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Specification :(In Japanese)核酸、ポリペプチド、及び当該核酸を含む組み換えベクター

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P4085166
Publication number P2005-270021A
Date of registration Feb 29, 2008
Date of issue May 14, 2008
Date of publication of application Oct 6, 2005
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)核酸、ポリペプチド、及び当該核酸を含む組み換えベクター
IPC (International Patent Classification) C12N  15/09        (2006.01)
C07K  14/08        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12N   7/04        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
C12Q   1/70        (2006.01)
FI (File Index) C12N 15/00 ZNAA
C07K 14/08
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/00 A
C12N 7/04
C12Q 1/68 A
C12Q 1/70
Number of claims or invention 9
Total pages 13
Application Number P2004-089871
Date of filing Mar 25, 2004
Exceptions to lack of novelty of invention (In Japanese)特許法第30条第1項適用 平成16年3月16日 日本植物病理学会発行の「平成16年度日本植物病理学会大会プログラム・講演要旨予稿集」に発表
Date of request for substantive examination Mar 25, 2004
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】夏秋 知英
【氏名】小坂 能尚
【氏名】小堀 崇
Representative (In Japanese)【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100135172、【弁理士】、【氏名又は名称】野田 裕子
【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100100125、【弁理士】、【氏名又は名称】高見 和明
【識別番号】100101096、【弁理士】、【氏名又は名称】徳永 博
【識別番号】100086645、【弁理士】、【氏名又は名称】岩佐 義幸
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
Examiner (In Japanese)【審査官】三原 健治
Document or reference (In Japanese)Mol. Plant Microbe Interact.,2002年 7月,vol.15, no.7,p.647-653
Mol. Plant Microbe Interact.,2002年 9月,vol.15, no.9,p.947-955
Mol. Plant Microbe Interact.,2003年 3月,vol.16, no.3,p.261-267
Entrez Protein Accession no. AJ511989,2002年12月 3日,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?25173581:OLD13:1327183
Field of search C12N 15/00-15/90
C07K 14/00-14/19
UniProt/GeneSeq
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
MEDLINE/CA/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus(JDream2)
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
配列表の配列番号1に示す、塩基配列番号1—3043で示される塩基配列からなり、ジーンサイレンシングのサプレッサーとして機能するポリペプチドをコードする核酸。
【請求項2】
配列表の配列番号3に示す、アミノ酸配列番号1110で示されるアミノ酸配列からなり、ジーンサイレンシングのサプレッサーとして機能するポリペプチド。
【請求項3】
キュウリモザイクウイルス(以下、CMVともいう)由来であり、弱毒性を有する請求項2記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列表の配列番号1に示す、塩基配列番号1—3043で示される塩基配列の2553番目の塩基がCである塩基配列からなる核酸を含むCMVにおいて、該2553番目の塩基をCからTへ点変異させることを特徴とするCMVの突然変異株の生産方法。
【請求項5】
請求項1記載の核酸を含む組換えベクター。
【請求項6】
請求項1記載の核酸又は請求項5記載の組換えベクターを宿主細胞へ導入して得られる形質転換体。
【請求項7】
配列表の配列番号4に示す、塩基配列番号1—21で示される塩基配列からなる核酸選別用プライマー。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸選別用プライマーを用いて、キュウリモザイクウイルス(CMV)の毒性を調べることを特徴とするCMVの毒性検査方法
【請求項9】
請求項7に記載の核酸選別用プライマー、及び配列表の配列番号5に示す、塩基配列番号1—21で示される塩基配列からなる核酸選別用プライマーを用いて、キュウリモザイクウイルス(CMV)の毒性を調べることを特徴とするCMVの毒性検査方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸、ポリペプチドに関し、特に植物ウイルスに係る核酸、ポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
植物ウイルスは世界中で900種以上といわれ、同じ種類のウイルスでも,植物に感染して、強い症状を引き起こすものもあれば、弱いものもある。当該(弱い)弱毒ウイルスを予め植物に予防接種しておくと、(強い)強毒ウイルスが感染しても植物が保護されるという、あたかも、ワクチン様の作用を有すること、言うなれば植物ワクチンとして作用することが明らかにされている。
【0003】
例えば、このようないわゆる植物ワクチンとして、サテライトRNAを利用した(もの)キュウリモザイクウイルス(以下、CMVともいう)が知られている(佐山春樹(2003)植物ワクチン 化学と生物 41(7)454~459頁)。これは、現在までに実用化されたCMVの弱毒ウイルス(ワクチン)を総説しつつ、サテライトRNAを着目し、ワクチン効果を達成せんとするものである。サテライトRNAは、CMVに付随する(或いは寄生する)短いRNAがCMV-RNAの増殖を抑制する性質を利用したものである。

【非特許文献1】(佐山春樹(2003)植物ワクチン 化学と生物 41(7)454~459頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のサテライトRNAを用いた技術においては、サテライトRNAの種類のよって寄生できるCMV株や寄生しにくいCMV株、および増殖しやすい植物種や増殖しにくい植物種が存在するという、相性の問題がある。また、サテライトRNAには感染作物でCMVの病徴を激しくするものもある。このため、ある作物に適合したCMVのワクチン株を選抜するためには、その作物に適応した弱毒サテライトRNAと、そのサテライトRNAの増殖をサポートできるCMVの両方を見つけなければならない。その作物に適応したCMVはすぐにみつかるが、適応した弱毒性のサテライトRNAを見つけるのは難しいという問題点を有する。
【0005】
したがって、すべてのCMV株に簡単に弱毒性を付与することができる技術が望まれている。
【0006】
また、遺伝子配列のどの部分において、弱毒強毒性について関与しているのか未だ不明である。当該部分を明らかにすることができれば、今後の植物ワクチンの新たな展開を提供し得るが、このような解明はなされていない。
【0007】
そこで、本発明は、ウイルスの弱毒化の機構を明らかにすると共に、より安全で有用な植物ワクチンを提供し得る、核酸、アミノ酸配列を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、発明者らは、近縁のウイルスや系統間において、最初に接種したウイルスが、後から接種したウイルスの増殖を阻害する現象に着目し鋭意研究を重ねた結果、本発明の核酸、アミノ酸配列、突然変異株の生産方法を見出すに至った。
【0009】
すなわち、本発明の核酸は、配列表の配列番号1に示す、塩基配列番号1—3043で示される塩基配列からなり、ジーンサイレンシングのサプレッサーとして機能するポリペプチドをコードすることを特徴とする
【0010】
また、本発明のポリペプチドは、配列表の配列番号3に示す、アミノ酸配列番号1110で示されるアミノ酸配列からなり、ジーンサイレンシングのサプレッサーとして機能することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のポリペプチドの好ましい実施態様において、キュウリモザイクウイルス(以下、CMVともいう)由来であり、弱毒性を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のCMVの突然変異株の生産方法は、配列表の配列番号1に示す、塩基配列番号1—3043で示される塩基配列の2553番目の塩基がCである塩基配列からなる核酸を含むCMVにおいて、該2553番目の塩基をCからTへ点変異させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の組換えベクターは、請求項1記載の核酸を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の形質転換体は、請求項1記載の核酸又は請求項5記載の組換えベクターを宿主細胞へ導入して得られることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の核酸選別用プライマーは、配列表の配列番号4に示す、塩基配列番号1—21で示される塩基配列からなることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のCMVの毒性検査方法は、請求項7に記載の核酸選別用プライマーを用いて、キュウリモザイクウイルス(CMV)の毒性を調べることを特徴とする
【0017】
また、本発明のCMVの毒性検査方法は、請求項7に記載の核酸選別用プライマー、及び配列表の配列番号5に示す、塩基配列番号1—21で示される塩基配列からなる核酸選別用プライマーを用いて、キュウリモザイクウイルス(CMV)の毒性を調べることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、CMVの弱毒化機構を提供することができるので、弱毒化に関する新たな研究材料を提供し得るという有利な効果を奏する。
【0019】
また、本発明の核酸、ポリペプチド、及び突然変異体などを利用することにより、植物を保護する、いわゆる植物ワクチンとして有効に利用可能であるという有利な効果を奏する。しかも本来天然に存在する弱毒ウイルスを利用するものであり、その安全性も高いという有利な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の核酸は、以下の(a)、又は(b)、すなわち、(a)配列表の配列番号1に示す、塩基配列番号1—3043で示される塩基配列からなる核酸、
(b)前記塩基配列番号1-3043の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記塩基配列番号の2553番目の塩基がTであり、前記塩基配列と80%の相同性を有する核酸、からなる。なお、核酸が、RNAの場合も本発明に包含されるが、この場合には、2553番目の塩基はUである。
【0021】
当該核酸情報を用いて、たとえばRT-PCR法やRT-PCR-RFLP法を利用することにより、植物が弱毒性のキュウリモザイクウイルス(CMV)に感染しているか否かを検討することができる。すなわち、配列表の配列番号1に記載されている核酸は、弱毒性を示すCMV由来のものであり、当該核酸情報を用いることにより、感染しているCMVが強毒性か弱毒性かの識別、あるいはCMVの弱毒株の選抜に利用できる。あるいは当該核酸はCMVのRNA2なので、他のCMVのRNA1とRNA3と混合することにより、新たな弱毒株(ワクチン株)を作製できる。さらに、当該核酸を植物に導入して組換え植物を作製し、CMVに対する抵抗性を付与する、などの有用性を有する。この点についてさらに説明すれば、以下のとおりである。
【0022】
まず基本的にCMVのワクチンとして利用できる弱毒株の選抜に利用することができる。ここではさらにふたつ考えることができる。まず、本発明の核酸あるいはポリペプチドに関する情報をもとに、自然界に分布しているCMVあるいは突然変異が起きやすいような処理をしたCMV感染植物から、ワクチンとして利用できる弱毒株を選抜できる。本発明の2bの46番目のアミノ酸がシステインになると弱毒性になることは証明済みなので、PCR法、RFLP、プローブよるスクリーニング法等でこの変異を有する株を検出すれば、接種試験をしなくてもその分離株は弱毒であることがわかるので、優良ワクチンを選抜するのが迅速になる。RFLP法を利用する場合には、制限酵素として、例えば、GCGC配列を切断する制限酵素HhaIなどを挙げることができる。2553番目を含む近傍の塩基配列を含むcDNA断片を増幅してHhaIで処理すると、弱毒株由来のcDNAは切断されず、強毒株由来のcDNAは切断される。これを利用すれば、弱毒及び強毒の選別が可能となる。
【0023】
もうひとつは、CM95のようにすでにこの変異を有する株を他の強毒株と混合感染して、そこから単一局部病斑分離法でCMVを分離すると、弱毒変異を有するRNA2と強毒株由来のRNA1とRNA3を持った新しい弱毒株を選抜することが出来る。
【0024】
ここで、単一局部病斑分離法について説明すると、単一局部病斑分離法とは、局部病斑一つを次の検定植物に接種して感染させることをいう。すなわち、CMVをキノアやツルナという植物に汁液接種すると、局部病斑というものを形成する。この過程を数回繰り返すと、遺伝的に純粋なCMVを分離することが出来る。一般に、野外から採集してきたCMV感染植物には、数種類の塩基配列が異なるCMVが混合感染している状態になっていると考えられるので、混合感染の状態から純粋なCMVにするために単一局部病斑分離法を使うことができる。
【0025】
こうして新しい弱毒株を選抜し、ワクチン効果を検査した上で、新しいワクチン株として利用できる。このとき、本発明の情報および2bタンパク質の弱毒変異を利用することになる。
【0026】
また、ワクチンとして利用する場合は、CMVでは汁液接種(あるいは機械的接種)といって、CMVを含む液を植物に擦り付ける方法で行うことができる。すなわち、ウイルス液を綿に染み込ませ、葉には小さい傷をつけるためにカーボランダムという炭素の粉を撒いておき、上から軽くこする。こうすると、傷口からウイルスが植物細胞に侵入して感染させることが可能となる。なお、ローラー法や、タキイ種苗の開発した接種装置など、大量の苗にワクチンを汁液接種する方法はいくつか存在し、これらを利用しても良い。
【0027】
植物においてもヒトや家畜と同じようにウイルスそのものをワクチンとして接種して植物に抵抗性を付与することができるので、ワクチンそのもの及びその作製と2段階で本発明の知識が必要である。
【0028】
また、当該核酸やポリペプチドを遺伝子組換え技術で植物に組み込んでしまうという方法がある。この場合、通常のアグロバクテリウム法で当該核酸(あるいはその一部)を組み込んだ遺伝子組換え植物を作製すると、当該2bタンパク質を発現する組換え植物が出来る。この組換え植物は、CMVに対して抵抗性になる。
【0029】
なお、前記配列表の配列番号1に示す塩基配列と、80%の相同性、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有するものも本発明に含まれる。これらによっても、プローブ等としてスクリーニングに利用することができるからである。
【0030】
なお、本明細書において、RNAから塩基配列決定をできないので、DNAに変換(cDNA)(逆転写)してから配列決定している。しかしながら、自然界においては、CMVはRNAウイルスとして存在しており、本明細書の配列表の配列番号1に記載のTがUになった配列も、記載しないが、本発明の核酸の範囲に含まれるものである。
【0031】
ここで、CMVについて簡単に説明すると以下のようである。キュウリモザイクウイルス(Cucumber mosaic virus,以下CMV)はブロモウイルス科(Bromoviridae)ククモウイルス属(Cucumovirus)に分類され、3分節のss(+)RNAをゲノムとしてもつ、直径約29nmの正二十面体植物病原ウイルスである。CMVが宿主とする植物は、ウリ科、アブラナ科、ナス科などで1000種を超え、その宿主範囲は植物ウイルス最大とされている(Palukaitis et al.,1992)。またしばしば各種野菜類や花卉類に感染して激しいモザイク症状や枯死を引き起こし、生産量や商品価値の低下をもたらす。CMVには宿主域や病徴の異なる系統や変異株が数多く報告されている。これらの分類には血清学的性質の違いとゲノムRNAの塩基配列相同性により、サブグループIA、IB、IIの3つのサブグループに大別される。このようなCMVウイルスの弱毒化のメカニズムを解明できれば、植物ワクチンをはじめ今後の研究に大きな展望を与えることが予想される。
【0032】
次に、本発明のポリペプチドについては、以下の(a)、又は(b)、すなわち、(a)配列表の配列番号2に示す、アミノ酸配列番号1-857で示されるアミノ酸配列、
(b)(a)のアミノ酸の一部が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、からなる。このように、アミノ酸の一部が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸であっても、配列表の配列番号2に記載されたアミノ酸配列と同様に、例えば、プローブとして免疫スクリーニング等に利用することができるので、本発明のポリペプチドに含まれる。
【0033】
また、本発明のポリペプチドは、以下の(a)又は(b)に示すアミノ酸配列からなることを特徴とする。
(a)配列表の配列番号3に示す、アミノ酸配列番号1110で示されるアミノ酸配列。
(b) (a)のアミノ酸の一部が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列。このように、アミノ酸の一部が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸であっても、配列表の配列番号3に記載されたアミノ酸配列と同様に、例えば、プローブとして免疫スクリーニング等に利用することができるので、本発明のポリペプチドに含まれる。



【0034】
また、好ましい実施態様において、本発明のポリペプチドは、キュウリモザイクウイルス(以下、CMVともいう)由来であり、弱毒性を有する。本発明のポリペプチドの利用については、上述したとおりである。例えば、本発明のポリペプチドの情報を用いて、弱毒、強毒株の選別を行い、選別して得られた弱毒株を植物に接種すれば、植物ワクチンとして利用することできる。
【0035】
また、本発明のプローブは、請求項1記載の核酸、すなわち、配列表の配列番号1に記載の核酸からなる。当該プローブは、弱毒性を有する核酸をスクリーニングする場合に用いることができる。
【0036】
また、本発明の突然変異株の生産方法は、配列表の配列番号1に記載の2553番目の塩基配列を、U及びCとの間で点変異させることを特徴とする。これは、本発明者らによって、配列表の配列番号1に記載の2553番目の塩基配列が、CMVの毒性を左右する決定的な因子として見出されたものであり、かかる2553番目の塩基配列を点変異させることにより、強毒性から弱毒性、又は弱毒性から強毒性へと容易に変化させることができる。特に、弱毒性の突然変異体は、その後、強毒性のCMVが感染しても、感染耐性を有しているので、物ワクチンとしての効果を発揮する。
【0037】
好ましい実施態様において、UからCへ点変異させる。これによって、強毒性を有する突然変異体へ変化させることができる。これに対して、CからUへ点変異させることによって、弱毒性を有する突然変異体へ変化させることができる。当該弱毒性を有する突然変異体は、その後、強毒性を有するCMVに感染しても、強毒性CMVに対する耐性を有しているので、強毒性CMVによる被害を防ぐことができる。
【0038】
また、本発明の組換えベクターは、請求項1記載の核酸を含むことを特徴とする。当該核酸を含む組換えベクターを通じて、強毒性CMVからの被害から守るべき植物細胞へ当該核酸を組み込めば、強毒性CMV耐性を有する植物体を作製することができる。これによって、植物産業のCMVによる被害を安全に防ぐことができる。
【0039】
すなわち、本発明の形質転換体は、請求項1記載の核酸又は請求項9記載の組換えベクターを宿主細胞へ導入して得られる。適当な宿主細胞としては、トマト、キュウリ、タバコなどを挙げることができる。なお、CMVは1000種以上の植物で被害を及ぼしており、広範囲で応用可能である。
【0040】
ここで、植物ワクチンの原理について説明する。基本的に生物細胞には「転写後型ジーンサイレンシング(post-transcriptional gene silencing;PTGS)」といって、自分自身のRNAや外から侵入してきたウイルス由来のRNAなどで不必要なものを分解する能力がある。しかしウイルスは分解されるといけないので、ジーンサイレンシングを抑制するサプレッサーというタンパク質を作る。CMVの2bタンパク質はこのジーンサイレンシングのサプレッサーである。このサプレッサーが強いと強毒性となり、弱いと弱毒性になると考えられる。このため、強毒株が感染した場合は、強毒株に対するジーンサイレンシングがサプレッサーによって抑制されている状態である。一方、弱毒株を接種した植物はジーンサイレンシングが働いている状態になるので、あとから同種のウイルスの強毒株が侵入してきてもすでにスイッチオンのジーンサイレンシング機能によって強毒株のRNAが分解されてしまうことを利用したのが本発明の原理である。
【0041】
また、本発明の核酸選別用プライマーは、配列表の配列番号1に記載の2553番目の塩基を少なくとも含む。このような2553番目の塩基を含んでいれば、当該2553番目の点変異による塩基の変異により生じる毒性の変化を把握することができ、ひいては、植物ワクチンとして使用する場合の、ウイルスの選別手段として用いることができる。なお、プライマーの長さとしては、用途により特に限定されるものではないが、PCR法におけるTm値またはアニーリング温度という観点から、当該2553番目の塩基を含む15~30塩基程度である。
【0042】
また、本発明の核酸は、以下の(a)、又は(b)からなることを特徴とする。
(a)配列表の配列番号4に示す、塩基配列番号1—21で示される塩基配列からなる核酸。
(b)前記塩基配列番号1-21の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記塩基配列と80%の相同性を有する核酸。なお、前記配列表の配列番号4に示す塩基配列と、80%の相同性、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有するものも本発明に含まれる。これらによっても、十分にプライマー等としてスクリーニングに利用することができるからである。
【0043】
また、本発明の核酸は、以下の(a)、又は(b)からなることを特徴とする。
(a)配列表の配列番号5に示す、塩基配列番号1—21で示される塩基配列からなる核酸。
(b)前記塩基配列番号1-21の塩基配列の一部が欠失、置換若しくは付加されていて、かつ、前記塩基配列と80%の相同性を有する核酸。なお、前記配列表の配列番号5に示す塩基配列と、80%の相同性、好ましくは、90%、より好ましくは95%の相同性を有するものも本発明に含まれる。これらによっても、プライマー等としてスクリーニングに利用することができるからである。
【0044】
具体的に、上記核酸、すなわち、配列表の配列番号4及び/又は5に記載の核酸を用いて、キュウリモザイクウイルス(CMV)の毒性を調べることが可能である。すなわち、上記配列番号4及び5に記載のものに限定されることなく、プライマーとして、配列表の配列番号1に記載の2553番目の塩基配列を含む適当な長さの塩基配列を用いることにより、CMVが弱毒性であるか強毒性であるかを識別することができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。本実施例に用いたCMV-Fuka44(以下Fuka44)、CMV-CM95(以下CM95)は、いずれもサブグループIAのCMVであり、各種の検定植物に対してそれぞれ強毒、弱毒の病原性を示す。
【0046】
CMVはRNA1(約3300bp)、RNA2(約3000bp)、RNA3(約2200bp)と呼ばれる3分節の(+)一本鎖RNAをウイルスゲノムとして持つ。RNA1、2、3の 5’末端にはCap構造が結合し、約300塩基前後の3’末端非翻訳領域の3’末端側はゲノム間で高度に保存された配列を持ち、tRNA様の2次構造をとる。RNA1は約111KDaのタンパク質をコードしており、タンパク質のC末端側には二本鎖の核酸をほどいて一本鎖にする働きを持つヘリカーゼドメイン、N末端側にはRNAのCap構造付加に関与するメチルトランスフェラーゼ様ドメインが存在する。RNA2は、RNA依存RNAポリメラーゼである約97KDaの2aタンパク質と、細胞質内で核局在性を示して病徴発現やウイルスの全身感染、宿主範囲、ジーンサイレンシング(DNAからRNAへの転写や転写後のmRNA量を抑制する現象)のサプレッサーとして機能すると予想される約13KDaの2bタンパク質をコードする(Li et al., 1999; Lucy et al., 2000)。しかし2bタンパク質は報告されてからまだ歴史が浅く、実際その機能はまだはっきりしていない。1a、2aタンパク質はそれぞれ単独に機能するのではなく、RNA1およびRNA2の感染だけで両RNAが複製する事からRNA1+RNA2が複製最小単位(レプリコン)であることが明らかにされている。またウイルスの複製過程においては、高度に保存された3’端の配列が複製酵素の認識部位となっている。
【0047】
RNA3は2つのORFをコードしており、3’側は細胞間移行タンパク質である約30KDaの3aタンパク質、5’側はウイルス粒子を形成し、また細胞間移行や長距離移行にも関与している約25KDaの外被タンパク質(CP)をコードしている。CMVは感染した細胞質内で増殖した後、原形質連絡糸を通り隣接する細胞に移行する。その際、原形質連絡糸中には3aタンパク質の存在が確認されているが、粒子状態での外被タンパク質は確認されてはいない。しかしキメラウイルスを用いた実験から細胞間移行には3aタンパク質と外被タンパク質の両方が必要である事が証明されており、そこでRibonucleoprotein複合体すなわちウイルスゲノムRNAに3aタンパク質と外被タンパク質のサブユニットが結合した形で原形質連絡糸を通過し、その後外被タンパク質は再び粒子状態に戻り、維管束をとおしての長距離移行に向かうというモデルが提唱されている。しかしこれはあくまで推論であり、確定的ではない。また、3aタンパク質を発現する組み換えタバコのプロトプラスト表面に管状構造物が形成されると報告されており、これは原形質連絡糸同様に細胞間移行を介すると考えられている。外被タンパク質は構造タンパク質として核酸分解酵素や物理的な要因からウイルスゲノムを保護する機能だけではなく、上述したようにウイルスの移行、病徴発現、宿主の抵抗性発現やアブラムシ伝搬にも関与している。例えば、CMV感染タバコでの黄色モザイクと緑色モザイクの病徴の違いには外被タンパク質の129番アミノ酸が関与しており、ポリペプチドの高次構造が重要な役割を果たしていると考えられている。アブラムシ伝搬に関与する外被タンパク質のアミノ酸は、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)により伝搬される場合とワタアブラムシ(Aphis gossypii)により伝搬される場合とで異なる。これはアミノ酸の変異によりウイルス粒子の高次構造が変化し、アブラムシに吸汁された時の腸壁への吸着性やウイルス粒子の安定性などに影響し、その事がアブラムシの種類による伝搬性の違いを生じさせると考えられている。
【0048】
またCMVにはサテライトRNA(RNA5)と呼ばれる約330~400塩基からなり、CMVとの組み合わせによって宿主植物の病徴に影響する低分子のRNAを含む分離株もある。サテライトRNAはCMVのゲノムRNAに由来するのではなく、また単独では増殖できないためにウイルスゲノムに依存して複製し、CMV粒子にエンキャプシデーションされる。サテライトRNAの存在により感染植物中でのCMVの濃度が低くなり、さらにアブラムシ伝搬性の能率が落ちるという報告もある。
【0049】
このように現在までの世界におけるCMV研究の進展状況から、どのRNAあるいはタンパク質がワクチン効果を決定しているかは全くわからない。
【0050】
そこで、CMVの優良弱毒株(ワクチン)であるCM95の全塩基配列を決定し、これを安定的に保存するために全長cDNAクローンを作製し、さらにこのクローンの塩基配列に変異を導入して弱毒性を決定しているアミノ酸の解明を試みた。
【0051】
本実施例において、まず、CMVの優良弱毒株(ワクチン)であるCM95の作出に用いた元株(Mi)、作出された干渉効果の低い弱毒株(36a1)、干渉効果にすぐれる強毒株(Fuka4-4)、およびの36a1とFuka4-4の混合接種から選抜した優良弱毒株(CM95)の全塩基配列を決定した。その結果、RNA1とRNA2に1箇所ずつ、他のDNAデータベースに登録されているCMVと異なる、弱毒株に特異的なアミノ酸変異を伴う塩基変異を見出した。
【0052】
<シュードリコンビナントCMVによる証明>
作製した優良弱毒株CM95の全長cDNAからRNA1~3を転写し、既報の強毒株pepo-CMVのRNA1~3と人工的にリコンビナントを作製して接種実験を行った。その結果、RNA2がCM95であると必ず弱毒性を、逆にRNA2がpepo-CMVであると必ず強毒性を示した。この結果から、RNA2における変異が弱毒性を決定していると考えられた。
【0053】
<1塩基変異導入による証明>
塩基配列の解析から、RNA2がコードする2bタンパク質の弱毒株に特異的な変異が見出された。すなわちRNA2の2553番目の塩基が強毒株はC、弱毒株はU、そしてその塩基が決定する2bタンパク質の46番目のアミノ酸が強毒株はアルギニン(コドンCGU)、弱毒株はシステイン(UGU)に変異していた。そこで、全長cDNAクローンに変異を導入して、その病原性を調べた。
【0054】
(1)作製した優良弱毒株CM95の全長cDNAでRNA2の2553番目の塩基をUからCに変異させて接種したところ、強毒性を示した。
(2)強毒株pepo-CMVおよびCMV-Yで、CM95のRNA2の2553番目に相当する塩基をCからUに変異させて接種したところ、弱毒性を示した。
【0055】
以上の結果から、明らかにRNA2の2553番目の塩基が弱毒性・強毒性に関与していることが解明された。
【0056】
CMVの2bタンパク質の46番目のアミノ酸がアルギニンからシステインに変異することによってCMVの病原性が大きく低下し、弱毒株(ワクチン)として利用できると考えられる。
【0057】
行なった実験手順を以下に示す。
<全長cDNAクローンの作製法>
CMV感染葉から抽出したRNAを用いてcDNAを合成した。すなわち、本実験で供試したCMVのゲノムRNA1、2、3に共通の3’末端側塩基配列に特異的な合成プライマーあるいはランダムプライマーを用い、First-Strand cDNA Synthesis Kit(Amersham Pharmacia Biotech)あるいはRNA LA PCR Kit(TaKaRa)で付属の説明書に従いcDNA合成を行った。First-Strand cDNA Synthesis Kitを使用する場合はRNA溶液8μlと3’末端に特異的プライマー、あるいは付属のランダムプライマー1μlを混合し、蒸発を防ぐために流動パラフィンを重層して95℃で5分間熱変性させた後、速やかに氷上に立て、一本鎖RNAとプライマーをアニーリングさせる。DTT 1μl、Bulk-1st-str Mix 5μlを加え、37℃で1時間反応させた後PCR反応に用いた。PCR反応はKOD Dash(TOYOBO)またはKOD -Plus-(TOYOBO)を用い、付属の説明書に従い行った。PCR反応サイクルは、94℃で熱変性、Tm値から5℃低い温度でアニ-リング、68~72℃で伸長反応、という温度変化で30~35回行った。PCRのプライマーは、5’側にはCMVのRNA1~3の5’の配列にT7プロ-モーターを付加したものを、3’側にはCMVのRNA1~3に特異的なものを作製して用いた。全長cDNAと思われるPCR産物が得られた場合は、定法によってクローニングとシーケンスを行ってその塩基配列を確認した。塩基配列確認後に、T7 DNAポリメラーゼを用いて全長cDNAクローンからRNAを転写し、接種試験に用いた。
【0058】
次に、点変異クローンの作出を以下のように行なった。
【0059】
Stratagene社のQuickChange Site-Directed Mutagenesis Kit の原理を利用して1塩基の点変異を導入した。すなわちまず、目的とする変異を中央にしてその前後に10-15塩基ずつ付加したプライマー、およびそれに相補的なプライマーを用意する。このプライマーを用い、目的とする変異を導入したいcDNAを含むプラスミドと混合し、正確性の極めて高いPfu DNA PolymeraseでPCR反応(95℃ 30秒、55℃ 1 分、68℃で 1kbあたり2分、このサイクルを5~10回)によってプラスミド全体を一周増幅する。次にPCR反応液にDpn Iを加え、鋳型となったDNA鎖を切断する。Dpn IはAがメチル化された4塩基配列GATCを認識して切断する制限酵素であり、大腸菌内で増殖したプラスミドはメチル化されているのでこの酵素により切断されるが、PCR産物は切れない。Dpn Iで切断後そのまま大腸菌を形質転換すると、PCRで増幅された変異のはいったものが導入された大腸菌だけが生えてくる。ニックは形質転換後に修復される。このようにして得られたプラスミドについては、目的とした塩基以外に変異が入っていないことをシーケンスにより確認したのち、RNAを転写して接種試験に用いた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、天然のウイルスを利用するので、極めて安全に、いわゆる植物ワクチンを提供でき、また、弱毒化のメカニズムを提供することができので、農学、生物化学、生化学等の分野において広く有用性が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、キュウリモザイクウイルス(CMV)のゲノム構造を示す。
【図2-1】図2は、CMVのCM95のRNA2の全塩基配列を示す。
【図2-2】図2は、CMVのCM95のRNA2の全塩基配列を示す。
【図3-1】図3は、全塩基配列とコードされている2a、2bタンパク質のアミノ酸配列を示す。
【図3-2】図3は、全塩基配列とコードされている2a、2bタンパク質のアミノ酸配列を示す。
【図3-3】図3は、全塩基配列とコードされている2a、2bタンパク質のアミノ酸配列を示す。
【図3-4】図3は、全塩基配列とコードされている2a、2bタンパク質のアミノ酸配列を示す。
【図3-5】図3は、全塩基配列とコードされている2a、2bタンパク質のアミノ酸配列を示す。
【図4】図4は、2aタンパク質のアミノ酸配列を示す。
【図5】図5は、2bタンパク質のアミノ酸配列を示す。
Drawing
(In Japanese)【図1】
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(In Japanese)【図2-1】
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(In Japanese)【図2-2】
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(In Japanese)【図3-1】
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(In Japanese)【図3-2】
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(In Japanese)【図3-3】
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(In Japanese)【図3-4】
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(In Japanese)【図3-5】
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(In Japanese)【図4】
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(In Japanese)【図5】
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