これにより、医薬、化学、飼料、食品等の各用途に対する大きな寄与をもたらすことが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る光渦を発生させるための光渦レーザー発振装置の概略を示す図である。
【図2】実施例にかかるグリシンの結晶の写真図である。
【図3】比較例にかかるグリシンの結晶の写真図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の具体的な例示にのみ狭く限定されるものではない。
【0019】
本実施形態にかかるアミノ酸単結晶の製造方法は、円偏光光渦を、アミノ酸飽和溶液に照射して、アミノ酸飽和溶液中にアミノ酸単結晶を形成することを特徴とする。
【0020】
本実施形態において、「光渦」とは、上記のとおり、位相特異点に由来する角運動量(軌道角運動量)及びドーナツ型強度分布という特徴的な性質をもった光波をいう。
【0021】
光渦を発生させる方法としては、限定されるわけではないが、例えば図1で示すような光渦レーザー発振装置(以下「本レーザー装置」という。)を用いることができる。
【0022】
ここで図1は、本実施形態に係る光渦レーザー発振装置(以下「本レーザー装置」という。)1の光学系の概略を示す図である。本図で示すように、本レーザー装置1は、レーザー光B1を発するレーザー光源2と、レーザー光源2が発するレーザー光B1に基づき光渦B2を発する光渦発生部3と、光渦発生部3によって発生した光渦B2を円偏光B3にする1/4波長板4と、集光する集光部5と、を有する。
【0023】
本実施形態において、レーザー光源2は、上記の通りレーザー光B1を発することができるものである。レーザー光源2については、上記機能を有する限りにおいて限定されるわけではなく、YAGレーザー等の固体レーザー、色素レーザー、He-Neレーザー等のガスレーザー、LDレーザー等の半導体レーザー等を用いることができるがこれに限定されない。ただし、本実施形態においてレーザー光源2から放出される光の波長領域は、照射対象が光異性化反応を起こすことのできる波長範囲であることが好ましい。この波長範囲は材料によって適宜調整可能であるが、紫外領域から近赤外の領域にあることが好ましく、より具体的には350nm以上1.3μm以下の範囲にあることが好ましい。
【0024】
また本実施形態において、レーザー光源2は、連続波のレーザー光を発する連続発振レーザー光源であることが好ましい。連続波のレーザー光を用いることで、連続的に高分子に光渦を照射し続けることができる。パルス発振レーザー光であってもよいがこの場合は、光異性化反応を維持できるよう繰り返し周波数が十分に高いものであることが好ましい。
【0025】
また、本実施形態において、光渦発生部3は、レーザー光源2が発するレーザー光B1に基づき光渦B2を発することができるものであり、この限りにおいて限定されないが、例えば位相板、空間位相変調器、マルチモードエリアファイバー増幅器等を用いることができる。なお、レーザー光源2と、光渦発生部3とを一体にして直接光渦を発生させる構成としてもよい。光渦発生部において発生させる光渦はコヒーレントな光渦であることが特に好ましい。
【0026】
また本実施形態において、1/4波長板4は、光渦を円偏光B3にするために用いられるものである。既に光渦発生部3が円偏光となっている場合は省略することも可能である。本実施形態では、1/4波長板を設けることで、アミノ酸飽和溶液中にアミノ酸結晶を形成することができるようになる。
【0027】
また本実施形態において、集光部5は、光を集光し、アミノ酸飽和溶液7の表面に効率的に照射するために用いられるものである。集光部5の構造としては、円偏光となった光渦を効率的に照射することができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えば、顕微鏡対物レンズを含んで構成されていることが好ましい。顕微鏡対物レンズでビーム径を所望の径に調整することができる。
【0028】
なお、本実施形態では、上記構成のほか、アミノ酸飽和溶液を観測するための観測部6を設けてもよい。観測部6は、上記の機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えば、上記集光部5によって集光された光渦を分割し、一方をする光分割部材61と、アミノ酸飽和溶液から反射された光を観測するための撮像部材62と、を有していることが好ましい。なお、撮像部材62の例としては、限定されるわけではないがCCDカメラ等を例示することができ、更にこれにいわゆるパーソナルコンピュータ等の情報処理装置を接続し、画像処理することが好ましい。
【0029】
また、本実施形態において、「アミノ酸」とは、アミノ基及びカルボキシル基を備えた有機化合物であって、生体のタンパク質を構成する化合物及びその誘導体を含む。生体のたんぱく質を構成するいわゆるアミノ酸の例としては、上記の機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンを含む。
【0030】
また本実施形態において「アミノ酸飽和溶液」は、溶媒中にアミノ酸をその溶解度まで溶解した状態にあるものをいう。複数種のアミノ酸が溶解されている場合は、少なくともいずれかが溶解度まで溶解されたものであればよいが、いずれもが溶解度まで溶解されていてもよい。なお、ここでアミノ酸を溶解する溶媒としては水であることが好ましいが、アミノ酸を溶解することができる限りにおいてこれに限定されない。
【0031】
また、本実施形態において照射される光渦のエネルギーとしては、小さすぎるとアミノ酸結晶を形成することができず、高すぎると多結晶化して結晶性が低くなってしまうおそれがあるため、適切な範囲であることが好ましく、材料によって適宜調整可能であって限定されるわけではないが、1W以上1.5W以下の範囲であることが好ましい。
【0032】
また、本実施形態において光渦を照射する時間としては、結晶が形成される限りにおいて限定されず適宜調整可能である。特に本実施形態では短い場合は数十秒程度といった非常に短時間で単結晶性の高い結晶を得ることができる。
【0033】
本実施形態では、光渦を、アミノ酸飽和溶液に照射することで、アミノ酸飽和溶液中にアミノ酸結晶、より具体的には高い結晶性(単結晶性、結晶構造)の結晶を形成することができる。溶液中にアミノ酸結晶を形成する主たるメカニズムは推測の域ではるが、光渦の照射によって核が生成し、この核の公転運動によって水溶液中の濃度の均質化が起こり、単結晶性の高い結晶を飛躍的に向上させることができるものと考えられる。
【0034】
以上、本実施形態により、光渦の新たな応用の可能性を提供することができる。また、本発明により提供されるアミノ酸単結晶は、他のアミノ酸単結晶の製造方法に比べ大きな単結晶を短時間で形成可能であり、これにより、医薬、化学、飼料、食品等の各用途に対する大きな寄与をもたらすと期待される。
【0035】
また、本実施形態では、アミノ酸を例に説明しているが、アミノ酸を構成要素に含むタンパク質についても同様であり、上記の説明において「アミノ酸」とあるところを「タンパク質」と置き換えて発明の実施をすることが可能である。なおタンパク質の場合、例えばリゾチーム等、様々なタンパク質を結晶化させることが可能である。更に、三フッ化N,N-ジエチルアミノ硫黄(DAST)といった有機非線形結晶等の有機化合物についても高度な結晶化が期待できる。
【実施例】
【0036】
本件発明について実験を行い、その効果を確認した。以下具体的に説明する。
【0037】
(グリシン飽和重水溶液)
まず、図1で示される光学系において、中心波長1064nmのNd:YVOレーザーを、螺旋状位相板(SPP)とλ/4板、対物レンズ(NA~0.65)を使用し、これらを通してグリシンを重水に溶解度まで溶解させたアミノ酸飽和重水溶液(プレパラート上に塗布)に照射した。アミノ酸飽和重水溶液に照射しているレーザーのスポットの径はφ3μmとした。また円偏光の向きと光渦の螺旋波面の向きは同じ方向に設定した。なお円偏光光渦は、SPPによって得られる軌道角運動量(l=-1又は1)とQWPによって得られるスピン角運動量(s=-1又は1)の総和である全角運動量(J=l+s)の大きさを変更して照射することができる構成となっている。
【0038】
そして、上記の構成において、アミノ酸飽和重水溶液中にアミノ酸を形成することができた。
この結果を図2にそれぞれ示しておく。
【0039】
この結果、光渦の照射を行った直後からアミノ酸の結晶析出が始まり、照射開始から数十秒程度で1mm×1mm程度のグリシンのα型単結晶を得ることができた。そしてその面方向モザイク性は0.5であり、非常に単結晶性の高い結晶を得ることができた。
【0040】
(比較例)
上記グリシンの例において、レーザーを直線偏光のガウスビームを用いた以外は同様の条件でアミノ酸の結晶の作成を試みた。この結果を図3に示しておく。この結果によると、アミノ酸は析出したが明らかに多結晶のものであった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、アミノ酸結晶の製造方法、タンパク質結晶の製造方法として産業上の利用可能性がある。
Drawing
【図1】
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【図2】
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【図3】
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