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明細書 :接触力測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3352009号 (P3352009)
公開番号 特開平11-194059 (P1999-194059A)
登録日 平成14年9月20日(2002.9.20)
発行日 平成14年12月3日(2002.12.3)
公開日 平成11年7月21日(1999.7.21)
発明の名称または考案の名称 接触力測定装置
国際特許分類 G01L  5/00      
B60M  1/28      
G01H 17/00      
FI G01L 5/00 Z
B60M 1/28
G01H 17/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願平09-368764 (P1997-368764)
出願日 平成9年12月28日(1997.12.28)
審査請求日 平成12年4月26日(2000.4.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
発明者または考案者 【氏名】真鍋 克士
【氏名】網干 光雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
審査官 【審査官】白石 光男
調査した分野 G01L 5/00
B60M 1/28
G01H 17/00
特許請求の範囲 【請求項1】
給電線と集電装置との間に作用する接触力を測定する装置であって、
上記集電装置の振動y(t)と上記接触力f(t)との間の周波数応答関数1/H(iω)(ωは振動角周波数、iは虚数単位)を等価モデルによる計算又は加振試験による実測結果から求める周波数応答関数算出手段と、
上記周波数応答関数1/H(iω)から、次式によりインパルス応答関数h(t)を計算するインパルス応答関数算出手段と、
【数1】
JP0003352009B2_000002t.gif上記集電装置の振動y(t)を測定する振動測定手段と、
この振動y(t)と上記インパルス応答関数h(t)とから次式
【数2】
JP0003352009B2_000003t.gifの重畳積分により上記接触力f(t)を求める接触力算出手段と、
を備えることを特徴とする接触力測定装置。

【請求項2】
上記集電装置がパンタグラフからなり、上記振動y(t)として、このパンタグラフの変位を測定することを特徴とする請求項1記載の接触力測定装置。

【請求項3】
上記集電装置がパンタグラフからなり、上記振動y(t)として、このパンタグラフの加速度を測定することを特徴とする請求項1記載の接触力測定装置。

【請求項4】
上記集電装置がパンタグラフからなり、上記振動y(t)として、このパンタグラフの歪を測定することを特徴とする請求項1記載の接触力測定装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば電気鉄道におけるトロリ線等の給電線とパンタグラフ等の集電装置との間に作用する接触力を測定する装置に関する。特には、精度良く接触力が測れるとともに、通常の営業車両においてもパンタグラフ接触力を測定することのできる接触力測定装置に関する。

【0002】
【従来の技術】現状の営業用の電気鉄道においては、トロリ線からパンタグラフを介して電力を車体に送る方式を採るものが一般的である。このようなトロリ線とパンタグラフの舟体との接触力は、トロリ線の高さ変動や振動、車両やパンタグラフの振動によって変動する。この接触力の変動が大きすぎると、パンタグラフの舟体がトロリ線から離れることとなる(これを離線という)。この離線が頻発すると、両者の間にスパークが生じて摺り板の損傷が促進され、問題となる。

【0003】
そこで、電車の走行中のトロリ線とパンタグラフとの接触力を測定して、その測定結果を、離線を抑制する方策を立案するための参考としている。あるいは、将来的には、接触力をアクティブにリアルタイムでコントロールすることも考えられている。

【0004】
このようなパンタグラフ接触力測定技術としては、以下が公知である。
(1)特開平7-291001号公報には、舟体支持バネの伸縮量を測定し、この量から同バネの押圧力を計算して接触力を求める方法が開示されている。舟体支持バネの伸縮量を測定するには、舟体と舟体支持パイプの間の寸法を渦電流式や光学式の距離センサを用いて測定する。

【0005】
(2)日本機械学会第74期通常総会講演会講演論文集No.97-1 、(I) 、 2149、 p.699、700 には、舟体と摺り板との間にロードセルを設けるとともに、摺り板に加速度計を取り付けたパンタグラフ接触力測定装置が開示されている。この装置では、ロードセルで測定した力を、摺り板の等価質量に加速度をかけた慣性力で補正する。したがって比較的正確な接触力が求められる。

【0006】
(3)日本機械学会第5回交通・物流部門大会講演論文集No.96-51、 1115 、 p.127-130 には、舟体の歪並びに、舟体の加速度を測定する方法が開示されている。この方法では、舟体の歪から計算した舟体にかかっている力を、舟体の等価質量に加速度をかけた慣性力で補正する。この場合も、比較的正確な接触力が求められる。

【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上述した各従来の公知技術には、例えば以下に述べるような課題があった。すなわち、(1)の方法では、舟体(摺り板含む)の慣性力が無視されることとなり、接触力の測定誤差が生じる。また、(2)の装置にあっては、パンタグラフは非通電で、ロードセル組み込みという特殊な工作を施したものであり、通常の営業列車に応用できるものではない。さらに、(3)の方法は、舟体が単なる質点として振動するのではなく、梁として振動するため、等価質量の同定が難しい。また、梁の固有振動モード付近(例えば100ヘルツ、200ヘルツ近辺)においては接触力測定の誤差が大きい。

【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、トロリ線等の給電線とパンタグラフ等の集電装置との間に作用する接触力を精度良く測れるとともに、通常の営業車両においても同接触力を測定することのできる接触力測定装置を提供することを目的とする。

【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明の接触力測定装置は、 給電線と集電装置との間に作用する接触力を測定する装置であって、上記集電装置の振動y(t)と上記接触力f(t)との間の周波数応答関数1/H(iω)(ωは振動角周波数、iは虚数単位)を等価モデルによる計算又は加振試験による実測結果から求める周波数応答関数算出手段と、上記周波数応答関数1/H(iω)から、次式によりインパルス応答関数h(t)を計算するインパルス応答関数算出手段と、
【数3】
JP0003352009B2_000004t.gif上記集電装置の振動y(t)を測定する振動測定手段と、この振動y(t)と上記インパルス応答関数h(t)とから次式
【数4】
JP0003352009B2_000005t.gifの重畳積分により上記接触力f(t)を求める接触力算出手段と、を備えることを特徴とする。

【0010】
ここで、給電線としては、架空電車線(トロリ線)、サードレール等があり、集電装置としては、パンタグラフ、集電靴等がある。サードレールとは、地下鉄の軌道の横等に設けた剛体の給電線をいう。集電靴とは、サードレール用に電車の台車に取り付けた集電装置のことである。

【0011】
本発明の接触力測定装置においては、上記集電装置がパンタグラフからなり、上記振動y(t)として、このパンタグラフの変位を測定するができる。この場合、上記変位を非接触測定することもできる。

【0012】
本発明の接触力測定装置においては、上記集電装置がパンタグラフからなり、上記振動y(t)として、このパンタグラフの加速度を測定することができる。

【0013】
本発明の接触力測定装置においては、上記集電装置がパンタグラフからなり、上記振動y(t)として、このパンタグラフの歪を測定することができる。

【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施の形態では、特に架線(トロリ線)とパンタグラフとの間の接触力(押圧力)を例にとって説明する。図1は、本発明の一実施例に係る接触力測定装置を含む電気鉄道パンタグラフ周辺を示す図である。この図において、符号1は電車の車体屋根であって、この車体屋根1上には、パンタグラフ2が搭載されている。このパンタグラフ2は、トロリ線3に押しつける前後2組の舟体4を備える。これらの舟体4の上表面には、トロリ線3に直接接触する摺り板5が貼られている。舟体4は、舟体支持バネ6の弾性を介してトロリ線3に押し付けられる。舟体支持パイプ7の上には前後2組の舟体支持バネ6が取りつけられており、同パイプ7は同バネ6を介して舟体4を支持する。舟体支持パイプ7の下には、パンタグラフ2全体を昇降するリンク構造の枠組8が設けられている。

【0015】
以下各部の概要を説明する。なお材質、寸法等は現状のJRの新幹線の一般的な架線・車両についての数字である。トロリ線3は、径約15mmの銅線であって、交流25kVの電圧が印加されている。トロリ線3は、約5mおきに吊架線(図示されず)によって吊られている。吊架線は、約50mおきに柱(図示されず)によって支えられている。摺り板5は、鉄系や銅系の焼結合金である。この摺り板5は、トロリ線3との接触により摩耗するので、定期的に交換する。舟体4は、幅40mm、長さ1m程度のアルミ製の薄い箱状の部材である。舟体4をトロリ線3に押し当てる力(通常接触力)は、50~70Nである。

【0016】
舟体支持バネ6は、ゴム製バネやコイルバネである。舟体支持パイプ7は、パンタグラフ2の上部構造を保持している。枠組8は、リンク構造をしており、押し当てる力を発生するバネ(図示されず)によって上下に昇降する。例えば、非使用時は、枠組8は折り畳まれて下がり、舟体4はトロリ線3から離れる。

【0017】
上述したようなパンタグラフ2には、以下に述べるような振動測定手段としてのセンサが配設されている。なお、これらのセンサは、いずれか1個を用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。図1において右側の舟体4の下面の符号11は、同面に貼り付けられた歪ゲージである。この歪ゲージ11により、舟体4の弾性変形に係る振動を測定し、それから接触力を計算する。歪ゲージ11による方法は、前述のように、貼り付ける構造体の共振域では誤差が大きくなるが、比較的高周波域で精度良く振動を測定できる。高電圧印加部に歪ゲージを貼る場合には、信号を光ファイバー等で測定機器にまで引き出すことが好ましい。

【0018】
同様に図1において右側の舟体4の左側の符号12はビデオカメラである。このビデオカメラ12は、舟体4の側面を見ており、同舟体4の高さを画像処理により測定する。なお、同ビデオカメラ12のレンズは、車両の左右方向(レール幅方向)に像を圧縮する特殊なレンズであって、舟体4の長手方向に平均化した画像情報を得ることができる。このビデオカメラ12による方法は、通常比較的高い周波数域の振動を検出しにくい。しかし、非接触測定が可能であるのでパンタグラフ接触力測定装置の構成は極めてシンプルであり、信頼性も高い。

【0019】
また、同様に図1において右側の舟体4の下方の舟体支持パイプ7上に配置されている符号13はレーザ変位計である。このレーザ変位計13も、舟体4の高さの振動を検出するものである。車体屋根1の上の左手に配置されているのもこれとは別のレーザ変位計14である。このレーザ変位計14は、枠組8の高さ位置振動を検出する。これらレーザ変位計13、14による測定は、上述のビデオカメラ12による測定とほぼ同じ特性である。しかし、高周波数域への対応力はレーザ変位計13、14の方が良い。

【0020】
一方、図1において左側の舟体4の側面の符号15、舟体支持パイプ7の下面の符号16は加速度計である。この加速度計15、16により、舟体4や舟体支持パイプ7の加速度振動を捕える。加速度による接触力計算は、接触力の定常力を捕えることはできない。しかし、高周波数領域の接触力の変動を測定するのに向いている。

【0021】
そして、これらのセンサ(歪ゲージ11、ビデオカメラ12、レーザ変位計13、14及び加速度計15、16)には、以下の構成からなる演算装置が接続され、これらセンサ及び演算装置によってかかる接触力測定装置が構成される。すなわち、図2にそのブロック構成を示すように、センサには、当該センサにより測定された測定値を増幅して出力するアンプ部(増幅手段)21が接続される。このアンプ部21には、上記測定値をディジタル信号に変換して出力するAD変換回路(ディジタル信号変換手段)22が接続される。このAD変換回路22には、フィルタ処理部23を介して、上記信号を数値として記憶する振動波形記憶部24が接続される。

【0022】
一方、符号25は、パンタグラフ2の振動y(t)と当該パンタグラフ2とトロリ線3との接触力f(t)との間の周波数応答関数1/H(iω)を、等価モデルによる計算又は加振試験による実測結果から求める周波数応答関数算出部である。この周波数応答関数算出部25には、インパルス応答関数h(t)を計算するインパルス応答関数計算処理部26が接続される(なお、これら周波数応答関数算出部25及びインパルス応答関数計算処理部26の計算原理は、後述する重畳積分回路の計算原理において説明する)。このインパルス応答関数計算処理部26には、インパルス応答関数記憶部27が接続される。

【0023】
そして、上記振動波形記憶部24とインパルス応答関数記憶部27とは、符号28で示す重畳積分回路(接触力算出手段)に接続される。ここで、上記周波数応答関数算出部25、インパルス応答関数計算処理部26及び重畳積分回路28は、以下に述べるような原理にしたがって計算を実行し、結果として重畳積分回路28が、パンタグラフ2とトロリ線3との接触力f(t)を計算するようになっている。

【0024】
すなわち、振動周波数をω、虚数単位をiとし、パンタグラフ2に作用する接触力f(t)及びパンタグラフ2の振動y(t)が以下の式で表されるとする。
【数5】
JP0003352009B2_000006t.gifこの「数5」中のZpは、パンタグラフ2の機械インピーダンス(接触力と上下速度の比)を表す。f(t)、y(t)の周波数特性をそれぞれF(iω)、Y(iω)とし、これらの間にY(iω)=H(iω)F(iω)の関係があるとすれば、パンタグラフ2は、接触力f(t)(入力信号)が作用したときに、振動y(t)(出力信号)が生じるような、周波数応答関数H(iω)の特性を有する線形システムと考えることができる。それゆえ、パンタグラフ2の振動から接触力を推定するためには、この周波数応答関数H(iω)の逆数1/H(iω)の特性を有する線形システムを考えるとよい。すなわち、パンタグラフの機械インピーダンスをZpとし、
【数6】
JP0003352009B2_000007t.gifと表すと、
Y(iω)=-(1/(iωZp(iω)))・F(iω)=H(iω)・F(
iω)、
H(iω)=-1/(iωZp(iω))
と表すことができる。そのため、上述の関係が成立し、周波数応答関数H(iω)の特性を有する線形システムと考えることができる。一方、1/H(iω)の特性を有する線形システムは、振動y(t)(入力信号)が作用したとき、接触力f(t)(出力信号)が生じるような、
1/H(iω)=-iωZp(iω)
の特性を有する。したがって、この周波数応答関数1/H(iω)に対するインパルス応答関数をh(t)とすれば、逆フーリエ変換を求めることにより以下の「数7」が得られる。
【数7】
JP0003352009B2_000008t.gifこの「数7」に基づき、線形システムの連続的入力に対する応答を重ね合わせの原理を用いて考慮すると、パンタグラフ2の接触力は、
【数8】
JP0003352009B2_000009t.gifの重畳積分で求められる。なお、この式において積分範囲を∞~-∞としているのは、上述した線形システムとしての入出力関係が因果性時間応答と考えられないためである。

【0025】
以上のような原理により、重畳積分回路28においては、接触力f(t)が算出される。この重畳積分回路28には、これによる算出結果をアナログ信号に変換して出力するDA変換回路(アナログ信号変換手段)29が接続される一方、同算出結果を記憶する処理結果記憶部(算出結果記憶手段)30が接続される。

【0026】
次に、上記の構成からなる接触力測定装置の作用について説明する。上記各センサ(歪ゲージ11、ビデオカメラ12、レーザ変位計13、14及び加速度計15、16)により、パンタグラフ2の振動が測定される。すると、この測定値は、アンプ部21で増幅された後、AD変換回路22でディジタル信号に変換される。次いで、この信号は、フィルタ処理部23を介して、振動波形記憶部24において数値として記憶される。

【0027】
一方、周波数応答関数算出部25においては、周波数応答関数1/H(iω)が計算される。この計算に基づき、インパルス応答関数計算処理部26においては、インパルス応答関数h(t)が計算され、この計算結果は、インパルス応答関数記憶部27で記憶される。

【0028】
そして、重畳積分回路28では、振動波形記憶部24とインパルス応答関数記憶部27とからの出力に基づき、パンタグラフ2とトロリ線3との接触力f(t)が計算される。この計算結果は、DA変換回路29でアナログ信号に変換されて出力される一方、処理結果記憶部30で記憶される。したがって、DA変換回路29からの出力に基づき、パンタグラフ2とトロリ線3との接触力f(t)を観察することができる。

【0029】
図3は、歪測定によるパンタグラフ接触力測定装置の加振力と測定力比の振幅周波数特性を表すグラフである。(A)は前舟についてのグラフであり、(B)は後舟についてのグラフである。横軸は振幅周波数を示し、縦軸は測定力と加振力の比を示す。図4は、歪測定によるパンタグラフ接触力測定装置の加振力と測定力比の位相周波数特性を表すグラフである。(A)は前舟についてのグラフであり、(B)は後舟についてのグラフである。横軸は振幅周波数を示し、縦軸は位相差を示す。

【0030】
図3、4より、接触力推定値と加振力との比は1に近い。また、その位相は0に近い。すなわち、接触力が正確に推定されていることがわかる。比が1から外れている主な周波数は数Hz以下と80Hz近傍であり、前者は加振力成分が無いための誤差であり本質的には問題にはならない。後者は舟体梁の1次固有振動数に相当し、システム関数の推定に誤差が含まれるためと考えられる。

【0031】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明の接触力測定方法及びその装置によれば、以下の効果を得ることができる。予め加振試験等で得られたパンタグラフ要素の振動と接触力との関係を利用するため、精度の高い測定が可能となる。また計測する対象によっては比較的高い周波数まで接触力を測定することが可能である。振動計測方法をレーザ変位計や、ビデオカメラ及び画像処理とした場合には、非接触測定が可能である。さらには、本発明により、パンタグラフの接触力が精度良く測定でき、高速化のための集電性能評価や、架線異常検知や架線保全管理の効率化、工事施工管理の精度向上が図れる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3