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Specification :極細フィラメントの多錘延伸装置

Country 日本国特許庁(JP)
Gazette 特許公報(B2)
Patent Number 特許第5696329号 (P5696329)
Publication number 特開2010-185162 (P2010-185162A)
Date of registration 平成27年2月20日(2015.2.20)
Date of issue 平成27年4月8日(2015.4.8)
Date of publication of application 平成22年8月26日(2010.8.26)
Title of the invention, or title of the device 極細フィラメントの多錘延伸装置
IPC (International Patent Classification) D02J   1/22        (2006.01)
B82B   1/00        (2006.01)
FI (File Index) D02J 1/22 301Z
B82B 1/00 ZNM
Number of claims or invention 11
Total pages 23
Application Number 特願2009-201657 (P2009-201657)
Date of filing 平成21年9月1日(2009.9.1)
Exceptions to lack of novelty of invention 特許法第30条第1項適用 平成20年度山梨大学工業化学科卒業論文発表会要旨集(平成21年3月2日)国立大学法人山梨大学発行第T05AA002頁に発表
特許法第30条第1項適用 平成20年度山梨大学工業化学科卒業論文発表会要旨集(平成21年3月2日)国立大学法人山梨大学発行第T05AA054頁に発表
特許法第30条第1項適用 高分子学会予稿集第58巻第1号(平成21年5月12日)社団法人高分子学会発行第1042頁に発表
特許法第30条第1項適用 高分子学会予稿集第58巻第1号(平成21年5月12日)社団法人高分子学会発行第1043頁に発表
特許法第30条第1項適用 繊維学会予稿集第64巻第1号(平成21年6月10日)社団法人繊維学会発行第241頁に発表
特許法第30条第1項適用 繊維学会予稿集第64巻第1号(平成21年6月10日)社団法人繊維学会発行第294頁に発表
Application number of the priority 2009007251
Priority date 平成21年1月16日(2009.1.16)
Claim of priority (country) 日本国(JP)
Date of request for substantive examination 平成24年9月3日(2012.9.3)
Patentee, or owner of utility model right 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
Inventor, or creator of device 【氏名】鈴木 章泰
【氏名】藤本 富士雄
Examiner 【審査官】宮澤 尚之
Document or reference 国際公開第2008/084797(WO,A1)
特開平04-256382(JP,A)
特開2007-056402(JP,A)
特開2008-297640(JP,A)
特開平09-277073(JP,A)
特開2006-057228(JP,A)
特開2003-166115(JP,A)
特開2001-348727(JP,A)
特開昭48-045612(JP,A)
Field of search D02G 1/00- 3/48
D02J 1/00-13/00
B23K 26/00-26/70
Scope of claims 【請求項1】
複数のオリフィスと、
前記複数のオリフィスを通過してきた複数の原フィラメントにレーザービームを照射するレーザービーム照射装置と、
前記複数のそれぞれの原フィラメントに、前記レーザービームを前記複数の原フィラメントに対して均一に照射する、ビームの中心部から周辺部にわたってほぼ同じ照射強度を有するフラットトップビームとするビーム整形素子と、
を備えたことを特徴とする極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置。
【請求項2】
前記フラットトップビームは、前記原フィラメントの通過する方向の広がりが、それと直角方向の広がりに比べて短いライン状のリニアフラットトップビームであることを特徴とする、請求項1に記載の極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置。
【請求項3】
前記均一に照射する手段が、前記複数の原フィラメントが、前記レーザービームの照射方向に対して、
重ならずに配置されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置。
【請求項4】
前記複数の原フィラメントが、ビーム幅の一端から他端まで、等間隔で配置されていることを特徴とする請求項3に記載の極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置。
【請求項5】
前記複数の原フィラメントに、前記フィラメントの流れる方向と直角方向に前記レーザービームを逐次照射する回転ポリゴンミラーを備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置。
【請求項6】
前記複数の原フィラメントに前記レーザービームを逐次照射する振動ガルバノミラーを備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置。
【請求項7】
前記レーザービームを複数回反射させる、前記複数の原フィラメントを挟んで設置されている複数のミラーを備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置。
【請求項8】
前記複数のミラーが平行に設置されている一対のミラーであることを特徴とする請求項7に記載の極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置。
【請求項9】
前記レーザービームを反射させるために、前記平行に設置されている一対のミラーに垂直なミラーをさらに備えたことを特徴とする請求項8に記載の極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置。
【請求項10】
前記平行に設置されている一対のミラーにビームを照射する第2のレーザービーム照射装置を備えたことを特徴とする請求項8又は9のいずれかに記載の極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置。。
【請求項11】
前記レーザービームが照射され延伸されたフィラメントを巻き取る巻取機を備えたことを特徴とする請求項1から10に記載の極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置。
Detailed description of the invention 【技術分野】
【0001】
本発明は、極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関し、特に炭酸ガスレーザービームを照射して超高延伸倍率を行うことにより、ナノフィラメントに至るまでに極細化を可能にした延伸装置において、簡便な手段で原フィラメントより多数の極細フィラメントの延伸を可能にした、マルチ(多錘)延伸装置に関し、さらにこれらの多錘延伸フィラメントから地合の均一な不織布を製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、繊維径が1μm未満、すなわちナノメータ(数ナノメータから数百ナノメータ)範囲のファイバーが、IT、バイオ、環境分野などの幅広い分野で、将来の革新的素材になると注目されている。そして、そのナノファイバーの製造手段として、エレクトロスピニング法(以下ES法と略す場合がある。)が代表的である(米国特許第1,975,504号、Journal of Applied Polymer Science、vol.95、p.193-200、2005年)。しかしこのES法は、ポリマーを溶剤に溶解する必要があることや、出来た製品も脱溶剤が必要であることから、製法において煩雑であり、また、フィラメントの分子配向がないこと、出来たファイバー集積体にダマやショットと呼ばれる樹脂の小さい固まりが混在するなど、品質的にも問題点が多かった。
【0003】
本発明人は、赤外線法により、分子配向を伴って、1,000倍以上という超高倍率の延伸倍率で極細フィラメントおよび不織布を得る手段について発明を行った(特開2003-166115、特開2004-107851、国際公開番号WO2005/083165A1など)。これらは、簡便な手段で、極細の分子配向したフィラメントおよびそれからなる不織布が得られた。また、これらを発展させ、さらにナノフィラメントの領域までに極細化を可能にした、極細フィラメントの製造手段を発明した(国際公開公報WO2008/084797A1)。本発明は、このナノフィラメントに至る極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸を連続して安定した製造を可能にする手段に関する。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】米国特許第1,975,504号明細書(第1-2頁、第1図、第4図)
【特許文献2】特開2003-166115号公報(第1-2頁、図4、図5)。
【特許文献3】特開2004-107851号公報(第1-2頁、図1,図3)。
【特許文献4】国際公開番号WO2005/083165A1(第1-2頁、図1,図3)
【特許文献5】国際公開公報WO2008/084797A1(第1-2頁、図1—3)
【0005】

【非特許文献1】鈴木章泰、他1名 「Journal of Applied Polymer Science」、vol.88、p.3279-3283、2003年、(米国)。
【非特許文献2】鈴木章泰、他1名 「Journal of Applied Polymer Science」、vol.92、p.1449-1453、2004年、(米国)。
【非特許文献3】鈴木章泰、他1名 「Journal of Applied Polymer Science」、vol.92、p.1534-1539、2004年、(米国)。
【非特許文献4】You Y., et, al 「Journal of Applied Polymer Science、vol.95、p.193-200、2005年、(米国)。
【非特許文献5】鈴木章泰、他1名 「European Polymer Journal」、vol.44、p.2499-2505、2008年、(英国)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記本発明人の従来技術をさらに発展させたものであって、その目的とするところは、特殊で高精度・高レベルな装置を必要とせずに、簡便な手段で容易にナノフィラメント領域に至る極細フィラメントからなるフィラメントのマルチ(多錘)延伸を可能にした延伸装置に関する。また、本発明は、これらのマルチ延伸において延伸されたフィラメントの集積体より地合の均一な不織布を得る装置に関する。さらに本発明は、これらのマルチ(多錘)において延伸されたフィラメントの集積体より糸状物を得る装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであって、原フィラメントの送出手段を有するP1気圧下の原フィラメント供給室と、この原フィラメント供給室に配設されており、原フィラメントがその中を通過するオリフィスと、オリフィスによって原フィラメント供給室と接続されており、このオリフィスを通過してきた原フィラメントが炭酸ガスレーザービームにより加熱されることによって延伸されるP2気圧下(P1>P2)の延伸室と、炭酸ガスレーザービームを放射する炭酸ガスレーザー発振装置とを具備している、極細フィラメントの製造装置において、原フィラメントが供給される多錘の原フィラメント供給手段と、炭酸ガスレーザー発振装置から照射される炭酸ガスレーザービーム形状を整形し、多錘の原フィラメントへ照射させるビーム整形素子と、延伸室において延伸されたフィラメントが集積される集積装置と、を有することを特徴とする、極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、前記オリフィスの出口における原フィラメントの流れる方向をz軸とし、前記ビーム整形素子を通過した前記炭酸ガスレーザービームの照射方向をy方向とした場合、ビーム整形素子によってもたらされるビームが、y方向とは直角方向(x方向)に少なくとも3倍に幅広いこと、即ち、z方向のビームの広がりをBz、x方向のビームの広がりをBxとすると、Bz<3Bxとするビーム整形素子である、前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、原フィラメントの送出手段を有するP1気圧下の原フィラメント供給室と、この原フィラメント供給室に配設されており、原フィラメントがその中を通過するオリフィスと、このオリフィスによって原フィラメント供給室と接続されており、オリフィスを通過してきた原フィラメントが炭酸ガスレーザービームにより加熱されることによって延伸されるP2気圧下(P1>P2)の延伸室と、炭酸ガスレーザービームを放射する炭酸ガスレーザー発振装置とを具備している、極細フィラメントの製造装置において、原フィラメントが供給される多錘の原フィラメント供給手段と、炭酸ガスレーザー発振装置から照射される炭酸ガスレーザービームを、オリフィスの出口における原フィラメントの流れる方向と直角方向に横切らせ、多錘の原フィラメントに照射させるポリゴンミラーと、延伸室において延伸されたフィラメントが集積される集積装置と、を有することを特徴とする、極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、原フィラメントの送出手段を有するP1気圧下の原フィラメント供給室と、原フィラメント供給室に配設されており、原フィラメントがその中を通過するオリフィスと、オリフィスによって原フィラメント供給室と接続されており、オリフィスを通過してきた原フィラメントが炭酸ガスレーザービームにより加熱されることによって延伸されるP2気圧下(P1>P2)の延伸室と、炭酸ガスレーザービームを放射する炭酸ガスレーザー発振装置とを具備している、極細フィラメントの製造装置において、原フィラメントが供給される多錘の原フィラメント供給手段と、炭酸ガスレーザー発振装置から照射される該炭酸ガスレーザービームをオリフィスの出口における原フィラメントの流れる方向と直角方向に横切らせ、多錘の原フィラメントに照射させるガルバノミラーと、延伸室において延伸されたフィラメントが集積される集積装置と、を有することを特徴とする、極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、原フィラメントの送出手段を有するP1気圧下の原フィラメント供給室と、原フィラメント供給室に配設されており、原フィラメントがその中を通過するオリフィスと、オリフィスによって原フィラメント供給室と接続されており、オリフィスを通過してきた原フィラメントが炭酸ガスレーザービームにより加熱されることによって延伸されるP2気圧下(P1>P2)の延伸室と、炭酸ガスレーザービームを放射する炭酸ガスレーザー発振装置とを具備している、極細フィラメントの製造装置において、原フィラメントが供給される多錘の原フィラメント供給手段と、炭酸ガスレーザー発振装置から照射される炭酸ガスレーザービームを複数回反射させ、多錘の原フィラメントに照射させる、平行に設置されている一対のミラーと、延伸室において延伸されたフィラメントが集積される集積装置と、を有することを特徴とする、極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、前記レーザービームが平行に設置されている前記一対のミラーへ入射される側の反対側の端に直角ミラーを設け、反射されてくるレーザービームをさらにこの平行ミラー側に戻し、入射してくるレーザービームと、直角ミラーによって反射されてくるレーザービームとの交点に前記多錘の原フィラメントが配置されている、前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、前記レーザービームが平行に設置されている前記一対のミラーへ入射される側の反対側の端に、新たな炭酸ガスレーザー発振装置を設け、この発振装置から照射される炭酸ガスレーザービームがこの一対のミラーに斜めに入射されて該平行ミラーによって複数回反射され、最初に入射してくるレーザービームと、新たな炭酸ガスレーザー発振装置から照射されてくるレーザービームとの交点に前記多錘の原フィラメントが配置されている、前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、原フィラメントの送出手段を有するP1気圧下の原フィラメント供給室と、この原フィラメント供給室に配設されており、原フィラメントがその中を通過するオリフィスと、オリフィスによって該原フィラメント供給室と接続されており、オリフィスを通過してきた原フィラメントが炭酸ガスレーザービームにより加熱されることによって延伸されるP2気圧下(P1>P2)の延伸室と、炭酸ガスレーザービームを放射する炭酸ガスレーザー発振装置とを具備している、極細フィラメントの製造装置において、原フィラメントが供給される多錘の原フィラメント供給手段と、延伸室において延伸されたフィラメントが回転軸を中心に巻き取られる巻取機と、この回転軸の外側に多錘の延伸されたフィラメント群が降下してくる巾に対応した巾を有し、回転軸に沿って湾曲している捕集ガイドと、を有することを特徴とする、極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、前記延伸されたフィラメントの集積装置がウェブの巻取機である、前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、前記延伸されたフィラメントの集積装置が延伸室で走行しているコンベアである、前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、前記延伸室全体が、水平面のX-Y軸、及び高さ方向のZ軸方向の少なくとも一方向に移動可能、又は面X-Y水平面で回転可能な微調整移動台座上にある、前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、前記延伸されたフィラメントの集積装置の前段階に、これらの延伸されたフィラメント群を集束する集束具を有する、前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、オリフィスの出口における原フィラメントの流れる方向をz軸とし、前記炭酸ガスレーザービームの照射方向をy方向とし、z方向とy方向とは直角方向をx方向とした場合、前記延伸室がx方向に揺動されることにより、前記フィラメントの集積装置に前記延伸されたフィラメントが揺動されながら集積される、前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、オリフィスの出口における原フィラメントの流れる方向をz軸とし、前記炭酸ガスレーザービームの照射方向をy方向とし、z方向とy方向とは直角方向をx方向とした場合、前記フィラメントの集積装置をx方向に揺動されることにより、前記フィラメントの集積装置に前記延伸されたフィラメントが揺動されながら集積される、前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、前記延伸されたフィラメントが、揺動する反射板に反射されつつ、前記フィラメントの集積装置に集積される、前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、前記レーザービームがビーム整形素子によって整形されている、前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、前記コンベア上に集積された延伸された多錘の原フィラメント群が熱処理されてシートが形成される熱処理ロールと、この延伸室内において熱処理された該シートを巻き取るシート巻取装置と、を有する、前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、前記コンベア上に集積された延伸された多錘の原フィラメント群が熱処理されてシートが形成される熱処理ロールと、前記延伸室内において熱処理された該シートを集束し繊維束とする集束具と、この繊維束を巻き取る巻取装置と、を有する前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。前記オリフィスの前後におけるP1とP2の気圧の差が、P1≧2P2である、前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、前記オリフィス内の流速が150m/sec以上であるように圧力差が設けられている、前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、前記原フィラメント供給室が大気下にあり、前記延伸室が減圧下にある、前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。また本発明は、前記炭酸ガスレーザービーム照射装置からのビームの中心が、前記オリフィスの出口より30mm以内で前記原フィラメントに照射されるように構成されている、前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。さらに本発明は、前記炭酸ガスレーザービーム照射装置からのビームが、前記原フィラメントの中心でフィラメントの軸方向に沿って上下4mm以内の範囲に照射されるように構成されている、前記極細フィラメントのマルチ(多錘)延伸装置に関する。
【0008】
本発明は、原フィラメントが延伸されることによって、ナノフィラメントの領域までに極細化される延伸装置を提供するものである。本発明における原フィラメントとは、既にフィラメントとして製造されて、リール等に巻き取られたものである。また紡糸過程において、溶融または溶解フィラメントが冷却や凝固によりフィラメントとなったものを紡糸過程に引き続き使用され、本発明の原フィラメントとなる。ここでフィラメントとは、実質的に連続した繊維であり、数ミリメータから数十ミリメータの長さである短繊維とは区別される。原フィラメントは、単独で存在することが望ましいが、数本ないし数十本に集合されていても使用することができる。
【0009】
本発明において延伸されたフィラメントは、全てフィラメントと表現するが、延伸された結果、上記ファイバーの領域に属するものも含まれる。本発明における延伸されたフィラメントは、殆どの場合、延伸切れすることなく数分以上延伸されるので、フィラメントの長さも数m以上であり、フィラメント径dが小さいことを考慮すると、実質的に連続フィラメントと見なすことができる場合が殆どである。しかし、条件によっては、上記ファイバーの領域に属する短繊維も製造することができる。
【0010】
本発明におけるフィラメントは、一本のフィラメントからなるシングルフィラメントである場合と、複数のフィラメントからなるマルチフィラメントである場合が含められる。一本のフィラメントにかかる張力等では、「単糸あたり」と表現するが、一本のフィラメントでは、「その一本のフィラメントあたり」を意味し、マルチフィラメントでは、それを構成する「個々のフィラメント一本あたり」を意味する。
【0011】
本発明における原フィラメントは、複屈折で測定した配向度が30%、あるいは50%以上といった、高度に分子配向したフィラメントでも使用できることに特徴があり、このような高度に配向した原フィラメントからでも、数百倍といった超高延伸倍率が実現できる点においても、他の延伸法と際だって異なる点である。このように原フィラメントが高配向している場合は、延伸開始点において、原フィラメント径以上の膨張部をもって延伸されることが多い。
【0012】
本発明の原フィラメントは、ポリエチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステルおよびポリエチレンナフタレートを含むポリエステル、ナイロン(含むナイロン6、ナイロン66)を含むポリアミド、ポリプロピレンやポリエチレンを含むポリオレフィン、ポリビニルアルコール系ポリマー、アクリロニトリル系ポリマー、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などを含むフッ素系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、スチレン系ポリマー、ポリオキシメチレン、エーテルエステル系ポリマーなどの熱可塑性ポリマーからなるフィラメントであれば使用することができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン(含むナイロン6、ナイロン66)、ポリプロピレンは、延伸性もよく、分子配向性もよく、本発明の極細フィラメントや極細フィラメントからなる不織布の製造に特に適する。また、ポリ乳酸やポリグリコール酸等の生分解性ポリマーや生体内分解吸収性ポリマー等、さらにポリアリレートやアラミド等の高強度、高弾性ポリマーなども本発明の赤外線ビームによる延伸性もよく、本発明による極細フィラメントや極細不織布の製造に特に適する。また原フィラメントには、これらのポリマーからなる芯鞘型フィラメントなどの複合フィラメントも使用することができる。なお、上記ポリマーを85%(重量パーセント)以上含む場合は、ポリエステル「系」やポリエステルを「主成分」とするなどと表現する場合がある。
【0013】
本発明においは、フィラメントの送出手段から送り出された原フィラメントについて延伸が行われる。送出手段は、ニップローラや数段の駆動ローラの組み合わせなどの一定の送出速度でフィラメントを送り出すことが出来るものであれば種々のタイプのものが使用できる。
【0014】
本発明において、送出手段から送り出されてくる原フィラメントは、マルチ(多錘)であることを特徴とする。マルチ(多錘)とは、独立して行動するフィラメント又はフィラメントの束が複数本存在することを意味する。複数本は、2本から数100本を意味する。
【0015】
フィラメントの送出手段より送り出された多錘の原フィラメントは、さらにオリフィスを通して、オリフィス中を原フィラメントの走行方向に流れる気体によって送られる。原フィラメントがこのフィラメント送出手段を経てオリフィスに送り込まれるまでは、P1気圧の雰囲気下で行われ、P1気圧下の状態に保たれている場所を原フィラメント供給室とする。P1が大気圧のときは、特に圧力を一定にする囲いは必要ない。P1が加圧下や減圧下の場合は、その圧力を保つための囲い(部屋)が必要であり、加圧ポンプまたは減圧ポンプも必要となる。なお本発明では、オリフィス入口部がP1であることが必要であるが、原フィラメントの貯蔵部、原フィラメントの送り出し部分は、必ずしもP1気圧である必要はない。しかし、それらを別々の部屋を設けるのは煩雑であるので、それらの部分が同一気圧であることが好ましい。
【0016】
オリフィスの出口以降は、P2気圧下に保たれ、オリフィスから出てきた原フィラメントを炭酸ガスレーザービームによって加熱することによって延伸される延伸室となる。原フィラメントは、P1気圧の原フィラメント供給室とP2気圧下の延伸室との圧力差(P1-P2)によって生じるオリフィス中を流れる空気の流れによってオリフィス中を送られていく。P2が大気圧のときは、特に圧力を一定にする囲いは必要ないが、P2が加圧下や減圧下の場合は、その圧力を保つための囲い(部屋)が必要であり、加圧ポンプまたは減圧ポンプも必要となる。
【0017】
P1とP2の気圧の差は、P1>P2である。そして、実験の結果、P1≧2P2であることが好ましく、さらに好ましくはP1≧3P2、P1≧5P2であることが最も好ましいことがわかった。
【0018】
本発明は、P2が減圧下(大気圧未満の圧力)で行われることが望ましい。そうすることにより、P1を大気圧で実施でき、装置を著しく簡便に出来、また、減圧は比較的簡便な手段であるからである。さらに、オリフィスからエアーが減圧下に噴出されることにより、通常存在する大気圧のエアーに邪魔されることないので、噴出されるエアーも、それに伴うフィラメントも非常に安定し、その結果、延伸性が安定し、ナノフィラメント領域までの延伸が可能になるものと思われる。このような簡便な手段で、ナノミクロン領域のフィラメントが得られることに本発明の特徴がある。
【0019】
なおP1またはP2は、通常室温の空気が使用される。しかし、原フィラメントを予熱したい場合や、延伸したフィラメントを熱処理したい場合は、加熱エアーが使用される。また、フィラメントが酸化されるのを防ぐ場合は、窒素ガス等の不活性ガスが使用され、水分の飛散を防ぐ場合は、水蒸気や水分を含む気体も使用される。
【0020】
本発明における原フィラメント供給室と延伸室は、オリフィスによってつながっている。オリフィス中では、原フィラメントとオリフィス内径との間の狭い隙間に、P1>P2の圧力差で生じた高速気体の流れが生じる。この高速気体の流れを生じるために、オリフィスの内径Dと繊維の径dとは、あまり大きくかけはなれてはならない。実験結果、D>dであって、D<30d、好ましくはD<10d、さらに好ましくはD<5dであってD<2dであることが最も好ましい。
【0021】
上記におけるオリフィス内径Dは、オリフィスの出口部における径をいう。但し、オリフィス断面が円では無い場合、一番狭い部分の径をDとする。同様に、フィラメントの径も、断面が円ではない場合、一番小さい径の値をdとし、断面の最も小さい箇所を基準に10カ所を測定して算術平均する。また、オリフィスの内径は、均一な径ではなく、テーパ状で出口において狭くなる形状も好ましい。なお、オリフィスの出口は、通常、原フィラメントが上から下へ通過するので、縦に配置されたオリフィスの下方が出口となるが、下から上へ原フィラメントが通過する場合は、オリフィスの上方に出口がある。同様に、オリフスが横に配置されて、原フィラメントが横方向に通過する場合は、オリフィスの横方向に出口がある。
【0022】
上記のように、オリフィス内を高速の気体が流れるので、オリフィスの内部は抵抗の少ない構造が望ましい。本発明のオリフィスの形状は、1本1本独立したものも使用されるが、板状物に多数の孔を開けて多錘のオリフィスとすることもできる。オリフィスの内部の断面も円形のものが望ましいが、複数のフィラメントを通過させる場合や、フィラメントの形状が楕円やテープ状の場合には、断面が楕円や矩形のものも使用される。また、オリフィス入り口では、原フィラメントを導入しやすいように大きく、出口部分のみ狭い形状が、フィラメントの走行抵抗を小さくし、オリフィスの出口からの風速も大きくできるので好ましい。
【0023】
本発明におけるオリフィスは、本発明人らによる従来の延伸前の送風管とは役割を異にしている。従来の送風管は、レーザーをフィラメントの定位置に当てる役目であり、できるだけ抵抗少なく、定位置に原フィラメントを搬送する役目であった。本発明はそれにプラスすることの、高速の整流気体が原フィラメント供給室の気圧P1と延伸室の気圧P2の気圧差で発生する点で異なる。なお、通常のスパンボンド不織布製造においては、エアーサッカー等によって溶融フィラメントに張力を与えられる。しかし、スパンボンド不織布製造におけるエアーサッカーと本発明におけるオリフィスとは、その作用機構と効果が全く異なる。スパンボンド法では、溶融フィラメントをエアーサッカー内の高速流体で送られ、エアーサッカー内でそのフィラメント径の細化の殆どが完了する。それに対して、本発明では固体の原フィラメントがオリフィスで送られ、オリフィス内ではフィラメントの細化は始まらず、オリフィスを出た所でレーザービームが照射されることによって、始めて延伸が開始される。またスパンボンド法では、エアーサッカー内に高圧エアーを送りこむことにより高速流体を発生させるが、本発明では、オリフィス前後における部屋の気圧差でオリフィス内の高速流体を発生させる点で異なる。またその効果も、スパンボンド法では、せいぜい10μm前後のフィラメント径しか得られないのに対して、本発明では1μm未満のナノフィラメントが得られるという大きな効果が得られる点が異なる。
【0024】
本発明は、延伸が音速域で行われることが好ましい。オリフィス中の流速vは、下記の式で表される(Graham' theorem)。ここで、ρはエアー密度を表す。
v={2(P1-P2)/ρ}1/2
ここで、P1を大気圧とし、P2を変化させて計算させると、表1となる。このことより、本発明の減圧域P2が30kPa、20kPa、6kPaでは、流速vは音速域(340-400m/sec)にあることがわかる。音速との比(マッハM)を計算した結果も表に示した。Mが0.98以上を音速域とすると、オリフィス内での流速vを、これらの音速域にすることにより、本発明では延伸して得られたフィラメント径をナノメータ域までの極細フィラメントを得ることができた。また、フッ素系樹脂やポリオレフィン樹脂等など、樹脂の種類によっては、150m/sec以上の亜音速域でも、充分に高倍率に延伸できることがわかった。
【0025】
【表1】
JP0005696329B2_000002t.gif

【0026】
本発明においては、オリフィス内での流速は、150m/sec以上であることが好ましく、200m/sec以上であることがさらに好ましく、最も好ましくは、342m/sec以上である。これらの流速は、原料フィラメントの素材、目的とするフィラメント径等によって決められる。
【0027】
オリフィスから送り出されてきた原フィラメントは、オリフィスの出口で、炭酸ガスレーザービームによって加熱され、オリフィスからの高速流体によってフィラメントに与えられる張力によって、原フィラメントは延伸される。オリフィスの直下とは、実験結果、炭酸ガスレーザービームの中心がオリフィス先端より30mm以下、好ましくは10mm以下、5mm以下であることが最も好ましい。オリフィスから離れると、原フィラメントが振れ、定位置に収まらず、炭酸ガスレーザービームに安定して捉えられないからである。またオリフィスからの高速気体によってフィラメントに与えられる張力が、オリフィスから離れることによって弱くなり、また安定性も小さくなるからと思われる。
【0028】
本発明は、原フィラメントが炭酸ガスレーザービームによって加熱されて延伸されることを特徴とする。本発明の炭酸ガスレーザービームは、10.6μmの波長を有している。レーザーは、照射範囲(ビーム)を小さく絞り込むことが可能であり、また、特定の波長に集中しているので、無駄なエネルギーも少ない。本発明の炭酸ガスレーザーは、パワー密度が50W/cm2以上、好ましくは100W/cm2以上、最も好ましくは、180W/cm2以上である。狭い延伸領域に高パワー密度のエネルギーを集中することによって、本発明の超高倍率延伸が可能となるからである。
【0029】
炭酸ガスレーザー発振装置から照射される炭酸ガスレーザービームは、通常、ビームの中心部で一番照射強度が高く、周辺部に行くにしたがい段々と減衰していき、その強度分布は、ガウス分布しているガウスビーム(Gaussian beam)である。本発明においては、炭酸ガスレーザー発振装置から照射される炭酸ガスレーザービームを、光学部品であるビーム整形素子を通過させることによって、ビーム強度分布を二つの点で改善して用いることができる。その一つは、ビームの中心部から周辺部にわたって、ほぼ同じ照射強度を有するフラットトップビーム(Flat-top beam)とすることができる。他の一つは、必ずしもフラットトップビームでなくともよいが、原フィラメントの流れる方向に対して、直角方向にライン状のビームにすることができる。
【0030】
ビーム整形素子とは、ビームシェイパー、またはビームホモジナイザーとも呼ばれる光学素子で、レーザー発振装置から発信してくるレーザービームの強度分布を変化させて、目的とする強度分布のビームに変える素子である。ビーム整形素子は、回折格子、集光レンズ、拡散レンズ、プリズム、ミラー等、またはそれらを組み合わせて使用される。
【0031】
このビーム整形素子によってつくり出されるビーム形状は、さらに、原フィラメントの通過する方向に短く、それと直角方向に長いライン状(Line beam)(又はリニアビーム)であることが望ましい。すなわち、ビームはオリフィスの出口における原フィラメントの流れる方向をz軸とし、ビーム整形素子を通過した炭酸ガスレーザービームの照射方向をy方向とした場合、ビーム整形素子によってもたらされるビームが、y方向とは直角方向(x方向)に幅広いことが望ましく、この横長のビームに多錘の原フィラメントが通過し、多錘の原フィラメントの延伸を可能にする。また、z方向のビームの広がりをBz、x方向のビームの広がりをBxとすると、Bz<3Bxとするビーム整形素子であることがさらに好ましく、さらに好ましくは、Bz<5Bxであり、もっとも好ましくは、Bz<10Bxである。このように極端に横長のビームとすることで、さらに多錘の原フィラメントの延伸が可能になる。
【0032】
炭酸ガスレーザー発振装置から照射される炭酸ガスレーザービームが、ポリゴンミラーによって、オリフィスの出口における原フィラメントの流れる方向と直角方向に横切るように走行することによって、多錘の原フィラメントに照射せることができる。ポリゴンミラーとは、回転多面鏡ともいい、回転軸に平行または傾いて設けられた多数のミラー面を持っており、それが回転軸を中心に高速で回転することにより、鏡面に入射してきたビームを反射して、横方向に走査させる鏡である。本発明においては、この横方向に走査される領域に、多錘の原フィラメントを走行させ、当たったレーザービームで多錘の原フィラメントを延伸させる。原フィラメントの走行速度に対して、レーザーの走査速度が桁違いに速い必要がある。
【0033】
炭酸ガスレーザー発振装置から照射される炭酸ガスレーザービームが、ガルバノミラーによって、オリフィスの出口における原フィラメントの流れる方向と直角方向に横切るように走行することによって、多錘の原フィラメントに照射せることができる。ガルバノミラーとは、ミラーに軸を取り付け、ガルバノメータのようにミラーを振動させて、入射してくるビームを、そのミラーで反射させて、横方向に走査させる。本発明においては、この横方向に走査される領域に、多錘の原フィラメントを走行させ、当たったレーザービームで多錘の原フィラメントを延伸させる。原フィラメントの走行速度に対して、レーザーの走査速度が桁違いに速い必要がある。
【0034】
本発明においては、炭酸ガスレーザー発振装置から照射される炭酸ガスレーザービームを、平行に設置された一対のミラーに複数回反射させ、多錘のフィラメントに照射させる手段をとることもできる。平行に設置された二つのミラーに斜め方向からビームを照射させることによって、二つのミラー間で複数回反射し、そのビームの通過過程に多錘の原フィラメントが通過することで、多錘延伸が可能となる。この場合、二つの平行に設置されたミラーのビームが入射してくる側とは反対側に、二つの平行なミラーの平行軸に対して直角軸に直角ミラーを置くことにより、平行ミラー間を複数回反射してきたビームは、この直角ミラーで反射されて、再び平行ミラー間で反射されていく。このように反射されていく往路と復路のビームの多数の交点に、それぞれ原フィラメントの流れを置くことで、多錘の延伸を可能にすることができる。また、二つの平行に設置されたミラーのビームが入射してくる側とは反対側に、別のビームを斜めに入射させ、復路のビームとすることもできる。
【0035】
なお、この平行ミラー方式における炭酸ガスレーザービームの照射は、原フィラメントに対して複数箇所から照射されるので、原フィラメントに対して均一に加熱される。フィラメントの片側のみからの加熱は、そのポリマーの融解温度が高い場合や、溶融が困難な場合、また、もともと延伸が困難なフィラメントの場合は、非対称加熱になり、延伸が困難になるからである。
【0036】
前記ポリゴンミラー、ガルバノミラー方式又は平行ミラー方式等におけるレーザービームにおいても、ビーム整形素子によって整形されているビームであることが好ましい。但し、必ずしもリニアフラットトップビームである必要はなく、サーキュラーフラットトップビームやスクエアーフラットトップビームであってもよく、また、必ずしも拡大されたビームである必要はなく、むしろ縮小されたビーム径であってもよい。
【0037】
本発明の原フィラメントは、炭酸ガスレーザービームにより延伸適温に加熱されるが、延伸適温に加熱される範囲がフィラメントの中心でフィラメントの軸方向に沿って、上下4mm(長さ8mm)以内であることが好ましく、さらに好ましくは上下3mm以下、最も好ましくは上下2mm以下で加熱される。このビームの径は、走行するフィラメントの軸方向に沿って測定する。本発明においては、原フィラメントが複数本であるので、原フィラメントの軸方向で測定される。本発明は、狭い領域で急激に延伸されることにより、高度に極細化され、ナノ領域までに細くした延伸を可能にし、しかも超高倍率延伸であっても、延伸切れを少なくすることができた。なお、この炭酸ガスレーザービームが照射されるフィラメントがマルチフィラメントである場合は、上記のフィラメントの中心は、マルチフィラメントのフィラメント束の中心を意味する。
【0038】
本発明によって延伸された多錘の延伸されたフィラメントは、延伸室内で集積させて取り出すこともできるが、通常、フィラメントの集積装置によって捕集され、集積される。集積装置は、巻取機やコンベアが使用されるが、篭、缶、筒などに集積させてもよい。
【0039】
本発明の延伸されたフィラメントの集積装置の前段階に、これらの延伸されたフィラメント群を集束する集束具を設け、延伸されたフィラメント群を束状にまとめて、集束装置に送り込むことができる。そのように束ねられたフィラメント群は、紐やトウとして使用することができる。集束具としては、コームや糸ガイド等が使用される。
【0040】
本発明の延伸されたフィラメントの集積装置として、フィラメント群やシート等の巻取装置が使用される。延伸されて下降してくるフィラメント群の巾に相当した紙管やアルミ管の管状物が回転軸として取り付けられた巻取機で、これらの管状物の上に延伸されたフィラメントは集積され、捕集されて巻き取られていく。
【0041】
本発明の集積装置として巻取機を用いた場合、巻取軸に沿って湾曲している壁からなる捕集ガイドを設けることが望ましい。この捕集ガイドは、回転軸の外側に多錘の該延伸されたフィラメント群が降下してくる巾に対応した巾を持つ。対応した巾とは、フィラメント群が下降して巾より広く、好ましくは50mm前後、さらに好ましくは100mm前後に両側に広いことが最も好ましい。オリフィスから高速エアーと共に走行してくる延伸されたフィラメントが巻取軸に巻きつかれて行く場合、高速エアーが巻取軸で反射して周囲へ飛散し、巻取軸上のフィラメントの集積状態が乱れる場合があるが、この捕集ガイドの壁によって高速エアーが巻取機の回転軸方向に曲げられ、延伸されたフィラメントの飛散を防ぐことができる。巻取軸から捕集ガイドの壁までの距離は、500mm以下、好ましくは200mm以下、100mm以下であることが最も好ましい。
【0042】
本発明の延伸されたフィラメントの集積装置として、走行するコンベアが使用される。コンベア上に集積され、積層されることによって、極細フィラメントの集積体または不織布として巻き取ることもできる。このようにすることにより、ナノフィラメントからなる不織布を製造することができる。本発明のコンベアとして、網状の移動体が通常使用されるが、ベルトやシリンダ上に集積させてもよい。
【0043】
また、本発明によって延伸された多錘の極細フィラメントは、走行している布状物上に集積されることによって、この布状物と積層された積層体を製造することができる。特に、ナノフィラメントからなる集積体または不織布は、構成するフィラメントが非常に細いために取り扱いが困難であるが、このように布状物と積層されることにより取り扱いが安定する。また用途においても、市販のスパンボンド不織布等と積層されることにより、フィルター等の用途にそのまま使用することもできる。布状物として、織物、編物、不織布、フェルト、紙などが使用される。また、フィルムを走行させてその上に集積させてもよい。
【0044】
コンベア上に集積された延伸された多錘の原フィラメントは、熱処理ロールによって熱処理されてシートを形成されることが望ましい。このように熱処理されることにより寸法安定性と熱安定性を備えた不織布シートとすることができる。そして、この不織布シートは、延伸室内に設けられているシート巻取装置に巻き取られることが望ましい。また、コンベア上で赤外線ヒータによる加熱や熱風吹きつけによる熱処理や、それらを熱処理に際しての予熱として使用することができる。
【0045】
本発明における熱処理ロール等の温度は、その樹脂の軟化点であり、樹脂の種類や製品の用途によって最適値が定められる。通常、合成繊維の熱処理温度の範囲から選択される。また、製造された極細フィラメントやナノファイバーを部分的に融着させたい場合もあり、その場合は融点近傍の温度も使用される。
【0046】
コンベア上に集積され、熱処理されたシートが、コームやガイド等の集束具で集束され、繊維束とされることで、糸状物を製造することも出来る。この糸状物は、延伸室内に設けられている糸状物巻取装置に巻き取られることが望ましい。
【0047】
本発明の延伸室全体が、水平面のX-Y軸、及び高さ方向のZ軸方向の少なくとも一方向に移動可能、又は水平面X-Y上で回転可能な微調整移動台座上にあることが望ましい。本発明における多錘延伸装置では、レーザーの照射位置と個々のノズル配置等に微妙な位置調整が必要であるが、このような微調整移動台座を設けることにより、多錘延伸装置としての運転が安定し、得られた製品の品質が高まった。回転は、ビーム軸がフィラメントの配列軸との誤差を調整することに用いられる。微調整範囲は、数ミクロンメータから数ミリメータが用いられる。回転角度も1-2度以下の微調整である。
【0048】
オリフィスの出口における原フィラメントの流れる方向をz軸とし、前記炭酸ガスレーザービームの照射方向をy方向とし、z方向とy方向とは直角方向をなす芳香をx方向とした場合、本発明の延伸室がx方向に揺動されることにより、フィラメントの集積装置に延伸されたフィラメントが揺動されながら集積されることが望ましい。揺動範囲は、数ミリメータから10ミリメータ前後が用いられる。このように延伸されたフィラメント群が揺動されながら集積装置に巻き取られることにより、得られた不織布の地合が良くなり、品質が高まる。揺動は、延伸室を台座に乗せ、カムやクランク等で周期的に振動させる方式をとることもできるが、揺動範囲が小さいので、バイブレータにより揺動させるのが簡便である。
【0049】
延伸されたフィラメントが集積装置へ揺動されながら集積される他の手段として、集積装置がx方向に揺動されることによっても目的を達成することができる。さらに他の手段として、延伸されたフィラメントの走行範囲に揺動する反射板を設け、延伸されたフィラメントがこの反射板で反射されつつ集積装置に集積される方式をとることもできる。
【0050】
本発明は炭酸ガスレーザービームによって、原フィラメントを超高倍率に延伸することによって、極細フィラメントを製造することを目的とする。本発明における極細フィラメントは、原フィラメントが100倍以上に延伸されて極細化されたフィラメントをいう。その極細フィラメントのうち、フィラメント径が1μm以下のものを特にナノフィラメントという。本発明においては、原フィラメントを延伸倍率が10,000倍以上にすることにより、100μm以上の径の原フィラメントからでもナノフィラメントが得ることができる点に特徴がある。
【0051】
本発明における延伸倍率λは、原フィラメントの径doと延伸後のフィラメントの径dより、下記の式で表される。この場合、フィラメントの密度は一定として計算する。繊維径の測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)で、原フィラメントは350倍、延伸されたフィラメントは1000倍またはそれ以上の倍率での撮影写真に基づき、100点の平均値で行う。
λ=(do/d)2
【0052】
本発明における延伸フィラメントは、フィラメント径が揃っていることを特徴とする。フィラメント径分布は、上記SEM写真から測長用ソフトでフィラメント径を100箇測定して求めた。またそれらの測定値より、標準偏差を求め、フィラメント径分布の尺度とした。
【0053】
本発明における延伸フィラメントは延伸されることにより分子配向し、熱的にも安定している。本発明の延伸フィラメントはフィラメント径が非常に小さいので、フィラメントの分子配向を測定することは困難である。本発明の延伸フィラメントは、単に細くなっただけではなく、分子配向も生じていることが、熱分析の結果により示唆されている。原フィラメントや延伸フィラメントの示差熱分析(DSC)測定は、株式会社リガク製THEM PLUS2 DSC8230Cにより、昇温速度10℃/minで測定した。
【0054】
本発明で得られる不織布は、延伸されたフィラメントを揺動するなどの手段を用いることができるので、地合が均一であることを特徴とする。地合とは、不織布の各場所における坪量(単位面積当たりの重さ)の均一性をいう。本発明における地合とは、得られた不織布の巾方向に5箇所で縦方向に100mm間隔に3箇所で、巾方向に5箇所で、縦横30mm角の大きさで試料片採取し、その重量の標準偏差で測定する。
【発明の効果】
【0055】
従来のナノファイバーの生産方式であるES法は、ポリマーを溶剤に溶かす作業や出来た製品から脱溶剤をする必要があり、製造法において煩雑であり、コストアップである。また出来た製品も、ダマやショットと呼ばれる樹脂の固まりが生じること、フィラメント径の分布が広いなど、フィラメントの品質的にも問題であった。また出来たファイバーも、ショートファイバー(短繊維)で、長さ数ミリメータからせいぜい数10ミリメータと云われているが、本発明では、多錘の原フィラメントから高度に分子配向した極細で、数メータ以上の長さの実質的に連続フィラメントが得られる。
【0056】
本発明は、特殊で高精度・高レベルな装置を必要とせずに、簡便な手段で容易に分子配向が向上した極細フィラメントが得られる。本発明では、延伸されたフィラメントを直接巻取機に巻き取って不織布とすることができることも特徴とする。さらに、1本のレーザービームの視野中に多数本の原フィラメントが走行するため、レーザービームの入射位置を微調整する必要があるが、本発明では、それらの微調整が容易であるという特徴も有する。されらに、本発明で得られた不織布の地合が非常に均一であることを特徴とし、このことは本発明のナノフィラメントからなる不織布は、精密機器のフィルターや電池のセパレータとして用いられることにおいて、特に有用な因子である。また本発明においては、ほとんど全ての熱可塑性ポリマーより、10,000倍以上の延伸倍率を可能にし、1μm未満のナノフィラメントの領域に至る超極細のフィラメントを製造できた。また、出来たフィラメント径の分布も、ナノフィラメント域の平均フィラメント径であるにもかかわらず、標準偏差が0.1以下と非常に狭い極細フィラメントを得ることができた。
【0057】
本発明における炭酸ガスレーザービームによる超延伸法では、延伸張力が与えられる高速気体流の発生手段として、オリフィス前後における圧力差を利用する。そのために高速気体流の流れが非常に安定し、それによって、単にナノフィラメントが得られるばかりでなく、生産性においても安定した連続運転を可能にした。本発明では、多錘の原フィラメントを、簡便な手段で安定して延伸できる手段を提供することができた。レーザービームは、高価であるので、多数のビームを用意することはコストアップであるばかりでなく、レーザービームは、安全性の面でも、また、振動等の外的刺激に非常に敏感な超精密機器を用いることより、多数セットの装置を用いることは得策ではない。本発明においては、一つの炭酸ガスレーザービームより、多錘の原フィラメントの延伸を可能にしたことに特徴がある。さらに本発明は、閉鎖系の密閉室で行うことができるので、開放系で行うメルトブロー法やES法に比べ、得られたナノファイバーの大気中への飛散を防ぐことができ、作業環境の安全性が高い。
【0058】
さらに本発明は、通常の延伸では延伸性が悪いポリ乳酸やポリグリコール酸などの再生医療用材料として使用される生分解性ポリマーからなるフィラメントからナノフィラメント領域までの極細フィラメントが得られる。従来のナノファイバーの製法であるES法では、クロロホルムなどの溶剤を使用しているので、溶解や脱溶剤が必要なばかりでなく、このような有害溶剤を使用していることで、再生医療分野での使用を困難にしている。
【0059】
本発明におけるナノフィラメントは、従来のエアーフィルター分野におけるフィルター効率を画期的に向上させるばかりでなく、IT、バイオ、環境分野における幅広い用途に適応できる革新的素材として適応される。また本発明は、紡糸や延伸の条件範囲が狭いために、従来極細化が困難とされている、ポリアリレート系ポリマー、ポリエチレンナフタレート、フッ素系ポリマーなどの高機能フィラメントからも、簡便に極細フィラメントやナノフィラメントが得られることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のマルチ(多錘)延伸によって極細フィラメントを製造する原理を示す概念図。
【図2】本発明における原フィラメント供給室が気圧P1の部屋で、延伸室がP2気圧である部屋である場合の例を示す装置の断面図。
【図3】本発明の延伸されたウェブが集束されて繊維束として巻き取られている例を示す装置の平面図。
【図4】本発明におけるビームの強度分布の例を示す概念図。
【図5】本発明のビーム整形素子によって整形されたビームと多錘の原フィラメントとの相対的関係を示す概念図。
【図6】本発明のビーム整形素子によって整形されたビームと多錘の原フィラメントとの相対的関係の他の例を示す概念図。
【図7】本発明のビーム整形素子によって整形されたビームと多錘の原フィラメントとの相対的関係のさらに他の例を示す概念図。
【図8】本発明において、レーザービームがポリゴンミラーによって多錘の原フィラメントが加熱される例を示す装置の平面図。
【図9】本発明において、レーザービームがガルバノミラーによって多錘の原フィラメントが加熱される例を示す装置の平面図。
【図10】本発明において、平行ミラーを設けた延伸室の平面図。
【図11】本発明において、平行ミラーを設けた延伸室の他の例を示す平面図。
【図12】本発明のマルチ(多錘)延伸によって得られた極細フィラメントを巻取装置に直接集積する例を示す概念図。
【図13】本発明の延伸されたフィラメントが反射板に反射されつつ、フィラメントの集積装置に送られる状態を示す斜視図。
【図14】本発明のフィラメント集積装置に捕集ガイドを設けた場合の例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明の実施の形態の例を、図面に基づいて説明する。 図1は、本発明の多錘延伸によって極細フィラメントを製造する原理を示す概念図で、装置の斜視図で示す。原フィラメント1a、1b、1c、・・・は、リール(図では省略)に巻かれた状態から繰り出され、コーム等を経て、繰出ニップローラ(図では省略)等により一定速度で送り出され、オリフィス2a、2b、2c、・・・へと導かれる。この図におけるここまでの工程は、原フィラメント供給室の気圧P1が大気圧に保たれて、特別の部屋を必要としない場合について図示してある。

【0062】
オリフィス2a、2b、2c、・・・の出口以降は、P2気圧下(この図では負圧状態)にある延伸室11となる。オリフィス2a、2b、2c、・・・を出た原フィラメント1a、1b、1c、・・・は、原フィラメント供給室と延伸室との気圧差P1-P2によってもたらされる高速エアーと共に延伸室11に導かれる。炭酸ガスレーザー発振装置3より出たレーザービーム4は、ビーム整形素子5によってビーム形状が整形され、オリフィス2a、2b、2c、・・・直下において、多錘(マルチ)の原フィラメント1a、1b、1c、・・・に対して、整形されたレーザービーム6として照射される。なお、レーザービームを延伸室内へ導くには、Zn-Seからなる窓を通過するが、その窓は図では省略してある。整形されたレーザービーム6により加熱され、P1-P2の気圧差によってもたらされる高速エアーが下方のフィラメントに与える張力により、原フィラメント1a、1b、1c、・・・は延伸されて、延伸されたフィラメント12a、12b、12c、・・・となって下降し、下方のコンベア13上に集積される。気圧P2は、バルブ14を通じて真空ポンプ(図示されていない)へ導かれている。真空度は、調整するバルブ14、および真空ポンプの回転数、バイパスバルブ等で調整される。延伸室11には、気圧計15が設けられている。

【0063】
図1において、コンベア13上に集積されたウェブは、熱処理ロール16a、16bによってニップされ熱処理されて、熱安定性と寸法安定性を備えた熱処理ウェブ17となる。熱処理ウェブ17は、巻取られてロール状の不織布製品18となる。

【0064】
図2は、原フィラメント供給室21が気圧P1の部屋で、延伸室22がP2気圧である部屋である場合の例を示す装置の断面図である。原フィラメント供給室21のP1気圧は、バルブ23と配管24を経てコンプレッサー(又は真空ポンプ)へ通じている。P1気圧は、気圧計25により管理されている。延伸室22のP2気圧は、バルブ26と配管27を経て真空ポンプ(又はコンプレッサー)へ通じている。P2気圧は、気圧計28により管理されている。原フィラメント1a、1b、1cは、リール29a、29b、29cに巻かれた状態から繰り出され、コーム30a、30b、30cを経て、繰出ニップローラ31a、32a、31b、32b、31c、32cより一定速度で送り出され、オリフィス2a、2b、2cへと導かれる。

【0065】
図2のオリフィス2a、2b、2cの出口以降は、P2気圧下にある延伸室22となる。オリフィス2a,2b,2cを出た原フィラメント1a、1b、1cは、原フィラメント供給室21と延伸室22との気圧差P1-P2によってもたらされる高速エアーと共に延伸室22に導かれる。送り出された原フィラメント1a、1b、1cは、オリフィス直下において、炭酸ガスレーザー発振装置3より照射されたレーザービーム4は、ビーム整形素子5により整形されたレーザービーム6となり、走行する原フィラメント1a、1b、1cに対して照射される。整形されたレーザービーム6の届く先には、レーザービームのパワーメータ33が設けれ、レーザーパワーを一定に調節されていることが好ましい。整形されたレーザービーム6により加熱され、P1-P2の気圧差によってもたらされる高速エアーが下方のフィラメントに与える張力により、原フィラメントは延伸されて、延伸されたフィラメント34a、34b、34cとなって下降し、コンベア13上に集積される。

【0066】
図2において、コンベア13上に集積されたウェブ35は、コンベア13の裏から負圧吸引室36によって吸引されて、コンベア13上のウェブ35を安定化させることが好ましい。ウェブ35は、下記の熱処理手段の少なくとも一つにより熱処理されることが好ましい。熱処理手段の1は、赤外線ランプ37による輻射熱で、ウェブ35が加熱され、熱処理される。熱処理手段の2は、熱風ノズル38より噴出する熱風によりウェブ35が加熱され、熱処理される。コンベア13を出るウェブ35は、コンベア13上でゴムロール39により圧縮され、シート化されることが好ましい。熱処理手段の3は、コンベア13を出たウェブ35は加熱ロール40により熱処理され、ゴムロール41により圧縮され、シート化される。熱処理されたウェブ42は巻取ロール43に巻き取られる。

【0067】
図3は、延伸されたウェブが集束されて繊維束として巻き取られている例を示す装置の平面図である。延伸され熱処理されたウェブ46が、ニップロール47を通じた後、左右にトラバースされている集束具としてのスネイルワイヤー48等のコームで繊維束にまとめられ、巻取機49に巻き取られる。このようにして、ナノフィラメントからなるマルチ(多錘)の延伸されたウェブは、繊維集合体の繊維束としても実用に供することができる。

【0068】
図4は、本発明のビーム整形素子によって整形されるビームの強度分布の例を示す概念図である。中央下のガウス状ビームは、整形される前の炭酸ガスレーザーは発振器によってもたらされたビームの強度分布で、ビームの中心部が高く、周辺にしたがい徐々に弱くなっていくガウス分布をしている。上部のリニアフラットトップビームは、細長い範囲で、高いビーム強度を保つ形状で、本発明における多錘延伸における一つの理想型である。原フィラメントの通過する方向(Bz)に短く、それと直角方向(Bx)に長い(Bz<Bx)であるライン状である。左はサーキュラーフラットトップビームで、右側はスクエアーフラットトップビームであり、これらも多錘延伸に利用され、特に、後述の鏡を利用するタイプに有効である。これらの形状は、理想化されたもので、厳密にこれらの強度分布になることを意味するものではないが、ビーム整形素子によりこれらに近づけることができる。

【0069】
図5、図6、図7は、本発明において、多錘の原フィラメントが走行する場合において、レーザービームと多錘の原フィラメントとの相対的関係を示す概念図である。図5は、A図はノズル51と、レーザービーム52の相対的位置関係を示す横から見た断面図である。この図では、ノズル51の内部は、幅広い直線状の筒状部53と、そこからテーパ部を形成し、最後に狭い筒状のオリフィス部54からなる。オリフィス54の直下で整形されたレーザービーム52が照射される。ノズル51の先端から、成形されたレーザービーム52の中心までの距離Lは短く、原フィラメント1は、短い距離で急激に加熱されることが好ましい。B図は、レーザービーム52中の多錘のノズル51a、51b、51c、・・・・の配置の例を平面図で、順序よく斜めに配置されている例を示す。レーザービーム52は、ビーム整形素子によって整形されたものであることが好ましい。

【0070】
図6のA図は、整形されたレーザービームが、若干末広がりに照射されている例を示す平面図である。炭酸ガスレーザービーム61がビーム整形素子62により整形されたレーザービーム63となる。整形されたレーザービーム63中に、原フィラメント1a、1b、1c、・・・が重ならないよう、ランダムに配置されている。このように配置することで、原フィラメント1a、1b、1c、・・・の間隔が開き、オリフィスから噴出されるエアーの流れが相互に邪魔しないようにすることができる。B図は、整形されたレーザービーム63の断面図である。図7は、レーザー発振装置66から出たビーム67がビーム整形素子68によって整形されたレーザービーム69となって、若干末広がりに照射されている例を示す斜視図である。整形されたレーザービーム69中に、原フィラメント1a、1b、1c、・・・が、横方向に一列に配置されている例を示す。

【0071】
図8は、炭酸ガスレーザー発振装置から照射される炭酸ガスレーザービーム71が、ポリゴンミラー72によって、多錘の原フィラメント1a、1b、1c、・・・が加熱される例を示す平面図である。ポリゴンミラーは中心を軸に高速で回転しており、表面の多面のミラー73a、73b、73c、・・・によって入射してくるレーザービーム71が反射し、反射されたビーム74となって、オリフィスの出口における原フィラメント1a、1b、1c、・・・の流れる方向と直角方向に横切るように走行することによって、多錘の原フィラメントに照射せることができる。原フィラメント1a、1b、1c、・・・の走行速度に対して、ポリゴンミラー72の回転速度が大きく、反射されたレーザービーム74の横方向への走査速度が桁違いに速い必要がある。

【0072】
図9は、炭酸ガスレーザー発振装置81から照射される炭酸ガスレーザービーム82が、ガルバノミラー83の振動によって反射され、反射ビーム84によって、原フィラメント1a、1b、1c、・・・に照射される例を示す平面図である。反射ビーム84は、オリフィスの出口における原フィラメント1a、1b、1c、・・・の流れる方向と直角方向に横切るように走行することによって、多錘の原フィラメント1a、1b、1c、・・・に照射せることができる。原フィラメント1の走行速度に対して、反射ビーム84の横方向への走査速度が桁違いに速い必要がある。なお、図8や図9におけるポリゴンミラーやガルバノミラーは、延伸室の外にあり、それらによって反射されてきたレーザービームは、延伸室のZn-Se窓を通じて延伸室内へ導かれることが望ましい。

【0073】
図10は、平行ミラーを設けた延伸室の平面図である。炭酸ガスレーザー発振装置91から斜め方向から照射される炭酸ガスレーザービーム92が、Zn-Se窓93通過して、延伸室94に導かれる。延伸室94中には、平行に設置されている一対のミラー95a、95bが設けられている。延伸室94へ導かれたレーザービーム93は、平行ミラー95a、95bに複数回反射させられる。二つの平行に設置されたミラー95a、95bにビームが入射してくる側とは反対側に、二つの平行なミラー95a、95bの平行軸に対して直角軸に直角ミラー96を置くことにより、平行ミラー95a、95b間を複数回反射してきたビーム92は、この直角ミラー96で反射されて、再び平行ミラー95a、95b間で反射されていく。このように反射されていく往路と復路のビームの多数の交点に、それぞれ原フィラメント1a、1b、1c、・・・を置くことで、多錘の延伸を可能にすることができる。なお、系から出ていくビームには、パワーメータ97を設け、レーザーの有効利用率等の管理を行う。

【0074】
図11は、図10における二つの平行に設置されたミラー95a、95bにビームが入射してくる側とは反対側に、さらに他の新たな炭酸ガスレーザー発振装置101から斜め方向からレーザービーム102を照射させる例を示す平面図である。このようにすることで、多錘の原フィラメント1a、1b、1c、・・・に照射されるレーザービームの強度が増す。なお、この場合も、系から出ていくビームには、パワーメータ103を設ける。

【0075】
図12は、本発明のマルチ(多錘)延伸によって得られた極細フィラメントを巻取装置に直接集積させる例を示す概念図である。図1と同様な装置で、多数の原フィラメント1がオリフィス2を通じてP2気圧下(この図では負圧状態)にある延伸室11へと導かれている。炭酸ガスレーザー発振装置3より出たレーザービーム4は、ビーム整形素子5によってビーム形状が整形され、オリフィス2a、2b、2c、・・・直下において、多錘(マルチ)の原フィラメント1a、1b、1c、・・・に対して、整形されたレーザービーム6として照射される。整形されたレーザービーム6により加熱され、P1-P2の気圧差によってもたらされる高速エアーが下方のフィラメントに与える張力により、原フィラメント1a、1b、1c、・・・は延伸されて、延伸されたフィラメント12a、12b、12c、・・・となって下降し、下方の巻取装置111へ直接巻き取られる。巻取機111は、巻取架台112に設置された巻取管113からなり、この巻取管113が
延伸されたフィラメント群を巻取る回転軸となる。巻取管113はモータにより駆動(図示されていない)されて回転し、この巻取管113上に延伸されたフィラメントは巻き付けられ、集積されて、延伸されたフィラメント集積体114となる。気圧P2は、バルブ14を通じて真空ポンプ(図示されていない)へ導かれている。真空度は、調整するバルブ14、および真空ポンプの回転数、バイパスバルブ等で調整される。延伸室11には、気圧計15が設けられている。なお、多数の延伸されたフィラメント12a、12b、12cは、図3で示した集束具によって集束した状態で、巻取機へ導くこともできる。

【0076】
また図12において、巻取機111はバイブレータ115上に載せられ、巻取機111の巻取管の軸方向(x方向)に振動され、延伸されたフィラメント群12a、12b、12c、・・・は揺動されつつ、巻取管113上に巻かれていくことが好ましい。このようにすることで、地合の優れた極細フィラメントからなる不織布が得られる。

【0077】
さらに図12において、延伸室11全体が、微調整移動台座116に載せられており、ボルト117a、117b、117c、・・・とそれらに対応するネジ穴118a、118b、118c、・・・によって、上下、左右、前後に微調整できるようになっている。微調整移動台座116は、図では示していないが、回転できるターンテーブルとすることもできる。図では、ボルト117とネジ穴118は、台座116の左サイドと手前サイドのみ図示してあるが、同様に、右サイド、奥サイドにも設けてある。図では簡便なネジ方式を示したが、油圧ジャッキや電動モータ等を使用して微調整移動を行うこともできる。この延伸室11の下、又は台座116の下にバイブレータを設置して、延伸されたフィラメントをx方向に揺動することも出来る。

【0078】
図13は、本発明の延伸されたフィラメント12が反射板121に反射されつつ、フィラメントの集積装置に送られる状態を示す斜視図である。反射板121は、下方で扇状に広がっており、x方向に振動している。延伸されたフィラメント12は、P1-P2下の圧力差によるエアーの流れに送られて、反射板121に衝突し、反射板121の振動に伴って反射方向を変化させ、図の点線のように広がって、集積装置に送られていく。このように延伸されたフィラメント12が広がって集積されることにより、集積装置に集積された多数の延伸フィラメントからなる不織布は、地合の良いものとなる。

【0079】
図14は、本発明の集積装置として巻取機を用いた場合において、延伸室内に捕集ガイドを設けた場合の例を示す。図12と同様な装置で、板状物131に多数の孔が開けられ、それらの孔をそれぞれオリフィス132a、132b、132c、・・・とし、多数の原フィラメント1がこれらのオリフィス132を通じてP2気圧下(この図では負圧状態)にある延伸室11へと導かれている。炭酸ガスレーザー発振装置3より出たレーザービーム133は、オリフィス132直下において、多錘(マルチ)の原フィラメント1a、1b、1c、・・・に対して照射される。なお、レーザービーム133を延伸室内へ導くには、Zn-Seからなる窓を通過するが、その窓は図では省略してある。レーザービーム133により加熱され、P1-P2の気圧差によってもたらされる高速エアーが下方のフィラメントに与える張力により、原フィラメント1a、1b、1c、・・・は延伸されて、延伸されたフィラメント134a、134b、134c、・・・となって下降し、下方の巻取装置111へ直接巻き取られる。巻取機111は、巻取架台112に設置された巻取管113からなり、巻取管がモータにより駆動(図示されていない)されて回転し、この巻取管113上に延伸されたフィラメントは巻き付けられ、集積されて、延伸されたフィラメント集積体135となる。この延伸室11には、巻取管113に沿って湾曲している捕集ガイド136が設けられていることを特徴とする。この捕集ガイド136により、延伸されたフィラメント134は、安定して巻取管113に巻かれ、地合の良い不織布シートからなる延伸されたフィラメント集積体135となる。

【0080】
なお、これらの図3—図14における原フィラメントの延伸は、P2圧力下の延伸室で行われる。また、図5、図6、図7におけるこれらのフィラメントの配置は、図8、図9におけるミラーを使用した場合においても使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明による極細フィラメントは、エアーフィルター等の従来極細フィラメントが使用されてきた分野ばかりでなく、メディカル用フィルター、IT用機能材料などの革新素材として広い分野にも使用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1:原フィラメント、 2:オリフィス、 3:炭酸ガスレーザー発振装置、
4:レーザービーム、 5:ビーム整形素子、 6:整形されたレーザービーム、
11:延伸室、 12:延伸されたフィラメント、 13:コンベア、
14:バルブ、 15:気圧計、 16:熱処理ロール、
17:熱処理されたウェブ、 18:巻取ロール。
21:原フィラメント供給室、 22:延伸室、 23バルブ、 24:配管、
25:気圧計、 26:バルブ、 27:配管、 28:気圧計、
29:リール、 30:コーム、 31、32:繰出ニップロール、
33:パワーメータ、 34:延伸されたフィラメント、 35:ウェブ、
36:負圧吸引室、 37:赤外線ランプ、 38:熱風ノズル、
39:ゴムロール、 40:加熱ロール、 41:ゴムロール、
42:熱処理されたウェブ、 43:巻取ロール。
46:ウェブ、 47:ニップロール、 48:スネイルワイヤー、
49:巻取機。
51:ノズル、 52:レーザービーム、 53:筒状部、 54:オリフィス。
61:レーザービーム、 62:ビーム整形素子、 63:整形されたレーザービーム。
66:炭酸ガスレーザー発振装置、 67:レーザービーム、 68:ビーム整形素子、 69:整形されたレーザービーム。
71:レーザービーム、 72:ポリゴンミラー、 73:ミラー、
74:反射されたレーザービーム。
81:炭酸ガスレーザー発振装置、 82:レーザービーム、 83:ガルバノミラー、
84:反射されたレーザービーム。
91:炭酸ガスレーザー発振装置、 92:レーザービーム、
93:Zn-Se窓、 94:延伸室、 95:平行ミラー、
96:直角ミラー、 97:パワーメータ。
101:炭酸ガスレーザー発振装置、 102:レーザービーム、
103:パワーメータ。
111:巻取機、 112:巻取架台、 113:巻取管、
114:延伸されたフィラメントの集積体。
115:バイブレータ、 116:微調整移動台座、
117:ボルト、 118:ボルト穴。
121:反射板。
131:板状物、 132:オリフィス、 133:レーザービーム、
134:延伸さらてフィラメント、 135:フィラメント集積体、
136:捕集ガイド。
Drawing
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13