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明細書 :新規なバイオチップ及びその作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3453604号 (P3453604)
公開番号 特開2002-131327 (P2002-131327A)
登録日 平成15年7月25日(2003.7.25)
発行日 平成15年10月6日(2003.10.6)
公開日 平成14年5月9日(2002.5.9)
発明の名称または考案の名称 新規なバイオチップ及びその作製方法
国際特許分類 G01N 37/00      
C12M  1/00      
C12N 15/09      
G01N 33/566     
G01N 33/53      
FI G01N 37/00 ZCC
G01N 37/00
C12M 1/00
G01N 33/566
G01N 33/53
C12N 15/00
請求項の数または発明の数 9
全頁数 18
出願番号 特願2001-226243 (P2001-226243)
出願日 平成13年7月26日(2001.7.26)
優先権出願番号 2000226530
優先日 平成12年7月27日(2000.7.27)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成13年7月26日(2001.7.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】394023953
【氏名又は名称】北陸先端科学技術大学院大学長
発明者または考案者 【氏名】民谷 栄一
【氏名】村上 裕二
【氏名】チョイ ヨン-ソン
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】宮澤 浩
参考文献・文献 特開 平10-185923(JP,A)
特開2002-98697(JP,A)
特開2000-249706(JP,A)
特表2001-501967(JP,A)
調査した分野 G01N 37/00 102
C12M 1/00
C12N 15/09
G01N 33/566
G01N 33/53
特許請求の範囲 【請求項1】
バイオチップであり、当該バイオチップはパターン化基板及び生体材料固定化担体とを備え、当該パターン化基板は基板と当該基板の片面に配列した複数の疎水性固定部とを備え、当該基板の疎水性固定部の間は親水性であり、当該生体材料固定化担体は微小担体、当該微小担体の片面の表層に形成した疎水性コーティング及び当該微小担体の他方の片面に固定化した生体成分又は生体成分類似物質を備え、当該疎水性固定部と当該生体材料固定化担体は疎水性相互作用により結合していることを特徴とする、バイオチップ。

【請求項2】
前記生体成分又は生体成分類似物質が核酸、蛋白質、脂質、生体模倣有機分子、細胞及びこれらの複合体よりなる群より選択された、請求項1記載のバイオチップ。

【請求項3】
個々の前記生体材料固定化担体を識別ための識別子を、前記生体材料固定化担体上に有していることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載のバイオチップ。

【請求項4】
前記識別子が、前記生体材料固定化担体上に記載された格子状のタグのパターンにより構成されていることを特徴とする、請求項3記載のバイオチップ。

【請求項5】
微小担体、当該微小担体の片面の表層に形成した微小担体疎水性コーティング及び当該微小担体の他方の片面に固定化した生体成分又は生体成分類似物質を備える、バイオチップ用の生体材料固定化担体。

【請求項6】
前記生体成分又は生体成分類似物質が核酸又は蛋白質、脂質、生体模倣有機分子、細胞及びこれらの複合体よりなる群より選択された、請求項5記載の生体材料固定化担体。

【請求項7】
識別ための識別子を更に有していることを特徴とする、請求項5又は請求項6記載の生体材料固定化担体。

【請求項8】
請求項5ないし請求項7記載のいずれか1項記載の生体材料固定化担体と、基板及び当該基板の片面に格子状に配列した固定部とを備えるパターン化基板とを、無作為液中自己組織化法を用いて、疎水性相互作用により固定化することにより、バイオチップを作製する方法。

【請求項9】
前記無作為液中自己組織化法が、前記生体材料固定化担体の懸濁液を液体中に滴下して当該液体を回転させることにより、前記パターン化基板の前記疎水性固定部に前記生体材料固定化担体を配置することより成る、請求項記載の方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生体材料を固定化した微小担体と疎水性固定部を備えたパターン化基板を、無作為液中自己組織化法を用いて疎水性相互作用により固定化することを特徴とする、新規なバイオチップの作製方法に関する。

【0002】
【従来の技術】DNAチップやプロテインチップを作製する方法として、幾つかの技術が現在用いられている。フォトリソグラフィを利用した固相合成法は、幾何級数的種類の生体高分子オリゴマーの全種類を高密度に合成、配列できる技術である。しかし、固相合成方法であるため長い鎖長のポリマーを得ることができず、蛋白質のような高次構造を有する材料の固定化方法には適用できない。また、多種類のフォトマスクを利用する工程数の多い方法であるため、低コスト化には向いていない。また、スタンプ法は、あらかじめ用意した多種類の材料をチップ上に並べていく技術である。任意の材料に適用できるが、個々の材料の固定は、物理・化学吸着か、簡単な条件で反応が進行する固定化法に限定される。

【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、上記の従来のバイオチップの作製方法の欠点を補うことが可能であり、量産にも適した、新規のバイオチップの作製方法を開発することが、本発明の課題である。

【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、高集積型バイオチップの開発にあたり、生体材料の新しい固定化方法を提案した。即ち、生体材料を基板上に直接固定化するのではなく、微小担体に固定化した後、担体をパターン化した基板上に固定化する2段階の固定化方法を採用した。第二段階目の基板上への固定化方法として、微小化した担体群を、無作為液中自己組織化法により、疎水性相互作用を介して微小担体を基板に固定化した。無作為液中自己組織化法については下記に詳しく述べるが、この方法によると固定化材料の種類の増加や固定化領域の微小化に際してもその工程が複雑にならず、生体材料の活性を損なうことなく固定化できると期待される。また本方法を用いることにより、多くの分析を同時に行えると共に、微小化により試薬や試料の消費量の抑制や複合的情報の取得が期待されている。本発明の方法は、このための微小担体の作製の方法、および配置の親和力として薄板のダイシングにより得た微小担体とパターン化疎水性膜を有する基板との疎水性相互作用を用いた方法に関するものである。

【0005】
【発明の実施の形態】本発明のバイオチップの作製方法は、生体材料を微小担体に対して固定化する過程と、その担体を配置する過程より成る。微小担体に対する固定化では個別に各種の生体材料をカバーガラスに固定化した後、ダイシングマシーンで100~400μm角に切った担体に固定化する。これを適当な量ずつ配合し、担体として性質が等しく化学・生化学的に性質が異なる微小担体の懸濁液を得る。後者の配置工程では無作為液中自己組織化法により、担体の疎水性相互作用を用いて基板と結合させる。基板上の形状や材料を制御することによっても、配置用サイトを格子上に並べておくことができる。

【0006】
無作為液中自己組織化法とは、スピンコーター上に設置した液体中でこのサイト付近に先の担体懸濁液を滴下し、そのスピンコーターを回すことで重力、遠心力、疎水性相互作用また種々の親和力によって1つのサイトに一つだけの担体を配置させる方法である。たとえば重力や疎水性相互作用によって、サイトの中に、ほぼそのサイトと同じ大きさの担体を落とし込むと、2つ目以降は入ることができない。基板上に多くのサイトを用意して十分な数の担体を滴下すると、一度に数多くのサイトに担体を配置させることが可能であり、この様な方法を自己組織化法という。懸濁液に化学的、生化学的に性質が異なる生体材料を固定化した担体の混合物を用いれば、最終的に多種類の生体材料を密に固定化した基板を得ることができる。このとき特定の生体材料を固定化した担体が基板上のどこに配置されるかは制御されていないので、本発明の方法においては無作為に組織化される。本発明の方法において、センサー応答のキャリブレーション等によって、最終的な位置を知ることが可能となる。この様に、生物材料を固定化した微小担体と基板とを結合させるにあたり、無作為液中自己組織化法によって疎水性相互作用を利用して結合させた事が、本発明の最も大きな特徴である。

【0007】
本発明は、パターン化基板及び生体材料固定化担体を備えたバイオチップである。ここで、疎水性固定部と生体材料固定化担体は、疎水性相互作用により結合している。尚、パターン化基板は基板とその基板の片面に配列した複数の疎水性固定部とを備えており、その基板の疎水性固定部の間は親水性である。また、生体材料固定化担体は微小担体、その微小担体の片面の表層に形成した疎水性コーティング、更にその微小担体の他方の片面に固定化した生体成分又は生体成分類似物質を備えている。ここで固定化する生体成分又は生体成分類似物質として、核酸、蛋白質、脂質、生体模倣有機分子、細胞及びこれらの複合体が挙げられる。ここでいう生体模倣分子は、生体機能材料が持つ特異的認識能や、信号変換機能などに相当する機能を発現するか、もしくは安定化や信号伝達のように他の機能を支援する分子を指す。認識能については、精密合成による認識分子やモレキュラーインプリンティング法によって得られた分子認識ポリマー、分子認識能を目的として得られるコンビナトリアル化学の産物などがある。信号変換機能については、触媒能を有する分子、光学特性が変化する分子、酸化または還元されうる分子、重量変化を起こす分子などがある。支援機能には疎水場、または親水場などにより他の生体材料を安定化させる分子のほか、固定化を仲介する分子、電子伝達する導電性分子などがある。また、上記の構造より成るパターン化基板及び生体材料固定化担体もまた、本発明の範囲内である。

【0008】
本発明のバイオチップアレイの構造を、図1に示す。パターン化基板は、スライドガラス等の基板(1)上に、疎水性固定部(2)が複数存在しているという構造をしている。パターン化基板は、親水性部分(8)の間に疎水性部分(9)が格子状に配列されている、という構造となっている。一方、生体材料固定化担体は、疎水性コーティング(3)、カバーガラス等の微小担体(4)、クロムコーティング(5)、金コーティング(6)及び生体材料(7)の順番に層を形成している。ここで、微小担体(4)の大きさは約10~500μmで、厚さは1~120μmであることが望ましい。また、疎水性コーティング(3)の厚さは1分子層~約1.0μm、クロムコーティング(5)の厚さは約200オングストローム、金コーティング(6)の厚さは約2000オングストロームであることが望ましい。更に、基板(1)の厚さは約0.5~5mm、疎水性固定部(2)の厚さは1分子層~約2.0μmであることが望ましい。疎水性固定部(2)と疎水性コーティング(3)は、疎水性相互作用により結合しており、上述した無作為液中自己組織化法によって、パターン化基板に生体材料固定化担体が結合したバイオチップを作製することができる。無作為液中自己組織化法の原理より、微小担体(4)の大きさと疎水性固定部(2)の大きさはほぼ等しくなるように作製する必要がある。

【0009】
上記の生体材料固定化担体は、以下の様な過程で作製することができる。
(1)親水性のカバーガラスの片面の表層を、疎水性コーティングした後に焼成を行う。
(2)前記カバーガラスの疎水性コーティングを行わなかった面にクロムを蒸着してクロム蒸着層を形成する。
(3)前記クロム蒸着層の上に金を蒸着して金蒸着層を形成する。
(4)前記金蒸着層をジチオジプロピオン酸で処理し、更にエチル-ジメチルアミノプロピルカルボジイミドで処理を行った後にアビジンを作用させることにより、アビジンで修飾した金の層を形成する。
(5)前記アビジンで修飾した金の層にビオチン化した生体成分を結合させる。
(6)カッターで切断する。

【0010】
ここで、疎水性相互作用を与えることができる限り、疎水性コーティングを行う目的で種々の材料を使用する事が出来る。その際に、環状パーフルオロポリマーを用いることが好ましく、CYTOPを用いることが特に好ましい。CYTOPの化学構造式を化1に、物理的特性を表1に、それぞれ示す。CYTOPにより疎水性コーティングを行った後に、コーティングを行わなかった面にクロムと金で蒸着を行う(図2)。クロムで蒸着を行うのは、金はガラスに対する付着性が良くないために、金の前にクロムの蒸着層を作製する必要があるからである。

【0011】
【化1】
JP0003453604B2_000002t.gif【0012】
【表1】
JP0003453604B2_000003t.gif【0013】金をジチオジプロピオン酸で処理を行うことにより、チオール基を介してジチオジプロピオン酸は金と結合する。その後、ジチオジプロピオン酸とエチル-ジメチルアミノプロピルカルボジイミドを反応させることにより、イミドを結合させる。更にアビジンと反応させるとイミドが遊離して、ペプチド結合を介してアビジンが金蒸着層の上に結合する。このような反応を用いて固定化したアビジンにビオチン化DNAを作用させると、ビオチン-アビジン親和性相互作用により、微小担体上にDNAが固定化される(図3)。この様にして固定化したDNAにFITCでラベル化したDNAが結合すると、FITCの蛍光により検出することが可能である。また、同様の反応を用いて、DNAのみならず、ポリペプチドを固定化することも可能である。

【0014】
また、上記のパターン化基板は、以下の様な過程で作製することができる。
(1)親水性のスライドガラスの片面の表層を、疎水性コーティングした後に焼成を行う。
(2)前記カバーガラスの疎水性コーティングを行った面にクロムを蒸着してクロム蒸着層を形成する。
(3)前記クロム蒸着層の上に金を蒸着して金蒸着層を形成する。
(4)前記金蒸着層にフォトレジストを作用させ、露光した後に現像を行う。
(5)前記金蒸着層のエッチングを行った後に、フォトレジストを除去する。
(6)前記クロム蒸着層のエッチングを行った後に、前記疎水性コーティングのエッチングを行う。
(7)フォトレジストを除去して、残っている金及びクロムを再びエッチングして除去する。

【0015】
ここで、疎水性相互作用を与えることができる限り、疎水性コーティングを行う目的で種々の材料を使用する事が出来る。その際に、環状パーフルオロポリマーを用いることが好ましく、商品名CYTOPを用いることが特に好ましい。その様にして疎水性コーティングを行った面に、クロムと金で蒸着を行う。この金蒸着層にフォトレジストを作用させ、露光した後に現像を行うことにより、パターン化基板の形状をプリントしたフォトレジスト層を作製する。そのために、金蒸着層のエッチングを行った際に、感光していない部分のみが除去され、パターン化基板の形状のプリントの通りに溝が形成される。フォトレジストを除去した後に、クロム蒸着層及び疎水性コーティングのエッチングを行って、疎水性コーティングを有さない部分をパターン化基板の溝の形状に作製する。それから、残った金蒸着層とクロム蒸着層を除去すると、疎水性コーティングされたサイトと疎水性コーティングされていない溝だけが残り、バターン化基板が作製される(図4)。

【0016】
更に本発明は、上記の方法により作製した生体材料固定化担体とパターン化基板とを、無作為液中自己組織化法を用いて、疎水性相互作用によって固定化することにより、バイオチップを作製する方法である。ここで、無作為液中自己組織化法とは、上述したように、回転しているスピンコーター中において、液体に懸濁させた生体材料固定化担体を、パターン化基板上に結合させる方法である(図1)。パターン化基板上に作製した疎水性被覆のパターンの大きさは、生体材料固定化担体とほぼ同一であるので、1つの基板パターンには1つの微小担体しか結合しない、という特質を有する。本方法において、あるパターンにどの様な微小担体が結合するかは制御されず、無作為である。

【0017】
更に本発明において、生体材料固定化担体に何らかの識別子を持たせることもまた可能である。ここで「識別子」とは、前記担体を区別することを可能とするために前記担体上に記載された指標を、包括的に意味するものである。本発明において採用している無作為液中自己組織化法においては、生体材料を固定化した担体が基板上のどこに配置されるかを制御することはできない。そのために、生体材料を固定化した担体に識別子を付与して、各々の生体材料固定化担体が配置された位置を識別することを可能することにより、本発明の有用性は更に高くなる。よって本発明者らは、何らかの識別子を生体材料固定化担体に付与することにより、その識別子を指標として配置操作後に何がどこに配置されたかを確認するための手段もまた開発した。

【0018】
下記の実施例においては、フォトリソグラフィーの手法によって生体材料固定化担体が有している金薄膜を部分的に取り除くことにより、識別子を構成するタグの種々のパターンを書き分けて、そのパターンの配列の組み合わせを読み取ることにより各担体の識別を行っている。即ち、金蒸着をしたカバーガラス基板上にフォトリソググラフィーによりタグを書き込んだ後に、エッチングにより金薄膜を除去し、タグを構成しているパターンの種々の組み合わせを作製することにより、そのパターンを識別子として機能させた。より具体的には、2x5の格子状の微小タイルから成るタグを用いて、1つの微小タイルを1ビットとしてタイルの有無のパターンを二進法の数字に変換することにより、識別のための数字を書き込んだ。

【0019】
本発明の識別子は、その他の様々な構成をとることが可能である。実施例においては格子状の微小タイルのパターンの配列を識別子として採用したが、例えばバーコードの様に並列に配置している複数の線の組み合わせを用いて、それらの線の太さにより識別させることもまた可能であると思われる。生体材料固定化担体上に記載することが可能であって、個々の担体を識別する機能することを可能とする「識別子」としての機能を有する限り、どの様な手段によりパターンを書き分ける方法を用いても、本発明の範囲内であると解されるべきである。

【0020】
リソグラフィー等の手段により記載される2次元的形状の特徴により識別する手段は、全て本発明の範囲内であると理解されるべきである。即ち本発明の識別子は、太さ、長さ、大きさの違う図形、またはその組み合わせ、文字、文字に類する形状等により記載されることが可能である。更に2次元的形状のみならず、エッチング深さの様な3次元的形状の他、担体上への堆積や固定化あるいは担体の表面改善によって得られる薄膜の形状、厚み、材質、およびそれらの組み合わせに伴う特徴によって識別する「識別子」によっても本発明の目的を達することが可能であり、本発明の範囲内であると解されるべきである。

【0021】
また、識別子としての機能を有するパターンを生体材料固定化担体に記載する手段は、実施例において述べているフォトリソグラフィーによるエッチッングに限定されるものではない。パターンを記載する手段のその他の例として、紫外線リソグラフィー、X線リソグラフィー、電子ビームリソグラフィー、レーザーパターニング、集束イオンビームパターニング、スクリーン印刷、スタンプなどの手段考えられる。しかしそれらに限定されるものではなく、担体に識別子を記載することができる限り、どの様な手段を用いても本発明の範囲内であると解されるべきである。

【0022】
【実施例】(実施例1)
(試薬)CYTOP(cyclized perfluoro polymer(CPFP)の商品名、型番:CTL-809M)またCYTOP溶液剤の(C49)N(型番:CT-Solv180)は旭化成のものを用いた。3,3’-ジチオジプロピオン酸は、PFALTZ&BAUER社のものを用いた。基板超音波洗浄用のアセトン、NHS(N-ヒドロキシコハク酸イミド)、アビジン(分子量67000、卵白由来)、トリス、塩化ナトリウム、エタノール、ヨウ化カリウム、水酸化ナトリウム、フェリシアン化カリウムは和光純薬工業のものを用いた。EDC(塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)は東京化成工業のものを用いた。

【0023】
生体材料としては、5’末端に各々ビオチン及びFITCを修飾した0.2μMスケールの二重螺旋DNAをニッシンボーに委託合成した。塩基配列は各々、5’-GAAAAAAAATGACGTCATCCG-3’(CRE(21bp))、5’-AGGAATTCCCAAGCTTGGCA-3’(random(20bp))、そして5’-GAAAAAAAATGACGTCATCCG-AGGAATTCCCAAGCTTGGCA-3’(CRE-random(41bp))である。ポジ型レジストのOFPR-800とその専用現像液のNMD-3;2.38(産業用)は東京応化工業のものを用いた。ヨウ素は岸田化学のものを用いた。基板洗浄用溶媒には、電子工業用(関東化学)アセトンを、その他の試薬には化学・生化学用特級またはその相当品を用いた。水はクリーンルームプロセスでは超純水(18.0MΩ・cm)を、その他の場合は蒸留水(49.5×10-6Scm,pH4.86)を用いた。

【0024】
(カバーガラスの微小加工およびパターン化した基板の作製)カバーガラスの微小加工の微細加工についての模式図を、図2に示した。まず、カバーガラス基板(0.10~0.12mm、18mm×18mm、西ドイツ)の表面は超音波洗浄器(W-222、Honda)を用いて純水、アセトン、純水の順にそれぞれ30分間洗浄した。そして、カバーガラスの片面はスピンコーター(1H-D3、MIKASA)により500rpmで10秒、1000~4000rpmで20秒にして、(C49 )Nの溶剤液で0.45~9重量%の濃度に希釈させたCYTOPをピペットで100μL滴下させることによって0.5~2.0μmの厚さでコーティングして疎水性にした。

【0025】
次に、115℃の恒温オーブン(DS64、ヤマト科学)の中に入れて4時間ハードベーキングした。そして、その反対面上にタングステンボートを用いる抵抗加熱型の小型真空蒸着装置(SVC-700TURBO-TM、サンユウ)を用いてクロムを厚さ約200オングストローム蒸着し、その後真空を破ることなく続けて金(純度99.99%、フルヤ金属)を厚さ約2000オングストローム蒸着した。膜厚は水晶振動子(6MHz PKG10、LEYBOLD INFICON)を用いる膜厚モニター(TM-200R、Maxtek)で測定し、蒸着速度をクロムの場合は0.5~1.0オングストローム/sで、金の場合は5.0~10.0オングストローム/sの範囲になる様に調節した。真空度はイオン真空ゲージ(ULVAC GI-TL3)で測り、10-6torrから開始した。蒸着後、アニーリング等の処理は施さなかった。

【0026】
金蒸着のカバーガラス基板上に、図3のような過程でチオール誘導体およびアビジンを介して5’末端にビオチン修飾したDNAを固定した。まず、1mM濃度の3、3’-ジチオジプロピオン酸水溶液3mLの中に金蒸着のカバーガラスを室温で20分間浸した。水溶液に100mg/mLの濃度にしたNHSとEDCを混合液としてカルボキシル酸と30分反応させた後乾燥させた。アビジンを緩衝液(pH7.9、10mMトリス-塩酸、0.2M塩化ナトリウム)で0.2mg/mLとなるように調製した1mLの溶液に1時間浸して置いた。1M濃度のエタノールアミン水溶液1mLにカバーガラスを30分間浸して未反応のカルボキシル基を不活性化した。アビジン修飾した金を緩衝液(pH7.9、10mMトリス-塩酸、0.2M塩化ナトリウム)にビオチン化DNAを1μMになるようにした1mLの溶液に25℃で30分間浸して置いた。ここで、ビオチン化DNA鎖はアビジン分子の4つの結合サイトの1つと結合する。ビオチン化DNAの固定量はDNA溶液に浸す時間により制御できた。

【0027】
そして、図2の4番目に示すようにビオチン化DNA修飾したカバーガラスを粘着性のダイシングテープ(Adwill D-210、LINTEC)に付けた後ダイシングンマシン(A-WD-10A、東京精密)を用いてダイヤモンドカッタ(52D-0.1T-40H、アサヒダイヤモンド)で0.5mm/sの速度で純水を注ぎかけながら100~400μm角の大きさに切り分けて数多くのビオチン化DNAを修飾した微小担体が作製できた。その後、5分間ダイシングテープにUV照射して粘着性をUV照射前19600mN/25mm(カタログ値)からUV照射後250mN/25mmに落として担体が取れ易くした。この工程によりチオール誘導体およびアビジンを介して5’末端にビオチン修飾したDNAを固定した1000~8000個位の微小担体を作製することができた。

【0028】
パターン化した基板の作製についての模式図を図4に示した。まず、マイクロスライドガラス基板(1.2~1.5mm、76mm×26mm、S-1225、マツナミガラス)をダイヤモンドカッターで3等分した後その表面は超音波洗浄器を用いて純水、アセトン、純水の順にそれぞれ30分間洗浄した。そして、スライドガラスの片面にスピンコーターにより500rpmで10秒、1000~4000rpmで20秒間、(C49 )Nの溶剤液で9重量%の濃度に希釈させたCYTOPをピペットで100μL滴下することによって、0.5~2.0μmの厚さで疎水性にコーティングした。次に115℃の恒温オーブン中に入れて4時間ハードベーキングした。この上にクロムと金を各々約200オングストロームと2000オングストロームに蒸着した。

【0029】
金を蒸着したスライドガラス基板に対し、クラス10のクリーンルームでポジ型のフォトレジストのOFPR-800を7~8滴落としてスピンコート(1H-DXII、ミカサ)し、(1回目:500rpm/10秒、スロープ:10秒、2回目:4000rpm/20秒、スロープ:5秒)、プリベーク(80℃、30分)(DK300、ヤマトサイエンティフィック)の後、マスクアライナー(MJB3 UV400、Karl Suss)を用いて8秒間露光し、現像液のNMD-3に30秒間浸して現像した後、超純水で2度洗い流した後窒素ガスを吹かして乾燥させた。

【0030】
ポストベーク(80℃、30分)の後、金のエッチング液(ヨウ化カリウム40g、ヨウ素10g、水400mL)で金のエッチングを行い、超純水で2度洗い流した後窒素ガスを吹かして乾燥させた。ついで、アセトン洗浄でフォトレジストを除去した後2度洗い流した後窒素ガスを吹かして乾燥させた。続けて、クロムのエッチング液(水酸化ナトリウム40g、フェリシアン化カリウム100g、水400mL)でクロムのエッチングを行い、超純水で2度洗い流した後窒素ガスを吹かして乾燥させた。また、2×10-5Torr以下で酸素プラズマ(ISCCM、500V、イオン化密度1.0mA/cm2 以下、RF power 100W)(EIS-200ER、ELIONIX)を2分間照射することによりCYTOPをエッチングさせた。再び、残っているクロムと金を全部エッチングさせた。この工程によりスライドガラスの片面に親水性および疎水性部分に分けて数多くのサイトを作製することができた。

【0031】
(パターン化した基板上への担体の固定)パターン化した基板上に微小加工した担体を疎水性相互作用による無作為液中自己組織化法で付けるためスピンコーターの回転部に図1の様にシャーレを載せ、その中央部にパターン化した基板を固定してから純水を貯めた。ここに150-400個の担体を入れると水上に浮くので300rpmで6分間回転させると担体が重力、遠心力および疎水性相互作用による担体群の無作為液中自己組織化によりパターン化した基板に付いた。

【0032】
図1は、無作為液中自己組織化法を用いた疎水性相互作用によるパターン化した基板への担体の固定化により作製した、DNAチップアレイの模式図を現わす。パターン化した基板の疎水性部分にビオチン化DNA修飾した担体の疎水性部分が疎水性相互作用により数多くの所で付いてDNAチップアレイになる。

【0033】
一方、懸濁液に化学、生化学的に性質が異なる生体材料を固定化した担体の混合物を用いれば、最終的に他種類の生体材料を密に固定化したDNAチップアレイを得ることができる。作製したDNAチップアレイに図3の最後の部分のようにビオチン化DNA修飾した担体に緩衝液(pH7.9、10mMトリス-塩酸、0.2M塩化ナトリウム)にFITC修飾したDNAを適当な濃度にして1mLの溶液に60℃で30分間浸して置いて二重螺旋を結合させた。二重螺旋DNAが結合したかは暗室でFITC用蛍光フィルター付きの蛍光顕微鏡(励起光450~490nm、吸収光515~565nm、分光510nm)(LEICAMZ FLIII、Leica)で励起させると蛍光が確認でき、その明るさによっても濃度がわかる。

【0034】
(疎水性相互作用力の測定)パターン化した基板のCYTOP面上に微細加工した担体が疎水性相互作用により、どの位の力で固定化されているかを調べるため図5のようにスピンコーターの回転部にシャーレを載せ、その中央部にパターン化した基板を動かないように固定化してから純水を貯めた。ここにCYTOPの溶剤液の(C49 )Nに0.45~9.0重量%の濃度に希釈したCYTOPを1000~4000rpmの速度で0.5~2.0μmの厚さにスピンコーティングした150~400個の担体を入れて300rpmで6分間回転させると担体が重力、遠心力および疎水性相互作用による担体群の無作為液中自己組織化によりパターン化した基板のCYTOP面に付いた。そして、図1のDNAチップアレイの拡大図の様に、担体の金の面ではなくCYTOP面がパターン化した基板のCYTOP面に接する担体数をカウンターで数えて疎水性相互作用力が測られた。ついで、100~900rpmの間で6分間スピンコーターを回転させて遠心力および疎水性相互作用力によりパターン化した基板上の担体がどれ程付いているか、図1の上記の拡大図のようにパターン化した基板のCYTOP面から剥離した担体の数を数えて測った。疎水性相互作用の結合力の測定を示した図を、図5に示す。

【0035】
(接触角の測定)動的接触角(DCA、dynamic contact angle)の測定により高分子固体が空気中から水中へあるいは水中から空気中へ移行する時の表面における分子鎖と分子鎖の凝集状態の再編成挙動が評価される。そこで、ここでは「動的Wilhelmy平板法」の原理によりCYTOP基板の疎水性程度を測るため動的接触角(DCA-100、オリエンテック)を測定した。まず、カバーガラス基板の両面上に0.45~9.0重量%濃度のCYTOPを1000~4000rpmの濃度で0.5~2.0μmの厚さにスピンコーティングさせた。次に115℃の恒温オーブンの中に入れて4時間ハードベーキングした。そして、CYTOPの動的接触角を測定した。動的接触角の測定は25℃で純水の液体中にカバーガラスを20.0mm/分の速度に保ちながら浸潰-引き上げを3回行ってその平均値を取った。この時の浸潰-引き上げに要する力を高感度荷重検出器を用いて動的接触角を測定した。

【0036】
(疎水性相互作用による担体の固定)無作為液中自己組織化法を用いて疎水性相互作用によりパターン化した基板上に微小加工した担体を付けるためにスピンコーター装置を使い、その回転部にシャーレを載せ、その中央部にパターン化した基板を固定してから純水を貯めた。ここに150~400個の担体を入れると水面に担体が群れになって集まって浮くので、300rpmで6分間回転させると重心、遠心力および疎水性相互作用により担体群パターン化した基板上部分に付いた。図6に、パターン化基板上に担体が結合している写真を示す。図6において疎水性相互作用により、基板の疎水性パターンの部分に、単体が固定されていることが見られる。また、図6の(a)に担体を正面から見た写真を、(b)に担体を側面から見た写真を、(c)に担体を斜めから見た写真を、それぞれ示す。

【0037】
また、懸濁液に化学、生化学的に性質が異なる生体材料を固定化した担体の混合物を用いれば、多種類の生体材料を密に固定化した多項目測定及び高集積アレイ型DNAチップアレイを得ることができる。まず、異なる生体材料を基板に固定させた後、担体を作製する。ついで、担体の混合物を用いて無作為液中自己組織化法を用いた疎水性相互作用によりパターン化した基板上に固定して、最終的に新しい多項目測定及び高集積DNA化チップアレイを作製することができる。

【0038】
図7に、ビオチン化したCRE、Random、CRE-Randomをそれそれ固定化した担体上に、それらと相補的なFITC修飾したDNAを結合させた時の蛍光を検出した結果を示す。上段はCREを固定化した担体に、3種類のFITC修飾したDNAを添加した結果であり、CREに相補的なDNAを結合させた左側の写真のみに蛍光が検出された。中段はRandomを固定化した担体に、3種類のFITC修飾したDNAを添加した結果であり、Randomに相補的なDNAを結合させた、真ん中の写真のみに蛍光が検出された。下段はCRE-Randomを固定化した担体に、3種類のFITC修飾したDNAを添加した結果であり、CRE-Randomに相補的なDNAを結合させた右側の写真のみに蛍光が検出された。これにより、本発明の方法により作製されたDNAが固定化された担体において、固定化されたDNAに特異的な相補的DNAが結合することが示された。

【0039】
(疎水性相互作用力の測定)無作為液中自己組織化を用いた疎水性相互作用により図1のようにパターン化した基板に担体の金の面ではなくCYTOP面が接する確率とパターン化した基板に担体がどれ程の力で固定されているか図5のようなスピンコーター装置を用いて遠心力と流速によりパターン化した基板から担体が剥離する割合を調べた。結果を図8に示す。まず、9.0重量%濃度でCYTOPをコーティングしたパターン化した基板と担体に対してパターン化した基板に担体の金の面ではなくCYTOP面が接する確率は80%位であったが、カバーガラスにCYTOPをコーティングしないと40%位まで下がり、パターン化した基板と担体共に疎水性に処理するより接する確率はずっと劣る。また、パターン化した基板と担体共に親水性に処理すると担体の親水性部分が接する確率は70%位で、疎水性に処理した基板より劣った。

【0040】
次に、疎水性相互作用によりパターン化した基板に担体がどれ程の力で固定化されているかを、CYTOPの濃度を0.45~9.0重量%に変えてコーティングしたパターン化した基板と150~400個の担体に対して調べて、その結果を図9に示した。9.0重量%濃度のCYTOPをコーティングしたパターン化した基板と担体に対しては100~900rpmの間でスピンコーターの遠心力と流速によってもパターン化した基板上に担体が95%以上まで付いていることが判る。また、パターン化した基板と担体にCYTOPの濃度を薄めるか違うように(各々0.45と9.0 重量%)してコーティングすると担体のパターン化した基板への固定力が80~90%位まで低くなったが、同じ濃度と厚さによっては結合力の差はほぼなかった。一方、CYTOPをコーティングしなかったカバーガラス(親水性)に対しては疎水性相互結合力は30%以下まで下がってしまい、疎水性相互作用力が劣ることが判る。そして、パターン化した基板と担体共に親水性に処理すると親水性相互作用力は50%位まで下がってしまい、疎水性相互作用力より劣ることが判った。以上の結果により本研究ではパターン化した基板と担体に9.0重量%濃度のCYTOPを4000rpmでコーティングに利用した。

【0041】
(接触角の測定)CYTOPのコーティング濃度により担体とパターン化した基板の疎水性相互作用力が違うので、カバーガラス両面にCYTOPをコーティングしてCYTOPの動的接触角を測ってその結果を図10に示した。カバーガラスのみの動的接触角は74.2°であった。また、0.45~9.0重量%のCYTOPの濃度別の動的接触角は84.3~88.7°で、濃度が高まると強くなった。一方、図10から判るように9.0重量%濃度のCYTOPを1000~4000rpmの速度でスピンコーティングすると動的接触角は88.3~88.9°で、その差はあまりなかった。

【0042】
この結果は担体とパターン化した基板が疎水性相互作用により固定されており、またCYTOPの濃度が高まると図10のようにパターン化した基板と担体の疎水性相互作用が強くなることを示唆する。また、CYTOPの濃度が低くなると付く力が弱まることが判る。

【0043】
本発明により、厚膜用CYTOPを用いて作製したパターン化疎水性膜を有する基板に、DNAを固定化してダイシングにより得た微小担体を液中で無作為液中自己組織化法を用いた疎水性相互作用により、任意の位置に配置することができた。このDNA反応を蛍光によって確認することができた。また、液中でのパターン化疎水性膜と担体との疎水性相互作用力は他の作用力より優れていて、多項目測定用の高集積型DNAチップアレイとして応用可能な技術であることが示された。

【0044】
実施例1においては、新しい生体材料固定化方法は配置直後にどの材料がどこに配置されたかの情報が失われている。生体材料そのものの応答を用いてキャリブレーション等により最終的な位置が確認できるほか、微小担体に対する配置前に別のマーキング操作を施しておくか色々の形を取っておけば、最終的な位置を知ることが可能となる。一方、より多くの担体を配置、固定化するために安定なパターン化疎水性膜の形状を作製していく必要がある。そこで、下記の実施例2において、個々の微小担体の識別を可能とするタグを付与したバイオチップの作製を試みた。更に、実施例2においては微小担体との壁を基板上に作製し、配置時の安定性の向上をはかった。

【0045】
(実施例2)
(微小担体の作製)微小担体を作製するカバーガラス(0.04~0.06mm,30mmx30mm)を、超音波洗浄器を用いて純水、アセトン、純水の順にそれぞれ30分間洗浄した。カバーガラスの一方をCYTOP(9.0重量%、0.5μm)でスピンコートした。カバーガラスを115℃で4時間ベーキングした。クロム層(0.5~1.0オングストローム/s,200オングストローム)と金層(5.0~10.0オングストローム/s,2000オングストローム)を、もう一方の面に蒸着した。フォトリソグラフィーを用いてネガ型のフォトレジスト(OMR83)を作用させて微粒子にタグを与え、ホットプレート上で100℃で1分間ベーキングした。フォトマスクを通じて、UV光(MJB3 UV400、カールザーツ)をレジスト膜に4秒間照射した。OMR現像液で現像し、洗浄して窒素ガスで乾燥させた。100℃で1分間ベーキングした後、金のエッチング液(KI:I2 :H2 O=4:1:40)とクロムのエッチング液(NaOH:K3 [Fe(CN)6 ]:H2 O=2:5:20)の中で30秒間エッチングを行った。剥離したOMR層のエッチングを行い、金表面を酸素プラズマ(67Pa,100SCCM,200W)に5分間暴露して親水性とした。切断するために、カバーガラスを粘着テープに固定した。ダイシングマシーンを用いて、カバーガラスを100~400μmの微小担体に切断した。UV光を粘着テープに5分間照射して、微粒子を剥離した。この過程によりタグを付した微小担体が得られた。

【0046】
図11(a)は、タグにおける各ビットの数字であり、リソグラフィーにより微小担体にそのタグを書き込んだ。1つの微小タイルが1ビットを意味するとした場合には、この8ビットにより0~255を表すことが可能である。SPとEPはビットの出発点と終末点を表し、微小担体に常に書かれている。図11(b)は図11(a)に基づいたタグであり、2進法の010110001(10進法の数字でいうと88)を示している。また、図11(c)は微小担体のSEM写真であり、図11(b)の”010110001”という数字がリソグラフィーによって微小担体上に書かれており、ダイシングマシーンにより分割した。微小担体の大きさは300x300μm2 である。ダイシングマシーンにより種々の大きさの微小担体が得られた。図11(c)において、10x10μm2 /ビットであるタグを明確にみることができた。この過程により、微小担体上に他のタグを書くこともできる。

【0047】
(DNAの固定化)実施例1と同様の方法で、金蒸着を行ったカバーガラス基板上にビオチン修飾したDNAを固定した。1mM濃度の3、3’-ジチオジプロピオン酸水溶液3mLの中に、金蒸着したカバーガラスを室温で20分間浸した。金の上のカルボキシル酸をEDCの存在下でNHSと反応させた後に乾燥した。活性化したカルボキシル基を有する金を、1mLのアビジン(100μg/mL)の緩衝液(pH7.9、10mMトリス-塩酸、0.2M塩化ナトリウム)中に1時間浸した。何回か水溶液で洗浄しても、金からアビジンは除去されなかった。アビジンが結合した金を、エタノールアミン(1M)の水溶液(1mL)に30分間浸して、カルボキシル基を不活化してβ-ヒドロキシエチルアミドにした。コントロール実験として、アビジンの緩衝液(1mL中10μg)の中にそのままの金を浸したところ、アビジンの吸着はほとんど観察されなかった。アビジンの濃度を1mL中において30~200μgまで増加したところ、非特異的な吸着が観察された。アビジンが結合した金を、ビオチン化したDNAの緩衝溶液(20~21bp、1μM)1mL中に25℃で30分間浸した。固定化量をコントロールするために金を取り出した。アビジン分子の4つの結合サイトの1つと結合するとして、ビオチン化したDNA鎖を計算した。ビオチン化DNAの固定量はDNA溶液に浸す時間により制御できた。

【0048】
(パターン化した基板の作製)スライドガラスを、超音波洗浄器を用いて純水、アセトン、純水の順にそれぞれ30分間洗浄した。そして、スライドガラスの片面をCYTOPによりスピンコートして、115℃で4時間ベーキングした。クロム/金層をCYTOP上に蒸着し、ホットプレート上で200℃で15分間ベーキングしてこの表面を乾燥させた。ネガ型フォトレジスト(XP SU-8 50)を、スピンコーターによりスライドガラス上に滴下し、ホットプレート上で100℃で30分間ベーキングした。フォトマスクを通じてスライドガラスをUV光に20秒間暴露した。ホットプレート上において100℃で30分間ベーキングし、自然に冷却した。SU-8現像液中で30分間現像し、現像液で洗浄し、窒素ガスで乾燥した。SU-8 50の表面を酸素プラズマに5分間暴露し、親水性とした。金とクロムの層を30秒間エッチングし、洗浄して窒素ガスで乾燥した。パターン化した基板は、25~30μmの厚さの壁を有する格子縞模様であった。大きさは、全ての側において100x100~500x500μm2 である。パターン化した基板はそれぞれ、親水性と疎水性の部位に分けられた。103 ~104 /cm2 の親水性及び疎水性部位が得られた。

【0049】
図12は、リソグラフィーと酸素プラズマプロセッシングにより作製された、パターン化基板を示す。星印で示した範囲は親水性の部分を、残りは疎水性の部分を示す。このパターン化基板は100x100μm2 (10000サイト/cm2 )であった。高さが25~30μmの壁を全ての側面に規則的に作製したために、配列した後の微小担体の安定性は高いであろうと予測される。また、500x500μm2 のパターン化基板を作製することも可能であった。図12(a)は作製された壁の拡大図であり、親水性部分と壁との間のエッチングが巧みであることが示されている。壁を明確に見ることができ、またフォトリソグラフィーを用いて、種々の大きさの疎水性部位を得ることができる。

【0050】
(担体のパターン化した基板上への配置)種々の固定化DNAとタグの両方を有する約5000個の担体を含む懸濁液(エタノール90%+蒸留水10%)の中に、パターン化した基板を入れた。重力と疎水性相互作用により、無作為液中自己組織化を用いて微小担体を基盤に付着させ、パターン化基板の疎水性部位の各々に無作為に配列した。この過程により、集約型のDNAチップマイクロアレイを組み立てることができた。

【0051】
図13は、無作為液中自己組織化を用いて、疎水性相互作用によりタグを有する担体をパターン化基板上に配列させた、集積型DNAチップマイクロアレイのSEM写真を示す。星型と四角型の各部位はそれぞれ、親水性と疎水性の部位を示す。微小担体がパターン化基板上の疎水性部位に配列する確立は約75~85%であった。図13において担体の厚さは約50μmであり、周囲に壁(25~30μm)があるために、担体は強固に三次元的に配列することができる。各担体をタグによって区別することができるために、多くの種類のDNAが担体に固定化されたときに各DNAを区別することが可能となる。タグの例として、2進法の”01011000”というタグや”01100011”というタグが挙げられ、これらは10進法の88という数字と99という数字を、それぞれ示している。

【0052】
(ハイブリダイゼーション)固定化したDNAプローブ(ビオチン化したDNA)が結合した金を、ハイブリダイゼーション緩衝液に入れて、次いでFITC修飾した標的cDNA(0.1pM~1μM,5μL)と反応させることによりハイブリダイゼーションの実験を行った。ハイブリダイゼーションは蛍光強度の変化により確認した。非相補的なDNA結合(1μM,5μL)もまた評価した。蛍光顕微鏡(励起光450~490nm、吸収光515~565nm)(LEICA MZ FLIII、Leica)により暗室で蛍光を確認し、光度によりDNAハイブリダイゼーションの検討を行った。

【0053】
図14は、DNAチップマイクロアレイにおける、FITC修飾された標的cDNAの濃度(0.1pMから1μM)に依存した蛍光強度の変化を示す。図14(a)において、10-13 Mから10-6Mの範囲内の濃度でAとBのプライマリーDNAがそれらのcDNAとハイブリダイズした時、濃度増加により蛍光強度がほとんど直線的に増加するという関係が観察された。蛍光強度はcDNAの濃度に依存していた。しかし図14(b)は、プライマリーDNAのcDNAではないサンプルと反応させた結果である。FITC標識された標的cDNAがプライマリーDNAとハイブリダイズしなかったために、この場合には蛍光は見られなかった。これらの結果は、このDNAチップアレイを用いてDNAを認識することが可能であることを意味している。

【0054】
図15は、DNAチップマイクロアレイにおける、種々の標的cDNAがハイブリダイズした後の蛍光変化を示す。各プライマリーDNAを担体に固定化した後に各担体を懸濁液中で混合してチップパターン上に配列させた。図15(a)はDNAチップマイクロアレイを示しており、プライマリーDNAは標的cDNAとハイブリダイズしていないために蛍光は検出されない。FITC標識された標的cDNAを順次投入した。図15(b)はA’のcDNAを投入したときの結果であり、A’のcDNAとハイブリダイズした時だけに丸型の点線内に蛍光が見られた。その上に図15(c)においてB’のcDNAを、更に図15(d)においてA’+B’のcDNAを投入した時に、ハイブリダイズすることによって丸型の点線内に蛍光が見られた。これらの結果は、この方法がDNAチップマイクロアレイに適用できることを示している。

【0055】
【発明の効果】本発明により、生体材料を固定化した微小担体と担体を固定化したパターン化基板を、無作為液中自己組織化法を用いて疎水性相互作用により固定化することを特徴とする、新規なバイオチップの作製方法が与えられた。
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図8】
2
【図10】
3
【図1】
4
【図2】
5
【図5】
6
【図6】
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【図7】
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【図9】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
14