TOP > 国内特許検索 > 部分放電開始電圧計測方法及びその装置 > 明細書

Specification :部分放電開始電圧計測方法及びその装置

Country 日本国特許庁(JP)
Gazette 特許公報(B2)
Patent Number 特許第4378478号 (P4378478)
Publication number 特開2006-038471 (P2006-038471A)
Date of registration 平成21年10月2日(2009.10.2)
Date of issue 平成21年12月9日(2009.12.9)
Date of publication of application 平成18年2月9日(2006.2.9)
Title of the invention, or title of the device 部分放電開始電圧計測方法及びその装置
IPC (International Patent Classification) G01R  31/12        (2006.01)
FI (File Index) G01R 31/12 A
Number of claims or invention 10
Total pages 11
Application Number 特願2004-214244 (P2004-214244)
Date of filing 平成16年7月22日(2004.7.22)
Exceptions to lack of novelty of invention 特許法第30条第1項適用 2004年3月17日 社団法人電気学会発行の「平成16年 電気学会全国大会講演論文集」に発表
Date of request for substantive examination 平成19年1月17日(2007.1.17)
Patentee, or owner of utility model right 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
Inventor, or creator of device 【氏名】木村 健
【氏名】後根 総二郎
【氏名】大塚 信也
【氏名】匹田 政幸
Representative 【識別番号】100092347、【弁理士】、【氏名又は名称】尾仲 一宗
Examiner 【審査官】藤原 伸二
Document or reference 特開平09-257862(JP,A)
特開平02-161368(JP,A)
特開平11-231013(JP,A)
特開平07-128393(JP,A)
特開平04-147065(JP,A)
Field of search G01R 31/12-31/20
G01R 31/02-31/06
G01R 31/34
G01R 31/00

Scope of claims 【請求項1】
電気機器における互いに絶縁された導体間に少なくとも電圧波形と電圧上昇率が設定された繰り返し高電圧パルスを印加し,前記導体間に部分放電が発生すると,該部分放電の信号を検出装置で検出し,同時刻における分圧器の出力を部分放電開始電圧として読み出し,それと同時に高電圧回路を遮断し,予め決められた所定の一定時間休止する各処理を行い,前記各処理を予め決められた設定回数まで繰り返してデータ計測を行うことを特徴とする部分放電開始電圧計測方法。
【請求項2】
前記検出装置として光電子増倍管を使用し,前記部分放電によって発生する放電光の光強度を前記光電子増倍管で検出することを特徴とする請求項1に記載の部分放電開始電圧計測方法。
【請求項3】
前記検出装置として電磁波検出アンテナを使用し,前記部分放電によって発生する電磁波を前記電磁波検出アンテナで検出することを特徴とする請求項1に記載の部分放電開始電圧計測方法。
【請求項4】
前記検出装置として高周波変成器を使用し,前記部分放電によって発生する放電電流を前記高周波変成器の出力波形の変化で検出することを特徴とする請求項1に記載の部分放電開始電圧計測方法。
【請求項5】
前記検出装置として直列コンデンサを使用し,前記部分放電によって発生する放電電荷を前記直列コンデンサのコンデンサ波形の変化で検出することを特徴とする請求項1に記載の部分放電開始電圧計測方法。
【請求項6】
前記分圧器の出力として読み出された前記部分放電開始電圧の前記データを制御装置に蓄積し,インターネットに一部の前記データを転送することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の部分放電開始電圧計測方法。
【請求項7】
前記パルス電圧の印加から前記制御装置へのデータ蓄積までの一連の処理を,ソフトウエアを用いて設定回数を繰り返し行うことを特徴とする請求項6に記載の部分放電開始電圧計測方法。
【請求項8】
前記導体間に対して前記部分放電開始電圧の計測を少なくとも複数回以上連続して行って前記電気機器の絶縁劣化評価のため前記導体間の絶縁表面上の電荷分布を判定することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の部分放電開始計測方法。
【請求項9】
電気機器における互いに絶縁された導体間に少なくとも電圧波形と電圧上昇率を予め設定する波形調整ユニット,該波形調整ユニットで設定された前記電圧波形と前記電圧上昇率で繰り返し高電圧パルスを印加する高電圧パルス電源,前記導体間に発生した部分放電の信号を検出する検出装置,前記部分放電の検出と同時刻における分圧器の出力を部分放電開始電圧として読み出す分圧器,前記検出装置で検出された前記部分放電と前記分圧器で読み出された前記部分放電開始電圧とをデジタルデータとして取り込む装置,及び前記データを蓄積すると共に高電圧回路を遮断し,予め決められた所定の一定時間休止する各処理を行い,前記各処理を予め決められた設定回数まで繰り返してデータ計測を行わせる制御装置,から構成されていることを特徴とする部分放電開始電圧計測装置。
【請求項10】
前記部分放電を検出する前記検出装置としては,前記部分放電で発生する放電光の光強度を検出する光電子増倍管,前記部分放電で発生する電磁波を検出する電磁波検出アンテナ,前記部分放電で発生する放電電流を検出する高周波変成器,又は前記部分放電で発生する放電電荷を検出する直列コンデンサであることを特徴とする請求項9に記載の部分放電開始電圧計測装置。
Detailed description of the invention 【技術分野】
【0001】
この発明は,例えば,回転電機におけるコイル間の絶縁診断に利用できる部分放電開始電圧計測方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,地球環境調和の観点から,新エネルギーのパワーエレクトロニクス応用や電気自動車への関心は増々大きくなっている。制御性,効率の良いインバータ機器が中心的な役割を果たす機器の一つとして注目されている。その一方で,大電流を遮断するために発生するEMI(Electromagnetic interference),高調波及びモータ制御の際発生するサージ等が問題となっている。IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor )等の高速スイッチングとサージインピーダンス差による反射によって,定格電圧の2~3倍の過渡的過電圧が発生し,モータ等で早期の絶縁破壊を引き起こす懸念があることが報告されている。該特殊な電圧波形はインバータサージと称され,近年,上記インバータサージによる絶縁劣化について世界的に研究されている。
【0003】
従来,回転電機の絶縁診断方法が知られているが,該回転電機の絶縁診断方法は,例えば,非破壊かつ容易に回転電機がインバータ駆動できるか判別するものであり,サージ電源を用いて回転電機内サージ伝播速度及びケーブル-回転電機接続部の電圧増加率を計測し,計測したサージ伝播速度,電圧増加率と供試インバータの波頭長に基づいて,層間絶縁分担電圧を求め,回転電機の部分放電特性,課電寿命特性と比較する。層間絶縁分担電圧が層間絶縁の部分放電電圧未満か,層間絶縁分担電圧における課電寿命が回転電機全体の余寿命以上の場合には,供試インバータで駆動可と判断する。層間絶縁分担電圧が層間絶縁の部分放電電圧以上か,層間絶縁分担電圧における課電寿命が回転電機全体の余寿命未満の場合には,インバータ駆動不可と判断する(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
また,部分放電光平衡検出装置として,インパルス印加電圧下における立ち上がり時間の短い部分放電が計測可能であり,周波数帯域が広く,外部雑音の影響を受け難いものが知られている。該部分放電光平衡検出装置は,電源電圧をコロナの発生しない結合コンデンサとボイド等の欠陥部を有する供試コンデンサに印加した場合に,各コンデンサに流入する充電電流及び外部雑音によって各発光ダイオードが発光し,各発光出力が結合側フォトトランジスタ及び供試側フォトトランジスタでそれぞれ受光され,可変抵抗等の調整手段にて平衡されて2つの受光出力の差分が零とされる。供試コンデンサで部分放電が発生すると,供試側フォトトランジスタの出力には部分放電パルスが重畳されるので,2つの受光出力の差分として部分放電パルスが検出される(例えば,特許文献2参照)。
【0005】
従来の電気機器の部分放電検出方法として,路上配電機器等の通電状態の電気機器の部分放電を電流計測により検出するものが知られている。該電気機器の部分放電検出方法は,通電状態の多回路開閉器の課電導体のケーブル導体に磁界プローブを近づけ,プローブにより課電導体を通流する電気機器の部分放電の電流を計測し,プローブの計測結果から部分放電を検出するものである(例えば,特許文献3参照)。

【特許文献1】特開2004-45307号公報(第1頁,図1)
【特許文献2】特開平7-92219号公報(第1頁,図1)
【特許文献3】特開2002-323531公報(第1頁,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,従来の部分放電PD(Partial discharge )の測定方法は,国際規格(IEC60270)で規定されているが,該測定方法では,400Hzまでの交流電圧が使われているために,繰返しインパルス電圧での部分放電PDを検出することが不可能であった。また,インパルス電圧に対して光学的に検出する方法は,先行技術が既に多数知られているが,繰返し周波数の高いインパルスに対して特殊な工夫をしているものはなく,また,回転電機の絶縁状態の診断方法は,インバータ駆動ができるかどうかを判定する診断方法であって,サージ電圧を測定しており,部分放電開始電圧(PDIV)に着眼して該部分放電開始電圧を測定する方法ではない。
【0007】
ところで,インバータサージが駆動モータに進入すると,固定子スロット内のエナメル層を被覆された導線間や固体絶縁の空隙部で部分放電PDが発生する。これを模擬したサンプルとしては,2本のエナメル層被覆の導線をねじった構造のツイストペア試料があり,実用的な絶縁劣化評価に使用されている。インバータサージ電圧波形を規定するパラメータは,電圧ピーク値,パルス幅,パルス間隔,パルスの極性,立ち上・立ち下がり時間,繰り返し周波数,電圧上昇率等があり,また,絶縁材料の種類,試料形状により劣化メカニズムや劣化形態が異なっているため,モータ絶縁の長期的影響については良く理解されていない。加えて,絶縁劣化要因には部分放電の他にも,表面空間電荷形成,誘電損失による加熱等が挙げられており,現在これらの要因について総合的な研究が行われているのが現状である。
【0008】
本発明者は,電気機器の信頼性設計の観点では,上記のような部分放電PDを発生させない工夫が必要であり,その検証としてインバータサージ電圧を模擬した両極性繰返しインパルス電圧の部分放電開始電圧(PDIV)を測定する必要があることに着眼した。
【0009】
この発明の目的は,上記の問題を解決するため,電気機器の信頼性設計の観点からは部分放電PDを発生させないことが必要であるが,例えば,通常の導線が隣接する導線等の部材に対して絶縁のため被覆されたエナメル層が部分放電程度では破壊されないことを考慮して,電気機器における絶縁状態の検証としてインバータサージ電圧を模擬した両極性繰返しインパルス電圧の部分放電開始電圧(PDIV)を測定し,インバータサージを模擬した繰返し両極性インパルス電圧における部分放電開始電圧を自動的に計測することによって,その現象の発生によって導線等の絶縁部の短絡発生予告と判断する部分放電開始電圧計測方法及びその装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は,電気機器における互いに絶縁された導体間に少なくとも電圧波形と電圧上昇率が設定された繰り返し高電圧パルスを印加し,前記導体間に部分放電が発生すると,該部分放電の信号を検出装置で検出し,同時刻における分圧器の出力を部分放電開始電圧として読み出し,それと同時に高電圧回路を遮断し,予め決められた所定の一定時間休止する処理を行い,前記各処理を予め決められた設定回数まで繰り返してデータ計測を行うことを特徴とする部分放電開始電圧計測方法に関する。
【0011】
この部分放電開始電圧計測方法は,具体的には,前記検出装置として光電子増倍管を使用し,前記部分放電によって発生する放電光の光強度を前記光電子増倍管で検出するものである。
【0012】
また,この部分放電開始電圧計測方法は,具体的には,前記検出装置として電磁波検出アンテナを使用し,前記部分放電によって発生する電磁波を前記電磁波検出アンテナで検出するものである。
【0013】
また,この部分放電開始電圧計測方法は,具体的には,前記検出装置として高周波変成器を使用し,前記部分放電によって発生する放電電流を前記高周波変成器の出力波形の変化で検出するものである。
【0014】
また,この部分放電開始電圧計測方法は,具体的には,前記検出装置として直列コンデンサを使用し,前記部分放電によって発生する放電電荷を前記直列コンデンサのコンデンサ波形の変化で検出するものである。
【0015】
また,この部分放電開始電圧計測方法は,前記分圧器の出力として読み出された前記部分放電開始電圧の前記データを制御装置に蓄積し,インターネットに一部の前記データを転送するものである。
【0016】
また,この部分放電開始電圧計測方法は,前記パルス電圧の印加から前記制御装置へのデータ蓄積までの一連の処理を,ソフトウエアを用いて設定回数を繰り返し行うものである。
【0017】
また,この部分放電開始電圧計測方法は,前記導体間に対して前記部分放電開始電圧の計測を少なくとも複数回以上連続して行って前記電気機器の絶縁劣化評価のため前記導体間の絶縁表面上の電荷分布を判定するものである。
【0018】
また,この発明は,電気機器における互いに絶縁された導体間に少なくとも電圧波形と電圧上昇率を予め設定する波形調整ユニット,該波形調整ユニットで設定された前記電圧波形と前記電圧上昇率で繰り返し高電圧パルスを印加する高電圧パルス電源,前記導体間に発生した部分放電の信号を検出する検出装置,前記部分放電の検出と同時刻における分圧器の出力を部分放電開始電圧として読み出す分圧器,前記検出装置で検出された前記部分放電と前記分圧器で読み出された前記部分放電開始電圧とをデジタルデータとして取り込む装置,及び前記データを蓄積すると共に高電圧回路を遮断し,予め決められた所定の一定時間休止する各処理を行い,前記各処理を予め決められた設定回数まで繰り返してデータ計測を行わせる制御装置,から構成されていることを特徴とする部分放電開始電圧計測装置に関する。
【0019】
この部分放電開始電圧計測装置において,前記部分放電を検出する前記検出装置としては,前記部分放電で発生する放電光の光強度を検出する光電子増倍管,前記部分放電で発生する電磁波を検出する電磁波検出アンテナ,前記部分放電で発生する放電電流を検出する高周波変成器,又は前記部分放電で発生する放電電荷を検出する直列コンデンサを使用できるものである。
【発明の効果】
【0020】
例えば,現在,インバータ駆動モータの大容量化が進み,電気自動車用モータ等で量産化が進んでいるが,一方,国際規格ではモータに対して部分放電なしの条件が課せられる可能性があり,その場合には,全数のモータに対して部分放電計測を実施し,部分放電発生なしを証明する必要があるようになる可能性があり,その場合には,専用の繰返しインパルス電圧に対する部分放電試験装置が必要となる。
【0021】
この部分放電開始電圧計測方法及びその装置は,上記のように構成されているので,例えば,上記のような部分放電計測の必要性になった場合に,上記のような計測システム即ち全数のモータに対し部分放電計測を実施するものとして利用して好ましいものであり,電気機器における互いに絶縁された導体間,例えば,モータにおける固定子鉄心に巻かれた巻線やそのモデル巻線の部分放電開始電圧を計測し,該部分放電開始電圧の発生を考慮してモータ等の電気機器の絶縁劣化評価を容易に且つ確実に判定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下,図面を参照して,この発明による部分放電開始電圧計測システム即ち方法及びその装置の実施例を説明する。この発明による部分放電開始電圧計測方法及びその装置は,例えば,モータ制御の際に発生するインバータサージによる絶縁劣化評価をするためには,インバータサージを模擬した繰返し両極性インパルス電圧における部分放電開始電圧(PDIV)の計測を行うシステムを提供するものであり,部分放電開始電圧の経時変化(μs)によって計測する自動計測システムを提供するものである。
【0023】
図1~図5はこの発明による部分放電開始電圧計測システムを説明するものであり,図1はこの発明による部分放電開始電圧計測装置,即ち,自動計測システムの一実施例を示すブロック図,図2はこの部分放電開始電圧計測装置を用いて印加電圧に対して3つのセンサによってコンデンサ波形,PMT出力波形及びCT出力波形を測定したデータを示すグラフ,図3はこの部分放電開始電圧計測装置の電気回路を示す回路図,図4は図3の回路図における導体間の等価回路を示す回路図,及び図5は図1の部分放電開始電圧計測装置における導体としてのツイストペア試料を説明する説明図である。
【0024】
この部分放電開始電圧計測装置は,図1に示すように,部分放電開始電圧を計測するべき電気機器の互いに絶縁された導体間の計測領域,実施例では,ツイストペア試料2を配設する試験容器1,少なくとも電圧波形と電圧上昇率を予め設定する波形調整ユニット9,波形調整ユニット9で設定された少なくとも電圧波形と電圧上昇率で繰り返し高電圧パルスを印加する高電圧パルス電源3,ツイストペア試料2に発生した部分放電PDの信号を検出する検出装置である放電光の光強度を検出する光電子増倍管4(PMT,photo
multiplier tube),部分放電PDの検出と同時刻における出力を部分放電開始電圧(PDIV)として読み出す分圧器5,光電子増倍管4で検出された部分放電PDと分圧器5で読み出された部分放電開始電圧(PDIV)とをデータとして表示するデジタルオシロスコープ8,及びデータを蓄積すると共に高電圧回路を遮断し,予め決められた所定の一定時間休止する処理を行い,前記各処理即ちこれらの処理を予め決められた設定回数まで繰り返してデータ計測を行わせる制御装置6(PC)から構成されている。
【0025】
この部分放電開始電圧計測システムの動作,即ち,部分放電開始電圧計測方法は,まず,部分放電開始電圧を計測する電気機器の互いに絶縁された導体間の領域,実施例では,試験容器1内に配設されたツイストペア試料2に対して,少なくとも波形調整ユニット9によって電圧波形と電圧上昇率を設定し,高電圧パルス電源3から繰り返し高電圧パルスを印加する。そこで,ツイストペア試料2に部分放電PDが発生すると,その部分放電PDの放電光を光電子増倍管4で検出し,同時刻における分圧器5の出力を部分放電開始電圧(PDIV)として読み出し,それと同時に高電圧回路を遮断し,予め決められた一定時間休止する処理を行い,前記各処理即ちこれらの処理を予め決められた設定回数まで繰り返してデータ計測を行うものである。更に,この部分放電開始電圧計測方法は,分圧器5の出力として読み出された部分放電開始電圧(PDIV)のデータをデジタルオシロスコープ8に読み取って制御装置6に蓄積し,リモートコントロールするためインターネット(LAN)を使用して制御装置7へ一部のデータを転送するものである。
【0026】
即ち,この部分放電開始電圧計測方法は,ツイストペア試料2の中で,部分放電PDが発生すれば,その時に発生する放電光を光電子増倍管4で検出し,同時刻における分圧器5の出力を部分放電開始電圧(PDIV)として読み出し,それと同時に,高電圧回路を遮断し,一定時間休止する計測を繰り返し行うものである。データは,制御装置6に蓄積し,リモートコントロールするために,インターネットLANを通じて制御装置7に一部のデータを転送する。また,この部分放電開始電圧計測方法は,パルス電圧の印加から制御装置6のデータ蓄積までの一連の処理を,グラフィカルプログラミングソフトを用いて設定回数まで繰り返しデータ計測を行うものである。この部分放電開始電圧計測方法では,ツイストペア試料2即ち上記導体間に対して部分放電開始電圧(PDIV)の計測を少なくとも複数回,好ましくは,100回~300回以上連続して行ってツイストペア試料2即ち導体の絶縁表面上の電荷分布を判定するものである。
【0027】
この実施例では,この部分放電開始電圧計測方法を用いて,電圧未印加のツイストペア試料2に対して部分放電開始電圧(PDIV)の計測を300回以上連続して行った。計測システムのシーケンスは,ツイストペア試料2への繰り返し高電圧パルスを印加し,部分放電PDが発生すると,高電圧電源3をOFFし,光電子増倍管4,分圧器5,デジタルオシロスコープ8で得られた計測値を制御装置6で処理し,予め決められた所定の休止時間を経過するという処理を繰り返し,これらの処理が終了すると,電源をOFFする。この場合の計測条件は,立ち上がり100ns,パルス幅1μs,周波数500Hz,電圧上昇速度500V/minであり,上記の計測では,計測値が初期段階では30%以上バラツクが,両極性では100回程度から部分放電開始電圧(PDIV)が一定値に収束することが判明した。なお,単極性では正負とも10回程度以下で部分放電開始電圧(PDIV)が一定値に収束することが判明した。単極性で部分放電開始電圧(PDIV)が収束した後,極性反転すると,一旦部分放電開始電圧(PDIV)が低下し,その後数回で回復する。部分放電開始電圧(PDIV)プリストレスの効果のメカニズムとして,放電後の導体即ちツイストペア試料の絶縁表面上の電荷分布等が影響していると推定される。異なるセンサによる部分放電PDの波形についての計測された詳細なデータは,図2に示している。
【0028】
この部分放電開始電圧計測システムについて,図2には,印加電圧波形に対する各センサの出力を比較した結果の一例が示されている。即ち,銅線11をエナメル層12で被覆した導線のツイストペア試料2に対して,図2のAに示すように繰り返しパルス電圧を印加し,部分放電PDの発生による電荷,光及び電流を3種類のセンサ,即ち,コンデンサ(図2のD),光電子増倍管4(PMT,図2のB),高周波変成器(CT,図2のC)でそれぞれ検出した波形を比較した。図2のAは,印加電圧波形を示し,横軸は単位が時間(μs)であり,縦軸は単位が電圧(kV)である。図2のBは,光強度(PMT)を示し,横軸は単位が時間(μs)であり,縦軸は単位がLight intensity (a.u.)である。図2のCは,高周波変成器(CT)の放電電流を示し,横軸は単位が時間(μs)であり,縦軸は単位がIct(a.u. )である。図2のDは,放電電荷(コンデンサ)を示し,横軸は単位が時間(μs)であり,縦軸は単位がqc (n C)である。
【0029】
図2から分かるように,直列コンデンサ法は検出波形が電流の積分波形であり,部分放電PDの発生付近に電荷量が増加することが確認できる。光電子増倍管4(PMT)は,部分放電PDの発生時に鋭い波形が出ており,時間的測定には最も適しているといえる。高周波変成器(CT)による計測は,印加電圧パルスの変位電流分と部分放電電流が混在し,部分放電PDが電圧パルスの波頭で発生した場合,各電流の分離が課題となる。以上の結果をふまえ,光電子増倍管4の出力を部分放電PDの発生の判定に使用した自動計測システムを完成させることができた。
【0030】
上記の実施例では,部分放電PDの信号を検出する検出装置として放電光の光強度を検出する光電子増倍管4を用いたが,この発明による部分放電開始電圧計測方法における検出装置は,光電子増倍管4に限定されることなく,部分放電PDで発生する放電光の光強度を検出する光電子増倍管4の他に,部分放電PDで発生する電磁波を検出するための電磁波検出アンテナ,部分放電PDで発生する放電電流を検出する高周波変成器,又は,部分放電PDで発生する放電電荷を検出する直列コンデンサを用いることができる。
【0031】
即ち,この部分放電開始電圧計測方法は,検出装置として電磁波検出アンテナを使用した場合には,アンテナをツイストペア試料2に近接して設け,デジタルオシロスコープ8に表示される部分放電PDで発生するアンテナでキャッチされた電磁波を検出すればよい。
【0032】
又は,この部分放電開始電圧計測方法は,検出装置として高周波変成器を使用した場合には,高周波変成器を電源に接続していない方のツイストペア試料2の端子に接続し,デジタルオシロスコープ8に表示される部分放電PDで発生する高周波変成器の出力波形の変化で検出すればよい。
【0033】
或いは,この部分放電開始電圧計測方法は,検出装置として直列コンデンサを使用した場合には,直列コンデンサを電源に接続していない方のツイストペア試料2の端子に接続し,デジタルオシロスコープ8に表示される部分放電で発生する放電電荷による直列コンデンサのコンデンサ波形の変化を検出すればよい。
【0034】
この実施例でいうツイストペア試料2は,2本の導線10であり,導線10は,図5に示すように,銅線11にエナメル層12が被覆されたものである。電気機器において,導線10間,具体的には,図4に示す符号hと符号g間に空隙Sが存在するが,部分放電PDは,この空隙Sでの放電であり,通常,部分放電PDではエナメル層12が破壊されることはないので,導線10間は絶縁された状態である。また,印加電圧は,図3に示すように,符号Aと符号B間の電圧であり,コンデンサ波形は,コンデンサC1の両端間の波形である。部分放電PDが発生していない時は,印加電圧とコンデンサ波形は,全く同じ相似形の波形になるが,部分放電PDが発生すると,発生時点で電図4に示すように,その電荷がd-g-h-e-dのループで再分配されるものと,図3に示すように,A-d-e-f-B-K-J-Aの回路で再分配されるものがある。そのため,図3のC1の測定用コンデンサの電圧は上がる。その電圧が図3のf-R-B-C1-fの回路でC1×Rの時定数で減衰する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明による部分放電開始電圧計測方法及びその装置は,電気機器等の互いに絶縁された導体間,例えば,モータにおける固定子鉄心(ステータコア)に巻き上げられた巻線や,そのモデル巻線の絶縁状態の診断に利用して有効である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明による部分放電開始電圧計測装置の自動計測システムの一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1の部分放電開始電圧計測装置を用いて印加電圧に対する3つのセンサによる部分放電信号の測定されたデータを示すグラフである。
【図3】図1の部分放電開始電圧計測装置の電気回路を示す回路図である。
【図4】図3の回路図におけるツイストペア試料の等価回路を示す回路図である。
【図5】図1の部分放電開始電圧計測装置におけるツイストペア試料を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 試験容器(計測領域)
2 ツイストペア試料(導体)
3 高電圧パルス電源
4 光電子増倍管
5 分圧器
6,7 制御装置
8 デジタルオシロスコープ
9 波形調整ユニット
10 導線
11 銅線
12 エナメル層
C1 コンデンサ
PD 部分放電
PDIV 部分放電開始電圧
LAN インターネット
Drawing
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4