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Specification :ネマリンミオパチー又はその保因者の検出方法

Country 日本国特許庁(JP)
Gazette 特許公報(B2)
Patent Number 特許第6860140号 (P6860140)
Publication number 特開2018-088882 (P2018-088882A)
Date of registration 令和3年3月30日(2021.3.30)
Date of issue 令和3年4月14日(2021.4.14)
Date of publication of application 平成30年6月14日(2018.6.14)
Title of the invention, or title of the device ネマリンミオパチー又はその保因者の検出方法
IPC (International Patent Classification) C12Q   1/6883      (2018.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI (File Index) C12Q 1/6883 Z
C12N 15/09 ZNAZ
Number of claims or invention 5
Total pages 23
Application Number 特願2016-236425 (P2016-236425)
Date of filing 平成28年12月6日(2016.12.6)
Date of request for substantive examination 令和元年10月2日(2019.10.2)
Patentee, or owner of utility model right 【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
Inventor, or creator of device 【氏名】松本 直通
【氏名】宮武 聡子
Representative 【識別番号】110001656、【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
Examiner 【審査官】小倉 梢
Document or reference Am. J. Hum. Genet.,2013年,Vol. 93,p. 6-18
Am. J. Hum. Genet.,2013年,Vol. 93,p. 1108-1117
Field of search C12Q 1/00 - 1/70
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
Scope of claims 【請求項1】
被検者から分離された試料を用いて、当該被検者がMYPN遺伝子に機能喪失型変異を有するか否かを調べることを含む、ネマリンミオパチー又はその保因者の検出方法。
【請求項2】
MYPN遺伝子の機能喪失型変異がホモ接合又は複合ヘテロ接合で検出された場合、当該被検者がネマリンミオパチーを発症している又は将来発症することが検出され、ヘテロ接合で検出された場合に保因者が検出される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ゲノムDNA試料を用いてゲノム配列を調べることにより行なわれる請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記機能喪失型変異が、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、スプライシング異常を生じる変異、及びMYPN遺伝子領域の全体又は一部を欠失する変異から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
被検者の少なくとも一方のアレルに、下記のMYPN遺伝子変異のいずれかが存在するか否かを調べることを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
(1) MYPN遺伝子コード領域の第1129位(配列番号4中の第251位)のCがTになる変異
(2) MYPN遺伝子コード領域の第2003位(配列番号11中の第230位)のAが欠失する変異
(3) MYPN遺伝子コード領域の第3076位より2塩基上流(配列番号15中の第199位)のイントロン中のAがCになる変異
(4) MYPN遺伝子コード領域の第3169位(配列番号16中の第211位)のCがTになる変異
(5) MYPN遺伝子コード領域の第3214位(配列番号16中の第256位)のCがTになる変異
Detailed description of the invention 【技術分野】
【0001】
本発明は、ネマリンミオパチー又はその保因者の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先天性ミオパチーは、筋組織の形態に異常があり、筋緊張や筋力の低下を来す先天性の疾患である。病理学的にいくつかのサブタイプに分類されている。ネマリンミオパチーはそのうちの1つであり、筋線維中のネマリン小体の存在によって組織学的に定義される(非特許文献1)。典型的な臨床徴候として、近位筋優位の筋力低下、筋緊張低下、呼吸・嚥下の障害が挙げられる。眼筋麻痺や心筋の障害はまれである(非特許文献2)。現在までに、ACTA1遺伝子 (MIM 102610)(非特許文献3)、NEB遺伝子 (MIM 161650)(非特許文献4)、TPM3遺伝子 (MIM 191030)(非特許文献5)、TPM2遺伝子 (MIM 190990)(非特許文献6)、TNNT1遺伝子 (MIM 191041)(非特許文献7)、CFL2遺伝子 (MIM 601443)(非特許文献8)、LMOD3遺伝子 (MIM 616112)(非特許文献9)等の筋原線維中の小径フィラメントの構成成分の遺伝子や、小径フィラメントの安定性若しくはターンオーバーに関連するタンパク質をコードするKBTBD13遺伝子 (MIM 613727)(非特許文献10)、KLHL40遺伝子 (MIM 615340)(非特許文献11)、KLHL41遺伝子 (MIM 607701)(非特許文献12)における変異がネマリンミオパチーの原因であることが明らかとなっている。Intranuclear rod myopathy(核内棒状封入物を伴うネマリンミオパチー)はネマリンミオパチーのサブタイプであり、筋細胞の核内に棒状封入物を認めることを特徴とする。この棒状封入物は、これまではACTA1遺伝子に変異を有する重症例のみに認められていた。
【0003】
上記の通り、ネマリンミオパチーの責任遺伝子として既に10遺伝子が報告されているが、これら既知の責任遺伝子に変異を認めない、いわゆる遺伝学的原因不明例が、ネマリンミオパチー全体の25~30%程度存在している(非特許文献12)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Nance, J.R., Dowling, J.J., Gibbs, E.M., and Bonnemann, C.G. (2012). Congenital myopathies: an update. Curr. Neurol. Neurosci Rep. 12, 165-174.
【非特許文献2】Romero, N.B., Sandaradura, S.A., and Clarke, N.F. (2013). Recent advances in nemaline myopathy. Curr. Opin. Neurol. 26, 519-526.
【非特許文献3】Nowak, K.J., Wattanasirichaigoon, D., Goebel, H.H., Wilce, M., Pelin, K., Donner, K., Jacob, R.L., Hubner, C., Oexle, K., Anderson, J.R., et al. (1999). Mutations in the skeletal muscle alpha-actin gene in patients with actin myopathy and nemaline myopathy. Nat. Genet. 23, 208-212.
【非特許文献4】Pelin, K., Hilpela, P., Donner, K., Sewry, C., Akkari, P.A., Wilton, S.D., Wattanasirichaigoon, D., Bang, M.L., Centner, T., Hanefeld, F., et al. (1999). Mutations in the nebulin gene associated with autosomal recessive nemaline myopathy. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 96, 2305-2310.
【非特許文献5】Laing, N.G., Wilton, S.D., Akkari, P.A., Dorosz, S., Boundy, K., Kneebone, C., Blumbergs, P., White, S., Watkins, H., Love, D.R., et al. (1995). A mutation in the alpha tropomyosin gene TPM3 associated with autosomal dominant nemaline myopathy NEM1. Nat. Genet. 9, 75-79.
【非特許文献6】Donner, K., Ollikainen, M., Ridanpaa, M., Christen, H.J., Goebel, H.H., de Visser, M., Pelin, K., and Wallgren-Pettersson, C. (2002). Mutations in the beta-tropomyosin (TPM2) gene--a rare cause of nemaline myopathy. Neuromuscul. Disord. 12, 151-158.
【非特許文献7】Johnston, J.J., Kelley, R.I., Crawford, T.O., Morton, D.H., Agarwala, R., Koch, T., Schaffer, A.A., Francomano, C.A., and Biesecker, L.G. (2000). A novel nemaline myopathy in the Amish caused by a mutation in troponin T1. Am. J. Hum. Genet. 67, 814-821.
【非特許文献8】Agrawal, P.B., Greenleaf, R.S., Tomczak, K.K., Lehtokari, V.L., Wallgren-Pettersson, C., Wallefeld, W., Laing, N.G., Darras, B.T., Maciver, S.K., Dormitzer, P.R., et al. (2007). Nemaline myopathy with minicores caused by mutation of the CFL2 gene encoding the skeletal muscle actin-binding protein, cofilin-2. Am. J. Hum. Genet. 80, 162-167.
【非特許文献9】Yuen, M., Sandaradura, S.A., Dowling, J.J., Kostyukova, A.S., Moroz, N., Quinlan, K.G., Lehtokari, V.L., Ravenscroft, G., Todd, E.J., Ceyhan-Birsoy, O., et al. (2014). Leiomodin-3 dysfunction results in thin filament disorganization and nemaline myopathy. J. Clin. Invest. 124, 4693-4708.
【非特許文献10】Sambuughin, N., Yau, K.S., Olive, M., Duff, R.M., Bayarsaikhan, M., Lu, S., Gonzalez-Mera, L., Sivadorai, P., Nowak, K.J., Ravenscroft, G., et al. (2010). Dominant mutations in KBTBD13, a member of the BTB/Kelch family, cause nemaline myopathy with cores. Am. J. Hum. Genet. 87, 842-847.
【非特許文献11】Ravenscroft, G., Miyatake, S., Lehtokari, V.L., Todd, E.J., Vornanen, P., Yau, K.S., Hayashi, Y.K., Miyake, N., Tsurusaki, Y., Doi, H., et al. (2013). Mutations in KLHL40 are a frequent cause of severe autosomal-recessive nemaline myopathy. Am. J. Hum. Genet. 93, 6-18.
【非特許文献12】Gupta, V.A., Ravenscroft, G., Shaheen, R., Todd, E.J., Swanson, L.C., Shiina, M., Ogata, K., Hsu, C., Clarke, N.F., Darras, B.T., et al. (2013). Identification of KLHL41 Mutations Implicates BTB-Kelch-Mediated Ubiquitination as an Alternate Pathway to Myofibrillar Disruption in Nemaline Myopathy. Am. J. Hum. Genet. 93, 1108-1117.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、遺伝学的原因が不明なネマリンミオパチーの確定診断に有用な新たな指標を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、血族婚家系に発生した小児期~成人期発症のネマリンミオパチー患者に着目した。同患者は、成人後の筋生検で核内棒状封入物を伴うネマリンミオパチーと診断されたが、ACTA1遺伝子には変異が認められなかった。血族婚家系であることから常染色体劣性の遺伝様式を想定し、ホモ接合性マッピング及び全エクソームシークエンシング(WES)を実施して鋭意解析した結果、病因の可能性のあるホモ接合性の変異がミオパラジン(MYPN)遺伝子に発見された。次いで、筋生検で組織学的にネマリンミオパチーと診断されたが遺伝的原因が解明されていない54家系についてWESを実施して鋭意解析した結果、MYPN遺伝子に両アレル性の機能喪失型変異を有する患者をさらに3名同定し、MYPN遺伝子がネマリンミオパチーの責任遺伝子であることを突き止め、本願発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、被検者から分離された試料を用いて、当該被検者がMYPN遺伝子に機能喪失型変異を有するか否かを調べることを含む、ネマリンミオパチー又はその保因者の検出方法を提供する。


【発明の効果】
【0008】
本発明により、MYPN遺伝子がネマリンミオパチーの責任遺伝子であることが初めて明らかとなった。本発明の方法によれば、遺伝学的原因が不明とされていたネマリンミオパチー症例の一部について、遺伝学的な確定診断が可能になる。MYPN遺伝子によるネマリンミオパチーは小児期発症の軽症例の中では比較的頻度が高く、MYPN遺伝子の変異解析により、従来の遺伝子検査では原因不明とされたネマリンミオパチー症例のうち、1-2%程度の症例ではあらたに確定診断が可能となると試算される。ネマリンミオパチーの臨床診断は筋生検の組織観察によって行われるが、筋生検の採取は容易ではない。被検者の臨床症状から先天性ミオパチーの可能性が考えられた時点で本発明を実施することにより、筋生検をする前にネマリンミオパチーを診断可能となることが期待される。片アレル性の変異の検出により保因者診断も可能であるので、遺伝カウンセリングにおいて重要な情報を提供できる。MYPN遺伝子変異を病因とするネマリンミオパチーは発症が比較的遅く、小児期以降に発症するため、発症前に本方法を適用することで発症前診断も可能である。本発明の出生前診断のために本発明を実施することも可能である。
【0009】
原因遺伝子が新たに明らかになることで、遺伝子治療、分子標的薬治療などの治療手段の開発が進むことが期待される。MYPN遺伝子異常によるネマリンミオパチーは小児期発症で進行が比較的緩徐であり、筋病理学的にも軽症であることが特徴である。本疾患の病態解明が進み、なぜ軽症であるかの機序が明らかになれば、その機序を応用してネマリンミオパチー全般に対して軽症化を導く介入治療法の開発が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(A) 両アレル性のMYPN遺伝子変異を有する4家系の家系図である。黒の四角が男性患者、黒の丸が女性患者である。発端者を矢印で示す。全エクソームシークエンシング解析を行なった患者をアスタリスクで示す。-は変異陰性。(B) 実施例で同定されたMYPN遺伝子変異を説明する図である。上段はMYPNタンパク質構造の模式図である。グレーのボックスはコイルドコイルドメイン、黒のボックスはIgドメインである。N末端のCARP結合領域、ネブリン結合領域、及びC末端のα-アクチニン結合領域はそれぞれ図示した通りである。下段には同定されたゲノム変異を変異タンパク質とともに示した。
【図2】患者の骨格筋病理学的検査結果である。液体窒素で冷却したイソペンタン中で筋生検サンプルを凍結させ、-80℃で保存した。サンプルは10μm厚で切り出し、ヘマトキシリン-エオシン染色、ゴモリトリクローム変法染色、NADH-TR等の一連の組織化学的染色を行なった。また、電子顕微鏡観察のため、筋サンプルを2.5%グルタルアルデヒドで固定してカコジル酸バッファー中で維持し、超薄切片を作製した。超薄切片を鉛及びウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡(Tecnai Spirit (FEI、米国オレゴン州Hillsboro), 120 kV)で観察した。症例4からは筋肉の標準的な電顕サンプルを得ることができなかったため、2.5%グルタルアルデヒド-カコジル酸バッファー溶液を用いて凍結切片を固定し、エポン包埋して電顕観察用の薄切片を調製した。(A) ヘマトキシリン-エオシン(HE)染色像である。症例1は今回提示する4症例の中では最も重症で、そのADLは車椅子レベルである。本例では、筋線維のサイズに顕著なばらつきがみられ、筋線維が間質結合組織及び脂肪組織(F)に置換された部分がある。症例2~4では、筋線維のサイズの不均一性は軽度~中等度であり、小さく角張った線維が散在している。明らかな変性変化は認められない。スケールバーは50μm。(B) 筋生検のゴモリトリクローム変法(mGT)染色像である。分散ないしは凝集して濃く染色されたネマリン小体(矢印)を細胞質中に含む筋線維が全ての症例で観察された。ネマリン小体の大部分が丸い形状である。微細な線状の外観を有する核内棒状封入物 (丸で囲んだ部分) が症例1及び4で観察される。スケールバーは10 μm。(C) 電子顕微鏡像である。Z線と同じ電子密度のネマリン小体(矢印)の存在が症例2と3で確認される。小体の大部分が短く、1つのサルコメアの長さよりも長いものはまれである。筋原線維は比較的よく保存されている。症例4では、細胞質内のネマリン小体よりもやや電子密度が低く、格子状の構造を有する核内棒状封入物(挿入図(症例4の電顕像中の枠内拡大図))が観察される。スケールバーは1 μm。
【図3】症例2で同定されたスプライス受容部位の変異(c.3076-2A>C)について、cDNA解析により転写産物を調べた結果である。上段左はMYPN遺伝子のエクソン14~16の正常なスプライス部位を示す。上段右はコントロールcDNA(C)又は症例2の骨格筋のRNAから合成したcDNA(P2)のRT-PCR産物のゲル泳動像である。Cでは1種類の転写産物しかないが、P2では4種の転写産物が見られる。転写産物4はゲル泳動像ではほとんど観察されない。野生型の転写産物説明図の下に、P2で観察された4種の転写産物の説明図を示す。水平方向の矢印はフォワードプライマーとリバースプライマーである。
【図4】(A) 患者の筋生検の免疫組織化学染色像である。10μm厚の筋肉凍結切片をウサギポリクローナル抗MYPN抗体(HPA036298; Atlas Antibodies, スウェーデン国ストックホルム)、マウスモノクローナル抗α-アクチニン抗体(EA-53; Sigma-Aldrich, 米国ミズーリ州St. Louis)、及びDAPI(和光純薬、日本国大阪)で染色した。各切片を蛍光顕微鏡LSM710 (Zeiss, 独国Oberkochen)でZen software (Zeiss)を用いて観察した。コントロールの骨格筋ではMYPNとα-アクチニンが共局在している。症例2~4では、MYPNは染色されず、α-アクチニンは平行に走る線状の正常なパターンを示している。スケールバーは10 μm。(B) 骨格筋生検サンプルのウエスタンブロッティングの結果である。各筋肉サンプルをSDSサンプルバッファー(125 mM Tris-HCl pH 6.8, 5% 3-メルカプト-1,2-プロパンジオール, 2% SDS, 及び10%グリセロール)で溶解させ、NuPAGE 3%~8%トリス-アセテートゲル (Thermo Fisher Scientific, 米国マサチューセッツ州Waltham) 上でウエスタンブロッティングを行なった。一次抗体として、ウサギポリクローナル抗MYPN (HPA036298; Atlas Antibodies) 、マウスモノクローナル抗チューブリンα (DM1A; Sigma-Aldrich, 米国ミズーリ州St. Louis)を用いた。二次抗体とインキュベート後、ECL Western Blotting Detection Reagents (Amersham, 英国Little Chalfont)を用いてPVDF膜を発光させた。症例2~4の骨格筋生検では、全長MYPNタンパク質は検出されない。α-チューブリンはローディングのコントロールである。C1はコントロール1、C2はコントロール2、P2は症例2、P3は症例3、P4は症例4。(C) アデノウイルスを用いて線維芽細胞にMyoD遺伝子を導入発現させ筋管細胞へ分化転換させウエスタンブロッティングを行った。コントロール細胞ではMYPNが検出される。症例1の筋芽細胞ではMYPNが検出されない。ミオシン重鎖7 (MYH7) は骨格筋分化マーカーとして示した。α-チューブリンはローディングのコントロールである。Cはコントロール、P1は症例1。
【図5】(A) サルコメアの構造の模式図である。(B) (A)のZ-I領域(左下の四角枠で囲んだ部分)の拡大図である。MYPNタンパク質のC末端がα-アクチニンと、中央領域がネブリンと、N末端領域がCARPと結合する。
【図6】(A) 野生型マウス及びホモGln526*変異マウスの骨格筋のHE染色像及びmGT染色像である。どちらにも明らかな異常は観察されない。スケールバーは50μm。(B) 野生型、Gln526*ヘテロ、及びGln526*ホモマウスの骨格筋のウエスタンブロッティング結果である。ホモマウスでは全長ないしはGln526*変異に由来する変異型のMYPNタンパク質は検出されない。α-チューブリンはローディングのコントロールである。(C) Gln526*ヘテロ、及びGln526*ホモマウスの骨格筋の電顕像である。ヘテロマウスではZ線に異常を認めない。ホモマウスでは、Z線の乱れ(c)及び肥厚(d)が観察される。さらに、Z線から連続する小さなネマリン様構造(e、及びf(eの枠内拡大画像))が見られる。スケールバーは(a)が0.5μm, (b)が1μm, (c)が0.5μm, (d)が0.2μm, (e)が1μm, (f)が0.2μm。
【図7】MYPN遺伝子の変異がヒトの骨格筋及び心筋に及ぼしていると推察される影響をまとめた図である。「変異のタイプ&接合性」の欄は、野生型(1番)、又はMYPN遺伝子変異の3通りの病理タイプ(2~4番)とそれらの接合性を示す。黒い縦線がMYPN遺伝子アレルを示す。黒いボックスがドミナントネガティブ変異、グレーのボックスが機能喪失型変異である。「タンパク質」の欄は、各変異を有するMYPNタンパク質の種類を示す。黒が野生型MYPN、グレーが優性阻害効果を有する異常型MYPNである。バツ印を重ねたグレーのMYPNはヌルMYPNタンパク質(MYPNたんぱく質がない状態)を示す。「骨格筋」及び「心筋」の欄には、観察された表現型を示し、浸透率はヒト型のシンボルを用いて表した。黒シンボルが健常者、グレーのシンボルが罹患者である。右端の欄には各変異タイプについて想定される遺伝的メカニズムを示した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
MYPN遺伝子(MIM 608517)はミオパラジン(MYPN)をコードする遺伝子である。MYPNはサルコメアZ線及びI帯に局在する145 kDaの多機能タンパク質であり、心筋細胞及び骨格筋細胞の核にも局在する(Bang, M.L. et al., 2001, J. Cell Biol. 153, 413-427; Purevjav, E et al., 2012, Hum. Mol. Genet. 21, 2039-2053.)。MYPNタンパク質は5つの免疫グロブリン(Ig)ドメインを有し、Igドメイン1、2はN末側、Igドメイン3~5はC末側に存在する。MYPNのC末領域及び中央領域がZ線においてα-アクチニン及びネブリン(骨格筋の場合)/ネブレット(心筋の場合)に結合する。MYPN-α-アクチニン-ネブリンがZ線内のアクチンフィラメント及びタイチンフィラメントに係留するリンクを形成し、横紋筋中のI-Z-I体を構築していると考えられている(Bang, M.L. et al., 2001; Purevjav, E et al., 2012)。MYPNのN-末端領域は、I帯でタイチンと結合している心筋アンキリンリピートタンパク質(cardiac ankyrin repeat protein; CARP)に結合する(Bang, M.L. et al., 2001)。CARPは多機能タンパク質であり、サルコメアの構成成分であるとともに核内の転写コファクターでもある(Zou, Y. et al., 1997, Development. 124, 793-804.)。名称は心筋であるが、骨格筋にも存在するタンパク質である。CARPはサルコメア及び核において二重の細胞内局在を示し、MYPNはCARPと共に核を往復する(核でCARPと共存する)(Bang, M.L. et al., 2001)。

【0012】
MYPN遺伝子の変異とヒト疾患との関連の公知例として、片アレル性(ヘテロ接合)のMYPN変異24種類(ミスセンス変異21種類、ナンセンス変異2種類、一塩基欠失変異1種類)が心筋症に関連があることが報告されている(Purevjav, E et al., 2012; Duboscq-Bidot, L. et al., 2008, Cardiovasc. Res. 77, 118-125.など)。優性阻害効果を持つことで心筋症の発症にかかわると想定されている。ただし浸透率が低く、同じ変異をヘテロ接合で有していても必ずしも心筋症になるわけではない(Duboscq-Bidot, L. et al., 2008)。

【0013】
MYPN遺伝子がネマリンミオパチーの責任遺伝子であることはこれまでに報告がなく、本願発明者らが初めて疾患責任遺伝子として同定した。MYPN遺伝子の変異を病因とするネマリンミオパチーは、小児期以降(小児期~成人期)に発症し、ネマリンミオパチーとしては比較的軽症で緩徐進行性である。もっとも、重症例では全身に重度の筋力低下をきたし、日常生活に全介助が必要となるため、早期の診断は重要である。一部の症例では、軽度の呼吸機能低下と心疾患の合併を認める。筋病理検査で核内棒状封入物を認める症例もある。

【0014】
配列表の配列番号21に示す塩基配列は、NCBIのGenBankにNM_032578.3で登録されているMYPN遺伝子mRNAのCDS領域の塩基配列であり、これにコードされるMYPNタンパク質のアミノ酸配列を配列番号22に示す。配列番号1~20には、MYPNの各エクソン及びその近傍のイントロンの配列を表1の通りに示した。配列表に示したこれらのMYPN遺伝子及びタンパク質の各配列は、正常なMYPN配列(野生型配列)の典型例である。MYPN遺伝子変異の有無は、配列表に示されたMYPN遺伝子の配列を基準とし、これらの基準配列との対比により判断され得る。

【0015】
【表1】
JP0006860140B2_000002t.gif

【0016】
本発明において、「ネマリンミオパチーの検出」という語には、ネマリンミオパチーを既に発症している患者の検出(確定診断の補助)の他、まだネマリンミオパチーを発症していないが将来発症するであろう被検者の検出(発症前診断の補助)や、出生前診断の補助が包含される。

【0017】
本発明では、被検者から分離された試料を用いて、被検者がMYPN遺伝子に有害な変異を有するか否かを調べる。ネマリンミオパチーを既に発症している、又は将来発症する患者は、MYPNタンパク質の有害な変異を両アレル性(ホモ接合、又は複合ヘテロ接合)で有する。すなわち、MYPN遺伝子の有害な変異がホモ接合又は複合ヘテロ接合で検出された場合、当該被検者はネマリンミオパチーを発症している、又は将来発症すると判断することができる。MYPN遺伝子の有害な変異が片アレル性(ヘテロ接合)で検出された場合、当該被検者はネマリンミオパチー保因者である。なお、上述した通り、優性阻害効果を持つMYPN遺伝子の片アレル性の変異が心筋症を生じることがあることが知られている。従って、MYPN遺伝子の有害な変異を片アレル性もしくは両アレル性で有する者の中には、心筋症を生じる可能性のある者も存在し得る。

【0018】
被検者は、胎児又は出生後のヒトである。出生後のヒトには、先天性ミオパチー若しくはネマリンミオパチーの疑いのある患者、及び先天性ミオパチー若しくはネマリンミオパチーを発症していないヒト被検者が包含される。

【0019】
ネマリンミオパチーの病因変異であるMYPN遺伝子の「有害な変異」ないしは「病原性の変異」とは、生体内におけるMYPNタンパク質の機能を喪失又は大きく低下させる変異であり、典型的には、MYPNタンパク質の機能の喪失をもたらす変異(機能喪失型変異)である。

【0020】
機能喪失型変異には、エクソン又はイントロン領域内での1個以上の塩基の置換、欠失、挿入、重複等により生じる、ナンセンス変異、フレームシフト変異、スプライシング異常を生じる変異、及びMYPN遺伝子領域の一部を欠失する変異が包含される。ナンセンス変異及びフレームシフト変異は、短縮型のMYPNタンパク質をコードするmRNAを生じるが、そのようなmRNAは多くの場合ナンセンス変異依存mRNA分解(NMD)を受けるため、ホモ変異ではどちらのアレルからもタンパク質が生成されず、その結果MYPNタンパク質の機能が喪失する。スプライシング異常を生じる変異、及びMYPN遺伝子領域の一部を欠失する変異でも多くの場合同様である。また、これらの変異は、部分領域が欠失した異常型のタンパク質ももたらし得る。MYPNタンパク質の機能に重要な領域であるCARP結合領域、ネブリン結合領域、α-アクチニン結合領域のうちの少なくともいずれかが破壊された異常型のタンパク質は、通常、MYPNタンパク質の機能を喪失する。心筋症との関連が報告されている2種類のナンセンス変異(上述)は、正常型MYPNタンパク質の機能を阻害する異常型MYPNタンパク質を生成することが報告されているが、これらは特殊な例であり、ナンセンス変異は一般的にNMD機構の働きでタンパク質の機能喪失をもたらす。もっとも、下記実施例のマウスモデル実験で示される通り、優性阻害効果を持つMYPN遺伝子のナンセンス変異をホモで有する個体ではMYPNタンパク質の生成が失われ、軽度のネマリンミオパチーを呈するので、本発明でいうMYPN遺伝子の有害な変異には優性阻害効果を持つ変異も包含される。また、機能喪失型変異にはミスセンス変異も包含される。MYPNタンパク質の機能に重要な領域において、1以上のアミノ酸残基が性質(疎水性・親水性の強さ、側鎖の大きさ等)の大きく異なるアミノ酸に置換する変異は、構造が非常に不安定ですぐに崩壊する、あるいは凝集して正常に機能できない等の異常を呈する変異タンパク質をもたらし、MYPNタンパク質の機能を喪失させ得る。MYPN遺伝子領域の全体を欠失する変異も、MYPN遺伝子の機能喪失をもたらす変異の一例である。

【0021】
任意のMYPN遺伝子変異が有害な変異であるかどうかは、変異型の塩基配列にコードされるアミノ酸配列から推定できる。また、Human Genetic Variation Database (HGVD)(http://www.genome.med.kyoto-u.ac.jp/SnpDB/)、NHLBI Exome Sequencing Project (ESP6500)(http://evs.gs.washington.edu/EVS/)、Exome Aggregation Consortium (ExAC) Browser(http://exac.broadinstitute.org/)、Exome Variant Server (EVS)(http://evs.gs.washington.edu/EVS/)、dbSNP Short Genetic Variations (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/)、1000 Genomes Project等の、健常者集団のエクソームデータや塩基配列多様性に関する周知のデータベースに登録されているかどうかを調べて、有害な変異かどうかを推定することもできる。MYPN遺伝子の機能喪失型変異をはじめとする有害な変異は健常者にはまれであり、そのようなデータベースには通常登録されていないか、ヘテロ接合性として極端に低頻度でしか観察されない。

【0022】
また、ある遺伝子中のアミノ酸置換変異が病原性変異であるか否かを調べることができる各種の予測ツールが知られている。例えば、SIFT (http://sift.jcvi.org/)、PolyPhen (http://genetics.bwh.harvard.edu/pph/)、PolyPhen-2 (http://genetics.bwh.harvard.edu/pph2/)、Mutation Taster (http://www.mutationtaster.org/)、Align GVGD (http://agvgd.iarc.fr/agvgd_input.php)などが知られている。実際に検出されたMYPN変異について、このような公知の予測ツールを用いて有害な変異であるかどうかを判断することも可能である。SIFTでは、スコア0.05未満の場合、置換はintolerant(タンパク質機能変化に影響あり)と予測される。PolyPhenでは、スコア2.0を超えた場合などに病原性と予測される。PolyPhen-2では、スコア0.000 (良性の可能性が最も大) ~0.999 (有害の可能性が最も大)でスコア付けされ、スコアをもとにした判定がpossiblyあるいはprobably damagingであるときに、病原性変異が強く示唆される。Mutation Tasterでは、病原性又は多型として分類される。Align GVGDでは、Class C0 (可能性小) ~Class C65 (可能性大)の範囲でクラススコア評価され、クラススコアC55以上の変異であれば病原性変異が示唆される。

【0023】
下記表2に示したMYPN遺伝子変異は、実施例において4家系4症例の解析によりネマリンミオパチーの病因変異として同定された、MYPN遺伝子の機能喪失型変異の具体例である。MYPN遺伝子の有害な変異には、これらの変異が包含される。本発明の方法は、これら(1)~(5)の変異のいずれかが存在するか否かを調べることを含んでいてよい。これらの変異が検出された場合に、ネマリンミオパチー又はその保因者が検出される。被検者のゲノムDNA中にこれらの変異が検出されなかった場合は、別の有害な変異がMYPN遺伝子に検出されたときにネマリンミオパチー又はその保因者を検出することができる。

【0024】
【表2】
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【0025】
MYPN遺伝子の変異は、ゲノムDNAやRNA等の核酸試料を用いて塩基配列を解析することで検出可能である。とりわけ、ゲノムDNA試料を用いてゲノム配列の解析を行なうことが最も確実で望ましい。ゲノムDNA等の核酸試料は、末梢血や口腔粘膜スワブ等から常法により容易に調製することができる。また、種々の出生前遺伝子検査法が公知であり、胎児にMYPN遺伝子の有害な変異が存在するかどうかを調べることも可能である。例えば、胎児から細胞を採取して検査する方法(羊水、絨毛、臍帯血を使用)、母体血中に混在している胎児細胞を用いて胎児の遺伝子変異を検査する非侵襲の検査方法、体外受精した受精卵の1細胞を用いる方法(着床前診断)など、種々の手法が公知である。上記非侵襲の検査方法では、母体血試料中の胎児細胞や、該胎児細胞から抽出されたゲノムDNA等の核酸試料が「被検者から分離された試料」であり、被検者は胎児である。

【0026】
タンパク質のアミノ酸配列は、エクソン領域だけではなくイントロン領域における変異によっても影響され得るが、遺伝子検査では通常、エクソン及びその近傍数十~数百塩基程度、例えば30~50塩基程度のイントロン領域を含めて検査するのが一般的である。本発明でも、エクソン及びその近傍のイントロンを対象にダイレクトシークエンシング等により配列解析を行えばよい。ゲノム配列の解析により変異を検出する場合には、本願配列表の配列番号1~20や公知のデータベースから入手可能なMYPN遺伝子のゲノム配列を参照して適宜プライマーを設計し、ゲノムDNA試料を用いて常法によりシークエンシングを行えばよい。被検者ゲノムDNA上のMYPN遺伝子の塩基配列を決定し、これを野生型配列(例えば配列番号1~20の配列)と比較することにより、変異を詳細に同定できる。決定した塩基配列は、例えばSeqScape (登録商標) 等の公知のソフトウェアを用いて解析することにより、変異の検出やプロファイリングを容易に行うことができる。

【0027】
変異がホモかヘテロかは、シークエンスの波形データから確認できる。ヘテロ変異の場合、同一部位に2種類のシグナルが重なることになる。ヘテロ変異が2箇所以上ある場合、クローニングして配列決定すれば、変異が複合ヘテロであるかどうか(すなわち、変異が異なる染色体上に存在するかどうか)を確認できる。被検者の両親のゲノムDNA試料が入手可能な場合には、両親が各変異を有しているかを調べることによって被検者の複合ヘテロを確認することもできる。

【0028】
ゲノムからMYPN遺伝子全長が欠失している場合には、エクソン領域の増幅断片が得られない。一部領域が欠失している場合には、一部のエクソンからの増幅断片が得られない、又は、野生型と比較して小さいサイズの増幅断片が得られる、といった変化が生じる。従って、増幅の有無又は増幅断片のサイズに基づいて遺伝子領域の全部又は一部の欠失を判断することも可能である。

【0029】
ヘテロ二本鎖の検出により遺伝子変異をスクリーニングする手法も知られている。ヘテロや複合ヘテロの変異が存在する場合、ゲノムDNA試料を熱変性後に再会合させることにより、正常型DNAと変異DNAとがハイブリダイズしたヘテロ二本鎖が生じる。ヘテロ二本鎖は、(1)非変性ポリアクリルアミドゲル中で異なる移動度を示す、(2)ミスマッチ部分の塩基は化学物質や酵素による切断を受けやすい、(3)変性の際に異なる変性温度を示す、といった特性を有する。これらの特性を利用してヘテロ二本鎖を検出する方法がこの分野において公知であり、変異の検査方法として実用化もされている。具体的には、例えば、変性高速液体クロマトグラフィー(dHPLC)を用いてヘテロ二本鎖を検出する方法や、High Resolution Melt法が知られている。

【0030】
High Resolution Melt法とは、二本鎖DNAに高密度で結合する蛍光色素(SYTO(登録商標)9, LC Green(登録商標), EvaGreen(商標)等)を用いて、二本鎖DNAの融解(熱変性)の過程を蛍光強度の変化としてとらえ、ヘテロ二本鎖を検出する方法である。すなわち、二本鎖DNAに高密度で結合する蛍光色素を用いて二本鎖DNAを染色すると、該二本鎖DNAを融解(熱変性)させたとき、二本鎖が解離した部位から蛍光色素が脱落するため、二本鎖DNAからの蛍光シグナルの量が減少する。従って、そのような蛍光色素を用いることで、二本鎖DNAの熱変性の過程を蛍光強度の変化として視覚的にとらえることができる。温度-蛍光のデータを高密度で取得し解析することで、ヘテロ二本鎖の検出を迅速に高感度で行うことができる。市販の機器類及びキット等を用いて容易に実施可能である。変異がホモである場合、High resolution melt法の検出感度は低くなると想定されるが(検出できないわけではない)、常染色体劣性遺伝の本疾患では複合ヘテロ変異の症例も多いことが想定されるため、High Resolution Melt法等のヘテロ二本鎖検出は本発明でも有効な検査方法となり得る。

【0031】
MYPNタンパク質はサルコメア成分(α-アクチニン、ネブリン、CARP)と相互作用しているが、本発明が対象とするネマリンミオパチー症例ではMYPNタンパク質レベルが検出限界未満まで低下することが確認されており、MYPNタンパク質の欠失によりサルコメア構造の維持が損なわれてネマリンミオパチーが生じることが推察される。従って、α-アクチニン、ネブリン、及びCARPの少なくとも1種、例えばいずれか2種以上、又は3種全てと化合物群との結合性を調べ、結合性を有する化合物を選択することにより、ネマリンミオパチーの治療剤ないしは症状緩和剤をスクリーニングすることができる。ヒトを初めとする各種の哺乳動物のα-アクチニン、ネブリン、CARPの遺伝子配列及びアミノ酸配列の情報は、NCBIのGenBankなど公知のデータベースから入手できる。これらのサルコメア成分は、MYPNタンパク質との結合に必要な領域のみを調製して使用してもよい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
実験プロトコールは各地域の倫理委員会(症例1は横浜市立大学医学部、症例2~4は国立精神・神経センター)に承認された。全ての患者とその両親から書面によるインフォームドコンセントを得た。臨床情報は診療歴から得た。マウス実験は、ユニバーシティ・オブ・テネシー・ヘルス・サイエンス・センターのInstitutional Animal Care and Use Committeeにより承認されたプロトコールに従った。
【実施例】
【0034】
独立した4家系より、両側性のMYPN変異を有する患者4名を同定した。4症例の臨床徴候を表3に示す。
【実施例】
【0035】
症例1(図1Aの家系1のV-3)は血族婚家系で発生した患者であり、この患者の解析によりMYPN変異が初めて同定された(後述)。過去の診療歴によると、発達の遅れはなかったが、首のすわりが悪かった。12歳時に胸郭の変形(漏斗胸)と心肥大を指摘された。25歳時に階段を上りにくいことに気付いたのが最初の自覚症状であった。27歳時に筋生検で核内棒状封入物を伴うネマリンミオパチーと診断された。39歳時に完全に車いす生活となった。48歳時には顔面、四肢、体幹、頚部の筋力低下、肺活量の低下を認め、全介助状態となった。
【実施例】
【0036】
症例2(図1Aの家系2のII-1)、症例3(家系3のII-5)、及び症例4(家系4のII-1)では、最初の症状として歩行障害が10歳以前(4~10歳頃)に現れた。
【実施例】
【0037】
4症例の全てで、緩徐進行性の筋力低下が四肢(特に下肢)と頚部に最初に認められた。症例1、2、4の3名では顔面にも筋力低下が認められ、症例1ではよりマイルドな徴候が認められた。少なくとも臨床情報が得られた症例1及び症例4では、外眼筋は関与しておらず、過剰の流涎は認めなかった。患者のうちの3名は起立と歩行が可能であったが多少の困難さがあった。症例1(最重症例)は39歳時に車椅子生活となり、日常生活に介助が必要となった。患者のうちの2名には心臓障害があった(症例1で心肥大、症例4で1度の房室ブロックを伴う心臓の収縮機能低下)。呼吸機能では、2名の患者(症例1、4)で明白な呼吸不全を伴わない肺活量の低下を認めた。嚥下障害はいずれの症例でも認めなかった。若干の骨格異形成を3名で認めたが、いずれの症例でも拘縮は認めなかった。血清クレアチンキナーゼは全員で比較的低値であった(症例1~4でそれぞれ18, 13, 26, 及び35 IU/L)。4名とも知能は正常であった。
【実施例】
【0038】
【表3】
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【実施例】
【0039】
症例1の46歳時、症例4の35歳時にそれぞれ筋CTを実施した。症例4では近位筋優位の筋萎縮を認めた。頚筋、臀筋及び大腿筋の萎縮が特に顕著であった。興味深いことに、大腿において、縫工筋、薄筋、及び大腿二頭筋短頭が高度に変性しており、大部分が脂肪組織に置換されていた。斑状の低吸収領域が特に半腱様筋に観察された(データ省略)。症例1では、ネマリンミオパチーが最も進行した段階で筋CTを実施した。筋肉はびまん性に萎縮していたが下肢に近位筋優位の筋萎縮パターンが残存しているのを認めた(データ省略)。
【実施例】
【0040】
骨格筋生検を用いた筋病理学的検査によると、4症例には、筋線維サイズが軽度~中等度に不均一である、ゴモリトリクローム変法染色像で散在した筋線維中に顆粒形状のネマリン小体が観察される、という類似した特徴を認めた(図2A及びB)。症例1では、筋線維の数が減少し広範囲で脂肪組織に置換され、結合組織の増加も見られた。核内棒状封入物は症例1と症例4で観察された(図2B及びC)。タイプ1線維が優勢であることは先天性ミオパチーで共通してみられる所見であり、4症例の全てでミオシンATPアーゼ染色により当該所見が確認された(データ省略)。電子顕微鏡検査により、症例2~4でもネマリン小体が確認された(図2C)。
【実施例】
【0041】
我々は、まず血族婚家系で発生した症例1について遺伝学的解析を行なった。筋生検で核内棒状封入物が観察されたことから、サンガーシークエンシングによりACTA1変異を検索したが、変異は発見されなかった。
【実施例】
【0042】
血族婚家系であることから常染色体劣性の遺伝様式を想定し、ホモ接合性マッピングを実施した。症例1の唾液サンプルよりOrageneDNA (DNA Genotek, Ottawa, Canada)を用いて抽出した発端者ゲノムDNAのゲノムワイドジェノタイピングには、Genome-wide Human SNP Array 6.0 (Affymetrix, 米国カリフォルニア州Santa Clara)を用いた。ホモ接合性領域の同定にはHomozygosityMapper(Seelow, D., et al. (2009) Nucleic Acids Res. 37 , W593-599.)を用いた。その結果、全ゲノム中に6箇所のホモ接合性領域(合計サイズ47.6 Mb)が同定された(表4)。
【実施例】
【0043】
【表4】
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【実施例】
【0044】
次いで、唾液サンプルよりOrageneDNA (DNA Genotek, Ottawa, Canada)を用いて抽出した発端者ゲノムDNAの全エクソームシークエンシング(WES)を既報の通りに実施した15。簡潔に記載すると、SureSelect Human All Exon V4 (Agilent Technologies, 米国カリフォルニア州Santa Clara) を用いてゲノムDNAをキャプチャーし、Illumina HiSeq2000を用いて101-bpのペアエンドリードでシークエンシングを行なった。リードのアライメントはNovoalignを用いてGRCh37に対して行なった。PCR duplicateの除去にはPicardを用いた。インデル周辺のローカルリアライメント及びクオリティスコアのリキャリブレーションにはGenome Analysis Toolkit (GATK)を用いた。GATK UnifiedGenotyperにより変異をコールし、Broad Institute’s best-practice guidelines (バージョン3)に基づいてフィルタリングした。臨床的関連性があるものとしてフラグされなかった、dbSNP135データベース (マイナーアレル頻度≧0.01) に登録されているコモン変異は除外した。フィルターをパスした変異のアノテーションにはANNOVARを用いた16。RefSeqコーディング配列に対するWESの平均カバレッジ深度は102×であり、全コーディング配列の塩基の94%が10以上のリードにカバーされていた。
【実施例】
【0045】
健常者ではほとんど見られない、359のまれな変異(タンパク質を改変する変異又はスプライスサイト変異)が抽出されたが、この359個の変異の中には、ACTA1遺伝子やネマリンミオパチーに関連性のある他の9遺伝子における病原性の変異は発見されなかった。MYPN遺伝子(NM_032578.3)のホモ接合性c.2003delA変異は、p.Asn668Thrfs*25(668番AsnがThrになり、692番目が停止コドンになる)を生じると予測され、この変異がホモ接合性領域内に位置する唯一のホモ接合性変異であった。サンガーシークエンシングにより当該MYPN遺伝子変異を確認した(図1B)。
【実施例】
【0046】
症例1でホモ接合性のMYPN遺伝子変異を発見した後、筋生検で組織学的にネマリンミオパチーと診断されたが遺伝的原因が解明されていない54家系について、HiSeq1000 (Illumina) を用いてWESを行なった。このコホートには、発症年齢が高く(発症年齢の平均値は25歳、中央値は26歳)比較的軽症のネマリンミオパチー症例が含まれていた。このコホートでは、ターゲットシークエンシング及びWESのいずれかで、先天性ミオパチーとの関連が知られている遺伝子には原因の可能性のある変異は検出されなかった。
【実施例】
【0047】
末梢血白血球又は筋生検よりゲノムDNAを抽出し、SureSelect Human All Exon V5 (Agilent Technologies) を用いたsolution captureに付して、バーコード化全エクソームシークエンシングライブラリーを生成した。これらのライブラリーをIllumina HiSeq 1000 sequencerを用いて100 bpのペアエンドリードでシークエンシングした。症例2~4に対するWESによる平均カバレッジ深度はそれぞれ69×, 97×, 及び111×であり、全コーディング配列の塩基の90%, 95%, 及び99%が10以上のリードにカバーされていた。アライメント、変異コーリング、及びアノテーションはBWA20、Picard、GATK、及びANNOVARを用いて行なった。
【実施例】
【0048】
その結果、予想した通り、症例2~4においてMYPN遺伝子に両アレル性の短縮型変異が同定された。変異は全てサンガーシークエンシングにより確認した(図1B)。症例2には、スプライス受容部位にホモ接合性の変異(c.3076-2A>C)があった。症例3には、p.Arg377*(第377番Argが停止コドンに変化)をもたらすホモ接合性のナンセンス変異(c.1129C>T)があった。症例4の変異は複合ヘテロ接合であり、p.[Arg1057*]+[Arg1072*](第1057番Argが停止コドンに変化+第1072番Argが停止コドンに変化)をもたらすナンセンス変異c.[3169C>T];[3214C>T]が同定された。複合ヘテロ接合性は両親のDNA解析により確認した。
【実施例】
【0049】
c.1129C>T以外の変異はいずれも、公表されているヒト変異の情報源 [健常日本人コントロール1208人のエクソームデータが登録されているHuman Genetic Variation Database (HGVD) 21、及びNHLBI Exome Sequencing Project (ESP6500)、Exome Aggregation Consortium (ExAC) Browser]には存在しなかった。The c.1129C>T変異はExACデータベースに登録されていたが、頻度は極端に低く(0.000008246)、フィンランド人を除くヨーロッパ人集団由来の66,674アレルのうちの1つにヘテロ接合で登録されているのみであった(表5)。これら3症例では、ネマリンミオパチーとの関連が知られている遺伝子には病原性の変異が発見されなかった。従って、我々のネマリンミオパチーコホートでは54家系中3家系(5.6%)がMYPN遺伝子に変異を有すると結論づけた。
【実施例】
【0050】
【表5】
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【実施例】
【0051】
症例2ではスプライス受容部位の変異(c.3076-2A>C)をホモ接合で有していたことから、筋生検から抽出した全RNAを用いてcDNA解析を行なった。全RNAは、TRIzol Reagent(Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州Waltham)又はRNeasy Mini Kit(Qiagen, 独国Hilden)を用いて凍結筋生検サンプルより抽出し、SuperScript IV(Thermo Fisher Scientific)を用いて逆転写した。スプライス部位変異の隣接領域に対するプライマーはPrimer3を用いて設計した。cDNA部分領域の増幅にはPCR Master Mix(Promega、米国ウィスコンシン州Madison)を用いた。QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen)を用いてアガロースゲルからPCR産物を抽出し、ダイレクトシークエンシングにより又はTAクローニングして配列を決定した。その結果、以下の4種類の異常転写産物が同定された(図3)。
1. r.3076-2A(エクソン15の第1番塩基より2塩基上流のA)がCになる置換変異を含んだイントロン14の全長の挿入(r.3076-2A>C ;3075_3076ins3075+1_3076-1)
2. エクソン15の最初の5塩基の欠失(r.3076_3080del)
3. エクソン15の最初の11塩基の欠失(r.3076_3086del)
4. エクソン15の読み飛ばしとエクソン16の最初の73塩基の欠失(r.3076_3231del)
【実施例】
【0052】
1~3の転写産物は短縮型のMYPNタンパク質(p.Gly1026Valfs*21, p.Gly1026Asnfs*59, 及びp.Gly1026Leufs*57)をコードし、ナンセンス変異依存mRNA分解(NMD)を受ける。4の転写産物は、発現量はわずかであるが、MYPNタンパク質の第1026番Gly~第1077番Glnの52残基の欠失(p.Gly1026_Gln1077del)をもたらし、異常型のMYPNタンパク質を生じる。この異常型MYPNタンパク質は、Igドメイン3、4が破壊されてα-アクチニン結合領域が欠失しており、機能的に障害されていると考えられる(図3)。
【実施例】
【0053】
症例2~4より入手できた上腕二頭筋の凍結筋生検を用いてさらなるタンパク質解析を実施した。症例1では筋生検サンプルが消耗していたため、皮膚線維芽細胞を入手し、既報22-24の通りにアデノウイルスを用いて皮膚線維芽細胞にMyoDを導入発現させ、これを筋管細胞へ分化転換させた。抗MYPN抗体(HPA036298; Atlas Antibodies, スウェーデン国Stockholm)及び抗α-アクチニン抗体(EA-53; Sigma-Aldrich, 米国ミズーリ州St. Louis)を用いて免疫組織化学染色を行なった結果、MYPNタンパク質はコントロールの筋肉ではα-アクチニンと共にZ線に存在していたが、症例2~4の筋肉ではMYPNタンパク質の染色が検出されなかった(図4A)。抗MYPN抗体及び抗チューブリンα抗体(DM1A; Sigma-Aldrich)を用いたウエスタンブロッティングの結果によると、分化転換して得た症例1の筋管細胞及び症例2~4の筋肉では、全長MYPNタンパク質は検出できなかった(図4B及びC)。これらの結果は、MYPNタンパク質レベルがナンセンス変異又はスプライス部位変異によって著しく低下していることを示唆している。MYPNタンパク質とサルコメア成分とが相互作用することを考慮すると、MYPNタンパク質の欠失はサルコメア構造の維持に悪影響を及ぼしてネマリンミオパチーを生じているのかもしれない(図5)。
【実施例】
【0054】
MYPNとネブリンの相互作用を考慮し、症例3、4由来の骨格筋について、抗ネブリン抗体(N-9891; Sigma-Aldrich)及び抗α-アクチニン抗体(ab137346; Abcam, 英国Cambridge)を用いてネブリンの免疫組織学的解析を行なった。その結果、ネブリンはZ線間に正常に局在しており、コントロールと比較して変化は認められなかった(データ省略)。さらに、ファロイジン染色及び/又は電子顕微鏡観察により、症例2、3及びコントロールのアクチンフィラメント長を測定した。コントロールと比較してアクチンフィラメント長に明らかな変化は認められなかった(データ省略)。
【実施例】
【0055】
現在までに、MYPN遺伝子の24種類の片アレル性ヘテロ変異が、その浸透率は不完全であるものの、肥大型心筋症 (HCM, MIM 615248)、拡張型心筋症 (DCM, MIM 615248)、拘束型心筋症 (RCM, MIM 615248)、の不整脈突然死症候群又は幼児突然死 (as of October 2, 2016) (Figure S8)を生じることが報告されている18; 25; 26; 27。これらの変異のうち21種がミスセンス変異18; 25; 28-30、2種がナンセンス変異18、1種が一塩基欠失であり25、これらの大部分が優性阻害効果を有すると考えられている(図7の2)18; 25; 31。3種の短縮型変異のうち、c.1585C>T (p.Gln529*)とc.2653C>T (p.Arg885*)の2つは各エクソン接合部の50-bp上流領域内の変異であり、NMDを受けていないことが暗示される。当該短縮型MYPDは優性阻害効果を生じているかもしれない。MYPN遺伝子にc.248delT (p.Ile83Thrfs*23) 変異を有するDCM症例の報告はこれまでに1例のみであり、発現解析の結果からハプロ不全が原因の機構として推察された25。既に報告されている25家系内での当該変異の不完全浸透度を考慮すると、心筋症における病原性について確定的な結論を下すことは困難である。
【実施例】
【0056】
MYPN遺伝子のヘテロ接合性c.1585C>T (p.Gln529*)変異の場合、NMDを回避して65-kDaの短縮型MYPNタンパク質を産生し、これがZ帯の構築を傷害する「毒性ペプチド」として働くことが実験的に確認されている18; 31。ヘテロ接合性のMYPN-Gln526* 変異 (MYPNWT/Gln526*)は、ヒトのヘテロ接合性MYPN遺伝子のc.1585C>T(p.Gln529*)変異に相当するが、このヘテロ変異を有するノックイン変異マウスの表現型はRCMに関連があった31。ホモ接合性のMYPN-Gln526* 変異(MYPNGln526*) を有する変異マウスでは、心臓及び骨格筋でのMYPN遺伝子mRNAの転写が障害されていた31。そこで我々は、MYPN-Gln526*ホモ接合体がMYPN遺伝子のヌルモデルとみなせるものとし、ヒトのネマリンミオパチーのモデルとして3か月齢のMYPNGln526*マウスの骨格筋サンプルを解析した。同齢のヘテロMYPNWT/Gln526*及び野生型 (WT) 同腹仔をコントロールとした。既報31の通り、ヘマトキシリン-エオシン染色及びゴモリトリクローム染色では、ホモ変異マウスと野生型マウスの両者で骨格筋中に明らかな異常は認められなかった(図6A)。ウエスタンブロッティングの結果より、野生型及びヘテロ変異マウスには全長MYPNタンパク質が存在するが、ホモ変異マウスには全長ないしは短縮型のMYPNタンパク質は存在しないことが明らかとなった(図6B)。電子顕微鏡観察では、ホモ変異マウスでZ帯の乱れ及びネマリン小体様構造物が観察され、ヘテロ変異マウス及び野生型マウスでは正常なサルコメア構造が観察された(図6C)。このことは、ホモ変異マウスに軽度のネマリンミオパチーがあることを意味している。電顕観察ではホモマウスに軽度のZ線異常が認められたものの筋力低下は認められず、臨床的に軽症のヒトのネマリンミオパチーに矛盾しないネマリンミオパチーを再現できたといえる31。月齢がさらに進んだホモ変異マウスが筋力低下の症状を示す可能性は否定されない。
【実施例】
【0057】
症例1は12歳時に心肥大が認められ、症例4は心臓の運動低下を呈したことから、これらのMYPN遺伝子変異が軽度の心筋症にも関連している可能性があると考えられた。そこで、症例4の両親に対し、胸部X線、心電図、及び心エコー検査を実施した。これらの検査により、心臓は関連しないことが明らかとなり、これらのMYPN遺伝子変異のハプロ不全は心筋サルコメアの維持を障害するほどには有害ではないと考えられた。ヘテロ接合性のドミナントネガティブMYPN遺伝子変異を有する個体と両アレル性の機能喪失型MYPN遺伝子変異を有する個体との間では異なる分子メカニズムが想定されるため、心筋の病理学的変異にも差異があるかもしれない。このコンセプトを明らかにするため、変異のタイプ、接合性、表現型、及び浸透率に基づき下記のモデルを提案する。
(i) ヘテロ接合性のドミナントネガティブMYPN遺伝子変異は心筋症に関連し得るが、その浸透率は不完全である(図7の2)。
(ii) 両アレル性の機能喪失型変異は高い浸透率でネマリンミオパチーに関連し、低い浸透率で軽度の心筋症に関連する(図7の3)。
(iii) ヘテロ接合性の機能喪失型変異は、おそらく骨格筋及び心筋の表現型の乱れとは関連がない。
【実施例】
【0058】
既に報告されている1家系では心筋症との関連が示唆されていることから、ヘテロ接合性の機能喪失型変異が心筋症と関連する可能性は除外されない(図7の4)。
【実施例】
【0059】
<使用したウェブリソース>
Exome Aggregation Consortium Browser, http://exac.broadinstitute.org/
Human Genetic Variation Database, http://www.genome.med.kyoto-u.ac.jp/SnpDB/
NHLBI Exome Sequencing Project, http://evs.gs.washington.edu/EVS/
dbSNP Short Genetic Variations, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP/
Novoalign, http://www.novocraft.com/products/novoalign/
The Genome Analysis Toolkit (GATK), https://www.broadinstitute.org/gatk/
Picard, http://broadinstitute.github.io/picard/
Annovar, http://annovar.openbioinformatics.org/en/latest/
Polyphen2, http://genetics.bwh.harvard.edu/pph2/
SIFT, http://sift.jcvi.org/
MutationTaster, http://www.mutationtaster.org/
RefSeq, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/refseq/
UCSC Human Genome Browser, https://genome.ucsc.edu/
OMIM, http://www.omim.org/
HomozygosityMapper, http://www.homozygositymapper.org/
Primer3, http://bioinfo.ut.ee/primer3-0.4.0/
【実施例】
【0060】
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Drawing
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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