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Specification :(In Japanese)両親媒性化合物、可溶性カーボンナノチューブ複合体

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P3985025
Publication number P2006-265151A
Date of registration Jul 20, 2007
Date of issue Oct 3, 2007
Date of publication of application Oct 5, 2006
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)両親媒性化合物、可溶性カーボンナノチューブ複合体
IPC (International Patent Classification) C07C 235/46        (2006.01)
C07C 231/02        (2006.01)
FI (File Index) C07C 235/46 CSP
C07C 231/02 ZNM
Number of claims or invention 9
Total pages 14
Application Number P2005-084420
Date of filing Mar 23, 2005
Exceptions to lack of novelty of invention (In Japanese)特許法第30条第1項適用 平成17年3月26日 社団法人日本化学会主催の「日本化学会 第85春季年会(2005)」において文書をもって発表
Date of request for substantive examination Nov 2, 2006
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】白井 汪芳
【氏名】木村 睦
【氏名】三木 徳俊
Accelerated examination, or accelerated appeal examination (In Japanese)早期審査対象出願
Representative (In Japanese)【識別番号】100088306、【弁理士】、【氏名又は名称】小宮 良雄
【識別番号】100126343、【弁理士】、【氏名又は名称】大西 浩之
Examiner (In Japanese)【審査官】前田 憲彦
Document or reference (In Japanese)特表2005-539077(JP,A)
特開2006-249399(JP,A)
特表2004-506530(JP,A)
Field of search C07C 235/00
C07C 231/00
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
下記化学式I
【化1】
JP0003985025B2_000007t.gif

(式I中、mは3~16、nは1~6である。)
で示される両親媒性化合物。
【請求項2】
下記式A
Br-O-(CH2)m-(OCH2CH2)n-OCH3 ・・・A
(式A中、mは3~16、nは1~6である。)
で示される化合物と没食子酸メチルとを反応させて、下記式B
【化2】
JP0003985025B2_000008t.gif

(式B中、mは3~16、nは1~6である。
で示される没食子酸メチルエステル誘導体を得、次いで該没食子酸メチルエステル誘導体をエステルの加水分解によって没食子酸誘導体とし、続いて該没食子酸誘導体と1-ピレンメチルアミン塩酸塩とを反応させることを特徴とする請求項1に記載した化学式Iで示される両親媒性化合物の製造方法。
【請求項3】
下記化学式II
【化3】
JP0003985025B2_000009t.gif

(式II中、mは3~16、nは1~6である。)
で示される両親媒性化合物。
【請求項4】
下記式A
Br-O-(CH2)m-(OCH2CH2)n-OCH3 ・・・A
(式A中、mは3~16、nは1~6である。)
で示される化合物と没食子酸メチルとを反応させて、下記式B
【化4】
JP0003985025B2_000010t.gif

(式B中、mは3~16、nは1~6である。
で示される没食子酸メチルエステル誘導体を得、次いで該没食子酸メチルエステル誘導体をエステルの加水分解によって没食子酸誘導体とし、続いて該没食子酸誘導体とピレンメタノールとを反応させることを特徴とする請求項3に記載した化学式IIで示される両親媒性化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載した化学式Iで示される両親媒性化合物、または請求項3に記載した化学式IIで示される両親媒性化合物を、カーボンナノチューブに結合させたカーボンナノチューブ複合体。
【請求項6】
請求項5に記載したカーボンナノチューブ複合体を含む分散液。
【請求項7】
請求項5に記載したカーボンナノチューブ複合体の両親媒性化合物にシリカを重合させたことを特徴とするシリカに覆われたカーボンナノチューブ。
【請求項8】
請求項5に記載したカーボンナノチューブ複合体の表面に絶縁コーティングがされていることを特徴とする微細導電線。
【請求項9】
前記絶縁コーティングがシリカであることを特徴とする請求項8に記載の微細導電線。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物である両親媒性化合物、およびその両親媒性化合物を非共有的に結合したカーボンナノチューブ複合体に関し、さらにはカーボンナノチューブを絶縁コーティングした微細導電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、著しい発達を遂げた半導体集積回路は、描画によって回路パターンを形成する技術では微細化の限界に達しつつあり、さらなる微細化を可能にする新たな回路パターンの形成材料の出現が望まれている。このような状況下で、カーボンナノチューブは次世代の電子デバイスの材料として最も注目されているものの一つである。
【0003】
カーボンナノチューブはグラフェンシートを筒状に巻いた分子であり、その直径と巻き方の違いによって、金属的、半導体的のような異なる性質を示す。また、電気、熱伝導性に優れ、機械的強度が非常に強く、熱的にも安定であるため、カーボンナノチューブの応用開発研究が盛んに行われている。
【0004】
しかし、カーボンナノチューブは、バンドルで存在し、それらが互いに激しく絡まり合った三次元ネットワークを形成するため、扱いが困難となっている。さらに、カーボンナノチューブ表面はグラファイトと同じ構造をもつため、溶媒や水への溶解性がない。そのため、カーボンナノチューブの精製、分離、さらにはナノデバイスとしての特性を生かした微細形状に仕上げることが困難であり、その応用への妨げとなっている。
【0005】
このような現状を打開するため、カーボンナノチューブを可溶化する試みが種々なされている。例えば非特許文献1には、チューブのオープンエンドに有機基を導入するという化学修飾による手法が示されている。特許文献1には、カーボンナノチューブの外側壁に、非共有的な相互作用によりポリマーを結合させカーボンナノチューブを可溶化させることが示されている。また特許文献2には、カーボンナノチューブの周囲にポリマーを巻きつけることで複合化したカーボンナノチューブが示されている。
【0006】

【特許文献1】特開2004-2850号公報
【特許文献2】特表2004-506530号公報
【非特許文献1】田中一義 カーボンナノチューブ・ナノデバイスへの挑戦 化学同人 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、カーボンナノチューブが持つ優れた特性を発現させる微細構造物を作成するためになされたもので、非共有結合によりカーボンナノチューブと複合体を形成するπ共役化合物である新規化合物、その新規化合物を非共有的に結合した溶媒分散性のカーボンナノチューブ複合体、さらにはそのカーボンナノチューブ複合体を絶縁コーティングした微細導電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された両親媒性化合物は、下記化学式I
【化1】
JP0003985025B2_000002t.gif
(式I中、mは3~16、nは1~6である。)
で示されるものである。
【0009】
特許請求の範囲の請求項2に記載された製造方法は、請求項1に記載した両親媒性化合物の製造方法であって、下記式A
Br-O-(CH2)m-(OCH2CH2)n-OCH3 ・・・A
(式A中、mは3~16、nは1~6である。)
で示される化合物と没食子酸メチルとを反応させて、下記式B
【化2】
JP0003985025B2_000003t.gif

(式B中、mは3~16、nは1~6である。
で示される没食子酸メチルエステル誘導体を得、次いで該没食子酸メチルエステル誘導体をエステルの加水分解によって没食子酸誘導体とし、続いて該没食子酸誘導体と1-ピレンメチルアミン塩酸塩とを反応させることを特徴とする。
【0010】
特許請求の範囲の請求項3に記載された両親媒性化合物は、下記化学式II
【化3】
JP0003985025B2_000004t.gif
(式II中、mは3~16、nは1~6である。)
で示される。
【0011】
特許請求の範囲の請求項4に記載された製造方法は、請求項3に記載した両親媒性化合物の製造方法であって、下記式A
Br-O-(CH2)m-(OCH2CH2)n-OCH3 ・・・A
(式A中、mは3~16、nは1~6である。
で示される化合物と没食子酸メチルとを反応させて、下記式B
【化4】
JP0003985025B2_000005t.gif

(式B中、m、nは前記式Aと同じ。)
で示される没食子酸メチルエステル誘導体を得、次いで該没食子酸メチルエステル誘導体をエステルの加水分解によって没食子酸誘導体とし、続いて該没食子酸誘導体とピレンメタノールとを反応させることを特徴とする。
【0012】
特許請求の範囲の請求項5に記載されたカーボンナノチューブ複合体は、請求項1に記載した記化学式Iで示される両親媒性化合物、または請求項3に記載した化学式IIで示される両親媒性化合物を、カーボンナノチューブに結合させたものである。
【0013】
特許請求の範囲の請求項6に記載された分散液は、請求項5に記載したカーボンナノチューブ複合体を含むものである。
【0014】
特許請求の範囲の請求項7に記載されたシリカに覆われたカーボンナノチューブは、請求項5に記載したカーボンナノチューブ複合体の両親媒性化合物にシリカを重合させたことを特徴とする。
【0015】
特許請求の範囲の請求項8に記載された微細導電線は、請求項5に記載したカーボンナノチューブの表面に絶縁コーティングがされていることを特徴とする。
【0016】
同じく請求項9に記載された微細導電線は、請求項8に記載の微細導電線であって、前記絶縁コーティングがシリカであることを特徴とする。
【0017】
本発明で用いられる前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブであっても多層カーボンナノチューブであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の両親媒性化合物は、非共有結合によってカーボンナノチューブとの複合体を形成することができる。非共有結合は直接的な結合ではないため、本来の性質を損なうことなくカーボンナノチューブを容易に複合化することができる。本発明の両親媒性化合物により複合化されたカーボンナノチューブは溶媒分散性を示し、カーボンナノチューブの精製、分離を可能にする。
【0019】
本発明のシリカで覆われたカーボンナノチューブは、前記カーボンナノチューブ複合体中の両親媒性化合物にシリカを重合させて得られる。このように複合化を利用して表面コーティングされたカーボンナノチューブは、バンドルが互いに激しく絡まり合った三次元ネットワークを形成することなく、微細形状のまま扱うことが容易となる。また、カーボンナノチューブが本来有する優れた特性を損なうことなく発現する。
【0020】
カーボンナノチューブは導電性を有することから、シリカのような絶縁体で表面を絶縁コーティングしたカーボンナノチューブは、ナノスケールの微細導電線として利用することができる。カーボンナノチューブ自体の導電性をコントロールすれば異なる導電性の微細導電線を得られるため、これらの微細導電線は、電界効果型トランジスタや論理ゲートなどの分子エレクトロニクス材料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の両親媒性化合物はピレン部位を有するπ共役化合物であり、好ましい形態のものは、以下の化学反応式のようにして合成する。
【0022】
【化5】
JP0003985025B2_000006t.gif

【0023】
まず、化学反応式中Aで示され所望の炭素数を有する化合物(前記化学式中では、m=10、n=3)と没食子酸メチルとを有機溶媒に溶解して、炭酸カリウムをゆっくり加え、窒素気流下で撹拌還流して反応させ、Bで示される没食子酸メチルエステル誘導体を合成する。前記有機溶媒としては、例えばジメチルホルムアミド(DMF)を用いることができる。
【0024】
次に、化学反応式中Bで示される没食子酸メチルエステル誘導体に水を加えて撹拌還流することでエステル部分を加水分解し、Cで示される没食子酸誘導体を合成する。水とともに水酸化カリウムのようなアルカリを加えると、反応が著しく促進される。
【0025】
化学反応式中Cで示される没食子酸誘導体と、1-ピレンメチルアミン塩酸塩とを、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)によるカップリング反応で縮合させると、前記化学式Iで示される本発明の両親媒性化合物が得られる。合成した化合物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーで精製することが好ましい。
【0026】
また、化学反応式中Cで示される没食子酸誘導体と、ピレンメタノールとを、DCCによるカップリング反応で縮合させると、前記化学式IIで示される本発明の両親媒性化合物が得られる。
【0027】
前記化学式iは3,4,5-tris-(10-{2-[2-(2-methoxy-ethoxy)-ethoxy]-ethoxy}
-decyloxy)-N-pyren-1-ylmethyl-benzamide、および、前記化学式iiは、
3,4,5-tris-(10-{2-[2-(2-methoxy-ethoxy)-ethoxy]-ethoxy}-decyloxy)-benzoic acid
pyren-1-ylmethyl esterである。
【0028】
カーボンナノチューブを分散させた溶媒に本発明の両親媒性化合物を加え、分散させると、カーボンナノチューブと両親媒性化合物との複合体を形成することができる。この複合体は、本発明の両親媒性化合物が有するピレン部位とカーボンナノチューブとの間のπ‐π相互作用、疎水性相互作用、アミド基の水素結合のような非共有結合によって形成されるものである。カーボンナノチューブは溶媒や水に対して不溶性であるが、カーボンナノチューブを複合化すると、カーボンナノチューブは可溶化する。これは、前記複合体中の両親媒性化合物による溶媒和が可能となり、カーボンナノチューブを溶媒中で長期間安定に分散させるためである。ここでいうカーボンナノチューブの可溶化とは、溶媒中で長期間安定に分散する状態も含む。本発明のカーボンナノチューブ複合体をクロロホルムに分散させると、カーボンナノチューブが分離、沈澱することなく、均一な分散状態を安定に保つことができる。
【0029】
本発明の両親媒性化合物において、前記化学式Iで示される化合物はその分子中にアミド結合を有していることから、カーボンナノチューブを複合化する化合物としてより好ましい。
【0030】
前記複合体の分散は、超音波処理により行われることが好ましい。また、前記複合体を分散させる溶媒としては、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、トルエン、アルコール類(例えばメタノール)を用いることができるが、クロロホルムであると好ましい。
【0031】
本発明のシリカに覆われたカーボンナノチューブは、前記カーボンナノチューブ複合体中の両親媒性化合物にシリカを重合して得られる。シリカで覆うことでカーボンナノチューブ同士の絡まり合いは緩和され、微細形状のまま容易に扱うことができるようになる。また、カーボンナノチューブは導電性を有するため、絶縁体であるシリカを重合して表面をコーティングしたカーボンナノチューブ複合体は、ナノスケールの微細導電線として扱うことができる。
【0032】
前記シリカに覆われたカーボンナノチューブおよび前記微細導電線を得るためのシリカの重合は、ゾルゲル重合で行われることが好ましい。また、前記微細導電線の表面をコーティングする物質はシリカに限定されず、半導体である酸化チタンや酸化タンタル、及びニッケルや白金などの金属から選ばれてもよい。
【0033】
本発明の両親媒性化合物は溶媒中において、分子中のピレン部位が一次元カラム状にスタッキングして繊維状の会合体を形成する。従って、カーボンナノチューブと前記複合体を形成した後に複合体中の両親媒性化合物を繊維状に会合させてもよい。前記複合体を会合させると、会合体中でカーボンナノチューブが配列して繊維状となる。この繊維状会合体中の両親媒性化合物にシリカを重合させると繊維状会合体が固定され、シリカで表面がコーティングされた繊維が得られる。この繊維はカーボンナノチューブによる導電性を示すため、ナノスケールの微細導電線として扱うことができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
本発明を適用する両親媒性化合物を合成した例を実施例1及び2に示す。
【0036】
(実施例1)
3,4,5-tris-(10-{2-[2-(2-methoxy-ethoxy)-ethoxy]-ethoxy}-decyloxy)-N-pyren-
1-ylmethyl-benzamideの合成
まず、10-{2-[2-(2-methoxy-ethoxy)-ethoxy]-ethoxy}-decan-1-ol 19.0g(5.9×10-2mol)にテトラヒドロフラン(THF)20mlを加え、水25mlに溶解させた水酸化ナトリウム3.54g(8.85×10-2mol)水溶液を加え、氷浴中で撹拌した。そこへ35mlのTHFに溶解させたp-トルンスルホン酸クロライド13.5g(7.08×10-2mol)をゆっくりと滴下し、0℃で3時間撹拌した。その後ジクロロメタンで抽出、0.1規定の塩酸水溶液で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を減圧除去した。得られた生成物の27.6g(5.8×10-2mol)とLiBr・H2Oの18.24g(1.74×10-1mol)に100mlのアセトンを加え、一晩撹拌還流を行った。溶媒を減圧除去した後、ジクロロメタンで抽出、水で3回洗浄して硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒を減圧除去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:Rf=0.33)を2回行って精製し、無色で油状の1-bromo-10-{2-[2-(2-methoxy-ethoxy)-ethoxy]-ethoxy}-decane(前記式Aのm=10、n=3である化合物)を得た。
【0037】
次に、没食子酸メチル0.36g(1.96×10-3mol)と、上記で得られた1-bromo-10-{2-[2-(2-methoxy-ethoxy)-ethoxy]-ethoxy}-decaneの3.0g(7.83×10-3mol)とにジメチルホルムアミド(DMF)100mlを加え撹拌した。そこに炭酸カリウム1.35g(9.8×10-3mol)をゆっくり加え、窒素気流下60℃で3日間撹拌還流した。固形物を吸引ろ過した後溶媒を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:Rf=0.15)を2回行い精製し、生成物b(前記式Bのm=10、n=3である化合物)を得た。
【0038】
得られた生成物bの1.69g(1.55×10-3mol)にエタノール18mlを加えて撹拌し、そこへ2mlの水に溶解した水酸化カリウム0.173g(3.1×10-3mol)を加え、95℃で10時間撹拌還流を行った。酢酸を数滴加えた後、溶媒を減圧濃縮し、エーテルで抽出、水で3回洗浄した。硫酸マグネシウムで脱水して溶媒を減圧濃縮することで、エステルの加水分解を行い、無色の油状生成物c(前記式Cのm=10、n=3である化合物)を得た。
【0039】
この油状生成物cの0.9g(8.4×10-4mol)に乾燥ジクロロメタンを加え、そこへ1-ピレンメチルアミン塩酸塩の0.29g(1.1×10-3mol)と、トリエチルアミン0.17ml(1.12×10-3mol)とを加え、窒素気流下で20分間撹拌した。そこにジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)0.52g(2.52×10-3mol)とジメチルアミノピリジルp-トルエンスルホン酸(DPTS)0.074g(2.52×10-4mol)とを加え窒素気流下で2日間撹拌した。自然ろ過を2回行って固形物を除去した後溶媒を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)と高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、溶媒を減圧除去して無色で油状の3,4,5-tris-(10-{2-[2-(2-methoxy-ethoxy)-ethoxy]-ethoxy}-
decyloxy)-N-pyren-1-ylmethyl-benzamide(前記式I)を収率81.4%で得た。得られた化合物のフーリエ変換赤外分光分析(FT-IR)と1H-核磁気共鳴測定(1H-NMR)と13C-核磁気共鳴測定(13C-NMR)とマトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型質量分析(MALDI-TOF-MS)との分析データは、この構造を支持している。
【0040】
FT-IR(NaCl): disappear of 1714cm-1(ν,-COOH)
1H-NMR(CDCl3,400.13MHz): δ=8.4(d,J=9.2Hz,1H,ArH), 8.19(d,J=7.6Hz,2H,ArH), 8.15(t,1H,ArH), 8.13(d,J=5.2Hz,1H,ArH), 8.05(d,J=2.8Hz,2H,ArH), 8.02(d,J=7.6Hz,2H,ArH), 6.99(d,J=s,2H,ArH), 6.57(t,1H,-NH), 5.32(d,J=5.2Hz,2H,-CH2NH-), 3.93(t,J=6.4Hz,6H,-OCH2CH2-), 3.62-3.3(m,36H,-OCH2CH2O-), 1.72(t,6H,-OCH2CH2-), 1.54(t,J=6.4Hz,6H,-OCH2CH2-), 1.37(t,J=6.8Hz,6H,-OCH2CH2CH2-), 1.26(m,36H,-CH2CH2-)
13C-NMR(CDCl3,100.61MHz)δ: 180.9, 178.8, 167.5, 167.0, 153.0, 141.2, 131.2, 131.1, 130.7, 129.2, 129.1, 128.3, 127.6, 127.4, 127.3, 126.1, 125.4, 125.3, 125.0, 124.7, 122.9, 111.7, 105.9, 89.2, 78.3, 77.3, 77.2, 77.0, 76.7, 73.4, 71.9, 71.5, 70.6, 70.5, 70.0, 69.3, 58.9, 42.6, 32.3, 30.2, 29.6, 29.5, 29.4, 29.3, 27.7, 26.2, 25.9, 3.83
MALDI-TOF-MS(Dithranol): m/z=1290.74, C75H119NO16計算値1290.74
【0041】
(実施例2)
3,4,5-tris-(10-{2-[2-(2-methoxy-ethoxy)-ethoxy]-ethoxy}-decyloxy)-benzoic acid
pyren-1-ylmethyl esterの合成
実施例1で得られた無色の油状生成物cの1.0g(9.28×10-4mol)に乾燥ジクロロメタンを加え、そこへピレンメタノール0.27g(1.2×10-3mol)を加え、窒素気流下で20分間撹拌した。そこにDCCの0.57g(2.78×10-3mol)とジメチルアミノピリジル p-トルエンスルホン酸(DPTS)0.082g(2.78×10-4mol)とを加え窒素気流下で2日間撹拌した。自然ろ過を2回行って固形物を除去した後溶媒を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=98:2)を2回と高速液体クロマトグラフィー(クロロホルム)とで精製し、溶媒を減圧除去して無色で油状の3,4,5-tris-(10-{2-[2-(2-methoxy-
ethoxy)-ethoxy]-ethoxy}-decyloxy)-benzoic acid pyren-1-ylmethyl ester(前記式II)を収率33%で得た。得られた化合物の1H-NMRと13C-NMRとMALDI-TOF-MSとの分析データは、この構造を支持している。
【0042】
1H-NMR(CDCl3,400.13MHz): δ=8.4(d,1H,ArH), 8.1(t,2H,ArH), 8.0(d,6H,ArH), 7.2(t,2H,ArH), 6.0(s,2H,ArH), 3.9(m,6H,-OCH2-), 3.6(m,36H,-OCH2CH2O-), 3.5(4,6H,-OCH2CH2-), 3.3(s,9H,-OCH3), 1.7(m,6H,-OCH2CH2-), 1.5(t,6H,-OCH2CH2CH2-), 1.2(t,36H,-CH2-)
13C-NMR(CDCl3,100.61MHz)δ: 166.4, 152.8, 142.6, 131.7, 131.2, 130.7, 129.1, 128.1, 127.8, 127.7, 127.3, 126.1, 125.5, 125.4, 124.6, 123.0, 108.2, 108.0, 77.3, 77.0, 76.7, 73.4, 71.9, 71.5, 70.6, 70.5, 70.0, 69.2, 65.3, 59.3, 59.0, 30.2, 29.6, 29.5, 29.3, 29.2, 26.1, 26.0, 14.4
MALDI-TOF-MS(Dithranol): m/z=1314.6(M+Na+), 1330.5(M+K+), C75H118O17計算値1291.73
【0043】
次に、実施例1で得られた両親媒性化合物を用いて、本発明を適用する両親媒性化合物と単層カーボンナノチューブとの複合体の分散溶液を調製した例を実施例3に示す。
【0044】
(実施例3)
単層カーボンナノチューブ複合体分散液の調製
単層カーボンナノチューブ1mgにクロロホルム10mlを加えて、超音波処理を1時間行った。そこへ実施例1で得られた両親媒性化合物5mgを加えて、さらに超音波処理を5分間行い、単層カーボンナノチューブと実施例1の化合物との複合体を形成した。溶媒を減圧濃縮して、メタノール10mlを加え、さらに超音波処理を5分間行った。遠心分離(2000g)を10分間行った後、上澄みをデカンテーションして、単層カーボンナノチューブ複合体の分散溶液を得た。
【0045】
実施例1で得られた化合物、および実施例3で得られた単層カーボンナノチューブ複合体の分散溶液を用いて、以下のような評価を行った。
【0046】
(分散液の安定性評価)
実施例3で得られた分散液を6ヶ月以上放置し、分散状態を確認した。
【0047】
(可視吸収スペクトル及び蛍光スペクトル測定)
実施例1で得られた化合物、および実施例3で得られた分散溶液について、それぞれ3.72×10-5mol/Lにおける可視吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを測定した。可視吸収スペクトル測定結果を図1に、蛍光スペクトル測定結果を図2に示す。
【0048】
実施例3で得られた単層カーボンナノチューブ複合体の分散溶液を放置したところ、分離、沈澱等はみられず、6ヶ月以上安定に分散したままの状態を保った。このことから、本発明の両親媒性化合物と単層カーボンナノチューブとの複合体が形成されていることを確認できた。
【0049】
また、図1、図2から明らかなように、可視吸収スペクトルは、実施例1の化合物、実施例3の単層カーボンナノチューブ複合体の分散溶液とも全体的に左上がりのブロードなピークであり、分散溶液の単層カーボンナノチューブに基づく吸収ピークが実施例1の吸収ピークに重なっていた。蛍光スペクトル測定では、分散溶液の蛍光消光が見られた。この蛍光消光は、複合体中の単層カーボンナノチューブとピレン部位とのπ-π相互作用によるものと考えられる。よって、本発明の両親媒性化合物と単層カーボンナノチューブとの複合体が形成されていることが明らかとなった。
【0050】
次に、ゾル-ゲル重合を用いて、実施例3で得られた単層カーボンナノチューブ複合体にシリカを重合させた例を、実施例4に示す。
【0051】
(実施例4)
実施例3で得られた単層カーボンナノチューブ複合体の分散溶液の1.2mg(9.3×10-7mol)にメタノール500μlとテトラエトキシシラン(TEOS)4.5μl(2.0×10-6mol)とを加え、さらに水500μlを加えて冷却した。その後12規定の塩酸100μlを加えて常温で放置し、シリカを重合した。
【0052】
実施例4で得られたシリカ重合複合体を用いて、以下のような評価を行った。
【0053】
(透過型電子顕微鏡観察)
JEM-2010(JEOL社製)を用いて、実施例4で得た複合体の観察を行った。
【0054】
(ラマンスペクトル測定)
実施例4で得た複合体をスライドガラス上にキャストし、514nmのレーザーを用いてラマンスペクトルを測定した。測定結果を図3に示す。
【0055】
透過型電子顕微鏡観察では、繊維状の会合体が観察された。これは、複合体中の実施例1の化合物の、疎水性であるピレン部位が一次元のカラム状にスタックするためであると考えられる。繊維の直径は4nm程度であり、その繊維内部にもう一本の繊維を確認することができた。内部の繊維の直径は1.4nm程度、内径は1.2nm程度であった。この二重構造の繊維は、単層カーボンナノチューブがシリカで覆われた繊維であると考えられる。また、図3からは、単層カーボンナノチューブ特有のピーク(171cm-1付近のラジアルブリージングモード、1340cm-1付近のDバンド、1570, 1593cm-1付近のGバンド)がみられた。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明を適用する両親媒性化合物I、及び本発明を適用する両親媒性化合物と単層カーボンナノチューブとの複合体の分散溶液の3.72×10-5mol/Lにおける可視吸収スペクトルである。

【0057】
【図2】本発明を適用する両親媒性化合物I、及び本発明を適用する両親媒性化合物と単層カーボンナノチューブとの複合体の分散溶液の3.72×10-5mol/Lにおける蛍光スペクトルである。

【0058】
【図3】本発明を適用する、実施例4で得られたシリカに覆われたカーボンナノチューブのラマンスペクトルである。
Drawing
(In Japanese)【図1】
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(In Japanese)【図2】
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(In Japanese)【図3】
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