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Specification :(In Japanese)集電舟の揚力特性安定化構造

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P4725835
Publication number P2006-141169A
Date of registration Apr 22, 2011
Date of issue Jul 13, 2011
Date of publication of application Jun 1, 2006
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)集電舟の揚力特性安定化構造
IPC (International Patent Classification) B60L   5/20        (2006.01)
FI (File Index) B60L 5/20 Z
Number of claims or invention 4
Total pages 11
Application Number P2004-330077
Date of filing Nov 15, 2004
Date of request for substantive examination Apr 11, 2007
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】鈴木 昌弘
【氏名】池田 充
Representative (In Japanese)【識別番号】100104064、【弁理士】、【氏名又は名称】大熊 岳人
Examiner (In Japanese)【審査官】東 勝之
Document or reference (In Japanese)特開平05-252605(JP,A)
特開平10-178702(JP,A)
特開平07-163005(JP,A)
特開平05-049103(JP,A)
特開平07-264704(JP,A)
特開平09-130906(JP,A)
Field of search B60L 5/00 - 5/42
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
集電舟の揚力特性を安定化させる集電舟の揚力特性安定化構造であって、
前記集電舟に支持されてトロリ線と接触するすり板の摩耗量に関わらず、このすり板の前端面とこのすり板の上面とが交わる上側角部の角度が一定であり、
前記すり板の前端面と前記集電舟の上側前面とが同一面であり、
前記すり板が摩耗前の状態であるときに前記上側角部から剥離した気流が前記すり板の上面で再付着する場合には、前記すり板が摩耗後の状態であるときにも前記上側角部から剥離した気流が前記すり板の上面で再付着するように、このすり板の幅が設定されており
前記集電舟は、この集電舟の長さ方向と直交する平面で切断したときの下側以外の部分の断面形状が、係数a,b、揚力L、すり板が摩耗していない状態new、すり板が摩耗している状態old、平均値ave、実効値rms及び迎角αであるときに、以下の数1に示す目的関数が最小になるような形状であること、
【数1】
JP0004725835B2_000005t.gif
を特徴とする集電舟の揚力特性安定化構造。
【請求項2】
集電舟の揚力特性を安定化させる集電舟の揚力特性安定化構造であって、
前記集電舟に支持されてトロリ線と接触するすり板の摩耗量に関わらず、このすり板の前端面とこのすり板の上面とが交わる上側角部の角度が一定であり、
前記すり板の前端面と前記集電舟の上側前面とが同一面であり、
前記すり板が摩耗前の状態であるときに前記上側角部から剥離した気流が前記すり板の上面で再付着しない場合には、前記すり板が摩耗後の状態であるときにも前記上側角部から剥離した気流が前記すり板の上面で再付着しないように、このすり板の幅が設定されており
前記集電舟は、この集電舟の長さ方向と直交する平面で切断したときの下側以外の部分の断面形状が、係数a,b、揚力L、すり板が摩耗していない状態new、すり板が摩耗している状態old、平均値ave、実効値rms及び迎角αであるときに、以下の数1に示す目的関数が最小になるような形状であること、
【数1】
JP0004725835B2_000006t.gif
を特徴とする集電舟の揚力特性安定化構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の集電舟の揚力特性安定化構造において、
前記集電舟の前端面が流線型であること、
を特徴とする集電舟の揚力特性安定化構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の集電舟の揚力特性安定化構造において、
前記集電舟の下面が流線型であること、
を特徴とする集電舟の揚力特性安定化構造。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
この発明は、集電舟の揚力特性を安定化させる集電舟の揚力特性安定化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新幹線などの高速化が進むにつれて集電装置(パンタグラフ)の空力特性が問題となっている。集電装置の空力性能には、トロリ線との接触力を一定に保つために揚力の安定化を図ることと、空力音の発生を抑えて低空力音化を図ることの二つが要求されている。集電装置の構成部品のうち空力性能に密接に関わる部分は集電舟(舟体)である。揚力の安定化を図るためには、集電舟に対する気流の迎角が変化しても揚力は迎角に関わらず略一定である必要がある。このため、迎角に鈍感な集電舟の形状として角張った形状が考えられるが、このような鈍頭形状では空力音を低減することが困難である。一方、空力音の低減を図るためには、集電舟の断面形状を可能な限り剥離を抑えることができる流線型にすることが好ましいが、迎角の変化に揚力が敏感に反応し、すり板が摩耗して集電舟の外観形状が変化すると、この集電舟の周囲の空気の流れが変化して揚力の変化の要因となる。このように、揚力の安定化と低空力音化の両方を同時に満たすことは極めて困難である。
【0003】
図6は、従来の集電舟(従来技術1)を模式的に示す断面図であり、図6(A)はすり板の摩耗前の状態を示し、図6(B)はすり板の摩耗後の状態を示す。図7は、従来の集電舟(従来技術2)を模式的に示す断面図であり、図7(A)はすり板の摩耗前の状態を示し、図7(B)はすり板の摩耗後の状態を示す。図8は、従来の集電舟(従来技術3)を模式的に示す断面図であり、図8(A)はすり板の摩耗前の状態を示し、図8(B)はすり板の摩耗後の状態を示す。
【0004】
図6に示す従来の集電舟(従来技術1)101は、A方向に移動して新品の状態のすり板102が摩耗しても、集電舟101の周囲の気流Fの流れが大きく変化しない。このため、集電舟101に作用する揚力Lの変化が少ないが、集電舟101の断面形状が鈍頭形状であるため空力音が大きくなる問題点がある。図7に示す従来の集電舟(従来技術2)201は、A方向に移動して新品の状態のすり板202が摩耗すると、集電舟201の周囲の気流Fの流れが変化する。このため、集電舟201に作用する揚力Lも変化して集電性能が安定化せず、集電舟201の断面形状が鈍頭形状であるため空力音が大きくなる問題点がある。図8に示す従来の集電舟(従来技術3)301は、A方向に移動したときに集電舟301の断面形状が流線型であるため空力音は小さくなるが、新品の状態からすり板302が摩耗すると、集電舟301の周囲の気流Fの流れが大きく変化する。このため、集電舟301に作用する揚力Lも大きく変化し集電性能が安定化しないという問題点がある。このように、二つの相反する空力性能を満たすために、現状では風洞試験などを繰り返して集電舟の形状を求めており、多くのコストと時間を要している。
【0005】
従来の集電舟の揚力制御構造は、集電舟の前縁部の上側に形成された上側空気孔と、集電舟の前縁部の下側に形成された下側空気孔と、上側空気孔と接続する上側空気管と、下側空気孔と接続する下側空気管と、上側空気管からの空気の吐き出し量及び吸い込み量を調整する上側絞り弁と、下側空気管からの空気の吐出し量及び吸い込み量を調整する下側絞り弁と、上側空気管及び下側空気管に接続される空気だめと、上側空気管及び下側空気管に圧縮空気を供給するとともに上側空気管及び下側空気管から空気を吸い込むコンプレッサなどを備えている(例えば、特許文献1参照)。このような従来の集電舟の揚力制御構造では、集電舟に作用する揚力を減少させるときには、上側空気孔からの空気の吐き出し量を増加させるか、下側空気孔からの空気の吸い込み量を減少させている。一方、このような従来の集電舟の揚力制御構造では、集電舟に作用する揚力を増加させるときには、上側空気孔からの空気の吐き出し量を減少させるか、下側空気孔からの空気の吸い込み量を増加させている。
【0006】

【特許文献1】特開2000-270403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の集電舟の揚力制御構造では、上側空気孔や下側空気孔から吐き出す圧縮空気によって、集電舟の周囲の空気の流れを制御する必要がある。このため、上側空気孔や下側空気孔に外部からの空気を供給する空気だめやコンプレッサなどが必要になるとともに、集電舟内に絞り弁などを設置する必要があり、機構が複雑になってしまう問題点があった。
【0008】
この発明の課題は、集電舟に作用する揚力特性を簡単な構造によって安定化させることができる集電舟の揚力特性安定化構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、集電舟(8)の揚力特性を安定化させる集電舟の揚力特性安定化構造であって、前記集電舟に支持されてトロリ線(1a)と接触するすり板(7)の摩耗量(Δd)に関わらず、このすり板の前端面(7b)とこのすり板の上面(7a)とが交わる上側角部(7c)の角度(θ)が一定であり、前記すり板の前端面と前記集電舟の上側前面(8c)とが同一面であり、前記すり板が摩耗前の状態であるときに前記上側角部から剥離した気流が前記すり板の上面で再付着する場合には、前記すり板が摩耗後の状態であるときにも前記上側角部から剥離した気流が前記すり板の上面で再付着するように、このすり板の幅(W)が設定されており前記集電舟は、この集電舟の長さ方向と直交する平面で切断したときの下側以外の部分の断面形状が、係数a,b、揚力L、すり板が摩耗していない状態new、すり板が摩耗している状態old、平均値ave、実効値rms及び迎角αであるときに、以下の数1に示す目的関数が最小になるような形状であること
【数1】
JP0004725835B2_000002t.gif
を特徴とする集電舟の揚力特性安定化構造(9)である。
【0010】
請求項2の発明は、集電舟(8)の揚力特性を安定化させる集電舟の揚力特性安定化構造であって、前記集電舟に支持されてトロリ線(1a)と接触するすり板(7)の摩耗量(Δd)に関わらず、このすり板の前端面(7d)とこのすり板の上面(7a)とが交わる上側角部(8c)の角度(θ)が一定であり、前記すり板の前端面と前記集電舟の上側前面(8c)とが同一面であり、前記すり板が摩耗前の状態であるときに前記上側角部から剥離した気流が前記すり板の上面で再付着しない場合には、前記すり板が摩耗後の状態であるときにも前記上側角部から剥離した気流が前記すり板の上面で再付着しないように、このすり板の幅(W)が設定されており
前記集電舟は、この集電舟の長さ方向と直交する平面で切断したときの下側以外の部分の断面形状が、係数a,b、揚力L、すり板が摩耗していない状態new、すり板が摩耗している状態old、平均値ave、実効値rms及び迎角αであるときに、以下の数1に示す目的関数が最小になるような形状であること
【数1】
JP0004725835B2_000003t.gif
を特徴とする集電舟の揚力特性安定化構造(9)である。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の集電舟の揚力特性安定化構造において、前記集電舟の前端面(8b)が流線型であることを特徴とする集電舟の揚力特性安定化構造である。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の集電舟の揚力特性安定化構造において、前記集電舟の下面(8d)が流線型であることを特徴とする集電舟の揚力特性安定化構造である。
【発明の効果】
【0013】
この発明によると、集電舟に作用する揚力特性を簡単な構造によって安定化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の実施形態に係る集電舟の揚力特性安定化構造を備える集電装置を模式的に示す構成図である。図2は、この発明の実施形態に係る集電舟の揚力特性安定化構造の外観図である。図3は、この発明の実施形態に係る集電舟の揚力特性安定化構造におけるすり板の摩耗前後で剥離した気流が再付着する場合を模式的に示す断面図であり、図3(A)はすり板が新品の状態を示し、図3(B)はすり板の摩耗が進行した状態を示す。図4は、この発明の実施形態に係る集電舟の揚力特性安定化構造におけるすり板の摩耗前後で剥離した気流が再付着しない場合を模式的に示す断面図であり、図4(A)はすり板が新品の状態を示し、図4(B)はすり板の摩耗が進行した状態を示す。
【0015】
図1に示す架線1は、線路上空に架設される架空電車線であり、所定の間隔をあけて支持点で支持されている。トロリ線1aは、集電装置3が接触移動する電線であり、集電装置3が摺動することによって車両2に負荷電流を供給する。車両2は、電車や電気機関車などの電気車であり、例えば高速で走行する新幹線などの鉄道車両である。車体2aは、乗客を積載し輸送するための構造物である。
【0016】
集電装置3は、トロリ線1aから電力を車両2に導くための装置であり、台枠4と、枠組5と、舟支え機構部6と、すり板7と、集電舟8などを備えている。台枠4は、枠組5を支持して車体2aの屋根上のがい子に設置される部分であり、枠組5は集電舟8を支持した状態で上下方向に動作可能なリンク機構である。舟支え機構部6は、集電舟8を架線1に対して水平に押上げるとともに、ばね6cによる緩衝作用を与える機構部であり、台枠4が備える図示しない押上げ用ばねによって上方に押上げられる。舟支え機構部6は、例えば、押し上げ力を発生するシリンダ6aと、シリンダ6a内で昇降自在であり集電舟8と一体に形成され集電舟8とばね6cとをつなぐピストンロッド6bと、シリンダ6a内に収容されピストンロッド6bを上昇する方向に付勢するばね6cなどを備えている。図1に示す集電装置3は、車両2の進行方向に対して非対称であり、空力的性能から高速使用時には一方向だけで使用可能なシングルアーム式パンタグラフの例である。
【0017】
すり板7は、集電舟8に支持されてトロリ線1aと接触する部材である。すり板7には、図2に示すように、上面7aと、前端面7bと、上側角部7cと、下面7dとが形成されている。上面7aは、トロリ線1aと接触する平坦面であり、前端面7bは上面7aの前縁から所定の角度θで下方に傾斜する平坦面である。上側角部7cは、上面7aと前端面7bとが交わる部分であり、下面7dは集電舟8の上面8aと接合する平坦面である。すり板7は、図2~図4に示すように、このすり板7の摩耗量Δdに関わらず、前端面7bと上面7aとのなす角度(上側角部7cの角度)θが一定になるように形成されている。すり板7は、図3及び図4に示すように、このすり板7の摩耗量Δdに関わらず前端面7bから剥離した気流Fがこのすり板7と常に再付着又は再付着しないように、このすり板7の幅Wが設定されている。すり板7は、集電舟8とは別個に製造される別部品であり、気流Fが滑らかに流れて空力音を低減するように、集電舟8の上面8aにこの集電舟8と一体に取り付けられている。
【0018】
集電舟8は、すり板7を取り付ける部材である。集電舟8は、一般にトロリ線1aと直交する方向に伸びた弓形で細長い金属製の部材であり、軌道面と平行に配置され架線1の長さ方向と直交して配置されている。集電舟8には、図2に示すように、上面8aと、前端面8bと、上側前面8cと、下面8dとが形成されている。上面8aは、すり板7の下面7dを支持する平坦面である。前端面8bは、集電舟8の前縁からの気流Fの流れの剥離を可能な限り防止する流線型の曲面であり、滑らかな曲線によって構成されている。上側前面8cは、前端面7bと同一面(同一高さ)の平坦面であり、前端面7bとの接続部(継ぎ目)には段差が形成されないようにこの前端面7bと直線状に結ばれている。下面8dは、集電舟8の下側からの気流Fの流れの剥離を可能な限り防止する流線型の曲面であり、滑らかな曲線によって構成されている。集電舟8は、図2~図4に示す揚力特性安定化構造9を備えている。
【0019】
揚力特性安定化構造9は、集電舟8の揚力特性を安定化させる構造である。ここで、揚力特性とは、例えば、数日間の長期的に見たときに、すり板7の摩耗前の平均揚力(短期的な揚力変動の時間平均)と、すり板7の摩耗後の平均揚力とを比較したときの平均揚力の変化を意味する。揚力安定化構造9は、図2~図4に示すように、すり板7の上面7a及び前端面7bと、集電舟8の前端面8b、上側前面8c及び下面8dとによって構成されている。揚力特性安定化構造9は、図2~図4に示すように、すり板7が摩耗しても上面7aと前端面7bとのなす角度θを常に一定にして、集電舟8の周囲における気流Fの流の変化を抑え、集電舟8に作用する揚力Lの変化を抑える。また、揚力特性安定化構造9は、図3及び図4に示すように、すり板7の摩耗量Δdに関わらず上側角部7cが常に相似形(角度θが一定)であり、気流Fの流れの変化を抑えて集電舟8に作用する揚力Lの変動を抑えるとともに、上側角部7cのみから気流Fの流れを剥離させて空力音が大きくなるのを抑える。
【0020】
次に、この発明の実施形態に係る集電舟の揚力特性安定化構造を備える集電舟の最適形状について説明する。
非定常非圧縮性ナビエ・ストークス方程式を解き、求めた集電舟の揚力係数の時間変化からこの集電舟の空力特性を評価した。空力音は、物体から受ける力の変動により物体の周囲の空気に生じた微小な加速度運動の伝搬であるため、コンパクト近似が成り立つ二重極音源だけを考えれば、揚力変動の小さい物体は空力音が小さいと見なせる。最適化手法に用いるCFDには、計算の堅牢性が求められる。そこで、対流項には、3次精度風上差分(Kawamura,K.,et al.,Fluid Dynamics Research 1,(1986),145-162)を用いた。また、乱流モデルとしてBaldwin-Lomaxモデル(Baldwin,B.S.andLomax,H.,Thin Layer Aproximation and Algebraic Model for Separated Turbulent Flows,AIAA paper 78-257,(1978))を用いた。先ず、計算負荷の小さい2次元計算により大まかな最適形状を求めた後に、3次元(2次元断面)計算を行うこととした。用いた目的関数は、以下の通りであり、目的関数の最小化を目指している。
【0021】
【数1】
JP0004725835B2_000004t.gif

【0022】
数1に示すa,bは係数、Lは揚力、newはすり板が摩耗していない状態、oldはすり板が摩耗している状態、aveは平均値、rmsは実効値、αは迎角である。oldのすり板の摩耗断面積は300mm2とした。この目的関数は、平均値aveの最大値と最小値の幅から揚力変化を評価し、実効値rmsから空力音の評価を行っている。なお、最適化を行うに当たりすり板が摩耗していない状態における集電舟の形状を上下対称として与えた。
【0023】
図5は、この発明の実施形態に係る集電舟の揚力特性安定化構造を備える集電舟の形状を2次元計算によって最適化したときの外観図である。なお、図5では、図1~図4に示す部分と対応する部分については対応する番号を付して詳細な説明を省略する。
数1に示す目的関数の例において、係数a=1.0及び係数b=0.5として2次元計算による最適化を行った結果、図5に示す集電舟80の最適化形状が得られた。図5に示す二重鎖線はすり板70が摩耗した場合の形状である。集電舟80の全長は103.6mmであり、全長を基準としたレイノルズ数は6.5×105である。図5に示すように、図1に示す迎角αの変化に対して鈍感となるように集電舟80の先端が丸くなっており、全体にずんぐりした形状である。図5に示す集電舟80の下側の形状は、図1~図4に示す集電舟8の下面8dの形状とは相違するが、集電舟80の下側以外の部分の形状は図1~図4に示すすり板7及び集電舟8の形状に略近似しており、図1~図4に示すすり板7及び集電舟8によって、揚力安定化及び低空力音化を実現可能であると考えられる。
【0024】
次に、この発明の実施形態に係る集電舟の揚力特性安定化構造の作用を説明する。
図1に示すように、車両2がA方向に走行してトロリ線1aに対してすり板7が接触移動すると、図2に示すように新品状態のすり板7が徐々に摩耗する。すり板7の上面7aと前端面7bとのなす角度θがすり板7の摩耗の前後で変化せず一定であり、集電舟8の上側前面8cと前端面7bとの継ぎ目には段差がなく直線状である。その結果、集電舟8の周囲の気流Fの流れが変化しないため、すり板7の摩耗の前後で集電舟8に作用する揚力Lの変動が少なく、上側角部7cからのみ気流Fの流れが剥離し空力音が大きくならない。
【0025】
例えば、すり板7の摩耗前では上側角部7cから剥離した気流Fが上面7aを超えて上面7aに再付着しないような場合であっても、すり板7の摩耗後にはすり板7の接触面の幅が長くなるため、上側角部7cから剥離した気流Fが上面7aに再付着する場合がある。図3(A)に示すように、すり板7が摩耗前の状態で上側角部7cから剥離した気流Fが上面7aで再付着する場合には、図3(B)に示すようにすり板7が摩耗後の状態でも上側角部7cから剥離した気流Fが上面7aで再付着するように、すり板7の幅W1が設定されている。同様に、図4(A)に示すように、すり板7が摩耗前の状態で上側角部7cから剥離した気流Fが上面7aで再付着しない場合には、図4(B)に示すようにすり板7が摩耗後の状態でも上側角部7cから剥離した気流Fが上面7aで再付着しないように、すり板7の幅W2(W2<W1)が設定されている。その結果、すり板7の摩耗の前後において剥離の性質が変化しないため、揚力Lの変動が抑えられ空力音が大きくなるのも抑えられる。
【0026】
この発明の実施形態に係る集電舟の揚力特性安定化構造には、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、すり板7の摩耗量Δdに関わらず、前端面7bと上面7aとのなす角度θが一定であり、この前端面7bと集電舟8の上側前面8cとが同一面である。このため、集電舟8の周囲の気流Fの流れが略一定になり、すり板7の摩耗量Δdに関わらず揚力Lの変動を抑えることができる。
【0027】
(2) この実施形態では、前端面8bと下面8dとが流線型である。このため、集電舟8からの気流Fの流れの剥離が抑えられて、集電舟8に作用する揚力Lの変動を抑えることができるとともに、集電舟8から発生する空力音が大きくなるのを抑えることができる。
【0028】
(3) この実施形態では、すり板7の摩耗量Δdに関わらず前端面7bから剥離した気流Fがこのすり板7と常に再付着又は再付着しないように、このすり板7の幅W1,W2が設定されている。例えば、図3に示すように、上側角部7cから剥離した気流Fが再付着するときに、すり板7が摩擦しても再付着する位置が相対的に変化しないようにすり板7の幅W1が設計されている。その結果、前端面7bから剥離した気流Fの流れがすり板7の摩耗の前後に関わらず大きく変化しないため、集電舟8に作用する揚力Lの変動を抑えることができる。
【0029】
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
この実施形態では、車両2がA方向に移動する場合を例に挙げて説明したが、車両2がA方向とは逆方向に移動する場合についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、集電装置3としてシングルアーム式パンタグラフを例に挙げて説明したが、菱型パンタグラフなどの他の形式のパンタグラフについてもこの発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施形態に係る集電舟の揚力特性安定化構造を備える集電装置を模式的に示す構成図である。
【図2】この発明の実施形態に係る集電舟の揚力特性安定化構造の外観図である。
【図3】この発明の実施形態に係る集電舟の揚力特性安定化構造におけるすり板の摩耗前後で剥離した気流が再付着する場合を模式的に示す外観図であり、(A)はすり板が新品の状態を示し、(B)はすり板の摩耗が進行した状態を示す。
【図4】この発明の実施形態に係る集電舟の揚力特性安定化構造におけるすり板の摩耗前後で剥離した気流が再付着しない場合を模式的に示す外観図であり、(A)はすり板が新品の状態を示し、(B)はすり板の摩耗が進行した状態を示す。
【図5】この発明の実施形態に係る集電舟の揚力特性安定化構造を備える集電舟の形状を2次元計算によって最適化したときの外観図である。
【図6】従来の集電舟(従来技術1)を模式的に示す断面図であり、(A)はすり板の摩耗前の状態を示し、(B)はすり板の摩耗後の状態を示す。
【図7】従来の集電舟(従来技術2)を模式的に示す断面図であり、(A)はすり板の摩耗前の状態を示し、(B)はすり板の摩耗後の状態を示す。
【図8】従来の集電舟(従来技術3)を模式的に示す断面図であり、(A)はすり板の摩耗前の状態を示し、(B)はすり板の摩耗後の状態を示す。
【符号の説明】
【0031】
1 架線
1a トロリ線
2 車両
2a 車体
3 集電装置
7 すり板
7a 上面
7b 前端面
7c 上側角部
7d 下面
8 集電舟
8a 上面
8b 前端面
8c 上側前面
8d 下面
9 揚力特性安定化構造
L 揚力
θ 角度
F 気流
W,W1,W2
Δd 摩耗量

Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
5
(In Japanese)【図7】
6
(In Japanese)【図8】
7