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Specification :フッ素吸着材及びその製造方法

Country 日本国特許庁(JP)
Gazette 特許公報(B1)
Patent Number 特許第5751685号 (P5751685)
Date of registration 平成27年5月29日(2015.5.29)
Date of issue 平成27年7月22日(2015.7.22)
Title of the invention, or title of the device フッ素吸着材及びその製造方法
IPC (International Patent Classification) B01J  20/20        (2006.01)
B01J  20/30        (2006.01)
B03C   1/00        (2006.01)
C02F   1/28        (2006.01)
C01B  31/02        (2006.01)
H01F   1/36        (2006.01)
FI (File Index) B01J 20/20 B
B01J 20/30
B03C 1/00 A
C02F 1/28 L
B03C 1/00 B
C01B 31/02 101Z
H01F 1/36
Number of claims or invention 9
Total pages 18
Application Number 特願2014-124033 (P2014-124033)
Date of filing 平成26年6月17日(2014.6.17)
Date of request for substantive examination 平成26年12月3日(2014.12.3)
Patentee, or owner of utility model right 【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
Inventor, or creator of device 【氏名】山口 大造
Accelerated examination, or accelerated appeal examination 早期審査対象出願
Representative 【識別番号】100113181、【弁理士】、【氏名又は名称】中務 茂樹
【識別番号】100180600、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 俊一郎
Examiner 【審査官】長谷川 真一
Document or reference 特開2014-069973(JP,A)
特開平07-075778(JP,A)
特開2013-035743(JP,A)
特開2013-000696(JP,A)
特開2010-269241(JP,A)
国際公開第2009/031562(WO,A1)
特開平10-034137(JP,A)
Field of search B01J 20/00-20/34
C02F 1/28
Abstract 【課題】液体に含まれるフッ素イオンを、磁力を用いて効率良く除去することのできるフッ素吸着材を提供する。
【解決手段】無定形炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散した炭素質複合体からなり、該磁性粒子の平均粒径が2~100nmであり、かつ炭素原子に対する金属原子のモル比(Metal/C)が0.001~0.5であることを特徴とするフッ素吸着材。炭素質複合体のBET比表面積が150m/gを超えることが好ましい。前無定形炭素がグラフェンシートを含むことも好ましい。
【選択図】図4
Scope of claims 【請求項1】
無定形炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散した炭素質複合体からなり、該磁性粒子の平均粒径が2~100nmであり、かつ炭素原子に対する金属原子のモル比(Metal/C)が0.001~0.5であることを特徴とするフッ素吸着材。
【請求項2】
前記金属酸化物が酸化鉄、酸化コバルト及び酸化ニッケルからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のフッ素吸着材。
【請求項3】
BET比表面積が150m/gを超える請求項1又は2に記載のフッ素吸着材。
【請求項4】
前記無定形炭素がグラフェンシートを含む請求項1~3のいずれかに記載のフッ素吸着材。
【請求項5】
保磁力が500Oe以下であり、飽和磁化が2~50emu/gである請求項1~4のいずれかに記載のフッ素吸着材。
【請求項6】
炭素原子に対する水素原子の比(H/C)が1未満である請求項1~5のいずれかに記載のフッ素吸着材。
【請求項7】
前記無定形炭素が水溶性の多糖を炭化させて得られたものである請求項1~6のいずれかに記載のフッ素吸着材。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のフッ素吸着材の製造方法であって、
水溶性の金属塩と水溶性の多糖とを水の存在下で混合する第1工程と、
前記第1工程で得られた混合物を炭化させる第2工程とを備えるフッ素吸着材の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載のフッ素吸着材とフッ素イオンを含む液体とを接触させて該液体に含まれるフッ素イオンを吸着させた後、前記フッ素吸着材を磁力によって回収するフッ素イオンの除去方法。
Detailed description of the invention 【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に含まれるフッ素イオンを吸着するためのフッ素吸着材に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素は自然界に多く存在するため、地下水に環境基準を超えるフッ素が含まれることがある。また、半導体製造工場、メッキ工場等から排出される液体にはフッ素が含まれることがある。現在、フッ素の取り扱いには厳しい管理が課されていて、規制値として環境基準(0.8mg/L以下)が定められている。そのため、環境基準を超えるフッ素を含有する地下水や工業排水に対しては上記の基準を満たすための処理が必要である。
【0003】
現在、液体中のフッ素イオンを効率よく分離することのできる吸着材が模索されていて、例えば、以下のようなものを挙げることができる。
【0004】
特許文献1には、液体中のフッ素イオンやホウ素を吸着するための磁性吸着剤が記載されている。この磁性吸着剤は、磁性体粒子と、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウムとを、水性樹脂エマルジョンまたは水溶性樹脂を用いて結着させたものである。この磁性吸着剤は、フッ素イオンやホウ素を含む液体に入れられ、フッ素イオンやホウ素を吸着した後、磁力によって回収される。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている磁性吸着剤は、磁性体粒子と、フッ素イオンを吸着する物質(ハイドロタルサイト等)とを、結着剤を用いて結着させたものである。そのため、フッ素イオンやホウ素を含む液体に磁性吸着剤を投入して混合すると、混合による衝撃や結着剤の溶解などによって、磁力に反応する物質とフッ素イオンを吸着する物質とが分離してしまうことが懸念される。液体中でそれらが分離してしまうと磁性体粒子のみが磁力で分離され、液体中のフッ素イオンやホウ素を効率良く除去することができない。
【0006】
一方、これまで本発明者は、無定形炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散した炭素質複合体を作製し、この炭素質複合体が吸着材として利用できることを報告した(特許文献2及び3)。当該炭素質複合体は、表面に酸性官能基を有するので、吸着させる物質としてはカチオン種が好適であると考えられていた。そして、特許文献3の実施例では、セシウムイオンやメチレンブルーを吸着したことが具体的に示されている。このようなことから、当該炭素質複合体がアニオン種を吸着することは困難であると考えられていた。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2013-154318号公報
【特許文献2】特開2013-35743号公報
【特許文献3】特開2014-69973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、液体に含まれるフッ素イオンを、磁力を用いて効率良く除去することのできるフッ素吸着材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は無定形炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散した炭素質複合体からなり、該磁性粒子の平均粒径が2~100nmであり、かつ炭素原子に対する金属原子のモル比(Metal/C)が0.001~0.5であることを特徴とするフッ素吸着材を提供することによって解決される。このとき、前記金属酸化物が酸化鉄、酸化コバルト及び酸化ニッケルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
また、前記炭素質複合体のBET比表面積が150m/gを超えることが好ましい。前記無定形炭素がグラフェンシートを含むことも好ましい。保磁力が500Oe以下であり、飽和磁化が2~50emu/gであることも好ましい。炭素原子に対する水素原子の比(H/C)が1未満であることも好ましい。前記無定形炭素が水溶性の多糖を炭化させて得られたものであることも好ましい。
【0011】
上記課題は、上記フッ素吸着材の製造方法であって、水溶性の金属塩と水溶性の多糖とを水の存在下で混合する第1工程と、前記第1工程で得られた混合物を炭化させる第2工程とを備えるフッ素吸着材の製造方法を提供することによっても解決される。
【0012】
本発明の好適な実施態様は、上記フッ素吸着材とフッ素イオンを含む液体とを接触させて該液体に含まれるフッ素イオンを吸着させた後、前記フッ素吸着材を磁力によって回収するフッ素イオンの除去方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液体に含まれるフッ素イオンを、磁力を用いて効率良く除去することのできるフッ素吸着材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】合成例1で得られたフッ素吸着材の走査型電子顕微鏡写真(SEM像)を示した図である。
【図2】合成例1で得られたフッ素吸着材の透過型電子顕微鏡写真(TEM像)を示した図である。
【図3】合成例1で得られたフッ素吸着材の透過型電子顕微鏡写真(TEM像)を示した図である。
【図4】合成例2で得られたフッ素吸着材の透過型電子顕微鏡写真(TEM像)を示した図である。
【図5】合成例1で得られたフッ素吸着材のBJH法により解析した細孔分布曲線を示した図である。
【図6】合成例3で得られたフッ素吸着材のBJH法により解析した細孔分布曲線を示した図である。
【図7】合成例1で得られたフッ素吸着材のHK法により解析した細孔分布曲線を示した図である。
【図8】合成例1で得られたフッ素吸着材の粉末X線回折法による定性分析結果を示した図である。
【図9】合成例3で得られたフッ素吸着材の粉末X線回折法による定性分析結果を示した図である。
【図10】合成例1で得られたフッ素吸着材のX線光電子分光法ワイドスキャン測定の結果を示した図である。
【図11】合成例1及び2で得られたフッ素吸着材のX線光電子分光法ナロースキャン測定(O1s)の結果を示した図である。
【図12】合成例1及び2で得られたフッ素吸着材のX線光電子分光法ナロースキャン測定(C1s)の結果を示した図である。
【図13】合成例1及び2で得られたフッ素吸着材のX線光電子分光法ナロースキャン測定(Fe2p)の結果を示した図である。
【図14】合成例1で得られたフッ素吸着材の赤外分光測定結果を示した図である。
【図15】合成例1で得られたフッ素吸着材のラマン分光測定の結果を示した図である。
【図16】合成例1及び2で得られたフッ素吸着材の磁気曲線を示した図である。
【図17】合成例3で得られたフッ素吸着材の磁気曲線を示した図である。
【図18】合成例4で得られたフッ素吸着材の磁気曲線を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のフッ素吸着材は、無定形炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散した炭素質複合体からなるものである。

【0016】
これまで、本発明者は上記炭素質複合体を作製し、この炭素質複合体を吸着材として用いることができることを報告した(特開2013-35743号及び特開2014-69973号公報)。当該炭素質複合体は、表面にカルボキシル基などの酸性官能基を多く有するため、吸着させる物質としてはカチオン種が好適である。実際、特開2013-35743号公報の実施例では、セシウムイオンやメチレンブルーを吸着したことが具体的に示されている。

【0017】
一方、表面にカルボキシル基などの酸性官能基を多く有するということは、アニオン種の吸着には不利であるということである。そのため、上記炭素質複合体がアニオン種を吸着することは困難であると考えられていた。しかしながら、アニオン種の吸着には不利な特性であるにもかかわらず、上記炭素質複合体がフッ素イオンを効率良く吸着することができたことは本発明者が検討して初めて明らかとなったことであり、まさに驚くべきことである。

【0018】
本発明の炭素質複合体が効率良くフッ素イオンを吸着することができる理由は必ずしも明らかではないが、炭素質複合体が多孔質であって比表面積が大きいことがフッ素イオンの吸着に大きく影響を与えていると推測している。また、無定形炭素のマトリックス中に分散した金属酸化物もフッ素イオンの吸着に何らかの影響を与えているのではないかと推測している。

【0019】
本発明のフッ素吸着材を用いて処理される液体はフッ素イオンが含まれているものであれば特に限定されない。当該液体としては、水溶液であることが好ましく、フッ素イオンを含む地下水や工業排水を挙げることができる。本発明のフッ素吸着材は磁石に吸着するため、吸着材のみを磁石で回収することができる。フッ素イオンを含む液体が固形分を含む水溶液である場合、当該水溶液から吸着材のみを回収することは困難である。この観点から、本発明のフッ素吸着材を用いて処理される液体は、フッ素イオン及び固形分を含む水溶液であることが好ましい。当該水溶液に含まれる固形分としては、石、砂、土、灰などを挙げることができる。当該水溶液に有機溶媒が含まれていてもかまわない。

【0020】
さらに、本発明のフッ素吸着材は、無定形炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散しているものであり、磁性粒子とフッ素イオン吸着体とを結着剤で結着させたものではない。したがって、磁性粒子とフッ素イオン吸着体とが分離することはない。

【0021】
本発明における磁性粒子は、磁力に反応する粒子であり、外部からの磁力によって動きを制御することができるものである。このとき、磁性粒子の保磁力が大きいと残留磁化が大きくなり、フッ素吸着材同士が磁気的に凝集するおそれがある。本発明における磁性粒子は金属酸化物からなり、その種類は磁力に反応するものであれば特に限定されない。保磁力が比較的小さく、なおかつ入手が容易な観点から、金属酸化物が酸化鉄、酸化コバルト及び酸化ニッケルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、酸化鉄であることがより好ましい。酸化鉄の種類としては、マグネタイト(Fe)、ヘマタイト(Fe)、マグヘマイト(γ-Fe)などを挙げることができる。

【0022】
上記磁性粒子の平均粒径は2~100nmであり、好適には、5~50nmである。磁性粒子の平均粒径は、吸着材の透過型電子顕微鏡写真(TEM像)の撮影を行い、得られた写真中の粒子の直径を計測することによって得られる。粒子が円形でない場合には、円相当径を直径とする。

【0023】
本発明の炭素質複合体における、炭素原子に対する金属原子の比(Metal/C)は0.001~0.5である。炭素原子に対する金属原子の比(Metal/C)が0.001未満である場合、炭素質複合体の磁性が不十分となり、外部磁場によって、その動きを制御し難くなるおそれがある。炭素原子に対する金属原子の比(Metal/C)は0.005以上であることが好適であり、0.01以上であることがより好適である。一方、炭素原子に対する金属原子の比(Metal/C)が0.5を超えると、フッ素イオンを効率良く吸着することができないおそれがある。炭素原子に対する金属原子の比(Metal/C)は0.25以下であることが好適であり、0.1以下であることがより好適である。

【0024】
本発明の炭素質複合体のBET比表面積は150m/gを超えることが好適である。フッ素イオンをより効率的に吸着させる観点から、比表面積は200m/g以上であることがより好適である。一方、比表面積が大きすぎるとフッ素吸着材の機械的強度が低下するおそれがあるため、通常、3000m/g以下である。

【0025】
無定形炭素がグラフェンシートを含むことが好ましい。無定形炭素とは、一般的に、ダイヤモンドやグラファイト(黒鉛)のような明確な結晶構造を持たない炭素材料をいう。フッ素吸着材が無定形炭素を含むことは、X線回折法による測定で確認することができる。無定形炭素はX線回折において、シャープなピークが検出されないか、あるいはピークが検出されても、そのピークの形はブロードである。例えば、本願合成例で得られたフッ素吸着材の場合、フッ素吸着材の粉末X線回折パターンにおいて、半値幅(2θ)10~30°付近にブロードなピークが観測され、フッ素吸着材が無定形炭素を含み、結晶性の炭素材料を含まないことがわかる。

【0026】
グラフェンシートとは、芳香族環が2次元の平面上に縮合して連なった構造を有するものである。フッ素吸着材がグラフェンシートを含む場合、ラマンスペクトルにおいて、ダングリングボンドを持つ炭素原子に起因するDバンドとよばれるピークが1350cm-1付近に検出される。

【0027】
グラフェンシートの平均的なサイズは、ラマンスペクトルによるGバンドのピーク強度に対するDバンドの比(D/G)を根拠に算出することができる。例えば、本願合成例で得られたフッ素吸着材では、比(D/G)が約0.8であり、そこに含まれるグラフェンシートの平均的なサイズが約1nmであった。一般的に、比(D/G)が小さいと、グラフェンシートのサイズが大きいこと示し、得られるフッ素吸着材は均質な安定した構造となる。一方、比(D/G)が大きいと、得られる無定形炭素は化学的に活性である。比(D/G)は、0.1~2.25であることが好適であり、0.5~2.0であることがより好適である。

【0028】
本発明の炭素質複合体における、炭素原子に対する水素原子の比(H/C)は1未満であることが好適であり、0.8以下であることがより好適である。比(H/C)が1以上である場合、炭化が不十分となり、無定形炭素が得られないおそれがある。一方、比(H/C)は0.1以上であることが好適であり、0.2以上であることがより好適である。比(H/C)が0.1未満である場合、フッ素吸着材中のグラフェンシートが成長しすぎて化学的に安定化し、比表面積の大きいフッ素吸着材が得られないおそれがある。

【0029】
炭素質複合体はカルボキシル基及び水酸基を有してもかまわない。これによって、フッ素吸着材に種々の官能基を導入することができる。カルボキシルの含有量は、0.1~10mmol/gであることが好適であり、0.2~5mmol/gであることがより好適である。水酸基の含有量は、0.1~10mmol/gであることが好適であり、0.2~5mmol/gであることがより好適である。

【0030】
炭素質複合体は、その保磁力が小さいこと、すなわち軟磁性であることが好ましい。具体的には、保磁力が500Oe以下であることが好適であり、200Oe以下であることがより好適であり、100Oe以下であることがさらに好適である。保磁力が500Oeを超えると残留磁化が大きくなり、フッ素吸着材同士が磁気的に凝集してしまうおそれがある。したがって、本発明の炭素質複合体の磁化曲線は、ヒステリシスがほとんど見られないことが好ましい。

【0031】
本発明の炭素質複合体の飽和磁化が2~50emu/gであることが好適であり、4~20emu/gであることがより好適である。飽和磁化が2emu/g未満である場合、外部磁場に対するフッ素吸着材の応答性が低下するため好ましくない。一方、飽和磁化が50emu/gを超える場合、炭素質材料を主成分とするフッ素吸着材を作製し難くなるため好ましくない。

【0032】
本発明の炭素質複合体の、BJH法により求められる細孔容積が0.02~0.5cm/gであることが好適である。細孔容積が0.02cm/g未満である場合、フッ素イオンを効率良く吸着することができないおそれがある。一方、細孔容積が0.5cm/gを超える場合、フッ素吸着材の機械的強度が低下するおそれがある。

【0033】
本発明の炭素質複合体の、BJH法により求められる平均細孔直径が1~20nmであることも好適である。平均細孔直径が1nm未満である場合、フッ素イオンを効率良く吸着することができないおそれがある。一方、平均細孔直径が20nmを超える場合、フッ素吸着材の機械的強度が低下するおそれがある。より好適には10nm以下である。

【0034】
本発明のフッ素吸着材の製造方法は、特に限定されるものではないが、その好適な製造方法は、水溶性の金属塩と水溶性の多糖とを水の存在下で混合する第1工程と、前記第1工程で得られた混合物を炭化させる第2工程とを備えるものである。

【0035】
上記金属塩のカチオン成分は特に限定されず、金属酸化物になったときにその金属酸化物が磁力に反応するものであればよい。上記金属塩のカチオン成分としては、鉄、コバルト、ニッケルからなる群から選択される少なくとも1種のイオンであることが好ましく、鉄イオンであることがより好ましい。上記金属塩のアニオン成分は特に限定されず、硝酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、燐酸イオン、炭酸イオン、ホウ酸イオン、カルボン酸等を挙げることができる。中でも上記金属塩のアニオン成分としては、分解温度が低くて分解後に当該アニオン成分が残存しない観点から硝酸イオンが好ましい。これらの観点から、上記第1工程において用いられる金属塩としては、硝酸鉄、硝酸コバルト及び硝酸ニッケルからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、硝酸鉄であることがより好ましい。

【0036】
第1工程で用いられる多糖は、水溶性の多糖であれば特に限定されるものではない。例えば、水溶性の多糖として、セルロース誘導体及びその塩、デンプン、デキストリンなどが挙げられる。これらの中でも、セルロース誘導体及びその塩が好適であり、水溶性の観点からセルロース誘導体の塩がより好適である。セルロース誘導体としてはカルボキシメチルセルロース、塩としてはアルカリ金属塩などが好適なものとして例示される。

【0037】
第1工程における混合操作は特に限定されない。金属塩の水溶液に多糖の粉体を加えて混合してもよいし、多糖の水溶液に金属塩の粉体を加えて混合してもよい。金属塩の粉体と多糖の粉体とを水に加えて混合してもよい。金属塩の水溶液と多糖の水溶液とを混合してもよい。第1工程において用いられる水の種類は限定されず、イオン交換水、蒸留水など十分精製した水だけでなく水道水も使用可能である。

【0038】
第2工程において、炭化処理することで炭化物を得る。当該炭化処理は、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で加熱することにより行うことが好適である。第2工程で炭化処理する前に、第1工程で得られた混合物を予め乾燥させて水分を取り除いておくことが好ましい。乾燥方法は特に限定されず、加熱乾燥や減圧乾燥などを採用することができる。加熱乾燥する際の乾燥温度は、混合物中の水分を取り除くことのできる温度であれば特に限定されないが、40℃以上であることが好適である。乾燥温度が40℃未満である場合、混合物中の水分を十分に取り除くことができないおそれがある。乾燥温度は60℃以上がより好適である。また、エネルギー消費の面やコストの面から、乾燥温度は通常100℃以下である。このときの乾燥温度とは、混合物の乾燥に用いられる乾燥装置内の設定温度のことである。乾燥時間は乾燥温度との関係で設定されるが、混合物中の水分を十分に取り除くことができるように適宜設定することができる。

【0039】
第2工程における加熱温度は、上記混合物の炭化が進行するのであれば特に限定されないが、80℃以上であることが好適である。加熱温度が80℃未満である場合、多糖の炭化が不十分となったり、金属塩が酸化されなかったりして、無定形炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散したフッ素吸着材を得ることができなくなるおそれがある。このときの加熱温度とは、混合物の炭化に用いられる加熱装置内の設定温度のことである。第1工程で得られた混合物は、金属塩や乾燥状態にもよるが、80℃以上に加熱すると自己燃焼が始まり当該混合物自体の温度が400℃以上に達して炭化を進行させることができる。加熱温度は100℃以上がより好適であり、150℃以上がさらに好適である。一方、加熱温度が1000℃以下であることも好適である。加熱温度が1000℃を超える場合、炭化が進行した結果、フッ素吸着材中のグラフェンシートが成長しすぎて、水になじまなくなり、液体に含まれるフッ素イオンを吸着することができないおそれがある。エネルギー消費の面やコストの面から、加熱温度は800℃以下がより好適であり、600℃以下がさらに好適である。加熱時間は加熱温度との関係で設定されるが、多糖の炭化が十分に進行するように適宜設定することができる。

【0040】
加熱装置は特に限定されず、電熱式、熱風式、直火式のいずれの加熱装置も使用することができる。混合物の炭化により発生するガスや当該ガスに含まれる固体粒子とを分別するために、加熱装置に集じん装置が接続されていることが好ましい。集塵装置は特に限定されず、サイクロン式の集塵装置やフィルタ式の集塵装置が採用される。加熱装置にスクラバーが接続されていてもよい。スクラバーも特に限定されず、溜水式のスクラバーや加圧水式のスクラバーが採用される。炭化処理の均一性や炭化物の連続生産性の観点から工業的にはロータリーキルンを使用して混合物を炭化することが好ましい。

【0041】
本発明のフッ素吸着材の製造方法は、第2工程で得られた炭化物を水洗する第3工程を、さらに備えることが好ましい。第2工程で得られた炭化物に金属塩が残留している場合、炭化物を水洗することで金属塩が除去され比表面積の大きなフッ素吸着材を得ることができる。洗浄方法は特に限定はされず、水と炭化物とを接触させ当該炭化物に含まれる金属塩を抽出する方法や、水と炭化物とを混合してから濾材を用いて濾別する方法などが挙げられる。抽出にはソックスレー抽出器などを用いることができ、濾過には桐山ロート、ブフナロートなどを用いることができる。洗浄に使用する水は特に限定されないが、蒸留水やイオン交換水などが好ましい。また、効率的に金属塩を除去するために塩酸や酢酸などの酸が少量含まれた水溶液を用いてもよい。

【0042】
このようにして得られたフッ素吸着材の粒径は通常数μm~数百μm程度であるが、粉砕することにより、より細かい粒径とすることもできる。取り扱い性の観点から、フッ素吸着材をペレット状に成形してもかまわない。

【0043】
本発明の好適な実施態様は、上記フッ素吸着材とフッ素イオンを含む液体とを接触させて該液体に含まれるフッ素イオンを吸着させた後、前記フッ素吸着材を磁力によって回収するフッ素イオンの除去方法である。

【0044】
ここで、フッ素イオンを含む液体が石、砂、土、灰などの固形分を含む水溶液である場合、当該水溶液から吸着材のみを回収することは困難である。例えば、ろ過によって吸着材のみを回収することは非常に困難である。特にフッ素吸着材と固形分の大きさが同じ場合、ろ過では吸着材のみを回収することはできない。また、遠心分離によっても水溶液から吸着材のみを回収することはできず、吸着材とともに固形分も回収されてしまう。固形分と吸着材とを含む混合物から吸着材のみを分離することも困難である。

【0045】
しかしながら、本発明の除去方法では磁石に吸着するフッ素吸着材を用いるので、固形分が含まれている地下水や工業排水から吸着材のみを回収することができる。この観点から、本発明の除去方法では、上記フッ素吸着材と、フッ素イオン及び固形分を含む水溶液とを接触させて当該水溶液に含まれるフッ素イオンを吸着させることが好ましい。

【0046】
また、本発明の除去方法で用いるフッ素吸着材は、無定形炭素のマトリックス中に金属酸化物の磁性粒子が分散しているものであり、磁性粒子とフッ素イオン吸着体とを結着剤で結着させたものではない。したがって、フッ素吸着材を磁力によって回収する際に磁性粒子とフッ素イオン吸着体とが分離して磁性粒子のみが回収されるような問題は生じない。フッ素吸着材の回収には、通常、磁石が用いられる。磁石の種類は特に限定されず、永久磁石、電磁石、超電導磁石などを挙げることができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【実施例】
【0048】
[吸着材の合成]
合成例1
硝酸鉄(III)九水和物(Fe(NO・9HO)0.5gを100mLの蒸留水に溶かして硝酸鉄の水溶液を得た。得られた水溶液に粉状のカルボキシメチルセルロースナトリウム(和光純薬工業株式会社製、型番:039-01335、以下CMC・Naと略すことがある)1.0gを投入して撹拌し、ゲル状の沈殿物を得た。そして、得られたゲル状の沈殿物の水分が無くなるまで、恒温乾燥炉を用いて60℃、約5日間乾燥した。その後、乾燥した沈殿物を三口フラスコに移し、当該三口フラスコ中において、窒素雰囲気下で、200℃、1時間加熱して炭化処理し、フッ素吸着材を得た。
【実施例】
【0049】
合成例2
容量が20Lの容器に硝酸鉄(III)九水和物(Fe(NO・9HO)120gと水道水16Lとを入れ、ポータブルミキサーを用いて撹拌した。得られた水溶液に粉体計量供給機を用いて粉状のCMC・Na(和光純薬工業株式会社製、型番:039-01335)240gを投入してさらに撹拌し、ゲル状の混合物を得た。得られたゲル状の混合物の水分が無くなるまで、送風式乾燥炉を用いて65℃で3日間乾燥して、300gの乾燥した混合物を得た。そして、乾燥した混合物を粉砕機を用いて微粉砕した後、サイクロン式の集塵装置が接続された加熱容器に入れ、窒素雰囲気下で、250℃、1時間加熱して炭化処理した。得られた炭化物をソックスレー抽出器を用いて蒸留水で6時間洗浄した後、恒温乾燥炉を用いて105℃、約24時間乾燥し、フッ素吸着材を得た。以下の測定では、ふるい分けをして得た、粒径が150μm以下のフッ素吸着材を用いた。
【実施例】
【0050】
合成例3
硝酸鉄(III)九水和物(Fe(NO・9HO)0.5gを100mlの水に溶かして硝酸鉄の水溶液を得た。その水溶液に硝酸コバルト(II)六水和物(Co(NO・6HO)1.5gを加えて混合した。得られた水溶液に粉状のCMC・Na(和光純薬工業株式会社製、型番:039-01335)1.0gを投入して撹拌し、ゲル状の沈殿物を得た。そして、得られたゲル状の沈殿物の水分が無くなるまで、恒温乾燥炉を用いて65℃、約5日間乾燥した。その後、乾燥した沈殿物をメノウ乳鉢で粉砕して、三口フラスコに移し、当該三口フラスコ中において、窒素雰囲気下で、250℃、1時間加熱して炭化処理し、フッ素吸着材を得た。
【実施例】
【0051】
合成例4
硝酸鉄(III)九水和物(Fe(NO・9HO)0.5gを100mlの水に溶かして硝酸鉄の水溶液を得た。その水溶液に硝酸ニッケル(II)六水和物(Ni(NO・6HO)1.5gを加えて混合した。得られた水溶液に粉状のCMC・Na(和光純薬工業株式会社製、型番:039-01335)1.0gを投入して撹拌し、ゲル状の沈殿物を得た。そして、得られたゲル状の沈殿物の水分が無くなるまで、恒温乾燥炉を用いて65℃、約5日間乾燥した。その後、乾燥した沈殿物をメノウ乳鉢で粉砕して、三口フラスコに移し、当該三口フラスコ中において、窒素雰囲気下で、250℃、1時間加熱して炭化処理し、フッ素吸着材を得た。
【実施例】
【0052】
[吸着材の評価]
(SEM観察)
走査型電子顕微鏡装置(SEM)を用いて、合成例1で得られたフッ素吸着材について電子顕微鏡写真(SEM像)の撮影を行った。結果を図1に示す。得られた写真から、数nm~数十nmの孔が多数確認された。走査型電子顕微鏡装置は、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製の「S-3000N」を用いた。
【実施例】
【0053】
(TEM観察)
透過型電子顕微鏡装置(TEM)を用いて、合成例1及び2で得られたフッ素吸着材それぞれについて電子顕微鏡写真(TEM像)の撮影を行った。合成例1で得られたフッ素吸着材のTEM像を図2及び3に、合成例2で得られたフッ素吸着材のTEM像を図4に示す。得られた写真から、いずれもフッ素吸着材中に5~50nm程度の粒子が存在することがわかった。ここで、粒子が円形でない場合には、円相当径を直径とした。透過型電子顕微鏡装置は、株式会社トプコンテクノハウス社製の「EM002BF」を用いた。
【実施例】
【0054】
(比表面積、細孔容積、細孔直径の測定)
比表面積・細孔分布測定装置を用いて、窒素吸着法(BET法)により、合成例1、2及び3で得られたフッ素吸着材それぞれの吸着等温線を測定した。その結果、合成例1、2及び3で得られたフッ素吸着材のBET比表面積は、それぞれ108.6m/g、244.6m/g及び82.4m/gであった。また、合成例1、2及び3で得られたフッ素吸着材について、BJH(Barrett,Joyner,and Halenda)法による解析を行い、フッ素吸着材の平均細孔直径及び全細孔容積をそれぞれ算出した。合成例1で得られたフッ素吸着材についてBJH法により解析した細孔分布曲線を図5に示す。合成例3で得られたフッ素吸着材についてBJH法により解析した細孔分布曲線を図6に示す。その結果、合成例1で得られたフッ素吸着材の平均細孔直径は3.66nm、全細孔容積は0.099cm/gであった。合成例2で得られた炭素質複合体の平均細孔直径は3.57nm、全細孔容積は0.218cm/gであった。合成例3で得られたフッ素吸着材の平均細孔直径は10.53nm、全細孔容積は0.217cm/gであった。
【実施例】
【0055】
合成例1で得られたフッ素吸着材について、HK(Horvath-Kawazoe Method)法による解析から、フッ素吸着材の孔幅を算出したところ、孔幅が約0.8nmであった。合成例1で得られたフッ素吸着材についてHK法により解析した細孔分布曲線を図7に示す。比表面積・細孔分布測定装置は、Quantachrome Instruments社製の「NOVE 4200e」を用いた。
【実施例】
【0056】
(粉末X線回折法による分析)
X線回折装置を用いて、Cu-Kα線による粉末X線回折法により、合成例1で得られたフッ素吸着材について定性分析を行った。その結果を図8に示す。図8に示すように、半値幅(2θ)が10~30°付近にブロードなピークが確認され、フッ素吸着材はグラフェンシートが乱雑に集合した無定形炭素を含むことがわかった。図8において、半値幅(2θ)が45~50°付近のピークは炭酸ナトリウム(NaCO)由来であることがわかり、合成例1のフッ素吸着材は炭酸ナトリウム(NaCO)を含むことがわかった。また、合成例1で得られたフッ素吸着材において、半値幅(2θ)が30°、35°、43°、53°、57°、63°付近にそれぞれピークが確認され、フッ素吸着材はマグネタイト(Fe)を含むこともわかった。半値幅(2θ)が33°、35°、40°、63°付近にそれぞれピークが確認され、フッ素吸着材はマグヘマイト(γ-Fe)を含むこともわかった。
【実施例】
【0057】
X線回折装置を用いて、Cu-Kα線による粉末X線回折法により、合成例3で得られたフッ素吸着材について定性分析を行った。その結果を図9に示す。図9に示すように、合成例3の炭素質複合体において、酸化コバルト(Co、CoO)、マグヘマイト(γ-Fe)、FeCo、Coのそれぞれに由来するピークが観測された。X線回折装置は、株式会社リガク社製の「RINT 2500HF」を用いた。
【実施例】
【0058】
X線光電子分光装置を用いて、X線光電子分光法により、合成例1で得られたフッ素吸着材についてワイドスキャン測定を行った。合成例1で得られたフッ素吸着材についての結果を図10に示す。得られた結果より、ワイドスキャン測定により検出される元素が、C1s(炭素)、N1s(窒素)、O1s(酸素)、Fe2p(鉄)、及びNa1s(ナトリウム)であった。
【実施例】
【0059】
また、ナロースキャンによる測定を行ったところ、図11に示すように、O1sスペクトルより、マグヘマイト(γ-Fe)に由来するピークと、有機化合物に由来するピークがそれぞれ確認された。また、合成例1で得られたフッ素吸着材についてはNaCOに由来するピークが確認されたが、合成例2で得られたフッ素吸着材については確認されなかった。
【実施例】
【0060】
図12に示すように、C1sスペクトルより、C-C(H)に由来するピークがそれぞれ確認された。また、合成例1で得られたフッ素吸着材についてはNaCOの-COに由来するピークが確認されたが、合成例2で得られたフッ素吸着材については確認されなかった。
【実施例】
【0061】
図13に示すように、Fe2pスペクトルのメインピークの結合エネルギーの値から、合成例1及び2で得られたフッ素吸着材について、マグヘマイト(γ-Fe)の存在が確認できた。X線光電子分光装置は、アルバック・ファイ株式会社製の「Quantera SXM」を用いた。
【実施例】
【0062】
[元素分析]
合成例1、2及び3でそれぞれ得られたフッ素吸着材について、燃焼法による元素分析を行った(分析A)。また、合成例1で得られたフッ素吸着材については、上記X線光電子分光装置を用いて、ナロースキャン測定による定量分析も行った(分析B)。結果を表1に示す。表1において、「N.D.」は「検出されず(N.D.(not-detected))」を意味し、「-」は「未測定」を意味する。
【実施例】
【0063】
【表1】
JP0005751685B1_000002t.gif
【実施例】
【0064】
[赤外分光法による分析]
フーリエ変換赤外分光装置(FT-IR)を用いて、KBr法により、合成例1で得られたフッ素吸着材について赤外分光測定を行った。結果を図14に示す。図14に示すように、1595~1603cm-1にOHのベンディングによるピークが確認された。また、1448および880cm-1に炭酸ナトリウムに起因するピークが確認された。フーリエ変換赤外分光装置は、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製の「Nicolet 6700 FT-IR」を用いた。
【実施例】
【0065】
(ラマン分光法による分析)
ラマン分光測定装置を用いて、合成例1で得られたフッ素吸着材についてラマン測定を行った。結果を図15に示す。図15に示すように、1580cm-1付近にGバンドと呼ばれるピークが、1350cm-1付近にDバンドと呼ばれるピークがそれぞれ確認された。Gバンドは炭素原子の六角格子内振動に起因するピークであり、Dバンドは無定形炭素等のダングリングボンドを持つ炭素原子に起因するピークである。そのため、Dバンド/Gバンドの強度比が大きければ大きいほどフッ素吸着材に含まれるグラフェンシートのサイズが大きくなる。Gバンドのピーク強度に対するDバンドの比が約0.8であり、これを根拠に、合成例1で得られたフッ素吸着材に含まれるグラフェンシートの平均的なサイズがいずれも約1nmであることがわかった。ラマン分光測定装置は、Jobin Yvon社製の「T-64000」を用いた。
【実施例】
【0066】
(磁気特性の測定)
試料振動式磁力計を用いて、合成例1得られたフッ素吸着材11.00mg及び合成例2で得られたフッ素吸着材27.22mgをそれぞれアクリル製ホルダーに詰めて磁気特性を測定した。その結果を図16に示す。合成例1で得られたフッ素吸着材の保磁力は約100Oeであった。合成例2で得られたフッ素吸着材の保磁力は約50Oeであった。そして、いずれの磁気曲線にもヒステリシスがほとんど見られず、軟磁性であることがわかった。合成例1で得られたフッ素吸着材の飽和磁化は約12emu/gであり、合成例2で得られたフッ素吸着材についての飽和磁化は約15emu/gであった。振動試料型磁力計は、東英工業株式会社製の「VSM-15」を用いた。
【実施例】
【0067】
同様に、合成例3で得られたフッ素吸着材63.84mgをアクリル製ホルダーに詰めて磁気特性を測定した。その結果、図17に示すように、合成例3で得られた炭素質複合体の保磁力は約330.60Oeであり、飽和磁化は約34.84emu/gであった。合成例4で得られたフッ素吸着材82.57mgをアクリル製ホルダーに詰めて磁気特性を測定した。その結果、図18に示すように、合成例4で得られたフッ素吸着材の保磁力は約119.30Oeであり、飽和磁化は約26.15emu/gであった。これらの結果を表2に示す。
【実施例】
【0068】
【表2】
JP0005751685B1_000003t.gif
【実施例】
【0069】
実施例1
上記合成例2で得られた吸着材を用いて、以下に記載する方法によりフッ素イオンの吸着試験を行った。
【実施例】
【0070】
(1)フッ化カリウム水溶液の調製
フッ化カリウム0.03gを100mLの蒸留水に溶解した。この水溶液を蒸留水で10倍に希釈して、本実験に用いるフッ化カリウム水溶液を調製した。得られた水溶液のフッ素イオン濃度を下記(3)の方法により測定したところ、フッ素イオン濃度は9.1mg/L(濃度Aとする)であった。
【実施例】
【0071】
(2)フッ素イオンの吸着試験
上記(1)の方法により調製した水溶液50mLと、フッ素吸着材1.0gとをビーカーに入れた。振とう機を用いて、室温、60分、回転数175rpmでビーカー内の水溶液を撹拌した。振とう終了後、ビーカーに磁石を近づけてみたところ、水溶液中のフッ素吸着材は磁石に引き寄せられビーカーの壁面を介して磁石に付いた。これにより磁石を用いてフッ素吸着材を回収することができることが確認された。水溶液をろ過して水溶液中のフッ素吸着材を除去してろ液を回収した。得られたろ液30mLを用いて、下記(3)の方法によりフッ素イオン濃度を測定した。その結果、ろ液のフッ素イオン濃度は4.9mg/L(濃度Bとする)であった。
【実施例】
【0072】
(3)フッ素イオン濃度の測定
水溶液中のフッ素イオン濃度は、JIS K 0170-6(2011)に記載の「蒸留・ランタン-アリザリンコンプレキソン発色CFA法」により測定した。吸光度の測定にはビーエルテック株式会社製の「Auto Analyzer3」を用いた。この測定装置のフッ素イオン濃度の検出限界は0.3mg/Lであるので、ろ液中のフッ素イオン濃度が0.3mg/L未満であった場合、「フッ素イオンは検出されず(N.D.(not-detected))」という結果になる。
【実施例】
【0073】
得られた濃度Aと濃度Bの値を用い下記式で吸着材のフッ素イオン吸着率を求めたところ、フッ素イオン吸着率は46%であった。
フッ素イオン吸着率(%)=[1-(B/A)]×100
【実施例】
【0074】
実施例2~8
吸着試験の条件を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様のフッ素イオンの吸着試験を行った。結果を表3に示す。
【実施例】
【0075】
実施例9
フッ化カリウム水溶液を調製する代わりに実施例6で得られたろ液50mL(フッ素イオン濃度:1.6mg/L)を用い、吸着材の量を5.0gにした以外は、実施例1と同様のフッ素イオンの吸着試験を行った。結果を表3に示す。
【実施例】
【0076】
【表3】
JP0005751685B1_000004t.gif
Drawing
【図5】
0
【図6】
1
【図7】
2
【図8】
3
【図9】
4
【図10】
5
【図11】
6
【図12】
7
【図13】
8
【図14】
9
【図15】
10
【図16】
11
【図17】
12
【図18】
13
【図1】
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【図2】
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【図3】
16
【図4】
17