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明細書 :高架橋の下部構造及びその設計方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3462803号 (P3462803)
公開番号 特開2001-020228 (P2001-020228A)
登録日 平成15年8月15日(2003.8.15)
発行日 平成15年11月5日(2003.11.5)
公開日 平成13年1月23日(2001.1.23)
発明の名称または考案の名称 高架橋の下部構造及びその設計方法
国際特許分類 E01D 21/00      
FI E01D 21/00 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願平11-197162 (P1999-197162)
出願日 平成11年7月12日(1999.7.12)
審査請求日 平成11年11月26日(1999.11.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】大内 一
【氏名】岡野 素之
【氏名】涌井 一
【氏名】松本 信之
【氏名】曽我部 正道
【氏名】在田 浩之
個別代理人の代理人 【識別番号】100099704、【弁理士】、【氏名又は名称】久寶 聡博
審査官 【審査官】柳澤 智也
参考文献・文献 特開 平11-264112(JP,A)
特開 平11-264113(JP,A)
特開 平11-323826(JP,A)
調査した分野 E01D 21/00
E01D 19/02
E01D 2/00
特許請求の範囲 【請求項1】
RCラーメン架構とその構面内に配設されたダンパーブレースとからなる高架橋の下部構造を設計する方法であって、想定地震動における前記下部構造の目標塑性率μd及び目標固有周期Tdを設定し、該目標塑性率μd及び目標固有周期Tdに対応する降伏震度を前記想定地震動に対応する降伏震度スペクトルから求めて設計震度Khとするとともに前記目標固有周期Tdに対応する目標降伏剛性Kdを求め、前記設計震度Khを用いて設計水平耐力Hdを求めるとともにそのときの変位を設計降伏変位δdとして前記目標降伏剛性Kdから求め、前記設計水平耐力Hdを前記RCラーメン架構が負担する水平力Hfと前記ダンパーブレースが負担する水平力Hbとに振り分け、前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースが終局耐力で前記水平力Hf,Hbに抵抗するようにかつそのときの変位が前記設計降伏変位δdと前記目標塑性率μdとの積となるように前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースの部材断面をそれぞれ設定することを特徴とする高架橋下部構造の設計方法。

【請求項2】
設定された前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースの部材断面を用いて前記下部構造の構造解析モデルを作成し、該構造解析モデルに対して静的非線形解析を行い、該静的非線形解析で得られた荷重—変位関係から保有降伏剛性Ky、保有降伏変位δy、保有降伏耐力Hy及び保有最大変位δuを求め、前記保有降伏剛性Kyから求められる保有固有周期Tを用いて前記保有降伏耐力Hyに対応する必要靭性率μを降伏震度スペクトルから求め、該必要靭性率μに前記保有降伏変位δyを乗じて応答最大変位δmaxを求め、該応答最大変位δmaxと前記保有最大変位δuとを比較するとともに前記応答最大変位δmaxに対応する部材応答最大変位δ´maxを前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースの構成部材ごとに算出してそれらの保有最大変位δ´uと比較することによって前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースの設定断面を照査する請求項1記載の高架橋下部構造の設計方法。

【請求項3】
RCラーメン架構とその構面内に配設されたダンパーブレースとからなる高架橋の下部構造であって、想定地震動における前記下部構造の目標塑性率μd及び目標固有周期Tdを設定し、該目標塑性率μd及び目標固有周期Tdに対応する降伏震度を前記想定地震動に対応する降伏震度スペクトルから求めて設計震度Khとするとともに前記目標固有周期Tdに対応する目標降伏剛性Kdを求め、前記設計震度Khを用いて設計水平耐力Hdを求めるとともにそのときの変位を設計降伏変位δdとして前記目標降伏剛性Kdから求め、前記設計水平耐力Hdを前記RCラーメン架構が負担する水平力Hfと前記ダンパーブレースが負担する水平力Hbとに振り分け、前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースが終局耐力で前記水平力Hf,Hbに抵抗するようにかつそのときの変位が前記設計降伏変位δdと前記目標塑性率μdとの積となるように前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースの部材断面をそれぞれ設定されてなることを特徴とする高架橋の下部構造。

【請求項4】
設定された前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースの部材断面を用いて前記下部構造の構造解析モデルを作成し、該構造解析モデルに対して静的非線形解析を行い、該静的非線形解析で得られた荷重—変位関係から保有降伏剛性Ky、保有降伏変位δy、保有降伏耐力Hy及び保有最大変位δuを求め、前記保有降伏剛性Kyから求められる保有固有周期Tを用いて前記保有降伏耐力Hyに対応する必要靭性率μを降伏震度スペクトルから求め、該必要靭性率μに前記保有降伏変位δyを乗じて応答最大変位δmaxを求め、該応答最大変位δmaxと前記保有最大変位δuとを比較するとともに前記応答最大変位δmaxに対応する部材応答最大変位δ´maxを前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースの構成部材ごとに算出してそれらの保有最大変位δ´uと比較することによって前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースの設定断面を照査してなる請求項3記載の高架橋の下部構造。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高架橋、特に鉄道用高架橋の下部構造及びその設計方法に関する。

【0002】
【従来の技術】鉄道、自動車等の輸送車両が走行する橋梁としては、河川、海峡等を横断する狭義の橋梁のほかに市街地において連続的に建設される、いわゆる高架橋がある。かかる高架橋は、効率的な土地利用の観点から、道路上、鉄道上あるいは河川上の空間に連続して建設されるものであり、高架橋下の道路あるいは鉄道が立体交差することとなるため、交通渋滞の解消にも貢献する。

【0003】
ところで、このような高架橋の下部構造は、通常、鉄筋コンクリートのラーメン構造として構築されることが多いが、その設計施工の際には、地震時における高架橋自体の健全性はもちろんのこと、走行する輸送車両の安全性についても十分検討されなければならない。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】かかる状況下、本出願人らは、鉄筋コンクリートのラーメン架構内にダンパーブレースを配設した高架橋の下部構造を提案しており、かかる構成によれば、耐震性及び走行安全性の双方の向上を図ることができることがわかってきた。

【0005】
しかしながら、その耐震設計方法については何ら確立されておらず、耐震性及び走行安全性をより効率的かつ経済的に確保できる設計手法の開発が待たれていた。

【0006】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、耐震性及び走行安全性をより効率的かつ経済的に確保可能な高架橋の下部構造及びその設計方法を提供することを目的とする。

【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明に係る高架橋下部構造の設計方法は請求項1に記載したように、RCラーメン架構とその構面内に配設されたダンパーブレースとからなる高架橋の下部構造を設計する方法であって、想定地震動における前記下部構造の目標塑性率μd及び目標固有周期Tdを設定し、該目標塑性率μd及び目標固有周期Tdに対応する降伏震度を前記想定地震動に対応する降伏震度スペクトルから求めて設計震度Khとするとともに前記目標固有周期Tdに対応する目標降伏剛性Kdを求め、前記設計震度Khを用いて設計水平耐力Hdを求めるとともにそのときの変位を設計降伏変位δdとして前記目標降伏剛性Kdから求め、前記設計水平耐力Hdを前記RCラーメン架構が負担する水平力Hfと前記ダンパーブレースが負担する水平力Hbとに振り分け、前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースが終局耐力で前記水平力Hf,Hbに抵抗するようにかつそのときの変位が前記設計降伏変位δdと前記目標塑性率μdとの積となるように前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースの部材断面をそれぞれ設定するものである。

【0008】
また、本発明に係る高架橋下部構造の設計方法は、設定された前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースの部材断面を用いて前記下部構造の構造解析モデルを作成し、該構造解析モデルに対して静的非線形解析を行い、該静的非線形解析で得られた荷重—変位関係から保有降伏剛性Ky、保有降伏変位δy、保有降伏耐力Hy及び保有最大変位δuを求め、前記保有降伏剛性Kyから求められる保有固有周期Tを用いて前記保有降伏耐力Hyに対応する必要靭性率μを降伏震度スペクトルから求め、該必要靭性率μに前記保有降伏変位δyを乗じて応答最大変位δmaxを求め、該応答最大変位δmaxと前記保有最大変位δuとを比較するとともに前記応答最大変位δmaxに対応する部材応答最大変位δ´maxを前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースの構成部材ごとに算出してそれらの保有最大変位δ´uと比較することによって前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースの設定断面を照査するものである。

【0009】
また、本発明に係る高架橋の下部構造は請求項3に記載したように、RCラーメン架構とその構面内に配設されたダンパーブレースとからなる高架橋の下部構造であって、想定地震動における前記下部構造の目標塑性率μd及び目標固有周期Tdを設定し、該目標塑性率μd及び目標固有周期Tdに対応する降伏震度を前記想定地震動に対応する降伏震度スペクトルから求めて設計震度Khとするとともに前記目標固有周期Tdに対応する目標降伏剛性Kdを求め、前記設計震度Khを用いて設計水平耐力Hdを求めるとともにそのときの変位を設計降伏変位δdとして前記目標降伏剛性Kdから求め、前記設計水平耐力Hdを前記RCラーメン架構が負担する水平力Hfと前記ダンパーブレースが負担する水平力Hbとに振り分け、前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースが終局耐力で前記水平力Hf,Hbに抵抗するようにかつそのときの変位が前記設計降伏変位δdと前記目標塑性率μdとの積となるように前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースの部材断面をそれぞれ設定されてなるものである。

【0010】
また、本発明に係る高架橋の下部構造は、設定された前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースの部材断面を用いて前記下部構造の構造解析モデルを作成し、該構造解析モデルに対して静的非線形解析を行い、該静的非線形解析で得られた荷重—変位関係から保有降伏剛性Ky、保有降伏変位δy、保有降伏耐力Hy及び保有最大変位δuを求め、前記保有降伏剛性Kyから求められる保有固有周期Tを用いて前記保有降伏耐力Hyに対応する必要靭性率μを降伏震度スペクトルから求め、該必要靭性率μに前記保有降伏変位δyを乗じて応答最大変位δmaxを求め、該応答最大変位δmaxと前記保有最大変位δuとを比較するとともに前記応答最大変位δmaxに対応する部材応答最大変位δ´maxを前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースの構成部材ごとに算出してそれらの保有最大変位δ´uと比較することによって前記RCラーメン架構及び前記ダンパーブレースの設定断面を照査してなるものである。

【0011】
本発明に係る高架橋の下部構造及びその設計方法においては、まず、設計対象となる高架橋下部構造の目標塑性率μd及び目標固有周期Tdを想定地震動との関連で設定する。

【0012】
すなわち、想定される地震動を受けた場合における高架橋下部構造の塑性率及び振動周期の目標値をそれぞれ目標塑性率μd、目標固有周期Tdとして設定する。ここで、目標塑性率μdは、例えばダンパーブレースの特性から3程度に設定し、目標固有周期Tdは、例えば輸送車両の走行安全性の観点から0.5秒程度に設定することが考えられる。なお、想定地震動とは、表層地盤の影響が既に考慮されているものとする。

【0013】
次に、目標塑性率μd及び目標固有周期Tdに対応する降伏震度を想定地震動に対応する降伏震度スペクトルから求めて設計震度Khとする。すなわち、降伏震度スペクトルは、任意の降伏耐力を有する振動系に想定地震動が入力したときの最大作用水平力を、塑性率をパラメータとして演算し、その演算結果を重量で除して無次元化することで降伏震度としてプロットしてあるので、目標塑性率μd及び目標固有周期Tdをそれぞれ降伏震度スペクトルのパラメータである塑性率と横軸の固有周期とに対応させることにより、縦軸の値を降伏震度として読み取ることができる。

【0014】
一方、目標固有周期Tdに対応する目標降伏剛性Kdを求めておく。目標降伏剛性Kdは、対象となる高架橋下部構造の有効重量Wを用いて算出すればよい。

【0015】
次に、設計震度Khを用いて設計水平耐力Hdを求めるとともにそのときの変位を設計降伏変位δdとして目標降伏剛性Kdから求める。設計水平耐力Hdは、設計震度Khに高架橋下部構造の有効重量Wを乗じることで得られる。また、設計降伏変位δdは、設計水平耐力Hdを目標降伏剛性Kdで除することで得られる。

【0016】
次に、設計水平耐力HdをRCラーメン架構が負担する水平力Hfとダンパーブレースが負担する水平力Hbとに振り分ける。

【0017】
次に、RCラーメン架構及びダンパーブレースが終局耐力で水平力Hf,Hbに抵抗するようにかつそのときの変位が設計降伏変位δdと目標塑性率μdとの積となるようにRCラーメン架構及びダンパーブレースの部材断面をそれぞれ設定する。

【0018】
高架橋の下部構造としては、RCラーメン架構とその構面内に配設されたダンパーブレースとからなるものを対象とするが、ここでいうダンパーブレースとは、RCラーメン架構の構面内に配置されたブレースと該ブレースとRCラーメン架構との間、ブレース内若しくはブレース同士の間に介在された履歴減衰型ダンパーとからなる構造を意味するものとし、Y型、X型、K型といったブレースの形状やせん断型、曲げ型といった履歴減衰型ダンパーの種類については任意である。また、RCラーメン架構についてもその構成は任意であり、例えば基礎梁の有無も問わない。

【0019】
また、本発明では、主として鉄道用高架橋を対象とするが、その用途は任意であり、道路用の高架橋も含む。

【0020】
ここで、上述したようにRCラーメン架構及びダンパーブレースの部材断面を設定するまでのステップを実施することによって、高架橋下部構造の断面設計が一応完了するが、ここで以下の手順を引き続き行うことによって、設定された部材断面の照査を行うようにしてもよい。

【0021】
すなわち、まず、設定されたRCラーメン架構及びダンパーブレースの部材断面を用いて下部構造の構造解析モデルを作成するとともに、該構造解析モデルに対して静的非線形解析を行う。

【0022】
次に、静的非線形解析で得られた荷重—変位関係から保有降伏剛性Ky、保有降伏変位δy、保有降伏耐力Hy及び保有最大変位δuを求める。

【0023】
次に、保有降伏剛性Kyから求められる保有固有周期Tを用いて保有降伏耐力Hyに対応する必要靭性率μを降伏震度スペクトルから求める。

【0024】
次に、必要靭性率μに保有降伏変位δyを乗じて応答最大変位δmaxを求め、該応答最大変位δmaxと保有最大変位δuとを比較するとともに、応答最大変位δmaxに対応する部材応答最大変位δ´maxをRCラーメン架構及びダンパーブレースの構成部材ごとに算出してそれらの保有最大変位δ´uと比較することによって、RCラーメン架構及びダンパーブレースの設定断面を照査する。

【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る高架橋の下部構造及びその設計方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。

【0026】
図1及び図2は、本実施形態に係る高架橋下部構造の設計方法の流れを示したフローチャート、図3は、かかる設計方法で設計構築される本実施形態に係る高架橋の下部構造1を橋軸方向から見た正面図である。

【0027】
図3でわかるように、本実施形態に係る高架橋の下部構造1は、RCラーメン架構2とその構面内に配設されたダンパーブレース3とからなり、該ダンパーブレースは、RCラーメン架構2の構面内に逆V字状の鉄骨ブレース4を配置するとともに該鉄骨ブレースの頂部近傍を履歴減衰型ダンパー5を介してRCラーメン架構2の梁中央下面に連結して構成してある。また、下部構造1の上には橋桁等からなる上部構造7を架け渡してあり、かかる下部構造1及び上部構造7で鉄道用高架橋8が構成される。

【0028】
なお、ダンパーブレース3を配置することによって所要の水平剛性を確保できるのであれば、RCラーメン架構2の脚部に形成されたフーチング9,9をつなぐ基礎梁10を省略してもよい。かかる基礎梁の省略により、下部構造1の施工コストを大幅に低減することが可能となる。

【0029】
本実施形態に係る高架橋の下部構造1を設計するにあたっては、図1及び図2のフローチャートでわかるように、まず、設計対象となる下部構造1の目標塑性率μd及び目標固有周期Tdを想定地震動との関連で設定する(ステップ101)。

【0030】
すなわち、想定される地震動を受けた場合における下部構造1の塑性率及び振動周期の目標値をそれぞれ目標塑性率μd、目標固有周期Tdとして設定する。

【0031】
ここで、想定地震動は、例えば下部構造1の供用期間内に一度発生する程度の巨大地震を想定することが考えられる。また、目標塑性率μdは、例えばダンパーブレース3の特性からμ=3.0程度に設定し、目標固有周期Tdは、例えば鉄道の走行安全性の観点からTd=0.5秒程度に設定することが考えられる。なお、上述したように、ここで言う想定地震動には、表層地盤の影響が含まれているものとする。

【0032】
次に、目標塑性率μd及び目標固有周期Tdに対応する降伏震度を想定地震動に対応する降伏震度スペクトルから求めて設計震度Khとする(ステップ102)。図4に降伏震度スペクトルを示す。

【0033】
降伏震度スペクトルは、任意の降伏耐力を有する振動系に想定地震動が入力したときの最大作用水平力を、塑性率μ=1,2,3・・・をパラメータとして演算し、その演算結果を重量で除して無次元化することで降伏震度としてプロットしてあるので、目標塑性率μd及び目標固有周期Tdをそれぞれ降伏震度スペクトルのパラメータである塑性率と横軸の固有周期とに対応させることにより、縦軸の値を降伏震度として読み取ることができる。すなわち、図4で言うと、目標塑性率μdが3、目標固有周期Tdが0.5秒に対応するのは同図丸印の箇所であって、その降伏震度はおよそ0.44であるので、設計震度Khは0.44となる。

【0034】
一方、目標固有周期Tdに対応する目標降伏剛性Kdを求めておく(ステップ103)。目標降伏剛性Kdは、対象となる下部構造1の有効重量Wを用いて、Kd=(2π/T)2W/g(g;重力加速度)から算出することができる。

【0035】
次に、設計震度Khを用いて設計水平耐力Hdを求めるとともにそのときの変位を設計降伏変位δdとして目標降伏剛性Kdから求める(ステップ104)。設計水平耐力Hdは、設計震度Khに下部構造1の有効重量Wを乗じる、すなわち、Hd=W・Khとして求めることができる。また、設計降伏変位δdは、設計水平耐力Hdを目標降伏剛性Kdで除する、すなわちδd=Hd/Kdとして求めることができる。

【0036】
次に、設計水平耐力HdをRCラーメン架構2が負担する水平力Hfとダンパーブレース3が負担する水平力Hbとに振り分ける(ステップ105)。ここで、振分けは、任意の比率で行えばよい。

【0037】
次に、RCラーメン架構2及びダンパーブレース3が終局耐力でそれぞれ水平力Hf,Hbに抵抗するようにかつそのときの変位が設計降伏変位δdと目標塑性率μdとの積、すなわちδdμdとなるようにRCラーメン架構2及びダンパーブレース3の部材断面をそれぞれ設定する(ステップ106)。図5にHd、Hf、Hb、δd、μd、δdμdの相互関係を示す。

【0038】
部材断面の設定に関し、RCラーメン架構2について具体的に説明すると、まず、水平力HfがRCラーメン架構2に作用した場合に設計降伏変位δdが生じるよう、その柱断面寸法を定める。次に、変形性能がδdμdを上回るようにせん断補強筋の鉄筋量を定める。また、RCラーメン架構2の柱の鉄筋量(主筋の鉄筋量)を定めるにあたっては、柱の曲げ降伏耐力ではなく、曲げ終局耐力で評価する。

【0039】
一方、ダンパーブレース3についても、該ダンパーブレースが終局耐力で水平力Hbに抵抗するようにかつそのときの変位が設計降伏変位δdと目標塑性率μdとの積、すなわちδdμdとなるように部材断面を設定すればよい。なお、ダンパーブレース3を構成する履歴減衰型ダンパー5は、例えば低降伏点鋼で形成されたせん断型ダンパーとして構成することができる。

【0040】
次に、設定されたRCラーメン架構2及びダンパーブレース3の部材断面を用いて下部構造1の構造解析モデルを作成するとともに、該構造解析モデルに対して静的非線形解析を行う(ステップ107)。

【0041】
次に、静的非線形解析で得られた図6の荷重—変位関係を同図に示すようにバイリニア特性に置き換え、該バイリニア特性から保有降伏剛性Ky、保有降伏変位δy、保有降伏耐力Hy及び保有最大変位δuを求める(ステップ108)。

【0042】
次に、保有降伏剛性Kyから求められる保有固有周期Tを用いて保有降伏耐力Hyに対応する必要靭性率μを降伏震度スペクトルから求める(ステップ109)。必要靭性率μの算出は、保有固有周期T及び保有降伏耐力Hyを満たすスペクトル曲線を選び出し、そのスペクトル曲線の塑性率を必要靭性率μとすればよい(図4参照)。

【0043】
次に、必要靭性率μに保有降伏変位δyを乗じて応答最大変位δmaxを求め、該応答最大変位δmaxと保有最大変位δuとを比較するとともに、応答最大変位δmaxに対応する部材応答最大変位δ´maxをRCラーメン架構及びダンパーブレースの構成部材ごとに算出してそれらの保有最大変位δ´uと比較することによって、RCラーメン架構及びダンパーブレースの設定断面を照査する(ステップ110)。そして、δmax<δu、δ´max<δ´uなる条件を満たしていれば設計を終了し、満たしていなければステップ106に戻って断面算定を再度行い、以下、上述の条件が満たされるまで、ステップ106~ステップ110を繰り返し行う。

【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る高架橋の下部構造1及びその設計方法によれば、設計水平耐力Hdを水平力Hf、HbとしてRCラーメン架構2とダンパーブレース3にそれぞれ振り分けるようにしたので、RCラーメン架構2とダンパーブレース3の部材断面を設定するにあたっては、振り分けられた水平力Hf、Hbについてそれぞれ個別に行えば足りることとなり、断面設計をきわめて簡易に行うことが可能となる。

【0045】
これは、下部構造1全体に作用する水平力に対する抵抗がRCラーメン架構2とダンパーブレース3の終局耐力の重ね合わせとして表すことができるとの前提に立脚したものであるが、従来の土木構造物に対する耐震設計においては、このような重ね合わせの原理がRCと鋼との混合構造物の弾塑性設計でそのまま適用できるとは認識されておらず、そもそもこのような混合構造物が土木分野では存在しなかったため、該混合構造物に対する弾塑性設計の方法自体、確立されていなかったのが現状である。

【0046】
しかしながら、本実施形態においては、重ね合わせが成立するものとして全体の水平力をRCラーメン架構2とダンパーブレース3に振り分け、それぞれ個別に断面設定を行えば、その設定された断面は、結果としてきわめて合理的な内容となることが出願人らの多くの実験やシミュレーション解析で確認された。

【0047】
また、本実施形態に係る高架橋の下部構造1及びその設計方法によれば、部材断面算定を降伏耐力ベースではなく終局耐力ベースで行うようにしたので、部材断面の算定を何度もやり直すことなく、経済的な断面設計が可能となる。

【0048】
すなわち、降伏震度スペクトルを使用することとの整合性を考えて降伏耐力ベースで断面設計を行うと、きわめて安全側に過ぎる結果を招き、経済性のある結果を得るには、断面設定のやり直しを何度も余儀なくされる。

【0049】
しかしながら、上述したように重ね合わせが成立するものとして全体の水平力をRCラーメン架構2とダンパーブレース3に振り分けた上、終局耐力でそれぞれ断面設定を行えば、その設定された断面は、結果としてきわめて合理的な内容となることがやはり出願人らの多くの実験やシミュレーション解析で確認された。また、ほとんどの場合、部材断面の再設定は不要であって、ステップ101~106に従って部材断面を算定すれば、ステップ110での部材断面の照査を一回でクリアできることもわかった。

【0050】
したがって、本実施形態によれば、RCラーメン架構2やダンパーブレース3の部材断面を、それらの靭性が十分に活かされる形でしかも何度もやり直すことなく簡易に求めることが可能となり、かくして高架橋下部構造の設計コスト及び構築コストを大幅に低減することが可能となる。

【0051】
本実施形態では、設定された部材断面に対してステップ107~ステップ110に従った照査を行うようにしたが、上述したように、ステップ101~106に従って部材断面を算定すれば、ステップ110での部材断面の照査を一回でクリアできることが多い。そのため、場合によってはこのような照査フローを省略してもよい。かかる構成においても、部材断面の設定に関しては、上述したと同様の作用効果を得ることができる。

【0052】
また、本実施形態では、橋軸に直交するRCラーメン架構の構面内についての例で説明したが、橋軸に沿ったRCラーメン架構とその構面内に配置されるダンパーブレースについても本発明が適用できることは言うまでもない。

【0053】
また、本実施形態では、下部構造1及び上部構造2で構成された鉄道用高架橋8を例に挙げたが、本発明に係る高架橋の下部構造をどのような上部構造と組み合わせるかは任意であって、図3に示すような上部構造2に限定されるものではないし、図7に示すように、梁32を上部構造のスラブと兼用する形式(ビームスラブ方式)の下部構造31でもよい。

【0054】
【発明の効果】以上述べたように、本発明に係る高架橋の下部構造及びその設計方法によれば、RCラーメン架構やダンパーブレースの部材断面を、それらの靭性が十分に活かされる形でしかも何度もやり直すことなく簡易に求めることが可能となり、かくして高架橋下部構造の設計コスト及び構築コストを大幅に低減することが可能となる。

【0055】
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図2】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6