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Specification :種子を利用した接ぎ木による農作物の栽培方法

Country 日本国特許庁(JP)
Gazette 特許公報(B2)
Patent Number 特許第6202536号 (P6202536)
Date of registration 平成29年9月8日(2017.9.8)
Date of issue 平成29年9月27日(2017.9.27)
Title of the invention, or title of the device 種子を利用した接ぎ木による農作物の栽培方法
IPC (International Patent Classification) A01G   1/06        (2006.01)
A01G   1/00        (2006.01)
A01C   1/00        (2006.01)
FI (File Index) A01G 1/06 Z
A01G 1/00 301Z
A01C 1/00 Z
Number of claims or invention 5
Total pages 6
Application Number 特願2014-545744 (P2014-545744)
Date of filing 平成25年11月7日(2013.11.7)
International application number PCT/JP2013/080086
International publication number WO2014/073595
Date of international publication 平成26年5月15日(2014.5.15)
Application number of the priority 2012245732
Priority date 平成24年11月7日(2012.11.7)
Claim of priority (country) 日本国(JP)
Date of request for substantive examination 平成28年8月3日(2016.8.3)
Patentee, or owner of utility model right 【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
Inventor, or creator of device 【氏名】原田 竹雄
Representative 【識別番号】100106611、【弁理士】、【氏名又は名称】辻田 幸史
【識別番号】100087745、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 善廣
【識別番号】100098545、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 伸一
Examiner 【審査官】田中 洋介
Document or reference 米国特許出願公開第2011/0162106(US,A1)
特表平06-502535(JP,A)
Myeong-Je Cho,Root Isoflavonoid Response to Grafting between Wild-Typeand Nodulation-Mutant Soybean Plants,Plant Physiol.,1991年,Vol.96,pp.1277-1282
猪ノ坂正之,稲及び麦類の接木に関する研究 (予報),日本作物學會紀事,1957年,Vol.26 No.2,p.83
丹羽勝,開花期を異にするダイズ品種間の接木実験,育種學雜誌,1975年,Vol.25 No.6,pp.343-348
Field of search A01G 1/00-1/12
A01C 1/00-1/08
A01H 1/00-17/00
JSTPlus(JDreamIII)
JMEDPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
Scope of claims 【請求項1】
乾燥種子の幼根を接ぎ木が成立する別の種子の幼根に置き換えた後、発芽させることを特徴とする農作物の栽培方法。
【請求項2】
乾燥種子の幼根を切断することで切り出された幼根のかわりに、接ぎ木が成立する別の種子の幼根を切断することで切り出された幼根を置き換えることを特徴とする請求項1記載の栽培方法。
【請求項3】
農作物がダイズであることを特徴とする請求項1記載の栽培方法。
【請求項4】
乾燥種子の幼根を接ぎ木が成立する別の種子の幼根に置き換えてなることを特徴とする農作物の種子。
【請求項5】
乾燥種子の幼根を接ぎ木が成立する別の種子の幼根に置き換えることを特徴とする農作物の種子の製造方法。
Detailed description of the invention 【技術分野】
【0001】
本発明は、種子を利用した接ぎ木による農作物の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
根の表面積は地上部のそれよりも100倍以上と見積もられており、膨大な根毛が水分や無機栄養素などを吸収している。近年、“The Hidden Half”としての根系の重要性が再認識され、その接ぎ木技術への利用展開が期待されている。接ぎ木技術は、一般に台木となる根部と穂木となる地上部は異なるゲノムからなる近縁植物体であり、それぞれの優れた能力をコラボワークさせる栽培法である。接ぎ木は約4000年前から中国の柑橘栽培で行われていたとの記録がある。その当初の目的は、優良個体の維持や早期開花性を付与する点にあったが、より優れた根系を有する台木種の存在が明らかにされ、それを優先的に使用する接ぎ木方式が採用されてきた。永年性の木本植物において接ぎ木の価値は大きいが、トマト、ナス、キュウリなどの1年生の農作物にも採用されているのは、より能力の高い台木を使用することで生産量の向上につながるメリットがあるからである。
【0003】
しかしながら、接ぎ木技術は、イネ、コムギ、トウモロコシなどの禾本科や、ダイズなどの農作物では全く採り入れられていない。その理由は、禾本科の苗における接ぎ木の困難性や、本来、ダイズなどは接ぎ木可能な幼苗体ではあるが(例えば非特許文献1を参照)、苗を畑に移植するのではなく種を畑に直播することにある。従って、こうした農作物に対して有効な接ぎ木技術が開発されれば、優れた根系を有する台木種を直ちに活用できることになり、大幅な生産性の向上が実現できるが、そのような提案はいまだ存在しない。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Cho MJ and Harper JE(1991)Plant Physiology 96:1277-1282
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、イネ、コムギ、トウモロコシなどの禾本科や、ダイズなどの農作物に対しても有効な接ぎ木技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、接ぎ木は、例えば木本植物の場合、春先のまだ休眠状態にある苗木間で行う。即ち、細胞活性がほとんど無い時期に接ぎ木面を密着固定しておき、休眠明けに伴い細胞が再活性化する時点で完全癒着を成立させる。そこで本発明者は、種子の段階で接ぎ木を行うことを着想し、鋭意検討を重ねた結果、休眠状態にある乾燥種子の幼根の全部または一部を別の種子の幼根で置き換えて発芽させることによる接ぎ木技術を見出した。
【0007】
上記の知見に基づいてなされた本発明の農作物の栽培方法は、請求項1記載の通り、乾燥種子の幼根を接ぎ木が成立する別の種子の幼根に置き換えた後、発芽させることを特徴とする。
また、請求項2記載の栽培方法は、請求項1記載の栽培方法において、乾燥種子の幼根を切断することで切り出された幼根のかわりに、接ぎ木が成立する別の種子の幼根を切断することで切り出された幼根を置き換えることを特徴とする。
また、請求項3記載の栽培方法は、請求項1記載の栽培方法において、農作物がダイズであることを特徴とする。
また、本発明の農作物の種子は、請求項4記載の通り、乾燥種子の幼根を接ぎ木が成立する別の種子の幼根に置き換えてなることを特徴とする。
また、本発明の農作物の種子の製造方法は、請求項5記載の通り、乾燥種子の幼根を接ぎ木が成立する別の種子の幼根に置き換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、イネ、コムギ、トウモロコシなどの禾本科や、ダイズなどの農作物に対しても有効な接ぎ木技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の種子内接ぎ木による農作物の栽培方法のスキームである。
【図2】実施例1における種子内接ぎ木を行ったダイズの種子の写真である。
【図3】同、発芽から14日後の幼苗体の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の農作物の栽培方法は、乾燥種子の幼根を接ぎ木が成立する別の種子の幼根に置き換えた後、発芽させることを特徴とするものである。休眠状態にある乾燥種子の幼根の全部または一部を別の種子の幼根で置き換えることで、種子の段階で接ぎ木を行った後、発芽させることにより、現在、接ぎ木技術が採り入れられていない、イネ、コムギ、トウモロコシなどの禾本科や、ダイズなどの農作物も接ぎ木栽培することができる。また、本発明の農作物の栽培方法は、種子の段階で接ぎ木を行うものであるので、苗木間で接ぎ木を行う場合よりも接ぎ木を行うまでに必要な時間や労力を削減することができる。乾燥種子の幼根の置き換えのための幼根を取り出した後の種子は、例えば飼料利用や加工利用すればよい。

【0011】
本発明を適用することができる農作物は、種子内に幼根(radicle)を有する種子植物であれば特段限定されるものではなく、殻物、野菜、花卉、果樹などであり、双子葉植物であってもよいし単子葉植物であってもよく、また、被子植物であってもよいし裸子植物であってもよい。しかしながら、本発明は、苗木間における接ぎ木が困難なイネ、コムギ、トウモロコシなどの禾本科に属する農作物の他、ダイズに対して好適に適用することができる。なお、本発明は、苗木間における接ぎ木が可能なキュウリ、メロン、スイカなどのウリ科に属する農作物などに対しても適用することができる。

【0012】
乾燥種子の幼根の置き換えのために用いる幼根の供給源とする種子は、乾燥種子の農作物と同種のものや同じ科に属するものなど、接ぎ木が成立する農作物の種子であれば特段限定されるものではない。例えば、乾燥種子が栽培種のものである場合、優れた根系を有する同種の野生種の種子が存在すれば、本発明を適用し、野生種の種子から取り出された幼根で栽培種の乾燥種子の幼根を置き換えることで、野生種が有する優れた根系に基づいて栽培種に対して土壌病害抵抗性、養分吸収性、乾燥耐性などの特性を付与することができる(図1)。

【0013】
休眠状態にある乾燥種子の幼根の置き換えは、基本的には、幼根部位の種皮を剥ぎ取り、カッターナイフやメスなどの刃物で幼根を切断することで切り出された幼根のかわりに、同様にして別の種子の幼根を切断することで切り出された幼根を置き換えることで行うことができる(種子が小さい場合は例えば顕微鏡下で行うことが望ましい)。この作業は人が行ってもよいしロボットが行ってもよい。乾燥種子の幼根の置き換えは幼根の全部または一部であってよく、乾燥種子の幼根の切断は例えば幼根の全長の1/2から胚軸側の箇所で行えばよい。乾燥種子は休眠状態にあるため、幼根を切断しても種子に与えるダメージはあってもごく僅かである。こうして種子内接ぎ木を行った種子は、通常の種子と同様に長期間の保存が可能であり、播種して吸水させることによって細胞が再活性化されることで幼根の切断面で置き換えられた幼根との完全癒着が成立して発芽する。発芽した種子は、苗木間で接ぎ木が行われた接ぎ木苗と同様に栽培することができる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
【実施例】
【0015】
実施例1:種子内接ぎ木によるダイズの栽培
まず、栽培種の乾燥種子の種皮を剥ぎ取り、研究用カッターナイフで胚軸の境目付近で幼根を切断して切り出した。また、同様にして、異なる栽培種の乾燥種子の種皮を剥ぎ取り、研究用カッターナイフで胚軸の境目付近で幼根を切断して切り出した。次に、後者の乾燥種子から切り出された幼根で前者の乾燥種子の幼根を置き換えた。幼根の置き換えに際しては極微量の市販の瞬間接着剤を用いて置き換えられた幼根を接合面に固定した。こうして種子内接ぎ木を行った種子を図2に示す(右上の着色した部分が置き換えられた幼根である)。この種子内接ぎ木を行った種子を園芸用のバーミキュライトに播種して栽培したところ、発芽し、通常の種子を播種して栽培した場合と同様に幼苗体が得られた。図3に発芽から14日後の幼苗体を示す(矢印部分が接ぎ木した箇所)。なお、この種子内接ぎ木を行った種子の保存安定性と発芽率は、通常の種子のそれらと大差がなかった。
【実施例】
【0016】
実施例2:種子内接ぎ木によるメロンの栽培
実施例1と同様の方法でメロンの種子内接ぎ木を行い、種子内接ぎ木を行った種子から幼苗体を得た。
【実施例】
【0017】
実施例3:種子内接ぎ木によるスイカの栽培
実施例1と同様の方法でスイカの種子内接ぎ木を行い、種子内接ぎ木を行った種子から幼苗体を得た。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、イネ、コムギ、トウモロコシなどの禾本科や、ダイズなどの農作物に対しても有効な接ぎ木技術を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。
Drawing
【図1】
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【図2】
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【図3】
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