TOP > 国内特許検索 > アクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法 > 明細書

Specification :アクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法

Country 日本国特許庁(JP)
Gazette 特許公報(B2)
Patent Number 特許第6044989号 (P6044989)
Publication number 特開2014-193037 (P2014-193037A)
Date of registration 平成28年11月25日(2016.11.25)
Date of issue 平成28年12月14日(2016.12.14)
Date of publication of application 平成26年10月6日(2014.10.6)
Title of the invention, or title of the device アクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法
IPC (International Patent Classification) H02N  11/00        (2006.01)
FI (File Index) H02N 11/00 Z
Number of claims or invention 6
Total pages 11
Application Number 特願2013-066975 (P2013-066975)
Date of filing 平成25年3月27日(2013.3.27)
Exceptions to lack of novelty of invention 特許法第30条第2項適用 平成25年2月22日国立大学法人福井大学において開催された平成24年度知能システム工学科修士論文公聴会で発表
Date of request for substantive examination 平成28年3月11日(2016.3.11)
Patentee, or owner of utility model right 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
Inventor, or creator of device 【氏名】庄司 英一
【氏名】岩崎 美晴
Representative 【識別番号】100110814、【弁理士】、【氏名又は名称】高島 敏郎
Examiner 【審査官】安池 一貴
Document or reference 特開2008-183658(JP,A)
特開2010-068667(JP,A)
特開2002-148169(JP,A)
特開平04-127885(JP,A)
Field of search H02N 11/00
Scope of claims 【請求項1】
動力源の供給によって本体部分が変形して駆動力を発生させるアクチュエーターの発生駆動力を評価する方法において、
前記アクチュエーターの本体部分の変形方向と交叉する面に弾性部材を密着させて配置し、
前記アクチュエーターを駆動させて前記本体部分とともに前記弾性部材を変形させ、
前記弾性部材の変形量を非接触で計測し、
前記弾性部材の変形量と計測位置とから、前記弾性部材の荷重とたわみの関係に基づいて前記アクチュエーターの発生駆動力を求めること、
を特徴とするアクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法。
【請求項2】
前記本体部分と前記弾性部材とを、前記面内で滑りが生じるように密着させたことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法。
【請求項3】
前記本体部分の基部と前記弾性部材の基部とを、前記本体部分と前記弾性部材とが密着するようにクランプしたことを特徴とする請求項2に記載のアクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法。
【請求項4】
前記本体部分と前記弾性部材とを液体の表面張力又は静電力によって密着させたことを特徴とする請求項2又は3に記載のアクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法。
【請求項5】
前記本体部分の先端と前記弾性部材の先端とをクリップ状の部材で係止し、かつ、係止部分で前記本体部分と前記クリップとの間で滑りが生じるようにしたことを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載のアクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法。
【請求項6】
所定位置の実測値から前記弾性部材のたわみ式を求め、他の位置の実測値と前記たわみ式との差から補正値を求め、前記たわみ式から得られた発生駆動力を、前記補正値を使って補正することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のアクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法。
Detailed description of the invention 【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧等の動力源の供給によってアクチュエーターの本体部分が変形することで駆動力を発生させるアクチュエーターの発生駆動力を評価する方法に関し、人工筋肉の駆動源や変位センサ等として利用される膜状,シート状又は線状のアクチュエーターの発生駆動力を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のアクチュエーターとしては、電圧等の動力源を供給することで本体部分を伸縮,捩れ,屈曲,湾曲又はこれらの複合的な動き(これらを総称して、「変形」と記載する)させるものがあり、ゴム系(空気圧駆動)、電気化学系(高分子系)及び形状記憶合金を原料にした金属系のものが知られている。
金属系のアクチュエーターとしては、例えばNi-Ti系の形状記憶合金のアクチュエーターが知られている(例えば特許文献1参照)。
また、高分子系のアクチュエーターとしては、例えばイオン伝導性高分子膜の両面を導電性材料で被覆した複合体の一側に電圧を印加することで、イオン伝導性高分子膜の内部でイオンが移動して、イオン伝導性高分子膜が変形する高分子アクチュエーターが知られている。さらに、イオン交換樹脂に電極として金を特殊化学めっきにより形成し、電極表面積を非常に大きくしたことにより変位性能を大きく向上させた複合材料のシート状アクチュエーターが知られている(例えば特許文献2,3参照)。
これらアクチュエーターの本体部分の厚さは一般に0.1mm~10mm程度、駆動電圧0.5~5V程度で、本体部分の変形に伴い起電力が発生することから、変位センサとしての用途も拡がっている。
【0003】
このようなアクチュエーターは、電動モータや、シリンダ、ソレノイド等に比べると小型化・軽量化が容易であることから、例えば人工筋肉の駆動体として用いることで、生物に近いスムースでノイズの無い動きと、屈曲やねじれといった複合的な動きを得ることができ、近年、自立歩行型ロボットや癒し形ロボット玩具等への応用が期待されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平10-143063号公報(段落0001~0003の記載参照)
【特許文献2】特開2011-172383号公報
【特許文献3】特開2007-244103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のアクチュエーターにおいては、動力源の供給に対してどの程度の駆動力が発生するのか、その評価が容易ではないという問題がある。
モータやシリンダ等のアクチュエーターの駆動力を評価する方法としては、例えば接触式の荷重センサを用いることができるが、このような荷重センサは、微細な膜状,シート状又は線状のアクチュエーターの発生駆動力を正確に評価するには不向きである。また、この種のアクチュエーターは、計測する位置によって発生する駆動力が異なり、かつ、アクチュエーターの本体部分が変形して全体で駆動力を発生させているため、あるポイントの駆動力を計測する荷重センサではアクチュエーターの正確な駆動力を求めることはできないという問題がある。
本発明は、このような要求に応えるべくなされたもので、アクチュエーターの発生駆動力を簡単かつ正確に評価することが可能なアクチュエーターにおける発生駆動力の評価方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、動力源の供給によって本体部分が変形することで駆動力を発生させるアクチュエーターの発生駆動力を評価する方法において、前記アクチュエーターの本体部分の変形方向と交叉する面に弾性部材を密着させて配置し、前記アクチュエーターを駆動させて前記本体部分とともに前記弾性部材を変形させ、前記弾性部材の変形量を非接触で計測し、前記弾性部材の変形量と計測位置とから、前記弾性部材の荷重とたわみの関係に基づいて前記アクチュエーターの発生駆動力を求める方法としてある。
【0007】
請求項2に記載するように、前記本体部分と前記弾性部材とを、前記面内で滑りが生じるように密着させるとよい。そのために、請求項3に記載するように、前記本体部分の基部と前記弾性部材の基部とを、前記本体部分と前記弾性部材とが密着するようにクランプするようにしてもよいし、請求項4に記載するように前記本体部分と前記弾性部材との間に粘性の小さい水やアルコール等の液体を介在させ、この液体の表面張力によって密着させてもよい。また、静電力によって密着させるようにしてもよい。
【0008】
また、請求項5に記載するように、前記本体部分の先端と前記弾性部材の先端とをクリップ状の部材で係止し、かつ、係止部分で前記本体部分と前記クリップとの間で滑りが生じるようにしてもよい。なお、前記係止部分における摩擦抵抗は可能な限り小さくするのがよい。
前記弾性部材の変形量は、レーザー変位計、超音波変位計、CCDカメラ等を用いて非接触で計測することができる。
【0009】
また、アクチュエーターの本体部分を形成する材料や形状の不均一又はアクチュエーターの本体部分内での電圧降下等の影響を軽減するために、例えば請求項6に記載するように、所定位置の実測値から前記弾性部材のたわみ式を求め、他の位置の実測値と前記たわみ式との差から補正値を求め、前記たわみ式から得られた発生駆動力を、前記補正値を使って補正するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記のように構成されているので、アクチュエーターに動力源を供給することでアクチュエーターの本体部分が変形すると、この変形は本体部分の一面に密着させた弾性部材を変形させる。弾性部材の所定位置における変形量と弾性部材の材料的性質(弾性係数及び断面形状)とから、弾性部材に作用する荷重を求めることができ、得られた荷重をアクチュエーターの駆動力として評価することが可能になる。
また、レーザー変位計等を用いて非接触で弾性部材の変形量を計測するので正確に変形量を計測することができ、例えばアクチュエーターを所定の温度や湿度等に保ったチャンバー内に設置した状態で、アクチュエーターの発生駆動力を求めることも可能である。
このように、本発明では簡単な方法で正確、かつ、非接触でアクチュエーターの駆動力評価が可能になることから、アクチュエーターを使った人工筋肉等の設計や開発が容易になるほか、この種のアクチュエーターの用途を拡大することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、この実施形態において評価の対象となるシート状のアクチュエーターは、イオン伝導性高分子膜の両面を導電性材料で被覆して本体部分を形成し、この導電性材料を電極として電圧を印加することで、本体部分を構成するイオン伝導性高分子膜が変形する高分子アクチュエーターとして説明する。
【0012】
[高分子アクチュエーターの構成]
イオン伝導性高分子膜を得るための材料であるイオン伝導性高分子膜材料としては、疎水場と親水性ドメイン構造とを併せ持つ構造であり、かつ、変形可能な柔軟性を有し、加水分解性が少なく、大気中で安定な高分子化合物を用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマー;ポリスチレン;ポリイミド;ポリパラフェニレンオキサイド、ポリ(2,6-ジメチルフェニレンオキサイド)、ポリパラフェニレンスルフィド等のポリアリーレン類(芳香族系ポリマー)等に、スルホン酸基(-SOH)、カルボキシル基(-COOH)、リン酸基、スルホニウム基、アンモニウム基、ピリジニウム基等を導入したもの;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素系のポリマー;含フッ素系のポリマーの骨格にスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、スルホニウム基、アンモニウム基、ピリジニウム基等を導入したパーフルオロスルホン酸ポリマー、パーフルオロカーボン酸ポリマー、パーフルオロリン酸ポリマー、ポリブタジエン系化合物;エラストマーやゲルなどのポリウレタン系化合物;シリコーン系化合物;ポリ塩化ビニル;ポリエチレンテレフタレート;ナイロン;ポリアリレート等、4級窒素カチオンを有するアイオネン類を挙げることができる。
【0013】
なお、上記のイオン伝導性高分子膜材料から取り出したイオン伝導性高分子膜は、含水状態で電圧を印加することにより変形する性質を有するが、大気中での動作ではその含水量で変形度に影響がでることが知られているため、イオン伝導性高分子膜内部の水分子をイオン液体で置換してもよい。
また、疎水場と親水性ドメイン構造とを併せ持つ構造であれば、イオン伝導性高分子膜材料は上記に限られず、誘電性材料、例えばポリフッ化ビニリデンのようなものであってもよい。ポリフッ化ビニリデン膜からなるイオン伝導性高分子膜にイオン液体を含浸させれば、電界下、膜内の物質(イオン液体のイオン)の移動により、イオン伝導性高分子膜は変形を生ずることができる。
【0014】
さらに、イオン伝導性高分子膜材料として導電性高分子を用いてもよい。このような高分子としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン等が挙げられる。この場合も、フィルム12内部のドーパント(イオン)の移動で、フィルム12は変形することが知られている。
【0015】
また、イオン伝導性高分子膜材料として、ゾル・ゲル法などで得られる高分子構造をもつ金属酸化物も用いることができる。このような金属酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば、マンガン、ニッケル、コバルト、五酸化バナジウム系の金属酸化物を用いることができる。さらには、イオン伝導性高分子膜材料として、カーボン粉末をバインダー(好ましくはイオン伝導性高分子膜と相溶性高い材料)と混ぜたり、単独使用で接合した導電膜材料も用いることができる。このようなカーボンとしては、例えば、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、カーボンチューブ、グラファイト等を挙げることができる。カーボンブラックとしては、例えば、チャネルブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック等を挙げることができる。中でも、上記カーボン粉末は、カーボンナノチューブ、ファーネスブラックまたはアセチレンブラックであることが特に好ましい。これにより、より好適に電気伝導性を付与することができ、アクチュエーターとして応用することができる。
【0016】
市販のイオン伝導性高分子膜材料としては、例えば、高疎水性のパーフルオロエチレン構造(疎水場)と高親水性のスルホン酸基構造(親水性ドメイン構造)とを併せ持つ高分子電解質であるデュポン社製のナフィオン(「NAFION」は登録商標)117を挙げることができる。
【0017】
電極の材料(導電性材料)としては、白金,金その他の貴金属さらに卑金属や半導体を用いることができる。イオン伝導性高分子膜材料の両面への電極の形成には、メッキ法(無電解メッキ法)や蒸着法、スパッタリング法、加熱プレス法等の公知の手段を用いることができる。
【0018】
[計測方法の説明]
図1に、上記構成のアクチュエーターの発生駆動力を求めるための評価方法の一実施形態を概念図で示す。なお、説明の便宜のため、図1においてアクチュエーターの軸線と同方向をX方向とし、これに直交する方向をY方向とする。
この実施形態におけるアクチュエーター1は、断面矩形状の短冊形に形成されたイオン伝導性高分子膜の表裏全面に電極を形成して本体部分とし、前記電極に電圧を印加することで、図1に示すように一方向(Y方向)に前記本体部分が湾曲するものである。なお、この実施形態では、電圧の印加によって変形する「本体部分」とアクチュエーター1とが同義であることから、以下では「アクチュエーター1」と記載して説明する。
このアクチュエーター1に発生する駆動力はその全長に亘って一様と考えられるから、図1に示すような湾曲形態におけるアクチュエーター1の変形量と発生駆動力との関係は、図2に示すような等分布荷重を受けた片持ち弾性梁の荷重と変形量との関係と同一視することができる。
そこで、この実施形態では、評価の対象となるアクチュエーター1の変形方向と交叉する一方の面1aに、弾性部材2を密着して設けている。弾性部材2としては、弾性範囲内(材料力学上の弾性限度内、好ましくは比例限度内)にアクチュエーター1の変形範囲を含み、かつ、前記弾性範囲内で片持ち弾性梁の荷重・たわみ式が適用できるものを用いる。この条件を満たすのであれば、弾性部材2の材質は樹脂や金属、セラミック等を問わない。この実施形態のアクチュエーター1はその両面に電極が形成されていることから、弾性部材2は非導電性の樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等)で形成するのがよい。
【0019】
弾性部材2はアクチュエーター1の面1aの長さ、大きさ及び形状に一致させて形成し、面1aの全面に亘って密着するように沿わせる。そして、アクチュエーター1の駆動中にこの密着性が保たれるようにする。弾性部材2とアクチュエーター1とが強固に密着していると、弾性部材2によってアクチュエーター1の変形が阻害されるため、アクチュエーター1の変形にともなって、密着状態を保ちながら弾性部材2が面1a内で、可能な限り抵抗なく滑らかに滑るようにする。
【0020】
弾性部材2をアクチュエーター1の面1aに密着させるための手段の一例を図3及び図4に示す。
図3及び図4において(a)は変形前の状態を、(b)は変形後の招待を示している。
図3の例では、アクチュエーター1と弾性部材2との間に水やアルコール等の粘性の小さい液体を介在させ、その表面張力によって弾性部材2をアクチュエーター1の一方の面1aに密着させている。水やアルコールは粘性が小さいので、アクチュエーター1が変形する際に、弾性部材2が前記一方の面内でほとんど抵抗無く滑ることができる。
図4の例では、弾性部材2の先端をU字形に折り曲げてクリップ部2aを形成し、アクチュエーター1の先端にこのクリップ部2aを嵌め込んで係止させている。アクチュエーター1の先端を嵌め込むクリップ部2aの開口幅を前記先端の肉厚とほぼ同じか僅かに小さくすることで、嵌め込みによる抵抗を可能な限り小さくし、アクチュエーター1の変形の際に弾性部材2が前記一方の面に沿って滑らかに滑ることができるようにする。
【0021】
上記のようにしてアクチュエーター1の面1aに弾性部材2を密着させた状態で、アクチュエーター1及び弾性部材2の基部をクランパ11,11によって挟持させ固定する。アクチュエーター1の自重によって先端に初期撓みが生じないように、アクチュエーター1及び弾性部材2は重力の作用方向と平行な上下方向(好ましくは下向き)に固定するとよい。
【0022】
図示の例のように、アクチュエーター1及び弾性部材2を、一定の温度、湿度又は気圧に保たれたチャンバ10内に収容してもよい。そして、この状態でアクチュエーター1の両面に形成された電極に電圧を印加すると、アクチュエーター1が図1に示すようにY方向に変形する。
アクチュエーター1の変形量は、レーザー変位計3を用いて非接触で計測することができる。チャンバ10にはアクリル製又はガラス製の窓10aが形成されているので、この窓10aからチャンバ10外に配置されたレーザー変位計3のレーザー光をチャンバ10内に導入し、弾性部材2に照射させる。レーザー変位計3の位置は、位置計測器4により計測する。レーザー変位計3及び位置計測器4としては市販されている公知のものを用いることができる。
【0023】
アクチュエーター1及び弾性部材2の先端の位置を原点Oとし、この原点Oからクランパ11,11で固定された基部Sまでの距離をL,レーザー変位計3が位置Iにあるときの原点Oからの距離X1、同位置IIにあるときの原点Oからの距離X2とし、それぞれの位置I,IIでのY方向の変形量をδ1,δ2とする。
上記の計測結果から、アクチュエーター1の駆動力が計算によって求められる。すなわち、上述したように、この実施形態のアクチュエーター1の駆動力と弾性部材2の変形量との関係は、図2に示すような片持ち弾性梁に作用する荷重と変形量と同一視することができるから、片持ち弾性梁の荷重・たわみ式を利用して、アクチュエーター1の駆動力を求めることができる。
【0024】
弾性部材2(片持ち弾性梁)に、図2に示すような等分布荷重wが作用したときの弾性部材2の荷重・たわみ式は以下で表される。
【数1】
JP0006044989B2_000002t.gif

【0025】
ここで、δxは弾性部材2の先端の原点Oからの距離Xにおける変位量、下向き矢印のwは等分布荷重の大きさ、lは原点Oから基部Sまでの弾性部材2の長さ、Eは弾性部材2のヤング率、Iは弾性部材2の断面二次モーメントである。なお、弾性部材2としてPETを用いた場合、ヤング率Eは一般には2.8GPa前後であるが、4GPa程度までヤング率を高めたものも市販されている。また、弾性部材2が図2(b)に示すように断面矩形状である場合は、弾性部材2の断面二次モーメントIはbhで表される。
アクチュエーター1の駆動力を表す荷重wは、例えば位置Iにおいてレーザー変位計3によって計測された変位δ1と、距離X1とを式1に代入することで求めることができる。より正確な荷重wの値を得るには、他の一つ又は複数の位置(例えば位置II)においても変位δ2と距離X2とから荷重wを求め、これら多くの計測点のデータから荷重wを求めて平均してもよい。長さLのアクチュエーター1の全体に発生する駆動力はw×Lである。
なお、このようにして得られたwを式1に代入することで、任意の位置xにおける変形量δxを求める式を得ることができる。
【0026】
[第二の実施形態]
アクチュエーター1は、電圧降下等によって実際にはアクチュエーター1の先端に向かうに従ってその駆動力が低下すると考えられる。電圧降下が基部から先端に向けてほぼ直線的に生じるのであれば、駆動力の分布は図5に示すような台形荷重と同一視されると考えられる。
台形荷重が作用した場合における弾性部材2の変位の公式は、等分布荷重の公式と三角荷重の公式とを合わせることで得ることができる。図5に示す荷重wは台形荷重のうちの等分布荷重分、qxは三角荷重分である。
【0027】
【数2】
JP0006044989B2_000003t.gif

【0028】
上記の式2のうち右辺の第1項が等分布荷重の式で第2項が三角荷重の式である。qは基部Sにおける三角荷重の最大値である。
この式2を使って求めるのは等分布荷重のwと三角荷重の最大値qである。少なくとも二つの位置I,IIの距離X1,X2と変形量δ1,δ2とから、これら二つの未知数w,qを求めることができる。
任意の位置Xにおける三角荷重の大きさqxは、q×x/lによって求めることができるから、任意の位置Xにおける駆動力の大きさはw+qxである。長さLのアクチュエーター1の全体に発生する駆動力は、(w+q/2)Lである。
なお、このようにして得られたw及びqを式2に代入することで、任意の位置xにおける弾性部材2の変形量δxを求める式を得ることができる。
【0029】
[第三の実施形態]
この実施形態では、第一及び第二の実施形態のようなクランパ11は使用せず、アクチュエーター1及び弾性部材2の両端を自由端として電圧を印加し、アクチュエーター1及び弾性部材2を変形させる。この実施形態の弾性部材2は、図6に示すような分布荷重(図6の例では等分布荷重)を受ける単純支持梁とみなすことができる。
等分布荷重を受ける弾性部材2(単純支持梁)の変位の式は、
【0030】
【数3】
JP0006044989B2_000004t.gif

【0031】
この式3を使って求めるのは等分布荷重wである。未知数wは、位置I又はII及び距離X1又はX2と変形量δ1又はδ2とから求めることができる。
なお、この実施形態において弾性部材2の変形量の計測は、アクチュエーター1及び弾性部材2を吊り下げた状態で行ってもよいが、図6に示すように両端を支持させた状態で水平に配置しても中央に生じる初期撓みが無視できるくらい微小であるなら、アクチュエーター1及び弾性部材2を水平に配置した状態で計測を行ってもよい。
【0032】
[第四の実施形態]
第一~第三の実施形態では、アクチュエーター1に発生する駆動力を等分布荷重又は台形分布荷重とみなして発生駆動力の評価を行った。しかし、実際のアクチュエーター1の発生駆動力は、材料の不均一性や場所による印加電圧の不均一性などによって、等分布荷重又は台形分布荷重とは異なる荷重形態となり得る。
そこで、この第三の実施形態では、一つ又は複数の計測点での計測結果に基づいて、第一の実施形態及び第二の実施形態と同様の手順で弾性部材2の任意の位置xにおける変形量δxの式を得た後、他の複数の計測点の位置データを前記変形量δxの式に代入し、得られた変形量δ1,2,3・・・と、実際の計測によって得られた変形量Δ1,2,3・・・との差を求めるようにしている。そして、両者の差が予め設定した閾値の範囲内に収束していれば、前記変形量δxの式をそのままアクチュエーター1の発生駆動力の評価に用いることができる。
差が前記閾値の範囲から外れていれば、そのばらつきの分布から補正係数を求め、前記変形量δxの式の修正を行う。
【0033】
[実施例]
第一の実施形態の方法により変形量の計測を行った。クランパ11のみを用いてアクチュエーター1と弾性部材2とを全面に亘って密着させた。
アクチュエーター:パーフルオロカーボン酸ポリマーであるデュポン社製のナフィオン(「NAFION」は登録商標)膜の両面に白金の電極層を無電解メッキにより形成した高分子アクチュエーター
アクチュエーターの寸法及び形状:幅4mm、長さ20mm、厚さ180μmの断面矩形状のもの
弾性部材:PET
弾性部材のヤング率:4GPaのものを用いた
弾性部材の寸法及び形状:幅b=4mm、長さL=20mm、厚さh=100μmの断面矩形状のもの
計測:3Vの電圧を電極に印加し、15秒経過後に15~30秒の間でレーザー変位計3を原点Oから基部Sに向けてX方向に移動させつつ弾性部材の変形量δxを計測した。
温度及び湿度:温度25℃、相対湿度60%
上記条件で計測した計測結果を図7に示す。
図7において縦軸は弾性部材2のY方向の変形量、横軸は時間を示す。図7に示すように、電圧印加後15秒を経過したあたりから変形量が安定する。そこで、15秒~30秒の間でレーザー変位計3を原点Oから基部Sに向けて移動させつつ、変形量を計測した。その結果、弾性部材2の変形量の分布は、図7に示すように等分布荷重を受ける弾性梁の変形形状とほぼ一致したものとなった。
弾性部材2の自由端の変形量δoは約1.7mmであることから、式1を用いてアクチュエーター1の発生駆動力w=2.2mN/cmを得た。単位長さ当たり、0.2gf(アクチュエーター1全体で0.4gf)の力が発生していることになる。
このアクチュエーター1の発生駆動力を、錘を使って計測してみたところ、0.4gの錘を持ち上げることができ、0.5gの錘を動かすことができる程度の力であったことから、この数値が妥当なものであることが確かめられた。
【0034】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の説明に限定されない。
例えば、本発明のアクチュエーターの評価方法は、上記した湾曲の場合に限らず、屈曲や捩り等及びこれらの複合的な変形にも適用が可能である。複合的な変形を生じるアクチュエーターの発生駆動力の評価を行う場合は、第二の実施形態で説明したように、湾曲,屈曲又は捩り等のそれぞれの荷重・変形量の公式を適宜に組み合わせればよい。
また、分布荷重の式に限らず、適宜に集中荷重や集中荷重と分布荷重の式を用いるようにしてもよい。
さらに、上記の説明でアクチュエーター1の断面形状は矩形状であるとして説明したが、本発明は円形、楕円形、三角形、多角形、不定形など、あらゆる断面形状のアクチュエーターに適用が可能である。
また、上記の説明でアクチュエーター1と弾性部材2とを密着させるための手段として液体による表面張力や静電力、クリップ等を例に挙げて説明したが、基部をクランパ11,11によってクランプさせるだけで両者の密着を保てるのであれば、特に表面張力や静電力、クリップ等を用いる必要はない。
また、非接触で弾性部材2の変位を計測できるのであれば、レーザー変位計に限らず、超音波変位計やCCDカメラなど他の公知の変位計を使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、電子・メカトロニクス・機械部品製造や、ロボット・玩具製造、医療・福祉器具関連、触覚等のセンサ開発などの分野で広範に利用されるアクチュエーターの発生駆動力評価に適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】アクチュエーターの発生駆動力を求めるための本発明の評価方法の第一の実施形態を示す概念図である。
【図2】アクチュエーターと弾性部材との関係を等分布荷重が作用した弾性梁とみなした場合の説明図である。
【図3】弾性部材をアクチュエーターの一方の面に密着させるための手段の一例を示す図で、(a)は変形前、(b)は変形後を示している。
【図4】弾性部材をアクチュエーターの一方の面に密着させるための手段の他の一例を示す図で、(a)は変形前、(b)は変形後を示している。
【図5】アクチュエーターの発生駆動力を求めるための本発明の評価方法の第二の実施形態にかかり、アクチュエーターと弾性部材との関係を台形分布荷重が作用した弾性梁とみなした場合の説明図である。
【図6】本発明の第三の実施形態にかかり、アクチュエーターと弾性部材との関係を等分布荷重が作用した単純支持梁とみなした場合の説明図である。
【図7】実施例における計測結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0037】
1:アクチュエーター(本体部分)
1a:一方の面
2:弾性部材
2a:クリップ部
3:レーザー変位計
4:位置計測器
5:液体
10:チャンバ
10a:窓
w:等分布荷重
q:三角荷重
Drawing
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6