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Specification :(In Japanese)異方性ポリマー微粒子の製造法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P5239004
Publication number P2008-074915A
Date of registration Apr 12, 2013
Date of issue Jul 17, 2013
Date of publication of application Apr 3, 2008
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)異方性ポリマー微粒子の製造法
IPC (International Patent Classification) C08J   3/14        (2006.01)
FI (File Index) C08J 3/14
Number of claims or invention 7
Total pages 13
Application Number P2006-253826
Date of filing Sep 20, 2006
Exceptions to lack of novelty of invention (In Japanese)特許法第30条第1項適用 平成18年5月25日 社団法人高分子学会主催の「第55回高分子学会年次大会」において文書をもって発表、平成18年9月20日 社団法人高分子学会主催の「第55回高分子討論会」において文書(ポスター)をもって発表
Date of request for substantive examination Jul 13, 2009
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】藪 浩
【氏名】樋口 剛志
【氏名】下村 政嗣
【氏名】田島 孝訓
Representative (In Japanese)【識別番号】100105050、【弁理士】、【氏名又は名称】鷲田 公一
【識別番号】100131587、【弁理士】、【氏名又は名称】飯沼 和人
Examiner (In Japanese)【審査官】長谷川 大輔
Document or reference (In Japanese)特開2004-035785(JP,A)
特開2006-225525(JP,A)
特開2005-185990(JP,A)
Field of search C08J7/04-7/06
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
溶解度パラメータの差が0.1MPa1/2以上20MPa1/2以下である2種以上のポリマーを前記2種以上のポリマーに対する良溶媒に溶解した良溶媒溶液に、前記良溶媒と相溶する前記2種以上のポリマーに対する貧溶媒を添加して、前記良溶媒と前記貧溶媒の混合溶液を調製する工程1)、
前記混合溶液から前記良溶媒を除去して、前記2種以上のポリマーからなる多相ポリマー微粒子を形成させる工程2)、及び
前記多相ポリマー微粒子を形成する一部のポリマーを選択的に除去する工程3)
を含む、異方性ポリマー微粒子の製造方法。
【請求項2】
工程3)で得られる異方性ポリマー微粒子を構成することになるポリマーの分子間に架橋を形成する工程2)’を、工程2)と工程3)の間に含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
2種以上のポリマーの溶解度パラメータとの差が5.0MPa1/2以下である溶解度パラメータを有する良溶媒を使用する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
良溶媒の溶解度パラメータとの差が30MPa1/2以下である溶解度パラメータを有する貧溶媒を使用する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
良溶媒を減圧下で蒸発除去する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項6】
減圧時の雰囲気圧力が10-3Pa~10kPaである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
毎秒0.01容積%以上の割合で良溶媒を蒸発除去する、請求項5又は6に記載の製造方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料、光学材料、触媒などを含む広範な分野において適用できる、半球状その他の形状を有する異方性ポリマー微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
nm~μmの領域の大きさを持った微粒子は、材料が持つ本来の量子的な性質が顕著に現れること、体積に対する表面の比が平滑な基板などよりも非常に大きく、活性の高い表面状態を持っていること、などの理由から、光機能性、電子機能性、生体機能性などの機能を有する機能性材料として注目されている。
【0003】
ポリマー微粒子の製造法としては、既存の高分子溶液をSPG(Shirasu Porous glass Membrane)と呼ばれる多孔質膜に通して均一なW/O、あるいはW/O/Wエマルジョンとして10μmオーダーの微粒子を得る方法(非特許文献1)、高分子のエマルジョン溶液中での乳化重合反応やミクロエマルジョン重合反応によって微粒子を調製する方法(非特許文献2)などが知られている。
【0004】
さらに上記の方法とは異なる原理に基づく高分子からなる微粒子の製造方法として、良溶媒に溶解した有機材料溶液中に該良溶媒と相溶する前記材料の貧溶媒を添加して該材料の濃度を低下させることで、有機材料からなる微粒子を調製する方法が報告されている(特許文献1、非特許文献4)。
【0005】
上記の方法は、ほぼ球形の微粒子を製造する方法である。一方、形状的な異方性(asymmetrical)を有する微粒子(異方性微粒子、Janus微粒子とも呼ばれる)を製造する方法も知られている。例えば、エマルジョンを用いてシリカ粒子にポリスチレン微粒子を結合させ、ダンベル上の異方性微粒子を調製する方法(非特許文献5)や、シード粒子と重合する高分子との重合過程における相分離を利用した円盤状あるいは扁平状の微粒子を製造する方法(例えば特許文献2~5)、微粒子を適当な基板上に塗布した後に、その上面にスパッタリング等を行って金属を塗布する、あるいはその上面に高分子ブラシを合成するなどして微粒子を調製する方法(非特許文献3)等である。
【0006】
しかし、これらの形状的な異方性を有する微粒子の製造方法は、いずれも多段階の工程を必要とする、また生産効率が低いなどの問題を有している。また、例えばシード粒子を用いる方法は、シード粒子や高分子として利用可能な原料が限定される他、重合条件の精密な制御が必要となる等の問題を有している。

【非特許文献1】SPGテクノ株式会社のカタログ
【非特許文献2】小山昇ら、現代界面コロイド化学の基礎、1997年、日本化学会編、丸善発行
【非特許文献3】V. N. Paunovら、Advanced Materials、2004年、第16巻、第9号、788頁
【非特許文献4】Hiroshi Yabuら、Advanced Materials、2005年、第17巻、第17号、2062頁
【非特許文献5】Adeline Perroら、Chemical Communications、2005年、第44号、5542頁
【特許文献1】特開2004-67883
【特許文献2】特開平6-287244
【特許文献3】特開平6-287254
【特許文献4】特開2003-226708
【特許文献5】特開平11-181037
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、より簡便な工程からなり、また使用可能な原料の選択幅が広がった、ポリマー微粒子、特に異方性ポリマー微粒子の新規な製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、溶解度パラメータが互いに異なる2種以上のポリマーを良溶媒に溶解した良溶媒溶液を調製し、該良溶媒と相溶する前記ポリマーの貧溶媒を添加した後、良溶媒を除去することによって、各ポリマーがそれぞれ集合ないし凝集して形成される複数の相を有する、ほぼ球形の微粒子(以下、これを多相ポリマー微粒子という)を製造し得ることを見出し、さらにこの多相ポリマー微粒子を形成している一部のポリマーを選択的に除去することで、形状的な異方性を有するポリマー微粒子(以下、異方性ポリマー微粒子とする)を形成し得ることを見いだし、下記の各発明を完成した。
【0009】
(1)溶解度パラメータの差が0.1MPa1/2以上20MPa1/2以下である2種以上のポリマーを該ポリマーに対する良溶媒に溶解した良溶媒溶液に該良溶媒と相溶する前記2種以上のポリマーに対する貧溶媒を添加して良溶媒と貧溶媒の混合溶液を調製する工程1)、前記混合溶液から良溶媒を除去して2種以上のポリマーからなる多相ポリマー微粒子を形成させる工程2)、及び該多相ポリマー微粒子を形成する一部のポリマーを選択的に除去する工程3)を含む、異方性ポリマー微粒子の製造方法。
【0010】
(2)工程3)で得られる異方性ポリマー微粒子を構成することになるポリマーの分子間に架橋を形成する工程2)’を、工程2)と工程3)の間に含む、(1)に記載の製造方法。
【0011】
(3)2種以上のポリマーの溶解度パラメータとの差が5.0MPa1/2以下である溶解度パラメータを有する良溶媒を使用する、(1)又は(2)に記載の製造方法。
【0012】
(4)良溶媒の溶解度パラメータとの差が30MPa1/2以下である溶解度パラメータを有する貧溶媒を使用する、(1)又は(2)に記載の製造方法。
【0013】
(5)良溶媒を減圧下で蒸発除去する、(1)又は(2)に記載の製造方法。
【0014】
(6)減圧下が10-3Pa~10kPaである、(5)に記載の製造方法。
【0015】
(7)毎秒0.01容積%以上の割合で良溶媒を蒸発除去する、(5)又(6)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法は、ポリマーを溶媒に溶解するという極めて簡便な操作で、異方性ポリマー微粒子を製造することができる。この異方性ポリマー微粒子は球状粒子とは異なる光散乱特性を有しており、光散乱フィルム材料や、塗料あるいは化粧品への添加剤として利用することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のポリマー微粒子の製造方法は、 溶解度パラメータの差が0.1MPa1/2以上10MPa1/2以下である2種以上のポリマーを該ポリマーに対する良溶媒に溶解した良溶媒溶液に該良溶媒と相溶する前記2種以上のポリマーに対する貧溶媒を添加して良溶媒と貧溶媒の混合溶液を調製する工程1)、前記混合溶液から良溶媒を除去して2種以上のポリマーからなる微粒子を形成させる工程2)、該微粒子を形成する一部のポリマーを選択的に除去する工程3)を含む。この方法は、前記の多相ポリマー微粒子を経由して、ポリマー微粒子、特に異方性ポリマー微粒子を製造する方法である。
【0018】
多相ポリマー微粒子とは、各ポリマーがそれぞれ集合ないし凝集して形成される複数の相を有する、ほぼ球形の微粒子である。より詳しくは、一定の溶解度パラメータ差を有する2種以上のポリマーからなり、各ポリマーはそれぞれが集合ないし凝集してなる相を形成しており、各相は互いに混和せずに分離した相として存在している、異種のポリマーからなるほぼ球形の微粒子である。
【0019】
図1a、図1bに、本発明における多相ポリマー微粒子の構成例を模式的に表す。図1aは2種類のポリマーからなる多相ポリマー微粒子を、図1bは3種類のポリマーからなる多相ポリマー微粒子をそれぞれ示す。図中、濃淡で区別されているものそれぞれが、ポリマーが集合ないし凝集してなる相を表している。
【0020】
図1a、図1bに示されるように、多相ポリマー微粒子の相の数すなわちポリマーの種類の数には、2以上であれば他には特別の制限はない。また、非対称性の相構造を有する微粒子も、対照的な相構造を有する微粒子も、さらにこれらの相構造を組み合わた相構造を有する微粒子も、いずれも本発明にいう多相ポリマー微粒子に含まれるものである。
【0021】
本発明の工程1)及び2)は、上記の多相ポリマー微粒子の調製工程に相当する。本発明の方法を構成する工程1)では、溶解度パラメータの差が0.1MPa1/2以上10MPa1/2以下である2種以上のポリマーを該ポリマーに対する良溶媒に溶解した良溶媒溶液に該良溶媒と相溶する前記2種以上のポリマーに対する貧溶媒を添加して良溶媒と貧溶媒の混合溶液が調製される。
【0022】
ここで利用可能な2種以上のポリマーには、その選択と組み合わせにおいて後に述べる溶解度パラメータの差に関する条件を満たすことの他には、個々のポリマーの種類において特に制限はなく、水溶性ポリマー、非水溶性ポリマー、共重合体その他任意のポリマーを利用することができる。それらの非限定的な例を下記に示す。なお、括弧内の数値は、各ポリマーの溶解度パラメータ(単位はMPa1/2)を示す。
【0023】
1)水溶性ポリマー;N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM、22.8)、ポリエチレングリコール(PEG、20.2)など。
【0024】
2)非水溶性ポリマー;1,4-シス-イソプレン(16)、イソプレンエラストマー(17)、ポリスチレン(18)、ポリブタジエン(17.5)、ポリイソプレン(16~17)、ポリメチルメタクリレート(PMMA、23)、ポリn-ブチルアクリレート(18)、ポリ塩化ビニル(19)、ポリアクリロニトリル(26)、ポリ乳酸(PLA、19)など。
【0025】
3)共重合体;ブタジエン:スチレン=94:6の共重合体(16.45~16.64)、ブタジエン:スチレン=90:10の共重合体(17.13)、ブタジエン:スチレン=85:15の共重合体(16.55)、スチレン含量が25以上のブタジエンとスチレンの共重合体(17.5)など。
【0026】
本発明で使用される2種以上のポリマーは、上記に列記されるようなポリマーの中から、ポリマー間の溶解度パラメータの差が0.1MPa1/2以上10MPa1/2以下となるように選択されるポリマーである。例えば、2種のポリマーとしてポリマーAとポリマーBを利用する場合、ポリマーABはその間の溶解度パラメータの差が0.1MPa1/2以上10MPa1/2以下となる様な組み合わせとして選択される。また3種のポリマーとしてポリマーA、B、Cを利用する場合、ポリマーA~Cは、その全ての組み合わせ、すなわちポリマーAB、ポリマーAC、ポリマーBCの組み合わせにかかる各ポリマー間の溶解度パラメータの差がいずれも0.1MPa1/2以上10MPa1/2以下となる様な組み合わせとして選択される。
【0027】
上記の溶解度パラメータ差の条件を満たす2種以上のポリマーの組み合わせ例としては、PEGとNIPAM、ポリスチレンとポリイソプレン、ポリスチレンとポリブタジエン、ポリスチレンとPLA、ポリスチレンとポリブチルアクリレート等を挙げることができるが、これらには限定されない。
【0028】
本発明で用いる良溶媒ならびに貧溶媒は、互いに相溶姓を示すが、前項で説明した2種以上のポリマーに対する溶解力が大きく異なる溶媒であり、ポリマーに対する溶解力が高い/強い溶媒を良溶媒として、低い/弱いあるいはほとんど溶解力を持たない溶媒を貧溶媒として、適宜選択され、組み合わせて使用される。
【0029】
本発明における良溶媒は、先に説明した2種以上のポリマーそれぞれに対する溶解度パラメータとの差が5.0MPa1/2以下である溶解度パラメータを有する良溶媒の使用が好ましく、また貧溶媒は、上記のように決定した良溶媒の溶解度パラメータとの差が30MPa1/2以下である貧溶媒を選択すればよい。
【0030】
従って、良溶媒、貧溶媒ともに、選択された2種以上のポリマーの溶解度パラメータに基づいて、上記の条件を満たす良溶媒並びに貧溶媒として適宜選択されるものである。溶解度パラメータを基準とする上記の条件を満たすように決定された良溶媒及び貧溶媒は、互いに良く混和する。その結果、ポリマーを溶解している良溶媒溶液の貧溶媒による希釈が短い時間に均等に行われることとなり、粒径分布の狭い(均一な粒径を有する)多相ポリマー微粒子を作製することができる。
【0031】
また、本発明の製造方法において使用する良溶媒と貧溶媒の組み合わせは、貧溶媒の沸点が良溶媒の沸点より高く、かつその差が20℃以内となるような組み合わせとすることが好ましい。この関係を満たせば、混和した良溶媒と貧溶媒から選択的かつ簡便に良溶媒を除去することが容易になる。
【0032】
本発明で用いることができる具体的な溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF、18.6)、ジメチルエーテル(DME、18.0)、ベンゼン(18.8)、トルエン(18.2)、ヘキサン(7.3)、クロロホルム(19.0)、アセトン(20.3)、メタノール(29.7)、エタノール(26)、水(47.9)、ジメチルホルムアミド(DMF、24.8)、ジメチルスルホキシド(DMSO、29.7)、ジオキサン(16.2)、アセトニトリル(24.3)、1-プロパノール(24.3)、イソプロパノール(23.5)などを例示することができる。なお、括弧内の数値は各溶媒の溶解度パラメータ値(単位はMPa1/2)を示す。
【0033】
これらの中から、使用される2種以上のポリマーに応じて、上記に述べたような性質を有する良溶媒と貧溶媒とを選択すればよい。その際、使用されるポリマーの各種溶媒に対する溶解度パラメータのデータ、溶媒間の相溶性データ、沸点等の既知のデータを収集あるいは確認し、これらを考慮することが望ましい。
【0034】
2種以上のポリマーとそれらに対する良溶媒と貧溶媒の組み合わせの例としては、PEGとNIPAMに対して水(良溶媒)とDMSO又は1-プロパノール(いずれも貧溶媒)、ポリイソプレンとポリスチレンに対してTHF(良溶媒)と水(貧溶媒)などを挙げることができるが、これらには限定されない。
【0035】
良溶媒に溶解される2種以上のポリマーの量はそれぞれのポリマーの飽和濃度以下であれば特に限定されないが、飽和濃度~飽和濃度の1/100程度の濃度とすることが好ましい。
【0036】
また、2種以上のポリマーを溶解している良溶媒溶液に添加される貧溶媒の量は、2種以上のポリマーの種類、良溶媒および貧溶媒の種類、又は製造される微粒子の粒径などを考慮して、適宜選択することができるが、一般的には、良溶媒溶液の量に対して0.5~10倍の量の貧溶媒を添加することができる。
【0037】
2種以上のポリマーを溶解している良溶媒溶液への貧溶媒の添加速度は特に限定されず、通常の実験操作に従って添加すればよい。良溶媒溶液における2種以上のポリマーの濃度にもよるが、(液体体積)×10/分以上の時間をかけることが望ましい。また、本発明の微粒子の製造を行う際の温度は、使用する溶媒の沸点を考慮して定めればよいが、概ね0~90℃の任意の温度で行うことができ、好ましくは室温で行うことができる。
【0038】
本発明の方法を構成する工程2)では、工程1)で調製された良溶媒と貧溶媒との混合溶液から良溶媒が除去される。
【0039】
飽くまで推論ではあるが、本発明の製造方法における基本的な物理化学的現象は、2種以上のポリマーを溶解している良溶媒溶液に相溶な貧溶媒が加えられて良溶媒溶液が希釈されることで、急激な溶質(ポリマー)の過飽和状態が生じ、このときの溶液濃度の揺らぎによって核となる粒子が形成され、さらにそれが成長することで一定の大きさを持った粒子が調製される、というものと考えることができる。ここで、2種以上のポリマーを溶解している良溶媒溶液を貧溶媒で希釈すれば、2種以上のポリマーはそれぞれ別個独立に溶液濃度の揺らぎによって核となる粒子を形成し、それらが成長して微粒子を形成することで、単一ポリマーからなる2種以上の微粒子が製造されるものと期待された。しかしながら、全く意外なことに、溶解度パラメータ差が0.1MPa1/2以上10MPa1/2以下となるような複数のポリマーを選択すること、ならびにこの選択された2種以上のポリマーの溶解度パラメータによって定めることのできる良溶媒と貧溶媒とを利用することで、2種以上のポリマーが互いに分離した相を形成しつつも、互いに別個独立の粒子を形成することなく、各ポリマーよりなる複数の相を有する多相ポリマー微粒子を製造することができることが明らかになった。
【0040】
この良溶媒を除去することによって、前記に説明した多相ポリマー微粒子が形成される。多相ポリマー微粒子の粒径は、1nm~1000μm、好ましくは10nm~100μmである。この微粒子の粒径は、2種以上のポリマーの良溶媒溶液における濃度、及び添加する貧溶媒の量(良溶媒の量に対する比率)を調整することによって制御することができる。また、良溶媒溶液の希釈を短い時間に均等に行うことによって、より粒径分布の狭い多相ポリマー微粒子を作製することができる。
【0041】
良溶媒は、大量の貧溶媒を添加して希釈率を高めることで実質的に除去することも可能であるが、良溶媒を除去する簡便な方法は、良溶媒と貧溶媒の普天の違いを利用して、良溶媒を留去することである。特に、2種以上のポリマーを溶解している良溶媒溶液に貧溶媒を混合した後、良溶媒を減圧下で急速に除去するという比較的簡便な操作によって、さらに細かい粒径と均一な粒径分布を有する多相ポリマー微粒子を製造することが可能であり、よって次工程3)で製造される異方性ポリマー微粒子の粒径や粒径分布をさらに細かくすることができる。
【0042】
減圧の程度は、10-3Pa~10kPa、好ましくは10Pa~1kPaとすればよい。これは、例えばロータリーエバポレーターや減圧ポンプ、その他の一般的な減圧用機器を用いて再現できる条件である。従って、本発明の製造方法は超真空状態を維持するための大掛かりな設備などを特に必要とせず、実験室レベルにおいても、工業的生産レベルにおいても、容易に本発明を実施することができる。
【0043】
また、かかる減圧下での良溶媒の留去は、減圧開始から最長で3時間以内に終了させることが望ましい。具体的には、除去しようとする良溶媒の総容積100%について、毎秒0.01容積%以上の割合で良溶媒を留去することが望ましい。良溶媒の総体積が比較的小さい場合には、その留去は実質的に瞬時に終了することも可能である。また、良溶媒の総容積が大きいために、そのままでは1時間以内での留去が事実上困難であるような場合には、貧溶媒を加えた後の溶液を適当な量に分画して、それぞれの画分について溶媒除去を行なえばよい。
【0044】
この減圧下での良溶媒の留去を行うことにより、それを行わない場合に比べて、多相ポリマー微粒子の粒径は10~50%ほどさらに小さくなる。また、その微粒子の粒度分布の標準偏差も10%程度小さくなり、より均一な粒径を有する微粒子を製造することができる。
【0045】
また、留去による本発明の工程2)は、除去すべき溶媒の量にも依存するが、概ね数分から2、3時間で貧溶媒と良溶媒との混合溶液から多相ポリマー微粒子を回収することができる。これにより、多相ポリマー微粒子の製造効率が飛躍的に高まり、その結果、異方性ポリマー微粒子の工業的大量生産を可能とすることができる。
【0046】
本発明の方法を構成する工程3)では、多相ポリマー微粒子を形成する一部のポリマーが選択的に除去される。工程2)で得られる貧溶媒中の多相ポリマー微粒子における各ポリマー相は固化した状態にある。この相の一つあるいは2つ以上を選択的に除去すれば、除去された相が占めていた空間を欠いた形状からなる、異方性ポリマー微粒子が形成される。
【0047】
2種のポリマーからなる多相(2相)ポリマー微粒子をモデルにした本工程3)における現象を模式的に図2に示す。このモデルにおける2相ポリマー微粒子は、2種のポリマーがほぼ1:1の割合で使用され、それぞれがほば半球状の相を形成しつつ、全体でほぼ球形の2相ポリマー微粒子を形成している。ここから、例えば一方のポリマーのみを選択的に除去すれば、もう一方のポリマーからなる半球状(異方性)のポリマー微粒子を得ることが出来る。多相ポリマー微粒子を形成するポリマーの種類が3~n種類である場合には、選択的に除去され得るポリマーは1~n-1種類とすることができる。
【0048】
また、図1aの1に示された球形微粒子の内側と外側にそれぞれの相が形成されている場合、すなわち一方の相を他方の相が包み込んだ形態にある多相ポリマー微粒子の場合は、内側に層を形成しているポリマーを選択的に除去することで、内部が空洞であるポリマー微粒子を得ることができる。本発明にいう異方性ポリマー微粒子には、かかる内部が空洞であるポリマー微粒子も包含される。
【0049】
多相ポリマー微粒子から一部のポリマーを選択的に除去する方法には、ポリマー間の融点の差を利用した熱処理、溶媒に対する溶解度の差を利用した溶媒処理、オゾン酸化、あるいはプラズマ処理などを挙げることができる。特に融点差を利用した熱処理、溶解度の差を利用した溶媒処理が好ましい。一部のポリマーを選択的に除去するための溶媒は、多相ポリマー微粒子を形成している各ポリマーの溶解度と当該溶媒の溶解度パラメータ差を考慮して選択される。すなわち、除去しようとするポリマーと溶媒との溶解度パラメータ差が1MPa1/2以内であり、かつ微粒子として回収しようとするポリマーと溶媒との溶解度パラメータ差が1よりも大きいという条件を満たす溶媒を選択すればよい。例えば、多相ポリマー微粒子を形成しているポリマーがポリイソプレンとポリスチレンである場合、ポリイソプレンを選択的に溶解するにはヘキサンを溶媒として使用することができる。
【0050】
また、NIPAMの様に下限臨界共溶温度(LCST)を有するポリマーは、LCSTを超えた温度で疎水性が上がり、その結果溶解度パラメータが大きく下がる。そのため、この様なポリマーを利用して多相ポリマー微粒子を形成する場合には、かかるポリマーのLCSTを越えた温度でポリマーの選択的な除去を行うことが有利である。
【0051】
本発明の方法は、上記の工程1)~3)に加えて、工程3)で得られる異方性ポリマー微粒子を構成することになるポリマーの分子間に架橋を形成する工程2)’を、工程2)と工程3)の間に含むことができる。この工程2)’は、工程2)で得られる多相ポリマー微粒子から一部のポリマーを選択的に除去する工程3)に先だち、最終的に製造される異方性ポリマー微粒子を構成するポリマー分子間に架橋を形成させる工程である。この操作は、工程3)における一部のポリマーの選択的除去操作から、回収されるポリマー微粒子の形状を安定に維持する、また工程3)における一部のポリマーの選択的除去操作の選択の幅を広げるなどの利点を有する。
【0052】
架橋構造とその形成反応は、異方性ポリマー微粒子を構成するポリマーや多相ポリマー微粒子中に共存する他のポリマーの種類を考慮して、異方性ポリマー微粒子を構成するポリマーの分子間に選択的に形成し得る様な架橋構造とその形成反応を決定すればよく、またその様な決定は当業者が適宜行うことができる。例えば、異方性ポリマー微粒子を構成することになるポリマーが不飽和結合を有するポリマーである場合、多相ポリマー微粒子中の当該不飽和結合とOsO4、RuO4あるいは式Iで表される二官能性エポキシ樹脂とを反応させて架橋を形成させることができる。
【化1】
JP0005239004B2_000002t.gif

【0053】
(式中のRはビスフェノールA誘導体またはその重合体を示す)
OsO4、RuO4あるいは前記式Iで表される二官能性エポキシ樹脂の多相ポリマー微粒子に対する添加量は、工程1)2)で形成される多相ポリマー微粒子中に存在する不飽和結合に対して、モル比で同程度もしくは過剰量とすればよい。また、架橋形成反応の処理温度や時間等に格別の制限はないが、好ましくは20℃~100℃で0.05時間~10時間の範囲で設定することができる。二官能性エポキシ樹脂における架橋反応は、脂肪族アミンを添加して開始させることができる。また、OsO4、RuO4あるいは前記式Iで表される二官能性エポキシ樹脂の他にも、塩化パラジウム(PdCl2)、塩化金酸(HAuCl4)、硫黄等も架橋剤として使用することができる。
【0054】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0055】
ポリスチレン(Mn=17,000、Mw/Mn=1.03、Polymer Source社製、溶解度パラメータは18MPa1/2)とポリイソプレン(Mn=12,000、Mw/Mn=1.04、Polymer Source社製、溶解度パラメータは16~17MPa1/2)を、重量比1:1で混合し、THF(溶解度パラメータは18.6MPa1/2)に溶解して0.1mg/mlの溶液1mlを調製した。
【0056】
この溶液に1.0ml/秒の速度で水(溶解度パラメータは47.9MPa1/2)2mlを攪拌しながら加えた。全量の水を加えた後、攪拌を止め、常温常圧でTHFを蒸発させ、2種のポリマーからなる多相ポリマー微粒子を得た。動的光散乱により求めた前記多相ポリマー微粒子の流体力学半径は、中心粒径が約300nmほどであった。
【0057】
多相ポリマー微粒子の分散液約0.2mlをエッペンドルフチューブにとり、0.2%の四酸化オスミウム水溶液約0.2mlを加え、2分間インキュベートした。遠心分離操作(13,000rpm、15分、5℃)によって微粒子を回収し、水分を除去した多相ポリマー微粒子をTHFに加えて攪拌後、超音波処理を行い、再び遠心分離操作を行って沈殿画分(本発明の異方性ポリマー微粒子)を回収した。
【0058】
四酸化オスミウム水溶液で2分間インキュベートした後の多相ポリマー微粒子をコロジオン膜を張った銅TEMグリッド上に滴下し、また最終的に回収された沈殿画分(異方性ポリマー微粒子)をカーボン膜のTEMグリッド上に滴下し、それぞれ乾燥させて、走査型透過電子顕微鏡(STEM、HD-2000、日立製作所製)を用いて観察した。この電子顕微鏡写真を図3(多相ポリマー微粒子)と図4(異方性ポリマー微粒子)に示す。
【0059】
図3は、ポリマーの混合比に応じた量に相当する、四酸化オスミウムによって染色されたポリイソプレンからなる相と、同じく混合比に応じた量に相当する染色されていない相(ポリスチレン相)とを含む微粒子像を示している。また、図4は、図3に示される多相ポリマー微粒子からポリスチレン相が溶解除去されることで形成された、架橋構造を有するポリイソプレンからなる半球状(異方性)のポリマー微粒子を示している。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1a】本発明の多相ポリマー微粒子(2相ポリマー微粒子)の相構造を表す模式図である。
【図1b】本発明の多相ポリマー微粒子(3相ポリマー微粒子)の相構造を表す模式図である。
【図2】本発明の方法における工程3)を模式的に表した図である。
【図3】実施例で調製した多相ポリマー微粒子の電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例で製造した異方性ポリマー微粒子の電子顕微鏡写真である。
Drawing
(In Japanese)【図1a】
0
(In Japanese)【図1b】
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(In Japanese)【図2】
2
(In Japanese)【図3】
3
(In Japanese)【図4】
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