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Specification :(In Japanese)セルロースII型結晶構造を有するミクロフィブリル化セルロース及び該ミクロフィブリル化セルロースを含有する成形体

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P5207246
Date of registration Mar 1, 2013
Date of issue Jun 12, 2013
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)セルロースII型結晶構造を有するミクロフィブリル化セルロース及び該ミクロフィブリル化セルロースを含有する成形体
IPC (International Patent Classification) C08J   5/06        (2006.01)
D21H  11/20        (2006.01)
C08B  15/08        (2006.01)
FI (File Index) C08J 5/06 CEP
D21H 11/20
C08B 15/08
Number of claims or invention 6
Total pages 11
Application Number P2008-525850
Date of filing Jul 13, 2007
International application number PCT/JP2007/064005
International publication number WO2008/010464
Date of international publication Jan 24, 2008
Application number of the priority 2006197513
Priority date Jul 19, 2006
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Date of request for substantive examination Apr 23, 2010
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】矢野 浩之
【氏名】ナカガイト アントニオ ノリオ
Representative (In Japanese)【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
Examiner (In Japanese)【審査官】山崎 利直
Document or reference (In Japanese)国際公開第93/010172(WO,A1)
国際公開第99/028350(WO,A1)
特開平09-124702(JP,A)
特開平10-251301(JP,A)
米国特許出願公開第2002/0061335(US,A1)
特許第3641690(JP,B2)
特開2002-212889(JP,A)
特開平07-189168(JP,A)
Field of search B29B11/16
B29B15/08-15/14
C08J 5/04- 5/10
C08J 5/24
C08B 1/00-37/18
D21B 1/00- 1/38
D21C 1/00-11/14
D21D 1/00-99/00
D21F 1/00-13/12
D21G 1/00- 9/00
D21H11/00-27/42
D21J 1/00- 7/00
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
セルロースII型結晶構造を有するミクロフィブリル化セルロースを1~81.5重量%及び樹脂を18.5~99重量%含有する成形体であって、
ミクロフィブリル化セルロース中のセルロースII型結晶構造の占める割合が、10~100%である成形体
【請求項2】
セルロースII型結晶構造を有するミクロフィブリル化セルロースを1~81.5重量%及び樹脂を18.5~99重量%配合及び成形することを特徴とする成形体の製造方法であって、
セルロースII型結晶構造を有するミクロフィブリル化セルロースが、
ミクロフィブリル化セルロース又は植物セルロース繊維を10~40重量%のアルカリ溶液で処理して得られたものである成形体の製造方法
【請求項3】
樹脂が、生分解性樹脂、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選ばれる1種以上の樹脂である請求項1記載の成形体。
【請求項4】
セルロースII型結晶構造を有するミクロフィブリル化セルロースが、ミクロフィブリル化セルロースをアルカリ溶液処理して得られたものである請求項1又は3に記載の成形体。
【請求項5】
セルロースII型結晶構造を有するミクロフィブリル化セルロースが、植物セルロース繊維を含有する材料をアルカリ溶液処理して得られたものである請求項1又は3に記載の成形体。
【請求項6】
セルロースII型結晶構造を有するミクロフィブリル化セルロースが、
ミクロフィブリル化セルロース又は植物セルロース繊維を10~40重量%のアルカリ溶液で処理して得られたものである請求項1、3、4又は5に記載の成形体。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースII型結晶構造を有するミクロフィブリル化セルロース、該ミクロフィブリル化セルロースを含有する成形体、該ミクロフィブリル化セルロース及び成形体の製造方法、並びにミクロフィブリル化セルロース及び成形体の強度を増強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
すべての植物の細胞壁は、セルロースミクロフィブリルと呼ばれる幅約4nmの高強度ナノファイバーが基本骨格となっている。ミクロフィブリル化セルロースはパルプなどの植物繊維をセルロースミクロフィブリルのレベルにまで解繊して得られる、伸びきり鎖結晶からなるナノファイバーである。また、バクテリア(主として酢酸菌)由来のミクロフィブリル化セルロースも知られており、これを利用した食品としてナタデココがよく知られている。ミクロフィブリル化セルロースは軽くて強い特性を有することが知られており、これを樹脂に配合することによって樹脂の強度等の物性を向上させることが試みられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ミクロフィブリル化セルロースにフェノール樹脂等の樹脂を添加する方法が行われているが、破壊ひずみが小さくなって脆性が大きくなり、場合によっては樹脂の強度が低下することもあり、強度及び破壊ひずみ等の向上が要望されていた。
【0004】
一方、セルロースは、その結晶構造により、I型、II型、III型、IV型が知られている。天然由来のセルロース(例えば木綿)はI型であり、ミクロフィブリル化セルロースもI型である。I型セルロースを水酸化ナトリウム水溶液に浸漬することによって、結晶構造が変化しII型セルロースになることが知られている。

【特許文献1】特表平9-509694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、強度(引張強度、曲げ強度、破壊ひずみ、破壊じん性(破壊までの仕事量))が増強されたミクロフィブリル化セルロース及びミクロフィブリル化セルロースを含有する成形体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者はミクロフィブリル化セルロースをアルカリ溶液に浸漬処理したところ、ミクロフィブリル化セルロースの結晶構造がII型に変化し、そのII型結晶構造を有するミクロフィブリル化セルロースから作製したシートの引張強度、引張破壊ひずみ及び破壊じん性(破壊までの仕事量)が大幅に増強され、その増強の程度が他のセルロース繊維を配合した成形体における増強の程度よりも格段に大きいことを見出し、本発明を完成させた。なお、上記したように、アルカリ溶液処理したミクロフィブリル化セルロースを配合した成形体の機械的特性の向上が確認できたことから、アルカリ溶液処理によってミクロフィブリル化セルロース自身も成形体と同様に機械的特性が向上されていると考えられた。
【0007】
すなわち、本発明は下記のミクロフィブリル化セルロース、該ミクロフィブリル化セルロースを含有する成形体、該ミクロフィブリル化セルロース及び成形体の製造方法、及びミクロフィブリル化セルロース及び成形体の強度増強方法にかかるものである。
項1.セルロースII型結晶構造を有するミクロフィブリル化セルロース。
項2.項1に記載のミクロフィブリル化セルロースを1~100重量%及び樹脂を0~99重量%含有する成形体。
項3.ミクロフィブリル化セルロースをアルカリ溶液処理することを特徴とする項1に記載のミクロフィブリル化セルロースの製造方法。
項4.アルカリ溶液処理がアルカリ水溶液にミクロフィブリル化セルロースを浸漬する処理である項3に記載の製造方法。
項5.植物セルロース繊維を含有する材料からミクロフィブリル化セルロースを製造する方法であって、該材料をアルカリ溶液処理することを特徴とする項1に記載のミクロフィブリル化セルロースを製造する方法。
項6.アルカリ溶液処理がアルカリ水溶液に前記材料を浸漬する処理である項5に記載の製造方法。
項7.項1に記載のミクロフィブリル化セルロースを1~100重量%及び樹脂を0~99重量%配合及び成形することを特徴とする項2に記載の成形体の製造方法。
項8.ミクロフィブリル化セルロースをアルカリ溶液処理することを特徴とするミクロフィブリル化セルロースの強度増強方法。
項9.アルカリ溶液処理がアルカリ水溶液にミクロフィブリル化セルロースを浸漬する処理である項8に記載の強度増強方法。
項10.ミクロフィブリル化セルロースとして項1に記載のミクロフィブリル化セルロースを使用することを特徴とする、ミクロフィブリル化セルロースを1~100重量%及び樹脂を0~99重量%含有する成形体の強度増強方法。
【0008】
本発明のミクロフィブリル化セルロースはその結晶構造の主体がII型であり一部であれば他の結晶構造を有しうる。好ましいミクロフィブリル化セルロースはII型結晶構造の占める割合が10~100%、より好ましくは30~100%、よりいっそう好ましくは50~100%、最も好ましくは70~100%である。
【0009】
なお、II型結晶構造とは結晶系が単斜晶系でX線回折から明らかにした結晶単位胞のサイズがa:0.908(nm),b:0.817(nm),γ:117.1(°)な結晶構造である。また、I型結晶構造は結晶系が単斜晶系でX線回折から明らかにした結晶単位胞のサイズがa:0.793(nm),b:0.803(nm),γ:97.2(°)な結晶構造である。ミクロフィブリル化セルロースの結晶構造はX線回析、ラマン分析、固体NMR分析等によって確認することができる。
【0010】
本発明のミクロフィブリル化セルロースの繊維径は平均値が4nm~400nmであることが好ましく、4nm~200nmであることがより好ましく、4nm~100nmであることがより一層好ましい。また、その繊維長は平均値が50nm~50μmであることが好ましく、100nm~10μmであることがより好ましい。
【0011】
本発明の成形体は、II型結晶構造を有するミクロフィブリル化セルロースを1~100重量%及び樹脂を0~99重量%含有する。一般的なミクロフィブリル化セルロースは樹脂を併用しなくても成形できることが知られており、本発明のII型結晶構造を有するミクロフィブリル化セルロース(以下、II型ミクロフィブリル化セルロース称することがある)も樹脂を併用しなくても成形体とすることができる。しかし、一般には樹脂を併用することにより成形加工が容易になり、また成形体の特性等を変化させられるので必要に応じて樹脂を併用した成形体とすることができる。成形体におけるII型ミクロフィブリル化セルロースの含有量は1~100重量%、好ましくは3~100重量%、より好ましくは5~100重量%、より一層好ましくは10~100重量%である。
成形体における樹脂の含有量は0~99重量%、好ましくは0~98重量%、より好ましくは0~97重量%、より一層好ましくは0~95重量%である。
【0012】
樹脂は特に限定されないが、例えばポリ乳酸、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド、アセタール樹脂、ポリカーボネート、繊維素プラスチック、ポリグリコール酸、ポリ-3-ヒドロキシブチレート、ポリ-4-ヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレートポリエチレンアジペート、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトン等のポリエステル、ポリエチレングリコール等のポリエーテル、ポリグルタミン酸、ポリリジン等のポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリウレタン、ケイ素樹脂、ポリイミド等の熱可塑性樹脂などを使用でき、一種単独又は二種以上組み合わせて使用できるがこれらに限定されない。好ましくは、ポリ乳酸等の生分解性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂である。
【0013】
生分解性樹脂の例としては、L-乳酸、D-乳酸、DL-乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、ε-カプロラクトン、N-メチルピロリドン、炭酸トリメチレン、パラジオキサノン、1,5-ジオキセパン-2-オン、水酸化酪酸、水酸化吉草酸などのホモポリマー、コポリマー又はこれらポリマーの混合物が挙げられ、一種単独又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい生分解性樹脂は、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンであり、より好ましいのはポリ乳酸である。
【0014】
本発明の成形体にはII型ミクロフィブリル化セルロース、樹脂に他の添加成分を配合することもできる。例えば、でんぷん類、アルギン酸等の多糖類、ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質、セラミックス、金属粉末等の無機化合物、着色剤、香料、顔料、流動調整剤、レベリング剤、導電剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、紫外線分散剤、分散剤、消臭剤を使用できるがこれらに限定されない。
【0015】
本発明の成形体は引張強度又は曲げ強度、引張破壊ひずみ又は曲げ破壊ひずみ、及び破壊じん性において優れたものであり、例えば、後述の試験例では、II型ミクロフィブリル化セルロースをI型ミクロフィブリル化セルロースに置き換えた成形体と比較して、引張破壊ひずみが約3倍高かった。
【0016】
本発明のII型ミクロフィブリル化セルロースはミクロフィブリル化セルロースをアルカリ溶液処理することによって製造することが可能であり、また、植物セルロース繊維を含有する材料をアルカリ溶液処理し、アルカリ溶液処理によりII型結晶構造に変化したセルロース材料を公知のミクロフィブリル化セルロースの製造方法と同様な方法で微細化することによっても製造することが可能である。本明細書では便宜上、前者をミクロフィブリル化セルロースの製造方法1、後者をミクロフィブリル化セルロースの製造方法2と称することがある。
【0017】
ミクロフィブリル化セルロースの製造方法1において、被処理物であるミクロフィブリル化セルロースの製造方法は公知であり、一般的には、セルロースをリファイナー、高圧ホモジナイザー、媒体撹拌ミル、石臼、グラインダー等により磨砕ないし叩解することによって解繊又は微細化して製造されるが、特開2005-42283号公報に記載の方法等の公知の方法で製造することもできる。また、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))を利用して製造することもできる。さらに、市販品を利用することも可能である。セルロースは、植物(例えば木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農業残廃物、布、パルプ、再生パルプ、古紙)、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))等を起源とするものが知られているが、本発明ではそのいずれも使用できる。好ましくは植物、微生物由来のセルロース繊維であり、より好ましくは植物由来のセルロース繊維である。
【0018】
非処理物であるミクロフィブリル化セルロースの繊維径は平均値が4nm~400nmであることが好ましく、4nm~200nmであることがより好ましく、4nm~100nmであることがより一層好ましい。また、その繊維長は平均値が50nm~50μmであることが好ましく、100nm~10μmであることがより好ましい。
【0019】
ミクロフィブリル化セルロースの製造方法1におけるアルカリ溶液処理は、ミクロフィブリル化セルロース(被処理物)にアルカリ溶液を接触させることにより行われる。接触の方法は特に制限されないが、被処理物をアルカリ溶液に浸漬する方法、被処理物にアルカリ溶液を噴霧する方法、被処理物にアルカリ溶液を滴下する方法、被処理物にアルカリ溶液を流しかける方法などが例示される。好ましいアルカリ溶液処理の方法は、被処理物をアルカリ溶液に浸漬する方法である。
【0020】
アルカリ溶液処理においてアルカリ溶液としては、水酸化アルカリ水溶液、アンモニア水等を使用することができる。好ましくは水酸化アルカリ水溶液、アンモニア水であり、より好ましくは水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水であり、より一層好ましくは水酸化ナトリウム水溶液である。アルカリ溶液の濃度は特に制限されるものではなく、通常5~40重量%、好ましくは5~30重量%、より好ましくは10~25重量%、より一層好ましくは15~25重量%である。
【0021】
アルカリ溶液処理の温度は通常0~150℃、好ましくは15~100℃、より好ましくは15~60℃である。また、アルカリ溶液処理の時間は通常1秒~24時間好ましくは1分~18時間、より好ましくは1~16時間である。また、アルカリ溶液処理は加圧条件下で行うこともできる。
【0022】
アルカリ溶液処理後は必要に応じて水等で洗浄、乾燥等の工程を経てセルロースII型結晶構造を有するミクロフィブリル化セルロースを得る。
【0023】
本発明のミクロフィブリル化セルロースの製造方法2は、植物セルロース繊維を含有する材料をアルカリ溶液処理し、アルカリ溶液処理によりII型結晶構造に変化したセルロース材料を公知のミクロフィブリル化セルロースの製造方法と同様な方法で解繊又は微細化することによって製造するものである。植物セルロース繊維を含有する材料としては、例えば木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ、再生パルプ、古紙が例示できるが、これらに限定されず、ミクロフィブリル化セルロースの製造に利用されている植物セルロース繊維を含有するものを使用できる。また、これらの材料は必要に応じてリファイナー等により、アルカリ溶液処理を効率よく行える形状(例えば、粉体、繊維状、シート状等)とすることができる。これらの材料は、リグニンなどの細胞壁マトリックス成分が含まれる場合は、その一部またはすべてを除去するなどして、セルロース結晶がアルカリで十分膨潤する状態に調整した後、製造方法1において説明したと同じアルカリ溶液処理に供される。
【0024】
アルカリ溶液処理された材料は、ミクロフィブリル化セルロースの製造に使用される公知の解繊又は微細化技術、一般的には高圧ホモジナイザー、媒体撹拌ミル、石臼、グラインダー等により磨砕ないし叩解することによって本発明のミクロフィブリル化セルロースとされるが、特開2005-42283号公報に記載の方法等の特殊な公知の方法を応用して製造することもできる。
【0025】
本発明の成形体の製造方法は、ミクロフィブリル化セルロースを成形又は必要に応じて樹脂を0~99重量%配合して成形して成形体を製造する方法において、ミクロフィブリル化セルロースとして本発明のミクロフィブリル化セルロースを使用する点に特徴がある。成形の方法は、一般的なミクロフィブリル化セルロースを成形する方法、ミクロフィブリル化セルロースを含有する樹脂を成形する方法を適用することができる。
【0026】
本発明のミクロフィブリル化セルロースの強度増強方法は、アルカリ溶液処理により、ミクロフィブリル化セルロースの引張強度又は曲げ強度、引張破壊ひずみ又は曲げ破壊ひずみ、及び破壊じん性(破壊までの仕事量)を増強するものである。前述のように、II型結晶構造を有するミクロフィブリル化セルロースから作製したシートの引張強度、引張破壊ひずみ及び破壊じん性が、通常のミクロフィブリル化セルロースのそれら物性と比較して、大幅に増強されたことから、アルカリ溶液処理によってミクロフィブリル化セルロース自身も成形体と同様に強度特性が向上されていると考えられる。本発明の強度増強方法におけるアルカリ溶液処理は、本発明のミクロフィブリル化セルロースの製造方法におけるアルカリ溶液処理と同様とすることができる。すなわち、本発明の強度増強方法におけるアルカリ溶液処理条件は上記の本発明の製造方法1におけるアルカリ溶液処理条件を採用することができる。
【0027】
本発明の成形体の強度増強方法は、本発明の成形体の製造方法と同じく、ミクロフィブリル化セルロースを成形又は必要に応じて樹脂を0~99重量%配合して成形するにあたって、ミクロフィブリル化セルロースとして本発明のミクロフィブリル化セルロースを使用する点に特徴がある。成形の方法は、一般的なミクロフィブリル化セルロースを成形する方法、ミクロフィブリル化セルロースを含有する樹脂を成形する方法を適用することができる。本発明の成形体の強度増強方法では、一般的なミクロフィブリル化セルロースを使用して得られる成形体と比較して、引張強度又は曲げ強度、引張破壊ひずみ又は曲げ破壊ひずみ、及び破壊じん性が増強される。特に破壊ひずみ及び破壊じん性の増強の程度は、後述の試験例に示すように、パルプを含有する成形体におけるパルプのアルカリ処理の有無による破壊ひずみ及び破壊じん性の増強と比較して顕著に大きいものであった。
【0028】
本発明のミクロフィブリル化セルロース、本発明の製造方法又は強度増強方法により得られるミクロフィブリル化セルロースは、成形体の材料として非常に有用である。なぜなら、本発明のミクロフィブリル化セルロースの成形体及び該ミクロフィブリル化セルロースを含有する樹脂成形体は、一般的なミクロフィブリル化セルロースの成形体及び該ミクロフィブリル化セルロースを含有する樹脂成形体と比較して強度特性が非常に優れているからである。したがって、従来ミクロフィブリル化セルロース成形体及びミクロフィブリル化セルロース含有樹脂成形体が使用されていた分野に加え、従来のミクロフィブリル化セルロース成形体及びミクロフィブリル化セルロース含有樹脂成形体よりも耐衝撃性が要求される分野にも使用できる。例えば、自動車、電車、船舶、飛行機等の輸送機器の内装材、外装材、構造材等;パソコン、テレビ、電話、時計等の電化製品等の筺体、構造材、内部部品等;携帯電話等の移動通信機器等の筺体、構造材、内部部品等;携帯音楽再生機器、映像再生機器、印刷機器、複写機器、スポーツ用品等の筺体、構造材、内部部品等;建築材;文具等の事務機器等として使用できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明では強度、例えば引張強度、曲げ強度、引張破壊ひずみ、曲げ破壊ひずみ、破壊じん性が大きく増強されたミクロフィブリル化セルロース及び該ミクロフィブリル化セルロースを含有する成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を実施例等により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
試験例:
ミクロフィブリル化セルロース(以下、MFCと称することがある)、アルカリ溶液処理ミクロフィブリル化セルロース、パルプ、アルカリ溶液処理パルプをシート状に成形し、各々、フェノール樹脂を混合し、引張強度試験、曲げ強度試験、X線回析を行った。結果を図1(引張強度試験)、図2(曲げ強度試験)及び図3(X線回析)に示した。
【0032】
<試料>
・MFC:「セリッシュ」(KY100G、ダイセル化学工業製)
・パルプ:NBKP(漂白済み針葉樹クラフトパルプ、大昭和製紙製)
・フェノール樹脂:レゾールタイプ(PL2340、数平均分子量3300、群栄化学工業社製)
【0033】
<シートの作成>
固形分0.2重量%のパルプ懸濁水をよく撹拌し、吸引濾過することによってフィルター上に製膜し、濾紙を取り除いた。厚さ約0.2mmのシートを作った後、そのシートが水分量約40%になるまで脱水し、70℃で24時間乾燥させた。同様にして、固形分0.2重量%のMFCの懸濁水からシートを作成した。
【0034】
<アルカリ溶液処理>
MFCシート及びパルプシートを、各々、20%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に常温で12時間浸漬した後、流水中で水洗してアルカリを除去した。なお、対照とするシートにはこのアルカリ処理は行わなかった。
【0035】
<引張試験用サンプルの作成>
4種のシート(非アルカリ溶液処理MFCシート、アルカリ溶液処理MFCシート、非アルカリ溶液処理パルプシート及びアルカリ溶液処理パルプシート)を引張試験に供するために成形した。
MFCシートを4重に重ね合わせた後、フェノール樹脂を10重量%溶解したメタノール溶液に20℃で浸漬した。なお、最終の成形体におけるフェノール樹脂含有量をなるべく均等にするため、パルプシートの場合はフェノール樹脂を溶解したメタノール溶液の濃度は5%とした。その後、メタノールを除去して、金型内で、100MPa、160℃、30分間ホットプレス成形した。得られた成形体は、大きさが50mm×40mm×0.3mm、密度が、1.42g/cm3であった。また、非アルカリ溶液処理MFC成形体、アルカリ溶液処理MFC成形体、非アルカリ溶液処理パルプ成形体及びアルカリ溶液処理パルプ成形体におけるフェノール樹脂の含有量は、各々、19.3重量%、18.5重量%、18.9重量%及び16.0重量%であった。
【0036】
<曲げ試験用サンプルの作成>
4種のシート(非アルカリ溶液処理MFCシート、アルカリ溶液処理MFCシート、非アルカリ溶液処理パルプシート及びアルカリ溶液処理パルプシート)を曲げ試験に供するために成形した。
MFCシートを15重に重ね合わせた後、フェノール樹脂を10重量%溶解したメタノール溶液に20℃で浸漬した。なお、最終の成形体におけるフェノール樹脂含有量をなるべく均等にするため、パルプシートの場合はフェノール樹脂を溶解したメタノール溶液の濃度は5%とした。その後、メタノールを除去して、金型内で、100MPa、160℃、30分間ホットプレス成形した。得られた成形体は、大きさが50mm×40mm×1mm、密度が、1.42g/cm3であった。また、非アルカリ溶液処理MFC成形体、アルカリ溶液処理MFC成形体、非アルカリ溶液処理パルプ成形体及びアルカリ溶液処理パルプ成形体におけるフェノール樹脂の含有量は、各々、13.6重量%、18.5重量%、18.9重量%及び19.3重量%であった。
【0037】
<引張強度試験>
引張試験用サンプルを30mm×4mm×0.3mmの大きさに切断し、長さ方向の両端をチャック(チャック間の距離は20mm)で挟み、1mm/分の変形速度で引っ張った。結果を図1に示す。
【0038】
<曲げ強度試験>
曲げ強度用サンプルを40mm×7mm×1mmの大きさに切断し、長さ方向の両端を2点で支持し(スパン30mm)、5mm/分の変形速度で中央に集中加重を加えた(3点支持中央集中荷重方式)。結果を図2に示す。
【0039】
<X線回析>
上記のシートの作成方法と同様にして、厚さ0.1mmの非アルカリ溶液処理MFCシート及びアルカリ溶液処理MFCシート(25mm×25mm×0.1mm)を作成しX線回析に供した。結果を図3に示す。
【0040】
引張強度試験(図1)では、MFCは20%濃度のアルカリ溶液処理(NaOH水溶液浸せき12時間)の有無で、破壊ひずみが約0.025(非アルカリ溶液処理MFC)から約0.075(アルカリ溶液処理MFC)へと、約3倍も増大した(図1上段)。これに対して、パルプは、アルカリ処理で破壊ひずみは増大したが、それは約0.01(非アルカリ溶液処理パルプ)が約0.014(アルカリ溶液処理パルプ)になった程度であった(図1下段)。したがって、アルカリ処理によって得られるセルロース繊維含有成形体の引張破壊ひずみ増強効果(破壊じん性(破壊までの仕事量)増強効果)は、MFCの方が、パルプよりもはるかに大きいものであった。
【0041】
曲げ強度試験(図2)では、パルプでは、曲げによる破壊ひずみは、アルカリ処理により、約0.032(非アルカリ溶液処理パルプ)から約0.04(アルカリ溶液処理パルプ)に増大し、アルカリ処理による効果は約1.25倍であり、約25%の向上であった(図2下段)。これに対して、MFCでは、約0.032(非アルカリ溶液処理MFC)から少なくとも0.11(アルカリ溶液処理MFC)に増大した(なお、アルカリ溶液処理MFCの試験では、大きくたわんで破断しなかったため、試験を途中でストップした。)(図2上段)。したがって、アルカリ処理によって得られるセルロース繊維含有成形体の曲げ破壊ひずみ増強効果(破壊じん性(破壊までの仕事量)増強効果)は、MFCの方が、パルプよりもはるかに大きいものであった。
【0042】
MFCシートのX線の回折(図3)では、回折角約22.5°に見られるセルロースI(図3b)の特徴的なピークが消失し、セルロースII(図3a)に特有のピークが回折角約20°に現れている。したがって、アルカリ処理によって、セルロースの結晶形態がセルロースIからセルロースIIに変化したことが明らかである。また、同様の結晶構造変化はパルプシートにおいても認められた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は従来ミクロフィブリル化セルロースが利用されていた分野だけでなく、より強度の求められる分野にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】試験例の引張強度試験の結果を表すグラフであり、上段はMFCサンプル、下段はパルプサンプルの結果を表す。また、縦軸は応力(MPa)、横軸はひずみである。
【図2】試験例の曲げ強度試験の結果を表すグラフであり、上段はMFCサンプル、下段はパルプサンプルの結果を表す。また、縦軸は応力(MPa)、横軸はひずみである。
【図3】試験例におけるX線回析の結果を表すグラフである。aはアルカリ処理サンプルのチャート、bは非アルカリ処理サンプルのチャートを示す。縦軸は強度、横軸は回析角である。
Drawing
(In Japanese)【図1】
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(In Japanese)【図2】
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(In Japanese)【図3】
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