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明細書 :ケラチンフィルムを用いた毛髪損傷度測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5025013号 (P5025013)
公開番号 特開2009-300191 (P2009-300191A)
登録日 平成24年6月29日(2012.6.29)
発行日 平成24年9月12日(2012.9.12)
公開日 平成21年12月24日(2009.12.24)
発明の名称または考案の名称 ケラチンフィルムを用いた毛髪損傷度測定方法
国際特許分類 G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/68        (2006.01)
FI G01N 33/50 H
G01N 33/68
請求項の数または発明の数 14
全頁数 15
出願番号 特願2008-153512 (P2008-153512)
出願日 平成20年6月11日(2008.6.11)
審査請求日 平成23年5月10日(2011.5.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】川副 智行
【氏名】渡辺 智子
【氏名】藤井 敏弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100092901、【弁理士】、【氏名又は名称】岩橋 祐司
審査官 【審査官】吉田 将志
参考文献・文献 特表2007-532925(JP,A)
特開2002-332357(JP,A)
特開2001-356125(JP,A)
調査した分野 G01N 33/50
G01N 33/68
MEDLINE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
毛髪を蛋白質変性剤および還元剤により溶解させた毛髪ケラチン蛋白質溶液と、展開用溶液とを接触させ、乾燥させた後に得られるケラチンフィルムを用いた、毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の毛髪損傷度の測定方法において、前記蛋白質変性剤が尿素および/またはチオ尿素であることを特徴とする毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の毛髪損傷度の測定方法において、前記展開用溶液が過塩素酸溶液、グアニジン塩酸溶液、酢酸緩衝液、酢酸溶液から選択される1種または2種以上であることを特徴とする毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の毛髪損傷度の測定方法において、前記還元剤が2-メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、チオグリコール酸から選択される1種または2種以上であることを特徴とする毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の毛髪損傷度の測定方法において、前記ケラチンフィルムが、前記毛髪ケラチンタンパク質溶液へ展開用溶液を混合し、該混合溶液を水中に注入することにより得られることを特徴とする毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の毛髪損傷度の測定方法において、前記ケラチンフィルムが、前記毛髪ケラチン蛋白質溶液を展開用溶液中に注入することにより得られることを特徴とする毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の毛髪損傷度の測定方法において、前記ケラチンフィルムが、展開用溶液を前記毛髪ケラチンタンパク質溶液中に注入することにより得られることを特徴とする毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法。
【請求項8】
請求項5に記載の毛髪損傷度の測定方法において、前記展開用溶液が酢酸溶液であることを特徴とする毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法。
【請求項9】
請求項6または7に記載の毛髪損傷度の測定方法において、前記展開用溶液が酢酸緩衝液であることを特徴とする毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の毛髪損傷度の測定方法において、前記毛髪処理剤がブリーチ剤、ヘアカラー剤、毛髪洗浄剤から選択される1種または2種以上であることを特徴とする毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法。
【請求項11】
下記工程を備えることを特徴とする、請求項1に記載の毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法。
(I)ケラチンフィルムを毛髪処理剤に接触させる。
(II)毛髪処理剤接触後のケラチンフィルムを還元剤または変性剤溶液に接触させ、タンパク質を抽出する。
(III)前記抽出液におけるタンパク質量を測定する。
【請求項12】
請求項11に記載の毛髪損傷度の測定方法において、
(I)工程が、さらに、ケラチンフィルムを接触させた毛髪処理剤中のタンパク質量を測定することを含むことを特徴とする毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の毛髪損傷度の測定方法において、前記還元剤溶液が、5%2-メルカプトエタノール溶液であることを特徴とする毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法。
【請求項14】
請求項11または12に記載の毛髪損傷度の測定方法において、前記変性剤溶液が、8M尿素溶液であることを特徴とする毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチンフィルムを用いた毛髪損傷度測定方法、特にその診断能の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を損傷させる要因として、紫外線照射、大気中の埃、ドライヤーの熱、コーミングによる摩擦、過度の洗髪、パーマ、染色・染毛剤の使用等が挙げられる。近年、種々の要因によって引き起こされる毛髪の損傷に関する研究が盛んに行われており、その損傷度を測定することが求められている。
毛髪は簡単に採取できる生体試料であり、加工・処理も容易であることから、毛髪損傷度を測定する手法としては、毛髪の損傷に伴う毛髪の物理特性の変化を測定するものが多い。中でも毛軸方向への伸長応力は、損傷により低下する毛髪強度の指標として有効であり、引っ張り強度試験として汎用されている(例えば特許文献1を参照)。この手法を用いて、損傷度を測定するためには、初期値もしくは比較対象となる損傷の少ない健常毛髪を入手し、この毛髪に対し損傷処理を行い、引っ張り強度にて損傷度を定量化するものである。さらに改善した手法としては、毛髪を長手方向に沿って引き裂いて引き裂き強度を求め、該引き裂き強度に基づいて毛髪の損傷度を評価する手法も開発されている(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、これらの測定法は毛髪の物理特性変化を測定することから、大きな物理特性変化を伴う損傷に限定されてしまい、物理特性変化を伴わない微細な初期損傷を検出することができないという課題があった。
【0003】
これらを解決するために本発明者らは、毛髪の物理特性以外の指標として、毛髪損傷に伴い溶出してくタンパク質の量の変化を測定する手法(例えば、特許文献3を参照)を開発している。本手法は物理特性変化に反映しない毛髪の初期ダメージを検出するのに有効である。しかしながら、本手法は毛髪構成タンパク質の変性によって起こる二次的な現象を検出するものであるため、より直接的な損傷検出が望まれていた。
【0004】
そこで本発明者らは、毛髪内部で発生するタンパク変性を直接的に検出する手法として、毛髪損傷に伴い発生する毛髪内のカルボニル基の定量を蛍光色素を用いて測定する方法を提案している(例えば、特許文献4を参照)。この手法は、毛髪物性特性に反映しないような初期損傷を定量化でき、蛍光色素を用いることで高感度な損傷度の定量法であった。
【0005】
しかしながら、これらの手法はいずれも初期値もしくは比較対象となる健常毛髪が必要であることから、測定法の感度以前に、初期値もしくは比較対象となる健常毛髪のダメージ履歴や個体差に依存したばらつきが問題となっていた。毛髪は外観でダメージをどれくらい受けているかを判別する方法がなく、検出感度が上がればあがるほど損傷程度の同じ毛髪を準備する必要がある。しかしながら、実際のところこれを制御する処方はなく、毛髪構成タンパク質を維持しながら、ダメージ履歴や個体差を均一化する処理方法の開発が課題となっていた。
【0006】
前述の問題を解決するものとして、既に本発明者等は、効率性が良く、ありのままに近い状態で解析に適したケラチン蛋白質の抽出法に関し報告している(例えば、特許文献5を参照)。すなわち、還元剤共存下で特定の尿素系の化合物で毛髪を処理し、毛髪コルテックス部位を構成するミクロフィブリンと細胞間充物質あるマトリックスのケラチン蛋白質を溶出させて採取し、この溶出後の残渣から形状を維持したキューティクル部位を採取するものである。さらに本発明者等は、この方法をさらに改良して採取したケラチン蛋白質から構成されたフィルム、ゲル等の成形品の製造方法をも提供している(例えば、特許文献6を参照)。本フィルムは毛髪構成タンパク質を変性させることなく保持していることがすでに判明している(例えば、非特許文献1を参照)。
【0007】

【特許文献1】特公平3-10899号公報
【特許文献2】特開2002-282240号
【特許文献3】特許公報 第3862665号
【特許文献4】WO2005/057211
【特許文献5】特開2002-114798号公報
【特許文献6】特開2002-332357号公報
【非特許文献1】日本香粧品学会誌 Vol.30, No.1, pp.5-9 (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、毛髪ケラチンフィルムを用いて、ブリーチ剤、ヘアカラー剤、及び/または毛髪洗浄剤などの毛髪処理剤による毛髪損傷度を測定する方法に関する報告は未だなされていない。さらにこれまでの毛髪損傷度を測定する方法は、煩雑な操作が伴ううえに、前述のように測定値にばらつきがあった。本発明の目的は、測定値のばらつきが改善され、簡便な毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するため、本発明者等は、前記ケラチンフィルムを用いた、毛髪処理剤による毛髪損傷度を測定する方法について鋭意研究を重ねた結果、個体差を無くした均一ケラチンフィルムを用いることにより、測定値のばらつきが改善され、毛髪処理剤による毛髪損傷度との相関に優れた測定方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、毛髪を蛋白質変性剤および還元剤により溶解させた毛髪ケラチン蛋白質溶液と、展開用溶液とを接触させ、乾燥させた後に得られるケラチンフィルムを用いた、毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法を提供するものである。
【0010】
前記測定方法において、前記蛋白質変性剤が尿素および/またはチオ尿素であることが好適である。
また、前記測定方法において、前記展開用溶液が過塩素酸溶液、グアニジン塩酸溶液、酢酸緩衝液、酢酸溶液から選択される1種または2種以上であることが好適である。
また、前記還元剤が2-メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、チオグリコール酸から選択される1種または2種以上であることが好適である。
【0011】
前記測定方法において、前記ケラチンフィルムが、前記毛髪ケラチンタンパク質溶液へ展開用溶液を混合し、該混合溶液を水中に注入することにより得られることが好適である。
また、前記測定方法において、前記ケラチンフィルムが、前記毛髪ケラチン蛋白質溶液を展開用溶液中に注入することにより得られることが好適である。
さらに、前記測定方法において、前記ケラチンフィルムが、展開用溶液を前記毛髪ケラチンタンパク質溶液中に注入することにより得られることが好適である。
また、前記測定方法において、前記展開用溶液が酢酸溶液であることが好適である。
また、前記測定方法において、前記展開用溶液が酢酸緩衝液であることが好適である。
前記測定方法において、前記毛髪処理剤がブリーチ剤、ヘアカラー剤、毛髪洗浄剤から選択される1種または2種以上であることが好適である。
【0012】
また、本発明は、前記測定方法において、下記工程を備えることを特徴とする。
(I)ケラチンフィルムを毛髪処理剤に接触させる。
(II)毛髪処理剤接触後のケラチンフィルムを還元剤または変性剤溶液に接触させ、タンパク質を抽出する。
(III)前記抽出液におけるタンパク質量を測定する。
【0013】
また、本発明は、前記測定方法において、(I)工程が、さらに、ケラチンフィルムを接触させた毛髪処理剤中のタンパク質量を測定することを含むことを特徴とする。
また、前記測定方法において、前記還元剤溶液が、5%2-メルカプトエタノール溶液であることが好適である。
また、前記測定方法において、前記変性剤溶液が、8M尿素溶液であることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、測定値のばらつきがなく、毛髪処理剤による毛髪損傷との相関性に優れた毛髪損傷度の測定を簡便に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明にかかる毛髪損傷度の測定方法は、特に、近年の日本人女性の日常におけるダメージ進行の主要因であるブリーチ剤、ヘアカラー剤、及び/または、界面活性剤を含む毛髪洗浄剤等の毛髪処理剤による毛髪への損傷度を測定するために用いられる。ただし、毛髪損傷の要因はこれに限定されず、その他毛髪に適用し得る化粧料、医薬品、医薬部外品等による毛髪状態の変化を測定する手段として利用することも可能である。
また、本発明において、「毛髪」は、ヒトの毛髪以外に、動物の体毛、羽毛を含むものとする。またケラチン蛋白質を含む爪や皮膚等にも本発明にかかる測定方法を適用することも可能である。
まず最初に、本発明にかかる、毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法に用いるケラチンフィルムについて説明する。
【0016】
ケラチンフィルムの調製
毛髪から、それを構成するケラチン蛋白質群を抽出するために、蛋白質変性剤を用いる。蛋白質変性剤としては、尿素系の化合物が好ましく、例えば、尿素、チオ尿素、およびこれらの誘導体等が挙げられる。これらの尿素系蛋白質変性剤の1種または2種以上を混合して用いることが好ましい。より好ましくは、尿素とチオ尿素を混合して用いることである。尿素とチオ尿素を混合して用いる場合には、混合質量比が5:1~1:2であることが好ましい。チオ尿素の混合比が前記範囲より少ないと蛋白質の変性作用が劣る場合があり、また前記範囲を超えると、ケラチン蛋白質群の抽出率が低下する傾向がある。
【0017】
前記蛋白質変性剤は、毛髪サンプル処理液中の濃度が30~70質量%であることが好ましい。30質量%未満であると、ケラチン蛋白質群の抽出率が低下する傾向があり、また、70質量%を超えて用いても増量による抽出率の向上の効果は認められず、さらに毛髪サンプル処理液の粘性が高くなり作業性が悪くなる場合がある。ここで、「毛髪サンプル処理液」とは、毛髪サンプルと蛋白質変性剤からなる毛髪ケラチン蛋白質溶解液、および後述する還元剤等を含み、ケラチン蛋白質群を抽出する製造過程の混合溶液を意味する。
前述のように蛋白質変性剤を用いることにより、温和な条件で効率よくケラチン蛋白質群を毛髪から溶解させて抽出することが可能となる。
【0018】
また、本発明に用いるケラチンフィルムを調製するにあたり、前記蛋白質変性剤と共に還元剤を併用する。還元剤としては、例えば2-メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、チオグリコール酸等のチオアルコール類が挙げられる。これらの1種または2種以上を組合せて用いることができる。
還元剤を前記蛋白質変性剤と併用することにより、ケラチン蛋白質群の抽出率をさらに向上させることができる。これは、強固なケラチン繊維構造を蛋白質変性剤が変性させ、続いて還元剤がケラチン蛋白質間の強固なS-S結合を効率良く解離させ、さらに毛髪サンプル処理液中での再結合が起こりにくくするためと考えられる。
【0019】
前記還元剤を蛋白質変性剤と併用する場合、毛髪サンプル処理液中0.5~40質量%の濃度で含有させることが好ましく、より好ましくは1~20質量%である。ただし、用いる還元剤の毛髪サンプル処理液中における溶解性により適宜決定されることが好ましい。
還元剤の濃度が0.5質量%未満であると、ケラチン蛋白質間の強固なS-S結合の還元切断が十分に行われない傾向があり、また、40質量%の濃度を超えて使用すると毛髪処理液中でのケラチン蛋白質群の溶解性が悪くなる場合がある。
【0020】
毛髪ケラチン蛋白質溶液を得るための処理時間は、処理温度にも左右されるが、1~4日間であることが好ましい。また、処理温度は、20~60℃であることが好ましい。20℃未満であると反応の進行が遅くなり効率が悪く、60℃を超えると、毛髪サンプル処理液がアルカリ性を呈しているため、ペプチド結合の切断や置換基変換、架橋等の副反応を伴う場合がある。
また、毛髪サンプルと毛髪サンプル処理液の比は、1~100mg毛髪サンプル/ml毛髪サンプル処理液であることが好ましい。
毛髪サンプル処理液は、ケラチン蛋白質が十分に抽出された後、ろ過により末抽出毛髪を除き、毛髪ケラチン蛋白質溶液を得ることができる。
【0021】
蛋白質変性剤と還元剤とを併用して毛髪サンプルを処理し、ろ過した後に得られる毛髪ケラチン蛋白質溶液の固体化またはゲル化のため、展開用溶液を接触させる。この固体化またはゲル化により、本発明にかかる紫外線による毛髪損傷度の測定方法に用いるのに適した形態であるフィルムとして成形される。
展開用溶液としては、例えば、トリクロロ酢酸、グアニジン塩酸、過塩素酸、およびそれらの誘導体等の変性剤と、水、生理食塩水、低級アルコール等の溶媒を混合して得られる変性剤溶液、塩酸、硫酸、酢酸、リン酸およびそれらの塩等の酸性物質からなる酸性溶液が挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。本発明で用いるケラチンフィルムの調製においては、展開用溶液としてグアニジン塩酸、過塩素酸の変性剤または酢酸と水を混合して得られる過塩素酸溶液、グアニジン塩酸溶液、酢酸緩衝液、酢酸溶液から選択される1種または2種以上であることが好ましい。特に好ましくは、酢酸緩衝液(pH4.0)及び/または酢酸溶液である。
【0022】
前記展開用溶液として用いる前記変性剤溶液の濃度は、10~60質量%であることが好ましい。また、前記展開用溶液として用いる酸性溶液の濃度は、10~500mMであることが好ましい。
前記展開用溶液は、前記毛髪ケラチン蛋白質溶液のイオン強度を下げる作用を有し、これにより、毛髪サンプル処理液中の蛋白質変性剤、還元剤の溶解性の低下を招く。その結果、ケラチン蛋白質群の溶解性が低下、それに伴いケラチン蛋白質間のS-S結合が解離して-SH状態であったものが、再びS-S結合が再形成されて、短時間にケラチン蛋白質の固体化が進行することになる。
【0023】
本発明で用いるケラチンフィルムの調製する場合、Post-cast法またはPre-cast法を適用することができる。
Post-cast法としては、シャーレ等の容器に予め前記展開用溶媒を満たしておき、これに毛髪ケラチン蛋白質溶液をキャストする方法(フォワード法)、または毛髪ケラチン蛋白質溶液を予め添加したシャーレ等の容器に、展開用溶液をキャストする方法(リバース法)が挙げられる。
Pre-cast法とは、予め毛髪ケラチン蛋白質に展開用溶媒を混合し、水を張ったシャーレ等の容器へ前記混合溶液をキャストする方法である。
本発明においては、前記Post-cast法及びPre-cast法のいずれの適用によっても、本発明にかかる紫外線による毛髪損傷度の測定方法に適した均一性に優れたケラチンフィルムを調製することができる。
特に、Pre-cast法に用いる展開用溶媒としては酢酸溶液が好適に使用され得る。Post-cast法においては、酢酸緩衝液が展開用溶媒として好適である。
また、還元剤としては、2-メルカプトエタノールがpost-cast法での使用に適し、ジチオスレイトールがpre-cast法での使用に適している。
展開用溶液は、毛髪ケラチン蛋白質溶液に対し10倍~10000倍の質量比で用いることが好ましい。前記範囲内で展開用溶液を毛髪ケラチン蛋白質溶液に接触させることにより、適度な薄さを呈する薄膜を調製することができる。
【0024】
シャーレ内に形成された薄膜状の毛髪ケラチン蛋白質成形品を前記展開用溶媒で洗浄する。洗浄の回数は特に限定されないが、1~5回程度であることが好ましい。洗浄後、溶液を取り除き、シャーレ上の毛髪ケラチン蛋白質成形品を乾燥させ、ケラチンフィルムを得ることができる。乾燥の方法は特に限定されないが、埃がつかない室温下で静置することにより乾燥を行うことなどが挙げられる。
【0025】
ケラチンフィルムの調製に用いる毛髪サンプルは、油分が多く含まれているものもあり、処理前に予め脱脂しておいてもよい。脱脂の方法としては、例えばクロロホルムとメタノールの混合溶媒での処理等が挙げられるが、その他の慣用の方法を用いてもよく特に限定されない。
【0026】
毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法
本発明にかかる毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定には、前述のケラチンフィルムを測定検体として用いる。測定方法は、基本的に下記(I)~(III)の工程を備える。
(I)ケラチンフィルムを毛髪処理剤に接触させる。
(II)毛髪処理剤接触後のケラチンフィルムを溶媒に接触させ、タンパク質を抽出する。
(III)溶媒抽出液におけるタンパク質量を測定する。
以下、各工程について詳述する。
【0027】
第(I)工程において、測定対象となる毛髪を用いて調製したケラチンフィルムに、評価に用いる毛髪処理剤を接触させる。このときの接触時間は特に限定されないが、例えば一般のブリーチ剤またはヘアカラー剤であれば、通常の処理時間に応じて1~30分の間で行い、毛髪洗浄剤であれば3分程度が好ましい。この際、ケラチンフィルムはシャーレ等の容器に固定されていることが好ましいが、これに限定されるものではない。
ケラチンフィルムを毛髪処理剤と接触させた後、毛髪処理剤を容器から取り出し、該フィルムは蒸留水で十分に洗浄し、場合により乾燥させてから第(II)工程に供する。
なお、複数の毛髪処理剤による影響を評価する場合は、前記洗浄及び/または乾燥を行ったフィルムを第二の毛髪処理剤に接触させ、以下前記処理を繰り返せばよい。
また、ケラチンフィルムを接触させ、容器から取り出した毛髪処理剤については、そのタンパク質量を測定し、毛髪処理剤の使用段階ごとに影響を比較することもできる。この操作は、特に、ケラチンフィルムを界面活性剤を含む毛髪洗浄剤によって処理した際に行うことが好ましい。なお、界面活性剤を含む毛髪洗浄剤のタンパク質量を測定する場合は、特にLowry法に準じて前記上清の750nmにおける吸光度を測定し、予め策定しておいた検量線にてタンパク質量に換算することが好ましい。
【0028】
第(II)工程において、(I)工程で毛髪処理剤と接触させたケラチンフィルムを、還元剤または変性剤溶液に接触させ、タンパク質の抽出を行う。
還元剤溶液としては、特に、50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.5)をベースとした5%2-メルカプトエタノール溶液が本発明において好適である。
また、変性剤溶液としては、特に、50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.5)をベースとした8M尿素溶液が本発明において好適である。
通常、これらの還元剤及び変性剤溶液は、毛髪のタンパク質を可溶化させる際に混合溶液として用いられるが、本発明においては、前記混合溶液によってタンパク質を可溶化させると毛髪処理剤の影響が確認できなくなる。そのため、前記還元剤及び変性剤溶液は、いずれか一方をケラチンフィルムの処理に用いることが好ましい。
特に、ケラチンフィルムをブリーチ剤またはヘアカラー剤等の毛髪処理剤と接触させた場合、前記還元剤溶液に接触させると抽出されるタンパク質は処理剤適用前(未処理)のものより増加するが、前記変性剤溶液に接触させると減少する。したがって、抽出されたタンパク質を測定することによって、毛髪処理剤による毛髪損傷度を確認することが可能となる。
【0029】
前記還元剤溶液の調製例としては、pHが8.5となるように調整した50mM Tris-HCl緩衝液に、濃度が5%となるように2-メルカプトエタノールを溶解させて作成することが挙げられる。
また、前記変性剤溶液の調製例としては、pHが8.5になるように調整した50mM Tris-HCl緩衝液に、濃度が8Mとなるように尿素を溶解させて作成することが挙げられる。
ケラチンフィルムと前記還元剤または変性剤溶液の接触条件は、適宜調整可能であるが、50℃下において3時間程度接触させることが好適である。前記フィルム接触処理後の抽出溶液は、遠心分離を行い、上清を採取する。
【0030】
第(III)工程において、前記(II)工程で得られた上清を用いてタンパク質の定量を行う。タンパク質の定量は、紫外線吸収法、Bradford法、Lowry法、BCA法などの分光光度計を用いた公知の比色定量法によって行うことができる。本発明において、タンパク質の抽出に上記還元剤または変性剤溶液を用いた場合は、Bradford法に準じて前記上清の595nmにおける吸光度を測定し、予め策定しておいた検量線にてタンパク質量に換算することが好ましい。
【0031】
以下に、上記した本発明にかかる工程について毛髪処理剤ごとに例示するが、本発明はこれらに限定されない。
(工程例1:ブリーチ剤またはヘアカラー剤)
(I)ケラチンフィルムにブリーチ剤またはヘアカラー剤を1~30分間接触させる。その後、前記処理後のケラチンフィルムと、未処理のケラチンフィルムとを蒸留水で洗浄する。
(II)前記処理フィルムと未処理フィルムを、各々5%2-メルカプトエタノール溶液または8M尿素溶液に50℃下で3時間接触させ、ケラチンフィルムからタンパク質を抽出する。
(III)得られた2つの抽出液についてBradford法にてタンパク質量を測定し、比較評価する。
【0032】
(工程例2:界面活性剤水溶液(毛髪洗浄剤))
(I)ケラチンフィルムに一定量の界面活性剤水溶液(毛髪洗浄剤)を3分間接触させる。その後、フィルムを接触させた界面活性剤水溶液を回収し、該溶液に含まれるタンパク質量をLowry法にて測定する。また、ケラチンフィルムは蒸留水で洗浄する。
(II)前記処理フィルムを5%2-メルカプトエタノール溶液または8M尿素溶液に50℃下で3時間接触させ、ケラチンフィルムからタンパク質を抽出する。
(III)得られた抽出液についてBradford法にてタンパク質量を測定し、(I)のタンパク質量と比較評価する。
【0033】
(工程例3:ブリーチ剤またはヘアカラー剤、及び界面活性剤水溶液(毛髪洗浄剤))
(I)ケラチンフィルムにブリーチ剤またはヘアカラー剤を1~30分接触させる。その後、前記処理後のケラチンフィルムと、未処理のケラチンフィルムとを蒸留水で洗浄し、各々のフィルムに一定量の界面活性剤水溶液(毛髪洗浄剤)を3分間接触させる。各々についてフィルムを接触させた界面活性剤水溶液を回収し、該溶液に含まれるタンパク質量をLowry法にて測定する。また、ケラチンフィルムは蒸留水で洗浄する。
(II)前記ブリーチ剤またはヘアカラー剤処理フィルムと、未処理フィルムとを、各々5%2-メルカプトエタノール溶液または8M尿素溶液に50℃下で3時間接触させ、ケラチンフィルムからタンパク質を抽出する。
(III)得られた2つの抽出液についてBradford法にてタンパク質量を測定し、(I)の測定結果と共に比較評価する。
【0034】
図1にタンパク質量の測定結果を例示する。用いたケラチンフィルムの調製方法は以下のとおりである。
(ケラチンフィルムの調製1)
15才女性の毛髪600mgを、尿素30質量%、チオ尿素20質量%、ジチオスレイトール2.5質量%、25mMトリス-塩酸緩衝液(pH8.5)10mlを含む混合液に浸漬して毛髪サンプル処理液とし、これを50℃にて1日間保持して、毛髪ケラチン蛋白質溶解液を得た。この溶解液からろ過により末抽出毛髪を取り除き、毛髪ケラチン蛋白質溶液とした。この蛋白質溶液20~30mgへ、100mM酢酸水溶液を添加、混合し、この混合溶液を水を満たしたシャーレ(直径35mm)へ静かにキャストした。固体化した後、蒸留水を含む展開用溶液を数回交換して、ゲル中の溶液を蒸留水に置換した。最後に蒸留水を除き、シリカゲルを含む箱内で十分に乾燥し、目的のケラチンフィルムを得た。
【0035】
得られたケラチンフィルムを用いて、以下の実験方法に従い、タンパク質量を測定した。
(実験方法)
(I)シャーレに固定したケラチンフィルムに3剤式ブリーチ剤(1%アンモニア、2.7%過酸化水素、無機過硫塩酸類)を十分に混合した上で1~10分間接触させた。その後、シャーレからブリーチ液を取り出し、その後、蒸留水で十分に洗浄した。
(II)ブリーチ剤を接触させたケラチンフィルムと、比較対象の未処理のケラチンフィルムに還元剤溶液(50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.5)をベースとした5%2-メルカプトエタノール溶液)に50℃下で3時間接触させ、タンパク質を抽出した。
また、変性剤溶液(50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.5)をベースとした8M尿素溶液)についても、同様の処理を行った。
得られた各々のタンパク質抽出液は、遠心分離し、上清を採取した。
(III)前記上清をBradford法に従って処理し、595nmにおける吸光度を測定した。予め標準サンプルの測定により作成した検量線から、各上清のタンパク質量を決定した。
【0036】
図1に示すとおり、還元剤または変性剤溶液によってケラチンフィルムから抽出したタンパク質量の比較から、ブリーチ剤処理による毛髪の影響を評価することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
まず最初に、測定に用いるフィルムとしての適性について製膜性、耐久性及び耐水性、染色性について評価した。評価方法および評価基準は以下のとおりである。
【0038】
(1)製膜性
(評価方法)
フィルムが薄く均一に調製されたかを目視で判定する。
(評価基準)
○:薄く均一なフィルムがシャーレ全体に広がっている
△:シャーレ全体に広がらず、フィルムが偏って広がっている
×:フィルム状に広がらず、固まっている
【0039】
(2)耐久性
(評価方法)
タンパク量の測定実験において、フィルムに亀裂が生じたり、孔があいたりしないかを目視で判定する。
(評価基準)
○:フィルムに亀裂や孔が全く見られない。
△:微細な亀裂や孔が見られる。
×:フィルム全体に亀裂や孔が見られる。
【0040】
(3)耐水性
(評価方法)
タンパク質量の測定実験において、洗浄中にフィルムがシャーレから剥がれたり、めくれたりしていないかを目視で判定する。
(評価基準)
○:フィルムがシャーレから剥がれたり、めくれたりしていない。
△:フィルムの外側が少しめくれている。
×:フィルムがシャーレから剥がれてしまっている。
【0041】
下記表1に示す構成により得た各種ケラチンフィルムを、上記評価項目にしたがって評価した。評価結果を表1に示す。
なお、表1における各種ケラチンフィルムは下記の調製法により調製し、各フィルムは下記タンパク質量の測定実験方法にしたがって処理した。
(ケラチンフィルム調製方法1:Pre-cast)
毛髪サンプル600mgを、尿素及びチオ尿素、還元剤、25mMトリス-塩酸緩衝液(pH8.5)10mlを含む混合液に浸漬して毛髪サンプル処理液とし、これを50℃にて1日間保持して、毛髪ケラチン蛋白質溶解液を得た。この溶解液からろ過により末抽出毛髪を取り除き、毛髪ケラチン蛋白質溶液とした。この蛋白質溶液20~30mgへ、展開用溶媒を添加、混合し、この混合溶液を蒸留水を満たしたシャーレ(直径35mm)へ静かにキャストした。固体化した後、蒸留水を含む展開用溶液を数回交換して、ゲル中の溶液を蒸留水に置換した。最後に蒸留水を除き、シリカゲルを含む箱内で十分に乾燥し、目的のケラチンフィルムを得た。
【0042】
(ケラチンフィルム調製方法:Post-cast)
毛髪サンプル600mgを、尿素及びチオ尿素、還元剤、25mMトリス-塩酸緩衝液(pH8.5)10mlを含む混合液に浸漬して毛髪サンプル処理液とし、これを50℃にて4日間保持して、毛髪ケラチン蛋白質溶解液を得た。この溶解液からろ過により末抽出毛髪を取り除き、毛髪ケラチン蛋白質溶液とした。この蛋白質溶液20~30mgを、展開用溶媒8mlを満たしたシャーレ(直径35mm)へ静かにキャストした。固体化した後、蒸留水を含む展開用溶液を数回交換して、ゲル中の溶液を蒸留水に置換した。最後に蒸留水を除き、シリカゲルを含む箱内で十分に乾燥し、目的のケラチンフィルムを得た。
【0043】
(タンパク量の測定実験方法)
(I)十分に混合したヘアカラー剤をシャーレに固定したケラチンフィルムに1~10分間接触させた。その後、シャーレからヘアカラー剤を取り出した。
ヘアカラー剤処理後のケラチンフィルムと、比較対象の未処理のケラチンフィルムを蒸留水で十分に洗浄し、各ケラチンフィルムに2.5mLの界面活性剤水溶液(毛髪洗浄剤)を3分間接触させた。その後、界面活性剤水溶液を回収し、各溶液に含まれるタンパク質量をLowry法にて定量した。
(II)ヘアカラー剤接触後のケラチンフィルムと、比較対象の未処理のケラチンフィルムに、50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.5)をベースとした5%2-メルカプトエタノール溶液(還元剤溶液)を50℃下で3時間接触させ、各ケラチンフィルムよりタンパク質を抽出した。その後、各抽出液を遠心分離し、上清を採取した。
(III)採取した上清に含まれるタンパク質量を、Bradford法に基づいて定量した。
【0044】
【表1】
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*1:還元剤a;2-メルカプトエタノール、b;ジチオスレイトール
*2:GHA;グアニジン塩酸溶液、PCA;過塩素酸溶液
【0045】
上記表1の結果から明らかなように、ケラチンフィルムの調製時に還元剤を加えない場合や(比較例1)、蛋白質変性剤が尿素のみの場合(比較例2)には、若干製膜性と耐久性が劣り、これが耐水性に影響を与える傾向が見られた。
したがって、本発明の測定方法においては、蛋白質変性剤として尿素及びチオ尿素を配合し、さらに還元剤により毛髪のケラチン蛋白質を溶解・抽出することが好ましい。
【0046】
さらに、本発明にかかるケラチンフィルムの調製法において、より適した還元剤及び展開用溶媒を検討した。評価は前述の耐久性及び耐水性の基準により行い、ケラチンフィルムの調製法についても上記試験に準じて行なった。結果を下記表2に示す。
【0047】
【表2】
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*1:還元剤a;ジチオスレイトール、b;2-メルカプトエタノール
【0048】
上記結果より、ケラチンフィルムの作製において、展開用溶媒の種類により膜の耐久性、耐水性に変化が認められた。すなわち、実施例5,6及び試験例1,2との比較から、Post-cast法には展開溶媒として酢酸緩衝液が適し、Pre-cast法においては酢酸溶液が適することが認められる。
また、実施例5と試験例3の比較から、Pre-cast法には、タンパクを抽出する還元剤としてジチオスレイトールが適し、実施例6と試験例4の比較から、Post-cast法には、タンパクを抽出する還元剤として2-メルカプトエタノールが適することが認められる。
したがって、還元剤によっても毛髪損傷度の測定方法に用いるためのケラチンフィルムの適性が異なることが認められた。
【0049】
続いて、外観形状の異なるヒトの毛髪や損傷した毛髪、さらにヒトの毛髪以外に動物体毛にもケラチンフィルムを用いた毛髪処理剤による毛髪損傷度の測定方法が適用できるかどうかを調べるための検討を実施した。用いた毛髪サンプルは、ヒト女性の直毛、癖毛及び羊毛を選択した。各毛髪サンプルを用い、以下のように各ケラチンフィルムを調製した。
(各種ケラチンフィルムの調製)
各毛髪サンプル600mgを、尿素30質量%、チオ尿素20質量%、2-メルカプトエタノール5質量%、25mMトリス-塩酸緩衝液(pH8.5)10mlを含む溶液に浸漬して毛髪サンプル処理液とし、これを50℃にて4日間保持して、毛髪ケラチン蛋白質溶解液を得た。この溶解液からろ過により末抽出毛髪を取り除き、毛髪ケラチン蛋白質溶液とした。この蛋白質溶液20~30mgを、100mM酢酸緩衝液(pH4.0)8mlを満たしたシャーレに静かにキャストした。固体化した後、蒸留水を含む展開用溶液を数回交換して、ゲル中の溶液を蒸留水に置換した。最後に蒸留水を除き、シリカゲルを含む箱内で十分に乾燥し、各種ケラチンフィルムを得た。
【0050】
次いで、得られた各種ケラチンフィルムを用いて、ヘアカラー剤及び界面活性剤水溶液(毛髪洗浄剤)の組み合わせによる毛髪損傷度の測定を下記の測定により実施した。実験方法は以下のとおりである。
(タンパク量の測定実験方法)
(I)十分に混合したヘアカラー剤をシャーレに固定したケラチンフィルムに20分間接触させた。その後、シャーレからヘアカラー剤を取り出した。
ヘアカラー剤処理後のケラチンフィルムと、比較対象の未処理のケラチンフィルムを蒸留水で十分に洗浄し、各ケラチンフィルムに2.5mLの界面活性剤水溶液(毛髪洗浄剤)を3分間接触させる。その後、界面活性剤水溶液を回収し、各溶液に含まれるタンパク質量をLowry法にて定量した。
(II)ヘアカラー剤接触後のケラチンフィルムと、比較対象の未処理のケラチンフィルムに、50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.5)をベースとした5%2-メルカプトエタノール溶液(還元剤溶液)、または50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.5)をベースとした8M尿素溶液(変性剤溶液)を50℃下で3時間接触させ、ケラチンフィルムよりタンパク質を抽出した。その後、各抽出液を遠心分離し、上清を採取した。
(III)採取した上清に含まれるタンパク質量を、タンパク質の比色定量法であるBradford法に基づいて定量した。
【0051】
上記各段階で得られた各ケラチンフィルム由来のタンパク質量を、下記の方法で評価した。前述の基準に従って行ったフィルムに関する評価(製膜性、耐久性、耐水性)とともに、下記表3に示す。
界面活性剤溶液溶出タンパク質量
(評価方法)
損傷の程度が大きいほど、界面活性剤溶液に溶出するタンパク質量が増加するため、(I)工程においてフィルムに接触後回収した界面活性剤溶液中に含まれるタンパク質量から損傷度を判断する。
(評価基準)
○:ケラチンフィルムからの溶出タンパク質量平均値が10μg/ml未満。
△:ケラチンフィルムからの溶出タンパク質量平均値が10μg/ml以上100μg/ml未満。
×:ケラチンフィルムからの溶出タンパク質量平均値が100μg/ml以上。
【0052】
還元剤抽出タンパク質量
(評価方法)
損傷の程度が大きいほど、還元剤溶液に可溶化するタンパク質量が増加するため、還元剤溶液を用いて抽出したケラチンフィルムに含まれるタンパク質量から損傷度を判断する。
(評価基準)
○:ケラチンフィルムからの抽出タンパク質量平均値が1μg/ml未満。
△:ケラチンフィルムからの抽出タンパク質量平均値が1μg/ml以上2μg/ml未満。
×:ケラチンフィルムからの抽出タンパク質量平均値が2μg/ml以上。
【0053】
変性剤抽出タンパク質量
(評価方法)
損傷の程度が大きいほど、変性剤溶液に可溶化するタンパク質量は減少するため、変性剤溶液を用いて抽出したケラチンフィルムに含まれるタンパク質量から損傷度を判断する。
(評価基準)
○:ケラチンフィルムからの抽出タンパク質量平均値が3μg/ml以上。
△:ケラチンフィルムからの抽出タンパク質量平均値が0.5μg/ml以上3μg/ml未満。
×:ケラチンフィルムからの抽出タンパク質量平均値が0.5μg/ml未満。
【0054】
【表3】
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【0055】
上記表3の結果から明らかなように、ケラチンフィルムの調製に用いる毛髪は由来・外観に関わらず、いずれの毛髪・動物体毛からもケラチンフィルムを調整することができ、ヘアカラー剤及び界面活性剤水溶液(洗浄剤)の組み合わせによる毛髪損傷度の測定方法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】ブリーチ剤処理ケラチンフィルム及び未処理フィルムの5%2-メルカプトエタノールの50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.5)溶液及び、8M尿素の50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.5)溶液における可溶化タンパク質量の測定結果を示した図である。
図面
【図1】
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