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明細書 :SS型ワムシ耐久卵の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3465050号 (P3465050)
公開番号 特開2002-306015 (P2002-306015A)
登録日 平成15年8月29日(2003.8.29)
発行日 平成15年11月10日(2003.11.10)
公開日 平成14年10月22日(2002.10.22)
発明の名称または考案の名称 SS型ワムシ耐久卵の製造方法
国際特許分類 A01K 61/00      
A01K 67/033     
C12N  1/10      
FI A01K 61/00 L
A01K 67/033
C12N 1/10
請求項の数または発明の数 8
全頁数 7
出願番号 特願2001-111122 (P2001-111122)
出願日 平成13年4月10日(2001.4.10)
審査請求日 平成13年4月10日(2001.4.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501145000
【氏名又は名称】長崎大学長
発明者または考案者 【氏名】萩原 篤志
【氏名】マビット アッサワアリー
【氏名】小金 隆之
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】郡山 順
参考文献・文献 小金隆之ら,栽培漁業技術開発研究,vol.25, No.1, pp.1-6 (1996)
調査した分野 A01K 61/00
A01K 67/033 501
C12N 1/10
特許請求の範囲 【請求項1】
SS型ワムシを飼育水下で培養して両性生殖を誘導した後、前記誘導時の培養温度の-10℃~5℃の範囲内で温度を変化させて培養を継続し、ワムシの耐久卵を採取することを特徴とするSS型ワムシの耐久卵の製造方法。

【請求項2】
培養開始時のSS型ワムシの密度が、1~5個体/mlであることを特徴とする請求項1記載の方法。

【請求項3】
飼育水が、 10 ~ 20 pptの海水であることを特徴とする請求項1又は2項に記載の方法。

【請求項4】
前記培養を、飼育水を変更せずに行うことを特徴とする請求項1~3項のいずれか1項に記載の方法。

【請求項5】
培養開始時のSS型ワムシが、受精卵を形成させた後10日以内に孵化させたものであることを特徴とする請求項1~4項のいずれか1項に記載の方法。

【請求項6】
前記両性生殖を誘導した後であって、雄の発現後に培養温度を変化させる請求項1~5項に記載の方法。

【請求項7】
前記培養温度を、20℃~35℃範囲内において変化させることを特徴とする請求項1~6項のいずれか1項に記載の方法。

【請求項8】
前記培養温度を、降下させることを特徴とする請求項7項に記載の方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、SS型ワムシの耐久卵の製造方法に関し、特に、両性生殖を誘導した後、誘導時の培養温度を変化させて耐久卵の生産を向上させるSS型ワムシ耐久卵の製造方法に関する。

【0002】
【従来の技術】ワムシは、体長100~300ミクロン程の、海や河口にすむ小型の動物性プランクトンで、主に水産養殖の現場で卵から孵化したばかりの仔稚魚に欠かせない大切な餌として利用されている。ワムシは、多くの種類の魚介類の幼生プランクトン食の生物の本来の食べ物である。

【0003】
したがって、このようなワムシは、有用魚貝類の種苗生産業において、孵化したばかりの仔魚に与える餌生物として汎用されている。かかる観点から、ワムシを餌料用に積極的に培養することが行われている。

【0004】
ワムシの培養は、基本的に、(1)ワムシの個体数の計数(毎日)、(2)クロレラの給餌(毎日)、(3)定期的な換水(3~4日毎)、(4)培養密度の調製(増えすぎたワムシの間引き)の作業の繰り返しとなる。特に、ワムシ培養を行う手法には間引き方式とバッチ(植え継ぎ)方式がある。いずれの方式も増えたワムシを収穫して、仔魚の餌とすることが基本となる。間引き方式とは、引き続き同じ水槽でワムシの培養を行うときにワムシ収穫時に減った分だけ培養水を補充する方法をいい、バッチ方式とは、ワムシを収穫後、残ったワムシを新しい培養水を含んだ水槽に植え継いていく方法である。

【0005】
ワムシの個体数の計数は、培養条件を判断するためのものである。計数からワムシの増殖率が高ければ良好であることを示す。増殖率が低ければ、ワムシの餌であるクロレラの給餌量が少ない、培養水が汚れている(換水を行う。)、水温が低い、溶存酸素が少ない(エアレーションを強くする)、及び培養密度が高すぎる(間引きを行う。)等の原因が考えられるので、原因をつきとめ対処する。

【0006】
ワムシは、上述のように初期餌料であるため、ワムシを計画通りに培養できるかどうかが、有用魚介類の種苗生産に大きく左右する。ワムシは各種苗生産事業場で独自の技術に基づいて培養されている。そのため、ほとんどの事業場では、ワムシの試用期間が、1年のうち6ヵ月以内であるにもかかわらず、周年にわたってワムシ培養を維持しなければならない。

【0007】
【発明が解決しようとする課題】前記の問題を解決するための一つの手段として,低温庫(4℃)内でのワムシの保存が考えられる.しかしながら、低温保存では1<HAN>カ</HAN>月以上の長期保存は困難であるし,ワムシを低温移行前に15℃以下で馴化したり、保存途中に水換えを行ったりする必要がある。これらの煩雑な処理を施さないと、保存後の生残率が安定的に高い値を示さない。

【0008】
ところで、ワムシの生活史内で形成される耐久卵は、低温や乾燥などの悪環境下で強い抵抗性を示し、短波長光の照射や活性酸素種への暴露が無ければ、10年以上の長期にわたって休眠状態を維持しつづけることが知られている。

【0009】
該耐久卵を使用すれば、耐久卵を孵化させたワムシを培養の元種等として利用することにより、必要十分なワムシを必要な時期に自由に生産することができるため、周年にわたってワムシを培養する必要がない。

【0010】
しかし、このような耐久卵は、日光等の短波長光の照射により孵化するため、自然界で多量に存在しつづけることは稀である。したがって、何らかの方法で、耐久卵を効率よく生産することが可能であれば、必要時に耐久卵を孵化させワムシを増殖させることができるので、有用魚介類の種苗生産に有効である。

【0011】
そこで、本発明の目的は、耐久卵を効率よく生産することにより、安定してワムシを供給することにある。

【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、発明者らは、ワムシの生態、特にストレス環境下におけるワムシの生態について鋭意研究を積み重ねた結果、ワムシの環境を変化させることによりワムシの耐久卵を効率よく生産できることを見出した。

【0013】
本発明のワムシ耐久卵の生産方法は、SS型ワムシを飼育水下で培養して両性生殖を誘導した後、前記誘導時の培養温度を変化させて培養を継続し、ワムシの耐久卵を採取することを特徴とする。

【0014】
また、本発明のワムシ耐久卵の生産方法の好ましい実施態様としては、培養開始時のSS型ワムシの密度が、 1 ~ 5個体/mlであることを特徴とする。

【0015】
また、本発明のワムシ耐久卵の生産方法の好ましい実施態様としては、培養を、飼育水を変更せずに行うことを特徴とする。

【0016】
また、本発明のワムシ耐久卵の生産方法の好ましい実施態様としては、SS型ワムシが、受精卵を形成させた後10日以内に孵化させたものであることを特徴とする。

【0017】
また、本発明のワムシ耐久卵の生産方法の好ましい実施態様としては、前記両性生殖を誘導した後であって、さらに雄の発現後に培養温度を変化させることを特徴とする。

【0018】
また、本発明のワムシ耐久卵の生産方法の好ましい実施態様としては、前記培養温度を、20℃~35℃範囲内において変化させることを特徴とする。

【0019】
また、本発明のワムシ耐久卵の生産方法の好ましい実施態様としては、前記培養温度を、降下させることを特徴とする。

【0020】
【発明の実施の形態】本発明のSS型ワムシ耐久卵の生産方法は、SS型ワムシを飼育水下で培養してワムシの両性生殖を誘導した後、前記誘導時の培養温度を変化させて前記SS型ワムシを培養し、ワムシの耐久卵を採取する。

【0021】
ここで、まず、ワムシの生活環を説明すると、生活環には、単性生殖型又は両性生殖型による場合の2種類が存在する。雌のワムシには、単性生殖を行って個体群の増殖をもたらすタイプと、生殖細胞に減数分裂を起こして両性生殖を行うタイプとがあり、前者が単性生殖型であり、後者が両性生殖型である。これらのタイプが一つの個体群を形成している。単性生殖型では、雄無しに増殖する。両性生殖型では、交尾して受精することにより耐久卵や休眠卵と呼ばれる受精卵を形成する。

【0022】
したがって、休眠卵、耐久卵といった受精卵は、両性生殖を通じて形成されるため、両性生殖の誘導は、耐久卵を形成するための第一段階とも言うべきものである。耐久卵の形成過程は、両性生殖型の雌の産出、雄の産出、雄と出生後間もない雌との交尾、受精、及び耐久卵の形成、という複数の段階からなる。

【0023】
本発明においては、両性生殖を誘導できれば、特に他の培養条件は限定されない。例えば、低塩分、低温等にすることによって、より両性生殖を誘導することが可能である。また、若いワムシほど両性生殖型の雌を良く産むため、若いSS型ワムシを培養し両性生殖を誘導しても良い。好ましくは、培養開始時のSS型ワムシが、休眠卵を形成させた後10日以内に孵化させたものである。10日以内としたのは、受精卵に十分に眠りを与えない場合、両性生殖を非常に活発に行うワムシが受精卵から孵化するからである。

【0024】
また、培養開始時のワムシの密度は、なるべく低くすることが望ましい。好ましくは、20個体/ml以下とする。培養開始時のワムシの密度を低く設定することにより、培養後の増殖時に活発な両性生殖誘導を引き起こすことができるからである。より好ましくは、培養開始時のSS型ワムシの密度が、1~ 5個体/mlである。

【0025】
また、本発明においては、飼育水を変更せずに培養を行うことができる。ワムシの密度の増加に伴い両性生殖の発現頻度は高くなるが、一定密度のもとでは、飼育水の頻繁な交換によって両性生殖の誘導が抑制されると考えられるからである。したがって、少なくとも両性生殖の誘導が生じる前まで、飼育水を変更せずに培養するのが好ましい。

【0026】
このように両性生殖を誘導した後、本発明においては、誘導時の培養温度を変化させてワムシを培養する。温度変化は、ワムシの生存可能な温度内での変化をいい、この温度範囲内では特に限定されない。なお、一般的に、SS型ワムシの生存可能な温度は、5 ~ 40℃である。ワムシの耐久卵を効率よく生産するという観点から、両性生殖誘導時の培養温度の-10℃~+5℃範囲内において温度を変化させることができる。下限を-10℃としたのは、正常な卵生産が可能であるという観点からであり、上限を+5℃としたのも、同じ理由からである。一般にSS型ワムシの培養温度は30℃前後であるので、具体的には、20℃~35℃の範囲で培養温度を変化させることができる。

【0027】
また、本発明においては、前記両性生殖を誘導した後であって、さらに雄の発現後に培養温度を変化させることができる。このように雄の発現後に、培養温度を変化させるのは、雄の発現は特定の温度のもとでのみ起こるのに対し,引き続いて起こる受精と耐久卵の産出は,広い温度範囲にわたって起こる現象だからである。

【0028】
この場合、遺伝的に異なる他のワムシが存在すると、多数の雄が出現しても、交尾の頻度が低下し、耐久卵の量産を阻害するおそれがあるので、SS型以外のワムシの混入を避けて行うことが望ましい。

【0029】
また、好ましくは、培養温度を降下させる。これは、ワムシの培養において、培養の良否は、細菌の発生及び増殖に左右されることから、培養温度を上げると細菌の増殖も活発化し、ワムシ用の餌の供給が不足するおそれがあるからである。餌不足は、ワムシ密度の増加に伴う両性世代のステージの進行を阻害する要因となるので、かかる点からも細菌の発生及び増殖を抑えることが必要である。

【0030】
但し、細菌の発生及び増殖がなく無菌的な環境下においては、培養温度を上昇させても耐久卵を量産することが可能である。

【0031】
なお、ワムシの耐久卵の採取は、特に限定されず常法を用いることができる。例えば、各飼育水から約30μmのプランクトンネットを通じてろ過して耐久卵を採取することができる。

【0032】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。

【0033】
実施例1
本実施例において、培養中の不受精両性生殖型の雌(♂♀)、雄(♂)、受精両性生殖型の雌(D♀)、耐久卵(Degg)の変化を調べた。

【0034】
まず、小型水槽で培養を試みた。培養容器として500mlのものを用いた。各培養容器に初期密度1個体/mlでワムシを接種した。実験の初めに、6つの容器の温度を30℃±1℃に、ヒーター(500~1000ワット)及びサーモスタットを使用して調節した。各培養容器を爆気し、溶解酸素を6mg/lより多くした。濃縮クロレラをワムシの餌に使用し、実験の初日に培養容器に7×106細胞/mlでインキュベートし、その後、ワムシ当たり6×104細胞を与えた。餌を毎日朝と晩に2回調べた。培養4日後、培養容器のワムシは、両性生殖(不受精雌、雄及び受精雌)を示し、6つの容器の3つの温度を25℃に下げ、試験終了までこの温度を維持した(9日)。他の3つの容器の温度を30℃に維持した。飼育水を攪拌後、ワムシサンプルを各容器から毎日収集し、顕微鏡下で観察した。顕微鏡下で、4つの雌型(耐久卵を有しない雌、単性生殖型の雌、不受精両性生殖型の雌、受精両性生殖型の雌)、雄、及び耐久卵を数えた。実験の最後に、各培地を30μmのプランクトンネットを通じてそれらをろ過して耐久卵を採取して、小型容器に分けておいた。各容器内の耐久卵の生産数を、各小型容器からサンプルを取り顕微鏡でそれらを数えることにより見積もった。増殖率、雄の数、受精率、及び耐久卵の形成率を計算した。

【0035】
図1は、30~25℃に変化させた場合のワムシの増加状態を示す図である。縦軸がワムシの密度であり、横軸が孵化後の日数である。その結果。4日目に、温度を30℃~25℃に変化させた後、実験培地のワムシの増加は、継続して30℃に保った対照例より緩くなった。30℃と25℃で培養したワムシの4日目~11日目の平均増加率は、それぞれ、0.30/日と0.25/日であった。全ての培地において、不受精両性生殖型の雌、雄及び受精両性生殖型の雌が、それぞれ、2日目、2日目、及び3日目に現れた。

【0036】
図2は、小型水槽における30℃~25℃に変化させた場合の不受精両性生殖型の雌、受精両性生殖型の雌、雄及び耐久卵の数の変化を示す図である。図2(A)が30℃~25℃へ変化させた場合であり、図2(B)が30℃に保持した場合である。その結果、耐久卵を4日目に観察した。また、実験(30℃→25℃)と対照例(30℃)の培地においてワムシは、それぞれ10日目(57ind./ml)及び4日目(22ind./ml)に雄の最大ピークを示した。

【0037】
両方の処理に対して、両性生殖を、2~11日目に継続的に誘導した。図3は、継続的に誘導したときの小型水槽における両性生殖型の雌の数、及び受精の数を示す図である。図3(A)が、両性生殖型の雌の数を示す図であり、図3(B)が、受精の数を示す図である。その結果、試験区及び対照区において両性生殖率の最大値は、3日目に記録され、それぞれ12.8%と14.4%であった。対照ワムシ区の%は、8及び9日目に再び増加し、試験区のものは、試験の終わりまで継続した減少を示した。一方、受精は、両方の温度処理の実験区において3日目から生じた。しかし、対照区において5日目から減少する一方、試験区のものは9日目から減少した。平均受精割合は、対照のものより試験のものが1.7倍であった(それぞれ、43.9%及び73.6%)。

【0038】
培養を継続した後、耐久卵の数を測定した。図4は、小型水槽における耐久卵の生成数を示す図である。この結果、小型試験培地における11日目に収穫したワムシ耐久卵の平均数(18,407個/500ml)は、30℃で引き続き培養した対照のもの(14,206個/500ml)より1.3倍高いことを示した。対照培地と試験培地で培養したワムシに10日まで与えた濃縮凍結乾燥餌の全量は、それぞれ3.67及び2.31mg(乾燥重量)であった。耐久卵形成の効率は約2.1倍まで増加した。

【0039】
実施例2
次に、大型の培養槽(500L)を用いて、実施例1と同様に試験した。17pptの海水(水道水で希釈した。)500Lを含む6つの500Lポリカーボネートタンクを、ワムシ培養用に用意した。ワムシは、実験に使用する前数週間貯蔵培地として200Lポリカーボネートタンクで予め培養した。予め培養中に、凍結餌(N.oculata)をワムシに7×106 細胞/mlで与えた。

【0040】
各タンクのワムシ数を試験を通じて増加させた。4日目に25℃に移したワムシ培地は、よりゆっくり増加した。しかし、試験タンクにおける9日目の平均ワムシ密度は、対照のものより高くなった。増殖率は対照において7日目から減少した。対照及び試験培地の4日目から9日目の平均増殖率は、それぞれ0.60及び0.53であった。

【0041】
図5は、大型水槽における30℃~25℃に変化させた場合の不受精両性生殖型の雌、受精両性生殖型の雌、雄及び耐久卵の数の変化を示す図である。図5(A)が30℃~25℃へ変化させた場合であり、図5(B)が30℃に保持した場合である。その結果、不受精両性生殖型の雌、雄を3日目に最初に観察し、全ての培地において受精両性生殖型の雌を4日目に観察した。

【0042】
すべての培地において、雄は3日目に現われ、それぞれ、対照及び試験培地において4日(45ind./ml)及び5日目に最大となった(図5)。両性生殖は、3日目から9日目に全てのワムシ培養タンクで生じた。

【0043】
図6は、継続的に誘導したときの大型水槽における両性生殖型の雌の数、及び受精の数を示す図である。図6(A)が、両性生殖型の雌の数を示す図であり、図6(B)が、受精の数を示す図である。その結果、試験培地及び対照培地における最大両性生殖率は、それぞれ37.5%及び32.5%であり、両方とも6日目に観察された(図6A)。試験培地における平均両性生殖誘導率(3日目及び9日目)は、対照のものより1.6倍高かった。一方、両方の処理において4日目から9日目において受精が起こったが、試験処理において示された平均受精率は、対照処理のものより1.1倍高かった(図6B)。

【0044】
最終的に得られた耐久卵の数を図7に示す。その結果、500Lタンクから試験の終了時に採取した耐久卵の数は、試験培地において、29.1、25.6及び23.4×1,000,000であり、一方、対照のものは15.7、16.5及び17.3×1,000,000であった。試験培地において生産された平均耐久卵数は、26×1,000,000であり、対照のもの(16.5×1,000,000)より1.6倍であった。9日までに対照区及び試験区に与えられた濃縮餌の量は、それぞれ160.6×103及び136.7×103mg(乾燥重量)であった。耐久卵形成効率は、1.8倍まで増加した。

【0045】
また、培養開始時のワムシ密度を1個体/mlとすることにより、5個体/mlの場合と比較して、最大3倍の耐久卵形成効率を達成することができた。

【0046】
実施例3
次に、両性生殖を誘導した後、培養温度を上げた場合について試験した。実施例2と同様に、500Lの水槽でSS型ワムシの培養を10日間行った。この実験では、培養を30℃でスタートし雄が多数出現した4日目に、30℃~32.5℃へ変化させた場合について行った。培養温度を30℃に維持したものを対照例とした。双方とも、その後10日目まで培養を行い、11日目に耐久卵を回収して計数した。

【0047】
結果を図8に示す。その結果、30℃~32.5Cへ変化させた場合、約2500万個の耐久卵が形成された。ワムシの培養は,水中の細菌相の影響に大きく左右され,これ次第で良くも悪くもなる。そして、細菌の増殖や細菌相の変化は高水温下ほど大きい。したがって、高水温ではワムシ培養が不安定になりがちであるが、ワムシの活力状態、細菌の増殖率等によって、誘導時の培養温度を30℃以上に変化させた場合においても、耐久卵を量産できることが判明した。

【0048】
【発明の効果】本発明のワムシ耐久卵の製造方法によれば、ワムシ耐久卵の生産効率が高くなり、安定して耐久卵を供給し得るという有利な効果を奏する。

【0049】
また、本発明のワムシ耐久卵の製造方法によれば、ワムシ耐久卵は、短波長光の照射や活性酸素種への暴露が無ければ、10年以上の長期に渡って休眠状態を維持しつづけるため、必要時にワムシを孵化させることで、周年にわたってワムシを培養することなく培養維持のための経費等が大幅に削減することができるという有利な効果を奏する。
図面
【図4】
0
【図7】
1
【図1】
2
【図8】
3
【図2】
4
【図3】
5
【図5】
6
【図6】
7