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Specification :(In Japanese)金属イオンの分離方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P4548655
Publication number P2006-167564A
Date of registration Jul 16, 2010
Date of issue Sep 22, 2010
Date of publication of application Jun 29, 2006
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)金属イオンの分離方法
IPC (International Patent Classification) C02F   1/28        (2006.01)
B01J  20/04        (2006.01)
C22B  19/30        (2006.01)
C22B  30/04        (2006.01)
C22B  43/00        (2006.01)
FI (File Index) C02F 1/28 B
B01J 20/04 A
C22B 19/30
C22B 30/04
C22B 43/00 102
Number of claims or invention 4
Total pages 10
Application Number P2004-362313
Date of filing Dec 15, 2004
Date of request for substantive examination Oct 3, 2007
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
【識別番号】000233734
【氏名又は名称】株式会社アステック入江
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】野口 文男
【氏名】柿本 幸司
【氏名】橘 武史
【氏名】川田 勝三
【氏名】阪本 尚孝
Representative (In Japanese)【識別番号】100077263、【弁理士】、【氏名又は名称】前田 純博
Examiner (In Japanese)【審査官】齊藤 光子
Document or reference (In Japanese)特開昭49-009056(JP,A)
特開2005-013976(JP,A)
Field of search C02F1/28
B01J20/00-34
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
亜鉛族元素イオンを含む排水中に、マグネシウム又はマグネシウム合金からなる吸着材を添加し、水とマグネシウムの反応によりマグネシウム表面に生成する水酸化マグネシウムの層に、該亜鉛族元素イオンを吸着させ、該亜鉛族元素イオンを排水から分離することを特徴とする金属イオンの分離方法。
【請求項2】
マグネシウム合金が、Al、Ca、Zn、Mnの少なくとも1つとの合金である請求項1記載の金属イオンの分離方法。
【請求項3】
吸着材が、マグネシウム又はマグネシウム合金の粉末である請求項1記載の金属イオンの分離方法。
【請求項4】
吸着材が、マグネシウム又はマグネシウム合金のリボンである請求項1記載の金属イオンの分離方法。

Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、有害な金属イオンあるいは有用な金属イオンを含む排水又は廃水から、これらの金属イオンを分離除去あるいは分離回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴミ焼却場、めっき工場、精練工場等の排水(以下、特に区別しない限り廃水、地下水、溶出液等金属イオンを含む水性液を意味する)には、人体に有毒な、例えば、水銀、鉛、カドミニウム、銅、砒素、ニッケル、クロム、銀等の重金属が含まれている。また、生物にとって猛毒の元素である砒素は、通常、熱水、熱気鉱床の旧鉱山廃水、温泉水や地熱発電所等の排温水等の地下水や、産業廃棄物、都市ゴミ焼却灰・飛灰、電気炉製鋼ダスト等にも含有されている。そして、これら金属の除去に当たっては、通常、金属イオンを含む排水あるいは金属イオンを溶出した排水から、金属を分離除去する方法が取られている。また、例えば、産業的に有用・有価な、亜鉛、銀、金、ニッケル、クロムの回収にも、通常、これらの金属イオンを溶出した排水から、金属を分離回収する方法が採用されている。
【0003】
これまで、金属イオンの分離方法としては、多くの方法が提案されている。例えば、比較的最近のものとして、特許文献1~3が挙げられる。しかし、それぞれの方法には、一長一短があった。

【特許文献1】特開2004-25166号公報
【特許文献2】特開2002-113473号公報
【特許文献3】特開2001-252675号公報
【0004】
近年、パソコン等のハウジングにマグネシウム合金が使用されるようになったが、マグネシウム合金のリサイクルが課題となっていることから、このことと、本発明者らが知見した、マグネシウムが水溶液中で変化生成するMg(OH)2が、種々の元素を吸着する能力があるという事実を組合わせて、本発明者らは、排水中の有害元素の除去、有価元素の回収という観点から、マグネシウム合金の有効活用について検討してきた。そして、ホウ素を除去する方法については、既に提案している(非特許文献1)。なお、特許文献4には、塩類濃度の高い排水に、マグネシウムイオンとして塩化マグネシウムあるいは硫酸マグネシウムの溶液を添加し、水酸化ナトリウム溶液でpHを10.7~11.2に調節して、共沈法によってホウ素及びマグネシウムの不溶解物質を生成させ、これを固液分離してホウ素の除去を行う方法が提案されているが、後述のごとく、マグネシウムの金属を用いる本発明は、この方法とは異なるものである。

【非特許文献1】資源・素材学会九州支部「講演要旨集」54-56頁、平成16年5月28日
【特許文献4】特開2001-225081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、マグネシウム又はマグネシウム合金を用いた排水中の有害元素の除去、有価元素の回収の方法を確立することにより、マグネシウム合金のリサイクル、ひいてはマグネシウム又はマグネシウム合金の有効活用の方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、マグネシウムは水溶液中で水と反応し、マグネシウムの表面にMg(OH)2が生成するが、この際に種々の元素を吸着する能力があることを知見し、排水中の有害元素の除去、有価元素の回収という観点から、マグネシウム合金の有効活用について検討してきた。即ち、本発明は、金属イオンを含む排水中に、マグネシウム又はマグネシウム合金を主成分とする吸着材を添加し、水とマグネシウムの反応によりマグネシウム表面に生成する水酸化マグネシウムの層に、該金属イオンを吸着させ、該金属イオンを排水から分離することを特徴とする金属イオンの分離方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法は、今後多量の発生が予想されるMgスクラップの有効利用に活用できる。また、従来の各種方法に比べ、排水中の有害元素の除去効率又は有価元素の回収効率が高い。そして、吸着される元素の大部分は、Mg基材の表面のMg(OH)2層に固定化されるので、沈殿物の発生が少なく、沈殿濾過等の処理が軽減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、金属イオンを含む廃水、地下水、溶出液等の排水中に、マグネシウム又はマグネシウム合金を主成分とする吸着材を添加し、水とマグネシウムの反応によりマグネシウム表面に生成する水酸化マグネシウムの層に、この金属イオンを吸着させ、この金属イオンを排水から分離除去あるいは分離回収する方法である。そして、本発明の対象とする有害あるいは有用・有価な金属イオンとしては、例えば、亜鉛、カドミウム、水銀、砒素、鉛、クロム、アルミニウム、スズ、アンチモン、マンガン、ニッケル、コバルト、金、銀、白金のイオンが挙げられる。中でも、特に、亜鉛族元素、即ち、周期表12属の亜鉛、カドミウム、水銀のイオンが好適である。また、対象とする金属イオンとしては、両性元素、即ち、亜鉛、鉛、アルミニウム、スズ、アンチモン等のイオンも好適である。
【0009】
本発明において用いられる吸着材は、マグネシウム又はマグネシウム合金を主成分とする材料からなる。マグネシウム合金は、マグネシウム成分を85%以上含有する合金が好ましい。そして、特に、マグネシウムとAl、Ca、Zn、Mnの少なくとも1つとの合金であるものが好ましい。
【0010】
吸着材の形態は特に制限されるものではなく、例えば、マグネシウム又はマグネシウム合金の粉末、リボン、薄片状の形で、排水に混合して金属イオンを吸着させる。あるいは、マグネシウム又はマグネシウム合金を、多孔質のフィルターに加工して使用することもできる。フィルターは、マグネシウム又はマグネシウム合金粉末を用いて、多孔質に焼結したものでも良いし、あるいは、マグネシウム又はマグネシウム合金の繊維、リボン、薄片を無作為に堆積させた、いわゆる不織布の形でも良い。不織布は、必要に応じて焼結しても良い。本発明において、排水中に吸着剤を添加するとは、多孔質のフィルターや不織布形状の吸着剤に、排水を接触させるやり方も含むものである。
【0011】
本発明においては、金属イオンを含む排水中に、マグネシウム又はマグネシウム合金を主成分とする吸着材を添加する際に、マグネシウムの濃度を高め、水酸化マグネシウムの生成量を高めるために、マグネシウムの塩類を添加しても良い。対象とする金属イオンの種類によっては、塩類の添加が好ましい場合もある。マグネシウム塩類としては、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、又はそれらの混合物が好ましい。
【0012】
本発明においては、金属イオンの種類と金属イオンを含む排水のpHによって、金属イオンの吸着と分離の状況が変化する。例えば、金属が亜鉛の場合、亜鉛イオンの疑似排水を使用し吸着実験を行った。亜鉛濃度を50ppmと一定にし、溶液100ml分取し、まずpHを調整後、1~2mm程度の切削片状の金属マグネシウムを1g添加して1時間撹拌した。このpHを初期pHとし、初期pH=1~13まで変化させた。その結果、初期pH=1~12までは、亜鉛イオンをほぼ100%回収できることがわかった。マグネシウムの添加方法について検討したところ、pH調整後に加えても、pH調整前に加えても回収率はほぼ100%と変わらなかった。これは、時間が1時間と長いことから、十分吸着されたものと考えられる。しかし、pH調整前にマグネシウムを添加すると、pH調整中にマグネシウムが溶解し反応が始まる。更に、高濃度の廃水を想定して、初期pH=1と初期pH=6について、亜鉛濃度を100ppm、500ppmと濃度を高くした場合の亜鉛回収率を見ると、各溶液100mlに対し、切削片状の金属マグネシウムを1g添加した場合でも、完全に100%回収できることがわかった。
【0013】
金属が砒素の場合には、pH7以上の中性からアルカリ性の、砒素イオンを含む排水の場合に、有効、且つ、効率良く砒素が吸着除去される。
【0014】
金属イオンを含む排水に吸着材を添加し処理する際の条件は、特に限定されるものではないが、通常は、10~30℃の常温が適当である。また、処理系を適当に攪拌するのが好ましい。
【0015】
本発明において、マグネシウム基材の表面のMg(OH)2層に吸着された有価金属は、マグネシウムと分離しなければならないが、このためには、金属の種類に応じて、適宜公知の方法を採用すれば良い。例えば、吸着された金属イオンが亜鉛の場合、マグネシウムも亜鉛も水酸化物あるいは酸化物の形態であろうと思われることから、一旦希硫酸で溶解した後、煮沸しながらH2Sガスを吹き込み、亜鉛をZnS沈殿として沈殿分離するか、希硫酸で溶解後、亜鉛精錬所に送り電解採取をする方法を採用できる。Mg(OH)2層に吸着された有害金属が溶出しない場合には、そのまま埋め立て等の廃棄処分にすることもできる。
【実施例1】
【0016】
[亜鉛の分離回収の例]
マグネシウム(以下Mg)による、疑似排水(Zn濃度:50ppm)中からの亜鉛(以下Zn)の回収率を、初期pHとの関係、及び、Mgの添加とpH調整の時期との関係で検討した。亜鉛濃度を50ppmと一定にし、溶液100ml分取し、1~2mm程度の切削片状の金属マグネシウムを1g添加して1時間撹拌した。
【0017】
図1は、pH調整後Mgを添加した場合の、初期pHの影響を示している。Zn吸着率は、初期pH=1から12までほぼ100%、初期pH=13で約30%、平衡pHは、初期pH=2から10までは、平衡pH=10と一定値を示していることがわかる。それ以上の初期pHでは、初期pHの増加と共に上昇した。Mgの重量変化は、pH=2以上でわずかな重量増加を示すのに対し、pH=1では-0.1gと著しい重量減を示した。これは、pHが低い、即ち酸濃度が高いためMgの溶解が促進したものと考えられる。この場合、著しい水素ガスの発生が観察された。
【0018】
図2は、pH調整後Mgを添加した場合の、溶液中のMgの濃度変化を示している。溶液中のMgの濃度変化は、pH=1で1,500ppmと非常に高い値を示し、Mgが溶解していることがわかる。pH=2から10までは、ごくわずかな減少を示した。そして、pH=10以上ではMgの濃度変化は0であった。図1および図2を併せ考察すると、平衡pH、Mgの重量変化、溶液中のMgの濃度変化から、反応の様子は3つの範囲に分けられ、Znの吸着機構も3つのグループに分けられることがわかった。pH=1の領域では、Mgの重量減が著しく、また、水素ガスの発生が激しいことから、水素ガス発生に伴うMg(OH)2の生成が考えられる。さらにpH=2以上でも平衡pHの上昇から加水分解によるMg(OH)2の生成が考えられる。
【0019】
図3は、Mgを添加した後pH調整した場合の、初期pHの影響を示している。Zn吸着率は、初期pH=1から12までほぼ100%、初期pH=13で約80%で、pH=1から12間でほぼ完全にZnを回収できることがわかった。平衡pHは、初期pH=1で9に、初期pH=2~10で平衡pH=10と一定値を示した。それ以上の初期pHでは、初期pHと同じ値を示した。液中のMg濃度は、pH=1で3,000ppm、pH=2で250ppm、それ以上で150ppm程度、pH=13で0ppmを示した。pH=1で液中のMg濃度が非常に高いのは、Mgを添加した後pH調整したため、pH調整中にかなりのMgが溶解したものと推察される。
【0020】
図4は、Mgを添加した後pH調整した場合の、Mgの重量変化を示している。Mgの重量変化は、初期pH=1で著しい重量減を示した。その後、初期pHの増加と共にわずかな重量増加を示すことがわかる。試験後Mg表面のX線回折の結果、Mg表面にはMg(OH)2の生成が確認された。
【0021】
以上の実験から、Mgによる、疑似排水(Zn濃度:50ppm)中からのZnの回収率を、初期pHとの関係で求めると、pH=1から12までは、ほぼ100%回収できるが、pH=13では30%程度となり、Znを完全には回収出来ないことがわかった。Znの吸着率、Mgの溶出挙動、沈殿量などから、MgによるZnの吸着のメカニズムは、次のように、(a)pH=1~2、(b)pH=2~10、(c)pH=10以上の3つの領域に分けられることがわかった。
【0022】
(a)pH=1~2では、
Mg+2H+→Mg2++H2↑ {Mg→Mg2++2e、2H++2e→H2↑} (1)
Mg2++2OH→Mg(OH)2↓ (2)
このpH領域では(1)式のようにMgが溶解する際にH2ガスの発生を伴う。そこで、Mgの周りではH+イオンが減少し、その代わりにOH-イオンが増加する。そのため(2)式のように加水分解が進行しMg(OH)2
が生成する。ここで生成したMg(OH)2に、Znが吸着されることにより、回収率が高かったものと考えられる。
【0023】
(b)pH=2~10では、(3)式、又は、(4)、(5)式のようにMg(OH)2のほか、MgOの生成が認められる。Znは(4)式で生成するMg(OH)2に吸着され、回収率がほぼ100%を示したものと考えられる。
Mg+H2O→MgO↓+H2 (3)
Mg+2H2O→Mg(OH)2↓+H2 (4)
Mg(OH)2→MgO↓+H2O (5)
【0024】
(c)pH=10以上では、アルカリ性が強いことから容易に加水分解し(3)~(5)式のようにMg(OH)
2又はMgOが生成する。Znはここで生成したMg(OH) 2に吸着されるが、Zn吸着率はpH=2~10領域に比べ低い値を示した。これはZnが両性金属であるため高アルカリ性領域で再溶解も進み、若干吸着率が低下したものと考えられる。
【実施例2】
【0025】
[砒素の分離回収の例1]
Mgによる、疑似排水(As(3価、5価)濃度:2ppmおよび10ppm)中からの砒素(以下As)の回収率を、初期pHとの関係、及び、Mgの添加とpH調整の時期との関係で検討した。先ず、例1の本実験では、As(3価)濃度を2ppmと一定にし、溶液100ml分取し、1~2mm程度の切削片状の金属Mgを1g添加して1時間撹拌した。
【0026】
図5は、pH調整後Mgを添加した場合の、初期pHの影響を示している。As吸着率は、大体90%前後で、初期pH=10以上で若干低下する程度である。平衡pHは、初期pH=10まではほぼ10で一定値を示した。それ以上の初期pHでは、初期pHの増加と共に若干上昇した。Mgの重量変化は、初期pH=1、2で高い値を示し、初期pHの上昇と共に低下し、pH=3でほぼ0になった。これらのことから、初期pH=1~3まで、3~10まで、10~12までと3つの領域でAsの吸着機構が異なることが予想される。
【0027】
図6は、pH調整後Mgを添加した場合の、Mg添加量の影響を示している。Asの吸着率は、pH=12で影響が大であった。Mgの重量変化は、pH=1、2で影響が大であった。pH=6、12では、Mgの溶出は起こらなかった。
【0028】
図7は、Mgを添加した後pH調整した場合の、初期pHの影響を示している。Asの吸着率は、初期pH=1で80%、pH=2~11までほぼ100%、初期pH=12で約20%と低下した。初期pH=1~10について平衡pHを調べてみると、ほぼ10で一定値を示した。それ以上の初期pHでは、初期pHと同じ値を示した。液中のMg濃度は、pH=1で3,000ppm、pH=2で250ppm、それ以上で150ppm程度、pH=13で0ppmを示した。
【0029】
図8は、Mgを添加した後pH調整した場合の、Mgの重量変化を示している。Mgの重量変化は、初期pH=1~2では重量減が生じた。これは酸によるMgの溶解のためと考えられる。そこで、液中のMg濃度を測定すると、pH=1で2,200ppm、pH=3で40ppm、それ以上で15ppm程度、pH=11、12で0ppmを示した。
【0030】
全自動微少部分析装置EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)によりMg表面に沈積した生成物の元素分析を行った。その結果も含めて以下に考察する。pH=1の場合、沈殿物および、Mg表面にAsがかなり検出された。即ち、Mg金属表面の層状の析出物中に、Asの存在が確認された。これはpH=6の場合もほぼ同様であった。しかし、pH=12の場合は、Asは極わずか検出され、しかも層状の膜とMg母材の間に存在していた。膜は、pH=1、6の場合の膜とは異なり、Mgリッチな強硬な膜であった。この膜はMgとアルカリとの反応で、酸化膜MgOが生成したものと考えられる。Asは、造膜過程で膜とMg母材の間に出来るMg(OH)2層に吸着されるため、極わずかしか吸着されなかったものと考えられる。
【0031】
[砒素の分離回収の例2]
本実験例2では、As(3価)濃度を10ppmと一定にし、溶液100mlを分取し、初期pH=1に調整した後、1~2mm程度の切削片状の金属マグネシウムを1g添加したときの、溶液中のAs濃度、アルシンガス(以下AsH3)発生量、並びにAsH3累積量、及び溶液中のAs濃度の変化を、撹拌時間に対して測定した。結果を図9に示した。
【0032】
溶液中のAs濃度は、撹拌時間と共に放物線的に減少していき30分で0ppmに達した。即ち、完全に吸着回収されたことを示す。しかしながら、初期pH=1と低い場合は、H2 ガスの発生を伴いながらMgが溶解していく。このH2ガスが、AsH3の発生源となる。そこで、Mg添加直後のAsH3発生量を調べると、撹拌時間と共に発生量は増加し、2分で最高値を示し、以後14、15分で発生が止まることがわかった。この発生量の累積値を計算すると、放物線的に増加し14、15分で平衡値に達した。
【0033】
このことから、最初に示した溶液中のAs濃度の曲線にはこのAsH3の量も含まれていることがわかる。図10は、溶液中の総As濃度曲線(—●—印)とAsH3発生量曲線(—▲—印)を、同一図に示したものである。これから分る様に、撹拌時間9分でみると、沈殿に吸着されたAsとAsH3ガスとして放出されたAs量の比は3:1となっている。即ち、撹拌初期の10分から15分間に減少するAs量の約1/4程度は、AsH3ガスによる減少といえる。ここで発生したAsH3ガスは、猛毒であるので実操業では注意が必要である。
【0034】
以上のことから、MgによるAsの吸着機構は以下の様に考えられる。廃水中のAsにはAs(3価)、
As(5価)があり、一般にAs(5価)の方が水酸化物沈殿に吸着され易いといわれているが、本試験ではAs(3価)でも十分に吸着回収されている。
【0035】
(a)pH=1~2では、
Mg+2H+→Mg2++H2↑ {Mg→Mg2++2e 2H++2e→H2} (1)
Mg2++2OH→Mg(OH)2↓ (2)
ここで生成したMg(OH)2に、Asが吸着される。初期pH=1~2と低い場合は、Mgが溶解する際、H2ガスの発生を伴う。このH2ガスが、(6)式のようにAsH3の発生源となる。As(3価)は、酸性領域ではHAsO2の形態をとることから(6)式とした。
HAsO2+3H2→H3As↑+2H2O (6)
【0036】
(b)pH=2~10では、(3)式または、(4)、(5)式のようにMg(OH)2のほか、MgOの生成が認められる。Asは(4)式で生成するMg(OH)2に吸着され、ほぼ100%の回収率を示したものと考えられる。
Mg+H2O→MgO↓+H2 (3)
Mg+2H2O→Mg(OH)2↓+H2 (4)
Mg(OH)2→MgO↓+H2O (5)
【0037】
(c)pH=10~12では、アルカリ性が強いことから容易に加水分解し(3)~(5)式のようにMg(OH)
2 またはMgOが生成する。しかしながら、As(3価)はこのように高pH領域ではAsO2-イオンの存在形態を示し、このイオンは吸着され難いものと推察され、吸着率が低かったものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
例えば、亜鉛メッキ鋼板は現在大量に生産されており、そのため、メッキ廃液中の亜鉛の回収が、この業界では緊急の課題となっている。本発明の方法によれば、マグネシウム合金をリサイクル可能な吸着材として有効利用することによって、かかる問題を解決できる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】Znの例で、pH調整後Mgを添加した場合の、初期pHの影響を示す図である。
【図2】Znの例で、pH調整後Mgを添加した場合の、溶液中のMgの濃度変化を示す図である。
【図3】Znの例で、Mgを添加した後pH調整した場合の、初期pHの影響を示す図である。
【図4】Znの例で、Mgを添加した後pH調整した場合の、Mgの重量変化を示す図である。
【図5】Asの例で、pH調整後Mgを添加した場合の、初期pHの影響を示す図である。
【図6】Asの例で、pH調整後Mgを添加した場合の、Mgの添加量の影響を示す図である。
【図7】Asの例で、Mgを添加した後pH調整した場合の、初期pHの影響を示す図である。
【図8】Asの例で、Mgを添加した後pH調整した場合の、Mgの重量変化を示す図である。
【図9】攪拌時間とAsH3の発生量等の関係を示す図である。
【図10】溶液中の総As濃度とAsH3発生量との関係を示す図である。
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図4】
2
(In Japanese)【図3】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
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(In Japanese)【図7】
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(In Japanese)【図8】
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(In Japanese)【図10】
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(In Japanese)【図9】
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