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Specification :(In Japanese)符号分割多重化移動通信方式と端末局及び基地局

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P3837570
Publication number P2005-252837A
Date of registration Aug 11, 2006
Date of issue Oct 25, 2006
Date of publication of application Sep 15, 2005
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)符号分割多重化移動通信方式と端末局及び基地局
IPC (International Patent Classification) H04B   1/707       (2006.01)
FI (File Index) H04J 13/00 D
Number of claims or invention 6
Total pages 38
Application Number P2004-062641
Date of filing Mar 5, 2004
Date of request for substantive examination Mar 5, 2004
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】原 孝雄
【氏名】谷川 尚也
Representative (In Japanese)【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100100125、【弁理士】、【氏名又は名称】高見 和明
【識別番号】100101096、【弁理士】、【氏名又は名称】徳永 博
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100124280、【弁理士】、【氏名又は名称】大山 健次郎
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
Examiner (In Japanese)【審査官】高野 洋
Document or reference (In Japanese)国際公開第99/020019(WO,A1)
特開平10-093548(JP,A)
特開2001-127597(JP,A)
特開2001-094466(JP,A)
特表2001-520482(JP,A)
Field of search H04B 1/707
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
アップリンクにおいて、長さが互いに素の3つの要素符号X、Y及びZから構成された複合符号
【数1】
JP0003837570B2_000098t.gif

を同期符号として使用し、
【数2】
JP0003837570B2_000099t.gif

を拡散符号として使用することを特徴とする符号分割多重化移動通信方式。
【請求項2】
請求項1に記載の符号分割多重化移動通信方式において、前記同期符号に関する部分の信号送信レベルを、前記拡散符号に関する部分の信号送信レベルより高くすることを特徴とする符号分割多重化移動通信方式。
【請求項3】
請求項1に記載の符号分割多重化移動通信方式の端末局であって、長さが互いに素の3つの要素符号X、Y及びZを発生する手段と、複合符号〔数1〕を形成する手段と、複合符号〔数2〕を形成する手段とを具え、アップリンクにおいて、複合符号Wを同期符号として使用し、複合符号W’を拡散符号として使用することを特徴とする端末局。
【請求項4】
請求項3に記載の端末局において、前記同期符号に関する部分の信号送信レベルを、前記拡散符号に関する部分の信号送信レベルより高くすることを特徴とする端末局。
【請求項5】
請求項1に記載の符号分割多重化移動通信方式の基地局であって、長さが互いに素の3つの要素符号X、Y及びZを発生する手段と、複合符号〔数1〕を形成する手段と、複合符号〔数2〕を形成する手段とを具え、アップリンクにおいて、前記複合符号の一方を同期符号として使用し、他方を拡散符号として使用し、前記2つの複合符号間の切り替えをこれらの間の相関値の変化によって検出する手段をさらに具えることを特徴とする基地局。
【請求項6】
請求項5に記載の基地局において、前記同期符号に関する部分の信号送信レベルが、前記拡散符号に関する部分の信号送信レベルより高いことを特徴とする基地局。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、符号分割多重化移動通信方式及と端末局及び基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、符号分割多重化(CDMA)移動通信方式におけるアップリンク(端末局から基地局への上り)の信号拡散方式には大別して2つあり、1つはチャネルごとに相関の少ない別々の符号を割り当てる方式であり、チャネル数だけの符号を必要とする。
【0003】
もう1つは、地上系移動通信方式のアップリンクの信号拡散方式で、ロングコードと呼ばれる非常に長い1つの同じ擬似雑音(pseudo noise:PN)符号(本明細書ではすべてM系列を示す)をすべてのチャネルに割り当てて使う方式がある。これは、PN符号の自己相関特性が同相のとき以外は非常に小さい性質を利用し、端末局からの受信波の位相が互いに異なるようにして信号分離(チャンネライゼーション)を行うものである。この方式は、全チャネルに割り当てる符号が1つで済むことを特徴としている。受信側では、各チャネルごとにPN符号のフレーム同期を取る必要があるが、地上系移動通信システムのようにセルが小さいときは、距離の差によるPN符号の受信位相差も少なく、位相既知の共通チャネルを用いることにより、同期位相の推定が容易である。このため、PN符号の同期時間は短くて済む。例えば、チップレート3.84Mcpsでセルの直径が3kmとすると、受信信号の距離による位相不確定誤差は、予め決められた位相誤差を除くと40チップ以内である。
【0004】
しかし、CDMA方式を低トラヒック地域などの大セルシステムに用いる場合や、衛星通信(静止又は周回衛星)などに利用する場合は、基地局と端末間の距離の分布が格段に大きくなり、その結果、拡散PN符合の受信位相の分布も大きくなる。例えば、周回衛星ではその差は数百キロメートルにもなり、静止衛星では衛星のドリフトを考慮すると受信波の位相は予知できなくなる。さらに、通常の地上移動通信においても、将来高速化した場合、位相誤差チップ数は増大する。したがって、このようなケースでは、PN符号の同期のためには全周期又は相当な部分に渡る位相の一致不一致の確認が必要となり、従来方式では、その同期に長大な時間を要するという問題が発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、アップリンクの拡散符号の特性を改善した符号分割多重化移動通信方式と端末局及び基地局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、アップリンクにおいて、長さが互いに素の3つの要素符号X、Y及びZから構成された複合符号
【数1】
JP0003837570B2_000002t.gif

を同期符号として使用し、
【数2】
JP0003837570B2_000003t.gif

を拡散符号として使用することを特徴とする符号分割多重化移動通信方式である。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の符号分割多重化移動通信方式において、前記同期符号に関する部分の信号送信レベルを、前記拡散符号に関する部分の信号送信レベルより高くすることを特徴とする符号分割多重化移動通信方式である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の符号分割多重化移動通信方式の端末局であって、長さが互いに素の3つの要素符号X、Y及びZを発生する手段と、複合符号
〔数1〕を形成する手段と、複合符号〔数2〕を形成する手段とを具え、アップリンクにおいて、複合符号Wを同期符号として使用し、複合符号W’を拡散符号として使用することを特徴とする端末局である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の端末局において、前記同期符号に関する部分の信号送信レベルを、前記拡散符号に関する部分の信号送信レベルより高くすることを特徴とする端末局である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の符号分割多重化移動通信方式の基地局であって、長さが互いに素の3つの要素符号X、Y及びZを発生する手段と、複合符号〔数1〕を形成する手段と、複合符号〔数2〕を形成する手段とを具え、アップリンクにおいて、前記複合符号の一方を同期符号として使用し、他方を拡散符号として使用し、前記2つの複合符号間の切り替えをこれらの間の相関値の変化によって検出する手段をさらに具えることを特徴とする基地局である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の基地局において、前記同期符号に関する部分の信号送信レベルが、前記拡散符号に関する部分の信号送信レベルより高いことを特徴とする基地局である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、同じ要素符号から互いに異なる演算によって形成された2つの複合符号の一方を低C/N時の高速同期符号として用い、他方を拡散符号として用いることにより、同期特性と干渉特性を同時に満たすことが可能になる。また、本発明による方式では、初期アクセス時に基地局側でアップリンクの位相情報がなくても短時間で初期捕捉が可能であり、かつ要素符号の1つを適当な周期に選ぶことで従来方式におけるショートコードの助けを借りずにフレームタイミングを作成することも可能である。さらに、複合符号としての周期は十分長くできるので、多数ユーザに対するチャネライゼーションとしてもロングコードに匹敵する設計が可能である。また、プリアンブル部の信号送信レベルを、分散用符号の部分の信号送信レベルに対して上げることによって、同期符号の受信S/Nが高くなり、その分位相掃引速度(サーチ速度)を速めることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
複合符号は、互いに周期の異なる複数の符号(要素符号)をある演算で組み合わせた符号であり、各要素符号の長さに共通因数が含まれない場合、合成された符号の長さは各々の長さの積になる。一方、そのときの符号同期のための位相スライドの所要回数は、最大でも各要素符号の長さの和になる。例えば、要素符号として3つのPN符号X、Y、Zを考え、これらの長さをL、M、N(互いに素)とすると、複合符号の長さPはP=L×M×Nとなるが、このときの同期確立に要する位相スライド回数は最大L+M+Nとなる。ところで、単一のPN符号を用いると、その回数はPすなわちL×M×Nであるから、L、M、Nの値が大きい場合、その短縮度は非常に大であることがわかる。複合符号の同期は、各要素符号の同期状態によって異なって現れる要素符号相関値を利用して行うが、TDMAのアクジションやCDMA移動通信における信号逆拡散のようにC/Nが非常に低いシステムに適用する場合には要素符号相関値の誤りが発生し、上記のように原理どおりの同期時間短縮効果が得られない可能性がある。ここで、同期用複合符号の同期状態によって取る相関値を部分相関値と呼ぶことがあるが、本明細書では被拡散信号のシンボル長(相関長)区間における拡散符号の相関値を部分相関値と呼ぶため、前者をここでは要素符号相関値と呼んで区別することに注意されたい。
【0014】
複合符号は異なるPN符号の合成であり、もはやPN符号とは性質の異なったものとなっている。しかし、複合符号を拡散符号として適用する場合には、上記のように高速な同期特性以外にいくつかの条件が満たされる必要がある。第1の条件は、同一帯域で送信されるチャネルとの干渉が十分小さい符号であることであり、第2の条件は、ランダム性の特質がM系列PN符号に近いことである。同一符号によるチャネル識別符号としては、時間軸相関のない雑音系列のような完全なランダム性を持った符号が理想的であるが、雑音の性質に最も近く、また数理的にも把握、実現できる擬似ランダム符号(PN符号)としてM系列符号がある。
【0015】
複合符号のこれらの性質を調べるため、以下の複合符号について検討する。
〔数1〕 (1)
ここで、
【数3】
JP0003837570B2_000004t.gif

は排他的論理和を表し、(・)は積(1・1=1、1・0=0、0・1=0、0・0=0)を表す。図1aは、〔数1〕の自己相関特性を示すグラフであり、各要素符号の符号長をX:31、Y:63、Z:127のように選んだときの複合符号Wの全長の自己相関特性をシミュレーションによって求めたものである。この図からわかるように、本符号は全符号の位相一致で要素符号相関値Ce=1.0を示すが、符号Xの長さの周期でCe=0.25を示し、さらに符号Xと符号Y(又はXとZ)の長さの積の周期でCe=0.5を示す。このとき符号Wの周期は248031チップである。
【0016】
このような複合符号Wの性質は、同期制御に不可欠な要素符号相関である。この符号をそのまま拡散符号として利用した場合、同じ符号で拡散された他のチャネルの信号の拡散符号の受信位相がこれらの要素符号相関値を示す位相に一致したとき、それぞれの要素符号相関値の二乗に相当する電力が干渉電力として着目する信号チャネルに落ち込むことを意味している。図1aからもわかるように、このような位相は多数ある。したがって、複合符号〔数1〕は、上記の第2の条件を調べるまでもなく、そのままでは拡散符号として利用できないことがわかる。そこで本発明者らは、拡散符号として高速同期にも使え、かつ要素符号相関値を示さない複合符号の生成について次のような検討を行った。
【0017】
図2は、同じ要素符号X、Y及びZに関して、合成の演算の異なる2つのケースについての相関マトリックスを示す図であり、aは〔数1〕の自己相関マトリックス、bは〔数2〕の自己相関マトリックスである。まず、演算〔数1〕について考える。各符号の同期又は非同期の状態によって取り得る要素符号相関値は、図2aの太線により囲まれた値である。
(i)全符号が非同期のとき;
この場合の要素符号相関値Calloutは;

Callout=(“0”の数-“1”の数)/64=(32-32)/64=0
(2)

(ii)次に符号Xとxが同期したとき;
Xとxの符号が一致する薄い網掛け部分(ただし、それより濃い部分も含む)の32通りの組み合わせにより、そのときの要素符号相関値Cxinは、

Cxin=(“0”の数-“1”の数)/32=(20-12)/32=0.25 (3)

(iii)同様に、Xとx、Yとy(又はZとz)の両方が同期したとき、組み合わせえはその次に濃い網掛け部分(さらに濃い網掛け部分を含み)に限られ、このとき;

Cx,yin=Cx,zin=(12-4)/16=0.5 (4)

(iv)また、すべての符号が同期したとき、一番濃い網掛け部分の対角線状の組み合わせのみとなり;

Callin=8/8=1.0 (5)

したがって、複合符号〔数1〕の同期は、上記の要素符号相関値を検出することにより各要素符号の位相を順にスライドさせることによって確立できる。図1aに示した自己相関特性は、上記の要素符号相関値に他ならない。
【0018】
次に、同じように複合符号〔数2〕の自己相関特性を図2bによって調べる。この場合は、上記の(i)、(ii)、(iii)のいずれのケースも要素符号相関値は0になる。すなわち、符号〔数2〕においては、各要素符号及び複合符号のランダム性が十分である限り、要素符号のすべてが同期する状態以外は相関値は出現しない。上に記した同じ要素符号で本符号の自己相関特性を示したのが図1bである。図1aに示した〔数1〕の場合と比べて大きな改善が見られる。これらにより、本複合符号は、基本的には拡散符号として利用できるはずである。しかし逆に高速同期符号の条件は、要素符号相関値が得られることであるため、複合符号〔数2〕だけでは高速同期方式を実現することができないことがわかる。本発明の目的であるこれら2つの要求条件を満たすために、両複合符号を同期及び定常状態で切り替える方法を提案する。それは異なる演算の複合符号の次のような性質を利用することによって行うことができる。
【0019】
図3は、複合符号〔数2〕と〔数1〕の相互相関マトリックスを示したものである。この場合は、全要素符号が同期している状態では相関値は対角線上の相関値のみを取るから、

Call=(“0”の数-“1”の数)/8=(2-6)/8=-0.5
(6)

が得られる。ただし、その他の状態では相関値はゼロであり、要素符号相関がないことがわかる。理論的証明は後に説明する。
【0020】
本発明では、上述した相関の性質を利用し、複合符号の生成において初期捕捉時は〔数1〕の演算を用い、一旦同期が完了したと判断される段階で、その生成演算を〔数2〕に切り替える。この場合の切り替えは、送信側において一方的に行われるが、それを受信側で検知し、検知信号によって信号側の生成演算を〔数1〕から〔数2〕に切り替えなければならない。これは、図3に示した性質を利用することによって可能である。すなわち、受信側では、それまで1.0の相関値が得られたものが、切り替えられた符号を受信した瞬間に相関値が-0.5に落ちることを検出できるからである。しかも、複合符号の生成演算の切り替えは、要素符号YとZを合成する(・)を(〔数3〕)に変えるだけであり、容易に行うことが可能である。
【0021】
図4は、符号切り替えによる初期捕捉から定常同期への移行の原理を説明するタイミング図である。図4の信号(a)は、端末局から送信された受信信号である。信号の先端部分にプリアンブルワードとして符号〔数1〕を用い、その後、この符号の同期及びその検出が完了するのに十分な時間(T1)に〔数2〕に切り替える。(b)はローカル発生符号である。この間の複合符号の初期同期捕捉は、(c)に示す部分相関値を用いて行われる。この時間は、最大、各要素符号の長さの和の位相スライドに要する時間であり、例えば、長さが約10億チップ(230相当)の複合符号を用いたとしても高々3600チップの位相スライドに掛かる時間で済む(長さが各511、1023及び2047チップの要素符号から構成した場合の例)。ただし、この時間は、符合のチップ長×スライド回数の時間ではなく、チップあたりのスライド時間間隔×スライド数の時間であり、後述するように回線のS/N等によって決定される。例えば、要素符号相関値検出のための積分時間をJチップとし、チップレートが10Mbpsの場合、チップあたりのスライド時間間隔は、J×0.1μsとなる。したがって上記の例では、同期時間は最大3600×J×0.1μsとなる。
【0022】
符号切り替えが行われた瞬間、(c)の点aに示すように相関値は-0.5に落ちる(式6)。同期符号が終了した後も、短い一定の時間はデータの送信をしないようにし、この時点での相関値へのデータの影響を除く。受信側では、この状態変化を容易に検出することが可能である。検出信号で受信側の符号演算も〔数2〕に切り替えることで、相関値は再び1.0に戻る(点b)。なお、要素符号の同期がすでに確立しているため、この切り替えのタイミングには高い精度は不要である。その後は、符号のクロック同期が保たれるため、各要素符号の同期は維持でき、複合符号〔数2〕の同期も維持可能である。なお、上述したように、要素符号の同期が完了したこの段階で、そのうちの1つの要素符号の周期から通信用の短いフレームタイミングを再生することも可能である。信号データは送信側では(a)のT2から開始されるため、受信では点bから一定の時間を経過した点cから受信される。点aでの相関値の変化の検出は、相関値の落差が大きい(1.0→-0.5)ため、比較的容易である。雑音による同期遅延を小さくするために、原孝雄、福井譲、山本平一による文献「複合符号同期方法による低C/N時の同期時間の高速安定化」、信学論(B)、Vol.J87-B、No.1、19~35ページ、2004年1月、において示した基準で受信同期系を設計した場合、このときの判定点でのS/Nは25dBとなる。(c)のステップ1からステップ4までの雑音を考慮した要素符号Xからすべての符号同期までの同期遅延については、上記文献において詳述されている。本発明では、この移行段階における、特に(c)のステップ4からステップ5におけるmin-及びfalseの確立が重要であるので、それについて考察する。状態判定のしきい値にはヒステリシスを持たせ、ステップ4から5への判定にはTH1(0)を、その逆にはTH2(0.5)を用いる。このとき、ステップ4の状態を5の状態と誤る(false-)確率及びステップ5を見過ごす(min-)確率は、式(7)によって与えられる。
【数4】
JP0003837570B2_000005t.gif

複合符号の同期時間の遅延は、主に判定しきい値の小さいステップ1~ステップ3で発生する。ステップ1と2又は2と3を識別するしきい値は両方とも0.125しかない。このステップでの等価S/Nは7dB、判定誤り率は約10-3となる。受信S/Nがさらに低くなると、この点での誤り率が急増し、これらの段階での判定誤りとそれによる遅延が発生する。S/N 25dBのときのPmis、Pfalseの値は共に非常に小さく、1×10-70以下である。しかし、その検出誤りは受信同期系の動作に重大な影響を与えるため、多数回判定によって事実上誤り率ゼロにする必要がある。ただし、2回連続で十分である。なお、この相関値の変化の検出及び移行時間はできるだけ短い方が望ましいが、上述のように各要素符号の位相はステップ4において保持されているので、そのタイミングの許容範囲は広い。この点が本発明の特徴の1つである。拡散符号部分に、もし仮に単一のPN符号を用いるとした場合には、受信側での切り替え移行にはPN符号の頭出しタイミングの検出が必要で、且つその切り替えにはチップ単位の精度が求められ、きわめて困難であると思われる。
【0023】
図5は、上述したような複合符号を衛星通信によるCDMA多重化方式に適用した場合のアップリンクの信号受信系の一例を示す図である。受信信号は衛星中継器を通過するが、衛星中継器の帯域が十分に広く、また系が線形であると仮定する。なお、本発明における複合符号の同期及び相関特性の適用範囲は衛星通信に限らず、地上系広域移動通信にも適用可能である。ここでは、このような系における拡散符号の同期と相関特性について検討する。既に述べたように、本発明では、各信号チャネルはすべて同じ符号によって拡散する。この場合、信号ごとの位相差が偶然にも一致しない工夫が必要である。それは、端末-基地局間の距離の差を考慮し、端末ごとに長大な符号の初期位相を予めずらすことで可能である。特に想定している衛星通信の場合には距離による時間差が大きいため、端末ごとの符号位相に十分な位相時間差を確保する必要がある。例えば、中規模地域の衛星通信システムを想定し、端末から衛星を経由して基地局までの距離の相対差を300km(衛星の仰角にもよるが、日本の緯度を想定すると平面上のカバー範囲の直径は1.5倍程度となる)とすると、時間差は1.0msとなる。10Mcps(チップパーセカンド)の拡散符号では、端末ごとに最低10000チップの位相差を確保する必要がある。カバー範囲内で使われる全移動端末数を10万台(同時アクセス回線数ではない)とし、端末の出荷時点で予め拡散符号の位相を割り当てる方式(固定割り当て方式)をとるとすると、最低10億チップの周期の符号が必要となる。これによって基地局受信機には、同一帯域に同じ符号で拡散された信号が、複合符号の位相が互いにずれた関係で受信されることが保証される。このようにすることによって、着目する信号の符号の位相に対して、すべて異なる時間差t1からtn(nはチャネル数)で受信される。なお、常時受信可能なダウンリンク信号を用いるなど、何らかの方法で端末の接続時に位相を割り当てる方法(接続時割り当て方式)がとれれば、所要符号長は100万チップに短縮できる。
【0024】
次に、図4を参照して上述した方式の基本動作について述べる。図6は、本発明による送信及び受信系の基本構成の一例を示すブロック図である。送信系である端末局1は、要素符号発生器2、3及び4と、演算形式の異なる複合符号合成器5及び6と、拡散部7と、変調部8とを具える。要素符合発生器2、3及び4は、各々、要素符号X、Y及びZを発生する。複合符号合成器5及び6は、要素符合発生器2、3及び4が発生した要素符合X、Y及びZから、各々、複合符号〔数2〕及び〔数1〕を形成する。拡散部7は信号データを前記複合符号のいずれかによって拡散する。変調部8は、拡散された信号データを搬送波信号によって変調し、送信する。
【0025】
受信系である基地局9は、第1相関器10と、搬送波再生回路11と、第1復調器12と、第2復調器13と、第2相関器14と、相関検出器・符号位相制御器15と、同期系相関器16と、クロック再生回路17と、要素符合発生器18、19及び20と、複合符号合成器21とを具える。
【0026】
まず端末局1は、図4の(a)に示す信号系列を発生させる。信号データは、それより十分高速のこの符号により拡散され、送信される。ただし、受信側で同期が確立し、それを検出するのに十分な時間(図4の(a)のT2)までは信号データは送信されないとする。
【0027】
一方受信では、図6の下段に示す相関同期系によって複合符号の同期並びに逆拡散によりデータを再生する。受信入力信号は、まず第1相関器10によって、要素符合発生器18、19及び20によってローカルに発生した同じ要素符号X、Y及びZから複合符号合成器21によって合成された複合符号と掛け合わされる。最初は各要素符号とも非同期の状態にあり、第1相関器10の出力には雑音のみが現れる。この状態で相関検出器・符号位相制御器15によって符号Xの位相を1チップずつスライドさせる。最大、符号Xの長さのスライドによって、符号Xが同期状態となる。このとき、図2aによって複合符号〔数1〕の部分相関値0.25が得られる。すなわち、第1相関器10の出力には25%のキャリア成分が現れる。図6の搬送波再生回路11は、このキャリア成分に同期する。ここで重要なことは、本受信機には、同一周波数帯域で他の複数のチャネルが同時に受信されていることである。そこで、干渉チャネルの搬送波の漏れこみについて考えると、回線接続の完了した他のチャネルの符号は、すでに〔数2〕に切り替えられており、図3に示すように要素符号Xが同期しても、〔数2〕と〔数1〕の相互相関値はゼロである。すなわち、他のチャネルのキャリア成分に引き込むことはない。これは、搬送波再生系の帯域は、符号のチップレートよりも千から数千分の一に狭く設計でき、その積分効果大のためである(搬送波再生系の共振器の時定数は、後述の同期系の符号位相の掃引速度との関係で決まる)。つまり、フィルタリング機能を持つと考えることができる。このようにして得られた再生搬送波によって受信複合符号〔数1〕は第1復調器12で復調される。クロック再生部17はこの信号からクロックを抽出し、一方、第2相関器14によって複合符号〔数1〕の相関が取られる。後は、図4の(c)及び上述した(ii)から(iv)に示すプロセスで〔数1〕の同期が完了する。この符号の同期が完了した段階で、演算形式の切り替えられた信号が受信される。このとき、同じく図4の(c)に示すように相関値は1→-0.5に落ちる。相関検出器・符号位相制御器15でこれを検出することによって受信側の符号も〔数2〕に切り替えられる。このときは、各要素符号が同期している状態であり、後はクロック同期の維持によって複合符号〔数2〕の定常同期状態に移行する。このようにして同期が完了すると、第1相関器10において拡散符号の成分が完全に除去(逆拡散)され、その結果、第2信号復調器13出力にデータが再生される。なお、符号が〔数2〕に切り替えられた後、時間T2以降は、第2相関器14の出力には信号データ成分が含まれ、その結果符合〔数2〕同士の偶相関・奇相関成分が出現する。後述のように、ここでの積分時定数はデータシンボル長より十分長いので、データがランダムと仮定すると積分効果によってゼロの値を示す。この場合でもクロック同期が保持されているので複合符号の同期は保たれるが、実際の設計においては、同期確認信号として、図4の(a)に示すように、データに一定間隔で連続“1”を挿入し、周期的に1.0の相関値を得る方法がある。
【0028】
図5を参照して複合符号の同期と逆拡散について上述したが、ここで、複合符号〔数2〕の拡散符号としての重要な相関特性について、まずコンピュータシミュレーションによって説明する。図2bに示した通り、本符号は構成する要素符号がランダムである場合、全符号が同期した状態以外では自己相関はゼロである。しかし実際には、要素符号としては基本的にPN符号を用いるものであり、またそれらの長さも有限であるため、複合された符号は必ずしも理想的なランダム性を示さないと思われる。実際の系においては十分長い符号が用いられるべきであるが、シミュレーションの時間的な制限から、ここでは複合符号として表1に示す3つのケースを検討する。
【0029】
【表1】
JP0003837570B2_000006t.gif

【0030】
本符号について、以下の4つの項目についてシミュレーションを行った。
(1)全長自己相関特性:同じ複合符号の相関値を両者の位相差の関数として計算する。(2)部分相関特性:拡散率を考慮していくつかの相関長に対して計算する。
(3)平衡性:系列の一周期内に出現する「1」と「0」の数の差。
(4)連なり性:系列の一周期内に含まれる「1の連なり」と「0の連なり」の数。
これらは互いに関係しており、例えば(3)と(4)は、(1)、(2)の特性に影響を与えると考えられる。またこのうち拡散符号として特に重要なものは、(2)の部分相関特性である。
【0031】
Co-channel干渉は、最終的には信号データのシンボル区間内の拡散信号のチップ数、すなわち拡散率から決まる部分相関値によって求められるが、ここではまず、これらの符号の全長相関値から評価する。表1に示した複合符号3つのケースについて全長自己相関特性をシミュレーションによって求めた結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
JP0003837570B2_000007t.gif

【0033】
mod(X)=0は、整数X(>0)の倍数である。表2に示す3つのケースから、符号〔数2〕の自己相関特性には興味深い規則性があることがわかる。すなわち、その全長相関値(フレーム周期内の一致の数-不一致の数)は、各要素符号の長さの周期でその長さに等しい相関値を示し、3つの符号のうちの2つの長さの積の周期でそれらの積に等しい負の相関値をとり、そして3つの符号の長さの積の周期でその積に等しい相関値を示し(すなわち完全同期の状態)、その他はすべて-1の相関値をとることである。
【0034】
この性質は、長さがそれぞれL、M、N(L<M<Nでそれぞれが互いに素とする)のPN符号から構成される複合符号では、一般に表3に示す相関値が得られることを示している(証明は後述する)。
【0035】
【表3】
JP0003837570B2_000008t.gif

【0036】
ところで、全長相関値から干渉を評価する場合、その値は、帯域内の干渉波の数及びそれらの拡散符号の位相がどのように分布するかによって決まる。それらの位相が、たまたま表3の相関値の大きい位相をとったとき、干渉は大きくなると考えられる。したがって、複合符号の設計においては、このピークをできるだけ小さくするのが望ましい。表3において、長さL、M、NにおいてL<M<Nとしたから、位相不一致の場合の相関値の絶対値の最大はMNである。一方、位相が全一致の場合、着目する信号の相関値はLMNであるから、その電力比は以下の式(8)によって与えられる
【数5】
JP0003837570B2_000009t.gif

すなわち、全長の信号対最大干渉波一波の電力比は、Lの自乗に比例することがわかる。ここでLは要素符号の最小の長さであるから、S/CCImaxは、最小符号長を長くすることによって大きくすることが可能であることを示している。つまり、一定の長さの複合符号を設計する場合、要素符号各々の長さができるだけ近いもので構成することによって、相関値のピークを小さくすることができる。
【0037】
移動通信においては、信号データはシンボルごとに相関検出されるため、その干渉特性は、最終的にはデータシンボル区間の部分相関値によって評価される。ここでは、図1bに示したのと同じ複合符号を用いて、それらの部分相関値をコンピュータシミュレーションによって求め、その分布、平均値及び分散を単一のPN符号のそれと比較検証する。
【0038】
図7は、同一帯域で受信されるチャネルW(t)を位相シフトkチップの符号W(t+kTc)で受信したときの様子を示すタイミング図である(Tcはチップ長)。このとき、着目する受信信号の特定データに対しては、両符号のそのデータ区間の相関が干渉として働く。相関は着目信号のデータ区間Kにおいて計算される。Kはまた拡散率に等しい。これをここでは、区間Kの部分相関と呼ぶ。したがって、両チャネルの位相シフトがkの場合の全データ列が受ける干渉は、これらの平均及び分散によって評価することができる。単一のPN符号の場合の正規化部分相関特性は、同期以外の位相シフトkによらず、すべての位相で同一であり、それらは以下の式(9)及び(10)によって与えられる。
【数6】
JP0003837570B2_000010t.gif

ただし、rk(K)は次のように定義される。

rk(K)=(区間内の符号の一致数-不一致数)/K (Kは相関長)

一方、今検討している複合符号では、表3に示した通り、位相シフトkによって全長相関値が異なっているため、各ケースについての部分相関をコンピュータシミュレーションと理論解析によって求める。
【0039】
シミュレーションでは、Kとして地上系移動通信で使われる16、32、64、128、256及び512の6つのケースについて、図7のように、データのシンボル単位でKごとに区間位相をずらしながら部分相関値を求めた。今の場合、Kが16のときは1フレーム長に約15500(248031/16)区間取ることができるが、Kが大きくなるとその数が減少する。そこで、Kが大のときは、実際のケースに沿って複数周期に渡って区間位相をずらし、すべてのケースで区間数が同じになるようにした。ところで、図7に示すように干渉データの極性変換点が着目データの相関区間の中に入ったとき、その前後で偶相関、奇相関が現れる。その影響については後述し、ここでは先ず偶相関を求める。図8は、このようにして得られた正規化部分相関値の分布を示すグラフである。図8aは、表3において全長の相関値(非正規化)が-1になる第1位相ケース、図8bは、位相シフトが1つの要素符号の周期の第2位相ケース(計算例はk=31チップの場合)、図8cは、2つの要素符号の周期の積の第3位相ケース(計算例はk=31×127=3937のケース)である。なお、この例の複合符号では、着目するチャネルと干渉チャネルの位相シフトは94.51%の確率で第1位相ケースに、5.4%の確率で第2位相ケースに、0.09%の確率で第3位相ケースを取る。より長い符号を使えば、第1位相ケースの確率がさらに増大する。
【0040】
図8a~cにおいては、各相関長Kに対するすべてのサンプル数(区間数)は同じ(15500)で、相関長が大きいほど相関値として多値をとるため、正規化したときの横軸プロットの間隔が小さくなっている。
【0041】
まず、図8aより、拡散率が大きいほど正規化部分相関値はゼロ近傍に集中していることがわかる。図8aの実線は、この複合符号とほぼ同じ周期(262,143)の単一のPN符号の正規化部分相関値の全周期分の分布を示したものである。周期の差から生ずる区関数(この場合は262143/kで6%多い)の差を考慮すると、分布はほとんど同一か、またはKが32以上では複合符号の方がわずかではあるが分布の対称性が優れている。図8bでは少しの変形が見られるが、図8aと比して分布に大きな差はない。次に、図8cでは拡散率が小さいときは分布が広がる傾向が見られるが、Kが64以上ではほとんど平均値近傍に集中する現象が見られる。なお、相関値の高い点での発生回数が1つでもあれば、その特定のシンボルが受ける干渉は大きい。図8a~cの縦軸の分解能に制約があるが、横軸の線上にプロットされている発生回数の数値はすべてゼロであった。
次に、これらの分布からその正規化相関値の平均と分散を求めたものを表4に示す。
【0042】
【表4】
JP0003837570B2_000011t.gif

【0043】
表4には、上記のPN符号の特性もあわせて示している。両者の特性は非常に類似している。特に、第1位相ケースはPN符号と全く同じ値を示す。また第3位相ケースの分散はPN符号のそれより小さいことが注目される。複合符号の部分相関値は、これらのシミュレーション結果と、使用した要素符号の周期から、次のような単純な関係式で表されることが推定できる。これらの推定値が、任意の周期のM列要素符号にも適用できることを後に説明する。
(a)第1位相ケース
【数7】
JP0003837570B2_000012t.gif


(b)第2位相ケース
【数8】
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(c)第3位相ケース
【数9】
JP0003837570B2_000014t.gif

次に、分散は表4からは推測しにくいので、後に示す理論解析の結果を以下に先に示す。
【数10】
JP0003837570B2_000015t.gif

ただし、K’はKをそれぞれL、M、Nで割った余りである。図8cは上式(22)の場合に対応するが、相関長Kが63(Mの値)を越えて、64、128、256、512になったとき、分子のK’はそれぞれ1、2、4、8と非常に小さい値をとる。正規化相関値の分布が平均値近傍にインパルス状に集中するのはこのためである。
【0044】
第1位相ケースでは、PN符号と全く同じ平均値、分散を示す。第1~第3位相ケースで平均値が一番大きいのは第3位相ケースであり、その値は、要素符号の周期のうちの最小周期の逆数となる。つまり、最小要素符号の周期を長くすることで、第3位相ケースの平均値を小さくすることができる。これは、先に式(8)の説明において述べた全長相関値を小さくする条件と同じである。さらに言えば、表3にしめしたそれぞれの位相シフトの全長正規化相関値は、対応する位相シフトの正規化部分相関の平均値に等しくなることを意味している。なお、上に述べたように本複合符号では、信号波と干渉波が第3位相ケースの関係になる確率は非常に小さい。
【0045】
これらのシミュレーション結果から、最小要素符号の長さが31程度以上(第3位相ケースの確率が低いことを考慮)の場合、すべてのケースにおいて部分相関値の平均は1よりも十分小さく、チャネル当たりの信号対干渉電力比は分散から求めることができ、その値は、10×logK(dB)で与えられる。これは、PN符号の場合と同じである。このことからも、本複合符号は拡散符号としても十分に使用可能であることを示している。なお、データ変調された他チャネル信号との部分相関を考える場合、一般に自信号の相関区間内に干渉側のシンボルの変換点が存在するので、他チャネルからの干渉量をこの段落の議論のみで評価するだけでは不十分である。これについて偶相関・奇相関の考え方を用いて理論検討を行った結果、後に証明するように、相関長Kがここで検討しているように複合符号の周期よりも十分短い場合には、上記の結果が適用できることがわかった。
【0046】
複合符号〔数2〕は干渉特性について十分な性能を持つことを上に述べたが、ここでは、拡散符号のランダム性を示す指標として重要と思われる平衡性及び連なり性の性質についてコンピュータシミュレーションの結果を述べる。
【0047】
まず平衡性については、表1の複合符号全ケースとも「1」の数は「0」の数より1つ多く、PN符号の場合と全く同じ性質を持つことがわかった。次に連なり性についても検討を行った。図9は、表1のケース1の複合符号(符号長3255)について連なり性を調べた結果を示すグラフである。図9は、「1」又は「0」が連続する数(横軸)に対する頻度を表したものである。同図には、符号長3255に一番近い長さの1つのPN符号(符号長4095)の場合の連なりの性質も同時に表している。図9における両者の出現頻度の差は、主に長さの差によるものと考えられる。両者の比較からわかるように、複合符号〔数2〕は連なり性の性質に関しても、PN符号のそれと非常に類似していることがわかる。
【0048】
上記において、複合符号
〔数1〕の自己相関特性によって高速同期を取り、符号〔数1〕と〔数2〕の相互相関特性によって符号の切り替えの検出を行い、さらに〔数2〕の自己相関特性の評価によって拡散符号として利用できることを述べた。さらに拡散符号の部分相関特性は、従来のPN符号とほぼ同じであることを述べた。それらは相関マトリックスとコンピュータシミュレーションの結果によって説明したが、ここでは、上記の特性を理論的に説明する。また、各要素符号の長さとの関係においてどのような相関値が得られるかについて定量的に検証する。
【0049】
最初に、符号〔数2〕の自己相関特性について調べる。要素符号X、Y、Zはそれぞれの長さに共通因子を含まない、互いに素な周期L、M、Nを有するものとする。複合符号Wの位相シフトkに対する自己相関値Rkを以下の式(23)で定義する。なお、相関演算はすべて、上記論理演算式で定義される符号Wを、論理0=+1、論理1=-1とした等価な積符号C=XYZに置き換えて議論する。
【数11】
JP0003837570B2_000016t.gif

式(23)で定義されるRkが各要素符号ごとの自己相関値の積に因数分解できることを以下に示す。
(a)に2つの要素符号からなる複合符号の自己相関値
【数12】
JP0003837570B2_000017t.gif

とする。符号Vの位相シフトkに対する自己相関をSkとすると、Vと等価な積符号D=XYについて、
【数13】
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ここで、表記を簡単にするため、式(25)で、

xixi+k=ai , yiyi+k=bi

とおくと、ai、biもそれぞれ周期L、Mであり、
【数14】
JP0003837570B2_000019t.gif

上式右辺を展開すると、
【数15】
JP0003837570B2_000020t.gif

ここで、aiは周期Lであることを考慮すると、上式はさらに以下のようになる。
【数16】
JP0003837570B2_000021t.gif

式(28)右辺の括弧内の合計について考える。まず、次のことが言える。「任意の異なるm1、m2(0≦m1,m2≦M-1)について、bm1L+l、bm2L+lは、符号bの異なる要素を表す。」なぜなら、m2L+l-(m1L+l)=(m2-m1)Lは、LとMが互いに素かつ|m2-m1|<Mであるから、Mの倍数になり得ない。すなわち、符号bの周期M(modM)に対して、

m2L+l(modM)≠m1L+l (29)

したがって、式(28)右辺のmに関するΣ内の各項は、周期Mの符号bの要素をすべて、かつ1回のみ含んでいることがわかり、これは上式からlの値によらない。すなわち、
【数17】
JP0003837570B2_000022t.gif

(30)を(28)に代入すれば、
【数18】
JP0003837570B2_000023t.gif

式(31)右辺の第1項、第2項は、それぞれ要素符号X、Yの位相シフトkに対する一周期自己相関を表している。当然のことながら、第1項はk(modL)、第2項についてはk(modM)を考えればよい。
【0050】
以上より、互いに素な周期を有する2つの要素符号の積(論理演算では排他的論理和)で定義される複合符号の自己相関値は、それぞれの自己相関値の積に分解できることが証明された。
【0051】
(b)3つの要素符号の積からなる複合符号の相関値
複合符号〔数2〕の自己相関値は、上記(a)の結果を用いれば容易に求まることを以下に示す。
【数19】
JP0003837570B2_000024t.gif

とすれば、符号
【数20】
JP0003837570B2_000025t.gif

の周期はLM、符号Zの周期はNであり、両者は互いに素である。したがって、この場合も互いに素な周期の2符号の積符号の問題に帰着でき、以下の式(32)が直ちに求まる。
【数21】
JP0003837570B2_000026t.gif

さらに右辺第1項は、同じく(a)の結果から、
【数22】
JP0003837570B2_000027t.gif

であるから最終的に、
【数23】
JP0003837570B2_000028t.gif

が得られ、下記が証明された。「互いに素な周期を有する3つの要素符号の積(論理演算、排他的論理和)で定義される複合符号の自己相関は、各要素符号の自己相関値の積に因数分解できる。」(上記の議論から、要素符号数は一般にn≧2で成り立つ)。
【0052】
(c)以下に、式(33)で与えられる自己相関値Rkを、各要素符号がPN符号の場合について求める。上記同様、要素符号の周期は、L、M、N(互いに素)とする。下記の位相シフトによる分類ごとに、1周期内での出現頻度Fkも示す。
(ア)kがいずれの周期の倍数でもない場合
Rk=-1、Fk=(L-1)(M-1)(N-1) (34)
(イ)kがLのみの倍数の場合
第1項=L、第2及び第3項ともに-1
したがって、
Rk=L、Fk=MN-(M+N-1)=(M-1)(N-1) (35)
同様に、
(ウ)kがMのみの倍数の場合
Rk=M、Fk=(L-1)(N-1) (36)
(エ)kがNのみの倍数の場合
Rk=N、Fk=(L-1)(M-1) (37)
(オ)kがLMの倍数の場合
第1項=L、第2項=M、第3項=-1、したがって、
Rk=-LM、Fk=N-1 (38)
同様に、
(カ)kがLNの倍数の場合
Rk=-LN、Fk=M-1 (39)
(キ)kがMNの倍数の場合
Rk=-MN、Fk=L-1 (40)
(ク)kがLMNの倍数の場合
Rk=LMN、Fk=1 (41)
以上、シミュレーションで得られた結果(表2)と完全に一致することがわかる。式(34)~(40)を用いて、k≠0(modLMN)なるすべての位相シフトに対する1周期自己相関値の平均値
【数24】
JP0003837570B2_000029t.gif

を次式(42)で求めることができる。
【数25】
JP0003837570B2_000030t.gif

上式(42)の分子は、上記の結果により、
【数26】
JP0003837570B2_000031t.gif

したがって、
【数27】
JP0003837570B2_000032t.gif

これは、複合符号の自己相関値の平均値は、単一PNの場合と一致することを示している。なお、積符号の1周期自己相関について導いた上記の性質は、積符号そのものの1周期の総和についても成り立つことは自明である。すなわち、それぞれ互いに素な周期L、M、Nを有する要素符号X、Y、Zの積符号Wについて式(44)が得られる。
【数28】
JP0003837570B2_000033t.gif

ここで、各要素符号をPN符号とすれば右辺の各項は-1であるから、結局、

B=-1 (45)

これは、積符号の1周期に-1(論理1)が+1(論理0)より1つ多く含まれることを示しており、上述した平衡性を一般的に裏付けるものである。
【0053】
次に、同期符号として提案した〔数1〕について、上記で得られた結果を適用し、その自己相関値を求める。
〔数1〕 (46)式(46)の論理演算でX、Y、Zを±1とした場合、(Y・Z)は(Y+Z-YZ+1)/2と表すことができるから、式(46)は次の式(47)と等価である(ただし、論理0=+1、論理1=-1)。
【数29】
JP0003837570B2_000034t.gif

ここでも、X、Y、Zは互いに素な周期L、M、Nを持つものとする。上記符号Cの位相シフトkに対する自己相関値ρkは、
【数30】
JP0003837570B2_000035t.gif

上記(a)、(b)で得られた結果を用いると、式(48)は次式(49)のように簡単に表すことができる。ただし、次式でρX、ρY、ρZは、それぞれ要素符号X、Y、Zの位相シフトkに対する1周期自己相関値を表すものとする。
【数31】
JP0003837570B2_000036t.gif

Y、ZがともにPN符号の場合は、
【数32】
JP0003837570B2_000037t.gif

が成り立つことを考慮して、位相シフトkの具体例に対して式(49)を適用してみる。
(ア)kがいずれの周期の倍数でもない場合
ρX=ρY=ρZ=-1であるから、
【数33】
JP0003837570B2_000038t.gif

(イ)kがLMNの倍数の場合
ρX=L、ρY=M、ρZ=Nであるから、
ρk=LMN (52)
(ウ)kがMNの倍数の場合
ρk=-MN (53)
(エ)kがLM又はLNの倍数の場合
【数34】
JP0003837570B2_000039t.gif

(オ)kがLのみの倍数の場合
【数35】
JP0003837570B2_000040t.gif

(カ)kがM又はNのみの倍数の場合
【数36】
JP0003837570B2_000041t.gif

これらより、L、M、Nが十分大きいと、正規化された相関値(上記値をLMNで割った値)は、符号Xの同期(オ)で0.25、符号XとYの同期又は符号XとZの同期(エ)で0.5、さらにすべての同期(イ)で1.0の相関値が得られ、その他の状態では相関値はゼロに収束することが証明された。
【0054】
先に定義した2符号〔数2〕と〔数1〕の間の1周期相互相関を求める。両符号について、要素符号は同一であるとする。1周期相互相関は次の式(57)で定義される。
【数37】
JP0003837570B2_000042t.gif

上記(a)、(b)の結果を用いることにより、式(57)から次式(31)を得る。
【数38】
JP0003837570B2_000043t.gif

ρX、ρY、ρZの定義は上記と同じである。また、全要素符号がPNの場合は、式(58)はさらに簡略化され次式(59)になる。
【数39】
JP0003837570B2_000044t.gif

以下、位相シフトkの特別な場合について、具体例を挙げる。
(ア)kがいずれの周期の倍数でもない場合
μk=-1 (60)
(イ)kがLMNの倍数の場合
【数40】
JP0003837570B2_000045t.gif

(ウ)kがMNの倍数の場合
【数41】
JP0003837570B2_000046t.gif

(エ)kがLM又はNLの倍数の場合
μk=L (63)
(オ)kがM又はNのみの倍数の場合
μk=-1 (64)
(カ)kがLのみの倍数の場合
μk=L (65)
以上より、両符号の相互相関は、各符号の周期が十分長いとき、全要素符号の同期状態(イ)で正規化相関値-0.5を示し、それ以外ではゼロになる。
【0055】
ここまでは、2つの複合符号〔数2〕及び〔数1〕についてそれぞれの1周期自己相関及び両符号間の相互相関の性質について明らかにしてきた。しかし、本発明で提案しているように、1種類の長周期符号〔数2〕を拡散用符号として複数ユーザ間で共用する場合、他ユーザ干渉性能の点で、部分自己相関特性の評価が不可欠である。以下に、この点について検討する。まず、(i)、(ii)で相関シンボル同士が、シンボル同期しており、シンボル極性も同一の場合を考え、次により一般的に、シンボル非同期で、極性も任意の場合(いわゆる偶相関、奇相関)について(iii)で述べる。
【0056】
(i)部分相関値の平均値
複合符号Cの位相シフトkに対する部分自己相関値(相関長k)を次式(66)で定義する。
【数42】
JP0003837570B2_000047t.gif

ここで、

Ci=xiyizi

式(66)のすべてのk(0 modLMN以外)に対する平均値を部分自己相関値の平均値
【数43】
JP0003837570B2_000048t.gif

と定義すると、
【数44】
JP0003837570B2_000049t.gif

一方、0以外のすべてのkに対する1周期自己相関値の平均値
【数45】
JP0003837570B2_000050t.gif

は、上式でK=LMNとし、式(43)の結果を用いれば、
【数46】
JP0003837570B2_000051t.gif

したがって、式(67)、(68)より、
【数47】
JP0003837570B2_000052t.gif

【0057】
(ii)部分自己相関値の分散
Rk(K)の分散は、定義により、
【数48】
JP0003837570B2_000053t.gif

なお、上式右辺の平均化操作は、0以外の全位相シフトkにわたる平均を表す。上式右辺第2項については式(69)で与えられるから、ここでは第1項を求める。
【数49】
JP0003837570B2_000054t.gif

ここで、
【数50】
JP0003837570B2_000055t.gif

は、位相シフトkについて場合分けし、要素符号に対するShift and Add Propertyを適宜適用し、場合ごとに〔数50〕を求め、これらを出現頻度に応じて加重平均をとることで、次式(72)で与えられる。
【数51】
JP0003837570B2_000056t.gif

したがって、
【数52】
JP0003837570B2_000057t.gif

式(69)、(73)から、複合符号の部分相関値の平均値及び2乗平均値は、単一PNのそれらと完全に一致していることがわかる。したがって、式(70)の定義から、分散についても単一PNの場合と同一であり、次式(74)で与えられる。
【数53】
JP0003837570B2_000058t.gif

すなわち、相関長Kが式(72)の条件を満たす限り、本複合符号は拡散信号として単一PN符号と同一の性能を有するといえる。
【0058】
上記と同様に、相関長Kで正規化された相関値に対する分散も以下のようにして求まる。相関長Kで正規化された相関値を次式で定義する。
【数54】
JP0003837570B2_000059t.gif

したがって、
【数55】
JP0003837570B2_000060t.gif

一方。
【数56】
JP0003837570B2_000061t.gif

したがって、正規化部分相関値の分散は、
【数57】
JP0003837570B2_000062t.gif

以上より、相関長Kに対し、周期Pが十分長い場合、上記2つの分散は、各々、
【数58】
JP0003837570B2_000063t.gif

ここでの部分相関の平均値及び分散は、0mod(LMN)以外の全位相シフトkにわたって求めたものであるが、特定位相シフトごとの平均値及び分散も、(i),(ii)及び付録1から容易に求まるので、それらの結果のみを付録3に示す。なお、複合符号の部分相関の分散が単一PNの場合と一致するための相関長K(拡散率)に対する条件(式(72))は、元来本発明で想定しているのが、1つの長周期符号を離散的な位相で識別し、多数ユーザで共用する方式なので、広範囲の離散率に対して、単一PNと同等性能を得る上での制約にはならない。例えば、1024程度の拡散率まで必要な場合でも、L=2047、M=8191、N=131071とすれば、P≒241であり、これは現在の商用CDMAシステムの1つで使用されている符号周期(242-1)相当である。Kが上記の制約条件より大きいと、位相シフトがある符号周期の倍数になる場合が含まれるため、Shift and Add Propertyが相関区間すべてにわたっては保証されないことから、式(77)は近似的にしか成立せず、Kが大きいほど誤差が増大する。この傾向は、表4のシミュレーション結果にも現れている。
【0059】
(iii)シンボル非同期の場合の部分自己相関
ここでは、希望受信シンボルの相関区間Kの途中に干渉シンボルの変換点が存在する場合の影響を、(ii)で求めたシンボル同期の場合に対する部分相関の分散の増分として評価する。干渉シンボルの変換点が相関区間K内に一様に分布していることを仮定した場合、干渉シンボルの極性変化確率を考慮した部分相関変換の分散の平均値は、以下の式(79)で与えられる。
【数59】
JP0003837570B2_000064t.gif

上式右辺第1項は、(ii)で求めたシンボル同期の場合の分散であり、第2項が同期による増分を表している。シンボル非同期の影響を次式(80)に示す第2項と第1項の比Aで評価する。
【数60】
JP0003837570B2_000065t.gif

これから、
【数61】
JP0003837570B2_000066t.gif

上式より
【数62】
JP0003837570B2_000067t.gif

したがって、今想定しているP>>Kの場合には、Aは十分小さく、干渉信号との部分相関についても(ii)のシンボル同期の場合の結果を用いても差し支えないといえる。
【0060】
ここまで説明したような複合符号を用いた系の設計例について述べる。上述したように、本複合符号は、一定の長さ以上(要素符号の最小長が31チップ程度)であれば、その干渉特性はほぼ拡散率で決まる。一方、チャネルごとの時間差を大きく確保するためには、できるだけ長い符号を選ぶ必要がある。まず、符号長については衛星通信を想定し、端末ごとの符号位相の割り当て方式として固定割り当て方式と接続時割り当て方式の両方の場合について考える。前者には要素符号として(511,1023,2047)から生成する周期10.7億チップの符号を、後者には(31,127,511)から生成する200万チップの符号を用いる。これらの2つのケースについて、同期特性と干渉特性を評価し、結果を表5に示す。
【0061】
【表5】
JP0003837570B2_000068t.gif

【0062】
複合符号の同期時間は、位相掃引速度と必要掃引チップ数によって決まる。また、位相掃引速度は回線のS/Nによって決まる。本同期系では、理論どおりの同期時間短縮効果を得るための同期系相関器16(図6)の判定点の所要S/Nが25dBであることは、上述した。この点での雑音としてほとんどCo-channel干渉が支配的と考えると、その場合のS/Nは、回線数、受信信号の帯域幅、及び相関器積分器の帯域幅によって決定される。相関器でのS/Nは、以下の式(82)によって与えられる。
【数63】
JP0003837570B2_000069t.gif

ここで、
【数64】
JP0003837570B2_000070t.gif

である。ここで、設計例として回線数を100とした場合、S/Ni=-20(dB)であるから、これらを式(82)に代入して、S/N25dBを得るための相関器の積分時定数は式(83)によって与えられることがわかる。
【数65】
JP0003837570B2_000071t.gif

すなわち、積分時間としては16000チップ必要である。チップ長は0.1μsであるから、位相の掃引速度は1.6msに1回となる。
【0063】
上記2種類の符号の要素符号の周期の和は、それぞれ3581及び669であるから、同期に要する時間は、S/Nの低下3dBを見込んだ場合、同期時間は40%程度遅延するため、同期符号としてのプリアンブルの時間長は、それぞれ8及び1.5秒となる。初期回線設定に要する時間としては、特に前者(固定割り当て方式)の場合は、通常の地上系移動通信の常識に比べて長くかかることになる。前者の時間を短縮する方法としては、例えば、端末内蔵タイマなどにより、接続時間帯ごとに時間単位で位相を変える「時間別半固定割り当て」の工夫をすれば、符号長が短くて済むため、同期時間をかなり短縮できる。仮に、10の時間帯に分けると、同じ収容端末数でも符号長は10分の1、約1億チップとなり、要素符号の合計長は半分程度となる。すなわち、同期時間を半減させることが可能である。また、さらなる高速化の方法として、図4の(a)に示す捕捉用符号の部分、すなわちプリアンブル部の信号送信レベルを、分散用符号の部分の信号送信レベルに対して上げることによって、同期符号の受信S/Nが高くなり、その分位相掃引速度(サーチ速度)を速めることが可能である。例えば、捕捉用符号の部分の信号送信レベルを3dB上げることによって、式(82)、(83)から積分時間τが1/√2になり、速度が√2倍になる(6dB上げた場合は2倍高速になる)。同時にアクジション(アクセス)する局が多くない場合、プリアンブル部分のみレベルを上げても、全体のパワー上昇はきわめて少ない。ただし、表5は完全固定割り当て方式の場合の特性を示す。なお、もし仮に単一のPN符号で全位相をサーチした場合には、前者では472時間、後者では53分かかり、本発明では、前者では30万分の1に、後者では約3千分の1に同期時間が短縮される計算になる。
【0064】
次に干渉特性について述べる。本拡散符号の部分相関特性は、上述したように従来の単一のPN符号のそれとほぼ同じであることから、その干渉特性も従来と同じく扱うことができる。上述したように、他チャネル一波からの信号対干渉電力比CCIは、符号長にかかわらず拡散率のみに依存する。ここでは、先に示した6つの拡散率についてチャネルあたりの干渉量を求め、トータルの許容信号対干渉電力比を仮に6dBとした場合の同時アクセス可能チャネル数を示している。このときのチャネル数は拡散率の1/4となる。ただし、熱雑音やその他の劣化要因を考慮した場合、この容量は低下する。例えば、他の劣化要因による信号対雑音比が9dBで、信号対トータル雑音比として6dB必要な系では、Co-channel干渉に分配される許容値は9dBとなって、チャネル数は半減(拡散率の1/8)する。
【0065】
以上のように、本発明の方式と従来方式の違いは同期特性においてのみ存在する。つまり、本発明の方式は、高速同期が求められるシステムでは著しい性能を発揮する。一般にCDMA移動通信の回線設計においては、マルチパスフェージングなど他の劣化要因の検討が必要である。しかし本発明が主に想定する衛星通信においては、降雨減衰の問題はあるが、マルチパスがほとんどなく、干渉要因としてはここに示したCCIが支配的である。なお、本発明の方式の性能を地上系CDMA移動通信環境下で評価する場合、マルチパスやそれによるフェージングなどの影響は、通常の地上系移動通信システムのそれと全く同一である。
【0066】
上記式(71)における〔数50〕の導出について説明する。ここで平均値は、位相シフトkとして0(modP)以外のすべてのkに対するCiCi+kCjCj+kの平均値を表す。まず位相シフトkを以下の3つの場合に分けてCiCi+kCjCj+kを求め、それぞれの場合の出現頻度を考慮した果汁平均値として
〔数50〕を求める。
1.位相シフトkが要素符号のいずれの周期(L、M、N)の倍数でもない場合
要素符号X、Y、ZはいずれもPN符号であるから、条件k≠0modL,modM,modNに対して、Shift and Add Propertyにより、
xixi+k=xs∈X、yiyi+k=xt∈Y、zizi+k=zu∈Zであるから、
CiCi+k=xixi+kyiyi+kzizi+k=Ci+k’∈C
同様に、
CjCj+k=Cj+k’∈C
すなわち、

CiCi+kCjCj+k=Ci+k’Cj+k’
=xi+k’xj+k’yi+k’yj+k’zi+k’zj+k’ (A.1)

ここで、部分相関長Kに対して|i-j|≦K-1だから、K-1<min(L,M,N)であれば、上式(A.1)右辺に対し、再びShift and Add Propertyにより、

CiCi+kCjCj+k=xk’+ayk’+bzk’+c (A.2)

したがって、上述した式(44)、(45)を参照すれば、
【数66】
JP0003837570B2_000072t.gif

2.位相シフトkが要素符号の1つの周期のみの倍数の場合
例として、位相シフトkが要素符号Xの周期Lのみの倍数とする。一般性を失わずにk=Lとしても差し支えない。この場合、xi=xi+L、xj=xj+Lかつ、要素符号Y、ZについてShift and Add Propertyが適用できるから、

CiCi+LCjCj+L=Ci+L’Cj+L’
=yi+L’yj+L’zi+L’zj+L’ (A.4)

ここで、1.同様、|i-j|≦K-1に対し、K-1<min(M,N)であれば、式(A.4)右辺に再びShift and Add Propertyを適用し、

CiCi+LCjCj+L=yL’+αzL’+β (A.5)

式(43)の関係は、2符号の積についても適用できるから、これを用いると、
【数67】
JP0003837570B2_000073t.gif

同様に、kがM、Nの倍数の場合はそれぞれ、
【数68】
JP0003837570B2_000074t.gif

3.位相シフトkが要素符号の2つの周期の積の倍数の場合
例として、k=LMの場合を考える。この場合は、

CiCi+LMCjCj+LM=zi+LMzj+LM (A.9)

ここで、上式(A.9)右辺は単一PN符号Zの自己相関だから、|i-j|≦K-1に対し、K<N+1とすれば、結局、
【数69】
JP0003837570B2_000075t.gif

なお、K、Nが正整数だから、上記のKに関する制約はK≦Nと等価であり、符号Zの1周期すべてが含まれる。したがって、相関特性の周期性を考慮すると、この場合は、Kの代わりにK’=KmodNとすることで、N>Kの場合にも
【数70】
JP0003837570B2_000076t.gif

として式(A.10)を適用できる。これは、以下の2つの場合も同様である。kがLN、LMの倍数の場合はそれぞれ、
【数71】
JP0003837570B2_000077t.gif

【数72】
JP0003837570B2_000078t.gif

したがって、相関長Kについて上記のすべての場合を包含するK<min(L,M,N)+1の条件下で、全位相シフトkについての〔数50〕をkの出現頻度を考慮した加重平均により求めることができる。ところで、1.~3.で得た〔数50〕の結果は、式(34)~(40)に示す各位相シフトに対する1周期自己相関値を複合符号の周期LMNで正規化したものに他ならない。以上より、全位相シフトkについての〔数50〕は、式(43)右辺をLMNで割れば直ちに求まる。すなわち、
【数73】
JP0003837570B2_000079t.gif

【0067】
上述した偶相関、奇相関の問題についてさらに説明する。データ変調された他ユーザ信号との部分相関を考える場合、一般に自信号の相関区間内に干渉側のシンボル変換点が存在するので、他ユーザ干渉量を上述したような部分相関値の平均値と部分自己相関値の分散の議論のみで議論するだけでは不十分である。以下に、この点について検討する。シンボル極性の変化としては、正→正、負→負、正→負、負→正の4通りが考えられる。ここでは、これらが等確率(それぞれ1/4)で生起するものとし、干渉信号と自信号は、チップ単位では同期しているものと仮定する。ここで、相関区間長をKチップとし、1≦T≦KなるTチップ目の先頭に干渉シンボルの変換点があるものとし、Tは一様分布と仮定する。以上の前提と、上述した部分相関値の平均値と部分自己相関値の分散の議論より、この場合の部分相関値Ik(K,T)は次式で与えられる。
【数74】
JP0003837570B2_000080t.gif

ここでは、位相シフトk及び変換点タイミングTに対する上記相関値の平均値及び分散を求める。上式の関係から、新たに求める必要があるのは、Ik(K,T)3についてについての平均値及び分散のみである。まずTを固定して、0以外の全位相シフトkに対する平均値及び分散を求める。平均値は下式で与えられる。
【数75】
JP0003837570B2_000081t.gif

一方、2乗平均値は、
【数76】
JP0003837570B2_000082t.gif

右辺第1項及び第2項は、式(59)を参照すれば、それぞれ、
【数77】
JP0003837570B2_000083t.gif

第3項は、
【数78】
JP0003837570B2_000084t.gif

上式右辺について、式(A13)より、
【数79】
JP0003837570B2_000085t.gif

だから、結局、
【数80】
JP0003837570B2_000086t.gif

これらより、
【数81】
JP0003837570B2_000087t.gif

以上より、全位相シフトに対する分散Var(Ik(K,T)3)は、
【数82】
JP0003837570B2_000088t.gif

右辺第1項は、上記で求めた部分相関の分散であり、第2項は、相関区間の途中に干渉信号のシンボル変換点が存在することによる分散の増加分を表している。上式右辺のTに関する平均値を下式により求めると、
【数83】
JP0003837570B2_000089t.gif

変換点での極性変化の確率を先に仮定したものとし、式(A.14)-(A.17)のIk(K,T)m間(m=1-4)の関係に留意すれば、位相シフトk、変換点タイミングT及び極性変化の確率すべてを考慮した分散の平均値は、下式で与えられる。
【数84】
JP0003837570B2_000090t.gif

【0068】
特定位相シフトに対する部分自己相関の平均値及び分散について説明する。ここでは、下記の位相シフトkの場合ごとの相関区間長Kで正規化した部分自己相関の平均値及び分散を示す。
(ア)位相シフトがどの要素符号の周期の倍数でもない場合
【数85】
JP0003837570B2_000091t.gif

(イ)位相シフトがLのみの倍数の場合
【数86】
JP0003837570B2_000092t.gif

(ウ)位相シフトがMのみの倍数の場合
【数87】
JP0003837570B2_000093t.gif

(エ)位相シフトがNのみの倍数の場合
【数88】
JP0003837570B2_000094t.gif

(オ)位相シフトがLMのみの倍数の場合
【数89】
JP0003837570B2_000095t.gif

(カ)位相シフトがLNのみの倍数の場合
【数90】
JP0003837570B2_000096t.gif

(キ)位相シフトがMNのみの倍数の場合
【数91】
JP0003837570B2_000097t.gif

【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】aは複合符号の自己相関特性を示すグラフであり、bは他の複合符号の自己相関特性を示すグラフである。
【図2】a及びbは同じ要素符号X、Y及びZに関して合成の演算の異なる2つのケースについての相関マトリックスを示す図である。
【図3】2つの複合符号の相互相関マトリックスを示した図である。
【図4】符号切り替えによる初期捕捉から定常同期への移行の原理を説明するタイミング図である。
【図5】複合符号を衛星通信によるCDMA多重化方式に適用した場合のアップリンクの信号受信系の一例を示す図である。
【図6】本発明による送信及び受信系の基本構成の一例を示すブロック図である。
【図7】同一帯域で受信されるチャネルW(t)を位相シフトkチップの符号W(t+kTc)で受信したときの様子を示すタイミング図である。
【図8】a、b及びcは3つの位相ケースにおける正規化部分相関値の分布を示すグラフである。
【図9】複合符号について連なり性を調べた結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0070】
1 端末局
2、3、4、18、19、20 要素符号発生器
5、6、21 複合符号合成器
7 拡散部
8 変調部
9 基地局
10 第1相関器
11 搬送波再生回路
12 第1復調器
13 第2復調器
14 第2相関器
15 相関検出器・符号位相制御器
16 同期系相関器
17 クロック再生回路
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
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(In Japanese)【図7】
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(In Japanese)【図8】
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(In Japanese)【図9】
8