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Specification :(In Japanese)土質貯水構造物の施工方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P4696305
Publication number P2007-239209A
Date of registration Mar 11, 2011
Date of issue Jun 8, 2011
Date of publication of application Sep 20, 2007
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)土質貯水構造物の施工方法
IPC (International Patent Classification) E02B   7/00        (2006.01)
E02B   7/02        (2006.01)
FI (File Index) E02B 7/00 Z
E02B 7/02 A
Number of claims or invention 11
Total pages 11
Application Number P2006-059817
Date of filing Mar 6, 2006
Date of request for substantive examination Feb 26, 2009
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】毛利 栄征
【氏名】堀 俊和
【氏名】松島 健一
Representative (In Japanese)【識別番号】100086852、【弁理士】、【氏名又は名称】相川 守
Examiner (In Japanese)【審査官】西田 秀彦
Document or reference (In Japanese)特開昭61-130514(JP,A)
実公昭46-024833(JP,Y1)
特公昭32-009183(JP,B1)
実開平01-005925(JP,U)
Field of search E02B 7/00
E02B 7/02
E02B 3/04-3/12
E02D 17/18
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
築造された堤体の上部を掘削する第1の工程と、この掘削された上面に所定の引張強度特性を有する第1の保護部材を敷設する第2の工程と、堤体の上面に敷設された第1の保護部材上に盛り土をする第3の工程と、遮水性を有する第2の保護部材を堤体の盛り土された面に敷設し、この第2の保護部材を上記第1の保護部材と接続する第4の工程とを有することを特徴とする土質貯水構造物の施工方法。
【請求項2】
設計プランに基づいて築造される予定の堤体を、上部を残して築造を中断する第1の工程と、上記築造途中の堤体のうち、盛り土される予定の上面に所定の引張強度特性を有する第1の保護部材を敷設する第2の工程と、堤体の上面に敷設された第1の保護部材上に盛り土をし、設計プランに基づいて堤体の築造を完了する第3の工程と、遮水性を有する第2の保護部材を堤体の盛り土された面に敷設し、この第2の保護部材を上記第1の保護部材と接続する第4の工程とを有することを特徴とする土質貯水構造物の施工方法。
【請求項3】
第1の保護部材の端部を堤体の水域側上流斜面と非水域側下流斜面とのうち少なくともいずれか一方に延長することを特徴とする請求項1または2に記載の土質貯水構造物の施工方法。
【請求項4】
第1の保護部材の端部を堤体の上流斜面側法先の地盤と下流斜面側法先の地盤とのうち少なくともいずれか一方に埋設することを特徴とする請求項3に記載の土質貯水構造物の施工方法。
【請求項5】
第2の保護部材の端部を堤体の下流斜面に延長することを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1に記載の土質貯水構造物の施工方法。
【請求項6】
第2の保護部材の端部を堤体の下流斜面側法先の地盤に埋設することを特徴とする請求項5に記載の土質貯水構造物の施工方法。
【請求項7】
第2の保護部材の上面には、舗装が施されることを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか1に記載土質貯水構造物の施工方法。
【請求項8】
第1の保護部材を堤体の上流斜面に延長して敷設した後、浸食防止機能とフィルタ機能とのうち少なくともいずれか一方を有する第3の保護部材を、敷設された第1の保護部材上の、設計洪水水位以下の部位に敷設したことを特徴とする請求項3または4に記載の土質貯水構造物の施工方法。
【請求項9】
第1の保護部材を土木施工用網状部材により構成し、第2の保護部材を所定の引張強度特性を有する土木施工用網状部材に遮水性シート部材を一体に取り付けて構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の土質貯水構造物の施工方法。
【請求項10】
第3の保護部材を、透水性を有するシート部材に所定の引張強度特性を有する土木施工用網状部材を一体に取り付けて構成したことを特徴とする請求項8に記載の土質貯水構造物の施工方法。
【請求項11】
第3の保護部材を、粒状のフィルタ材により構成するとともに、第1の保護部材に係止部材を設け、第3の保護部材を係止部材により第1の保護部材に係止させたことを特徴とする請求項8に記載の土質貯水構造物の施工方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、土質貯水構造物の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、土質貯水構造物、すなわち、貯水用の堤体では、上流側斜面(水域側斜面)の浸食防止を図り、豪雨や地震に対する堤体自体の安定性を高めるようにすることが求められる。土質貯水構造物が損傷する原因として、貯水の波浪や浸透水による上流斜面の浸食、あるいは地震や豪雨による堤体のすべりがある。特に、農業用のため池は全国におよそ21万個存在し、老朽化のために上記損傷が進んでおり、早急な改修が求められている。従来、係る改修の施工方法として、張りブロック工法やリップラップ工法(特許文献1参照)などが知られている。張りブロック工法は、上流側斜面にブロックを敷設し、浸食防止を図るものである。リップラップ工法も同様に浸食防止を図るものであり、斜面をリップラップ材(ロック材)で覆い、堤体上部から流動性の高いコンクリートを流し、コンクリートをリップラップ材間の空隙に充填するようにしている。
【0003】

【特許文献1】特開平8-177034号公報(第2-3頁、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の張りブロック工法やリップラップ工法では、浸食に対する上流側斜面保護のみをその目的とするため、堤体の安定性を向上させるためには、堤体上流側および下流側の傾斜勾配を緩くしなければならず、堤体が長大化してしまうという問題があった。また、上記従来の工法では、目詰まりが発生した場合、メンテナンスを行うことが困難になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、堤体を長大化させることなく安定性を容易に確保でき、しかもメンテナンスが容易な土質貯水構造物の施工方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る土質貯水構造物の施工方法は、築造された堤体の上部を掘削する第1の工程と、この掘削された上面に所定の引張強度特性を有する第1の保護部材を敷設する第2の工程と、堤体の上面に敷設された第1の保護部材上に盛り土をする第3の工程と、遮水性を有する第2の保護部材を堤体の盛り土された面に敷設し、この第2の保護部材を上記第1の保護部材と接続する第4の工程とを有することを特徴とするものである。
【0007】
請求項1に係る土質貯水構造物の施工方法では、築造された堤体の上部を掘削する第1の工程と、この掘削された上面に所定の引張強度特性を有する第1の保護部材を敷設する第2の工程と、堤体の上面に敷設された第1の保護部材上に盛り土をする第3の工程と、遮水性を有する第2の保護部材を堤体の盛り土された面に敷設し、この第2の保護部材を上記第1の保護部材と接続する第4の工程とを有することにより、堤体は上部が掘削された後、上面に第1の保護部材が敷設され、この第1の保護部材上に盛り土が施される。そして、この盛り土された面に第2の保護部材が敷設されて第1および第2の保護部材が接続されるので、盛り土は第2の保護部材と第1の保護部材とにより包み込まれ、堤体上部の土が両保護部材間に挟み込まれる。このため、堤体全体の安定性が向上する。
【0008】
請求項2に係る土質貯水構造物の施工方法は、設計プランに基づいて築造される予定の堤体を、上部を残して築造を中断する第1の工程と、上記築造途中の堤体のうち、盛り土される予定の上面に所定の引張強度特性を有する第1の保護部材を敷設する第2の工程と、堤体の上面に敷設された第1の保護部材上に盛り土をし、設計プランに基づいて堤体の築造を完了する第3の工程と、遮水性を有する第2の保護部材を堤体の盛り土された面に敷設し、この第2の保護部材を上記第1の保護部材と接続する第4の工程とを有することを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に係る土質貯水構造物の施工方法では、設計プランに基づいて築造される予定の堤体を、上部を残して築造を中断する第1の工程と、上記築造途中の堤体のうち、盛り土される予定の上面に所定の引張強度特性を有する第1の保護部材を敷設する第2の工程と、堤体の上面に敷設された第1の保護部材上に盛り土をし、設計プランに基づいて堤体の築造を完了する第3の工程と、遮水性を有する第2の保護部材を堤体の盛り土された面に敷設し、この第2の保護部材を上記第1の保護部材と接続する第4の工程とを有することにより、堤体は築造完了前に上部を残して一旦築造が止められた後、上面に第1の保護部材が敷設され、この第1の保護部材上に盛り土が施される。そして、この盛り土された面に第2の保護部材が敷設されて第1および第2の保護部材が接続されるので、盛り土は第2の保護部材と第1の保護部材とより包み込まれ、堤体上部の土が両保護部材間に挟み込まれる。このため、堤体全体の安定性が向上する。
【0010】
請求項3に係る土質貯水構造物の施工方法では、第1の保護部材の端部を堤体の水域側上流斜面と非水域側下流斜面とのうち少なくともいずれか一方に延長することを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に係る土質貯水構造物の施工方法では、第1の保護部材の端部を堤体の水域側上流斜面と非水域側下流斜面とのうち少なくともいずれか一方に延長することにより、第1の保護部材の端部を堤体の水域側上流斜面に延長すると、第2の保護部材と接続しやすくなるとともに上流斜面を保護することができる。また、その延長部分に上流斜面の損傷を防止する部材を取り付けやすくなる。第1の保護部材の端部を堤体の非水域側下流斜面に延長すると、第2の保護部材と接続しやすくなるとともに下流斜面を保護することができる。
【0012】
請求項4に係る土質貯水構造物の施工方法では、第1の保護部材の端部を堤体の上流斜面側法先の地盤と下流斜面側法先の地盤とのうち少なくともいずれか一方に埋設することを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に係る土質貯水構造物の施工方法では、第1の保護部材の端部を堤体の上流斜面側法先の地盤と下流斜面側法先の地盤とのうち少なくともいずれか一方に埋設することにより、地震や豪雨に対する堤体の安定性が向上する。また、洪水時の越流に対し浸食を防止することができる。
【0014】
請求項5に係る土質貯水構造物の施工方法は、第2の保護部材の端部を堤体の下流斜面に延長することを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に係る土質貯水構造物の施工方法では、第2の保護部材の端部を堤体の下流斜面に延長することにより、遮水面積を増大させ、堤体への雨水の浸透を減少させることができ、堤体の安定性が向上する。
【0016】
請求項6に係る土質貯水構造物の施工方法は、第2の保護部材の端部を堤体の下流斜面側法先の地盤に埋設することを特徴とするものである。
【0017】
請求項6に係る土質貯水構造物の施工方法では、第2の保護部材の端部を堤体の下流斜面側法先の地盤に埋設することにより、地震や豪雨に対する堤体の安定性が向上する。また、洪水時の越流に対し浸食を防止することができる。
【0018】
請求項7に係る土質貯水構造物の施工方法は、第2の保護部材の上面には、舗装が施されることを特徴とするものである。
【0019】
請求項7に係る土質貯水構造物の施工方法では、第2の保護部材の上面には、舗装が施されることにより、洪水時の越流に対し浸食を防止することができる。
【0020】
請求項8に係る土質貯水構造物の施工方法は、第1の保護部材を堤体の上流斜面に延長して敷設した後、浸食防止機能とフィルタ機能とのうち少なくともいずれか一方を有する第3の保護部材を、敷設された第1の保護部材上の、設計洪水水位以下の部位に敷設したことを特徴とするものである。
【0021】
請求項8に係る土質貯水構造物の施工方法では、第1の保護部材を堤体の上流斜面に延長して敷設した後、浸食防止機能とフィルタ機能とのうち少なくともいずれか一方を有する第3の保護部材を、敷設された第1の保護部材上の、設計洪水水位以下の部位に敷設したことにより、第3の保護部材が浸食防止特性を有する場合、貯水の波浪や浸透水による上流斜面の浸食が防止される。第3の保護部材がフィルタ特性を有する場合、水質浄化や植物の植生を促すことができる。第3の保護部材に目詰まりが発生した場合、第3の保護部材を交換するだけで済みメンテナンスが容易になる。
【0022】
請求項9に係る土質貯水構造物の施工方法は、第1の保護部材を土木施工用網状部材により構成し、第2の保護部材を所定の引張強度特性を有する土木施工用網状部材に遮水性シート部材を一体に取り付けて構成したことを特徴とするものである。
【0023】
請求項9に係る土質貯水構造物の施工方法では、第1の保護部材を土木施工用網状部材により構成し、第2の保護部材を所定の引張強度特性を有する土木施工用網状部材に遮水性シート部材を一体に取り付けて構成したことにより、従来のようなコンクリートブロックやロック材を用いた工法に比較して作業効率が向上する。
【0024】
請求項10に係る土質貯水構造物の施工方法は、第3の保護部材を、透水性を有するシート部材に所定の引張強度特性を有する土木施工用網状部材を一体に取り付けて構成したことを特徴とするものである。
【0025】
請求項10に係る土質貯水構造物の施工方法では、第3の保護部材を、透水性を有するシート部材に所定の引張強度特性を有する土木施工用網状部材を一体に取り付けて構成したことにより、浸食防止性能とフィルタ性能を向上させることができ、目詰まりしにくくなる。
【0026】
請求項11に係る土質貯水構造物の施工方法は、第3の保護部材を、粒状のフィルタ材により構成するとともに、第1の保護部材に係止部材を設け、第3の保護部材を係止部材により第1の保護部材に係止させたことを特徴とするものである。
【0027】
請求項11に係る土質貯水構造物の施工方法では、第3の保護部材を、粒状の透過材により構成するとともに、第1の保護部材に係止部材を設け、第3の保護部材を係止部材により第1の保護部材に係止させたことにより、第3の保護部材の交換が容易になる。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に係る土質貯水構造物の施工方法では、築造された堤体の上部を掘削する第1の工程と、この掘削された上面に所定の引張強度特性を有する第1の保護部材を敷設する第2の工程と、堤体の上面に敷設された第1の保護部材上に盛り土をする第3の工程と、遮水性を有する第2の保護部材を堤体の盛り土された面に敷設し、この第2の保護部材を上記第1の保護部材と接続する第4の工程とを有するようにしているので、築造された既成の堤体に対し、手間をかけることなく簡素な構成で堤体全体の安定性を向上させることができ、堤体をコンパクト化することができる。
【0029】
請求項2に係る土質貯水構造物の施工方法では、設計プランに基づいて築造される予定の堤体を、上部を残して築造を中断する第1の工程と、上記築造途中の堤体のうち、盛り土される予定の上面に所定の引張強度特性を有する第1の保護部材を敷設する第2の工程と、堤体の上面に敷設された第1の保護部材上に盛り土をし、設計プランに基づいて堤体の築造を完了する第3の工程と、遮水性を有する第2の保護部材を堤体の盛り土された面に敷設し、この第2の保護部材を上記第1の保護部材と接続する第4の工程とを有するようにしているので、築造中に手間をかけることなく簡素な構成で堤体全体の安定性を向上させることができ、堤体をコンパクト化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
堤体を長大化させずに安定性を確保し、しかもメンテナンスが容易な土質貯水構造物の施工方法を得るという目的を、築造された既成の堤体の上部を掘削するか、あるいは、設計プランに基づいて築造される予定の堤体を上部を残して築造を中断した状態とする、すなわち、上部が欠落した状態の堤体に対し、この堤体の上面に所定の引張強度特性を有する第1の保護部材を敷設し、次に、堤体の上面に敷設された第1の保護部材上に盛り土をし、次に、遮水性を有する第2の保護部材を堤体の盛り土された面に敷設し、次に、この第2の保護部材を上記第1の保護部材と接続することにより実現した。
【実施例1】
【0031】
以下図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は、本発明の第1の実施例に係る土質貯水構造物の施工方法により築造された堤体の断面図、図2はその堤体の一部破断斜視図、図3の(A)ないし(F)はそれぞれ、この実施例に係る土質貯水構造物の施工方法により堤体を築造する工程を順を追って示す説明図である。堤体(土質貯水構造物)2は、上流側が貯水された水域に臨み、下流側は非水域に臨むようになっている。堤体2は、予め築造され上流側に水が貯められた既成の堤体と、まだ築造されておらず、設計プランに基づいて築造される予定の、貯水水域が存在しない堤体との2通りがあり、第1の実施例では、すでに上流側に水域がある既成の堤体2について、後述する第2の実施例では、これから築造される予定の堤体2についてそれぞれ説明する。
【0032】
堤体2の施工にあたり、予め、所定の引張強度特性を有するジオグリッド(第1の保護部材)5と、遮水性を有する遮水材(第2の保護部材)6と、浸食防止機能とフィルタ機能とを有する透水保護材(第3の保護部材)7とを準備する。ジオグリッド5は、引張抵抗性のある構成要素が連結した規則的な格子構造からなるシート状のもので、主に高分子材料からなる土木施工用の製品である。この第1の保護部材は、一例にジオグリッドを示しているが、これに限られるものではなく、シート状で、通水性を有し、所定の引張抵抗性のある材料であればよいことはいうまでもない。遮水材6は、ジオメンブレンにジオグリッドを一体に取り付けて構成される。ジオメンブレンは、シート状または帯状の高分子材料からなる土木用途に使用される遮水性を有する材料である。透水保護材7には、例えば、ジオテキスタイルが用いられる。ジオテキスタイル7は、織布、不織布または編物からなり、土木用途に使用される透水性(フィルタ性)を有するシート状材料である。透水保護材7は、ジオテキスタイルに限られるものではなく、浸食防止機能とフィルタ機能とを有するシート状材料であればよいことはいうまでもない。また、この透水保護材7は必ずしも浸食防止機能とフィルタ機能との両方を備えていなければならないものではなく、現場の状況に応じて、あるいは、コストに応じて浸食防止機能とフィルタ機能とのいずれか一方を備えた材料を用いてもよい。図1および図2では、理解を助けるために、ジオグリッド5、遮水材6および透水保護材7の厚さを誇張して示している。
【0033】
既成の堤体2は、図3の(A)に示すように、上流側傾斜面2Aが水域3に、下流側傾斜面2Bが非水域4にそれぞれ臨んでいる。まず初めに、水域3に貯められた水を排出した後、堤体2の上部を所定のレベルL1まで掘削し、平坦な掘削面(上面)8を形成する(第1の工程、図3の(B)参照)。この所定のレベルL1は、予め定められた堤体2の設計洪水水位より上方の位置となっている。次に、この掘削された堤体2の掘削面8にシート状のジオグリッド5を敷設する(第2の工程、図3の(C)参照)。ジオグリッド5の上下流側両端部は、掘削面8の上流側と下流側との両側端を結ぶ長さより長く形成されており、敷設時、ジオグリッド5の下流側一端部5Bを下流側傾斜面2Bの途中の位置P1まで、上流側他端部5Aを上流側傾斜面2Aの下端位置P2まで延長して敷設する。ジオグリッド5は、上流側傾斜面2Aに敷かれた部分と下流側傾斜面2Bに敷かれた部分とにずれ防止用のピン9を打って敷設されるようになっている。なお、このとき、上下流側両端がより長寸に形成されたジオグリッドを用い、ジオグリッド5の下流側一端を下流側傾斜面2Bの下流側法先部P3まで延長するようにしてもよい
【0034】
次に、掘削面8に敷設されたジオグリッド5上に、前記第1の工程で発生した掘削土S1により盛り土をし、掘削面8に敷設されたジオグリッド5を土中に埋め込む(第3の工程、図3の(D)参照)。次に、シート状遮水材6を、盛り土S1の上に被せ、上流側一端部6Aを上流側傾斜面2Aに露出されたジオグリッド5の上端部5Cと連結させ、下流側他端部6Bを下流側傾斜面2Bに露出されたジオグリッド5の露出面に重ね合わせて連結する(第4の工程、図3の(E)参照)。そして、遮水材6の上面平坦部(天端表面)6Cには、簡易舗装(図示せず)を施す。なお、簡易舗装は、上面平坦部6Cだけでなく、遮水材6の斜面にも施すようにしてもよい。このように、盛り土S1は遮水材6とジオグリッド5とにより包み込まれ、堤体2上部の土S1が両部材5、6間に挟み込まれる。このため、堤体2上部には遮水部が形成され、堤体2への雨水の浸透を減少させることができ、堤体2の安定性が向上する。
【0035】
次に、上流側傾斜面2Aに露出されたジオグリッド5の露出面5Dに、シート状の透水保護材7を取り外し可能に敷設する(第5の工程、図3の(F)参照)。この透水保護材7は、堤体2の設計洪水水位以下の部位に敷設される。上流側傾斜面2Aのジオグリッド5上に透水保護材7を敷設することにより、貯水の波浪や浸透水による堤体2の上流斜面2Aの浸食が防止されるとともに、水質浄化や植物の植生を促すことができる。また、たとえ、透水保護材7に目詰まりが発生しても、ジオグリッド5上の透水保護材7を交換するだけで済みメンテナンスが容易になる。
【0036】
このように、上記第1の実施例に係る土質貯水構造物の施工方法では、盛り土S1を遮水材6とジオグリッド5とにより包み込み、堤体2上部の盛り土S1をこれら両部材5、6間に挟み込むようにしているので、堤体2上部には遮水部が形成され、堤体2への雨水の浸透を減少させることができ、堤体2の安定性が向上する。また、上流側傾斜面2Aのジオグリッド5上に透水保護材7を敷設するようにしているので、堤体2の上流斜面2Aの浸食が防止されるとともに、たとえ、透水保護材7に目詰まりが発生しても、メンテナンスが容易になる。さらに、堤体2の上部を掘削するだけで済むので、わずかな掘削量で施工することことができ、作業の短縮化やコストダウンを図ることができる。また、透水保護材7のフィルタ材料を選択することにより、上流斜面の緑化や貯水の浄化を行うこともできる。
【実施例2】
【0037】
次に、本発明の第2の実施例に係る土質貯水構造物の施工方法について説明する。第2の実施例に係る土質貯水構造物の施工方法は、上記第1の実施例に係る施工方法が、第1の工程で、すでに築造された既成の堤体2の上部を掘削するようにしているのに対し、本実施例では、第1の工程で、設計プランに基づいて築造される予定の堤体を、築造途中で上部を残して所定のレベルL1の高さで築造を中断し、上部が欠けた状態の堤体102(図3の(B)に示す状態の堤体2に対応する。)とする点が異なっている以外は、上記第1の実施例に係る施工方法とほぼ同一の工程を備えている。すなわち、第2の実施例に係る土質貯水構造物の施工方法では、堤体102の築造途中で、上面8が設計洪水水位以上の所定の高さL1に達すると、ジオグリッド5を敷設し(第2の工程(第1の実施例の第2の工程参照)、次に、ジオグリッド5上に、運び込まれた土砂S2により盛り土をし、ジオグリッド5を土中に埋め込む(第3の工程、(第1の実施例の第3の工程参照))。次に、遮水材6を、盛り土S2の上に被せ、遮水材6の上流側一端部6Aを、上流側傾斜面2Aに露出されたジオグリッド5の上端部5Cと連結させ、下流側他端部6Bを、下流側傾斜面2Bに露出されたジオグリッド5の露出面に重ね合わせて連結し(第4の工程、(第1の実施例の第4の工程参照))、次に、上流側傾斜面2Aに露出されたジオグリッド5の露出面5Dに、シート状透水保護材7を敷設するようになっている(第5の工程、(第1の実施例の第5の工程参照))。
【実施例3】
【0038】
図4の(A)、(B)は、上記第1および第2の実施例の土質貯水構造物の施工方法の第1の変形例に係るもので、上記第1および第2の実施例の土質貯水構造物の施工方法では、第5の工程で上流側傾斜面2Aに露出されたジオグリッド5の露出面5Dに、ジオテキスタイルからなる透水保護材7を敷設するようにしているのに対し、この第1の変形例に係る施工方法では、透水保護材7の上面に、ジオグリッドなどの網状の面材料10を敷設して固定するようにしている。このように構成することにより、透水保護材7の強度を向上させ、長寿命化を図ることができる。
【実施例4】
【0039】
図5は、上記第1および第2の実施例の土質貯水構造物の施工方法の第2の変形例に係るもので、上記第1の変形例では、第5の工程で上流側傾斜面2Aに露出されたジオグリッド5の露出面5Dに、ジオテキスタイルからなる透水保護材7を敷設し、さらに、この透水保護材7の上面に、ジオグリッドなどの網状の面材料10を敷設して固定するようにしているのに対し、この第2の変形例に係る施工方法では、上流側傾斜面2Aに露出したジオグリッド5にフック(係止部材)11を取り付け、フック11間にフィルター機能を有する粒状材料12を投入し、これら粒状材料12をフック11で係止するようにしている。この粒状材料12は水質浄化材や水草の培養土により構成され、景観や環境に配慮した斜面保護が可能となる。たとえ目詰まりが発生しても、粒状材料11を交換するだけで済み、メンテナンスが容易になる。
【実施例5】
【0040】
図6は、第3の実施例の土質貯水構造物の施工方法に係るもので、上記第1および第2の実施例に係る土質貯水構造物の施工方法では、ジオグリッド5の上流側他端部5Aを上流側傾斜面2Aの下端位置P2まで延長し、遮水材6の下流側他端部6Bを、下流側傾斜面2Bに露出されたジオグリッド5の露出面に重ね合わせて連結するようにしているのに対し、第3の実施例では、ジオグリッド35の上流側他端部35Aを上流側傾斜面2Aの下端位置P2よりさらに延長するとともに、この他端部35Aを、堤体2、102の上流側法先部P4の基礎地盤内に埋設するとともに、遮水材36の下流側他端部36Bを延長し、下流側法先部P3の基礎地盤内に埋設するようにしている。このように構成することにより、地震や豪雨に対する安定性を飛躍的に向上させることができ、また、豪雨時などの越流に対する浸食を防止することができる。さらに、ジオグリッド35の下流側一端部35Bを下流側に延長して下流側法先部P3の基礎地盤内に埋設してもよいし、遮水材36の上流側一端部36Aを上流側に延長し、上流側法先部P4の基礎地盤内に埋設するようにしてもよい。また、ジオグリッド35の両端35A、35Bを両法先部P4、P3に埋設するようにしてもよいし、遮水材36の両端36A、36Bを両法先部P4、P3に埋設するようにしてもよい。
【0041】
なお、上記各実施例および各変形例で用いられるジオテキスタイルは、織布、不織布および編物、あるいはジオグリッド、ジオネットおよびメンブレンなどジオテキスタイル関連製品を含むものと定義する。例えば、種類として、ジオウォーブン(織物、織布、geowoven, woven geotextile)、ジオノンウォーブン(不織布、geononwoven, nonwoven geotextile)、ジオニット(緬物、geoknitted, knitted geotextile)、ジオグリッド(geogrid)、ジオネット(geonet)、ジオテキスタイル関連製品(geotextile-related product)、ジオコンポジット(複合製品、geocomposite)等がある。ジオウォーブンとは、縦糸と横糸を用いて織った織物で、土木などの用途に使用される製品である。ジオノンウォーブンとは、規則的または不規則的に配列した繊維を製織せずに機械的、化学的または熱的方法によって結合した不織布で、土木などの用途に使用される製品である。繊維の長さにより長い繊維と短繊維のものに大別できる。ジオユニットとは、連続した糸、繊維などによって緬目で構成した編物で、土木などの用途に使用される製品である。ジオグリッドとは、引張抵抗性のある構成要素が連結した規則的な格子構造からなるシート状のもので、主に高分子材料からなる製品である。ジオネットとは、開口部が構成要素の占める面積より大きい網目構造を持つシート状のもので、土木などの用途に使用される高分子材料の製品である。交点部は結節あるいは一体となっており、一般のジオウォーブン、ジオニットとは区別されている。ジオテキスタイル関連製品とは、狭義のジオテキスタイル、ジオグリッドおよびジオネット以外で、シート状または帯状の高分子材料からなる土木用途に使用される製品である。ジオコンポジットとは、狭義のジオテキスタイル、ジオグリッド、ジオネットなどを任意に組み合わせて一体とした複合製品である。単一製品の長所をお互い組み合わせて必要な機能を発揮させるため複合されている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1および第2の実施例に係る土質貯水構造物の施工方法により施工された堤体を示す断面である。(実施例1)
【図2】図1の堤体について保護部材を誇張して示す破断斜視図である。
【図3】(A)ないし(F)はそれぞれ、第1の実施例に係る土質貯水構造物の施工方法により堤体を築造する工程を順を追って示す説明図である。(実施例2)
【図4】(A)および(B)はそれぞれ、図1の変形例に係る土質貯水構造物の施工方法により施工された堤体を示す断面図およびその堤体について保護部材を誇張して示す一部破断斜視図である。(実施例3)
【図5】図1の第2の変形例に係る堤体を示す断面図である。(実施例4)
【図6】本発明の第3の実施例に係る土質貯水構造物の施工方法により施工された堤体を示す断面である。(実施例5)
【符号の説明】
【0043】
2、102 堤体
5 ジオグリッド(第1の保護部材)
6 遮水材(第2の保護部材)
8 掘削面(上面)
S1、S2 盛り土
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
5