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Specification :(In Japanese)Th2サイトカイン阻害剤への感受性の検査方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P4972737
Publication number P2007-135489A
Date of registration Apr 20, 2012
Date of issue Jul 11, 2012
Date of publication of application Jun 7, 2007
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)Th2サイトカイン阻害剤への感受性の検査方法
IPC (International Patent Classification) C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
FI (File Index) C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
G01N 33/53 M
Number of claims or invention 11
Total pages 18
Application Number P2005-334787
Date of filing Nov 18, 2005
Date of request for substantive examination Jun 25, 2008
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】近藤 直実
【氏名】松井 永子
【氏名】金子 英雄
【氏名】青木 美奈子
【氏名】近藤 應
Representative (In Japanese)【識別番号】110000110、【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
Examiner (In Japanese)【審査官】柴原 直司
Document or reference (In Japanese)日本小児アレルギー学会誌, (2005.10), 19, [4], p.672(52)
日本小児アレルギー学会誌, (2004), 18, [12], p.151-157
Field of search C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
Th2サイトカイン阻害剤への感受性の検査方法であって、
被験者が有する、ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子のプロモーター領域の-444位であって配列番号1で表される塩基配列の1003位の多型のジェノタイプを決定する工程と、
ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子の決定された前記ジェノタイプに基づいて被験者のTh2サイトカイン阻害剤への感受性を予測する工程と、
を備える、方法。
【請求項2】
決定された前記ジェノタイプがAAであるとき、前記感受性を有すると予測する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、インターロイキン13遺伝子の成熟インターロイキン13タンパク質の110位のアルギニンをコードする部位の多型であり、インターロイキン13遺伝子の389位であって配列番号2で表される塩基配列の433位のジェノタイプを決定する工程と、
前記インターロイキン13遺伝子の決定された前記ジェノタイプに基づいて被験者のTh2サイトカイン阻害剤への感受性を予測する工程と、
を備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
決定された前記ジェノタイプがGGであるとき、前記感受性を有すると予測する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子のプロモーター領域の-444位であって配列番号1で表される塩基配列の1003位の多型A/C及び成熟インターロイキン13タンパク質の110位のアルギニンをコードする部位の多型であり、インターロイキン13遺伝子の389位であって配列番号2で表される塩基配列の433位の塩基の多型G/Aのジェノタイプを決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子の前記多型のジェノタイプがAAであり、前記インターロイキン13遺伝子の前記多型のジェノタイプがGGであるとき、前記感受性を有すると予測する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記被験者が気管支喘息の患者である、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
Th2サイトカイン阻害剤への感受性の検査用のプライマーであって、
被験者が有する、ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子のプロモーター領域の-444位であって配列番号1で表される塩基配列の1003位の多型を含む領域を合成するためのフォーワードプライマーである15以上100以下の塩基長のオリゴヌクレオチドとリバースプライマーである15以上100以下の塩基長のオリゴヌクレオチドとを含む、プライマー
【請求項9】
請求項8に記載のプライマーと、
インターロイキン13遺伝子の成熟インターロイキン13タンパク質の110位のアルギニンをコードする部位の多型であり、インターロイキン13遺伝子の389位であって配列番号2で表される塩基配列の433位の多型を含む領域を合成するためのフォーワードプライマーである15以上100以下の塩基長のオリゴヌクレオチドとリバースプライマーである15以上100以下の塩基長のオリゴヌクレオチドとを含む、Th2サイトカイン阻害剤への感受性検査用プライマーセット。
【請求項10】
Th2サイトカイン阻害剤への感受性の検査用のプローブであって、
被験者が有する、ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子のプロモーター領域の-444位であって配列番号1で表される塩基配列の1003位の多型を含む領域にハイブリダイズする15以上100以下の塩基長のオリゴヌクレオチドを含むプローブ。
【請求項11】
請求項10に記載のプローブと、
被験者が有する、インターロイキン13遺伝子の成熟インターロイキン13タンパク質の110位のアルギニンをコードする部位の多型であり、インターロイキン13遺伝子の389位であって配列番号2で表される塩基配列の433位の多型を含む領域にハイブリダイズする15以上100以下の塩基長のオリゴヌクレオチドを含む、Th2サイトカイン阻害剤への感受性検査用プローブセット。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、Th2サイトカイン阻害剤への感受性の検査方法、該検査方法に用いる核酸分子及び検査キット等に関する。
【背景技術】
【0002】
気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどアレルギー疾患は、近年患者が著しく増大している。現在我が国において30%程度がなんらかのアレルギー疾患を持っているとともに、70%以上がアレルギー疾患に対する何らかの素因を持っているとの報告がある。こうしたアレルギー疾患の素因としては、環境的素因と遺伝的素因とがあるが、これらの素因が絡み合って発症するとされている。
【0003】
現在、抗アレルギー薬としては、メディエーター遊離抑制剤、ヒスタミンH1受容体拮抗薬、トロンボキサン阻害剤、ロイコトリエン拮抗薬、Th2サイトカイン阻害剤があるが、個々の患者において薬剤に対する感受性は大きく異なる場合がある。このため、アレルギー疾患の予防や治療において、試行錯誤的な処方が少なからず生じることとなり、治療上においても医療経済学的にも好ましくない。
【0004】
ここで、トシル酸プラタストなどのTh2サイトカイン阻害剤は、アレルギー性疾患発症に関連の深いIL-4とIL-5がリンパ球から産生されるのを抑制し、IgE抗体産生やケミカルメディエーター遊離を抑制する作用があるとされている(非特許文献1~2)。また、その他多数の作用が報告されている。例えば、好酸球産生抑制作用などの作用も報告されている(非特許文献3)。

【非特許文献1】アレルギー科VOL.4,NO.2 PAGE.206-214,1997
【非特許文献2】Jpn J PharmacolVOL.61,NO.1PAGE.31-39 1993
【非特許文献3】アレルギーVOL.44,NO.3-2 PAGE.375 1995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アレルギー疾患は上記したように多因子疾患であり、Th2サイトカイン阻害剤についてこうした各種の作用機序が明らかであっても、その臨床上の効果に明らかに関連付けることのできる遺伝子多型については報告がないのが現状である。
【0006】
そこで、本発明は、Th2サイトカイン阻害剤への感受性の検査方法、当該検査方法のための核酸分子及び核酸分子を含む検査用キットを提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、Th2サイトカイン阻害剤の効果と遺伝子多型との関係を明らかにするために、Th2サイトカイン阻害剤を投与した気管支喘息患者のうち症状の改善が得られた症例と病状が不変若しくは増悪した症例とについて、ロイコトリエンC4合成遺伝子(LTC4S遺伝子)及びインターロイキン13遺伝子(IL13遺伝子)の遺伝子解析を行った。その結果、これらの遺伝子に関する多型をマーカーとして、Th2サイトカイン阻害剤の感受性を予測できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
従来、遺伝子の多型に基づいてTh2サイトカイン阻害剤への感受性を予測する手法は知られておらず、そのため、実際に投薬してみないとTh2サイトカイン阻害剤に対する感受性の有無を判断することができなかった。したがって、投薬に無駄が生じるおそれもあった。本発明によれば、遺伝子の多型に基づいて、Th2サイトカイン阻害剤への感受性を予測できるため、アレルギー疾患の治療や予防のために効果的な投薬が可能となり、的確な薬剤選択が可能となった。すなわち、本発明によれば、以下の手段が提供される。
【0009】
本発明の一つの形態によれば、Th2サイトカイン阻害剤への感受性の検査方法であって、被験者が有する、ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子及び/又はインターロイキン13遺伝子における多型であって、これら遺伝子の発現を促進する又は抑制する多型のジェノタイプを決定するジェノタイプ決定工程と、前記ジェノタイプ決定工程で決定されたジェノタイプに基づいて被験者のTh2サイトカイン阻害剤への感受性を予測する工程と、を備える、方法が提供される。
また、他の一つの形態によれば、Th2サイトカイン阻害剤への感受性の検査方法であって、被験者が有する、ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子のプロモーター領域の-444位であって配列番号1で表される塩基配列の1003位の多型のジェノタイプを決定する工程と、ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子の決定された前記ジェノタイプに基づいて被験者のTh2サイトカイン阻害剤への感受性を予測する工程と、を備える、方法が提供される。
【0010】
この形態においては、前記多型は一塩基多型であることが好ましい。この態様においては、ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子の多型は、ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子のプロモーター領域の-444位の多型であることが好ましく、ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子のプロモーター領域の-444位の多型がCとAであり、前記ジェノタイプがAAであるとき、前記感受性を有すると予測することができる。また、ロイコトリエンC4合成遺伝子のプロモーター領域の-444位の多型がCとAであり、前記ジェノタイプにCアレルを有するとき、前記感受性を有さないと予測することができる。
【0011】
また、この態様においては、前記インターロイキン13遺伝子の多型は、成熟インターロイキン13タンパク質の110位のアミノ酸をコードする部位の多型であることが好ましく、より好ましくは前記アミノ酸はアルギニンであり、当該アルギニンがグルタミンに置換される多型であり、具体的には、インターロイキン13遺伝子の389位の塩基がGとAである多型であり、前記ジェノタイプがGGであるとき、前記感受性を有すると予測することができる。また、インターロイキン13遺伝子の389位の塩基がGとAである多型であり、前記ジェノタイプにAアレルを有するとき、前記感受性を有しないと予測することができる。
【0012】
さらに、この形態においては、ロイコトリエンC4合成遺伝子のプロモーター領域の-444位の多型A/C及び成熟インターロイキン13タンパク質の110位のアルギニンをコードする部位の多型であり、インターロイキン13遺伝子の389位の塩基の多型G/Aのジェノタイプを決定してもよい。この態様においては、ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子のプロモーター領域の-444位の多型のジェノタイプがAAであり、前記インターロイキン13遺伝子の389位の多型のジェノタイプがGGであるとき、前記感受性を有すると予測することができる。また、ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子のプロモーター領域の-444位の多型のジェノタイプがCアレルを有し、インターロイキン13遺伝子の389位の塩基の多型のジェノタイプがAアレルを有するとき、前記感受性を有さないと予測することができる。
【0013】
さらにまた、この形態においては、前記被験者が気管支喘息の患者とすることができる。
【0014】
本発明の他の一つの形態によれば、Th2サイトカイン阻害剤への感受性の検査用のプライマーであって、被験者が有する、ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子及び/又は成熟インターロイキン13遺伝子における多型であって、これら遺伝子の発現を促進する又は抑制する多型部位を含む領域を合成するオリゴヌクレオチドを含む、プライマーが提供される。この形態においては、前記多型部位が、以下のいずれかであることが好ましい。
(a)ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子のプロモーター領域の-444位の多型
(b)成熟インターロイキン13タンパク質の110位のアルギニンをコードする部位の多型
【0015】
本発明の他の一つの形態によれば、Th2サイトカイン阻害剤への感受性の検査用のプローブであって、被験者が有する、ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子及び/又はインターロイキン13遺伝子における多型であって、これら遺伝子の発現を促進する又は抑制する多型部位を含む領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含むプローブが提供される。この形態においては、前記多型部位が、以下のいずれかに記載の部位であることが好ましい。
(a)ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子のプロモーター領域の-444位の多型
(b)成熟インターロイキン13タンパク質の110位のアルギニンをコードする部位の多型
【0016】
本発明の他の一つの形態によれば、上記プライマー及び上記プローブから選択されるいずれのオリゴヌクレオチドを含む、Th2サイトカイン阻害剤への感受性検査用キットが提供される。
【0017】
なお、本明細書において、多型を特定するために用いられるインターロイキン13遺伝子という語は、インターロイキン13タンパク質をコードするcDNA(メチオニンをコードするATGを含む。)を意味している。したがって、インターロイキン13遺伝子における多型というときには、多型を特定するための遺伝子配列における配列表記は、cDNAの塩基配列となる。なお、こうした特定方法は、多型部位の特定のためにcDNAの塩基配列を利用したものであり、cDNA上において検出される変異のほか、ゲノムDNAやmRNA上においてcDNA上の多型部位に対応する部位における多型は全て本明細書における多型に包含される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、Th2サイトカイン阻害剤への感受性の検査方法であって、被験者が有する、ロイコトリエンC4合成酵素遺伝子(以下、単にLTC4S遺伝子という。)及び/又はインターロイキン13遺伝子(以下、単にIL13遺伝子という。)における多型であって、これら遺伝子の発現を促進する又は抑制する多型のジェノタイプを決定するジェノタイプ決定工程と、前記ジェノタイプ決定工程で決定されたジェノタイプに基づいて被験者のTh2サイトカイン阻害剤への感受性を予測する工程と、を備えている。
【0019】
本発明において検査対象となる遺伝子は、LTC4S遺伝子及びIL13遺伝子から選択される。これらのいずれかの遺伝子であってもよいし、双方であってもよい。また、これらの遺伝子を組み合わせることで精度よくTh2サイトカイン剤に対する被験者の感受性を予測することができる。
【0020】
LTC4S遺伝子及びIL13遺伝子における多型は、これらの遺伝子の発現を促進又は抑制するものが挙げられるが、好ましくは、これらの遺伝子の発現を促進するものである。なお、ここで、遺伝子の発現を促進するとは、正常型ホモの多型よりも、ヘテロ又は変異型ホモの多型において遺伝子の発現を促進することを意味している。また、遺伝子の発現を抑制するとは、正常型ホモの多型よりも、ヘテロ又は変異型ホモの多型において遺伝子の発現を抑制することを意味している。本発明を理論的に拘束するものではないが、LTC4S遺伝子の発現を促進しうる多型を有している場合には、Th2サイトカイン阻害剤への感受性を有さないことが予測される。また、IL13遺伝子の発現を促進しうる多型を有している場合には、Th2サイトカイン阻害剤の感受性を有さないことが予測される。
【0021】
なお、遺伝子多型とTh2サイトカイン阻害剤の感受性との統計学的な関連性の強さは、P値によって評価される。すなわち、実施例に示したP値が小さいものは、Th2サイトカイン阻害剤の感受性との関連性がより強いと言うことができる。
【0022】
本発明において、アレルギーとは、ある種の抗原に感作されている生体に、再度同じ抗原が入った場合に強い反応性を示す状態である。アレルギーは一般にI型~IV型にまで分類されている。また、本発明においてアレルギー性疾患とはこうしたアレルギーによってアレルギー性炎症が生じている状態あるいは疾患を意味している。アレルギー性疾患としては、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、じんましんが挙げられる。本発明においては、好ましくは、気管支喘息等の感受性のTh2サイトカイン阻害剤に対する感受性の予測に用いることができる。
【0023】
本発明における検査対象遺伝子は、本発明者らによってその遺伝子上にTh2サイトカイン阻害剤への感受性との関連性が見出されたものである。本発明において、「遺伝子」とはアミノ酸配列をコードする構造遺伝子に加え、構造遺伝子の転写に必要な発現制御領域を含む。したがって、「遺伝子」は、構造遺伝子に限定されずプロモーターやオペレータなどの制御機能をもつ領域を含む。さらに構造遺伝子とは、エキソンとイントロンによって構成される。Th2サイトカイン阻害剤への感受性との関連性が見出された多型は、LTC4S遺伝子プロモーター領域にあり、IL13遺伝子の成熟IL13タンパク質のコード領域に存在している。
【0024】
なお、多型とは、遺伝学的には、人口中1%以上の頻度で存在している1遺伝子におけるある塩基の変化として一般的に定義される。しかしながら、本発明の「多型」はこの定義に制限されず、1%未満の塩基の変化であっても本発明の「多型」に含まれる。本発明における多型の種類としては、例えば、一塩基多型(SNPs)から数十塩基が欠失、置換あるいは挿入されている多型等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、検査対象遺伝子(プロモーター領域含む)上においてTh2サイトカイン阻害剤への感受性と関連性を有する多型が見出された。したがって、当業者であれば、例えば、アレルギー性疾患患者におけるこれらの遺伝子上の各種多型を探索し、かつこれらの多型のジェノタイプ等を解析することにより、Th2サイトカイン阻害剤への感受性を予測するのに好ましい多型を選択し、当該多型をマーカーとして利用することができる。なお、本発明における検査対象遺伝子(プロモーター領域)における多型によるTh2サイトカイン阻害剤への感受性の予測は、特に人種を問わないで適用可能であるが、好ましくは、東洋人に適用され、より好ましくは日本人に適用される。
【0026】
本発明において、Th2サイトカイン阻害剤への感受性と関連する検査対象遺伝子は好ましくは1塩基多型(SNPs)である。SNPsは、ヒトゲノム上に、1000塩基に1つの割合で存在すると考えられている。したがって、たとえば20kbからなる対照遺伝子座には、理論的には約20のSNPsが存在していると考えられる。これらのSNPsから、連鎖解析によってTh2サイトカイン阻害剤感受性との関連性を有するSNPsを見出すことができる。
【0027】
本発明における各検査対象遺伝子の好ましい多型は以下のとおりである。本発明者らの解析によれば、これらの検査対象遺伝子の多型において、それぞれ以下のようなジェノタイプを有するアレルギー性疾患患者においては、Th2サイトカイン阻害剤への感受性を有する場合が有意に高かった。したがって、以下のようなジェノタイプを有するアレルギー性疾患患者は、Th2サイトカイン阻害剤に対する感受性を有すると予測できる。
〔LTC4S遺伝子のプロモーター領域の-444位の多型A/C〕
AAのジェノタイプの患者
〔成熟IL13タンパク質の110位のアミノ酸(アルギニン)における多型:IL13遺伝子の389位の多型G/A〕
GGのジェノタイプの患者
【0028】
一方、これらの遺伝子において以下のようなジェノタイプマーカー又はアレルを有するアレルギー性疾患患者はTh2サイトカイン阻害剤に対する感受性を有さないと予測できる。
〔LTC4S遺伝子のプロモーター領域の-444位の多型A/C〕
AA及びCCのジェノタイプを有する患者又はCアレルを有する患者
〔成熟IL13タンパクの110位のアミノ酸(アルギニン)における多型:IL13遺伝子の389位の多型G/A〕
GA及びAAのジェノタイプを有する患者又はAアレルを有する患者
【0029】
LTC4S遺伝子のプロモーター領域の-444位の多型を含む塩基配列を配列番号:1に示す。この塩基配列はすでにデータバンクに登録されている(GeneBank accession# U50136)。配列番号:1に示した塩基配列において翻訳開始点1447位に相当する。したがって、多型部位として示した-444は、配列番号:1の塩基配列においては1003位に相当し,野生型がAであり、変異型がCである。
【0030】
IL13遺伝子領域を含む塩基配列を配列番号:2に示す。この塩基配列はすでにデータバンクに登録されている(GeneBank accession# L06801)。配列番号:2に示した塩基配列においてIL13タンパク質前駆体の翻訳開始点は45位に相当し、成熟IL13タンパク質のコード領域は、105位~443位で(終止コドンを含む)ある。本明細書におけるIL13遺伝子における多型は成熟IL13タンパク質の110番目のアミノ酸が野生型でアルギニンであり、変異型でグルタミンである。また、IL13遺伝子上の多型部位として示した389位は、配列番号:2において433位に相当し、野生型がGであり、変異型がAである。
【0031】
被検者によっては、各配列番号に記載した塩基配列における多型の位置が他の部位における塩基の欠損や挿入によってずれる可能性がある。転写開始点からの塩基数がずれていても、当業者は各配列番号に示した多型の前後の塩基配列との整列によって、タイピングすべき塩基の位置を特定することができる。このようにして照合することができる塩基の位置を、相同な位置と言う。各多型に相同な位置の塩基のジェノタイピングによって、本発明の方法を実施することもできる。
【0032】
被検者の「ジェノタイプの決定」は、まず一例を挙げれば、被検者の検査対象遺伝子座の塩基配列を明らかにすることにより実施することができる。ジェノタイピングを行うためには、被検者からDNA試料を調製する。DNA試料は、例えば被検者の生体試料から抽出した染色体DNAを基に調製することができる。生体試料としては、末梢血白血球、皮膚、口腔粘膜等の組織または細胞、涙、唾液、尿、糞便、および毛髪等を利用することができる。ここで調製されたDNA試料を用いて検査対象遺伝子におけるTh2サイトカイン阻害剤への感受性と関連する多型を有する部位の塩基配列を決定する。
【0033】
より具体的には、Th2サイトカイン阻害剤感受性と関連する多型のジェノタイピングは、当該領域の塩基配列を決定し、いずれの塩基であるかを確認することにより行う。各多型において上記のようなアレルを有するとき、被検者はTh2サイトカイン阻害剤感受性を有すると予測される。
【0034】
更に、ハプロタイプブロックのようにこれら多型と連鎖不平衡の関係を有するタグとなる多型に基づいて、間接的にこれらジェノタイプを決定することができる。ハプロタイプブロックは、連鎖不平衡の関係にある一群の多型を示す用語である。ハプロタイプを構成する多型は、高い確率で連鎖して遺伝する。したがって、本発明者らが見出したTh2サイトカイン阻害剤感受性と関連している多型とともにハプロタイプブロックを構成する他の多型を指標として、各多型のジェノタイプを決定することもできる。ゲノム解析の結果に基づいて、ハプロタイプ地図の整備が進んでいる。この解析の成果に基づいて、本発明者らが示した多型を含むハプロタイプブロックを同定し、当該ブロック内の他の多型に基づいて、本発明におけるジェノタイピングを実施することもできる。
【0035】
このように検査対象遺伝子においてこれらの遺伝子の発現の促進又は抑制に関連する多型のジェノタイプが決定され、Th2サイトカイン阻害剤感受性の有無が予測される。ここで、Th2サイトカイン阻害剤感受性を有すると予測されるアレルギー性疾患患者には、Th2サイトカイン阻害剤を投与し、Th2サイトカイン阻害剤感受性を有さないと予測されるアレルギー性疾患患者には、それ以外の抗アレルギー剤を投与するよう薬剤を選択することにより、確実で迅速なアレルギー性疾患の治療及び予防が可能となる。
【0036】
以上、ジェノタイプを決定する手法として、直接、Th2サイトカイン阻害剤患者に関連する多型部位の塩基配列を決定する方法を例示したが、塩基配列を決定する以外にも、より迅速にジェノタイプを決定することができるさまざまな方法が公知である。PCR法を応用した解析方法としては、TaqMan PCR法、AcycroPrimer法、蛍光磁気ビーズ法、1分子蛍光分析システムの利用、およびMALDI-TOF/MS法等を利用することができる。またPCRに依存しないジェノタイピングのための方法としては、Invader法やRCA法が知られている。更にDNAアレイを使ってジェノタイプを決定することもできる。以下にこれらの方法について簡単に述べる。ここに述べた方法は、いずれも本発明におけるジェノタイピングに応用できる。
【0037】
[TaqMan PCR法]
TaqMan PCR法の原理は次のとおりである。TaqMan PCR法は、アレルを含む領域を増幅することができるプライマーセットと、TaqManプローブを利用した解析方法である。TaqManプローブは、このプライマーセットによって増幅されるアレルを含む領域にハイブリダイズするように設計されている。
【0038】
TaqManプローブのTmに近い条件で標的塩基配列にハイブリダイズさせれば、1塩基の相違によってTaqManプローブのハイブリダイズ効率は著しく低下する。TaqManプローブの存在下でPCR法を行うと、プライマーからの伸長反応は、いずれハイブリダイズしたTaqManプローブに到達する。このときDNAポリメラーゼの5'-3'エキソヌクレアーゼ活性によって、TaqManプローブはその5'末端から分解される。TaqManプローブをレポーター色素とクエンチャーで標識しておけば、TaqManプローブの分解を、蛍光シグナルの変化として追跡することができる。つまり、TaqManプローブの分解が起きれば、レポーター色素が遊離してクエンチャーとの距離が離れることによって蛍光シグナルが生成する。1塩基の相違のためにTaqManプローブのハイブリダイズが低下すればTaqManプローブの分解が進まず蛍光シグナルは生成されない。
【0039】
多型に対応するTaqManプローブをデザインし、更に各プローブの分解によって異なるシグナルが生成されるようにすれば、同時にジェノタイプを判定することもできる。たとえば、レポーター色素として、あるアレルのアレルAのTaqManプローブに6-carboxy-fluorescein(FAM)を、アレルBのプローブにVICを用いる。プローブが分解されない状態では、クエンチャーによってレポーター色素の蛍光シグナル生成は抑制されている。各プローブが対応するアレルにハイブリダイズすれば、ハイブリダイズに応じた蛍光シグナルが観察される。すなわち、FAMまたはVICのいずれかのシグナルが他方よりも強い場合には、アレルAまたはアレルBのホモであることが明らかになる。他方、アレルをヘテロで有する場合には、両者のシグナルがほぼ同じレベルで検出されることになる。TaqMan PCR法の利用によって、ゲル上での分離のような時間のかかる工程無しで、ゲノムを解析対象としてPCRとジェノタイピングを同時に行うことができる。そのため、TaqMan PCR法は、大量の被検者のジェノタイピング方法として有用である。
【0040】
[Acyclo Prime法]
PCR法を利用したジェノタイピング方法として、Acyclo Prime法も実用化されている。Acyclo Prime法では、ゲノム増幅用のプライマー1組と、SNPs検出用の1つのプライマーを用いる。まず、ゲノムのSNPsを含む領域をPCRで増幅する。この工程は、通常のゲノムPCRと同じである。次に、得られたPCR産物に対して、SNPs検出用のプライマーをアニールさせ、伸長反応を行う。SNPs検出用のプライマーは、検出対象となっているSNPsに隣接する領域にアニールするようにデザインされている。
【0041】
このとき、伸長反応のためのヌクレオチド基質として、蛍光偏光色素でラベルし、かつ3'-OHをブロックしたヌクレオチド誘導体(ターミネータ)を用いる。その結果、SNPsに相当する位置の塩基に相補的な塩基が1塩基だけ取りこまれて伸長反応が停止する。ヌクレオチド誘導体のプライマーへの取りこみは、分子量の増大による蛍光偏光(Fluorescence polarization;FP)の増加によって検出することができる。蛍光偏光色素に波長の異なる2種類のラベルを用いれば、特定のSNPsが2種類の塩基のうちのいずれであるのかを特定することができる。蛍光偏光のレベルは定量することができるので、1度の解析でアレルがホモかヘテロかを判定することもできる。
【0042】
[MALDI-TOF/MS法]
PCR産物をMALDI-TOF/MSで解析することによってジェノタイプを解析することもできる。MALDI-TOF/MSは、分子量をきわめて正確に知ることができるため、蛋白質のアミノ酸配列や、DNAの塩基配列のわずかな相違を明瞭に識別することができる解析手法として利用されている。MALDI-TOF/MSによるジェノタイピングのためには、まず解析対象であるアレルを含む領域をPCRで増幅する。次いで増幅産物を単離してMALDI-TOF/MSによってその分子量を測定する。アレルの塩基配列は予めわかっているので、分子量に基づいて増幅産物の塩基配列は一義的に決定される。
【0043】
MALDI-TOF/MSを利用したジェノタイピングには、PCR産物の分離工程などが必要となるが、標識プライマーや標識プローブを使わないで、正確なジェノタイピングが期待できる。また複数の場所の多型の同時検出にも応用することができる。
【0044】
[IIs型制限酵素を利用したSNPs特異的な標識方法]
PCR法を利用した更に高速でジェノタイピングが可能な方法も報告されている。たとえば、IIs型制限酵素を利用してSNPsのジェノタイピングが行われている。この方法においては、PCRにあたり、IIs型制限酵素の認識配列を有するプライマーが用いられる。遺伝子組み換えに利用される一般的な制限酵素(II型)は、特定の塩基配列を認識して、その塩基配列中の特定部位を切断する。これに対してIIs型の制限酵素は、特定の塩基配列を認識して、認識塩基配列から離れた部位を切断する。酵素によって、認識配列と切断個所の間の塩基数は決まっている。したがって、この塩基数の分だけ離れた位置にIIs型制限酵素の認識配列を含むプライマーがアニールするようにすれば、IIs型制限酵素によってちょうどSNPsの部位で増幅産物を切断することができる。
【0045】
IIs型制限酵素で切断された増幅産物の末端には、SNPsの塩基を含む付着末端(conhesive end)が形成される。ここで、増幅産物の付着末端に対応する塩基配列からなるアダプターをライゲーションする。アダプターは、SNPsに対応する塩基を含む異なる塩基配列からなり、それぞれ異なる蛍光色素で標識しておくことができる。最終的に、増幅産物はSNPs部位の塩基に対応する蛍光色素で標識される。
【0046】
前記IIs型制限酵素認識配列を含むプライマーに、捕捉プライマー(capture primer)を組み合せてPCR法を行えば、増幅産物は蛍光標識されるとともに、捕捉プライマーを利用して固相化することができる。たとえばビオチン標識プライマーを捕捉プライマーとして用いれば、増幅産物はアビジン結合ビーズに捕捉することができる。こうして捕捉された増幅産物の蛍光色素を追跡することにより、ジェノタイプを決定することができる。
【0047】
[磁気蛍光ビーズを使った多重化SNPsタイピング]
複数のアレルを単一の反応系で並行して解析することができる技術も公知である。複数のアレルを並行して解析することは、多重化と呼ばれている。一般に蛍光シグナルを利用したタイピング方法では、多重化のために異なる蛍光波長を有する蛍光成分が必要である。しかし実際の解析に利用することができる蛍光成分は、それほど多くない。これに対して、樹脂等に複数種の蛍光成分を混合した場合には、限られた種類の蛍光成分であっても、相互に識別可能な多様な蛍光シグナルを得ることができる。更に、樹脂中に磁気で吸着される成分を加えれば蛍光を発するとともに、磁気によって分離可能なビーズとすることができる。
【0048】
磁気蛍光ビーズを利用した多重化SNPsタイピングにおいては、各アレルの多型部位に相補的な塩基を末端に有するプローブが磁気蛍光ビーズに固定化される。各アレルにそれぞれ固有の蛍光シグナルを有する磁気蛍光ビーズが対応するように、両者は組み合せられる。一方、磁気蛍光ビーズに固定されたプローブが相補配列にハイブリダイズしたときに、当該アレル上で隣接する領域に相補的な塩基配列を有する蛍光標識オリゴDNAを調製する。
【0049】
アレルを含む領域を非対称PCRによって増幅し、上記の磁気蛍光ビーズ固定化プローブと蛍光標識オリゴDNAをハイブリダイズさせ、更に両者をライゲーションする。磁気蛍光ビーズ固定化プローブの末端が、SNPsに相補的な塩基配列であった場合には効率的にライゲーションされる。逆にもしも多型のために末端の塩基が異なれば、両者のライゲーション効率は低下する。その結果、各磁気蛍光ビーズには、試料が当該磁気蛍光ビーズに相補的なジェノタイプであった場合に限り、蛍光標識オリゴDNAが結合する。
【0050】
磁気によって磁気蛍光ビーズを回収し、更に各磁気蛍光ビーズ上の蛍光標識オリゴDNAの存在を検出することにより、ジェノタイプが決定される。磁気蛍光ビーズは、フローサイトメーターでビーズ毎に蛍光シグナルを解析できるので、多種類の磁気蛍光ビーズが混合されていてもシグナルの分離は容易である。つまり、多種類のSNPsを単一の反応容器で並行して解析する「多重化」が達成される。
【0051】
[Invader法]
PCR法に依存しないジェノタイピングのための方法も実用化されている。たとえばInvader法では、アレルプローブ、インベーダープローブ、およびFRETプローブの3種類のオリゴヌクレオチドと、cleavaseと呼ばれる特殊なヌクレアーゼのみで、ジェノタイピングを実現している。これらのプローブのうち標識が必要なのはFRETプローブのみである。 アレルプローブは、検出すべきアレルに隣接する領域にハイブリダイズするようにデザインされる。アレルプローブの5'側には、ハイブリダイズに無関係な塩基配列からなるフラップが連結されている。アレルプローブは多型部位の3'側にハイブリダイズし、多型部位の上でフラップに連結する構造を有する。
【0052】
一方、インベーダープローブは、多型部位の5'側にハイブリダイズする塩基配列からなっている。インベーダープローブの塩基配列は、ハイブリダイズによって3'末端が多型部位に相当するようにデザインされている。インベーダープローブにおける多型部位に相当する位置の塩基は任意で良い。つまり、多型部位を挟んでインベーダープローブとアレルプローブとが隣接してハイブリダイズするように両者の塩基配列はデザインされている。
【0053】
多型部位がアレルプローブの塩基配列に相補的な塩基であった場合には、インベーダープローブとアレルプローブの両者がアレルにハイブリダイズすると、アレルプローブの多型部位に相当する塩基にインベーダープローブが侵入(invasion)した構造が形成される。cleavaseは、このようにして形成された侵入構造を有するオリゴヌクレオチドのうち、侵入された側の鎖を切断する。切断は侵入構造の上で起きるので、結果としてアレルプローブのフラップが切り離されることになる。一方、もしも多型部位の塩基がアレルプローブの塩基に相補的でなかった場合には、多型部位におけるインベーダープローブとアレルプローブの競合は無く、侵入構造は形成されない。したがってcleavaseによるフラップの切断が起こらない。
【0054】
FRETプローブは、こうして切り離されたフラップを検出するためのプローブである。FRETプローブは5'末端側に自己相補配列を有し、3'末端側に1本鎖部分が配置されたヘアピンループを構成している。FRETプローブの3'末端側に配置された1本鎖部分は、フラップに相補的な塩基配列からなっていて、ここにフラップがハイブリダイズすることができる。フラップがFRETプローブにハイブリダイズすると、FRETプローブの自己相補配列の5'末端部分にフラップの3'末端が侵入した構造が形成されるように両者の塩基配列がデザインされている。cleavaseは侵入構造を認識して切断する。FRETプローブのcleavaseによって切断される部分を挟んで、TaqMan PCRと同様のレポーター色素とクエンチャーで標識しておけば、FRETプローブの切断を蛍光シグナルの変化として検知することができる。
【0055】
なお、理論的には、フラップは切断されない状態でもFRETプローブにハイブリダイズするはずである。しかし実際には、切断されたフラップとアレルプローブの状態で存在しているフラップとでは、FRETに対する結合効率に大きな差が有る。そのため、FRETプローブを利用して、切断されたフラップを特異的に検出することは可能である。
【0056】
Invader法に基づいてジェノタイプを決定するためには、アレルAとアレルBのそれぞれに相補的な塩基配列を含む、2種類のアレルプローブを用意すれば良い。このとき両者のフラップの塩基配列は異なる塩基配列とする。フラップを検出するためのFRETプローブも2種類を用意し、それぞれのレポーター色素を識別可能なものとしておけば、TacMan PCR法と同様の考えかたによって、ジェノタイプを解析することができる。
【0057】
Invader法の利点は、標識の必要なオリゴヌクレオチドがFRETプローブのみであることである。FRETプローブは検出対象の塩基配列とは無関係に、同一のオリゴヌクレオチドを利用することができる。したがって、大量生産が可能である。一方アレルプローブとインベーダープローブは標識する必要が無いので低コストにジェノタイピングのための試薬を提供できる。
【0058】
[RCA法]
PCR法に依存しないジェノタイピングのための方法として、RCA法を挙げることができる。鎖置換作用を有するDNAポリメラーゼが、環状の1本鎖DNAを鋳型として、長い相補鎖を合成する反応に基づくDNAの増幅方法が、Rolling Circle Amplification(RCA)法である(Lizardri PM et al.,Nature Genetics 19, 225, 1998)。RCA法においては、環状DNAにアニールして相補鎖合成を開始するプライマーと、このプライマーによって生成する長い相補鎖にアニールする第2のプライマーを利用して、増幅反応を構成している。
【0059】
RCA法には、鎖置換作用を有するDNAポリメラーゼが利用されている。そのため、相補鎖合成によって2本鎖となった部分は、より5'側にアニールした別のプライマーから開始した相補鎖合成反応によって置換される。たとえば環状DNAを鋳型とする相補鎖合成反応は、1周分では終了しない。先に合成した相補鎖を置換しながら相補鎖合成は継続し、長い1本鎖DNAが生成される。一方、環状DNAを鋳型として生成した長い1本鎖DNAには、第2のプライマーがアニールして相補鎖合成が開始する。RCA法において生成される1本鎖DNAは、環状のDNAを鋳型としていることから、その塩基配列は同じ塩基配列の繰り返しである。したがって、長い1本鎖の連続的な生成は、第2のプライマーの連続的なアニールをもたらす。その結果、変性工程を経ることなく、プライマーがアニールすることができる1本鎖部分が連続的に生成される。こうして、DNAの増幅が達成される。
【0060】
RCA法に必要な環状1本鎖DNAがSNPsの塩基に応じて生成されれば、RCA法を利用してSNPsをタイピングすることができる。そのために、直鎖状で1本鎖のパドロックプローブが利用される。パドロックプローブは、5'末端と3'末端に検出すべきSNPsの両側に相補的な塩基配列を有している。これらの塩基配列は、バックボーンと呼ばれる特殊な塩基配列からなる部分で連結されている。SNPs部分がパドロックプローブの末端に相補的な塩基配列であれば、アレルにハイブリダイズしたパドロックプローブの末端をDNAリガーゼによってライゲーションすることができる。その結果、直鎖状のパドロックプローブが環状化され、RCA法の反応がトリガーされる。DNAリガーゼの反応は、ライゲーションすべき末端部分が完全に相補的でない場合には反応効率が著しく低下する。したがって、ライゲーションの有無をRCA法で確認することによって、SNPsのジェノタイピングが可能である。
【0061】
RCA法は、DNAを増幅することはできるが、そのままではシグナルを生成しない。また増幅の有無のみを指標とするのでは、アレル毎に反応を行わなければジェノタイプを決定することができない。これらの点をジェノタイピング用に改良した方法が公知である。たとえばモレキュラービーコンを利用して、RCA法に基づいて1チューブでジェノタイピングを行うことができる。モレキュラービーコンは、TaqMan法と同様に、蛍光色素とクエンチャーを利用したシグナル生成用プローブである。モレキュラービーコンの5'末端と3'末端は相補的な塩基配列で構成されており、単独ではヘアピン構造を形成する。両端付近を蛍光色素とクエンチャーで標識しておけば、ヘアピン構造を形成している状態では蛍光シグナルが検出できない。モレキュラービーコンの一部を、RCA法の増幅産物に相補的な塩基配列としておけば、モレキュラービーコンはRCA法の増幅産物にハイブリダイズする。ハイブリダイズによってヘアピン構造が解消されるため、蛍光シグナルが生成される。
【0062】
モレキュラービーコンの利点は、パドロックプローブのバックボーン部分の塩基配列を利用することによって、検出対象とは無関係にモレキュラービーコンの塩基配列を共通にできる点である。アレル毎にバックボーンの塩基配列を変え、蛍光波長が異なる2種類のモレキュラービーコンを組み合せれば、1チューブでジェノタイピングが可能である。蛍光標識プローブの合成コストは高いので、測定対象に関わらず共通のプローブを利用できることは、経済的なメリットである。
【0063】
[1分子蛍光分析システム(Single molecule fluorescence spectroscopy)]
1fL(femtoliter)という微小領域の蛍光分析を可能とするシステムが実用化されている。このシステムを用いれば、蛍光標識プライマーの伸長を、並進拡散時間(translational diffusion time)の増大として検出することができる。タイピングの対象となるアレルに対してそれぞれ相補的な塩基配列を有するプライマーを用意する。各プライマーには、それぞれ識別可能な蛍光標識を結合しておく。このプライマーを使ってPCRを行い、増幅産物を蛍光相関分析法(Fluorescence Correlation Spectroscopy)によって蛍光測定する。サンプルがプライマーに相補的な塩基配列を有していれば、PCRによってプライマーは伸長する。伸長したプライマーは分子が大きくなるために、蛍光の揺らぎを生じる。この蛍光の揺らぎが並進拡散時間(translational diffusion time)の増大として検出される。プライマーに相補的な塩基配列がサンプル中に含まれなければ、PCRの増幅産物が生成しないので、蛍光変化は起きない。
【0064】
具体的には、2つのアレルAとBに対して、それぞれ異なる蛍光標識を有するプライマーを用いて、同じ反応液中でPCRを行う。増幅産物の蛍光測定において、AまたはBのいずれか一方の蛍光シグナルの変化が観察されれば、いずれかのホモ、両方の蛍光シグナルが変化すればヘテロであることが確認できる(PharmaGenomics, July/August 46-48, 2003)。正確で迅速な解析方法として評価されている。
【0065】
これらの方法はいずれも多量のサンプルを高速にジェノタイピングするために開発された方法である。MALDI-TOF/MSを除けば、いずれの方法にも何らかの形で標識プローブなどを用意する必要がある。これに対して、標識プローブなどに頼らないジェノタイピングも古くから行われている。このような方法の一つとして、例えば、制限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphism/RFLP)を利用した方法やPCR-RFLP法等が挙げられる。
【0066】
RFLPは、制限酵素の認識部位の変異、あるいは制限酵素処理によって生じるDNA断片内における塩基の挿入または欠失が、制限酵素処理後に生じる断片の大きさの変化として検出できることを利用している。検出対象となる多型を含む塩基配列を認識する制限酵素が存在すれば、RFLPの原理によって多型部位の塩基を知ることができる。
【0067】
標識プローブを必要としない方法として、DNAの二次構造の変化を指標として塩基の違いを検出する方法も公知である。PCR-SSCPでは、1本鎖DNAの二次構造がその塩基配列の相違を反映することを利用している(Cloning and polymerase chain reaction-single-strand conformation polymorphism analysis of anonymous Alu repeats on chromosome 11. Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139-146.、Detection of p53 gene mutations in human brain tumors by single-strand conformation polymorphism analysis of polymerase chain reaction products. Oncogene. 1991 Aug 1; 6(8): 1313-1318.、Multiple fluorescence-based PCR-SSCP analysis with postlabeling.、PCR Methods Appl. 1995 Apr 1; 4(5): 275-282.)。PCR-SSCP法は、PCR産物を1本鎖DNAに解離させ、非変性ゲル上で分離する工程により実施される。ゲル上の移動度は、1本鎖DNAの二次構造によって変動するので、もしも多型部位における塩基の相違があれば、移動度の違いとして検出することができる。
【0068】
その他、標識プローブを必要としない方法として、例えば、変性剤濃度勾配ゲル(denaturant gradient gel electrophoresis:DGGE法)等を例示することができる。DGGE法は、変性剤の濃度勾配のあるポリアクリルアミドゲル中で、DNA断片の混合物を泳動し、それぞれの不安定性の違いによってDNA断片を分離する方法である。ミスマッチのある不安定なDNA断片が、ゲル中のある変性剤濃度の部分まで移動すると、ミスマッチ周辺のDNA配列はその不安定さのために、部分的に1本鎖へと解離する。部分的に解離したDNA断片の移動度は、非常に遅くなり、解離部分のない完全な二本鎖DNAの移動度と差がつくことから、両者を分離することができる。
【0069】
具体的には、まずPCR法等によってSNPs部位を含む領域を増幅する。増幅産物に、塩基配列がわかっているプローブDNAをハイブリダイズさせて2本鎖とする。これを尿素などの変性剤の濃度が移動するに従って徐々に高くなっているポリアクリルアミドゲル中で電気泳動し、対照と比較する。プローブDNAとのハイブリダイズによってミスマッチを生じたDNA断片では、より低い変性剤濃度位置でDNA断片が一本鎖になり、極端に移動速度が遅くなる。こうして生じた移動度の差を検出することによりミスマッチの有無を検出することができる。
【0070】
更にDNAアレイを使ってジェノタイプを決定することもできる(細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」,秀潤社,2000.4/20発行,pp97-103「オリゴDNAチップによるSNPの解析」,梶江慎一 )。DNAアレイは、同一平面上に配置した多数のプローブに対してサンプルDNA(あるいはRNA)をハイブリダイズさせ、当該平面をスキャンすることによって、各プローブに対するハイブリダイズが検出される。多くのプローブに対する反応を同時に観察することができることから、たとえば、多数のSNPsを同時に解析するには、DNAアレイは有用である。
【0071】
一般にDNAアレイは、高密度に基板にプリントされた何千ものヌクレオチドで構成されている。通常これらのDNAは非透過性(non- porous)の基板の表層にプリントされる。基板の表層は、一般的にはガラスであるが、透過性(porous)の膜、例えばニトロセルロースメンブレムを使用することもできる。
【0072】
本発明において、ヌクレオチドの固定(アレイ)方法として、Affymetrix社開発によるオリゴヌクレオチドを基本としたアレイが例示できる。オリゴヌクレオチドのアレイにおいて、オリゴヌクレオチドは通常インサイチュ(in situ)で合成される。例えば、photolithographicの技術(Affymetrix社)、および化学物質を固定させるためのインクジェット(Rosetta Inpharmatics社)技術等によるオリゴヌクレオチドのインサイチュ合成法が既に知られており、いずれの技術も本発明の基板の作製に利用することができる。
【0073】
オリゴヌクレオチドは、検出すべきSNPsを含む領域に相補的な塩基配列で構成される。基板に結合させるヌクレオチドプローブの長さは、オリゴヌクレオチドを固定する場合は、通常10~100ベースであり、好ましくは10~50ベースであり、さらに好ましくは15~25ベースである。更に、一般にDNAアレイ法においては、クロスハイブリダイゼーション(非特異的ハイブリダイゼーション)による誤差を避けるために、ミスマッチ(MM)プローブが用いられる。ミスマッチプローブは、標的塩基配列と完全に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとのペアを構成している。ミスマッチプローブに対して、完全に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドはパーフェクトマッチ(PM)プローブと呼ばれる。データ解析の過程で、ミスマッチプローブで観察されたシグナルを消去することによって、クロスハイブリダイゼーションの影響を小さくすることができる。
【0074】
DNAアレイ法によるジェノタイピングのための試料は、被検者から採取された生物学的試料をもとに当業者に周知の方法で調製することができる。生物学的試料は特に限定されない。例えば被検者の末梢血白血球、皮膚、口腔粘膜等の組織または細胞、涙、唾液、尿、糞便または毛髪から抽出した染色体DNAから、DNA試料を調製することができる。判定すべきSNPsを含む領域を増幅するためのプライマーを用いて、染色体DNAの特定の領域が増幅される。このとき、マルチプレックスPCR法によって複数の領域を同時に増幅することができる。マルチプレックスPCR法とは、複数組のプライマーセットを、同じ反応液中で用いるPCR法である。複数のSNPsを解析するときには、マルチプレックスPCR法が有用である。
【0075】
一般にDNAアレイ法においては、PCR法によってDNA試料を増幅するとともに、増幅産物が標識される。増幅産物の標識には、標識を付したプライマーが利用される。たとえば、まずSNPsを含む領域に特異的なプライマーセットによるPCR法でゲノムDNAを増幅する。次に、ビオチンラベルしたプライマーを使ったラベリングPCR法によって、ビオチンラベルされたDNAを合成する。こうして合成されたビオチンラベルDNAを、チップ上のオリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションの反応液および反応条件は、基板に固定するヌクレオチドプローブの長さや反応温度等の条件に応じて、適宜調整することができる。当業者は、適切なハイブリダイゼーションの条件をデザインすることができる。ハイブリダイズしたDNAを検出するために、蛍光色素で標識したアビジンが添加される。アレイをスキャナで解析し、蛍光を指標としてハイブリダイズの有無を確認する。
【0076】
上記の方法以外にも、特定部位の塩基を検出するために、アレル特異的オリゴヌクレオチド(Allele Specific Oligonucleotide/ASO)ハイブリダイゼーション法が利用できる。アレル特異的オリゴヌクレオチド(ASO)は、検出すべきSNPsが存在する領域にハイブリダイズする塩基配列で構成される。ASOを試料DNAにハイブリダイズさせるとき、多型によってSNPs部位にミスマッチが生じるとハイブリッド形成の効率が低下する。ミスマッチは、サザンブロット法や、特殊な蛍光試薬がハイブリッドのギャップにインターカレーションすることにより消光する性質を利用した方法等によって検出することができる。また、リボヌクレアーゼAミスマッチ切断法によって、ミスマッチを検出することもできる。
【0077】
本発明はまた、上記検査方法のためのプローブまたはプライマーを提供する。上述したジェノタイプの解析方法では、上記多型配列に又はその近傍の配列にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドをプライマーやプローブとして用いることが多い。したがって、当該多型部位の塩基を明らかにするためのプローブあるいはプライマーは、本発明の検査方法に重要な要素であり、有用である。
【0078】
プライマーは、多型部位を含むDNAを鋳型として、多型部位を含むように相補鎖合成を開始し得るように設計される。プライマーの長さは15~100範囲であり、一般に15~50、通常15~30である。プライマーがハイブリダイズする領域と多型部位との間隔は、任意である。両者の間隔は、多型部位の塩基の解析手法に応じて、好適な塩基数を選択することができる。また、多型部位上にプライマーがハイブリダイズするようにプライマーを設計してもよい。この場合、Th2サイトカイン阻害剤感受性を有すると判定される多型の配列のみハイブリダイズし、他の多型上にはハイブリダイズしない(あるいは、ハイブリダイズし難い)配列に設計してもよい。また、プライマーを構成する塩基配列は、配列番号:1~配列番号:2に示した検査対象遺伝子の多型や塩基配列に基づいて選択することができる。ただし、本発明のプライマーは、鋳型と完全に相補する配列に限定されず、また、相補的な配列に適宜変更を加えてもよい。例えば、配列を変更する場合を例示すれば、ゲノムの塩基配列に相補的な塩基配列に、任意の塩基配列を付加することである。ここで付加する配列としては、IIs型制限酵素の認識配列などが挙げられる。IIs型制限酵素の認識配列を付加することにより、IIs型制限酵素を利用した多型解析のプライマーとして使用し得る。
【0079】
また、本発明のプライマーは物理的に修飾したものも含まれる。物理的な修飾の例としては、同位元素による標識、蛍光物質による標識、ビオチンまたはジゴキシンなどの結合親和性物質による標識などが挙げられる。こうした標識プライマーは各種のジェノタイピング方法において有用となる。
【0080】
また、本発明のプローブは、多型部位を含む領域の塩基配列を有するポリヌクレオチドとハイブリダイズし得るように設計される。より具体的には、プローブの塩基配列中に多型部位を含むプローブは本発明のプローブとして好ましい。あるいは、多型部位における塩基の解析方法によっては、プローブの末端が多型部位に隣接する塩基に対応するように、デザインされる場合もある。したがって、プローブ自身の塩基配列には多型部位が含まれないが、多型部位に隣接する領域に相補的な塩基配列を含むプローブも、本発明における望ましいプローブとして示すことができる。
【0081】
また、ハプロタイプブロック解析によりジェノタイプを決定するためのプローブは、Th2サイトカイン阻害剤感受性に関連を有する多型配列あるはそれと隣接する配列にはハイブリダイズしなくとも、タグ多型を検出し得るように、タグ多型配列あるいはタグ多型に隣接する配列にハイブリダイズし得るようなプローブも本発明に含まれる。
【0082】
本発明のプローブには、プライマーと同様に、鋳型と完全に相補する配列に限定されず、塩基配列の改変、塩基配列の付加、あるいは修飾が許される。たとえばInvader法に用いるプローブは、フラップを構成するゲノムとは無関係な塩基配列が付加される。このようなプローブも、多型部位を含む領域にハイブリダイズする限り、本発明のプローブに含まれる。本発明のプローブを構成する塩基配列は、配列番号:1~配列番号:2に記載の検査対象遺伝子座の塩基配列をもとに、解析方法に応じてデザインすることができる。なお、プローブの長さは、上記DNAアレイ法の説明で記載した長さとほぼ同様であり、15~100の範囲内であり、一般には15~50、通常は15~30である。インベーダー法に用いるプローブとしては、配列番号:3~配列番号:8に記載のプローブを例示できる。
【0083】
上記プライマーおよびプローブの合成は、当業者において用いられている任意の方法によって合成することができる。修飾プライマー、修飾プローブの合成においては、蛍光色素やビオチンなどで修飾されたヌクレオチド誘導体を利用してオリゴヌクレオチドに任意の修飾を導入することは公知である。また、合成されたオリゴヌクレオチドに、蛍光色素などを結合する方法も公知である。これらオリゴヌクレオチドの修飾は市販のキットなどを用いて行うこともできる。
【0084】
本発明によれば、こうしたプライマー及びプローブから選択される少なくとも一種を含む、Th2サイトカイン阻害剤感受性検査用キットも提供される。このキットは、プライマーのみを有していてもよいし、プローブのみを有していてもよいし、これら双方を備えていてもよい。プライマーやプローブは、採用するジェノタイピング手法に応じて適宜選択され、組み合わされる。
【実施例】
【0085】
[Th2サイトカイン阻害剤であるトシル酸スプラタスト(商品名アイピーディ(大鵬薬品株式会社製)を投与した気管支喘息患者における遺伝子解析によるTh2サイトカイン阻害剤への感受性に関連する遺伝子多型の同定]
遺伝子解析に対するインフォームドコンセントの得られた気管支喘息患者20例(男性14例、女性6例、1歳~15歳)を対象とした。トシル酸スプラタストをその用法用量に従って8週間投与し、全般改善度を、「著明改善」、「改善」、「やや改善」、「不変」及び「悪化」の5段階とし、全般改善度が「やや改善」以上を有効とし、「不変」及び「悪化」を無効と判断した。この判断に基づいて有効例13例と無効例7例についてLTC4S遺伝子のプロモーター領域及びIL13遺伝子の成熟IL13タンパク質のコード領域についての遺伝子解析を行った。
【0086】
遺伝子解析は、インベーダー法(株式会社サードウェイブジャパンの商標でそれぞれのアレルに対するFRETプローブ及び酵素クリベース(clevase)をいずれも株式会社サードウェイブジャパンから入手した。LTC4S遺伝子のプロモーター領域及びIL13遺伝子の所定のアレルを同定するためのプローブの塩基配列(配列番号:3~8)を以下に示す。なお、一方の各アレルについてレポーター色素としてFamまたはVicを用い、クエンチャーにはMGBを用いた。各アレルを同時に解析し、ジェノタイプを同定した。
【0087】
(LTC4S遺伝子のプロモーター領域(-444位)の多型用)
野生型アレル用プローブ:5'-CGCGCCGAGGagggaacagataaggtgg-3'(配列番号:3)
変異型アレル用プローブ:5'-ACGGACGCGGAGcgggaacagataaggtgg-3'(配列番号:4)
インベーダプローブ:5'-gccaggaacagcctggatggggact-3'(配列番号:5)
【0088】
(IL13遺伝子の成熟IL13タンパク質のコード領域のR110Q多型用)
野生型アレル用プローブ:5'-CGCGCCGAGGcgtccctcgcgaa-3'(配列番号:6)
変異型アレル用プローブ:5'-ACGGACGCGGAGtgtccctcgcgaaa-3'(配列番号:7)
インベーダプローブ:5'-tcctgtctctgcaaataatgatgctttcgaagtttcagttgaaca-3'(配列番号:8)
【0089】
インベーダー法については、所定のプロトコールに従い行った。結果を表1及び表2に示す。
【表1】
JP0004972737B2_000002t.gif
【表2】
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【0090】
表1に示すように、有効例13例中、LTC4S遺伝子のプロモーター領域(—444位)の多型の野生型(ジェノタイプがAA)が10例であり、変異型(ジェノタイプがAC)が3例であった。これに対し無効例7例中、野生型は1例であり変異型(ジェノタイプがAC)が6例であった。さらに、X2乗P値は0.007であった。以上のことから、有効例においてLTC4S遺伝子のプロモーター領域(-444位)の野生型が有為に多いことがわかった。
【0091】
また、表2に示すように、有効例13例中、IL13タンパク質の110位のアミノ酸に変異を生じさせる多型の野生型(ジェノタイプタイプがGG)が8例であるのに対し、Aアレルを有する変異型(GA又はGG)が5例であった。これに対し無効例7例中野生型は1例であり上記変異型は6例であった。さらに、X2乗P値は0.043であった。以上のことから、有効例においてIL13遺伝子の成熟IL13タンパク質の110位のアミノ酸変異を生じさせる多型の野生型が有為に多いことがわかった。
【0092】
以上のことから、LTC4S遺伝子の上記多型及びIL13遺伝子における上記多型はいずれも、喘息などのアレルギー性疾患患者のTh2サイトカイン阻害剤への感受性を予測するのに有用であることがわかった。特に、LTC4S遺伝子の上記多型のジェノタイプによる解析とIL13遺伝子の上記多型のバイアレリックな解析はそれぞれ単独でも有効であるほか、これらを組み合わせて用いることもできることがわかった。
【配列表フリ-テキスト】
【0093】
配列番号3~8:合成プローブ