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Specification :(In Japanese)鋼の切削方法及び切削装置

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P4552010
Publication number P2006-159339A
Date of registration Jul 23, 2010
Date of issue Sep 29, 2010
Date of publication of application Jun 22, 2006
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)鋼の切削方法及び切削装置
IPC (International Patent Classification) B23B   1/00        (2006.01)
FI (File Index) B23B 1/00 Z
Number of claims or invention 4
Total pages 10
Application Number P2004-353278
Date of filing Dec 6, 2004
Date of request for substantive examination Oct 29, 2007
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】田中 隆太郎
【氏名】細川 晃
【氏名】山田 啓司
【氏名】上田 隆司
Representative (In Japanese)【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100105463、【弁理士】、【氏名又は名称】関谷 三男
【識別番号】100099128、【弁理士】、【氏名又は名称】早川 康
Examiner (In Japanese)【審査官】小川 真
Document or reference (In Japanese)特開昭60-099502(JP,A)
特開2001-303209(JP,A)
特開平04-052266(JP,A)
Field of search B23B 1/00
C22C 38/00
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
装置本体に取付けられた被削材を回転させて切削工具で切削する鋼の切削方法であって、
前記被削材は、B、N、及びAlを少なくとも含む快削鋼であり、
前記装置本体と前記切削工具との間を電気絶縁状態として、前記切削工具の切削面に、前記快削鋼に含有するN及びAlからAlNの保護膜が形成されるように、前記切削工具と前記快削鋼との間に所定値の電流を流して、前記快削鋼を切削することを特徴とする鋼の切削方法。
【請求項2】
前記電流は、5mAから10mAの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の鋼の切削方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鋼の切削方法を実行する切削装置であって、
前記切削装置は、前記電流を発生させる電源と、該電源から流れる電流を、前記所定値に調整する電流調整手段と、を備えていることを特徴とする鋼の切削装置。
【請求項4】
装置本体に取付けられた被削材を回転させて切削工具で切削する鋼の切削装置であって、
該切削装置は、前記装置本体と前記切削工具との間に配置した電気絶縁体と、電流を発生する電源と、該電源からの電流を調整して前記切削工具と前記被削材との間に電流を流す電流調整手段と、を備え、
該電流調整手段は、前記切削工具の切削面に、前記被削材に含有している元素により切削中に保護膜を形成するに最適な所定値の電流を流すものであることを特徴とする鋼の切削装置。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具を用いて被削材を切削する鋼の切削方法およびその切削装置に係り、特に、切削時における磨耗を低減し、工具の長寿命化が可能な鋼の切削方法およびその切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被削材である鋼を切削する切削装置としては、図6に示すような、切削装置50が挙げられる。この切削装置50は、接地された装置本体60と、回転するチャック61等、を備えており、このチャック61は、被削材100を取り付けることが可能な構成となっている。被削材100は、装置本体60に配置されたモータ(図示せず)によりチャック61を回転させることで回転すると共に、装置本体60の一端に取り付けられた切削工具30を押し当てることで、切削されるようになっている。
【0003】
たとえば、このような装置構成の一例として、装置本体に取り付けた鋳鉄(被削材)とこの装置本体とを電気絶縁状態にし、切削工具と鋳鉄との間に所定の電流を通電しながら、この切削工具を用いて鋳鉄の切削を行う切削装置が実験的な装置として提案されている(非特許文献1参照)。
【0004】

【非特許文献1】H.S.Shan,P.C.Pandey.Theromoelectric compensation in metal cutting,Microtecnic,1970,24,1,30-32
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図6に示すような切削装置50を用いて被削材100を切削する場合には、切削工具30と被削材100とは異種金属であり、かつ切削中において両者は高温接点状態となることから、両者の間にはゼイベック係数に依存する電圧が発生する。そして、この電圧発生により図6の破線に示すように、工具30-被削材100-装置本体60を電気的な閉回路として電流が流れると共に、この回路の電流は、電気抵抗(主に装置本体60の抵抗)に依存し、極微小(1mA以下程度)流れるとされる。このゼイベック効果により流れる電流は、切削装置50の有する電気抵抗、切削条件等により変動するものであり、工具の寿命を短くすると共に、その寿命にばらつきを与える要因となっていた。
【0006】
また、前記非特許文献1に記載のように、切削工具と鋼である被削材との間に電流を積極的に流して切削することも、実験的に試みられているが、該試みによっては、確実に切削性が向上し、工具の寿命が長くなるとの結果は得られていない。
【0007】
一方、従来から、バイト等の切削工具を用いて被削材である鋼の切削を行うにあたって、該被削材の切削性を改善するために、被削材としての鋼の材料の内部介在物やその組織の調整制御に重点をおいた研究が行われ、このような被削材として様々な快削鋼が開発され、実用化されてきた。特に自動車部品のうち、切削が必要な部品の多くには、このような快削鋼が用いられている。
【0008】
しかし、前述の如く開発された快削鋼は、切削性や工具の長寿命を目的としたものではあるが、被削材としての鋼の材料の内部介在物やその組織の調整制御に重点をおいた開発であって、その快削鋼の切削性(被削性)及び切削工具の耐摩耗性を、鋼の材質(内部介在物やその組織)と実際の切削時の切削方法との組み合わせ、つまり快削鋼の材質と切削時における快削鋼の切削状態とを関連付けて、開発されたものではなかった。
【0009】
また、前記快削鋼の1つとして、B、N、及びAlの元素を含み、切削時に、快削鋼中に含まれるNとAlとが反応して、切削工具の表面にAlNからなるコーティング膜を形成し、工具の寿命を向上させる快削鋼(例えば、エヌケーケー条鋼(株)製BN快削鋼)が開発されている。
【0010】
しかし、前記快削鋼についても、更にその切削性及び切削工具の耐摩耗性を向上させるために、その切削方法を改善して、切削加工製品の生産性を向上させることが求められているものであり、そのことが今後の大きな課題となっている。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、B、N及びAlを少なくとも含む快削鋼を高速の切削速度で切削しても、快削鋼の被削性を向上させ、切削工具を長寿命化させることができる鋼の切削方法及び切削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく多くの実験と研究をした。その結果、特定の種類の快削鋼の切削時に該快削鋼に含有する元素によりベラークと呼ばれる保護膜が、切削工具の磨耗する面(切削面)に形成されること、及び、安定的に前記保護膜を形成するには、切削工具と被削材である快削鋼との間に特定の大きさの電流を流しながら切削することが必要であり、この安定的な保護膜を形成することにより切削工具の磨耗が抑制され、切削時における切り屑の厚みも小さくなり、かつ切削抵抗も低減されるとの知見を得た。
【0013】
本発明は、本発明者らが得た前記の新たな知見に基づくものであり、本発明に係る鋼の切削方法は、装置本体に取付けられた被削材を回転させて切削工具で切削する鋼の切削方法であって、前記切削材は、B、N、及びAlを少なくとも含む快削鋼であり、前記装置本体と前記切削工具との間を電気絶縁状態として、前記切削工具と前記快削鋼との間に所定値の電流を流して切削することを特徴としている。
【0014】
本発明において、B、N、及びAlを少なくとも含む快削鋼とは、Feを主材として、ヘキサ窒化ホウ素と、Alの単体を、含有させた金属材料であり、切削時に、切削工具の表面に、AlNからなる保護膜を形成することができる材料である。そして、この被削材、装置本体、及び切削工具を電気的な閉回路とした電流、すなわちゼイベック効果による不安定な電流が流れないように、装置本体と切削工具との間に電気絶縁を行うものである。このように装置本体と切削工具との間を電気絶縁状態で、切削工具と快削鋼との間に、所定の電流を流しながら切削工具で快削鋼を切削すると、工具の寿命が延びると共に快削鋼の被削性も向上する。
【0015】
好ましい態様としては、本発明の鋼の切削方法は、前記電流を、5mAから10mAの範囲で流すことを特徴とするものであり、このような範囲に微少電流を流しながら切削を行うことにより、より被削材の切削性(被削性)がより向上するとともに、工具の磨耗もより低減される。すなわち、この電流値が5mAよりも小さい場合には、逃げ面磨耗は抑制されるが、すくい面磨耗は効果的に抑制することができない。また、この電流値が、10mAよりも大きい場合には、逃げ面の磨耗が進み、工具の寿命が低下する。
【0016】
また、好ましい態様としては、この鋼の切削方法は、前記切削時における切削速度を、100m/minから300m/minの範囲とすることを特徴とするものであり、このような範囲の切削速度で、前記の条件に基づいて切削を行うと、切削工具が磨耗する表面(切削面)にAlNの保護膜が効率よく形成される。すなわち、切削速度が100m/minよりも小さい場合は、AlNの保護膜を切削工具の切削面に効率よく形成することができない。同様に、300m/minよりも大きい場合も、AlNの保護膜を切削工具の切削面に効率よく形成することができない。
【0017】
前記の切削方法を効果的に実施することができる装置として、本発明に係る鋼の切削装置は、前記電流を発生させる電源と、該電源から流れる電流を調整する電流調整手段と、を備えている。さらに好ましい態様として、本発明に係る鋼の切削装置は、前記装置本体と電気絶縁された切削工具取付体をさらに備えている。このように切削工具取付体とすることにより、切削工具を装置本体に取り付けることができると共に、装置本体と切削工具との間を電気絶縁することができる。
【0018】
またさらに、鋼の切削方法を効果的に実施することができる装置として、本発明に係る鋼の切削装置は、装置本体に取付けられた被削材を回転させて切削工具で切削する鋼の切削装置であって、該切削装置は、前記装置本体と前記切削工具との間に配置した電気絶縁体と、電流を発生する電源と、該電源からの電流を調整して前記切削工具と前記被削材との間に電流を流す電流調整手段と、を備え、該電流調整手段は、前記切削工具の切削面に、前記被削材に含有している元素により切削中に保護膜を形成するに最適な所定値の電流を流すものであることを特徴としている。
【0019】
本発明の鋼の切削加装置で切削を行うに際して、切削時に切削工具に保護膜を形成するため被削材として、上に示すような快削鋼を切削装置の装置本体の切削工具取付体等に取り付ける。そして、この取り付けの際には、被削材、装置本体、及び切削工具を電気的な閉回路とした電流が流れないように、装置本体と切削工具との間に電気絶縁体を配置する。この結果、不安定な電流が被削材と切削工具との間に流れないので、切削時における切削工具の磨耗が抑制される。
【0020】
さらに、この電気絶縁状態において、切削時に、被削材と切削工具との間に所定の値に調整した電流を流しながら切削を行うことで工具の切削面(具体的には、切削工具と、被削材とが接触して磨耗する工具の逃げ面及びすくい面)に、保護膜が形成されるので、すくい面および逃げ面の磨耗が抑制され、工具の被削性も向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る鋼の切削方法およびその切削装置によれば、切削時に切削工具に保護膜を形成できる特定の被削材の切削において、切削工具と被削材との間にわずかな電流を流しながら切削を行うことにより、切削工具の切削面に確実に保護膜が形成さることで、切削工具のすくい面及び逃げ面の磨耗を抑制することができ、工具を長寿命化することができる。さらに、切削抵抗も低下し、切り屑の厚みも小さくなり、快削鋼の被削性が向上する。そして、わずかな電流で前記効果が得られるので、安価に切削加工を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づき説明する。図1は、本発明の鋼の切削方法を好適に実施することができる、鋼の切削装置の一実施形態を説明するための模式図であり、図2は、図1に示す電流調整手段40の回路構成図である。以下、先に述べた図6の切削装置50と共通する箇所は、同じ符号を付して、説明は省略する。
【0023】
図1に示すように本実施形態の切削装置1は、図6の如き従来の切削装置50と比して、さらに、電気絶縁体20、電流調整手段40、電源41、及びロータリコネクタ80を備えている。
【0024】
電気絶縁体20は、装置本体60に取り付けられた切削工具30と、装置本体60と、を電気絶縁状態にするように、装置本体60の切削工具取付体(図示せず)と切削工具30との間に配置されている。この電気絶縁体20は、ゴムなどの電気絶縁材料であって、非導電性の材料であるならば特に限定されるものではない。また、切削工具取付体の材質を、非導電性の材料にすると、電気絶縁体20を配置しなくてもよい。
【0025】
このように、電気絶縁体20を設けることで、被削材10-装置本体60-切削工具30を電気的な閉回路とした電流が流れないようにすることができる。また、この電気絶縁体20は、被削材10と装置本体60(具体的にはチャック61)との間に配置して、被削材10-装置本体60-切削工具30を電気的な閉回路とした電流が流れないようにしてもよい。
【0026】
電流調整手段40は、被削材10と切削工具30との間に電流を流し調整するための手段であり、配線40aの一端は、電源41に接続され、さらにこの電源41から被削材10に取り付けられたロータリコネクタ80を介して被削材に接続されている。また、配線40bの一端は、切削工具30に接続されており、切削工具30から被削材10に、通電可能となっている。
【0027】
そして、図2に示すように、電流調整手段40は、抵抗42~46、3WAYスイッチ47、及び電流計48を備えている。また、抵抗43、46は、可変抵抗であり、電流計48の電流値の表示を見ながら、抵抗値を可変的に調整することで、被削材10と切削工具30との間に流れる電流の調整を行うようになっている。
【0028】
具体的な電流調整方法としては、まず、3WAYスイッチ47の接点47aに接続し、電流調整手段40内で電気的な閉回路を形成し、電流計48の電流値の表示を見ながら、可変抵抗43で調整して被削材10と切削工具30との間に流すべき電流を設定する。そして、電流値の調整が完了すると、3WAYスイッチ47の接点47bに接続することで、図1の破線に示すような電流調整手段40-ロータリコネクタ80-被削材10-切削工具30の電気的な閉回路が形成され、被削材10と切削工具30との間に調整された電流を流すことができる。またこの電流の微調整は、可変抵抗46で行う。
【0029】
そして、このような装置構成において、装置本体60に取り付けられた切削工具30と、前記装置本体60と、を電気絶縁状態にし、切削工具30と被削材10との間に所定の電流を流しながら、所定の切削条件で、切削工具30を用いて被削材10の切削を行う。
【0030】
また、本実施形態の被削材10は、B、N、及びAlを少なくとも含む快削鋼であり、Feを主材として、ヘキサ窒化ホウ素と、Alの単体を、含有させた金属材料である。このような材料を用いることで、切削時に、切削工具30の表面に、AlNからなる保護膜を形成することができる。
【0031】
また、切削工具の材質としては、超硬合金、サーメット、等が挙げられる。特に、AlNを含む切削工具は、AlNの保護膜と親和性がよくさらに好適である。
【0032】
そして、この快削鋼(BN快削鋼)の切削時には、工具の磨耗する面上に生成されるAlNからなる保護膜により磨耗が抑制されるが、快削鋼と切削工具との間に所定の電流を流しながら、快削鋼と切削工具とが接触して磨耗する工具の切削面にAlNの保護膜を形成させることで、工具の逃げ面及びすくい面の磨耗が低減され、工具の長寿命化を図ることができる。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の実施例1、2を比較例1,2と対比して説明する。
(実施例1)
実施例1-1:被削材には、表1に示すS45C-BN鋼を用い、切削工具には超硬工具P30(SNMN120408)を用いた。上述した実施形態の如く、切削工具と装置本体とを電気絶縁状態にし、切削工具から被削材に(この方向を正とする)一定の電流を流した。この状態において、切削速度200m/min、切り込み深さ0.5mm、送り速度0.1mm/rev、切削時間10分間、ドライ状態の(クーラントを使用しない)条件で、切削を行った。また電流値を0mA~20mAの範囲で切削を行った。
【0034】
実施例1-2:電流の流す方向を被削材から切削工具(負の方向)にした点で実施例1-1と異なり、その他は、実施例1-1と同じ条件で切削を行った。
【0035】
(比較例1)
比較例1-1:被削材に、表1に示すS45Cを用い、電流値を0mA~10mAの範囲で調整した点であり、その他は、実施例1-1と同様の条件で切削を行った。
【0036】
比較例1-2:電流の流す方向を切削工具から被削材(正の方向)にした点で比較例1-1と異なり、その他は、比較例1-1と同じ条件で切削を行った。
【0037】
【表1】
JP0004552010B2_000002t.gif

【0038】
これらの実施例1、比較例1においては、逃げ面磨耗VBと最大クレータ深さKTとは、調整した電流値ごとに測定した。この結果を図3(a)、(b)に示す。ここで、逃げ面磨耗VBは、図4に示すように、切削工具30と被削材10の接触により磨耗する、工具の逃げ面における切削方向の磨耗の長さを示している。また、最大クレータ深さKTは、工具すくい面において、切り屑10aにより工具すくい面が磨耗したときに形成されるクレータの最大深さを示している。
【0039】
図3の(b)に示すように、実施例1-1(▲)、実施例1-2(▽)の場合は、被削材と切削工具との間に5mA以上の電流を流すと、最大クレータ深さKTは減少した。また、被削材と切削工具との間に流した電流が10mA以下のときは、図3の(a)に示すように、逃げ面磨耗VBの値が減少し、逃げ面の磨耗が抑制されるが、電流値が10mAを超えると、逃げ面磨耗VBの値が増加した。また、実施例1-1(▲)と実施例1-2(▽)の逃げ面磨耗VB、最大クレータ深さKTの値は同程度であった。
【0040】
一方、比較例1-1(●)の場合は、電流値を増加させると、逃げ面磨耗VBの値は減少するが、最大クレータ深さKTは増加した。また、比較例1-2(○)の場合は、電流値を増加させると、最大クレータ深さKTは減少するが、逃げ面磨耗VBの値は増加した。
【0041】
(評価1)
上記結果から、実施例1のように、被削材にS45C-BN鋼を用いて、被削材と切削工具との間に電流を流した場合には、電流の方向がいずれの方向であっても、切削工具の寿命が向上することがわかった。特に、電流値を5mAから10mAの範囲に調整すると、逃げ面磨耗VB及び最大クレータ深さKTが共に減少し、工具の寿命が向上することがわかった。
【0042】
しかし、比較例1のように、被削材にS45Cを用いて、被削材と切削工具との間に電流を流した場合は、実施例1に対して逃げ面磨耗も最大クレータ深さも大きくなると共に、電流の方向に対しては、逃げ面磨耗VB又は最大クレータ深さKTのいずれか一方の磨耗が抑制されるのみであって、切削工具の寿命が向上するとは解せない。
【0043】
そして、実施例1が工具の磨耗が抑制された理由としては、特定の値の電流を流すことにより、被削材に含有されたAlとNの元素が化学反応を起こし、被削材が接触する磨耗しやすい切削工具のすくい面及び逃げ面(切削面)にAlNの保護膜が形成されることに起因すると考えられるし、その保護膜の形成は、電流の方向には、影響されないことが理解できる。
【0044】
(実施例2)
実施例2-1:切削工具から被削材に(正方向に)5mAの電流を流し、他の切削条件は実施例1-1と同じくし、切削速度を変えて切削を行った。
【0045】
実施例2-2:被削材から切削工具に(負方向に)5mAの電流を流し、他の切削条件は実施例2-1と同じくし、切削を行った。
【0046】
(比較例2)
比較例2:切削工具と装置本体とを電気絶縁状態とせずに、かつ、切削工具と被削材との間に、電流を流さなかった点が実施例2-1とは異なり、他の切削条件は実施例2-1と同じくして、切削を行った。
【0047】
これらの実施例2、比較例2においてせん断角φと切削抵抗とを、切削速度ごとに測定した。この結果を図5(a)、(b)に示す。尚、このせん断角φは、図4に示すように、切り屑10aと被削材10とで形成された角度である。ちなみに、このせん断角φが大きいほどと、切り屑厚さが小さくなり、被削性がよいことを示している。
【0048】
図5に示すように、実施例2-1(▲)、実施例2-2(▼)の場合は、比較例2(△)に比べ、せん断角φは大きくなり、さらに、切削速度100m/minから300m/minまでの間は、比較例2に比べ切削抵抗が小さかった。
【0049】
(評価2)
このような結果から、実施例2は、切削工具と装置本体とを電気絶縁状態にし、被削材と切削工具との間に、電流を流すことにより、切削工具の表面のAlNの保護膜が確実に形成され、その結果、せん断角φが大きくなって切り屑厚さが小さくなると共に切削抵抗も小さくなり、被削性が向上すると考えられる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。本実施形態では被削材-装置本体-切削工具を電気的な閉回路とした電流が流れないように電気絶縁体を設けたが、このような電流が流れないようにできるであれば、装置本体内部に電気絶縁体等を設けてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、切削工具と被削材との間に流れる電流を安定して流すために、電圧調整手段に直流電源を設けたが、変動なく電流を流すことができるのであれば交流電源を用いてもよい。
【0052】
さらに、本実施形態では、快削鋼として、B、N、及びAlを少なくとも含む快削鋼について説明したが、被削材に含有している元素により切削中に保護膜を形成することができるような鋼であるならば、特に鋼が限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る切削装置を説明するための模式図。
【図2】図1に示す電流調整手段の電気回路図。
【図3】本発明の一実施形態に係る実施例1と比較例1との実験結果を説明するためのグラフであり、(a)は、電流値と逃げ面磨耗との関係を示した図であり、(b)は、電流値と最大クレータ深さとの関係を示した図。
【図4】図3の実施例1及び比較例1の評価パラメータを説明するための図。
【図5】本発明の実施形態に係る実施例2と比較例2との実験の結果を説明するためのグラフであり、(a)は、切削速度とせん断角との関係を示した図であり、(b)は、切削速度と切削抵抗との関係を示した図。
【図6】従来の切削装置を説明するための模式図。
【符号の説明】
【0054】
1:切削装置、10:被削材、20:電気絶縁体、30:切削工具、40:電流調整手段、41:直流電源、42~46:抵抗、47:3WAYスイッチ、48:電流計、60:装置本体、80:ロータリコネクタ
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
5