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明細書 :速度センサレス制御を用いた電気車制御装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3538057号 (P3538057)
公開番号 特開2000-253506 (P2000-253506A)
登録日 平成16年3月26日(2004.3.26)
発行日 平成16年6月14日(2004.6.14)
公開日 平成12年9月14日(2000.9.14)
発明の名称または考案の名称 速度センサレス制御を用いた電気車制御装置
国際特許分類 B60L  9/18      
H02P 21/00      
FI B60L 9/18 A
H02P 5/408
請求項の数または発明の数 16
全頁数 33
出願番号 特願平11-047985 (P1999-047985)
出願日 平成11年2月25日(1999.2.25)
審査請求日 平成14年5月21日(2002.5.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
発明者または考案者 【氏名】近藤 圭一郎
【氏名】松岡 孝一
【氏名】結城 和明
【氏名】氏家 昭彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外6名)
審査官 【審査官】長馬 望
参考文献・文献 特開 平11-41986(JP,A)
特開 平3-270685(JP,A)
特開 平9-56189(JP,A)
特開 平8-19300(JP,A)
調査した分野 B60L 9/00 - 9/32
H02P 21/00
特許請求の範囲 【請求項1】
直流を任意の周波数の交流に変換する可変電圧可変周波数インバータ(VVVFインバータ)と、当該VVVFインバータの直流側に接続されたフィルタコンデンサと、前記VVVFインバータの交流側に接続されて駆動される誘導電動機とから主回路を構成し、
電流指令値を演算する電流指令演算手段と、前記電流指令値に一致する電流が得られるように出力電圧の指令値を演算する出力電圧指令演算手段と、出力周波数指令を演算する出力周波数指令演算手段と、前記出力電圧指令演算手段からの出力と前記出力周波数指令演算手段からの出力とを入力とし、前記VVVFインバータの出力電圧が一致するようにVVVFインバータのゲート制御を行なうゲート制御手段とを備えて構成される速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、
前記出力周波数指令演算手段として、前記誘導電動機が惰行状態から再起動を行なう場合に、第1の所定値から第2の所定値に出力周波数指令を漸増あるいは漸減させる手段を備え、
前記誘導電動機に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段からの出力である電流検出値と、前記電流指令演算手段からの出力である電流指令値と、前記出力電圧指令演算手段からの出力である出力電圧指令値の少なくとも一つに基づいて、前記誘導電動機のロータ回転周波数を推定するロータ回転周波数検知手段と、
を備え
前記出力電圧指令演算手段としては、前記電流指令値に基づいて前記誘導電動機の1次インピーダンスによる電圧降下分を演算出力する手段からなり、
前記ロータ回転周波数検知手段としては、
前記電流検出手段により検出された電流値を入力とし、電流の大きさを演算する電流ベクトル長演算手段と、
前記電流ベクトル長演算手段からの出力である電流の大きさを入力とし、当該電流の大きさが所定の検知レベル値よりも減少した時の出力周波数指令の値をロータ回転周波数推定値として設定するロータ回転周波数推定値設定手段と、
から成ることを特徴とする速度センサレス制御を用いた電気車制御装置。

【請求項2】
請求項1記載の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、
前記ロータ回転周波数検知手段における所定の検知レベル値を得る手段としては、
前記出力周波数指令値を入力とし、その絶対値を演算する絶対値演算手段と、
前記絶対値演算手段からの出力を入力とし、出力周波数指令値の絶対値が小さい場合には、前記電流の大きさを判定する検知レベル値を大きく設定する検知レベル設定手段と、
から成ることを特徴とする速度センサレス制御を用いた電気車制御装置。

【請求項3】
請求項1記載の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、
前記出力電圧指令演算手段としては、前記電流指令値に基づいて誘導電動機の1次インピーダンスによる電圧降下分を演算出力する手段の代わりに、前記電流指令値に基づいて誘導電動機の漏れインダクタンスによる電圧降下分を出力電圧指令として出力する手段から成ることを特徴とする速度センサレス制御を用いた電気車制御装置。

【請求項4】
請求項1記載の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、
前記ロータ回転周波数検知手段としては、
前記電流検出手段により検出された電流値を入力とし、電流の大きさを演算する電流ベクトル長演算手段と、
前記出力周波数指令値が第1の所定値から第2の所定値へと漸増あるいは漸減する間に前記電流ベクトル長演算手段からの出力である電流の大きさの最小値となる時点での出力周波数指令値をロータ回転周波数推定値として設定するロータ回転周波数推定手段と、
から成ることを特徴とする速度センサレス制御を用いた電気車制御装置。

【請求項5】
直流を任意の周波数の交流に変換する可変電圧可変周波数インバータ(VVVFインバータ)と、当該VVVFインバータの直流側に接続されたフィルタコンデンサと、前記VVVFインバータの交流側に接続されて駆動される誘導電動機とから主回路を構成し、
電流指令値を演算する電流指令演算手段と、前記電流指令値に一致する電流が得られるように出力電圧の指令値を演算する出力電圧指令演算手段と、出力周波数指令を演算する出力周波数指令演算手段と、前記出力電圧指令演算手段からの出力と前記出力周波数指令演算手段からの出力とを入力とし、前記VVVFインバータの出力電圧が一致するようにVVVFインバータのゲート制御を行なうゲート制御手段とを備えて構成される速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、
前記出力周波数指令演算手段として、前記誘導電動機が惰行状態から再起動を行なう場合に、第1の所定値から第2の所定値に出力周波数指令を漸増あるいは漸減させる手段を備え、
前記誘導電動機に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段からの出力である電流検出値と、前記電流指令演算手段からの出力である電流指令値と、前記出力電圧指令演算手段からの出力である出力電圧指令値の少なくとも一つに基づいて、前記誘導電動機のロータ回転周波数を推定するロータ回転周波数検知手段と、
を備え、
前記出力周波数指令演算手段としては、
前記出力周波数指令値を入力とし、出力周波数指令の絶対値を演算出力する絶対値演算手段と、
前記絶対値演算手段からの出力である出力周波数指令の絶対値が小さい場合には、前記出力周波数指令値が漸増あるいは漸減する周波数の変化率を小さくする手段と、
から成ることを特徴とする速度センサレス制御を用いた電気車制御装置。

【請求項6】
請求項5記載の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、
前記出力周波数指令演算手段としては、第1の所定値の絶対値が第2の所定値の絶対値よりも大きいことを特徴とする速度センサレス制御を用いた電気車制御装置。

【請求項7】
直流を任意の周波数の交流に変換する可変電圧可変周波数インバータ(VVVFインバータ)と、当該VVVFインバータの直流側に接続されたフィルタコンデンサと、前記VVVFインバータの交流側に接続されて駆動される誘導電動機とから主回路を構成し、
電流指令値を演算する電流指令演算手段と、前記電流指令値に一致する電流が得られるように出力電圧の指令値を演算する出力電圧指令演算手段と、出力周波数指令を演算する出力周波数指令演算手段と、前記出力電圧指令演算手段からの出力と前記出力周波数指令演算手段からの出力とを入力とし、前記VVVFインバータの出力電圧が一致するようにVVVFインバータのゲート制御を行なうゲート制御手段とを備えて構成される速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、
前記出力周波数指令演算手段として、前記誘導電動機が惰行状態から再起動を行なう場合に、第1の所定値から第2の所定値に出力周波数指令を漸増あるいは漸減させる手段を備え、
前記誘導電動機に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段からの出力である電流検出値と、前記電流指令演算手段からの出力である電流指令値と、前記出力電圧指令演算手段からの出力である出力電圧指令値の少なくとも一つに基づいて、前記誘導電動機のロータ回転周波数を推定するロータ回転周波数検知手段と、
を備え、
前記出力周波数指令手段としては、前記誘導電動機が惰行状態から再起動を行なう場合に、ある所定の時間経過するまでは出力周波数指令値を一定とする手段を付加して成ることを特徴とする速度センサレス制御を用いた電気車制御装置。

【請求項8】
請求項7記載の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、
前記出力周波数指令手段により、ある所定時間経過するまでの出力周波数指令値が一定である状態において、前記電流検出手段により検出された電流値を入力とし、前記電流指令値の座標系へ座標系変換を行なう座標系変換手段と、
前記座標系変換された電流値と前記電流指令値との偏差を演算する減算手段と、
前記減算手段により演算された電流偏差が零となるように、前記出力電圧指令演算手段への出力を補正する量を演算する電流制御手段と、
前記電流制御手段により演算された出力電圧指令への補正量と前記出力電圧指令手段からの出力とを加算することで補正する加算手段と、
を付加して成ることを特徴とする速度センサレス制御を用いた電気車制御装置。

【請求項9】
請求項7記載の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、
前記出力周波数指令値の初期値である第1の所定値は、前記誘導電動機のロータ回転周波数の可能性の範囲外に設定するようにしたことを特徴とする速度センサレス制御を用いた電気車制御装置。

【請求項10】
直流を任意の周波数の交流に変換する可変電圧可変周波数インバータ(VVVFインバータ)と、当該VVVFインバータの直流側に接続されたフィルタコンデンサと、前記VVVFインバータの交流側に接続されて駆動される誘導電動機とから主回路を構成し、
電流指令値を演算する電流指令演算手段と、前記電流指令値に一致する電流が得られるように出力電圧の指令値を演算する出力電圧指令演算手段と、出力周波数指令を演算する出力周波数指令演算手段と、前記出力電圧指令演算手段からの出力と前記出力周波数指令演算手段からの出力とを入力とし、前記VVVFインバータの出力電圧が一致するようにVVVFインバータのゲート制御を行なうゲート制御手段とを備えて構成される速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、
前記出力周波数指令演算手段として、前記誘導電動機が惰行状態から再起動を行なう場合に、第1の所定値から第2の所定値に出力周波数指令を漸増あるいは漸減させる手段を備え、
前記誘導電動機に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段からの出力である電流検出値と、前記電流指令演算手段からの出力である電流指令値と、前記出力電圧指令演算手段からの出力である出力電圧指令値の少なくとも一つに基づいて、前記誘導電動機のロータ回転周波数を推定するロータ回転周波数検知手段と、
を備え、
前記誘導電動機のロータ回転周波数の概略値を知り得る場合、
前記出力周波数指令演算手段の第1の所定値は、前記ロータ回転周波数の概略値に応じて、当該ロータ回転周波数の概略値の近傍に設定するようにしたことを特徴とする速度センサレス制御を用いた電気車制御装置。

【請求項11】
請求項10記載の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、
前記誘導電動機のロータ回転周波数の概略値を得る手段としては、
電気車の編成に1つ以上設けられる車輪あるいは誘導電動機の回転周波数を検出する速度検出手段と、
前記速度検出手段により検出された速度に基づいて、前記誘導電動機のロータ回転周波数の概略値を設定する手段と、
から成ることを特徴とする速度センサレス制御を用いた電気車制御装置。

【請求項12】
直流を任意の周波数の交流に変換する可変電圧可変周波数インバータ(VVVFインバータ)と、当該VVVFインバータの直流側に接続されたフィルタコンデンサと、前記VVVFインバータの交流側に接続されて駆動される誘導電動機とから主回路を構成し、
電流指令値を演算する電流指令演算手段と、前記電流指令値に一致する電流が得られるように出力電圧の指令値を演算する出力電圧指令演算手段と、出力周波数指令を演算する出力周波数指令演算手段と、前記出力電圧指令演算手段からの出力と前記出力周波数指令演算手段からの出力とを入力とし、前記VVVFインバータの出力電圧が一致するようにVVVFインバータのゲート制御を行なうゲート制御手段とを備えて構成される速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、
前記出力周波数指令演算手段として、前記誘導電動機が惰行状態から再起動を行なう場合に、第1の所定値から第2の所定値に出力周波数指令を漸増あるいは漸減させる手段を備え、
前記誘導電動機に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段からの出力である電流検出値と、前記電流指令演算手段からの出力である電流指令値と、前記出力電圧指令演算手段からの出力である出力電圧指令値の少なくとも一つに基づいて、前記誘導電動機のロータ回転周波数を推定するロータ回転周波数検知手段と、
を備え、
前記ロータ回転周波数検知手段としては、
前記電流検出手段により検出された電流値を入力とし、電流の大きさを演算する電流ベクトル長演算手段と、
前記出力電圧指令演算手段からの出力である出力電圧指令の大きさと、前記電流ベクトル長演算手段からの出力とに基づいて、前記誘導電動機のインピーダンスを推定するインピーダンス推定手段と、
前記出力周波数指令値に基づいてインピーダンス基準を演算するインピーダンス基準演算手段と、
前記インピーダンス推定手段からの出力である誘導電動機のインピーダンス推定値と前記インピーダンス基準演算手段からの出力であるインピーダンス基準とを入力とし、前記インピーダンス推定値がインピーダンス基準を超過した時の出力周波数指令値をロータ回転周波数推定値として設定するロータ回転周波数推定値設定手段と、
から成ることを特徴とする速度センサレス制御を用いた電気車制御装置。

【請求項13】
直流を任意の周波数の交流に変換する可変電圧可変周波数インバータ(VVVFインバータ)と、当該VVVFインバータの直流側に接続されたフィルタコンデンサと、前記VVVFインバータの交流側に接続されて駆動される誘導電動機とから主回路を構成し、
電流指令値を演算する電流指令演算手段と、前記電流指令値に一致する電流が得られるように出力電圧の指令値を演算する出力電圧指令演算手段と、出力周波数指令を演算する出力周波数指令演算手段と、前記出力電圧指令演算手段からの出力と前記出力周波数指令演算手段からの出力とを入力とし、前記VVVFインバータの出力電圧が一致するようにVVVFインバータのゲート制御を行なうゲート制御手段とを備えて構成される速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、
前記出力周波数指令演算手段として、前記誘導電動機が惰行状態から再起動を行なう場合に、第1の所定値から第2の所定値に出力周波数指令を漸増あるいは漸減させる手段を備え、
前記誘導電動機に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段からの出力である電流検出値と、前記電流指令演算手段からの出力である電流指令値と、前記出力電圧指令演算手段からの出力である出力電圧指令値の少なくとも一つに基づいて、前記誘導電動機のロータ回転周波数を推定するロータ回転周波数検知手段と、
を備え、
前記電流検出手段により検出された電流値を入力とし、前記電流指令値の座標系へ座標系変換を行なう座標系変換手段と、
前記座標系変換された電流値と電流指令値との偏差を演算する減算手段と、
前記減算手段により演算された電流偏差が零となるように、前記出力電圧指令演算手段への出力を補正する量を演算する電流制御手段と、
前記電流制御手段により演算された出力電圧指令への補正量と、前記出力電圧指令手段からの出力とを加算する加算手段とを付加し、
前記ロータ回転周波数検知手段としては、
前記出力電圧指令演算手段からの出力である出力電圧指令の大きさを演算する手段と、
前記出力周波数指令演算手段からの出力である出力周波数指令値により、前記出力電圧指令値の大きさを除算する除算手段と、
前記除算手段からの出力を入力とし、絶対値を演算する絶対値演算手段と、
前記絶対値演算手段からの出力が所定値よりも増加した時の出力周波数指令の値をロータ回転周波数推定値として設定するロータ回転周波数推定値設定手段と、
から成ることを特徴とする速度センサレス制御を用いた電気車制御装置。

【請求項14】
直流を任意の周波数の交流に変換する可変電圧可変周波数インバータ(VVVFインバータ)と、当該VVVFインバータの直流側に接続されたフィルタコンデンサと、前記VVVFインバータの交流側に接続されて駆動される誘導電動機とから主回路を構成し、
電流指令値を演算する電流指令演算手段と、前記電流指令値に一致する電流が得られるように出力電圧の指令値を演算する出力電圧指令演算手段と、出力周波数指令を演算する出力周波数指令演算手段と、前記出力電圧指令演算手段からの出力と前記出力周波数指令演算手段からの出力とを入力とし、前記VVVFインバータの出力電圧が一致するようにVVVFインバータのゲート制御を行なうゲート制御手段とを備えて構成される速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、
前記出力周波数指令演算手段として、前記誘導電動機が惰行状態から再起動を行なう場合に、第1の所定値から第2の所定値に出力周波数指令を漸増あるいは漸減させる手段を備え、
前記誘導電動機に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段からの出力である電流検出値と、前記電流指令演算手段からの出力である電流指令値と、前記出力電圧指令演算手段からの出力である出力電圧指令値の少なくとも一つに基づいて、前記誘導電動機のロータ回転周波数を推定するロータ回転周波数検知手段と、
を備え、
前記ロータ回転周波数検知手段としては、
前記誘導電動機の出力電力を演算する出力電力演算手段と、
前記出力電力演算手段からの出力である誘導電動機の出力電力演算値が、所定値よりも増加あるいは低下した時点での出力周波数指令の値をロータ回転周波数推定値として設定するロータ回転周波数推定値設定手段と、
から成ることを特徴とする速度センサレス制御を用いた電気者制御装置。

【請求項15】
直流を任意の周波数の交流に変換する可変電圧可変周波数インバータ(VVVFインバータ)と、当該VVVFインバータの直流側に接続されたフィルタコンデンサと、前記VVVFインバータの交流側に接続されて駆動される誘導電動機とから主回路を構成し、
電流指令値を演算する電流指令演算手段と、前記電流指令値に一致する電流が得られるように出力電圧の指令値を演算する出力電圧指令演算手段と、出力周波数指令を演算する出力周波数指令演算手段と、前記出力電圧指令演算手段からの出力と前記出力周波数指令演算手段からの出力とを入力とし、前記VVVFインバータの出力電圧が一致するようにVVVFインバータのゲート制御を行なうゲート制御手段とを備えて構成される速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、
前記出力周波数指令演算手段として、前記誘導電動機が惰行状態から再起動を行なう場合に、第1の所定値から第2の所定値に出力周波数指令を漸増あるいは漸減させる手段を備え、
前記誘導電動機に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段からの出力である電流検出値と、前記電流指令演算手段からの出力である電流指令値と、前記出力電圧指令演算手段からの出力である出力電圧指令値の少なくとも一つに基づいて、前記誘導電動機のロータ回転周波数を推定するロータ回転周波数検知手段と、
を備え、
前記ロータ回転周波数検知手段としては、
前記電流検出手段により検出された電流値を、前記電流指令演算手段からの出力である電流指令値に一致した成分と電流指令値に直交した成分とに変換する座標系変換手段と、
前記座標系変換手段からの出力である電流指令値に一致した電流成分を入力とし、当該電流成分が所定の検知レベル値よりも減少した時の出力周波数指令の値をロータ回転周波数推定値として設定するロータ回転周波数推定値設定手段と、
から成ることを特徴とする速度センサレス制御を用いた電気車制御装置。

【請求項16】
直流を任意の周波数の交流に変換する可変電圧可変周波数インバータ(VVVFインバータ)と、当該VVVFインバータの直流側に接続されたフィルタコンデンサと、前記VVVFインバータの交流側に接続されて駆動される誘導電動機とから主回路を構成し、
電流指令値を演算する電流指令演算手段と、前記電流指令値に一致する電流が得られるように出力電圧の指令値を演算する出力電圧指令演算手段と、出力周波数指令を演算する出力周波数指令演算手段と、前記出力電圧指令演算手段からの出力と前記出力周波数指令演算手段からの出力とを入力とし、前記VVVFインバータの出力電圧が一致するようにVVVFインバータのゲート制御を行なうゲート制御手段とを備えて構成される速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、
前記出力周波数指令演算手段として、前記誘導電動機が惰行状態から再起動を行なう場合に、第1の所定値から第2の所定値に出力周波数指令を漸増あるいは漸減させる手段を備え、
前記誘導電動機に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段からの出力である電流検出値と、前記電流指令演算手段からの出力である電流指令値と、前記出力電圧指令演算手段からの出力である出力電圧指令値の少なくとも一つに基づいて、前記誘導電動機のロータ回転周波数を推定するロータ回転周波数検知手段と、
を備え、
前記ロータ回転周波数検知手段としては、
前記電流検出手段により検出された電流値を、前記電流指令演算手段からの出力である電流指令値に一致した成分と電流指令値に直交した成分とに変換する座標系変換手段と、
前記座標系変換手段からの出力である電流指令値に直交した電流成分を入力とし、当該電流成分が所定の検知レベル値よりも減少あるいは増加した時の出力周波数指令の値をロータ回転周波数推定値として設定するロータ回転周波数推定値設定手段と、
から成ることを特徴とする速度センサレス制御を用いた電気車制御装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、速度検出器を用いずに電気車の動力源である誘導電動機を駆動制御する速度センサレス制御を用いた電気車制御装置に係り、特に誘導電動機を駆動する可変電圧可変周波数(以下、VVVFと称する)インバータが動作を停止した惰行状態から再起動する場合に不可欠である、誘導電動機のロータ回転周波数を安定かつ迅速に推定できるようにした速度センサレス制御を用いた電気車制御装置に関するものである。

【0002】
【従来の技術】図37は、従来の電気車制御装置の構成例を示す概略図である。

【0003】
なお、図37は、直流電気車1編成の中の3両分を模擬しているものである。

【0004】
図37において、架線1は、パンタグラフ2、直流フィルタリアクトル3を介して、直流フィルタコンデンサ4の正側電位点に接続される。直流フィルタコンデンサ4の負側電位点は、車輪7を介してレール8に接地される。直流フィルタコンデンサ4には、VVVFインバータ5が接続されており、VVVFインバータ5は、誘導電動機6を駆動する。このVVVFインバータ5は、制御ユニット34により制御される。

【0005】
図38は、図37における車両45をより詳細に示した構成図である。

【0006】
なお、図38では、車輪7と誘導電動機6とは独立した構成となっているが、これは便宜的な図であり、実際には、ギアを介して車輪7と誘導電動機6のロータとは機械的に結合されている。

【0007】
図38において、制御ユニット34に関してより詳細に説明する。図38に示す制御系は、dq軸回転座標系上にて、誘導電動機6の電流、電圧、磁束を制御するベクトル制御方式である。

【0008】
制御ユニット34は、電流指令演算部10、出力電圧指令演算部11、座標系変換器12、出力周波数指令演算部48、ゲート制御部13からなっている。

【0009】
電流指令演算部10では、dq軸座標系上での電流指令値Id * ,Iq * を演算する。

【0010】
出力電圧指令演算部11では、電流指令値Id * ,Iq * とに基づいて、電流指令値に一致する電流が流れるようにVVVFインバータ5が出力すべきd軸出力電圧指令Vd * とq軸出力電圧Vq * とを演算出力する。

【0011】
座標系変換器12では、d軸出力電圧指令値Vd * とq軸出力電圧指令値Vq * とに基づいて、d軸を基準軸とする極座標へと変換する。

【0012】
例えば、次式によりdq軸電圧指令Vd * ,Vq * の大きさを演算し、出力電圧指令の大きさV* として出力する。

【0013】
【数1】
JP0003538057B2_000002t.gif【0014】また、次式によりd軸から出力電圧指令ベクトルまでの位相角をθv * として演算し、出力する。

【0015】
【数2】
JP0003538057B2_000003t.gif【0016】座標系変換器12からの出力V* ,θv * と、後述する出力周波数指令演算部48からの出力である出力周波数指令値FINV* は、ゲート制御部13に入力される。

【0017】
FINV* の積分値をθabとすると、θabはa軸あるいはu軸からd軸までの位相角となる。従って、θをθv * とθabとの加算値とすれば、基準となるa軸から出力電圧指令ベクトルまでの位相差はθとなる。

【0018】
ゲート制御部13では、ab軸静止座標系上の出力電圧指令ベクトルを3相電圧指令値に変換し、さらに出力電圧が3相出力電圧指令値に一致するように、VVVFインバータ5のゲートを制御するが、この詳細に関しては既存技術であるので、ここではその説明を省略する。

【0019】
出力周波数指令演算部48では、VVVFインバータ5が出力すべき周波数指令値FINV* を演算出力する。出力周波数指令演算部48には、速度検出器42により検出された誘導電動機6のロータ回転周波数FRが入力される。

【0020】
出力周波数指令演算部48では、次式のように、出力周波数指令FINV* を演算し、出力する。

【0021】
【数3】
JP0003538057B2_000004t.gif【0022】ただし、R2:2次抵抗値、L2:2次インダクタンスである。

【0023】
以上のように構成された電気車制御装置では、ある速度まで加速した後、惰性にまかせて走行する惰行状態が存在する。この惰行状態では、VVVFインバータ5は停止しており、損失を低減している。そして、この惰行の間、誘導電動機6は荷電されていないため、磁束あるいは電流といった電気的状態量は、零である。

【0024】
このような惰行状態からVVVFインバータ5を再起動する場合、従来の電気車制御装置では、誘導電動機6に設置された速度検出器42の情報から、誘導電動機6のロータの回転周波数を検出し、制御ユニット34へ入力する。

【0025】
この従来の電気車制御装置では、速度検出器42により検出された誘導電動機6のロータ回転周波数FRに基づいて再起動、すなわち磁束の立ち上げを行なうため、何ら問題となることはなく、安定かつ確実な再起動を行なうことが可能である。

【0026】
【発明が解決しようとする課題】一方、速度検出器42の弱電線は、動力線と同様に引き回されており、電気車の保守性を低下させる要因であり、あるいは信号線に重畳するノイズや振動による信号パルスの欠落等によって、制御的にも悪影響を及ぼす可能性がある。

【0027】
そこで、このような観点から、速度検出器42を用いない速度センサレスベクトル制御を用いた電気車制御装置が強く望まれる。

【0028】
しかしながら、速度センサレスベクトル制御を用いた電気車制御装置では、惰行状態において、ロータ回転周波数を検知し得る速度検出器がなく、またロータ回転周波数を推定し得る誘起電圧も発生していない。

【0029】
そして、ロータの回転周波数が特定できない状態で誘導電動機6を再起動する場合、ロータ回転周波数への引き込みに失敗する現象や、過電流・過電圧等の保護動作によってVVVFインバータ5が停止する可能性が高い。また、不要なトルクを引き起こして、乗り心地を低下させる可能性がある。

【0030】
従って、ロータの回転周波数が不明である誘導電動機6を、安定かつ確実に再起動するためには、誘導電動機6のロータ回転周波数を把握することが不可欠である。

【0031】
本発明の目的は、誘導電動機のロータの回転周波数を安定かつ迅速に推定し、惰行状態の誘導電動機を速度センサレス制御により安定かつ確実に再起動することが可能な速度センサレス制御を用いた電気車制御装置を提供することにある。

【0032】
【課題を解決するための手段】上記目標を達成するために、発明では、直流を任意の周波数の交流に変換する可変電圧可変周波数インバータ(VVVFインバータ)と、当該VVVFインバータの直流側に接続されたフィルタコンデンサと、VVVFインバータの交流側に接続されて駆動される誘導電動機とから主回路を構成し、電流指令値を演算する電流指令演算手段と、電流指令値に一致する電流が得られるように出力電圧の指令値を演算する出力電圧指令演算手段と、出力周波数指令を演算する出力周波数指令演算手段と、出力電圧指令演算手段からの出力と出力周波数指令演算手段からの出力とを入力とし、VVVFインバータの出力電圧が一致するようにVVVFインバータのゲート制御を行なうゲート制御手段とを備えて構成される速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、出力周波数指令演算手段として、誘導電動機が惰行状態から再起動を行なう場合に、第1の所定値から第2の所定値に出力周波数指令を漸増あるいは漸減させる手段を備え、誘導電動機に流れる電流を検出する電流検出手段と、電流検出手段からの出力である電流検出値と、電流指令演算手段からの出力である電流指令値と、出力電圧指令演算手段からの出力である出力電圧指令値の少なくとも一つに基づいて、誘導電動機のロータ回転周波数を推定するロータ回転周波数検知手段とを備えている。

【0033】
従って、発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、誘導電動機が惰行している状態から再起動をする際に、第1の所定値から第2の所定値へと出力周波数指令を漸増あるいは漸減させる。これにより、誘導電動機の滑り、すなわち誘導電動機のインピーダンスが変化し、これに応じた電気的現象を検知することで、誘導電動機のロータ回転周波数を推定することが可能となる。そして、この推定されたロータ回転周波数に基づいて再起動動作を行なうため、過電流・過電圧や不要なトルクの発生を防ぐことができる。これにより、VVVFインバータの保護停止を抑制したり、あるいは乗り心地の劣化を抑制することが期待できる。

【0034】
また、請求項の発明では出力電圧指令演算手段を、電流指令値に基づいて誘導電動機の1次インピーダンスによる電圧降下分を演算出力する手段から構成し、ロータ回転周波数検知手段を、電流検出手段により検出された電流値を入力とし、電流の大きさを演算する電流ベクトル長演算手段と、電流ベクトル長演算手段からの出力である電流の大きさを入力とし、当該電流の大きさが所定の検知レベル値よりも減少した時の出力周波数指令の値をロータ回転周波数推定値として設定するロータ回転周波数推定値設定手段とから構成している。

【0035】
従って、請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、出力周波数指令が第1の所定値から第2の所定値へと漸増あるいは漸減する際に、VVVFインバータの出力電流ベクトルの大きさが電流検知レベルよりも低下した時点での出力周波数指令値を、ロータ回転周波数推定値として設定する。出力電圧指令として、漏れインダクタンスでの電圧降下分のみを補償するため、ロータ回転周波数の推定過程における過電流やトルクの発生を抑制することができる。これにより、電気車の乗り心地の劣化が抑えられると共に、直流リンク電圧の不安定化を抑制でき、過電圧・低電圧によるVVVFインバータの保護動作を回避することが期待できる。

【0036】
さらに、請求項の発明では、上記請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、ロータ回転周波数検知手段における所定の検知レベル値を得る手段を、出力周波数指令値を入力とし、その絶対値を演算する絶対値演算手段と、絶対値演算手段からの出力を入力とし、出力周波数指令値の絶対値が小さい場合には、電流の大きさを判定する検知レベル値を大きく設定する検知レベル設定手段とから構成している。

【0037】
従って、請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前記請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置と同様な作用効果を奏することができる。さらに、請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置と比べて、出力周波数指令値の絶対値が小さい場合には、前述の検知レベル値を大きく設定することにより、ロータ回転周波数が低い領域においても、ロータ回転周波数の推定を可能とすることができ、速度推定の範囲を向上することが期待できる。

【0038】
一方、請求項の発明では、上記請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、出力電圧指令演算手段を、電流指令値に基づいて誘導電動機の1次インピーダンスによる電圧降下分を演算出力する手段の代わりに、電流指令値に基づいて誘導電動機の漏れインダクタンスによる電圧降下分を出力電圧指令として出力する手段から構成している。

【0039】
従って、請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前記請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置と同様な作用効果を奏することができる。さらに、請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置と比べて、出力電圧指令演算手段において、1次抵抗の電圧降下分を演算していない分、制御ソフトの容量の縮小と演算処理時間の短縮を期待することができる。

【0040】
また、請求項の発明では、上記請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、ロータ回転周波数検知手段を、電流検出手段により検出された電流値を入力とし、電流の大きさを演算する電流ベクトル長演算手段と、出力周波数指令値が第1の所定値から第2の所定値へと漸増あるいは漸減する間に電流ベクトル長演算手段からの出力である電流の大きさの最小値となる時点での出力周波数指令値をロータ回転周波数推定値として設定するロータ回転周波数推定手段とから構成している。

【0041】
従って、請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前記請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置と同様な作用効果を奏することができる。さらに、請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置と比べて、電流ベクトルの大きさが最も落ち込む点を探るため、ロータ回転周波数の推定値の推定精度を向上することが期待できる。

【0042】
さらに、請求項の発明では出力周波数指令演算手段を、出力周波数指令値を入力とし、出力周波数指令の絶対値を演算出力する絶対値演算手段と、絶対値演算手段からの出力である出力周波数指令の絶対値が小さい場合には、出力周波数指令値が漸増あるいは漸減する周波数の変化率を小さくする手段とから構成している。

【0043】
従って、請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては出力周波数指令値の絶対値が小さい範囲では、出力周波数指令値の変化率を小さくし、ゆるやかに周波数を漸増あるいは漸減させることで、インピーダンスの変化の影響を大きくすることが可能となる。これにより、ロータ回転周波数が低い領域においても、回転周波数の推定を可能とすることができ、速度推定の範囲を向上することが期待できる。

【0044】
一方、請求項の発明では、上記請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、出力周波数指令演算手段としては、第1の所定値の絶対値が第2の所定値の絶対値よりも大きいものとしている。

【0045】
従って、請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前記請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置と同様な作用効果を奏することができる。さらに、ロータ回転周波数の正転を仮定すれば、出力周波数指令値は、高周波から低周波へ漸減するように設定される。出力周波数指令値が低周波である場合には、その変化率が小さく設定されるために、高周波から低周波へと漸減させることにより、単位時間内に広い周波数範囲を漸増あるいは漸減できることになる。これにより、平均的なロータ回転周波数の検知時間を短縮することができ、迅速な再起動が期待できる。

【0046】
また、請求項の発明では出力周波数指令手段としては、誘導電動機が惰行状態から再起動を行なう場合に、ある所定の時間経過するまでは出力周波数指令値を一定とする手段を付加している。

【0047】
従って、請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては誘導電動機が惰行する状態からロータ回転周波数を推定する際、まず出力周波数指令値を第1の所定値にある期間一定に保ち、その後漸増あるいは漸減させる。これにより、電圧や電流等の電気的状態量が安定化し、ロータ回転周波数検知の際の誤検知を抑制することが期待できる。

【0048】
さらに、請求項の発明では、上記請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、出力周波数指令手段により、ある所定時間経過するまでの出力周波数指令値が一定である状態において、電流検出手段により検出された電流値を入力とし、電流指令値の座標系へ座標系変換を行なう座標系変換手段と、座標系変換された電流値と電流指令値との偏差を演算する減算手段と、減算手段により演算された電流偏差が零となるように、出力電圧指令演算手段への出力を補正する量を演算する電流制御手段と、電流制御手段により演算された出力電圧指令への補正量と出力電圧指令手段からの出力とを加算することで補正する加算手段とを付加している。

【0049】
従って、請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前記請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置と同様な作用効果を奏することができる。さらに、請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置と比べて、出力周波数指令値が一定となる期間において、電流制御が加わることで、電流を高速に安定化させることが可能である。これにより、出力周波数指令値を一定とする期間が短縮できるため、ロータ回転周波数の推定にかかる時間を短縮することが可能であり、再起動を迅速に行なうことが期待できる。

【0050】
一方、請求項の発明では、上記請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、出力周波数指令値の初期値である第1の所定値は、誘導電動機のロータ回転周波数の可能性の範囲外に設定するようにしている。

【0051】
従って、請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前記請求項の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置と同様な作用効果を奏することができる。さらに、出力周波数指令値が漸増あるいは漸減する始点となる第1の所定値は、予測されるロータ回転周波数の可能性の範囲外に設定される。これにより、出力周波数指令値が一定となる期間において、磁束やトルクが発生することを抑制することができる。ロータ回転周波数の推定の過程に生じる直流リンク電圧の不安定化・過電圧・電圧という現象を抑制することが期待できる。また、トルク発生に伴なう、乗り心地の劣化を抑制することが期待できる。

【0052】
また、請求項10の発明では誘導電動機のロータ回転周波数の概略値を知り得る場合、出力周波数指令演算手段の第1の所定値を、ロータ回転周波数の概略値に応じて、当該ロータ回転周波数の概略値の近傍に設定するようにしている。

【0053】
従って、請求項10の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては出力周波数指令値の初期値である第1の所定値が、ロータ回転周波数の概略値の近傍に設定される。出力周波数指令値を漸増あるいは漸減する初期値が、予測されるロータ回転周波数付近であるため、ロータ回転周波数の推定にかかる時間を短縮することが可能であり、誘導電動機の再起動を迅速に行なうことが期待できる。

【0054】
さらに、請求項11の発明では、上記請求項10の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置において、誘導電動機のロータ回転周波数の概略値を得る手段を、電気車の編成に1つ以上設けられる車輪あるいは誘導電動機の回転周波数を検出する速度検出手段と、速度検出手段により検出された速度に基づいて、誘導電動機のロータ回転周波数の概略値を設定する手段とから構成している。

【0055】
従って、請求項11の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前記請求項10の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置と同様な作用効果を奏することができる。さらに、出力周波数指令値を漸増あるいは漸減する始点である第1の所定値は、電気車の編成に少なくとも一つ備えられた速度検出器の情報に基づいて、ロータ回転周波数へと換算された概略値の近傍に設定される。出力周波数指令を漸増あるいは漸減させる周波数の初期値が、検出された回転周波数の近傍より開始されるため、ロータ回転周波数を検知する時間を短縮して、誘導電動機の再起動を迅速に行なうことが期待できる。

【0056】
一方、請求項12の発明ではロータ回転周波数検知手段を、電流検出手段により検出された電流値を入力とし、電流の大きさを演算する電流ベクトル長演算手段と、出力電圧指令演算手段からの出力である出力電圧指令の大きさと、電流ベクトル長演算手段からの出力とに基づいて、誘導電動機のインピーダンスを推定するインピーダンス推定手段と、出力周波数指令値に基づいてインピーダンス基準を演算するインピーダンス基準演算手段と、インピーダンス推定手段からの出力である誘導電動機のインピーダンス推定値とインピーダンス基準演算手段からの出力であるインピーダンス基準とを入力とし、インピーダンス推定値がインピーダンス基準を超過した時の出力周波数指令値をロータ回転周波数推定値として設定するロータ回転周波数推定値設定手段とから構成している。

【0057】
従って、請求項12の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、出力周波数指令値が第1の所定値から第2の所定値へと漸増あるいは漸減する際に、推定演算された誘導電動機のインピーダンスが演算されたインピーダンス基準値を超過した時点での出力周波数指令値をロータ回転周波数推定値として設定する。滑りが0の近傍では、誘導電動機のインピーダンスが大きくなるため、インピーダンスの推定値がインピーダンス基準値を超えた時点での出力周波数指令値を、ロータ回転周波数の推定値として設定することで、ロータの回転周波数を推定することが可能となる。そして、この推定されたロータ回転周波数に基づいて再起動動作を行なうため、過電流・過電圧や不要なトルクの発生を防ぐことができる。これにより、VVVFインバータの保護停止を抑制したり、あるいは乗り心地の劣化を抑制することが期待できる。

【0058】
また、請求項13の発明では電流検出手段により検出された電流値を入力とし、電流指令値の座標系へ座標系変換を行なう座標系変換手段と、座標系変換された電流値と電流指令値との偏差を演算する減算手段と、減算手段により演算された電流偏差が零となるように、出力電圧指令演算手段への出力を補正する量を演算する電流制御手段と、電流制御手段により演算された出力電圧指令への補正量と、出力電圧指令手段からの出力とを加算する加算手段とを付加し、ロータ回転周波数検知手段を、出力電圧指令演算手段からの出力である出力電圧指令の大きさを演算する手段と、出力周波数指令演算手段からの出力である出力周波数指令値により、出力電圧指令値の大きさを除算する除算手段と、除算手段からの出力を入力とし、絶対値を演算する絶対値演算手段と、絶対値演算手段からの出力が所定値よりも増加した時の出力周波数指令の値をロータ回転周波数推定値として設定するロータ回転周波数推定値設定手段とから構成している。

【0059】
従って、請求項13の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、出力周波数指令値が第1の所定値から第2の所定値へと漸増あるいは漸減する際に、VVVFインバータの出力電圧指令値の大きさと出力周波数指令との比、いわゆるV/F比が所定の検知レベルを超過した時点での出力周波数指令値をロータ回転周波数推定値として設定する。滑りが0の近傍では、誘導電動機のインピーダンスが増加するが、電流制御の作用によって、電流指令値に一致した電流が流れるとすると、インピーダンスに応じた出力電圧が必要となり、出力周波数指令値に対する出力電圧指令値の大きさの比率すなわちV/F比が大きくなる。従って、V/F比が所定値以上に増加した時点での、出力周波数指令値をラッチすることで、ロータ回転周波数を推定することが可能である。そして、この推定されたロータ回転周波数に基づいて再起動動作を行なうため、過電流・過電圧や不要なトルクの発生を防ぐことができる。これにより、VVVFインバータの保護停止を抑制したり、あるいは乗り心地の劣化を抑制することが期待できる。

【0060】
さらに、請求項14の発明ではロータ回転周波数検知手段を、誘導電動機の出力電力を演算する出力電力演算手段と、出力電力演算手段からの出力である誘導電動機の出力電力演算値が、所定値よりも増加あるいは低下した時点での出力周波数指令の値をロータ回転周波数推定値として設定するロータ回転周波数推定値設定手段とから構成している。

【0061】
従って、請求項14の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、出力周波数指令値が第1の所定値から第2の所定値へと漸増あるいは漸減する際に、誘導電動機の出力電力演算値が所定の検知レベルよりも増加あるいは低下した時点での出力周波数指令値を、ロータ回転周波数推定値として設定する。誘導電動機の特性として、出力周波数指令値がロータ回転周波数よりも小さく、すべり周波数が負である状態では、定常的にはマイナスの出力電力が発生することが知られており、また、出力周波数指令値がロータ回転周波数よりも大きく、すべり周波数が正である状態では、定常的にはプラスの出力電力が発生することが知られている。また、すべり周波数が正あるいは負で非常に大きい場合には、出力電力は0に近いことも誘導電動機の特性より周知である。従って、出力電力演算値が所定の検知レベルよりも増加あるいは低下した時点にて、出力周波数指令値をラッチすることで、ロータ回転周波数を推定することが可能である。そして、この推定されたロータ回転周波数に基づいて再起動動作を行なうため、過電流・過電圧や不要なトルクの発生を防ぐことができる。これにより、VVVFインバータの保護停止を抑制したり、あるいは乗り心地の劣化を抑制することが期待できる。

【0062】
また、請求項15の発明ではロータ回転周波数検知手段を、電流検出手段により検出された電流値を、電流指令演算手段からの出力である電流指令値に一致した成分と電流指令値に直交した成分とに変換する座標系変換手段と、座標系変換手段からの出力である電流指令値に一致した電流成分を入力とし、当該電流成分が所定の検知レベル値よりも減少した時の出力周波数指令の値をロータ回転周波数推定値として設定するロータ回転周波数推定値設定手段とから構成している。

【0063】
従って、請求項15の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、出力周波数指令値が第1の所定値から第2の所定値へと漸増する際に、誘導電動機の電流の成分の中で、電流指令値に一致する成分が所定の検知レベルよりも増加した時点での出力周波数指令値を、ロータ回転周波数推定値として設定する。出力周波数指令値が、実際のロータ周波数と大きく離れている状態、すなわちすべり周波数が正あるいは負で非常に大きい場合には、誘導電動機の等価回路において、2次抵抗回路の等価インピーダンスが0に近くなるため、1次インピーダンスでの電圧降下のみを補償する場合、電流指令値に一致した成分の電流が流れる。また、出力周波数指令値が、実際のロータ周波数の近傍にあり、すべり周波数が正あるいは負で零に近い場合には、2次抵抗等価インピーダンスは非常に大きくなり、電流は励磁回路に流れ込む。このため、2次抵抗回路の電流、すなわち電流指令値に一致した電流成分は、減少する。

【0064】
従って、電流指令値に一致した電流成分が所定の検知レベルよりも低下した時点にて、出力周波数指令値をラッチすることで、ロータ回転周波数を推定することが可能である。そして、この推定されたロータ回転周波数に基づいて再起動動作を行なうため、過電流・過電圧や不要なトルクの発生を防ぐことができる。これにより、VVVFインバータの保護停止を抑制したり、あるいは乗り心地の劣化を抑制することが期待できる。

【0065】
さらに、請求項16の発明ではロータ回転周波数検知手段を、電流検出手段により検出された電流値を、電流指令演算手段からの出力である電流指令値に一致した成分と電流指令値に直交した成分とに変換する座標系変換手段と、座標系変換手段からの出力である電流指令値に直交した電流成分を入力とし、当該電流成分が所定の検知レベル値よりも減少あるいは増加した時の出力周波数指令の値をロータ回転周波数推定値として設定するロータ回転周波数推定値設定手段とから構成している。

【0066】
従って、請求項16の発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、出力周波数指令値が第1の所定値から第2の所定値へと漸増する際に、誘導電動機の電流の成分の中で、電流指令値に直交した成分が所定の検知レベルよりも増加した時点での出力周波数指令値を、ロータ回転周波数推定値として設定する。出力周波数指令値が、実際のロータ周波数と大きく離れている状態、すなわちすべり周波数が正あるいは負で非常に大きい場合には、誘導電動機の等価回路において、2次抵抗回路の等価インピーダンスが0に近くなるため、1次インピーダンスでの電圧降下のみを補償する場合、電流指令に一致した成分の電流が流れる。また、出力周波数指令値が、実際のロータ周波数の近傍にあり、すべり周波数が正あるいは負で零に近い場合には、2次抵抗等価インピーダンスは非常に大きくなり、電流は励磁回路に流れ込む。このため、励磁電流、すなわち電流指令値に直交した電流成分が発生する。ロータ回転周波数が正転である定常状態では、電流指令値に直交する電流成分は、出力周波数指令値が実際のロータ回転周波数よりも小さい場合には、負であり、出力周波数指令が実際のロータ周波数よりも大きい場合には、正となり発生する。

【0067】
従って、電流指令値に直交する電流成分が所定の検知レベルよりも増加した時点にて、出力周波数指令値をラッチすることで、ロータ回転周波数を推定することが可能である。そして、この推定されたロータ回転周波数に基づいて再起動動作を行なうため、過電流・過電圧や不要なトルクの発生を防ぐことができる。これにより、VVVFインバータの保護停止を抑制したり、あるいは乗り心地の劣化を抑制することが期待できる。

【0068】
【発明の実施の形態】(第1の実施の形態:請求項1に対応)図1は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示すブロック図であり、図38と同一部分には同一符号を付して示している。

【0069】
なお、図1は、直流電気車における制御装置の構成例を示している。

【0070】
図1において、架線1は、パンタグラフ2、直流フィルタリアクトル3を介し、直流フィルタコンデンサ4の正側電位点に接続される。直流フィルタコンデンサ4の負側電位点は、車輪7を介してレール8に接地される。直流フィルタコンデンサ4には、VVVFインバータ5が接続されており、VVVFインバータ5は、誘導電動機6を駆動する。このVVVFインバータ5は、制御ユニット34により制御される。VVVFインバータ5と誘導電動機6との間には、誘導電動機6に流れる電流を検出する電流検出器9が設けられている。

【0071】
なお、図1では、車輪7と誘導電動機6とは独立した構成となっているが、これは便宜的な図であり、実際には、ギアを介して車輪7と誘導電動機6のロータとは機械的に結合されている。

【0072】
図1において、制御ユニット34に関して、より詳細に説明する。図1に示す制御系は、dq軸回転座標系上にて、誘導電動機6の電流、電圧、磁束を制御するベクトル制御方式である。

【0073】
なお、ベクトル制御に関しては、既存の技術であるので、ここではその説明を省略する。また、dq軸回転座標系を用いたベクトル制御方式は、本発明の適用の一例であるため、この構成に限定されるものではない。

【0074】
制御ユニット34は、電流指令演算部10、出力電圧指令演算部11、座標系変換器12、出力周波数指令演算部14、ロータ回転周波数検知部15、ゲート制御部13からなる。

【0075】
なお、出力電圧指令演算部11、および座標系変換部12から、出力電圧指令演算手段が構成されている。

【0076】
電流指令演算部10は、電流指令値を演算する。

【0077】
出力電圧指令演算部11は、電流指令値に一致する電流が得られるように出力電圧の指令値を演算する。

【0078】
座標系変換器12は、d軸出力電圧指令値とq軸出力電圧指令値とに基づいて、d軸を基準軸とする極座標へと変換する。

【0079】
出力周波数指令演算部14は、出力周波数指令を演算する。ここで、特に出力周波数指令演算部14は、誘導電動機6が惰行状態から再起動を行なう場合に、第1の所定値から第2の所定値に出力周波数指令を漸増あるいは漸減させる手段からなる。

【0080】
ロータ回転周波数検知部15は、電流検出器9からの出力である電流検出値と、電流指令演算部10からの出力である電流指令値と、出力電圧指令演算部11からの出力である出力電圧指令値の少なくとも一つに基づいて、誘導電動機6のロータ回転周波数を推定する。

【0081】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の作用について説明する。

【0082】
電流指令演算部10では、dq軸座標系上での電流指令値Id * ,Iq * を演算する。

【0083】
出力電圧指令演算部11では、電流指令値Id * ,Iq * とに基づき、電流指令値に一致する電流が流れるように、VVVFインバータ5が出力すべきd軸出力電圧指令Vd * とq軸出力電圧Vq * とを演算出力する。

【0084】
座標系変換器12では、d軸出力電圧指令値Vd * とq軸出力電圧指令値Vq * とに基づき、d軸を基準軸とする極座標へと変換する。

【0085】
例えば、前記(1)式により、dq軸電圧指令Vd * ,Vq * の大きさを演算し、出力電圧指令の大きさV* として出力する。また、前記(2)式により、d軸から出力電圧指令ベクトルまでの位相角をθv * として演算し、出力する。

【0086】
図2は、ab軸静止座標系と、uvw軸からなる3相座標系と、dq軸回転座標系の関係を示す図であり、出力電圧指令ベクトルを同時に示している。

【0087】
図2中、V* は出力電圧指令の大きさ、θv * はd軸から出力電圧指令ベクトルまでの位相を表わすものである。ここで、位相θv * は、ベクトル制御において導入された制御量であり、旧来のV/F制御、滑り周波数制御等では、この位相θv * は陽に制御上現われない。この場合、θv * =一定、例えばθv * =0として扱うことで、V/F制御、滑り周波数制御と等価となる。

【0088】
座標系変換器12からの出力V* ,θv * と、後述する出力周波数指令演算部14からの出力である出力周波数指令値FINV* は、ゲート制御部13に入力される。

【0089】
出力周波数指令値FINV* の積分値をθabとすると、図2において、θabはa軸あるいはu軸からd軸までの位相角となる。従って、θをθv * とθabとの加算値とすれば、基準となるa軸から出力電圧指令ベクトルまでの位相差はθとなる。

【0090】
ゲート制御部13では、ab軸静止座標系上の出力電圧指令ベクトルを3相電圧指令値に変換し、さらに出力電圧が3相出力電圧指令値に一致するように、VVVFインバータ5のゲートを制御するが、この詳細に関しては、既存技術であるので、ここではその説明を省略する。

【0091】
出力周波数指令演算部14では、VVVFインバータ5が出力すべき出力周波数指令値FINV* を演算出力する。

【0092】
ここで、出力周波数指令演算部14は、第1の所定値F1から第2の所定値F2まで、出力周波数指令値FINV* を漸増あるいは漸減させる。

【0093】
図3は、出力周波数指令演算部14の詳細構成例を示すブロック図である。

【0094】
図3において、出力周波数指令演算部14は、減算器16と、変化率リミッタ17と、積分器18とから構成される。

【0095】
積分器18の初期値には、出力周波数指令値の初期値となる第1の所定値F1が設定される。

【0096】
積分器18の出力であるVVVFインバータ5の出力周波数指令FINV* は、減算器16に入力され、出力周波数指令値FINV* の最終値である第2の所定値F2から減算される。

【0097】
減算器16の出力は、変化率リミッタ17に入力され、次式に示すように、所定の変化率リミット値DLimにより、単位時間当たりの出力周波数指令値の変化量である変化率が制限される。

【0098】
【数4】
JP0003538057B2_000005t.gif【0099】ただし、変化率リミット値DLimは正とする。

【0100】
変化率リミッタ17からの出力は、積分器18への入力となる。

【0101】
積分器18では、変化率リミッタ17からの出力を積分し、出力周波数指令値FINV* を出力する。

【0102】
このように構成された出力周波数指令演算部14により、出力周波数指令FINV* が、第1の所定値F1から第2の所定値F2まで漸増あるいは漸減する。出力周波数指令値FINV* の変化率は、変化率リミット値DLimにより制限される。

【0103】
第1の所定値F1>第2の所定値F2の場合には、出力周波数指令FINV*が高い周波数から低い周波数へ漸減し、第1の所定値F1<第2の所定値F2の場合には、低い周波数から高い周波数へ漸増する。

【0104】
ロータ回転周波数検知部15では、電流検出器9により検出される誘導電動機6に流れる電流Iu ,Iw や、電流指令値Id * ,Iq * 、出力電圧指令Vd *,Vq * ,V* ,θv * の中より、少なくとも一つの情報を用いてロータの回転周波数を推定する。

【0105】
図4は、誘導電動機5の等価回路を示す図である。

【0106】
図4中、R1:1次抵抗、R2:2次抵抗、L1:1次インダクタンス、M:相互インダクタンス、L2:2次インダクタンス、σL1:漏れインダクタンス(=L1-M×M/L2)である。

【0107】
滑りSは、周知のとおり、次式で表わされる。

【0108】
VVVFインバータ5の出力周波数FINVとロータ回転周波数FRとの関係に応じて、幅広い値をとる。

【0109】
【数5】
JP0003538057B2_000006t.gif【0110】誘導電動機6のインピーダンスZは、滑りSの影響を大きく受ける。

【0111】
すなわち、滑りSが0から大きく離れている周波数においては、インピーダンスZは、1次抵抗R1と漏れインダクタンスσL1からなる1次インピーダンスにより近似することができる。

【0112】
【数6】
JP0003538057B2_000007t.gif【0113】ただし、R1:1次抵抗、σL1:漏れインダクタンス(=L1-M×M/L2)である。

【0114】
これに対して、滑りが0付近では、1次インピーダンスと励磁インピーダンスとの直列和として近似することができる。

【0115】
【数7】
JP0003538057B2_000008t.gif【0116】ただし、R1:1次抵抗、L1:1次インダクタンス、M:相互インダクタンス、L2:2次インダクタンス、σL1:漏れインダクタンス(=L1-M×M/L2)である。

【0117】
従って、出力電圧指令値Vd * ,Vq * ,V* ,θv * や電流指令値Id * ,Iq * あるいは検出された電流値Iu ,Iw に基づいて、インピーダンスの変化に影響される電気的な現象を検知することにより、ロータの回転周波数を推定することが可能である。

【0118】
上述したように、本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置では、誘導電動機6が惰行している状態から再起動をする際に、第1の所定値F1から第2の所定値F2へと出力周波数指令を漸増あるいは漸減させることにより、誘導電動機6の滑りS、すなわち誘導電動機6のインピーダンスが変化し、これに応じた電気的現象を検知することで、誘導電動機6のロータ回転周波数を推進することが可能となる。そして、この推定されたロータ回転周波数に基づいて再起動動作を行なうため、過電流・過電圧や不要なトルクの発生を防ぐことができる。これにより、VVVFインバータ5の保護停止を抑制したり、あるいは乗り心地の劣化を抑制することが可能となる。

【0119】
なお、本実施の形態では、直流電気車に基づく構成について示しているが、交流電気車の場合においても、同様に適用することが可能である。

【0120】
(第2の実施の形態:請求項2に対応)図5および図6は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示すブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0121】
すなわち、本実施の形態は、前記第1の実施の形態において、出力電圧指令演算部11とロータ回転周波数検知部15を限定した構成としている。

【0122】
出力電圧指令演算部11は、図5に示すように構成される。図5の構成では、図4に示す誘導電動機6の等価回路において、1次インピーダンスである1次抵抗R1と漏れインダクタンスσL1での電圧降下分を、dq軸回転座標系でのd軸電圧指令Vd * 、q軸電圧指令Vq * として、以下のように演算するものである。

【0123】
【数8】
JP0003538057B2_000009t.gif【0124】ただし、R1:1次抵抗、L1:1次インダクタンス、M:相互インダクタンス、L2:2次インダクタンス、σL1:漏れインダクタンス(=L1-M×M/L2)である。

【0125】
次に、演算されたd軸電圧指令Vd * とq軸電圧指令Vq * は、出力電圧指令演算部11より出力される。

【0126】
ロータ回転周波数検知部15は、電流ベクトル長演算部35と、比較器36と、ラッチ部37とからなる。

【0127】
なお、比較器36、およびラッチ部37から、ロータ回転周波数推定値設定手段が構成されている。

【0128】
電流ベクトル長演算部35では、図1における電流検出器9により検出されたVVVFインバータ5の出力電流Iu ,Iw に基づいて、電流ベクトルの大きさIabsを次式により演算出力する。

【0129】
【数9】
JP0003538057B2_000010t.gif【0130】ただし、θabはa軸からd軸までの位相角、Id はd軸電流値、Iq はq軸電流値である。

【0131】
電流ベクトルの大きさIabsは、比較器36により、検知レベルIabs*と比較される。

【0132】
この結果、電流ベクトルの大きさIabsが検知レベルIabs* よりも小さい場合には、比較器36の出力は1となり、逆に電流の大きさIabsが検知レベルIabs* よりも大きい場合には、比較器36の出力は0となる。

【0133】
検知レベルIabs* は、(10)式により演算される電流指令値の大きさIabsRefに対し、(11)式のように設定されるものとする。

【0134】
ただし、ゲインKは、1未満の値に設定する。

【0135】
【数10】
JP0003538057B2_000011t.gif【0136】ラッチ部37には、比較器36からの出力と出力周波数指令値FINV* とが入力される。

【0137】
比較器36からの出力が0から1に変化した場合、その時点での出力周波数指令値FINV* をラッチする。ラッチ部37からの出力は、ロータ回転周波数推定値FRHとなる。

【0138】
図7は、以上の関係を示すタイミングチャートである。

【0139】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、出力周波数指令FINV* が第1の所定値F1から第2の所定値F2へと漸増あるいは漸減する際に、VVVFインバータ5の出力電流ベクトルの大きさIabsが検知レベルIabs* よりも低下した時点での出力周波数指令値FINV* を、ロータ回転周波数推定値FRHとして設定する。

【0140】
前記第1の実施の形態で説明したように、出力周波数指令FINV* を漸増あるいは漸減する際に、滑りSの変化によって、誘導電動機6のインピーダンスZが大きく変化する。

【0141】
出力電圧指令演算部11が、図5に示すように、漏れインダクタンスσL1の電圧降下分のみを補償するように構成される場合、滑りSが0から大きく離れている条件では、図4に示す誘導電動機6の等価回路において、2次回路インピーダンスは0に近くなるために、電流指令値に一致する電流が得られる。

【0142】
滑りSが0である場合、2次回路インピーダンスは無限大であり、電流は相互インダクタンスを流れる。これは、前記(5)式、(6)式より、誘導電動機6のインダクタンスが、漏れインダクタンスσL1から1次インダクタンスL1へと増加したことと等価である。

【0143】
1次インピーダンスでの電圧降下分のみを補償する本実施の形態においては、滑りSが0付近にて、電流値が減少することになる。滑りSが0であることは、出力周波数とロータ周波数とが一致する状態であることにより、電流の大きさが減少したことにより出力周波数指令値FINV* をラッチすることで、ロータ回転周波数を推定することが可能である。

【0144】
出力電圧指令として、1次インピーダンスでの電圧降下分のみを補償する本実施の形態では、滑りSが如何なる値であっても、誘導電動機6のインピーダンスが1次インピーダンス以下になることはないために、過電流が抑制できる。また、滑りSが0付近にて、初めて励磁回路に電流が流れるため、発生する磁束量を抑制することができる。磁束と電流との外積が発生するトルクであるため、回転周波数推定の過程において発生するトルクを抑制することができる。

【0145】
これにより、電気車の乗り心地の劣化が抑えられる。また、発生トルクが抑制されるため、直流リンク電圧の不安定化が抑制でき、過電圧・低電圧によるVVVFインバータ5の保護動作を回避することが可能となる。

【0146】
(第3の実施の形態:請求項3に対応)図8は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示すブロック図であり、図6と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0147】
すなわち、本実施の形態は、前記第2の実施の形態において、ロータ回転周波数検知部15を限定した構成としている。

【0148】
図8に示すロータ回転周波数検知部15は、図6に示すロータ回転周波数推定部15に、絶対値演算器49と、検知レベル設定器38とを付加している。

【0149】
絶対値演算器49には、出力周波数指令値FINV* が入力され、その絶対値|FINV* |が出力される。

【0150】
検知レベル設定器38には、出力周波数指令値の絶対値|FINV* |が入力され、電流の検知レベルIabs* が出力される。

【0151】
ここで、検知レベル設定器38では、例えば次式に示すように、検知レベルIabs* を設定する。

【0152】
【数11】
JP0003538057B2_000012t.gif【0153】ただし、Fsl:所定の周波数設定値、K1,K2:所定のゲインで0=<K2<K1<1、IabsRef:電流指令値の絶対値で前記(10)式により演算される。

【0154】
なお、(12)式では、検知レベルIabs* を出力周波数指令値FINV*に応じて2段階に設定しているが、特に2段階に限定されるものではなく、何段階に設定してもかまわない。また、出力周波数指令値FINV* の関数として、次式に示すように、電流検知レベルIabS* を可変とすることもできる。

【0155】
【数12】
JP0003538057B2_000013t.gif【0156】ただし、Fsl:所定の周波数設定値、K3:所定のゲインで0<=K3<1、a:所定のゲインでa<0のゲインである。

【0157】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前述した第2の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。

【0158】
第2の実施の形態で説明したように、出力周波数が漸増あるいは漸減する際に、滑りSが0付近では、誘導電動機6のインピーダンスが大きくなるため、電流値が減少する。

【0159】
図4から、滑りSが0から離れている周波数において、誘導電動機6のインピーダンスは、前記(5)式に示すように、抵抗R1と漏れインダクタンスσL1からなる1次インピーダンスに近似いることができる。これに対して、滑りが0付近では、前記(6)式に示すように、誘導電動機6のインピーダンスは、1次インピーダンスと励磁インピーダンスとの直列和として考えられる。従って、インピーダンスの差は、前記(5)式と(6)式との差で表わされる。

【0160】
実際のロータ回転周波数FRが十分に高く、R1<<2πFR・σL1であることを仮定し、抵抗R1を無視すると、前記(5)式は(14)式に、(6)式は(15)式にそれぞれ近似することができる。

【0161】
【数13】
JP0003538057B2_000014t.gif【0162】両式を比較すると、漏れインダクタンスσL1に比べて、1次インダクタンスL1は10倍程度大きいため、全体のインピーダンスの変化も大きくなる。

【0163】
逆に、実際のロータ回転周波数FRが低い場合には、漏れインダクタンスσL1や1次インダクタンスL1によるインピーダンスに比べ、抵抗のインピーダンスが無視できない。この場合の滑りSにより、インピーダンスの変化率は、ロータ回転周波数が高周波である場合と比較すると、小さくなる。これは、ロータ回転周波数FRが低周波である場合には、電流の大きさの落ち込みが低下することを表わしてる。

【0164】
図9は、シミュレーションによる、実際のロータ回転周波数FRと電流の大きさの最小値との関係を示す図である。

【0165】
図9は、軸電流指令Iq * =0、d軸電流指令値Id * を一定とし、出力周波数指令FINV* を、実際のロータ回転周波数を横切るように漸増させた場合の結果である。

【0166】
横軸には、実際のロータ回転周波数FRを示し、縦軸には出力周波数を漸増する中での電流の大きさの最小値を、d軸電流指令値Id * すなわち電流指令値の大きさIabsRefに対する割合として示したものである。

【0167】
また、図9には、出力周波数指令値FINV* の変化率(Hz/s)をパラメータとし、3通りの条件を示している。

【0168】
実際のロータ回転周波数FRが高周波である場合には、電流の大きさの落ち込みが大きいが、実際のロータ回転周波数が低周波である場合には、電流の大きさの落ち込みが小さくなっていることが確認できる。また、出力周波数指令値の変化率が大きいほど、電流の落ち込みは小さく検知が困難となっていることが分かる。

【0169】
上述したように、本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置では、出力周波数指令値FINV* の絶対値が小さい場合には、検知レベルIabs* を大きく設定することにより、ロータ回転周波数FRが低い領域においても、ロータ回転周波数の推定を可能にし、速度推定の範囲を向上することが期待できる。

【0170】
(第4の実施の形態:請求項4に対応)図10は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示すブロック図であり、図5と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0171】
すなわち、本実施の形態は、前記第2の実施の形態において、出力電圧指令演算部11を異なった構成としている。

【0172】
図10に示す出力電圧指令演算部11は、図4に示す誘導電動機6の等価回路において、漏れインダクタンスσL1の電圧降下分をdq軸回転座標系でのd軸電圧指令Vd * 、q軸電圧指令Vq * として、次式により演算するものである。

【0173】
【数14】
JP0003538057B2_000015t.gif【0174】ただし、σL1:漏れインダクタンス(=L1-M×M/L2)、L1:1次インダクタンス、M:相互インダクタンス、L2:2次インダクタンスである。

【0175】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前述した第2の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。

【0176】
さらに、第2の実施の形態と比べて、出力電圧指令演算部11において、1次抵抗の電圧降下分を演算していない分だけ、制御ソフトの容量の縮小と、演算処理時間の短縮を期待することができる。

【0177】
(第5の実施の形態:請求項5に対応)図11は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示すブロック図であり、図6と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0178】
すなわち、本実施の形態は、前記第2の実施の形態において、ロータ回転周波数検知部15を限定した構成としている。

【0179】
図11に示すロータ回転周波数検知部15は、電流ベクトル長演算部35と、最小値選択器39と、ラッチ部37とからなる。

【0180】
電流ベクトル長演算部35では、図1における電流検出器9により検出されたVVVFインバータ5の出力電流Iu ,Iw に基づいて、前記(8)式、(9)式に示すように、電流ベクトルの大きさIabsを演算出力する。

【0181】
最小値選択器39には、電流ベクトルの大きさIabsと最小値選択器39自身の出力Imin とが入力して比較され、その小さい方を最小値選択器39は選択出力する。

【0182】
この時、最小値選択器39がその出力を書き換える場合には、最小値が更新されたことを示すフラグF Minが1となる。

【0183】
ラッチ部37では、出力周波数指令値FINV* とフラグF Minとを入力とし、フラグF Minが1である場合に、出力周波数指令値FINV* をラッチする。ラッチ部37の出力は、ロータ回転周波数推定値FRHとなる。

【0184】
図12は、以上の関係を示すタイミングチャートである。

【0185】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前述した第2の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。

【0186】
さらに、第2の実施の形態と比べて、電流ベクトルの大きさIabsが最も落ち込む点を探るため、ロータ回転周波数の推定値FRHの推定精度を向上することが可能となる。

【0187】
(第6の実施の形態:請求項6に対応)図13は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示すブロック図であり、図3と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0188】
すなわち、本実施の形態は、前記第1の実施の形態において、出力周波数指令演算部14を限定した構成としている。

【0189】
図13に示す出力周波数指令演算部14は、図3に示す出力周波数指令演算部14に、絶対値演算器22と、変化率設定器23とを付加している。

【0190】
すなわち、図3の構成は、出力周波数指令値FINV* を第1の所定値F1から第2の所定値F2まで漸増あるいは漸減させる手段から構成しているのに対して、ここでは、出力周波数指令値FINV* の変化率は、変化率リミッタにおける変化率リミット値DLimにより設定されている。

【0191】
この絶対値演算器22と変化率設定器23とが、出力周波数指令の絶対値が小さい場合には、出力周波数の変化率を小さくする手段に相当する。

【0192】
絶対値演算器22には、出力周波数指令値FINV* が入力され、その絶対値|FINV* |が出力される。

【0193】
変化率設定器23には、出力周波数指令値FINV* の絶対値|FINV* |が入力され、出力周波数指令値の変化率リミット値DLimが出力される。

【0194】
変化率設定器23では、例えば次式に示すように出力周波数指令値FINV*の変化率リミット値DLimを設定する。

【0195】
【数15】
JP0003538057B2_000016t.gif【0196】ただし、Fsl:所定の周波数設定値、DLim1,DLim2:所定の変化率リミット値で0<DLim1<DLim2として設定する。

【0197】
なお、(17)式では、出力周波数指令値FINV* の変化率リミット値DLimを出力周波数指令値FINV* に応じて2段階に設定しているが、特に2段階に限定されるものではなく、何段階に設定してもかまわない。また、出力周波数指令値FINV* の関数として、出力周波数指令値FINV* の絶対値が小さい場合には、変化率リミット値DLimが小さくなるように設定することもできる。

【0198】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前述した第1の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。

【0199】
さらに、第3の実施の形態の図9にて説明したように、実際のロータ回転周波数が低い領域では、滑りSによってインピーダンスの変化が小さいため、電気的現象が検出し難く、特に出力周波数指令値の変化率が大きくなるほど、この傾向は顕著になる。

【0200】
本実施の形態では、出力周波数指令値の絶対値が小さい範囲では、出力周波数指令値の変化率を小さくし、ゆるやかに出力周波数指令FINV* を漸増あるいは漸減させることで、インピーダンスの変化の影響を大きくすることが可能となる。ロータ回転周波数FRが低い領域においても、ロータ回転周波数の推定を可能にし、速度推定の範囲を向上することが期待できる。

【0201】
(第7の実施の形態:請求項7に対応)図14は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示す図であり、図13と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0202】
すなわち、本実施の形態は、前記第6の実施の形態において、出力周波数指令演算部14の中の所定値F1およびF2の設定を異なった構成としている。

【0203】
本実施の形態は、出力周波数指令FINV* を漸増あるいは漸減させる始点の周波数である第1の所定値F1と終点の周波数である第2の所定値F2との関係を表わすものであり、第1の所定値F1の絶対値が、第2の所定値F2の絶対値よりも大きく設定する。

【0204】
例えば、誘導電動機6が正転していることを仮定する場合、第1の所定値F1の絶対値が第2の所定値F2よりも大きくなるように設定する。逆に、誘導電動機6が逆転していることを仮定する場合、第1の所定値の絶対値が第2の所定値よりも小さくなるように設定する。

【0205】
図14は、正転である場合の第1の所定値F1および第2の所定値F2の設定の一例であり、出力周波数指令値FINV* と変化率リミット値との関係を表わすものである。

【0206】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前述した第6の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。

【0207】
さらに、誘導電動機6のロータの正転を仮定すれば、出力周波数指令値FINV* は、高周波から低周波へ漸減する。図14では、正転における出力周波数指令値FINV* は、変化率リミットDLim2の範囲を漸減した後、変化率リミット値DLim1の範囲で漸減する。

【0208】
前記第6の実施の形態で説明したように、出力周波数指令値FINV* の絶対値が小さい領域では、変化率リミットを小さくするため、DLim2>DLim1という関係に設定される。変化率リミット値が小さい領域は、単位時間当たりに出力周波数指令値が変化する範囲が狭いことになる。

【0209】
ロータ回転周波数が全くの不明である場合、単位時間内に広い周波数範囲を漸増あるいは漸減できるように所定値F1の絶対値が所定値F2の絶対値よりも大きくすることにより、平均的なロータ回転周波数の検知時間を短縮することができ、迅速な誘導電動機6の再起動が可能となる。

【0210】
(第8の実施の形態:請求項8に対応)図15は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示すブロック図であり、図3と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0211】
すなわち、本実施の形態は、前記第1の実施の形態において、出力周波数指令演算部14を限定した構成としている。

【0212】
図15に示す出力周波数指令演算部14は、図3に示す出力周波数指令演算部14に、カウンタ19と、比較器20と、切替え器21とを付加している。

【0213】
カウンタ19は、初期値0をとり、時間と共にカウントアップされる。

【0214】
カウンタ19からの出力は、比較器20において、所定値CntStep2と比較され、カウンタからの出力が所定値CntStep2よりも小さい場合には、Step=1を出力し、カウンタからの出力が所定値CntStep2よりも大きい場合には、Step=2を出力する。

【0215】
積分器18の初期値は、第1の所定値F1である。積分器18からの出力であるVVVFインバータ5の出力周波数指令FINV* は、減算器16に入力されて、第2の周波数所定値F2から減算される。

【0216】
減算器16からの出力は、変化率リミッタ17へ入力されて、その変化率がリミット値DLimにより制限される。

【0217】
なお、変化率リミッタ17の作用は、前記第1実施の実施の形態にて説明した変化率リミッタ17の作用と同様である。

【0218】
変化率リミット値DLimは、切替え器21により、Step=1の場合には0に、Step=2の場合にはDLim2に、それぞれ設定される。

【0219】
積分器18では、変化率リミッタ17からの出力を積分し、出力周波数指令値FINV* を出力する。

【0220】
このような出力周波数指令演算部14では、カウンタ19からの出力がCntStep2よりも小さい状態であるStep=1の場合には、変化率リミッタ17の変化率リミット値DLimが0となり、出力周波数指令値FINV* は、積分器18の初期値F1を維持する。

【0221】
また、カウンタ19からの出力がCntStep2よりも大きい状態であるStep=2の場合には、変化率リミッタ17の変化率リミット値DLimがDLim2となり、出力周波数指令値FINV* は、積分器18の初期値F1から最終値F2へと、漸増あるいは漸減する。

【0222】
図16は、カウンタ19からの出力と出力周波数指令値FINV* と比較器20からの出力Stepとの関係を示す図である。

【0223】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前述した第1の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。

【0224】
さらに、誘導電動機6が惰行する状態からロータの回転周波数を推定する際、まず出力周波数指令値FINV* を第1の所定値F1にある期間一定に保ち、その後、漸増あるいは漸減させる。出力周波数指令値FINV* を漸増あるいは漸減させる前に、出力周波数指令値FINV* を一定することで、電圧や電流等の電気的状態量が安定化して、ロータ回転周波数検知の際の誤検知を抑制することが可能となる。

【0225】
(第9の実施の形態:請求項9に対応)図17は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示すブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0226】
すなわち、本実施の形態は、前記第8の実施の形態において、出力電圧指令演算部11からの出力である出力電圧指令に補正を加える手段を付加した構成としている。

【0227】
この出力電圧指令に補正を加える手段は、座標系変換器25と、減算器26と、減算器27と、電流制御器28と、ゲイン切替え器29と、乗算器30と、乗算器31と、加算器32と、加算器33とからなる。

【0228】
電流検出器9の出力である相電流Iu ,Iw は、座標系変換器25により、例えば次式に示すように、dq軸座標系上での電流値であるd軸電流値Id とq軸電流値Iq へと変換される。

【0229】
【数16】
JP0003538057B2_000017t.gif【0230】ただし、θab:静止座標系a軸から回転座標系d軸までの位相角である。

【0231】
減算器26では、d軸電流指令値Id * からd軸電流値Id を減算し、偏差ΔId を出力する。

【0232】
減算器27では、q軸電流指令値Iq * からq軸電流値Iq を減算し、偏差ΔIq を出力する。

【0233】
各減算器26,27により算出された電流偏差ΔId ,ΔIq は、電流制御器28に入力される。

【0234】
電流制御器28では、各電流偏差ΔId ,ΔIq が0となるように、出力電圧指令値への補正量Vd Cmp,Vq Cmpを、例えば次式のようなPI制御により算出する。

【0235】
【数17】
JP0003538057B2_000018t.gif【0236】ただし、s:ラプラス演算子、Kp :比例ゲイン、Ki :積分ゲインである。

【0237】
出力電圧指令値への補正量Vd Cmp,Vq Cmpは、乗算器30,31へ入力される。

【0238】
ゲイン切替え器29には、前記第8の実施の形態にて示した出力周波数指令値FINV* が一定であることを示す信号Stepが入力される。

【0239】
出力周波数指令値FINV* が一定であることを示すStep=1である場合には、ゲイン切替え器29は1を出力し、出力周波数指令値FINV* が漸増あるいは漸減することを示すStep=2である場合には、ゲイン切替え器29は0を出力する。

【0240】
ゲイン切替え器29からの出力は、乗算器30,31へと入力される。

【0241】
乗算器30,31は、ゲイン切替え器29からの出力と、d軸出力電圧補正値Vd Cmpとq軸出力電圧補正値Vq Cmpとを、それぞれ乗算し、出力する。

【0242】
乗算器30,31からの出力は、加算器32,33において出力電圧指令演算部11からの出力である出力電圧指令値に加算され、d軸出力電圧指令値とq軸出力電圧指令値とを補正する。

【0243】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前述した第8の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。

【0244】
さらに、出力周波数指令値FINV* が一定となる期間Step=1において、電流偏差ΔId ,ΔIq が0となるように電流制御が動作し、出力電圧指令値を補正する。また、出力周波数指令値FINV* が漸増あるいは漸減するStep=2において、ゲイン切替え器29により、ゲイン0が選択されるため、出力電圧指令値への補正は施されない。

【0245】
出力周波数指令値FINV* が一定となる期間Step=1において、電流制御が加わることで、電流を高速に安定化させることが可能である。これにより、出力周波数指令値を一定とする期間が短縮できるため、ロータ回転周波数の推定にかかる時間を短縮することが可能であり、誘導電動機6の再起動を迅速に行なうことが期待できる。

【0246】
(第10の実施の形態:請求項10に対応)図18は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示すブロック図であり、図15と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0247】
すなわち、本実施の形態は、前記第8の実施の形態において、出力周波数指令演算部14を限定した構成としている。

【0248】
本実施の形態では、誘導電動機6の正転を仮定し、出力周波数指令値を低周波から高周波へと漸増していくことを条件とする。

【0249】
出力周波数指令演算部14では、ロータの回転周波数の概略値としてFRH*が与えられる。

【0250】
出力周波数指令値FINV* を漸増させる始点となる周波数の初期値F1は、減算器24により、FRH* とFRBとの差として設定される。

【0251】
このFRBは、出力周波数指令値FINV* の初期値が予測される実際のロータ回転周波数の範囲の外にあるように、出力周波数指令値FINV* の初期値を故意にずらすパラメータであり、本実施の形態のように、誘導電動機6の正転を仮定し、出力周波数指令値FINV* を低周波から高周波へと漸増していくことを条件とする場合、FRB>0として設定する。

【0252】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前述した第8の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。

【0253】
さらに、出力周波数指令値FINV* が漸増あるいは漸減する始点となる第1の所定値F1は、予測されるロータ回転周波数の可能性の範囲外に設定される。これにより、出力周波数指令値FINV* が一定となる期間において、磁束やトルクが発生することを抑制することができる。ロータ回転周波数の推定の過程に生じる直流リンク電圧の不安定化・過電圧・定電圧という現象を抑制することが期待できる。また、トルク発生に伴なう、乗り心地の劣化を抑制することが期待できる。

【0254】
(第11の実施の形態:請求項10に対応)図19は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示すブロック図であり、図18と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0255】
すなわち、本実施の形態は、前記第10の実施の形態と比較して、概ねのロータの回転周波数FRH* を0として処理していることのみが異なっている。

【0256】
本実施の形態では、誘導電動機6が正転ではあるが、ロータ回転周波数に関して全く情報がない場合の構成例を示すものであり、正転であることを条件に、負の周波数が第1の所定値F1として与えられるように、ロータ回転周波数の概略値FRH* を零として設定している。

【0257】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前述した第8の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。

【0258】
さらに、出力周波数指令値FINV* が漸増する始点となる第1の所定値F1は、予測されるロータ回転周波数の概略値FRH* に対して、FRBだけ低周波よりに設定される。

【0259】
前述のように、所定時間が経過するまでのStep=1の状態においては、出力周波数指令は第1の所定値F1を維持する。そして、所定値F1が実際のロータ回転周波数の近傍である場合、励磁回路に電流が流れるため、磁束やトルクが発生する。これに起因して、直流リンク電圧の不安定化や過電圧・低電圧といった問題が生じたり、あるいはジャークの発生によって乗り心地の低下を招く。

【0260】
本実施の形態では、予測されるロータ周波数範囲の外に、第1の所定値F1を設定することにより、上記の問題を抑制することが可能である。

【0261】
なお、本実施の形態では、誘導電動機6の正転を仮定し、出力周波数指令値FINV* を低周波から高周波へ漸増することを条件としているが、出力周波数指令FINV* を高周波から低周波へ漸減させる場合には、減算器24を加算器に置き換えればよい。また、誘導電動機6が逆転している場合にも、同様な考えに立って構成することができる。

【0262】
(第12の実施の形態:請求項11に対応)図20は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示すブロック図であり、図3と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0263】
すなわち、本実施の形態は、前記第1の実施の形態において、出力周波数指令演算部14を限定した構成としている。

【0264】
本実施の形態では、前記第1の実施の形態の図3に示す出力周波数指令演算部14と比較して、出力周波数指令値FINV* を漸増あるいは漸減させる初期値である第1の所定値F1の設定のみが異なっている。

【0265】
本実施の形態では、出力周波数指令演算部14には、ロータ回転周波数の概略値としてFRH* が与えられる。所定値FRBは、任意の正の定数として与えられる。ただし、ここでは、誘導電動機6は正転であり、周波数を低周波から高周波へと漸増させる場合を条件とする。

【0266】
出力周波数指令値FINV* の初期値である第1の所定値F1は、減算器24により、FRH* とFRBとの差として設定される。

【0267】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前述した第1の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。

【0268】
さらに、出力周波数指令値FINV* の初期値である第1の所定値F1は、ロータ回転周波数の概略値FRH* に対して、所定値FRBだけ低周波よりに設定される。これにより、出力周波数指令値FINV* を漸増あるいは漸減する初期値が、予測されるロータ回転周波数付近より開始されるため、ロータ回転周波数を検知する時間を短縮して、誘導電動機6の再起動を速やかに行なうことが可能となる。

【0269】
ただし、所定値FRBは、出力周波数指令値FINV* が漸増あるいは漸減する範囲内に、実際のロータ回転周波数が確実に存在するような値に設定することが必要である。

【0270】
なお、本実施の形態では、誘導電動機6の正転を仮定し、出力周波数指令値FINV* を低周波から高周波へと漸増していくことを条件としているが、出力周波数指令値FINV* を高周波から低周波へ漸減させる場合には、減算器24を加算器に置き換えればよい。この場合、必ず、出力周波数指令値FINV* が漸増あるいは漸減する範囲内に、予測されるロータ回転周波数が含まれるように設定することが必要である。また、誘導電動機6が逆転している場合にも、同様な考えに立って構成することができる。

【0271】
(第13の実施の形態:請求項12に対応)図21は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示すブロック図であり、図37と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0272】
すなわち、本実施の形態は、前記第12の実施の形態において、出力周波数指令演算部14への入力を限定した構成としている。

【0273】
図21は、電気車の編成を模擬する図であり、直流電気車の1編成から3両を示している例である。

【0274】
図21において、車両45,46には、パンタグラフ2、直流フィルタリアクトル3、VVVFインバータ5、制御ユニット34、誘導電動機6から成る電気品が構成される。車両44には、速度検出器42が設けられ、車輪7の回転周波数を検出する。同編成には、速度検出器は、唯一一つしか存在しない。速度検出器42からの出力である回転周波数は、伝送装置43により、各車両45,46へ伝送される。

【0275】
図22は、図21に示す車両45と車両44の一部を、より詳細に示すブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0276】
図22において、速度検出器42により検出された車輪7の回転速度は、伝送装置43により、制御ユニット34に送られる。

【0277】
制御ユニット34に入力された車輪7の回転速度は、係数変換器47に入力され、車輪7の回転速度から、誘導電動機6のロータ回転周波数への換算が行なわれる。

【0278】
係数変換器47からの出力は、出力周波数指令演算部14に入力される。

【0279】
出力周波数指令演算部14の構成は、前記第12の実施の形態に示した図20と同一である。

【0280】
出力周波数指令演算部14への入力である車輪速度をロータ回転周波数に換算した値が、ロータ回転周波数の概略値FRH* として設定される。

【0281】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、前述した第12の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。

【0282】
さらに、出力周波数指令値FINV* を漸増あるいは漸減する始点である第1の所定値F1は、電気車の編成に少なくとも一つ備えられた速度検出器42からの情報に基づいて、ロータ回転周波数へと換算された概略値FRH* に対して、所定値FRBだけ低周波よりに設定される。これにより、出力周波数指令値FINV* を漸増あるいは漸減させる周波数の初期値が、検出された回転周波数付近より開始されるため、ロータ回転周波数を検知する時間を短縮して、誘導電動機6の再起動を速やかに行なうことが可能となる。

【0283】
出力周波数指令演算部14は、概ねの速度情報が与えられればよいために、編成に唯一の速度検出器42の速度検出精度は、非常に粗いものでも構わない。また、車内の伝送装置43に関しても、非常に遅い伝送速度を有するもので十分である。

【0284】
(第14の実施の形態:請求項13に対応)図23は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示すブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0285】
すなわち、本実施の形態は、前記第1の実施の形態において、ロータ回転周波数検知部15を限定した構成としている。

【0286】
ロータ回転周波数検知部15は、電流ベクトル長演算部35と、インピーダンス推定器43と、インピーダンス基準演算器42と、比較器36と、ラッチ部37とからなる。

【0287】
なお、比較器36、およびラッチ部37から、ロータ回転周波数推定値設定手段が構成されている。

【0288】
電流ベクトル長演算器35には、電流検出器9により検出された電流値Iu ,Iw が入力され、その電流ベクトルの大きさIabsが、(8)式、(9)式により、演算出力される。

【0289】
インピーダンス推定器43には、演算された電流ベクトルの大きさIabsと座標系変換器12からの出力である出力電圧指令値の大きさV* とが入力され、例えば次式により、誘導電動機6のインピーダンスの推定値ZHを演算する。

【0290】
【数18】
JP0003538057B2_000019t.gif【0291】この演算されたインピーダンスの推定値ZHは、比較器36へ入力される。

【0292】
インピーダンス基準演算器42には、出力周波数指令値FINV* が入力され、例えば次式により、インピーダンス基準Z* を演算出力する。このインピーダンス基準Z* は、1次インピーダンスにゲインaを乗算したものとして、算出される。

【0293】
【数19】
JP0003538057B2_000020t.gif【0294】ただし、R1:1次抵抗、σL1:漏れインダクタンス(=L1-M×M/L2)、L1:1次インダクタンス、M:相互インダクタンス、L2:2次インダクタンス、a:ゲイン(>1)である。

【0295】
比較器36では、インピーダンス基準演算器42からの出力であるインピーダンス基準値Z* と、インピーダンス推定器43からの出力であるZHとを比較する。この結果、ZH<Z* である場合には0を出力し、ZH>=Z* である場合には1を出力する。

【0296】
ラッチ部37には、比較器36からの出力と出力周波数指令値FINV* とが入力される。

【0297】
ラッチ部37では、比較器36からの出力が0から1に変化した場合、その時点での出力周波数指令値FINV* をラッチする。

【0298】
ラッチ部37からの出力は、ロータ回転周波数推定値FRHとなる。

【0299】
図24は、以上の関係を示すタイミングチャートである。

【0300】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、出力周波数指令値FINV* が第1の所定値F1から第2の所定値F2へと漸増あるいは漸減する際に、推定演算された誘導電動機6のインピーダンスZHがインピーダンス基準値Z* を超過した時点での出力周波数指令値FINV* を、ロータ回転周波数推定値FRHとして設定する。

【0301】
前記第1の実施の形態にて説明したように、滑りSが0の近傍では、誘導電動機6のインピーダンスが大きくなる。滑りSが0から離れた領域では、全体のインピーダンスは、1次インピーダンスに近似することができる。

【0302】
インピーダンス基準値を、1次インピーダンスにゲインa(>1)を乗算した値として設定する場合、インピーダンス推定値ZHがインピーダンス基準値Z*を超えた時点での出力周波数指令値FINV* を、ロータ回転周波数の推定値FRHとして設定することで、ロータの回転周波数を推定することが可能となる。そして、この推定されたロータ回転周波数に基づいて再起動動作を行なうため、過電流・過電圧や不要なトルクの発生を防ぐことができる。これにより、VVVFインバータ5の保護停止を抑制したり、あるいは乗り心地の劣化を抑制することが可能となる。

【0303】
(第15の実施の形態:請求項14に対応)図25および図26は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示すブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0304】
すなわち、本実施の形態は、前記第1の実施の形態において、ロータ回転周波数検知部15を限定し、さらに出力電圧指令演算部11からの出力である出力電圧指令に補正を加える手段を付加した構成としている。

【0305】
図25において、出力電圧指令に補正を加える手段は、座標系変換器25と、減算器26と、減算器27と、電流制御器28と、加算器32と、加算器33とからなる。

【0306】
本実施の形態では、誘導電動機6に流れる電流を検出する電流検出器9からの出力である相電流Iu ,Iw は、前記(18)式に示すように、座標系変換器25において、電流指令値Id * ,Iq * と同一の座標系へと変換される。

【0307】
減算器26では、d軸電流指令値Id * からd軸電流値Id を減算して、偏差ΔId を出力する。

【0308】
減算器27では、q軸電流指令値Iq * からq軸電流指令値Iq を減算して、偏差ΔIq を出力する。

【0309】
各減算器26,27により算出された電流偏差ΔId ,ΔIq は、電流制御器28に入力される。

【0310】
電流制御器28は、各電流偏差ΔId ,ΔIq が0となるように、出力電圧指令値への補正量Vd Cmp,Vq Cmpを、例えば(19)式に示すようなPI制御により算出する。

【0311】
加算器32では、出力電圧指令演算部11からの出力であるd軸電圧指令値に、電流制御器28からの出力であるd軸出力電圧補正値Vd Cmpを加算して、d軸出力電圧指令値Vd * を補正する。

【0312】
加算器33では、出力電圧指令演算部11からの出力であるq軸電圧指令値に、電流制御器28からの出力であるq軸出力電圧補正値Vq Cmpを加算して、q軸出力電圧指令値をVq * を補正する。

【0313】
一方、図26において、ロータ回転周波数推定部15は、除算器40と、絶対値演算器41と、比較器36と、ラッチ部37とからなる。

【0314】
なお、出力電圧指令の大きさを演算する手段は、前記第1の実施の形態に示した座標系変換器12に相当する。

【0315】
座標系変換器12からの入力である出力電圧指令値の大きさV* は、除算器40において出力周波数指令値FINV* により除算される。

【0316】
絶対値演算器41には、除算器40からの出力が入力され、その絶対値が演算出力される。

【0317】
絶対値演算器41からの出力は、出力電圧指令値の大きさと出力周波数指令値との比で、いわゆるV/F比(記号V F)である。

【0318】
除算器40からの出力であるV Fは、比較器36に入力される。

【0319】
比較器36により、所定の検知レベルV * と比較される。この結果、VFが検知レベルV * よりも大きい場合には、比較器36からの出力は1となり、逆にV Fが検知レベルV * よりも小さい場合には、比較器36からの出力は0となる。

【0320】
ラッチ部37には、比較器36からの出力と出力周波数指令値FINV* とが入力される。

【0321】
比較器36からの出力が0から1に変化した場合には、その時点での出力周波数指令値FINV* をラッチする。

【0322】
ラッチ部37からの出力は、ロータ回転周波数推定値FRHとなる。

【0323】
図27は、以上の関係を示すタイミングチャートである。

【0324】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、出力周波数指令値FINV* が第1の所定値F1から第2の所定値F2へと漸増あるいは漸減する際に、VVVFインバータ5の出力電圧指令値の大きさと出力周波数指令との比、いわゆるV/F比(記号ではV F)が所定の検知レベルV * を超過した時点での出力周波数指令値FINV*を、ロータ回転周波数推定値FRHとして設定する。

【0325】
本実施の形態では、電流制御器28を備えており、電流指令値に追従するようにVVVFインバータ5の出力電圧指令が制御される。

【0326】
前記第1の実施の形態にて説明したように、出力周波数指令値FINV* を漸増あるいは漸減する際に、滑りSが変化する。特に、滑りが0の近傍では、インピーダンスが増加する。電流制御器28の電流制御作用によって、電流指令値に一致した電流が流れるとすると、インピーダンスに応じた出力電圧が必要となり、出力周波数指令値FINV* に対する出力電圧指令の大きさV* の比率、すなわちV/F比が大きくなる。

【0327】
従って、V/F比(V F)が所定値(V * )以上に増加した時点での出力周波数指令値FINV* をラッチすることで、ロータ回転周波数を推定することが可能となる。そして、この推定されたロータ回転周波数に基づいて再起動動作を行なうため、過電流・過電圧や不要なトルクの発生を防ぐことができる。これにより、VVVFインバータ5の保護停止を抑制したり、あるいは乗り心地の劣化を抑制することが可能となる。

【0328】
(第16の実施の形態:請求項15に対応)図28は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示すブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0329】
すなわち、本実施の形態は、前記第1の実施の形態において、ロータ回転周波数検知部15を限定した構成としている。

【0330】
図28において、ロータ回転周波数推定部15は、出力電力演算器50と、比較器36と、ラッチ部37とからなる。

【0331】
本実施の形態では、誘導電動機6に流れる電流を検出する電流検出器9からの出力である相電流Iu ,Iw と、出力電圧指令演算部11からの出力であるd軸出力電圧指令Vd * 、q軸出力電圧指令Vq * とは、出力電力演算器50へと入力される。

【0332】
出力電力演算器50では、誘導電動機6の出力電力PowerHを、例えば次式に示すように、推定演算し出力する。

【0333】
【数20】
JP0003538057B2_000021t.gif【0334】ただし、M:相互インダクタンス、L2:2次インダクタンス、R2:2次抵抗、Id :d軸電流、Iq :q軸電流である。

【0335】
d軸電流Id とq軸電流Iq は、電流検出器9により検出された相電流Iu ,Iw とを、座標系変換器53により、前記(8)式に従ってdq軸座標系上での電流値に変換したものである。

【0336】
図29は、以上の出力電力演算部50の構成例を示す。

【0337】
出力電力演算器50からの出力である出力電力演算値PowerHは、比較器36へと入力される。

【0338】
本実施の形態では、誘導電動機6のロータ回転周波数FRが正転であり、出力周波数指令値FINV* を漸増することを仮定する。

【0339】
比較器36では、出力電力演算値PowerHが所定値Power* よりも大きい場合には出力を1とし、所定値に満たない場合には出力を0とする。

【0340】
ラッチ部37には、比較器36からの出力と出力周波数指令値FINV* とが入力される。

【0341】
比較器36からの出力が0から1に変化した場合には、その時点での出力周波数指令値FINV* をラッチする。

【0342】
ラッチ部37からの出力は、ロータ回転周波数推定値FRHとなる。

【0343】
図30は、以上の関係を示すタイミングチャートである。

【0344】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、出力周波数指令値FINV* が第1の所定値F1から第2の所定値F2へと漸増する際に、誘導電動機6の出力電力PowerHが所定の検知レベルPower* を超過した時点での周波数指令値FINV* を、ロータ回転周波数推定値FRHとして設定する。

【0345】
本実施の形態では、誘導電動機6のロータ回転FRが正転であり、出力周波数を漸増することを仮定しており、出力周波数指令値FINV* はロータ回転周波数FRに対して、小さい状態から大きな状態へと移行していく。

【0346】
出力周波数指令値FINV* がロータ回転周波数FRよりも小さい場合、すべり周波数Fs が負であることと等価であり、定常的にはマイナスの出力電力、すなわち回生状態となることが知られている。

【0347】
また、出力周波数指令値FINV* がロータ回転周波数FRよりも大きい場合、すべり周波数Fs が正であることと等価であり、定常的にはプラスの出力電力、すなわち力行状態となることが知られている。

【0348】
さらに、すべり周波数が正あるいは負で非常に大きい場合には、出力電力は0に近いことも誘導電動機6の特性より周知である。

【0349】
これは、図30に出力周波数指令値FINV* がロータ回転周波数FRを過る付近において、出力電力演算値PowerHが示されるように、出力電力が負から正へ変化することを示している。

【0350】
従って、出力電力演算値PowerHが所定の検知レベルPower* を超過した時点にて、出力周波数指令値FINV* をラッチすることで、ロータ回転周波数を推定することが可能となる。そして、この推定されたロータ回転周波数に基づいて再起動動作を行なうため、過電流・過電圧や不要なトルクの発生を防ぐことができる。これにより、VVVFインバータ5の保護停止を抑制したり、あるいは乗り心地の劣化を抑制することが可能となる。

【0351】
なお、本実施の形態では、ロータ回転周波数FRが正転であり、出力周波数指令値FINV* を漸増する場合を説明しているが、他の条件においても、同様に考えることができる。

【0352】
例えば、ロータ周波数FRが正転であり、出力周波数指令値FINV* が漸減する場合のタイミングチャートを図31に示す。比較器36では、入力である出力電力演算値PowerHと所定の検知レベルPower* とを比較し、出力電力演算値PowerHが検知レベルPower* よりも大きい場合には、出力を0とし、出力電力演算値PowerHが検知レベルPower* よりも小さい場合には、出力を1とする。また、ロータ回転周波数FRが逆転である場合にも、同様に適用することが可能である。

【0353】
(第17の実施の形態:請求項16に対応)図32は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示すブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0354】
すなわち、本実施の形態は、前記第1の実施の形態において、ロータ回転周波数検知部15を限定した構成としている。

【0355】
本実施の形態では、図1の電流指令演算部10として、q軸電流指令Iq * を零に設定し、d軸電流指令Id * はある所定値に設定するものと仮定する。この場合、電流指令値に一致する成分とは、d軸成分のことを表わし、電流指令値に直交する成分とは、q軸成分のことを表わす。

【0356】
図32において、ロータ回転周波数検知部15は、座標系変換器25と、比較器36と、ラッチ部37とからなる。

【0357】
本実施の形態では、誘導電動機6に流れる電流を検出する電流検出器9からの出力である相電流Iu ,Iw は、座標系変換器25へと入力される。

【0358】
座標系変換器25では、前記(8)式によりdq軸座標系上の電流値Id ,Iq を演算出力する。

【0359】
電流指令値に一致した成分であるd軸電流Id は、比較器36へ入力される。

【0360】
比較器36では、d軸電流Id と所定の検知レベルIdp* とを比較する。この結果、d軸電流Id が所定の検知レベルIdp* よりも小さい場合には出力を1とし、d軸電流Id が所定の検知レベルIdp* よりも大きい場合には出力を0とする。

【0361】
ラッチ部37には、比較器36からの出力と出力周波数指令値FINV* とが入力される。

【0362】
比較器36からの出力が0から1に変化した場合、その時点での出力周波数指令値FINV* をラッチする。

【0363】
ラッチ部37からの出力は、ロータ回転周波数推定値FRHとなる。

【0364】
図33は、以上の関係を示すタイミングチャートである。

【0365】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、出力周波数指令値FINV* が第1の所定値F1から第2の所定値F2へと漸増する際に、誘導電動機6の電流の成分の中で、電流指令値Id * に一致する成分Id が所定の検知レベルIdp* よりも増加した時点での出力周波数指令値FINV* を、ロータ回転周波数推定値FRHとして設定する。

【0366】
前記第1の実施の形態にて説明したように、出力周波数指令値FINV* が実際のロータ周波数FRと大きく離れている状態、すなわちすべり周波数が正あるいは負で非常に大きい場合には、図4に示す等価回路において、2次抵抗回路の等価インピーダンスが0に近くなるため、VVVFインバータ5の出力電圧が1次インピーダンスでの電圧降下分のみを補償する場合、電流指令値に一致した成分の電流が流れる。

【0367】
出力周波数指令値FINV* が実際のロータ周波数FRの近傍にあり、すべり周波数が正あるいは負で零に近い場合には、2次抵抗等価インピーダンスは非常に大きくなり、電流は励磁回路に流れ込む。このため、2次抵抗回路の電流、すなわち電流指令値に一致した電流成分は、減少する。

【0368】
従って、電流指令値に一致した電流成分Id が所定の検知レベルIdp* よりも低下した時点にて、出力周波数指令値FINV* をラッチすることで、ロータ回転周波数を推定することが可能となる。そして、この推定されたロータ回転周波数に基づいて再起動動作を行なうため、過電流・過電圧や不要なトルクの発生を防ぐことができる。これにより、VVVFインバータ5の保護停止を抑制したり、あるいは乗り心地の劣化を抑制することが可能となる。

【0369】
なお、本実施の形態では、誘導電動機6のロータ回転FRが正転であり、出力周波数指令値FINV* を漸増することを仮定しているが、ロータ回転が逆転である場合や、出力周波数指令値FINV* を漸減していく場合にも、同様に適用することが可能である。

【0370】
(第18の実施の形態:請求項17に対応)図34は、本実施の形態による速度センサレス制御を用いた電気車制御装置の概略構成例を示すブロック図であり、図1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。

【0371】
すなわち、本実施の形態は、前記第1の実施の形態において、ロータ回転周波数検知部15を限定した構成としている。

【0372】
本実施の形態では、図1の電流指令演算部10として、q軸電流指令Iq * を零に設定し、d軸電流指令Id * はある所定値に設定するものと仮定する。この場合、電流指令値に一致する成分とは、d軸成分のことを表わし、電流指令値に直交する成分とは、q軸成分のことを表わす。

【0373】
図34において、ロータ回転周波数検知部15は、座標系変換器25と、比較器36と、ラッチ部37とからなる。

【0374】
本実施の形態では、誘導電動機6に流れる電流を検出する電流検出器9からの出力である相電流Iu ,Iw は、座標系変換器25へと入力される。

【0375】
座標系変換器25では、前記(8)式によりdq軸座標系上の電流値Id ,Iq を演算出力する。

【0376】
電流指令値に直交する成分であるq軸電流Iq は、比較器36へ入力される。

【0377】
比較器36では、q軸電流Iq と所定の検知レベルIqp* とを比較する。この結果、q軸電流Iq が所定の検知レベルIqp* よりも大きい場合には出力を1とし、q軸電流Iq が所定の検知レベルIqp* よりも小さい場合には出力を0とする。

【0378】
ラッチ部37には、比較器36からの出力と出力周波数指令値FINV* とが入力される。

【0379】
比較器36からの出力が0から1に変化した場合、その時点での出力周波数指令値FINV* をラッチする。

【0380】
ラッチ部37からの出力は、ロータ回転周波数推定値FRHとなる。

【0381】
図35は、以上の関係を示すタイミングチャートである。

【0382】
次に、以上のように構成した本実施の形態の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置においては、出力周波数指令値FINV* が第1の所定値F1から第2の所定値F2へと漸増する際に、誘導電動機6の電流の成分の中で、電流指令値Id * に直交した成分Iq が所定の検知レベルIqp* よりも増加した時点での出力周波数値FINV* を、ロータ回転周波数推定値FRHとして設定する。

【0383】
前記第1の実施の形態にて説明したように、出力周波数指令値FINV* が実際のロータ周波数FRと大きく離れている状態、すなわちすべり周波数が正あるいは負で非常に大きい場合には、図4の等価回路において、2次抵抗回路の等価インピーダンスが0に近くなるため、VVVFインバータ5の出力電圧が1次インピーダンスでの電圧降下分のを補償する場合、電流指令値に一致した成分の電流が流れる。

【0384】
出力周波数指令値FINV* が実際のロータ周波数FRの近傍にあり、すべり周波数が正あるいは負で零に近い場合には、2次抵抗等価インピーダンスは非常に大きくなり、電流は励磁回路に流れ込む。このため、励磁電流、すなわち電流指令値に直交した電流成分が発生する。

【0385】
従って、ロータ回転周波数が正転である定常状態では、電流指令値に直交する電流成分Iq は、出力周波数指令値FINV* が実際のロータ回転周波数FRより小さい場合には、負であり、出力周波数指令値FINV* が実際のロータ周波数FRよりも大きい場合には、正となり発生する。

【0386】
従って、電流指令値に直交する電流成分Iq が所定の検知レベルIqp* よりも増加した時点にて、出力周波数指令値FINV* をラッチすることで、ロータ回転周波数を推定することが可能である。そして、この推定されたロータ回転周波数に基づいて再起動動作を行うため、過電流・過電圧や不要なトルクの発生を防ぐことができる。これにより、VVVFインバータ5の保護停止を抑制したり、あるいは乗り心地の劣化を抑制することが可能となる。

【0387】
なお、本実施の形態では、誘導電動機6のロータが正転であり、出力周波数指令値を漸増することを仮定しており、電流指令値に直交する電流成分が、所定値Iqp* を増加した時点での出力周波数指令をロータ回転周波数として推定しているが、所定値Iqp* よりも減少した時点での電流指令値に直交する電流成分が、所定値Iqp* よりも減少した時点での出力周波数指令値をロータ回転周波数として推定することも可能である。また、誘導電動機6のロータが逆転の場合にも、同様に適用することが可能である。

【0388】
(第19の実施の形態:請求項1、請求項2、請求項8に対応)図36は、本実施の形態のミニモデルによる試験結果の一例を示す図である。なお、同試験では、誘導電動機6が正転であることを条件としている。

【0389】
出力周波数指令値FINV* を、第1の所定値F1=0Hzから第2の所定値F2=100Hzまで漸増するように設定している。

【0390】
図36におけるモードには、(a)(b)(c)が存在する。

【0391】
モード(a)は、出力周波数指令値FINV* をある期間第1の所定値F1=0Hzに保つ期間であり、前記第8の実施の形態に対応する。この間に、dq軸電流の大きさである電流Iabsが立ち上がると共に、安定化されている様子を確認することができる。

【0392】
モード(b)は、出力周波数指令値FINV* を第1の所定値F1=0Hzから漸増する期間である。図36には、実際のロータ回転周波数FRが示されていないが、チャートの終点に向かってインバータ出力周波数指令値FINV* が収束している周波数がロータ回転周波数FRであり、32Hz近傍である。

【0393】
このモード(b)において、出力周波数指令値FINV* が32Hzに近づくにつれて、dq軸電流の大きさIabsが低下している様子を確認することができる。ロータ回転周波数の推定検知は、dq軸電流の大きさIabsが所定値Iabs* よりも低下した時点での出力周波数指令値FINV* を、ロータ周波数推定値FRHと見做しており、前記第2の実施の形態に対応する。

【0394】
電流指令値の大きさは20Aに設定しており、検知レベルIabs* を13Aに設定している。

【0395】
図36では、ロータ周波数推定値FRHとして37Hz近傍を検知したことを確認することができる。

【0396】
本実施の形態では、電流の大きさが検知レベルIabs* 13Aを下回り、ロータ回転周波数を推定した時点で、次のモード(c)へと移行している。

【0397】
モード(c)は、推定されたロータ周波数推定値に基づいて励磁を行なうモードである。励磁を行なうことによって、電圧が必要となるが、モード(c)にて、出力電圧指令V* が増加していることを確認することができる。

【0398】
なお、このモード(c)に関しては、本発明の範囲ではない。

【0399】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の速度センサレス制御を用いた電気車制御装置によれば、誘導電動機のロータの回転周波数を安定かつ迅速に推定し、ロータ回転周波数が不明である惰行状態の誘導電動機を安定かつ確実に再起動することが可能となる。

【0400】
これにより、惰行状態の誘導電動機の再起動の際に、過電流・過電圧や不要なトルクの発生を防ぐことができ、VVVFインバータの保護停止を抑制したり、あるいは乗り心地の劣化を抑制することができる。
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図1】
2
【図2】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図10】
8
【図11】
9
【図9】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図24】
21
【図26】
22
【図22】
23
【図23】
24
【図25】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28
【図30】
29
【図31】
30
【図32】
31
【図33】
32
【図34】
33
【図35】
34
【図37】
35
【図36】
36
【図38】
37