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Specification :磁性熱電変換素子及びそれを含む熱電変換システム

Country 日本国特許庁(JP)
Gazette 公開特許公報(A)
Publication number 特開2019-106436 (P2019-106436A)
Date of publication of application 令和元年6月27日(2019.6.27)
Title of the invention, or title of the device 磁性熱電変換素子及びそれを含む熱電変換システム
IPC (International Patent Classification) H01L  29/82        (2006.01)
H01L  37/00        (2006.01)
G01K   7/00        (2006.01)
F01D  25/00        (2006.01)
F02C   7/00        (2006.01)
F02C   7/18        (2006.01)
FI (File Index) H01L 29/82 Z
H01L 37/00
G01K 7/00 Z
F01D 25/00 V
F01D 25/00 W
F02C 7/00 A
F02C 7/18 C
Number of claims or invention 12
Filing form OL
Total pages 19
Application Number 特願2017-237459 (P2017-237459)
Date of filing 平成29年12月12日(2017.12.12)
Inventor, or creator of device 【氏名】石田 真彦
【氏名】桐原 明宏
【氏名】澤田 亮人
【氏名】齊藤 英治
【氏名】井口 亮
【氏名】追川 康之
【氏名】小野 正雄
Applicant 【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
Representative 【識別番号】100077838、【弁理士】、【氏名又は名称】池田 憲保
【識別番号】100129023、【弁理士】、【氏名又は名称】佐々木 敬
Request for examination 未請求
Theme code 5F092
F-term 5F092AB10
5F092AC21
5F092BD03
5F092BD06
5F092BD13
Abstract 【課題】高温環境に暴露される部材表面を保護し、表面の温度や熱流分布を検出すること。
【解決手段】熱源と接する支持体の表面に設けられる磁性熱電変換素子は、磁性体と、磁性体に磁気的に結合した電気伝導性を有する起電体と、磁性体と起電体とを覆う耐熱性酸化金属膜と、を有する。
【選択図】図2
Scope of claims 【請求項1】
熱源と接する支持体の表面に設けられる磁性熱電変換素子であって、
磁性体と、
前記磁性体に磁気的に結合した電気伝導性を有する起電体と、
前記磁性体と前記起電体とを覆う耐熱性酸化金属膜と、
を有する磁性熱電変換素子。
【請求項2】
前記耐熱性酸化金属膜は、10[W/mK]以下の熱伝導率を有することを特徴とする請求項1に記載の磁性熱電変換素子。
【請求項3】
前記耐熱性酸化金属膜は、10[W/mK]以下の熱伝達率を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁性熱電変換素子。
【請求項4】
前記磁性熱電変換素子は前記支持体の内壁面に設けられ、
前記耐熱性酸化金属膜は、前記磁性体が磁性を損失する温度(キュリー温度)以上の前記熱源と接触する界面を有することを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の磁性熱電変換素子。
【請求項5】
前記磁性熱電変換素子は前記支持体の外壁面に設けられ、
前記耐熱性酸化金属膜は、前記磁性体が磁性を損失する温度(キュリー温度)以上の前記熱源と前記支持体を介して接触する界面を有することを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の磁性熱電変換素子。
【請求項6】
熱源と接する支持体の表面に設けられる熱電変換システムであって、
前記支持体の所定の位置に配された少なくとも1つの磁性熱電変換素子であって、磁性体と、前記磁性体に磁気的に結合した電気伝導性を有する起電体と、を有する前記磁性熱電変換素子と、
前記起電体と電気的に接続する配線を介して、熱電変換によって得られた電気的信号を収集する手段とを有し、
前記磁性熱電変換素子と前記配線とが、耐熱性酸化金属膜によって覆われていることを特徴とする熱電変換システム。
【請求項7】
前記起電体と前記配線とが同一材料で形成されている、請求項6に記載の熱電変換システム。
【請求項8】
前記耐熱性酸化金属膜は、10[W/mK]以下の熱伝導率を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の熱電変換システム。
【請求項9】
前記耐熱性酸化金属膜は、10W/mK]以下の熱伝達率を有することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1つに記載の熱電変換システム。
【請求項10】
前記熱電変換システムは前記支持体の内壁面に設けられ、
前記耐熱性酸化金属膜は、前記磁性体が磁性を損失する温度(キュリー温度)以上の前記熱源と接触する界面を有することを特徴とする、
請求項6乃至9のいずれか1つに記載の熱電変換システム。
【請求項11】
前記熱電変換システムは前記支持体の外壁面に設けられ、
前記耐熱性酸化金属膜は、前記磁性体が磁性を損失する温度(キュリー温度)以上の前記熱源と前記支持体を介して接触する界面を有することを特徴とする、
請求項6乃至9のいずれか1つに記載の熱電変換システム。
【請求項12】
高温ガスに接触する内表面と、冷却流に接触する外表面と、を持つ高温ガス経路部材であって、
前記外表面に形成された磁性層と、
前記磁性層に重なって、前記冷却流に接触する金属層と、
前記金属層から前記外表面に沿って配設された計測線と、
を備えた高温ガス経路部材。
Detailed description of the invention 【技術分野】
【0001】
本発明は部材表面の保護膜に関し、特に高温環境に暴露される部材表面を保護し、表面の温度や熱流分布を検出できる磁性熱電変換素子及びそれを含む熱電変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエネルギー需要の増加に伴って、様々な動力器において高効率化が求められている。燃焼ガスタービンやジェットエンジンといった内燃機関や、蒸気タービンなどの外燃機関においては、高効率化に向けて動作温度の高温化や、その耐久性の向上が求められている。
【0003】
特許文献1は、ガスタービン燃焼器を開示している。特許文献1に開示されたガスタービン燃焼器において、アウタケーシングとインナケーシングによって環状のハウジングが形成され、その内部にはアウタライナとインナライナによって環状の燃焼筒が形成されている。燃焼筒の内部には環状の内部空間が形成され、この内部空間が燃焼室として機能する。燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射装置は、周方向に等間隔に並んで複数配置されている。各燃料噴射装置は、燃料を噴射する燃料噴射弁(燃料噴射ノズル)と半径流型のメインスワーラとを備えている。燃焼器には点火栓(点火装置)が配置される。
【0004】
特許文献2は、ガスタービンエンジンの一例であるターボファンエンジンを開示している。ターボファンエンジンは、ファンカウルと、コアカウルと、ファンと、低圧圧縮機と、高圧圧縮機と、燃焼器と、高圧タービンと、低圧タービンと、シャフトと、主ノズルとを備えている。燃焼器は、高圧圧縮機の下流側に配置されており、高圧圧縮機から送り込まれる圧縮空気と、インジェクタ(燃料噴射ノズル)から供給される燃料との混合気を燃焼することによって燃焼ガスを生成する。高圧タービンは、燃焼器の下流側に配置されており、燃焼器から排出される燃焼ガスから回転動力を回収し、高圧圧縮機を駆動する。高圧タービンは、シャフトに固定される複数のタービン動翼と、コア流路に固定される複数のタービン静翼と、シュラウドとを備えている。シュラウドは、タービン動翼のチップに対向して設けられており、燃焼器から排出された燃焼ガスの流路の一部を形成している。シュラウドは、タービン動翼に対向する面(燃焼ガス流路面)に設けられる溝部と、溝部の底部に開口する複数のフィルム冷却孔とを備える。
【0005】
燃焼ガスタービンやジェットエンジンにおいては、通常その燃焼器内部の温度は1000℃以上になる。この環境下で利用される耐熱材料にはNi基超合金などの1100℃程度の耐熱温度を保つ合金が利用される。また、火力発電などで利用される蒸気タービンなどでは、高温蒸気の温度は600℃~800℃になる。600℃程度までの蒸気タービンでは経済性の理由からフェライト系耐熱鋼が使用されている。600℃を超える蒸気タービンでは、フェライト系を超える耐熱合金であるオーステナイト系耐熱鋼が使用されている。
【0006】
このような内燃機関や外燃機関等の動力器は、その高効率化を目指し、動作温度の高温化が進んでいる。この動作温度は、既にタービン動翼、タービン静翼等の耐熱合金部材の基材の融点を超えており、各種の冷却技術が採用されている。この基材の耐熱温度を超える温度差は、空気によるフィルム冷却(例えば、上記特許文献2参照)や、後述する熱遮蔽コーティングによって、基材を実効的に冷却している。この熱遮蔽コーティング(Thermal Barrier Coating:TBC)膜は、150℃程度の遮熱効果が実現されている。なお、熱遮蔽コーティングは、遮熱コーティングとも呼ばれる。
【0007】
通常、TBC膜は熱伝導率の低いトップコートと、基材の酸化を防ぐボンドコートとからなる2層構造をなす。トップコートには、一般にセラミックが採用され、イットリア(Y)や、安定化酸化ジルコニウム(YSZ)などがある。ボンドコートには、基材へのアルミ拡散コーティングによってつくられるPt-Al合金などが利用されている。
【0008】
たとえば、特許文献3は、YSZよりも高温結晶安定性に優れ、高靭性且つ高い熱遮蔽効果を有する遮熱コーティング用材料を開示している。
【0009】
種々の熱遮蔽コーティングは、連続的な熱応力負荷や界面の変性のために亀裂が生じ、剥離することがある。この様な熱遮蔽コーティングの剥離は機器に局所的な加熱を引き起こし、重大な事故につながる可能性がある。この様な重大事故によって機器の運転が停止すると、大きな機会費用の損失となる。そこで、この様な事故を未然に防ぐために、機器の部材の温度監視が行われる。
【0010】
例えば、特許文献4は、ボイラの燃焼炉から発生する排ガスを監視する「ボイラのモニタ装置」を開示している。ボイラは、デポジットの付着を監視するため、排ガスに接触するモニタリングプローブ(モニタ装置)を備えている。プローブは、排ガスに接触する外管と、外管の内側に同心に設けられた内管と、その内管の更に内側に設けられた給水管とを有する。外管と内管との間に形成された環状の間隙には、8個の熱電変換素子が全周に亘って等間隔に配置されている。熱電変換素子は、高温側感熱部と低温側感熱部との間の温度差を検出する。高温側感熱部は、外管の内壁面に接触しており、低温側感熱部は、内管の外壁面に接触している。このような構成の熱電変換デバイスは、いわゆる「ゼーベック素子」等と呼ばれる。高温側感熱部と低温側感熱部との間に温度差が生じると、低温側感熱部を構成する2つの端子電極間に電位差が生じ、端子電極に接続された電流検出部には、上記温度差に応じた電流が流れる。
【0011】
また、特許文献5は、ガスタービン燃焼器の異常発熱を監視するガスタービン監視装置を開示している。ガスタービン燃焼器は、ガスタービンケーシング内の外筒と燃焼室形成用の燃焼器ライナ胴とを挿入した構成となっている。燃焼器ライナ胴は金属またはセラミックスによって構成されている。燃焼器ライナ胴の頭部には燃料ノズル(燃料噴射ノズル)が組立てられ、この燃料ノズル(燃料噴射ノズル)から燃焼室内に燃料が噴出されて燃焼するようになっている。外胴と燃焼器ライナ胴との間には、ガスタービン圧縮機から吐出される燃焼用空気を燃焼器ライナ胴内の燃焼室に向けて流通させる環状通路が形成されている。特許文献2に開示されたガスタービン監視装置は、ガスタービン燃焼器の燃焼器ライナ胴の外表面から燃焼時に発せられる赤外放射線を入光して燃焼器ライナ胴の表面温度分布を検出する赤外放射線温度検出器を備える。赤外放射線温度検出器は、ガスタービン燃焼器の燃焼器ライナ胴の高温域に対応する配置で、ガスタービンケーシングの外側部のフランジ部に取り付けられる。また、特許文献2は、燃焼器ライナ胴は複数の孔(冷却孔)を通して空気を導入するフィルム冷却等を採用していることを記載している。
【0012】
特許文献6は、燃焼タービンエンジンの運転中に該タービンエンジンの燃焼システムの燃焼ダクトにおける欠陥を検出する方法を開示している。ガスタービンエンジンにおいて用いることが出来る燃焼器は燃料ノズル又は燃料噴射装置を含む。燃焼噴射装置は、燃焼用に燃料及び空気の混合気を集める。燃焼噴射装置の下流側には、燃焼が生じる燃焼室がある。燃焼室は、全体的に、流れスリーブ内に密閉されるライナにより定められる。流れスリーブとライナとの間にはアニュラスが形成される。トランジションピースは、ライナから下流側のタービンセクションに移るときにライナの円形断面から環状断面に移行する。トランジションピースの内壁面は、絶縁被膜で被覆することができる。絶縁被膜は、遮熱コーティングを含むことができる。特定の好ましい環境において、ジルコニア酸化物の遮熱コーティングを用いることができる。第1の電極は、トランジションピースに電気的に接続することができる。トランジションピースは、金属であり、高い導電率を有する。第2の電極は、高温ガス経路に電気的に曝される(且つトランジションピースに接続されない)ように位置付けることができる。第2の電極をトランジションピースに貫通させるが、電気絶縁材料又は構造体によりトランジションピースから電気的に絶縁させ、更に高温ガス流路に曝される導電性先端を有する。第2の電極は、少なくとも部分的には、高温ガス流に曝され且つ第1の電極に近接するように位置付けることができる。
【0013】
また、この温度監視機能を熱遮蔽コーティングそのものに持たせる試みがある。例えば特許文献7は、燃焼ガスタービンの熱遮蔽コーティングの下地に、単結晶ZnO膜を形成することで、熱流センサとして機能させることを記載している。これは単結晶ZnO膜のc軸を、ガスタービン表面から傾斜させて製膜することで、ZnOの異方的な熱電変換性能によって、ガスタービン表面に垂直な方向の熱流を検出するものである。
【先行技術文献】
【0014】

【特許文献1】国際公開第2011/092779号
【特許文献2】国際公開第2013/129530号
【特許文献3】国際公開第2010/116568号
【特許文献4】特開2008-261747号公報
【特許文献5】特許第3857420号公報
【特許文献6】特開2012-145101号公報
【特許文献7】特表2016-500780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この様に、高温環境下で使用される部材の温度監視を行おうとすると、内部に温度計を設置する必要がある。
【0016】
しかしながら、特許文献4に記載したような、局所的な温度測定では部材の正確な温度分布は分からず、十分な監視性能を発揮できない。換言すれば、この様な測定は局所的な温度しか計測できず、機器の異常を検出することは困難である。また、複数箇所の温度を検出しようとすると、温度計の数が増加しコストの著しい増加を招くことになる。さらに、温度計を高温環境下に設置することで、熱遮蔽コーティングの寿命以外に、温度計の寿命という別の制約が発生する。熱遮蔽コーティングよりも先に温度計が故障する様な場合、頻繁に機器を停止することとなり、機会損失が増えることになる。
【0017】
特許文献5では、赤外線放射温度検出器が、燃焼器ライナ胴の特定の領域(高温域)から発された赤外放射線を入光して、その特定の領域の表面温度分布を検出しているだけである。したがって、特許文献5では、燃焼器ライナ胴における全体の表面温度分布を検出することができない。
【0018】
特許文献6では、部材表面の熱遮蔽コーティングの欠損や劣化を、その表面の導通によって検出している。しかしながら、この様な検出方法は、コーティングの欠損が発生したことを通知することであって、熱負荷の状況を判断しながら適当な運転を教示することはできない。
【0019】
また、特許文献7のように、特定の材料の単結晶膜を作ることは、コスト及び歩止まりの面で課題がある。特にタービンの様な大面積な部材への適用において、均一な単結晶膜を作ることは製造コストを著しく増大させる。
【0020】
本発明の目的は、高温環境に暴露される部材表面を保護し、表面の温度や熱流分布を検出できる磁性熱電変換素子及びそれを含む熱電変換システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明による磁性熱電変換素子は、熱源と接する支持体の表面に設けられる磁性熱電変換素子であって、磁性体と;前記磁性体に磁気的に結合した電気伝導性を有する起電体と;前記磁性体と前記起電体とを覆う耐熱性酸化金属膜と;を有する。
【0022】
本発明による熱電変換システムは、熱源と接する支持体の表面に設けられる熱電変換システムであって、前記支持体の所定の位置に配された少なくとも1つの磁性熱電変換素子であって、磁性体と、前記磁性体に磁気的に結合した電気伝導性を有する起電体と、を有する前記磁性熱電変換素子と;前記起電体と電気的に接続する配線を介して、熱電変換によって得られた電気的信号を収集する手段と;を有し、前記磁性熱電変換素子と前記配線とが、耐熱性酸化金属膜によって覆われていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高温環境に暴露される部材表面を保護し、表面の温度や熱流分布を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】関連技術に係るガスタービン燃焼器の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る磁性熱電変換素子を示す部分概略断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る磁性熱電変換素子を示す部分概略断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る熱電変換システムが適用されるガスタービン燃焼器の概略構成を示す図である。
【図5】図4のAの四角形で囲んだ部分を拡大して示す部分拡大図である。
【図6】本発明の第1の実施例に係る温度分布検出装置の概略構成を示す平面図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係る温度分布検出装置の概略構成を示す図であって、(A)は部分断面図、(B)は概略平面図、(C)は部分断面図である。
【図8】本発明の第3の実施例に係る温度分布検出装置90の概略構成を示す図であって、(A)は概略斜視図、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[関連技術]
本発明の理解を容易するために、本発明が適用される燃焼器について説明する。

【0026】
図1は本発明が適用される関連技術に係る燃焼器10の一例を示す概略図である。図示の燃焼器10は、ガスタービン燃焼器である。ガスタービン燃焼器10は、環状のハウジング(外胴)12と、この環状のハウジング(外胴)12の内部に形成された環状の燃焼筒(燃焼器ライナ胴)14とを備える。ハウジング12はケーシングとも呼ばれる。

【0027】
ガスタービン燃焼器10には、図示しない圧縮機から送給された圧縮空気(燃焼用空気)が、環状のディフューザ16を介してハウジング(外胴)12の環状の内部空間に導入される。

【0028】
換言すれば、外胴12と燃焼器ライナ胴14との間には、圧縮機から吐出された燃焼用空気を燃焼器ライナ胴14内の燃焼室18に向けて流通させる環状通路20が形成されている。

【0029】
燃焼器ライナ胴14の頭部には燃焼噴射ノズル22が組立てられ、この燃焼噴射ノズル22から燃焼室18内に燃料が噴射されて燃焼するようになっている。

【0030】
燃焼器10の所定の箇所(図示の例では、燃料噴射ノズル22に近接した位置)に、点火装置24が配置されている。また、燃焼器10の別の所定の箇所には、燃焼室18内の温度を計測するための温度計26も備えられている。温度計26としては、熱電対を用いたものが使用される。さらに、燃焼器ライナ胴14には、環状通路20と燃焼室18との間を挿通する、複数の冷却孔28が形成されている。したがって、図示の燃焼器ライナ胴14は、複数の冷却孔28を通して空気を導入するフィルム冷却を採用している。

【0031】
このように、図示の燃焼器10は、灯油やジェット燃料などの燃料を燃焼噴射ノズル22から圧縮空気に連続的に噴射混合させながら燃焼させることで急激に体積を膨張させ、得られた流速の速い燃焼ガスを羽根車(図示せず)の駆動や、ジェット機構(図示せず)に利用するための構成部品である。

【0032】
より高い効率を得るためには、より高温での燃焼が望ましい。そのため、燃焼器ライナ胴14には、その内壁面に、耐熱コート30を施した部材が用いられている。前述したように、耐熱コート30としては、TBC膜や特許文献3に開示されているような熱遮熱コーティングが用いられる。

【0033】
このような構成の燃焼器10は、ガスタービンやジェットエンジン等の連続運転の用途が主である。このため、運転中に、冷却孔28の目詰まりによる局所的な異常燃焼の検出や、耐熱コート30の劣化を判定できれば、更なる安全性の確保が期待できる。

【0034】
関連技術では、燃焼状態を、主に熱電対などを用いた温度計26による温度計測で判断していた。このような計測では、局所的な異常を検出することができない。

【0035】
また、温度計26として、前述の特許文献5に開示された赤外線放射温度検出器を用いることも考えられる。しなしながら、この方法では、前述したように、燃焼器ライナ胴14における全体の表面温度分布を検出することができない。

【0036】
さらに、上記特許文献6のように、部材表面の熱遮蔽コーティング30の欠損や劣化を、その表面の導通によって検出することも考えらえる。しかしながら、前述したように、この検出方法は、熱遮蔽コーティング30に欠損が発生したことを通知しているだけであって、熱負荷の状況を判断しながら適当な運転を教示することはできない。

【0037】
さらにまた、この温度監視機能を熱遮蔽コーティング30そのものに持たせるために、上記特許文献7のように、熱遮蔽コーティング30の下地に、単結晶ZnO膜を形成することも考えらえる。しかしながら、前述したように、特定の材料の単結晶膜を作ることは、コスト及び歩止まりの面で課題がある。特にタービンの様な大面積な部材への適用において、均一な単結晶膜を作ることは製造コストを著しく増大させる。

【0038】
[発明の概要]
本発明は、ガスタービン燃焼器10(図1参照)などにおける高温ガス(燃焼ガス)が流れる環境に適した高温ガス経路部材を提供する。この高温ガス経路部材は、外表面に磁性層と金属層の二層膜からなるスピンゼーベック構造を備える。このスピンゼーベック構造は、高温ガスに接触する内表面と、冷却流に接触する外表面との間の温度差に比例した電圧を生じる。この電圧を外表面に沿って配設された計測線によって読み取ることで、高温ガスや冷却流の流れを阻害せずに、部材の外表面の温度分布を計測できる。

【0039】
スピンゼーベック構造は、高温ガス経路部材の表面をできる限り覆う様に作成することが好ましい。具体的には、磁性層の上には、複数の金属層が設けられて、実質的にガス経路部材の表面全体の温度分布が検出できることが好ましい。特に、スピンゼーベック電圧は温度差に比例するため、出力の大きな箇所には大きな熱負荷が掛かっていることになり、この負荷を低減する対策を取ることができ、高温ガス経路部材の寿命を長くできる。

【0040】
[第1の実施形態]
図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る磁性熱電変換素子40について説明する。図示の磁性熱電変換素子40は、熱源側に直接接触して配置された場合の素子である。ここで、熱源とは、例えば、図1の例の場合で言えば、燃焼ガスに相当する。

【0041】
磁性熱電変換素子40は、支持体50の第1の表面50a上に設けられている。ここで、支持体50とは、例えば、図1の例の場合で言えば、燃焼器ライナ胴14に相当する。したがって、支持体50の第1の表面50aは、図1の燃焼器ライナ胴14の内壁面に対応する。

【0042】
支持体50は、一般的な金属基材から成り、部材の用途に応じて適宜選択できる。例えば、金属基材としては、高クロムフェライト鋼、オーステナイト鋼、Ni基超合金などがあげられる。

【0043】
磁性熱電変換素子40は、密着層52を介して、支持体50の第1の表面50a上に密着している。

【0044】
密着層52は、拡散層522と、ボンディング層524とから成る。

【0045】
ボンディング層524は、耐酸化を目的として、支持体50への金属コーティングによって拡散層522と共に形成される。ボンディング層524の厚さは典型的には75μm~150μmである。具体的には、ボンディング層524としてはアルミ拡散コーティングなどがあげられる。さらに耐腐食性や耐酸化性が求められる場合には、ボンディング層524として、MCrAlY (M=Ni,Co)をプラズマ溶射等によって形成しても良い。

【0046】
したがって、第1の実施形態では、支持体50と密着層52と磁性熱電変換素子40との組み合わせによって、高温ガス経路部材(50,52,40)が構成されている。

【0047】
磁性熱電変換素子40は、磁性体42と、起電体44と、耐熱性酸化金属膜46とを含む。起電体44は、磁性体42に磁気的に結合し、電気伝導性を有する。起電体44には配線48が接続されている。耐熱性酸化金属膜46は、磁性体42、起電体44、および配線48を覆う。

【0048】
耐熱性酸化金属膜46は、熱遮蔽効果を目的としたセラミックコーティングで、最も一般的なものとして、イットリア安定化ジルコニアの溶射膜や電子ビーム蒸着膜があげられる。耐熱性酸化金属膜46の厚さは、典型的には、100μm~1000μmである。

【0049】
なお、耐熱性酸化金属膜46は、10[W/mK]以下の熱伝導率を有することが好ましく、さらに好ましくは1[W/mK]以下の熱伝導率を有することが好ましい。また、耐熱性酸化金属膜46は、10[W/mK]以下の熱伝達率を有することが好ましい。換言すれば、熱伝導率が10[W/mK]であれば耐熱性酸化金属膜46の厚さは1000μm以上である必要があり、熱伝導率が1[W/mK]であれば耐熱性酸化金属膜46の厚さは100μm以上である必要がある。

【0050】
図示の例では、磁性体42は磁性絶縁体層から成る。磁性絶縁体層42を形成する材料は特に限定されないが、ガーネットフェライト、スピネルフェライト、ヘキサフェライト、ペロブスカイト、コランダム、ルチル型などの強磁性体、反強磁性体、フェリ磁性体があげられる。典型的には、磁性絶縁体層42の膜厚は10nm~4000nmである。

【0051】
また、図示の例では、起電体44は金属層から成る。金属層44はボンディング層524とは電気的に絶縁されている。金属層44を形成する材料は、逆スピンホール効果を生じるだけのスピン軌道相互作用がある金属であれば特に限定されない。例としては、金属層44として、Pt、Au、Ir、Pd、Ni、W、Ta、Mo、Nb、Cr、Tiなどの単体金属、NiFe、FePt、IrMn、AuCuなどの2元系合金、Pt/Cu、Pt/Au、Pt/FeCu、Pt/Ti、CoFeB/Ti、Co/Cuなどの金属2層膜、IrO、SrRuOなどの導電性酸化物などがあげられる。また、金属層44は、磁性金属であってもよい。例えば、磁性金属としては、磁性合金のパーマロイやなどがあげられる。典型的には、金属層44の膜厚は10nm~1000nmである。

【0052】
典型的な材料の組み合わせを与える指針は、磁性絶縁体層(磁性体)42のキュリー温度、金属層(起電体)44の融点、ボンディング層524、磁性絶縁体層(磁性体)42、金属層(起電体)44、耐熱性酸化金属膜46の4層の間での熱膨張係数の差があげられる。

【0053】
磁性絶縁体層(磁性体)42のキュリー点が高ければ高いほど、高温環境での用途に適している。例えばマグネタイト(Fe)のキュリー点は585℃であり、ニッケルフェライト(NiFe)のキュリー点は590℃であり、コバルトフェライト(CoFe)のキュリー点は520℃であり、これらはフェライト類の中で高いキュリー点を持つ。

【0054】
金属層(起電体)44の融点が高ければ高いほど、高温環境での用途に適している。例えばプラチナ(Pt)の融点は3800℃であり、タングステン(W)の融点3400℃であり、この様な単体金属は高温下で安定である。

【0055】
ボンディング層524、磁性絶縁体層(磁性体)42、金属層(起電体)44、耐熱性酸化金属膜46の4層の間での熱膨張係数の差は、1×10-8~1×10-4に収まっていることが好ましい。一例として、ボンディング層524をNiCrAlYまたはNiCoCrAlY合金(熱膨張係数14×10-6-1)、耐熱性酸化金属膜46をイットリア安定化ジルコニア(熱膨張係数10.5×10-6-1)、金属層(起電体)44をプラチナ(熱膨張係数8.8×10-6-1)、磁性絶縁層(磁性体)42をマグネタイト(熱膨張係数1.3×10-5-1)とすると、これらの組み合わせは好適な熱膨張係数の組み合わせに入る。

【0056】
尚、配線48は金属層から成る。配線48を形成する材料は特に限定されないが、金属層(起電体)44の材料と同じ材料であってもよい。たとえば、金属層(起電体)44がプラチナ(Pt)で形成されている場合、配線48もプラチナ(Pt)で形成されてよい。このように、金属層(起電体)44と配線48とを同じ材料で形成すれば、製造工程を簡略化できる等の利点がある。

【0057】
磁性絶縁体層(磁性体)42と金属層(磁性体)42との組み合わせによって、機能層(42,44)が構成される。この機能層(42,44)は、スピンゼーベック素子を構成する。

【0058】
高温ガス経路部材(50,52,40)は、その使用時において、耐熱性酸化金属膜46側の温度と反対側(低温側熱浴)の温度とに温度差を生じる。この温度差はコーティングの各層の熱抵抗によって分配され、磁性絶縁体層(磁性体)42中にも温度差が生じる。この温度差によって、スピン流が磁性絶縁体層(磁性体)42に生じる。金属層(起電体)44は、磁性絶縁体層(磁性体)42から流れ込んだスピン流による逆スピンホール効果によって電圧を生じる。この電圧は、スピンゼーベック電圧と呼ばれる。また、スピンゼーベック電圧はスピンゼーベック起電力とも呼ばれる。

【0059】
このスピンゼーベック電圧は磁性絶縁体層(磁性体)42に生じた温度差に比例しているため、このスピンゼーベック電圧によって高温ガス経路部材(50,52,40)に生じる温度差を計測できる。また、金属層(起電体)44が磁性金属である場合には、この温度差に比例した異常ネルンスト電圧が生じる。この場合、スピンゼーベック電圧と異常ネルンスト電圧との合算によって温度差を検出できる。なお、スピンゼーベック効果や異常ネルンスト効果を発揮するために、磁性絶縁体層(磁性体)42は一方向に磁化していることが必要である。

【0060】
前述したように、本第1の実施形態に係る磁性熱電変換素子40は、支持体50の内壁面(第1の表面)50aに設けられている。そのため、図2に示されるように、耐熱性酸化金属膜46は、磁性体42が磁性を損失する温度(キュリー温度)以上の上記熱源と接触する、熱源接触界面を有することになる。

【0061】
[第1の変形例]
次に、図2を参照して、本発明の第1の変形例に係る磁性熱電変換素子40について説明する。

【0062】
第1の変形例に係る磁性熱電変換素子40は、上述した第1の実施形態に係る磁性熱電変換素子40と同様の構成を有するが、後述するように、機能層(42,44)およびボンディング層524の組成(素材)が異なる。以下では、説明を簡略化するために、第1の実施形態との相違点についてのみ説明する。

【0063】
第1の実施形態との違いは、第1の変形例では、機能層(42,44)の磁性体42が磁性金属層からなることである。この様な磁性金属層42の例としては、磁性合金のパーマロイなどがあげられる。

【0064】
この場合、機能層(42,44)で生じた電圧が、ボンディング層524を通過して支持体50に逃げない様に、ボンディング層524が電気的な絶縁体であるアルミナなどであることが好ましい。あるいはボンディング層524の上に薄い電気的な絶縁層を形成しても良い。

【0065】
[第2の実施形態]
図3を参照して、本発明の第2の実施形態に係る磁性熱電変換素子40Aについて説明する。図示の磁性熱電変換素子40Aは、支持体50を介して熱源に接触する場合の素子である。ここで、熱源とは、例えば、図1の例の場合で言えば、燃焼ガスに相当する。

【0066】
図示の磁性熱電変換素子40Aは、支持体50の第2の表面50b上に設けられている。ここで、支持体50とは、例えば、図1の例の場合で言えば、燃焼器ライナ胴14に相当する。したがって、支持体50の第2の表面50bは、図1の燃焼器ライナ胴14の外壁面に対応する。

【0067】
磁性熱電変換素子40Aは、直接、支持体50の第2の表面50b上に密着している。

【0068】
図示の磁性熱電変換素子40Aは、図2に示した磁性熱電変換素子40と同様の構成を有する。第1の実施形態との相違点は配置だけである。

【0069】
すなわち、第1の実施形態では、耐熱性酸化金属膜46は、直接、熱源と接触している。これに対して、第2の実施形態では、耐熱性酸化金属膜46は、支持体50を介して、熱源と接触している。

【0070】
また、第2の実施形態では、密着層52の代わりに、表面保護層54が設けられている。

【0071】
したがって、第2の実施形態では、支持体50と表面保護層54と磁性熱電変換素子40Aとの組み合わせによって、高温ガス経路部材(50,54,40A)が構成されている。

【0072】
このように、本第2の実施形態に係る磁性熱電変換素子40Aは、支持体50の外壁面(第2の表面)50bに設けられている。そのため、図3に示されるように、耐熱性酸化金属膜46は、磁性体42が磁性を損失する温度(キュリー温度)以上の上記熱源と支持体50を介して接触する、熱源接触界面を有することになる。

【0073】
別言すると、図示の高温ガス経路部材(50,54,40A)は、高温ガスに接触する内表面と、冷却流に接触する外表面と、を持つ。高温ガス経路部材(50,54,40A)は、外表面に形成された磁性層(42)と、磁性層(42)に重なって、冷却流に接触する金属層(44)と、金属層(44)から外表面に沿って配設された計測線(48)と、を備える。

【0074】
この高温ガス経路部材(50,54,40A)の温度検出原理は、上記高温ガス経路部材(50,52,40)と同じであるので、その説明を省略する。

【0075】
[第3の実施形態]
図4および図5を参照して、本発明の第3の実施形態に係る熱電変換システム60について説明する。

【0076】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る熱電変換システム60が適用されるガスタービン燃焼器10Aの概略構成を示す図である。図5は、図4のAの四角形で囲んだ部分を拡大して示す部分拡大図である。

【0077】
図示のガスタービン燃焼器10Aは、温度計26が削除され、その代わりに後述する熱電変換システム60を備えている点を除いて、図1に示したガスタービン燃焼器10と同様の構成を有し、動作をする。したがって、図1に示した構成要素と同一の機能を有するものには同一の参照符号を付し、説明の簡略化のために、それらについての説明を省略する。尚、図4では、点火装置24の図示を省略している。

【0078】
ガスタービン燃焼器10Aは、熱源としての燃焼ガスを有し、支持体50としての燃焼器ライナ胴14を備えている。燃焼器ライナ胴14は、内壁面14aと外壁面14bとを持つ。燃焼ガス(熱源)は、燃焼器ライナ胴14の内壁面14aで覆われている。一方、圧縮空気は、燃焼器ライナ胴14の外壁面14bとケーシング12とで囲まれた環状通路20中を通過する。

【0079】
上述したように、燃焼器ライナ胴14の内壁面14aおよび外壁面14bが、それぞれ、支持体50の第1の表面50aおよび第2の表面50bに対応する。

【0080】
図示の熱電変換システム60は、燃焼ガス(熱源)を覆う燃焼器ライナ胴(支持体)14の外壁面14bに設けられている。

【0081】
図5に示されるように、熱電変換システム60は、図3に示された第2の実施形態に係る磁性熱電変換素子40Aと同様の構成の磁性熱電変換素子62を、各冷却孔28を塞ぐことなく、かつ各冷却孔28の周辺にのみ備えている。

【0082】
磁性熱電変換素子62は、スピンゼーベック素子622と、断熱層624とを含む。スピンゼーベック素子622は、図3に示される、磁性体42と起電体44との組み合わせから成る。断熱層624は、図3に示される、耐熱性酸化金属膜46から成る。

【0083】
図4に示されるように、磁性熱電変換素子62は、燃焼器ライナ胴14の外壁面14b上に、折り返した帯状に施工されている。

【0084】
ディフューザ16は、燃料噴射ノズル22の外周に、フランジ部162を持つ。このディフューザ16のフランジ部162には、接続電極64が設けられている。スピンゼーベック素子622の配線(図3の配線48)は、この接続電極64に接続されている。また、接続電極64には、耐熱電線66が接続されている。

【0085】
したがって、接続電極64と耐熱電線66との組み合わせは、配線を介して、スピンゼーベック素子622の熱電変換によって得られた電気的信号を収集する収集手段(64,66)として働く。

【0086】
このように、磁性熱電変換素子62は、燃焼器ライナ胴14全体の表面積と比較して、非常に小さい取り付け面積を持っており、かつ冷却流れを妨げない薄膜構造を備えている。このため、磁性熱電変換素子62を燃焼器ライナ胴14の外壁面14b上に敷設することにより、若干の冷却効率の損失は生じるものの、燃焼器ライナ胴14の全体に亘って温度をセンシングすることが可能となる。

【0087】
したがって、ガスタービン燃焼器10Aの動作中に、複数の冷却孔28のいずれかが閉塞すると、その閉塞した冷却孔28の周辺温度が上昇する。この周辺温度の上昇に起因して、スピンゼーベック素子622のスピンゼーベック起電力に変化が生じる。このスピンゼーベック起電力の変化を、配線(一部の帯)を介して上記収集手段(64,66)で収集することにより、冷却孔28のつまりの発生を検知することができる。

【0088】
このように、磁性熱電変換素子62の一部の帯のスピンゼーベック起電力の変化を検出することによって、冷却孔28のつまりの発生を検出することができる。また、磁性熱電変換素子62の全ての帯のスピンゼーベック起電力の変化を検出することによって、当該ガスタービン燃焼器10Aにおける異常燃焼を検出することが可能となる。

【0089】
さらに、磁性熱電変換素子62の一部の帯のスピンゼーベック起電力の変化を検出することによって、間接的ではあるが、燃焼器ライナ胴14の内壁面14aに設けられた耐熱コート30(図1参照)の剥離も検出することが可能となる。何故なら、もし耐熱コート30が剥離すると、その剥離箇所の温度が上昇し、その剥離箇所の近傍に設けられた磁性熱電変換素子62のスピンゼーベック素子622においてスピンゼーベック起電力に変化が生じるからである。

【0090】
燃焼器ライナ胴14の表面温度は燃焼ガスの流れの後部に向けて上昇する。そのため、冷却孔28が閉塞する位置で、温度変化量が異なると考えられる。したがって、事前に収集手段(64,66)で収集して得られた実測データを参照データとして蓄積しておくことによって、参照データと現在(実際)の実測データとを比較すれば、どの位置で冷却孔28のつまりが生じたかまでも特定することが可能となる。
【実施例1】
【0091】
図6は、本発明の第1の実施例に係る温度分布検出装置70の概略構成を示す平面図である。
【実施例1】
【0092】
図示の温度分布検出装置70は、上述した第2の実施形態に係る磁性熱電変換素子40Aを使用して、部材(支持体)50の温度分布を検出する装置である。
【実施例1】
【0093】
なお、図6では、機能層(42,44)に対応する部分のみを図示し、他の構成要素の図示を省略している。
【実施例1】
【0094】
図6に示される様に、温度分布検出装置70では、部材(支持体)50に生じる温度差の分布を計測するために、金属層(起電体)44は磁性絶縁体層(磁性体)42上に、グリッド状にパターニングされて成膜される。グリッド状にパターニングされた金属層(起電体)44は、部材(支持体)50の端部にて測定用電極(図示せず)に接続されている。
【実施例1】
【0095】
従って、それぞれの測定用電極における電圧を測定することで、温度分布検出装置70は、スピンゼーベック効果に起因する電圧(スピンゼーベック電圧)を測定できる。グリッドの縦横の両方向にスピンゼーベック電圧を取り出すために、温度分布検出装置70においては、磁性絶縁体層(磁性体)42の磁化Mの向きは、図6の太線の矢印で示されるように、グリッドの縦横の向きのどちらとも並行ではない様に設計される。この測定を位置ごとに行うことで、温度分布検出装置70は、部材(支持体)50の温度差分布を測定することができ、特に周囲よりも温度差が生じている箇所を特定することができる。
【実施例1】
【0096】
もしくは、グリッドの縦配線に接続する素子と横配線に接続する素子を独立に配することも可能である。その場合には、磁性絶縁体層(磁性体)42の磁化Mの向きは、それぞれの配線が伸びる方向に直交するよう配置することが出来る。
【実施例2】
【0097】
図7は、本発明の第2の実施例に係る温度分布検出装置80の概略構成を示す図であって、(A)は部分断面図、(B)は概略平面図、(C)は部分断面図である。
【実施例2】
【0098】
図示の温度分布検出装置80は、上述した第1の実施形態(第1の変形例)に係る磁性熱電変換素子40をガスタービン燃焼器10(図1参照)に適用して、燃焼器ライナ胴14の温度分布を検出する装置である。
【実施例2】
【0099】
したがって、温度分布検出装置80は、燃焼器ライナ胴14の内壁面14a上に設けられた、機能性コーティング(後述する)を備えている。この機能性コーティングは、図2に図示した磁性熱電変換素子40に対応する素子である。
【実施例2】
【0100】
図7(A)に示されるように、機能性コーティングは、絶縁層82、電極層83、磁性層84、およびトップ層(図示せず)から成る。絶縁層82は、図2の密着層52に相当する。電極層83は、図2の起電体44に相当する。磁性層84は、図2の磁性体42に相当する。図示しないトップ層は、図2の耐熱性酸化金属膜46に相当する。
【実施例2】
【0101】
燃焼器ライナ胴14は、耐熱基材から成る。耐熱基材14は、ライナの形状を保持する基材であり、ガスタービン燃焼器10の使用温度においても剛性が担保される金属やセラミックスにより構成される。耐熱基材14は円筒状であり、その壁面に冷却孔28(図1参照)を多数有する。
【実施例2】
【0102】
耐熱基材14は燃焼ガスに触れる高温部と冷却空気に触れる低温部に分かれている。図示の例では、高温部に直接、絶縁層82、電極層83、磁性層84、トップ層(図示せず)が、この順序で積層構造により形成される。
【実施例2】
【0103】
なお、磁性層が絶縁体の場合は、高温部に、磁性層84、電極層83、トップ層(図示せず)の順序で積層構造により形成される。
【実施例2】
【0104】
絶縁層82は、耐熱基材14および電極層83を絶縁する物質、例えばセラミックスからなる。耐熱基材14が伝導性を有しない場合は、絶縁層82を省略可能である。
【実施例2】
【0105】
電極層83は磁性層84との接合によりスピンゼーベック素子を形成する。電極層83は、熱流に比例した信号を出力する信号層83-1と、信号を伝搬する配線層83-2とから成る。
【実施例2】
【0106】
図7(B)に、電極層83の構成例を示している。図7(B)では線上の検出構造の多数設置を行っているが、格子状の配置でも良い。
【実施例2】
【0107】
信号層83-1は、スピン流電流変換機能を有する材料であれば良い。信号層83-1により熱流に比例した電圧が出力される。また、電流印加による起電力による抵抗を算出し、その抵抗から信号層83-1の温度を測定できるために、信号層83-1は抵抗値の温度依存性があることが望ましい。
【実施例2】
【0108】
温度分布検出装置80は、配線部86と計測部(図示せず)とを更に備える。
【実施例2】
【0109】
図7(B)および(C)に示されるように、配線層83-2は信号層83-1により生成されるセンサ出力を、多極コネクタ85を介して、外部へ取り出す配線部86への接続手段を提供する。図7(C)に示されるように、多極コネクタ85は、冷却孔28(図1参照)に挿入されて設けられている。
【実施例2】
【0110】
信号層83-1におけるセンサ出力は、配線部86を通じて計測部(図示せず)に送られるため、配線層83-2および配線部86における外部起電力が、センサ出力起電力に比べて小さいことが必要となる。信号層83-1での主な外部起電力はスピンゼーベック電圧が挙げられる。このため、配線層83-2としての最も望ましい構成は、信号層83-1を構成する材料と同種の物質または同等のゼーベック係数を有する物質である。
【実施例2】
【0111】
また、配線層83-2におけるスピンゼーベック出力を避けるために、配線層83-2を構成する物質は、スピン電流変換効率が十分に小さい、または、磁性層84との接触面にスピン絶縁体を有する複合構造である必要がある。スピン絶縁体には磁性絶縁体ではない物質、例えばAlやSiOであり、1nm以上の厚さが必要となる。
【実施例2】
【0112】
図7(B)および(C)に示されるように、配線層83-2と配線部86との間の接続の一つの形態は、耐熱基材14における冷却孔28における多極コネクタ85である。この際、上述のスピンゼーベック電圧を排除するためにサーマルアンカが設置されることが望ましい。
【実施例2】
【0113】
図示しないトップ層は、磁性層84を動作可能なキュリー温度以下になるよう設計された熱遮蔽層である。
【実施例2】
【0114】
配線部86における配線は、燃焼器ライナ胴14の外周を通るように設置されるケーブルであるが、直接、耐熱基材14に形成されていても良い。配線部86と計測部(図示せず)との接合部のサーマルアンカが取られていることが、外部起電力防止の観点から必要とされる。
【実施例2】
【0115】
図示しない計測部は、直流起電力を測定可能であれば良い。また、熱流に加えて温度を検出するためには、計測部は、電流印加機能および電流印加時の電圧が測定可能である必要がある。この場合、電流は正負の電流を印加可能であることが望ましい。電流値をI、電圧値をVとして、抵抗値Rは
R=[V(+I)-V(-I)]/I/2
より求まり、同時に熱流に比例するスピンゼーベック起電力VSSE
SSE=[V(+I)+V(-I)]/2
より測定可能である。ことから、計測部は、+Iと-Iをある周波数で切り替え、交流電圧と直流電圧を測る機能をもたせることで、同時測定が実現可能である。周波数は高いほど良いが、必要なセンサ信号の時間スケールに合わせて低くして良い。
【実施例2】
【0116】
また、抵抗測定を考慮すると、配線層83-2は抵抗が低いことが望ましく、良い導体か信号層83-1の抵抗より十分小さくなるよう厚いことが望ましい。また、配線層83-2で形成される配線を二重化して4線式の抵抗測定を用いるか、隣接する4本の配線を用いて4線式の抵抗測定を行っても良い。
【実施例2】
【0117】
計測部は、測定したい箇所数分だけ電圧測定可能である必要がある。そのため、計測部としては、電圧計を同数だけ用意するか、リレー端子によって切り替えて計測できれば良い。
【実施例2】
【0118】
本第2の実施例に係る温度分布検出装置80は、上記により任意の点の熱流および温度を計測可能な手段を提供する。多数の点の空間的・時間的値から、円筒内部の分布を熱拡散方程式に従って推定可能である。また、計測目的により、適切な計測箇所および構造の最適化が可能である。
【実施例3】
【0119】
図8は、本発明の第3の実施例に係る温度分布検出装置90の概略構成を示す図であって、(A)は概略斜視図、(B)は断面図である。
【実施例3】
【0120】
図示の温度分布検出装置90は、上述した第2の実施形態に係る磁性熱電変換素子40Aをガスタービン燃焼器10(図1参照)に適用して、燃焼器ライナ胴14の温度分布を検出する装置である。
【実施例3】
【0121】
したがって、温度分布検出装置90は、燃焼器ライナ胴14の外壁面14b上に設けられた、第1乃至第4のセンサ91、92、93、および94を備えている。第1乃至第4のセンサ91~94は、図8(A)に示されるように、燃焼器ライナ胴14の外壁面14b上に位置を変えて設置されている。なお、図示の例では、センサの個数が4であるが、本発明はこれに限定されないのは勿論である。すなわち、センサの個数としては任意の数を選択してよい。
【実施例3】
【0122】
図8(B)に示されるように、第1乃至第4のセンサ91~94の各々は、図3に図示された磁性熱電変換素子40Aから成る。
【実施例3】
【0123】
図示の温度分布検出装置90は、燃焼器ライナ胴14の円周に沿って平均化された熱流値および温度を測定することで信号強度を高めることで、高速測定に向けた精度上昇が可能である。
【実施例3】
【0124】
ここで、燃焼器ライナ胴14の円筒の半径をr、円筒の内部の熱伝導率を反映する経験的パラメータをλとして、計測された熱流jqおよび温度Tとすると、円筒中心部の温度Tは、T=T+jq r/λで与えられる。これを、位置を変えて設置された第1乃至第4のセンサ91~94における第1乃至第4の温度T91、T92、T93、T94を検出することで、空間プロファイルの監視が可能になる。また、温度分布検出装置90は、時間の関数として、各温度おける遅れを計算することで、燃焼温度が振動する際には流れ速度が推定可能である。さらに、温度分布検出装置90は、乱流形成や着火不良の検出が可能である。
【符号の説明】
【0125】
10、10A 燃焼器(ガスタービン燃焼器)
12 ハウジング(ケーシング;外胴)
14 燃焼筒(燃焼器ライナ胴)
14a 内壁面
14b 外壁面
16 ディフューザ
162 フランジ部
18 燃焼室
20 環状通路
22 燃料噴射ノズル
24 点火装置
26 温度計
28 冷却孔
30 耐熱コート(熱遮熱コーティング)
40、40A 磁性熱電変換素子
42 磁性体(磁性絶縁体層;磁性金属層)
44 起電体(金属層)
46 耐熱性酸化金属膜
50 支持体
50a 第1の表面
50b 第2の表面
52 密着層
522 拡散層
524 ボンディング層
54 表面保護層
60 熱電変換システム
62 磁性熱電変換素子
622 スピンゼーベック素子
624 断熱層
64 接続電極
66 耐熱電線
70 温度分布検出装置
80 温度分布検出装置
82 絶縁層
83 電極層
83-1 信号層
83-2 配線層
84 磁性層
85 多極コネクタ
86 配線部
90 温度分布検出装置
91~94 センサ
Drawing
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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