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Specification :糖類の分析方法および分析装置

Country 日本国特許庁(JP)
Gazette 特許公報(B2)
Patent Number 特許第4825973号 (P4825973)
Publication number 特開2007-121240 (P2007-121240A)
Date of registration 平成23年9月22日(2011.9.22)
Date of issue 平成23年11月30日(2011.11.30)
Date of publication of application 平成19年5月17日(2007.5.17)
Title of the invention, or title of the device 糖類の分析方法および分析装置
IPC (International Patent Classification) G01N  30/88        (2006.01)
G01N  30/26        (2006.01)
G01N  30/84        (2006.01)
G01N  30/72        (2006.01)
G01N  27/62        (2006.01)
FI (File Index) G01N 30/88 N
G01N 30/88 101M
G01N 30/26 A
G01N 30/84 A
G01N 30/72 C
G01N 30/88 201G
G01N 27/62 V
G01N 27/62 X
G01N 27/62 G
Number of claims or invention 7
Total pages 11
Application Number 特願2005-317465 (P2005-317465)
Date of filing 平成17年10月31日(2005.10.31)
Exceptions to lack of novelty of invention 特許法第30条第1項適用 2005年4月30日 社団法人日本分析化学会発行の「第66回 分析化学討論会講演要旨集」に発表
Date of request for substantive examination 平成20年9月17日(2008.9.17)
Patentee, or owner of utility model right 【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
Inventor, or creator of device 【氏名】蒲生 啓司
【氏名】中尾 千予視
Representative 【識別番号】100075409、【弁理士】、【氏名又は名称】植木 久一
【識別番号】100115082、【弁理士】、【氏名又は名称】菅河 忠志
【識別番号】100125184、【弁理士】、【氏名又は名称】二口 治
【識別番号】100125243、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 浩彰
Examiner 【審査官】赤坂 祐樹
Document or reference 特開2003-028849(JP,A)
特開2001-013127(JP,A)
特開2005-291958(JP,A)
中尾千予視、蒲生啓司、和田啓男、菱田勝巳,単糖およびオリゴ糖の高感度配位子交換LC/MS分析に関する研究 ,第53回質量分析総合討論会 (2005),2P-P2-04
Field of search G01N 30/00-30/96
Scope of claims 【請求項1】
配位子交換カラムを用いた液体クロマトグラフィにより糖類を含む被検試料を分離する工程、
分離した被検試料にアミン化合物を添加する工程、および
アミン化合物を添加した被検試料をエレクトロスプレーイオン化法によりイオン化し、質量分析を行なう工程、
を含むことを特徴とする糖類の分析方法。
【請求項2】
アミン化合物としてアンモニアを用いる請求項1に記載の糖類の分析方法。
【請求項3】
質量分析を行なう試料に占めるアミン化合物の濃度を1.5質量%以上にする請求項1または2に記載の糖類の分析方法。
【請求項4】
配位子交換カラムに充填するゲルの平均粒子径を1~10μmとする請求項1~3のいずれかに記載の糖類の分析方法。
【請求項5】
配位子交換カラムを有する液体クロマトグラフィシステム、
上記液体クロマトグラフィシステムからの溶出液にアミン化合物を添加するためのポンプ、および
エレクトロスプレーイオン化質量分析システム、
を有することを特徴とする糖類の分析装置。
【請求項6】
さらに、液体クロマトグラフィシステムからの溶出液に添加するアミン化合物の濃度を制御するための手段を有する請求項5に記載の糖類の分析装置。
【請求項7】
さらに、質量分析により得られたマススペクトルの強度により各糖類を定量化するための手段を有する請求項5または6に記載の糖類の分析装置。
Detailed description of the invention 【技術分野】
【0001】
本発明は、糖類を分析するための方法と、糖類を分析するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
糖類は甘味料としてのみでなく、生体のエネルギー源や構成成分、或いは生理活性物質としても重要であり、古くから研究が行なわれている。特に、近年では細胞表面に存在する糖鎖が細胞の認識などに関与していることが明らかにされており、疾病の診断や治療における糖類の利用が期待されている。例えば、ガン細胞表面の糖鎖は正常細胞と異なるので、この糖鎖の組成を分析することによりガンを診断したり、或いはガン細胞に特異的な糖鎖を認識し、治療剤をガン組織へ選択的に送達することが考えられる。よって、試料に含まれる糖類自体や、その全部または一部の加水分解物を分析する技術は非常に重要である。
【0003】
ところが、糖類は構造が類似するものが多く、分析が難しいという問題がある。そこで、分析試料に含まれる糖類を化学修飾したり、酵素を作用させるなどすることによって、分析を容易にする技術が開発されている。例えば特許文献1には、被検試料にシアリダーゼを作用させてシアル酸を遊離させること等を含む単糖の分析方法が記載されている。また、2-アミノピリジン(プレラベル法)やアルギニン(ポストラベル法)により糖類を修飾する蛍光検出法などもある。しかし、糖類を修飾する工程を含む分析方法は効率が悪い。
【0004】
一方、糖類を分離分析するためのカラムとして配位子交換カラムが知られている。このカラムは、充填ゲルの官能基のカウンターイオンとして金属イオンを有しており、金属イオンと糖類の水酸基が相互作用する。この相互作用は、糖類が有する水酸基の数のみならず位置によっても異なるため、官能基として水酸基のみを含む糖類同士の分離が可能である。

【特許文献1】特開2000-333698号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した様に、糖類の分析方法としては様々なものが知られていた。しかし、互いに構造が類似する糖類を簡便に分離分析できる技術は少なく、手間やコストのかかるものが多かった。一方、簡便な分析方法は得られる情報が少なく、特に多数の糖類が含まれている試料を十分に分析できないことがあった。
【0006】
そこで本発明が解決すべき課題は、簡便である上に感度が高く糖類をより正確に分離分析できるのみでなく定量も可能になる方法と、その様な方法が実施可能である装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、先ず配位子交換カラムを用いた液体クロマトグラフィと、エレクトロスプレーイオン化マススペクトル法を組み合わせた液体クロマトグラフィ/質量分析法(以下、「LC/MS法」という場合がある)を行なうこととした。
【0008】
配位子交換カラム単独では、例えば多数の糖類を含む試料を分析する場合にピークが重なると、同定が難しくなる。しかし質量分析を組み合わせることによって、液体クロマトグラフィにより得られたチャートの各ピークの分子量が得られるため、糖類の同定がより容易になる。また、エレクトロスプレーイオン化法は、難揮発性物質である糖類のイオン化に適している。
【0009】
ところが、上記方法では質量分析の感度が十分でない場合があった。そこで本発明者らは、さらに鋭意研究を進めることによって、試料にアミン化合物を添加すれば質量分析の感度が顕著に向上し、試料に占める各糖類の定量までも可能になることを見出して本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明に係る糖類の分析方法は、
配位子交換カラムを用いた液体クロマトグラフィにより糖類を含む被検試料を分離する工程、
分離した被検試料にアミン化合物を添加する工程、および
アミン化合物を添加した被検試料をエレクトロスプレーイオン化法によりイオン化し、質量分析を行なう工程、
を含むことを特徴とする。
【0011】
アミン化合物としてはアンモニアが好適である。また、質量分析を行なう試料に占めるアミン化合物の濃度は、1.5質量%以上が好ましい。アミン化合物を添加しない場合に比べ、質量分析の感度が約10倍にもなるからである。
【0012】
配位子交換カラムに充填するゲルの平均粒子径は、1~10μmとすることが好ましい。ゲルの粒子径を微細にすることによって、互いに構造が類似する糖類の分離においても、良好な結果が得られるからである。
【0013】
また、本発明に係る糖類の分析装置は、
配位子交換カラムを有する液体クロマトグラフィシステム、
上記液体クロマトグラフィシステムからの溶出液にアミン化合物を添加するためのポンプ、および
エレクトロスプレーイオン化質量分析システム、
を有することを特徴とする。
【0014】
上記装置としては、さらに液体クロマトグラフィシステムからの溶出液に添加するアミン化合物の濃度を制御するための手段を有するものが好適である。当該手段によって、質量分析の感度向上のために最適なアミン化合物濃度に調節できる。さらに、質量分析により得られたマススペクトルの強度により各糖類を定量化するための手段を有することが好ましい。本発明方法は感度が高いため、マススペクトルの強度により各糖類の定量が可能である。従って、当該手段により例えば各濃度の分子イオンピーク強度を比較し、各糖類を定量化できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明方法によれば、試料中に含まれる糖類を簡便かつ正確に分離分析することができる。しかも、本発明方法では極めて感度よく質量分析を行なえるので、マススペクトルのピーク強度から各糖類を定量化できる。また、本発明装置は当該方法を実施できるものとして有用である。
【0016】
従って、本発明は、疾病の診断や治療にも応用し得る糖類の分析を従来技術よりも簡便かつ正確に実施できるものとして、産業上非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る糖類の分析方法は、
配位子交換カラムを用いた液体クロマトグラフィにより糖類を含む被検試料を分離する工程、
分離した被検試料にアミン化合物を添加する工程、および
アミン化合物を添加した被検試料をエレクトロスプレーイオン化法によりイオン化し、質量分析を行なう工程、
を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明方法は、糖類を分離分析するためのものである。よって、分析すべき被検試料は糖類が含まれているものであれば特に制限されない。例えば、環境試料や生体試料などを分析できる。また、食品などの分析にも適用できる。
【0019】
本発明では、先ず、配位子交換カラムを用いた液体クロマトグラフィにより糖類を含む被検試料を分離する。
【0020】
配位子交換カラムは、側鎖として酸性基と金属イオンとの塩を有する基を有するゲルを用いるものである。当該ゲルの主鎖としてはポリスチレン等、酸性基としてはスルホン酸基やカルボキシル基等、金属イオンとしてはカルシウムイオン、鉛イオン、亜鉛イオン、ナトリウムイオン等を用いることができる。かかるゲルを用いることによって、カラム内に糖類が導入されるとゲル側鎖の金属イオンと糖類の水酸基が相互作用するため、水酸基の数や位置に応じて糖類を分離することができる。
【0021】
配位子交換カラムに充填するゲルの平均粒子径は、1~10μmとすることが好ましい。ゲルの粒子径を微細にすることによって、互いに構造が類似する糖類の分離においても、良好な結果が得られるからである。配位子交換カラムに充填するゲルの製法としては常法を用いればよい。例えば、スルホン酸型ポリスチレン系スチレン樹脂の場合、スチレンとジビニルベンゼンを混合し、適当な重合開始剤と分散剤を加えて水中で攪拌して重合物を得た後にスルホン化する。また、ゲルを微細化する方法も常法を用いればよく、例えば、ゲルを製造するに当たり、懸濁重合の際に攪拌速度を急速に上げる方法がある。得られたゲルは、充填する前に湿式及び乾式方式によるゲルの分級を行ない、粒子径を揃える。
【0022】
なお、本発明において「平均粒子径」とは、一般的な粒度分布計によりゲル粒子の粒度分布を測定し、得られた結果により求められる小粒子径側からの積算値50%の粒度(D50)をいうものとする。斯かる粒度分布は、粒子に光を当てることにより生じる回折や散乱の強度パターンによって測定することができる。これは、当該強度パターンが、粒子の大きさに依存することによる。
【0023】
液体クロマトグラフィにおける移動相の流量やカラム温度などの実施条件は、予備実験などにより決定すればよいが、移動相としては、通常、水を用いる。また、カラムゲルとしてカルシウム塩基を側鎖に有するものを使用した場合には、カラム温度を65~75℃とすることが好ましい。本発明者らによる知見によれば、かかる場合の糖類の分離能は当該温度範囲において良好であり、特に約70℃が好適である。
【0024】
本発明では、液体クロマトグラフィの溶出液へ、質量分析前にアミン化合物を添加する。アミン化合物の添加によりイオン化が難しい糖類のイオン化を容易にし、質量分析の感度を顕著に向上させることができる。なお、アミン化合物を液体クロマトグラフィの溶出液に添加するのは、配位子交換カラムで使える移動相は通常水のみだからである。
【0025】
アミン化合物としては、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミンなどの低級アルキル1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、ピロリジン、ピペリジンなどの2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジンなどの3級アミンを用いることができ、好適にはアンモニアを用いる。
【0026】
アミン化合物の添加量は、溶出液に占める糖類の濃度などに応じて適宜調節すればよいが、好適には溶出液に対して1.5質量%以上添加する。1.5質量%未満でも後続の質量分析の感度は向上するが、1.5質量%以上の添加により感度は特に上がるからである。ただし、過剰に添加しても効果は飽和するので、上限は10質量%程度とする。
【0027】
アミン化合物を添加した被検試料は、次にエレクトロスプレーイオン化法(以下、「ESI」という場合がある)によりイオン化し、質量分析を行なう。イオン化方法としてESIを用いるのは、イオン化し難い糖類のイオン化に適しているからである。
【0028】
ESIでは、液体試料をキャピラリーへ導入し、その先端に電圧を印加する。その結果、強い不平等電界が形成されることによって、液体試料が帯電液滴として噴霧される。さらに、液滴内でのイオンのクーロン反発力により液滴の分裂が進行して、最終的に糖類はイオン化する。本発明においては、添加されたアミン化合物の作用によって、かかるイオン化が良好に進行して質量分析の感度が向上すると考えられる。
【0029】
イオン化した糖類は、高真空下の質量分析部へ導入される。この導入のための細孔部(コーン)へは、コーン電圧といわれる直流電圧を印加する。このコーン電圧も、質量分析の感度が向上する様に適宜調節すればよいが、10~30Vが好適であり、特に約20Vが好ましい。
【0030】
以上で説明した本発明方法によって、被検試料中に含まれる糖類は分離され、各糖類の分子量データが得られる。その他、マススペクトルにより分子量以外の化学構造データも得られる。その上、2-アミノピリジンなどの高価な試薬により糖類を修飾する必要がなく、安価で簡便に実施でき、質量分析の感度も高い。即ち本発明方法は、糖類を含む被検試料の分離分析を効率的に行なうことができるものである。
【0031】
より具体的には、先ず、事前に標準的な糖類試料を作成して本発明方法により分析しておき、標準的な糖類のリテンションタイム、マススペクトルおよびマスクロマトグラムを取得する。次いで、被検試料を同一の条件で分析し、得られたデータを標準試料のデータと比較することによって、被検試料に含まれる糖類の種類を解析することができ、さらに各糖類を定量化することも可能になる。
【0032】
上記方法を実施することができる本発明の糖類の分析装置は、
配位子交換カラムを有する液体クロマトグラフィシステム、
上記液体クロマトグラフィシステムからの溶出液にアミン化合物を添加するためのポンプ、およびエレクトロスプレーイオン化質量分析システム、
を有することを特徴とする。以下、図1を参照しつつ本発明装置を説明する。
【0033】
本発明の液体クロマトグラフィシステムは、少なくとも移動相を送液するためのポンプ1、被検試料を挿入するためのインジェクタ2、カラム3、カラムオーブン4、およびこれらの制御装置を有する通常の液体クロマトグラフィシステムであればよい。但し、カラムとしては上記で説明した配位子交換カラムを使用する。
【0034】
本発明装置は、さらに液体クロマトグラフィシステムからの溶出液にアミン化合物を添加するためのポンプ5と、エレクトロスプレーイオン化質量分析システム6を有する。
【0035】
ポンプ5は、液体クロマトグラフィシステムからの溶出液にアミン化合物溶液を規定量加えるためのものである。好適には、液体クロマトグラフィシステムからの溶出液に添加するアミン化合物の濃度を制御するための手段を備える。この制御手段としては、例えば、液体クロマトグラフィシステムからの溶出液の流量(流速)と、添加すべきアミン化合物溶液の濃度のインプットを受け、さらに溶出液とアミン化合物溶液の混合液に占めるアミン化合物濃度のインプットを受けることによりアミン化合物溶液の流量(流速)を調節できるものを挙げることができる。
【0036】
ESI質量分析システム6としては、通常のものを使用することができる。即ち、液体クロマトグラフィシステムから送られている移動相が通過するキャピラリをハウジング内に有し、このキャピラリの先端は、移動相が噴出されるようにニードル状になっている。さらに、キャピラリの先端に電圧を付与するための放電電極を有する。
【0037】
イオン化した糖類は、全イオンクロマトグラム(TIC)モニタリングで検出され、電気信号として増幅される。この電気信号をコンピュータ等により解析することによって、マススペクトルが得られる。
【0038】
本発明方法では質量分析の感度が顕著に向上している。その結果、マススペクトルの強度は被検試料に占める各糖類の濃度に比例することが、本発明者らにより明らかにされている。よって、本発明装置としては、質量分析により得られたマススペクトルの強度により各糖類を定量化するための手段を有するものが好適である。具体的には、例えば、定量化の対象とする糖類について試料濃度とマススペクトル強度(例えば、分子イオンピーク強度)に関する検量線を事前に作成し、マススペクトルを解析するコンピュータにおいて、測定された各糖類のマススペクトル強度と検量線データとを比較することにより定量化する。本発明者らによる知見によれば、三糖であるラフィノースでは5~500μMで、単糖とマルトトリオースでは5~1000μMで、二糖では10~1000μMで、本発明の分析方法によって、何れも直線性の高い検量線が得られている。
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0040】
実施例1
表1に示す糖類をそれぞれ1mmol/L含む試料を作成し、図1に示すLC/MS装置で分析した。液体クロマトグラフィ装置として日本分光社製のPU-980を用い、質量分析計としてmicromass社製のVG QuattroIIを使用した。また、アミン化合物溶液として12質量%アンモニア水溶液を用い、液体クロマトグラフィからの溶出液とアンモニア水溶液との流量比を5:1とし、質量分析計へ導入される試料溶液に占めるアンモニア濃度を2質量%とした。LC/MSの実施条件は、以下の通りである。
カラム:信和化工社製、ULTRON PS-80C/5S
スルホン酸カルシウム型ポリスチレン系カチオン交換樹脂を充填
内径2.0mm、長さ250mm
移動相:水
流量:0.05mL/分
カラム温度:70℃
イオン化モード:ESI-negativeモード
コーン電圧:20V
キャピラリー電圧:3.5kV
イオン源温度:90℃
検出モード:TIC(m/z:50~700)
【0041】
結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
JP0004825973B2_000002t.gif

【0043】
上記結果の通り、全ての糖類で分子イオンピークが得られ、さらに三糖からは単糖と二糖に分解したもののピークが、二糖からは単糖に分解したもののピークが得られた。その他、わずかに2量体と思われるピークが得られた他にはピークは観察されず、各単糖ごとにシンプルなマススペクトルが得られた。以上の通り、本発明方法によれば、互いに構造が類似する糖類を良好に分離分析できることが実証された。
【0044】
実施例2 アミン化合物濃度の最適化
上記実施例1において、質量分析計へ導入される試料溶液に占めるアンモニア濃度を0~5%とした以外は同様にして、1mmol/Lグルコース水溶液の分析を行なった。得られた結果について、分子イオンピークの強度比を相対的に表して図2に示す。
【0045】
当該結果より、アンモニア濃度を1質量%とした場合では質量分析感度は向上するもののその効果は十分ではないが、2質量%での感度は極めて良好であり、5質量%で効果は飽和した。よって、質量分析を行なう試料に占めるアミン化合物の濃度は、1.5質量%以上が好適であることが分かった。
【0046】
実施例3 カラム温度の最適化
上記実施例1において、糖類を10種類とし、カラム温度を65、70または75℃にした以外は同様にして、糖類の分析を行なった。得られた結果について、分子イオンピークの強度比を相対的に表して図3に示す。
【0047】
当該結果より、カラム温度が65℃である場合でも各分子イオンピークは検出できたが、70℃または75℃での結果が良好であり、70℃で最もよい結果が得られた。よって、実施例1の実施条件においては、液体クロマトグラフィのカラム温度は65~75℃がよく、70℃が最適であることが分かった。
【0048】
実施例4 コーン電圧の最適化
上記実施例1において、コーン電圧を10~80Vにした以外は同様にして、糖類の分析を行なった。得られた結果について、分子イオンピークの強度比を相対的に表して図4に示す。
【0049】
当該結果より、コーン電圧を10~30Vとした場合に感度が比較的良好であり、20Vで最もよい結果が得られた。よって、実施例1の実施条件におけるコーン電圧は10~30Vがよく、20Vが最適であることが分かった。
【0050】
実施例5 検出限界の検討
上記実施例1の液体クロマトグラフィにおいて、被検試料を各糖の単独溶液とし、その濃度を種々変化させた以外は同様にして、糖類の分析を行なった。各糖の液体クロマトグラフィにおける分子イオンピークの検出限界を表2に示す。
【0051】
【表2】
JP0004825973B2_000003t.gif

【0052】
当該結果の通り、ゲル粒子をセミマイクロ化した配位子交換カラムを用いた液体クロマトグラフィによれば、何れの糖の検出限界もngレベルであった。よって、ゲル粒子をセミマイクロ化した配位子交換カラムを用いた液体クロマトグラフィは、高い糖分離能を示すことが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明方法を実施するための装置の模式図である。
【図2】質量分析を行なう試料に占めるアミン化合物の濃度を変えた場合における分子イオンピークの強度比を示す図である。
【図3】カラム温度を変えた場合における分子イオンピークの強度比を示す図である。
【図4】コーン電圧を変えた場合における分子イオンピークの強度比を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1:移動相送液ポンプ、 2:インジェクタ、3:配位子交換カラム、4:カラムオーブン、 5:アミン化合物溶液送液ポンプ、6:エレクトロスプレーイオン化質量分析システム
Drawing
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3