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ポリフルオロベンゾキノン類の製造方法
> 明細書
明細書 :ポリフルオロベンゾキノン類の製造方法
発行国
日本国特許庁(JP)
公報種別
特許公報(B2)
特許番号
特許第4113955号 (P4113955)
公開番号
特開2005-330190 (P2005-330190A)
登録日
平成20年4月25日(2008.4.25)
発行日
平成20年7月9日(2008.7.9)
公開日
平成17年12月2日(2005.12.2)
発明の名称または考案の名称
ポリフルオロベンゾキノン類の製造方法
国際特許分類
C07C 46/02 (2006.01)
C07C 50/24 (2006.01)
C07C 50/28 (2006.01)
FI
C07C 46/02
C07C 50/24
C07C 50/28
請求項の数または発明の数
5
全頁数
8
出願番号
特願2004-147589 (P2004-147589)
出願日
平成16年5月18日(2004.5.18)
新規性喪失の例外の表示
特許法第30条第1項適用 平成15年11月22日 第46回有機合成化学協会関東支部シンポジウム(新潟シンポジウム)実行委員会発行の「第46回有機合成化学協会関東支部シンポジウム(新潟シンポジウム)講演要旨集」に発表
審査請求日
平成17年5月13日(2005.5.13)
特許権者または実用新案権者
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
発明者または考案者
【氏名】西口 郁三
【氏名】前川 博史
【氏名】秋山 祥一
個別代理人の代理人
【識別番号】100102299、【弁理士】、【氏名又は名称】芳村 武彦
審査官
【審査官】吉良 優子
参考文献・文献
特開昭47-042637(JP,A)
特開2003-321789(JP,A)
特開昭60-230990(JP,A)
特開昭64-011986(JP,A)
特開平05-065682(JP,A)
特開昭56-147741(JP,A)
特開平02-097690(JP,A)
調査した分野
C07C 46/02
C07C 50/24
C07C 50/28
特許請求の範囲
【請求項1】
次の一般式(1)で表されるポリフルオロベンゼンを、
【化1】
(式中、R
1
は水素原子、ハロゲン原子、又はOR
2
を表し、R
2
は炭素数1~5のアルキル基を表す。)
トリフルオロ酢酸とハロゲン化炭化水素との混合溶媒中にて陽極酸化することを特徴とする、次の一般式(2)で表されるポリフルオロ-1、4-ベンゾキノンの製造方法:
【化2】
(式中、R
1
及びR
2
は上記と同じである。)
【請求項2】
ハロゲン化炭化水素が塩化メチレンであることを特徴とする請求項1に記載のポリフルオロ-1,4-ベンゾキノンの製造方法。
【請求項3】
トリフルオロ酢酸とハロゲン化炭化水素との混合割合が重量比で10:1~1:1であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリフルオロ-1,4-ベンゾキノンの製造方法。
【請求項4】
上記一般式(1)及び(2)において、R
1
がフッ素原子又はメトキシ基であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のポリフルオロ-1,4-ベンゾキノンの製造方法。
【請求項5】
陽極酸化後、反応溶液を酸性に保持し、水を用いずに反応生成物を分離することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のポリフルオロ-1,4-ベンゾキノンの製造方法。
発明の詳細な説明
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機機能性材料である、2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタンの合成中間体であり、また、医薬品、生理活性物質、農薬等に使用されるポリフルオロベンゾキノン類の簡便な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリフルオロベンゾキノン類は、対応するハイドロキノン類を原料として各種酸化反応により合成されている(例えば、非特許文献1、2参照)。しかしながら、原料となるハイドロキノン類は高価であり、塩基に対する不安定性もあって一般に収率は悪く、効率的で簡便なポリフルオロベンゾキノン類の製造方法の開発が求められていた。
【0003】
【非特許文献1】M. Hudlicky and H. M. Bell, J. Fluorine Chem., 4, 149-157 (1974)
【非特許文献2】A. E. Feiring and W. A. Sheppard, J. Org. Chem., 40, 2543-2545 (1975)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は安価な原料を使用して、簡便な操作で効率良く低コストでポリフルオロベンゾキノン類を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は鋭意検討した結果、比較的安価で入手が容易な1,4位にフッ素原子を持つポリフルオロベンゼン類を、トリフルオロ酢酸とハロゲン化炭化水素との混合溶媒中にて陽極酸化することにより、簡単な操作で効率良くポリフルオロベンゾキノン類が得られることを見出し、本発明を完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は次の1~6の構成をとるものである。
1.次の一般式(1)で表されるポリフルオロベンゼンを、
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、R
1
は水素原子、ハロゲン原子、又はOR
2
を表し、R
2
は炭素数1~5のアルキル基を表す。)
トリフルオロ酢酸とハロゲン化炭化水素との混合溶媒中にて陽極酸化することを特徴とする、次の一般式(2)で表されるポリフルオロ-1、4-ベンゾキノンの製造方法:
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R
1
及びR
2
は上記と同じである。)
2.ハロゲン化炭化水素が塩化メチレンであることを特徴とする1に記載のポリフルオロ-1,4-ベンゾキノンの製造方法。
3.トリフルオロ酢酸とハロゲン化炭化水素との混合割合が重量比で10:1~1:1、好ましくは5:1~2:1であることを特徴とする1又は2に記載のポリフルオロ-1,4-ベンゾキノンの製造方法。
4.上記一般式(1)及び(2)において、R
1
がフッ素原子又はメトキシ基であることを特徴とする1~3のいずれかに記載のポリフルオロ-1,4-ベンゾキノンの製造方法。
5.陽極酸化後、反応溶液を酸性に保持し、水を用いずに反応生成物を分離することを特徴とする1~4のいずれかに記載のポリフルオロ-1,4-ベンゾキノンの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トリフルオロ酢酸とハロゲン化炭化水素との混合溶媒中にて陽極酸化を行うことにより、安価で入手が容易な1,4位にフッ素原子を有する上記一般式(1)で表されるポリフルオロベンゼン類を原料として、常温常圧下、低コスト及び簡便な操作で効率良く、上記一般式(2)で表されるポリフルオロベンゾキノン類を製造することが可能となった。
これらのポリフルオロベンゾキノン類は、有機機能性材料の合成中間体や、医薬品、生理活性物質、農薬等として幅広い用途に用いられるものであり、本発明の工業的価値は極めて高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明では、ポリフルオロベンゾキノン類を製造する原料として、次の一般式(1)で表されるポリフルオロベンゼンを使用する。
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、R
1
は水素原子、ハロゲン原子、又はOR
2
を表し、R
2
は炭素数1~5のアルキル基を表す。)
好ましいポリフルオロベンゼンとしては、例えばペンタフルオロベンゼン(R
1
=H)、ヘキサフルオロベンゼン(R
1
=F)、ペンタフルオロブロモベンゼン(R
1
=Br)、ペンタフルオロクロロベンゼン(R
1
=Cl)、ペンタフルオロメトキシベンゼン、ペンタフルオロエトキシベンゼン、ペンタフルオロプロポキシベンゼン、ペンタフルオロブトキシベンゼン等が挙げられるが、ヘキサフルオロベンゼン及びペンタフルオロメトキシベンゼンが特に好ましい。
【0015】
これらのポリフルオロベンゼンを、トリフルオロ酢酸(以下、「TFA」と略記することがある)とハロゲン化炭化水素との混合溶媒中で、陽極酸化することによって、1,4位にあるフッ素が脱離し、容易かつ選択的に次の一般式(2)で表されるポリフルオロ-1,4-ベンゾキノンを得ることができる。
【0016】
【化4】
【0017】
(式中、R
1
及びR
2
は上記と同じである。)
TFAと混合溶媒を構成するハロゲン化炭化水素としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等を使用することができるが、特に塩化メチレンを使用することが好ましい。また、TFAとハロゲン化炭化水素との混合溶媒には、所望によりアセトニトリル、酢酸、プロピオニトリル、プロピオン酸等の他の溶媒を混合してもよい。
TFAとハロゲン化炭化水素との混合割合は10:1~1:1、特に5:1~2:1とすることが好ましい。
【0018】
本発明で原料として使用する、上記一般式(1)で表されるポリフルオロベンゼン類はTFAに対する溶解性が小さく、溶媒としてTFAを単独で使用した場合には、陽極酸化反応を制御することが困難であり、また、高価なTFAを多量に使用することが必要であり、製造コストが高くなるという難点があった。本発明では、TFAとハロゲン化炭化水素との混合溶媒を使用することによって、ポリフルオロベンゼン類の溶媒に対する溶解性を大幅に改善するとともに、支持電解質として使用するトリエチルアミン等の配合量の加減が容易になり、陽極酸化反応を制御することが極めて簡単になった。また、反応系の安定性が著しく改善され、反応系から生成物を安定に取得することが可能になった。
【0019】
陽極酸化反応は、定電流条件下、常温常圧で常法により行なうことができる。反応生成物は塩基性条件下では不安定であり、また水への溶解度が大きいために、反応溶液を酸性に保持し、水を用いずに反応生成物を分離、精製することが好ましい。
【0020】
具体的には、例えば反応溶液を、エチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、塩化メチレン、クロロホルム等の非水溶性有機溶媒で抽出、乾燥後、抽出溶媒を減圧下にて濃縮した後、有機残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製することによって、目的とするポリフルオロ-1,4-ベンゾキノンを得ることができる。
精製用のカラムとしては、例えばシリカゲル、、アルミナ、セルロース等を充填したカラムを使用することができる。
【実施例】
【0021】
つぎに、実施例により本発明をさらに説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
以下の実施例では、図1(模式図)にみられるような、ビーカー型セル(電解装置)を使用して、ポリフルオロベンゼンの陽極酸化反応を行った。このビーカー型セル1は、白金板で構成した陰極2及び陽極3、温度計4を具備するもので、陰極2側には素焼円筒型隔膜5を設けるとともに、撹拌子6を備えている。
【0022】
(実施例1)
基質にヘキサフルオロベンゼン[一般式(1)でR
1
=F]10mmol、支持電解質としてトリエチルアミン60mmol、陽陰極に白金板(陽極7cmx4cm、陰極2x1cm)、陰極に素焼円筒型隔膜を備え付けた50mlビーカー型セルを用い、溶媒にトリフルオロ酢酸と塩化メチレンの混合溶媒40ml(体積比5:1)を調製して陽極側に30ml、陰極側に10ml加え、定電流電解(電流密度10mA/cm
2
)を行った。2F/molの通電後、反応溶液に水200mlを加えて30分攪拌してジエチルエーテル100mlで5回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を留去した。生成物が塩基に非常に弱いため、真空ポンプ及びショートカラムによりトリフルオロ酢酸を除去し、これを再度カラムクロマトグラフィーで精製後、テトラフルオロベンゾキノン[一般式(2)でR
1
=F]を82%の収率で得た。生成物の確認は、次の物性値により行った。
13
C-NMR(100 MHz, acetone-d
6
):δ144.1(dm, J
C,F
= 278.3 Hz), 172.1-172.8(m)ppm,FT-IR(KBr) 1690, 1674, 1326, 1045, 1011, 737, 447 and 423 cm
-1
,EI-MS:m/z 180(M
+
),m.p. 185-187 ℃(lit. m.p. 179 ℃)
【0023】
(実施例2)
実施例1において、基質としてペンタフルオロメトキシベンゼン[一般式(1)でR
1
=OMe]10mmolを使用した以外は実施例1と同様に処理し、トリフルオロメトキシベンゾキノン[一般式(2)でR
1
=OMe]を81%の収率で得た。生成物の確認は、次の物性値により行った。
1
H-NMR(400 MHz, CDCl
3
):δ4.23 ppm(3H, d, J
CH3,F
= 4.4 Hz),FT-IR(KBr) 1697, 1645, 1469, 1297, 1200, 1118, 668, 576, and 438 cm
-1
,EI-MS:m/z 192(M
+
),m.p. 154-158 ℃(lit. m.p. 159-161.5 ℃)
【0024】
(実施例3)
実施例1において、基質としてペンタフルオロベンゼン[一般式R
1
=H]10mmolを使用した以外は実施例1と同様に処理し、トリフルオロベンゾキノン[一般式(2)でR
1
=H]を55%の収率で得た。生成物の確認は、次の物性値により行った。
1
H-NMR(400 MHz, CDCl
3
):δ6.49 ppm(1H, q, J
H,F
= 8.0 Hz),
13
C-NMR(67.8 MHz, DMSO):δ112.5(d, J
C,F
= 16.8 Hz), 143.8(dm, J
C,F
= 278.1 Hz), 159.6(d, J
C,F
= 148.3 Hz), 171.5-172.3(m) and 178.0-178.6(m),FT-IR(KBr) 1684, 1645, 1506, 1302, 1211, 1165, 1060, 955, 872, 778, 721 and 419cm
-1
,EI-MS:m/z 162(M
+
),m.p. 142-146 ℃(lit. m.p. 148-149℃)
【0025】
(実施例4)
実施例1において、基質としてペンタフルオロブロモベンゼン[一般式(1)でR
1
=Br]10mmolを使用した以外は実施例1と同様に処理し、トリフルオロブロモベンゾキノン[一般式(2)でR
1
=Br]を51%の収率で得た。生成物の確認は、次の物性値により行った。
13
C-NMR(67.8 MHz,DMSO):δ112.8(d, J
C,F
= 15.6Hz), 143.6(dm, J
C,F
= 278.0 Hz), 154.9(d, J
C,F
= 280.3Hz), 169.1-169.9(m), 172.2-172.4(m)ppm,FT-IR(KBr) 1697, 1633, 1507, 1328, 1282, 835, 732 and 582cm
-1
,EI-MS:m/z 240(M
+
), 242(M+2),m.p. 128-132 ℃
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例で使用する、ビーカー型セルの模式図である。
【符号の説明】
【0027】
1 ビーカー型セル
2 陰極
3 陽極
4 温度計
5 素焼円筒型隔膜
6 撹拌子
図面
【図1】