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Specification :(In Japanese)荷重伝達経路法に基づく数値構造解析装置

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P4310501
Date of registration May 22, 2009
Date of issue Aug 12, 2009
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)荷重伝達経路法に基づく数値構造解析装置
IPC (International Patent Classification) G06F  17/50        (2006.01)
G06F  19/00        (2006.01)
FI (File Index) G06F 17/50 612H
G06F 17/50 680Z
G06F 19/00 110
Number of claims or invention 8
Total pages 20
Application Number P2007-542832
Date of filing Nov 6, 2006
International application number PCT/JP2006/322069
International publication number WO2007/052784
Date of international publication May 10, 2007
Application number of the priority 2005321695
Priority date Nov 7, 2005
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Date of request for substantive examination Jun 2, 2008
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】高橋 邦弘
【氏名】櫻井 俊彰
Accelerated examination, or accelerated appeal examination (In Japanese)早期審査対象出願
Representative (In Japanese)【識別番号】100099254、【弁理士】、【氏名又は名称】役 昌明
【識別番号】100108729、【弁理士】、【氏名又は名称】林 紘樹
【識別番号】100139675、【弁理士】、【氏名又は名称】役 学
Examiner (In Japanese)【審査官】松浦 功
Document or reference (In Japanese)特開2004-138526(JP,A)
特開2004-133704(JP,A)
特開2003-344041(JP,A)
Field of search G06F 17/50
G06F 19/00
CiNii
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
解析対象構造物の全体剛性行列に基づいて有限要素法により解析対象構造物の変形を計算する有限要素法計算手段を備え、荷重伝達経路法により解析対象構造物の構造解析を行う数値構造解析装置において、解析対象構造物の必要なすべての点を順次たどるように変化負荷点を変更する位置変更手段と、特定負荷点と支持点を固定し、前記位置変更手段で選択した変化負荷点に3つの独立の検査荷重を順次かけるように計算パラメータを設定する検査荷重設定手段と、前記検査荷重をかけた状態について前記有限要素法計算手段によりそれぞれ変形を計算して前記変化負荷点の変位量と前記特定負荷点の荷重値を求める手段と、解析対象構造物の内部剛性行列と前記変化負荷点の変位量と前記特定負荷点の荷重値とに基づいて未知数が9個以下の多元連立一次方程式を解いて部分剛性行列KACを求める連立方程式計算手段とを備えたことを特徴とする数値構造解析装置。
【請求項2】
解析対象構造物の全体剛性行列に基づいて有限要素法により解析対象構造物の変形を計算する有限要素法計算手段を備え、荷重伝達経路法により解析対象構造物の構造解析を行う数値構造解析装置において、支持点に関する要素を除いた全体剛性行列の逆行列を計算する第1逆行列計算手段と、解析対象構造物の必要なすべての点を順次たどるように変化負荷点を更新する位置更新手段と、前記逆行列から特定負荷点と前記変化負荷点に関する要素を抽出して小行列とする小行列抽出手段と、前記小行列の逆行列を計算して部分剛性行列KACを得る第2逆行列計算手段とを備えたことを特徴とする数値構造解析装置。
【請求項3】
前記部分剛性行列KACを利用してスカラー化した剛性指標の値を計算する剛性指標計算手段を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の数値構造解析装置。
【請求項4】
解析対象構造物の全体剛性行列に基づいて有限要素法により有限要素法計算手段で解析対象構造物の変形を計算して、荷重伝達経路法により解析対象構造物の構造解析を行う数値構造解析方法において、特定負荷点と支持点を固定し、解析対象構造物の必要なすべての点を順次たどるように変化負荷点を位置変更手段で変更し、選択した変化負荷点に3つの独立の検査荷重をかけるように検査荷重設定手段で計算パラメータを設定し、前記検査荷重をかけた状態について前記有限要素法計算手段で有限要素法によりそれぞれ変形を計算して前記変化負荷点の変位量と前記特定負荷点の荷重値を求めて、解析対象構造物の内部剛性行列と前記変化負荷点の変位量と前記特定負荷点の荷重値とに基づいて連立方程式計算手段で未知数が9個以下の多元連立一次方程式を解いて部分剛性行列KACを求めることを特徴とする数値構造解析方法。
【請求項5】
解析対象構造物の全体剛性行列に基づいて有限要素法により有限要素法計算手段で解析対象構造物の変形を計算して、荷重伝達経路法により解析対象構造物の構造解析を行う数値構造解析方法において、前記全体剛性行列から支持点に関する要素を除いた行列の逆行列を第1逆行列計算手段で計算し、解析対象構造物の必要なすべての点を順次たどるように変化負荷点を位置更新手段で更新し、前記逆行列から特定負荷点と前記変化負荷点に関する要素を小行列抽出手段で抽出した小行列の逆行列を第2逆行列計算手段で計算して部分剛性行列KACを求めることを特徴とする数値構造解析方法。
【請求項6】
前記部分剛性行列KACを利用してスカラー化した剛性指標の値を剛性指標計算手段で計算し、解析対象構造物の必要なすべての点を順次たどるように位置更新手段で前記変化負荷点を更新して、全ての変化負荷点について剛性指標の値を計算することを特徴とする請求項4または5記載の数値構造解析方法。
【請求項7】
請求項4~6のいずれかに記載の数値構造解析方法をコンピュータで実行するための処理手順を記述したコンピュータプログラム。
【請求項8】
請求項7記載のコンピュータプログラムを記録した記録媒体。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、数値構造解析装置に関し、特に、有限要素法を利用して荷重伝達経路法により解析対象構造物の構造解析を行う数値構造解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
構造設計においては、高剛性化や高強度化や軽量化などを目標にする。これらの目標を達成するためには、構造全体に関する検討が必要である。構造の強度剛性を論ずる際には、応力あるいはひずみを用いるのが普通である。しかし、構造設計においては、むしろ力の伝わる経路あるいは荷重の伝達に着目して構想をたてる必要がある。したがって、構造内部における力の伝達経路を知ることは重要な課題である。力の伝わり方に関して、従来は、応力による推定がなされてきた。応力とは、単位面積あたりに加わる力を示しており、応力の高い箇所に力が強く伝わると考えることもできる。応力は、実験的な測定あるいはコンピュータシミュレーションによって解析されてきた。主応力の値を等応力面に直交する矢印で示し、その分布図を構造物の図中に描き、矢印の分布によって力の伝わり方を表現することがしばしば行われる。
【0003】
しかし、この考え方には、いくつかの問題がある。応力集中により、力が有効に伝わっていなくても、大きな応力の生ずることがあり、応力を用いて力の伝達を考えると、誤った結論を導くことがある。例えば、構造内部に小さな円孔があると、その部分に応力集中が発生し、大きな主応力が現れる。しかし、円孔を設けることで、力を強く伝えることができると考えることは奇妙であるから、その箇所で大きな荷重の伝達が行われるようになったと考えるべきではない。もしそうであるなら、力を強く伝達させるためには円孔をあける、という誤った結論を導いてしまう。そうではなく、円孔をあけると、円孔からやや離れた部位で力を伝えるようになる、と結論されなくてはならない。そのためには、応力と異なる指標が必要である。
【0004】
そこで、本発明者らは、力の伝達とその経路に関するU*なる指標を提案した。U*は、応力と全く異なる発想に基づく指標である。その指標は直感的な概念に従って導いたものであるが、U*と力の伝達とが密接に関連していることを、U*の具体的計算例を通して明らかにし、構造設計におけるU*の有効性を示すことができる。さらに、U*ポテンシャルと剛性線ならびに剛性低下ベクトルなる概念を導入し、荷重伝達経路をU*で厳密に表現する方法を説明する。以下に、U*の概要を説明するが、具体的計算例などの詳細については、非特許文献1~9を参照されたい。
【0005】
U*とは、構造に力が加わったときに、構造内部の任意の1点を固定したときとしないときの反力の比から求められる。U*は、負荷点と任意点の結合の強さを表す指標であり、構造内部の荷重伝達を表す指標である。U*はポテンシャル量であり、U*分布を求めることで、構造において力を伝える向きを示すことが可能である。U*分布の勾配を求めることで、荷重伝達の方向である剛性低下ベクトルを求めることができ、剛性低下ベクトルを結ぶことで、力が伝達される道筋である剛性線を導出することができる。負荷点から支持点に向かう剛性線の中で、最も強く荷重を伝える経路を、荷重伝達経路と定義する。この荷重伝達経路を用いることで、構造内部の荷重伝達を定量的に評価することが可能となる。すなわち、指標U*を用いて、構造内部における荷重伝達の様子を定量的に表現し、構造内部のU*分布から、内部の主要な荷重伝達経路を見出す。得られた荷重伝達経路に対して評価を行うことにより、構造の改善点を明らかにすることが可能である。U*を用いて構造最適化を行ったところ、荷重伝達のみに着目したにもかかわらず、一般に行われているひずみエネルギー一様を目的とした最適解と同等の解を得ており、有効性を確認している。また、有限要素法を用いたコンピュータシミュレーション以外にも、実車車体を用いたU*測定を行っている。この構造解析の方法を、荷重伝達経路法とよぶことにする。
【0006】
U*の概念と定義を説明する。図8は、任意の弾性構造をモデル化したものである。図8(a)では、負荷点をAとし、支持点をBとし、構造物内部の任意の点をCとする。図8(b)は、任意点Cを固定した場合である。図8(a)と図8(b)では、共に負荷点Aに同一の強制変位dAを与えている。図8(a)の場合に、内部に貯えられたひずみエネルギーをUとする。図8(b)の場合の内部に貯えられたひずみエネルギーをU'とする。両者の比U'/Uの値は必ず1以上となり、内部の点Cと負荷点Aとの結合が強い程、この比は高い値を示すと考えられる。例えば、一本の線形ばねを考えたときには、点Cを変数としたU'/Uの分布は、ばねの軸に沿った曲線となる。U'/Uの代わりに、式(1)のように、(U'-U)/U'を使うと、この値は、負荷点Aで1をとり、支持点Bで0となる、一様に減少する直線で表示することができる。
U*≡(U'-U)/U'
=1-(U'/U)-1・・・・・(1)
式(1)がU*の定義であり、負荷点Aと点Cとの結合の強さを示していると考えられる。U*は、点Cの座標の関数である。
【0007】
荷重伝達経路について説明する。U*の分布は、数値計算あるいは実験によって求めることが可能である。構造物内のU*分布を等高線で表現したとき、その稜線に相当する曲線は、負荷点との結合の強い部分を順次結んだ線に相当している。力は剛性の高い部分をたどりつつ伝達されると考えることができるので、荷重は、この稜線を経路として伝達されるということができる。この稜線すなわち荷重伝達経路Sを、模式的に図8(c)に示す。
【0008】
荷重伝達経路に関して、好ましい構造が満たすべき3つの条件を以下にあげる。
(1)荷重伝達経路におけるU*分布の一様性:荷重伝達経路におけるU*分布が、図9(a)に示される理想直線に近づくこと。
(2)荷重伝達経路における内部剛性の連続性:荷重伝達経路におけるU*の曲率分布が、図9(b)のように理想直線に近づくこと。
(3)荷重伝達経路の合致性:負荷点から支持点に向かう荷重伝達経路S1と負荷点と支持点を入れ替えたときに得られる荷重伝達経路S2が、図9(c)に示されるように合致すること。
【0009】
構造と荷重と変位の関係を説明する。構造を、3点A、B、Cで代表する。各点の荷重と変位の関係を示すと、式(2)となる。
【数1】
JP0004310501B2_000002t.gif
・・・・・(2)
【0010】
添字付きの各Kは、3×3の内部剛性行列である。添字付きのpは、荷重を表す列ベクトルである。添字付きのdは、変位を表す列ベクトルである。一見、有限要素法の初等的表記のように見えるが、そうではない。この式(2)で、3点に関する構造全体の効果を表現している。なお、荷重がゼロの時でも、剛体的な同一変位を許容する条件から、式(3)等の関係も成立する。
KAA=-(KAB+KAC)・・・・・(3)
なお、K、p、dなどは行列やベクトルであるが、太字で表記できないので、通常表記とする。
【0011】
式(1)によるU*の定義を、式(2)によって表現する。Uは、図8(a)の支持点Bのみを固定した場合の変形エネルギーである。図8(a)において、支持点Bは固定されているので、dBは0となる。これより、式(2)を用いて、pAは、(KAAdA+KACdC)と表すことができる。この関係を用いて、図8(a)における変形エネルギーUは、式(4)で表される。
U=(1/2)pA・dA
=(1/2)(KAAdA+KACdC)・dA・・・・・(4)
積の演算には、ベクトルおよびテンソルの表記を用い、記号(・)は、ベクトルの内積を示す。
【0012】
一方、U'は、図9(b)の構造内の任意点Cを拘束した場合に貯えられる変形エネルギーである。このときも、負荷点Aの強制変位は変えず、dAのままとするから、そこに加わる力p'Aは、式(2)により、KAAdAのみとなるので、U'は、式(5)で表される。
U'=(1/2)p'A・dA
=(1/2)(KAAdA)・dA・・・・・(5)
式(4)と式(5)より、式(6)を得る。
(U'/U)={(KAAdA)・dA}/{(KAAdA+KACdC)・dA}・・・・・(6)
式(6)における分母はUであるため一定値である。U'/Uは、分子のKAAに依存していることが分かる。このKAAは、式(3)により、-(KAB+KAC)であるから、負荷点Aと任意点C間の結合の強さKACだけを示しているとはいえない。そのため、次のように式を変形する。
【0013】
式(4)と式(5)により、式(7)と書くことができる。
U'=U-(1/2)(KACdC)・dA・・・・・(7)
したがって、(U'/U)は、式(8)のように表現することができる。
(U'/U)=1-{(KACdC)・dA}/(2U)・・・・・(8)
さらに、式(1)のU*の定義に対して、式(8)を用いれば、最終的に、U*は、式(9)のようになる。
U*=1-{1-{(KACdC)・dA}/(2U)}-1
={1-(2U)/{(KACdC)・dA}}-1
={1-(pA・dA)/{(KACdC)・dA}}-1・・・・・(9)
【0014】
式(9)のように表現することによって、U*は、負荷点Aと任意点Cの間の剛性を表す行列KACに依存した量であるということが明らかとなった。すなわち、任意点CのU*は、負荷点Aとの結合の強さに関する量であるといえる。U*の値の示す意味は、式(9)によって明らかにされたといえるであろう。なお、以上は、図8のモデルに基づく結果であるが、支持点が2個または複数個、さらには、ある領域が固定された場合についても、同様な結果が得られる。いずれの場合も、任意点Cを固定した場合と、固定しない場合とのエネルギー比によって定義されたU*は、式(9)と同一の形で表現され、負荷点Aと任意点C間の内部剛性行列KACによって表すことができる。特に、このKACを他の内部剛性行列と区別して呼ぶために、部分剛性行列ということにする。
【0015】
U*ポテンシャルと経路について説明する。このU*は、構造物の内部のあらゆる点において与えることができる。各点において定まるU*をポテンシャルと考え、U*ポテンシャルと呼ぶ。等ポテンシャル線に直交する曲線を、剛性線と名付ける。剛性線に沿う勾配gradU*は、剛性の低下量を表現している。この低下量を、式(10)で表す。
k(-)=-gradU*・・・・・(10)
k(-)を剛性低下ベクトルと名付ける。k(-)は保存量である。
【0016】
U*の等高線と荷重経路について説明する。一般に、スカラー量分布の等高線に関する稜線とは、等高線に直交する線群の中で、最も勾配の小さい曲線として定義される。剛性線群の中で最も勾配の小さい曲線、すなわち、最も小さい剛性低下ベクトルをつないだ曲線が稜線である。力は剛性低下量の少ない部位をたどって伝わると考えるならば、この稜線を、荷重伝達経路と呼ぶことができる。荷重伝達経路をU*分布の稜線によって考えることにより、円孔がある場合には、円孔からやや離れた部位で力を伝えているということが結論される。
【0017】
U*を定義通りに計算する具体的計算法を説明する。定義どおりのままでU*を計算する場合には、次の手順が要る。
(1)任意点Cを自由にしたまま、負荷点Aに一定の変位を与えるのに必要なエネルギーUを求める。
(2)任意点Cを固定して、負荷点Aに一定の変位を与え、その時に必要なエネルギーを、有限要素法等の構造計算により求める。得られた値を式(1)に代入して、その点に関するU*を求める。
(3)任意点Cの位置を順次変えて、この計算を繰り返す。これにより、全体にわたるU*の分布を求めることができる。
【0018】
U*を計算で求めるには、有限要素法(FEM)によるのが普通である。有限要素法の解法には、大きく分けて変位法と応力法がある。汎用の有限要素法計算ソフトでは変位法が用いられている。変位法においては、計算毎に別の荷重を与えて繰り返し計算を行う場合、すなわち荷重条件(力学的な境界条件)を変化させて繰り返し計算を行う場合には、全体剛性行列に関する連立方程式を1回解けばよい。しかし、計算毎に別の変位を与えながら繰り返し計算を行う場合、すなわち、変位条件(幾何学的な境界条件)を変化させて繰り返し計算を行う場合には、全体剛性行列に関する連立方程式を毎回繰り返して解く必要がある。そのため、繰り返し数の多い計算では、計算量が非現実的となる。有限要素法では、1解析中、全体剛性行列に関する連立方程式の計算にほとんどの時間を費やすため、繰り返し数の多い計算では、計算量が非現実的となる。
【0019】
U*の繰り返し計算では、任意点Cを拘束する。つまり、毎回異なる位置に選択した任意点Cにゼロの変位を与える。このように、幾何学的な条件を毎回変化させる必要があるので、そのままでは非現実的な計算量になる。全体剛性行列に関する連立1次方程式は、変数の数が何百万にもなる。何百万元の方程式を解くことになるから、1回解くだけでもかなりの時間を要する。しかも、U*分布を求めるには、それをまた何百万回も繰り返すので、その繰り返す回数を減らすことが重要である。
【0020】
U*を求める代わりに、KACなる行列を求めればよいことを説明する。KACは、負荷点Aと任意点Cの間のばね定数と考えることができる行列である。U*は、式(1)で与えられる。
U*=(1-(U'/U))・・・・・(1)
式(1)は、次の式(9)のようにも表すことができる。
U*={1-(2U)/{(KACdC)・dA}}-1・・・・・(9)
ここで、Uは、任意点Cを固定しない場合の変形エネルギーである。変位dCと変位dAは、共に、任意点Cを固定しない場合の任意点Cと負荷点Aの変位である。そのため、UとdCとdAは、最初に一回計算しておけばよい。式(9)からU*を求めるには、KACなる行列を各点で求めればよいことになる。つまり、U*を求めるために必要な計算は、行列KACを各点で繰り返して求める計算でよいことになる。
【0021】
行列KACとは何かを説明する。そのために、構造の荷重と変位を表現する2種類の方法を述べる。まず、全体剛性行列による構造物の表現方法を説明する。有限要素法における有限要素に相当するメッシュ要素に分けて構造を表現する。要素数は100万に及ぶ例もある。これらの要素の各節点に順番に番号を付け、そこに加わる力と変位を、添え字つきのpとdで表す。いずれもベクトル量である。このとき、これらの力と変位が正比例関係にある場合に限って扱うとする。つまり、線形な力、変位関係を有している場合を扱うとする。これは、式(11)で表現できる。
【数2】
JP0004310501B2_000003t.gif
・・・・・(11)
【0022】
行列の成分は省略して記述してある。節点の数nは極めて大きくなることがあるので、この行列の成分はn×nの膨大な数となる。しかも、pもdもベクトルであるから3個のスカラー量から成っており、式(11)の行列の1個の成分は、3×3個のスカラー量から成っているから、実際にはさらに多くの成分から成っている。この行列は、有限要素法における剛性行列としてよく知られている。有限要素法においては、剛体変位を考慮した上で、この連立方程式を解くことが主要な計算となる。成分の数が多いので、この計算は時間を要する。通常は、汎用計算ソフトを用いて行われる。この剛性行列によって、構造物の荷重、変位の関係を表す方法が、第1の表現方法である。
【0023】
次に、負荷点Aと支持点Bと任意点Cを与えた場合において、3点のみにより構造物を表現する方法を説明する。ある構造を、任意点Cに関して、3点A、B、Cのみで表現した場合、有限要素のメッシュは無関係となり、単に3点に関する荷重、変位の関係になる。これらの関係式は簡単で、上述の式(2)で表される。
【0024】
この表現における添え字つきのKは、内部剛性行列と呼ばれる。この行列の成分は、式(2)に見るように、3×3である。ただし、その1個の成分は、また3×3個のスカラー量から成っている。すなわち、式(2)の行列は、9×9のスカラー量から成っている。この内部剛性行列によって、構造物の荷重、変位の関係を表す方法が、第2の表現方法である。この式(2)におけるKACが、式(9)におけるKACである。すなわち、このKACを求めれば、U*が式(9)により求まることになる。以上の説明に関する詳細は、以下に概要を示す本発明者らによるU*に関する論文を参照されたい。
【0025】
非特許文献1には、荷重伝達経路の概念における望ましい構造の条件が報告されている。新規な指標U*を導入して、全体構造の荷重伝達経路を表現する。構造中の負荷点と内部の任意の点との間の結合の度合いは、この指標を用いて定量的に表現できる。この概念に基づいて、望ましい構造の3つの条件、一様性と連続性と経路の合致性が導かれた。目的関数として、これらの3つの条件を導入して、数値計算で構造的最適化が計算された。応力や歪の概念を全く導入していないにもかかわらず、得られた構造は、合理的な形をしている。最終的に、単純構造の荷重伝達経路が、実験的に測定された。これらの値は、この指標が効果的に利用できることを示している。
【0026】
非特許文献2には、荷重伝達経路の概念を用いた大型トラック車室フロア部の振動低減に関する検討が報告されている。大型トラックの車室構造について、静的負荷のもとでの荷重伝達経路を検討した。その結果を、車室の振動低減に役立てる。単純モデルを用いた予備的なシミュレーションでは、床板振動は、床構造の前面交差部材に密接に関連している。有限要素法による荷重経路解析によると、低剛性の前面交差部材のために、荷重経路にはいくらかの不連続性と非一様性がある。
【0027】
非特許文献3には、大型トラックの車室床についてのADAMSによる振動解析とNASTRANによる構造評価が報告されている。大型トラックの車室構造の荷重伝達経路を、静的荷重の下で調べた。その結果を応用して、車室の振動を低減する。単純なモデルを使ったADAMS/Vibrationによる予備的シミュレーションでは、床板の振動は、床構造の前部交差部材の堅さと密接に関係している。NASTRANによる有限要素法での荷重伝達経路解析により、荷重伝達経路には、前部交差部材において不連続性とばらつきがあり、その部材の剛性を減殺している。
【0028】
非特許文献4には、大型トラックキャブのフロア振動に対するADAMSの適用とNASTRANによる負荷経路のU*解析が報告されている。大型トラックを軽量化し安価にすることは、構造設計において重要である。数値解析は、この点で重要な役割を果たしている。ADAMS/Vibrationによる予備的シミュレーションでは、床板の振動は、前部交差部材の剛性に密接に関係している。MSC/NASTRANによる荷重伝達経路解析により、荷重伝達経路には、前部交差部材において不連続性とばらつきがある。
【0029】
非特許文献5には、構造解析シミュレーションにおける荷重伝達の新たな表現法とその適用例が報告されている。新規な指標U*を導入して、荷重伝達経路を表現する。円孔のある板構造の荷重経路を、U*を適用して解析する。応力集中により孔の縁に強い応力がかかっていても、荷重伝達経路は、孔の縁を避けている。この結果は、直感的な予測と合致している。U*解析の計算法は、より複雑な境界条件を持つ構造に拡張できる。この方法の効果は、実際の大型トラック車室の有限要素法モデルを用いて証明された。
【0030】
非特許文献6には、前面衝突における乗用車室の荷重経路最適化とU*構造解析が報告されている。新規な指標U*を導入して、構造における荷重伝達を表現する。車室床構造のU*解析で、2つの場合を調べた。第1の場合として、U*の3つの条件が、目的関数として導入され、遺伝的アルゴリズムによる構造最適化に適用された。遺伝的アルゴリズム計算で得られた床構造は、独特の形をしている。部材は、床下部材の前面部材と側面部材の後部とに結合している。第2の場合として、衝突の際の床構造のU*の値と荷重経路が、PAM-CRASHで計算された。衝突が進行するとき、床下部材は第1の荷重伝達経路となる。衝突の最終段階では、床下部材が主な役割を担う。
【0031】
非特許文献7には、荷重伝達経路理論を適用した大型トラックの車室内の振動低減が報告されている。この目的は、静的荷重がかかった大型トラックの車室構造における荷重伝達経路を調べて、その結果を利用して車室の振動を低減することである。単純モデルを使った予備シミュレーションでは、床板振動は、床構造の前面交差部材の剛性に密接に関係している。有限要素法を使った荷重経路U*解析によると、前面交差部材の剛性の低さは、荷重経路における不連続性とばらつきに起因している。
【0032】
非特許文献8には、構造物内部における荷重伝達経路の新たな表現方法が報告されている。構造物における荷重伝達経路を表現するための指標U*がある。U*の値は、負荷点と内部の任意の点との間の結合度を表すものであることが、内部剛性行列からわかる。剛性場と、剛性線と、剛性低下ベクトルは、U*ポテンシャル線を使って定義される。荷重伝達経路は、剛性低下ベクトルが最小となる剛性線として表現できる。U*解析の適用例として、単純モデル構造について、有限要素法で計算した。U*の値の分布からみると、負荷点と支持点の間の対角部材は、荷重伝達において重要な役割を果たしている。
【0033】
非特許文献9には、実車大型トラックキャブ構造および縮尺模型を用いた荷重伝達U*解析の実験的検討が報告されている。U*の値の分布は、構造中における荷重伝達経路を示すことが知られている。実車大型トラックキャブ構造と、プラスチック縮尺模型について、2つの実験的なU*測定方法を開発した。これらの方法では、従来の方法とは違って、各部材の剛性データは必要ない。有限要素法では、U*解析において重要な役割を果たす実際の板の曲率の効果を表現できない。プラスチック縮尺模型を使うことで、U*の値の分布から強化の効果を直ちに測定できる。
【0034】

【非特許文献1】Kunihiro Takahashi: Conditions for desirable structures based on a concept of load transfer courses, pp.699-702, 2001.
【非特許文献2】櫻井俊彰、星野裕昭、高橋邦弘:「荷重伝達経路の概念を用いた大型トラック客室フロア部の振動低減に関する検討」、社団法人自動車技術会学術講演会前刷集、No.36-02, pp.5-8, 2002.
【非特許文献3】Hiroaki Hoshino, Toshiaki Sakurai, Kunihiro Takahashi: Application of ADAMS for Vibration Analysis and Structure Evaluation By NASTRAN for Cab Floor of Heavy-Duty Truck, The 1st MSC.ADAMS European User Conference, London, November, 2002.
【非特許文献4】櫻井俊彰、星野裕昭、阿部正俊、高橋邦弘:「大型トラックキャブのフロア振動に対するADAMSの適用とNASTRANによる負荷経路U*の解析」(MSC.ADAMSユーザーコンファレンス2002).
【非特許文献5】櫻井俊彰、阿部正俊、翁祖栄、高橋邦弘:「構造解析シミュレーションにおける荷重伝達の新たな表現法とその適用例」、計算工学会計算工学講演会論文集、Vol.8, pp.401-404, 2003.
【非特許文献6】Toshiaki Sakurai, Junichi Tanaka, Akinori Otani, Changjun Zhang, Kunihiro Takahashi: Load Path Optimization and U* Structural Analysis for Passenger Car Compartments under Frontal Collision, International Body Engineering Conference 2003, pp.181-186, JSAE 20037007, SAE 2003-01-2734, 2003.
【非特許文献7】Hiroaki Hoshino, Toshiaki Sakurai, Kunihiro Takahashi: Vibration reduction in the cabins of heavy-duty trucks using the theory of load transfer paths, pp.165-171, JSAE Review Vol.24, 2003.
【非特許文献8】高橋邦弘、櫻井俊彰:「構造物内部における荷重伝達経路の新たな表現方法」、日本機械学会論文集(A編)Vol.71 No.708, pp.1097-1102, 2005.
【非特許文献9】井上健吾、一木優一郎、松田育磨、櫻井俊彰、石井英章、野原哲男、星野裕昭、高橋邦弘:「実車大型トラックキャブ構造および縮尺模型を用いた荷重伝達U*解析の実験的検討」、社団法人自動車技術会学術講演会前刷集、No.90-04, pp.27-30, 2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
しかし、従来の計算方法では、計算時間がかかりすぎるという問題がある。構造全体のU*の値の分布の計算を、有限要素法を用いて行うには、膨大な計算時間を必要とする。場合によっては100万回の繰り返し計算が必要となる。この計算回数の多さが、U*分布を求める場合の問題点となる。構造計算の主要部分は連立方程式の計算である。この計算には、多大の時間を必要とする。1回の計算毎に大きな連立方程式を解く必要があるからである。構造内部の一点を次々と拘束して計算する場合に、その都度、全体の計算を繰り返す必要があるため、大規模な計算モデルでは、全ての計算を完了することが不可能となる。大規模な構造では、現在の最速パソコンによっても、この1回の計算には時間を要し、構造全体のU*の値を求めるために、各点ごとに連立方程式を解くと、全体で何か月もかかることがある。例えば、乗用車の車体をモデル化した有限要素モデルを構成する節点が仮に7万点であるとした時、全解析には約40日を要し、現実的でない。
【0036】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決して、荷重伝達経路法に基づく数値構造解析装置において、計算時間を大幅に短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記の課題を解決するために、本発明では、解析対象構造物の全体剛性行列に基づいて有限要素法により解析対象構造物の変形を計算する有限要素法計算手段を備え、荷重伝達経路法により解析対象構造物の構造解析を行う数値構造解析装置に、解析対象構造物の必要なすべての点を順次たどるように変化負荷点を変更する位置変更手段と、特定負荷点と支持点を固定し、位置変更手段で選択した変化負荷点に3つの独立の検査荷重を順次かけるように計算パラメータを設定する検査荷重設定手段と、検査荷重をかけた状態について有限要素法計算手段によりそれぞれ変形を計算して変化負荷点の変位量と特定負荷点の荷重値を求める手段と、解析対象構造物の内部剛性行列と変化負荷点の変位量と特定負荷点の荷重値とに基づいて未知数が9個以下の多元連立一次方程式を解いて部分剛性行列KACを求める連立方程式計算手段とを備えた構成とした。
【0038】
また、数値構造解析装置に、支持点に関する要素を除いた全体剛性行列の逆行列を計算する第1逆行列計算手段と、解析対象構造物の必要なすべての点を順次たどるように変化負荷点を更新する位置更新手段と、逆行列から特定負荷点と変化負荷点に関する要素を抽出して小行列とする小行列抽出手段と、小行列の逆行列を計算して部分剛性行列KACを得る第2逆行列計算手段とを備えた構成とした。
【発明の効果】
【0039】
上記のように構成したことにより、有限要素法を利用して荷重伝達経路法により解析対象構造物の構造解析を行う数値構造解析装置において、全体剛性行列に関する連立一次方程式を1回計算しただけで、全体の剛性指標を得ることができ、構造全体の剛性解析の計算時間を、実用可能な範囲まで削減できる。これにより、力の伝達を表す剛性指標の実用化が可能となる。全体剛性行列の連立方程式計算は1回で済むので、はるかに計算時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1~図7を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0041】
本発明の実施例1は、解析対象構造物の特定負荷点Aと支持点Bを固定して、変化負荷点Cに独立な3つの検査荷重を与えて、有限要素法により特定負荷点Aの荷重値と変化負荷点Cの変位をそれぞれ計算して3つの変位を求め、内部剛性行列と変化負荷点Cの変位量と特定負荷点Aの荷重値とに基づく未知数が9個以下の多元連立一次方程式を解いて部分剛性行列KACを求め、変化負荷点Cを変えて必要なすべての点CについてU*(C)を求める数値構造解析装置である。
【0042】
図1は、本発明の数値構造解析装置の概念図である。これは、荷重伝達経路法により解析対象構造物の構造解析を行う数値構造解析装置である。図2は、本発明の実施例1における数値構造解析装置の概念図である。図1と図2において、剛性行列保持手段1は、解析対象構造物の全体剛性行列を保持する手段である。有限要素法計算手段2は、有限要素法により全体剛性行列に基づく変形を計算する手段である。部分剛性行列計算手段3は、部分剛性行列KACを求める手段である。検査荷重設定手段4は、解析対象構造物の特定負荷点Aと変化負荷点Cに検査荷重をかけるように計算パラメータを設定する手段である。位置変更手段5は、解析対象構造物の必要なすべての点を順次たどるように、変化負荷点Cを変更する手段である。特定負荷点Aは、解析対象構造物の荷重伝達経路を調べるために負荷をかける点である。支持点Bは、そのとき解析対象構造物を支持する基準点である。変化負荷点Cは、解析対象構造物の必要なすべての点を順次たどるように選択される点である。必要なすべての点とは、有限要素法の節点のうち、解析の目的に必要であるとして選択したすべての点のことである。
【0043】
荷重変位保持手段6は、検査荷重値と計算結果の変位量を保持する手段である。連立方程式計算手段7は、検査荷重値と変位量に基づいて未知数が9個以下の多元連立一次方程式を解いて、部分剛性行列KACを求める手段である。剛性指標計算手段8は、部分剛性行列KACと変位量から剛性指標U*の値を計算する手段である。剛性指標保持手段9は、計算結果のU*の値を保持する手段である。図3は、数値構造解析装置の動作手順を示す流れ図である。図4と図5は、数値構造解析装置による計算結果を示す図である。
【0044】
上記のように構成された本発明の実施例1における数値構造解析装置の動作を説明する。最初に、計算方法の原理を説明する。解析対象構造物の3点、特定負荷点Aと、支持点Bと、変化負荷点Cの荷重と変位の関係を示す式(2)をもとに考える。
【数3】
JP0004310501B2_000004t.gif
・・・・・(2)
【0045】
式(2)において、支持点Bは固定点であるから、支持点Bの変位dBはゼロである。
dB=0・・・・・(12)
そのため、式(2)の支持点Bに関する要素は省いて記述することができる。よって、式(2)は、式(13)のように書くことができる。この操作は有限要素法でごく普通に行われるものと同じである。
【数4】
JP0004310501B2_000005t.gif
・・・・・(13)
【0046】
ここで更に、特定負荷点Aを固定して考える。このとき
dA=0・・・・・(14)
であるから、式(13)は更に簡単になって、式(15)で表現される。
{pA}=[KAC]{dC}・・・・・(15)
この条件で、変化負荷点Cに独立な検査荷重を与えて、有限要素法を用いて構造全体の計算を行う。その結果から、その時の変化負荷点Cの変位dCと、特定負荷点Aの荷重pAが求まる。その値を式(15)に代入する。変位dCも荷重pAも3次元ベクトルであるから、3個の式がこれから得られる。同様に、変化負荷点Cに3方向の検査荷重を与えて、更に3個の式を得ることができる。独立な荷重は、3次元空間では3個与え得るから、全部で9個の独立な式を得ることができる。
【0047】
部分剛性行列KACは9個の成分から成っているので、検査荷重を与えて得た9個の独立な式から、その部分剛性行列KACの成分をすべて求めることができる。この計算は、未知数が9個以下の多元連立一次方程式を解く計算であるから、計算時間は極めて僅かである。解析対象構造物の対称性や変化負荷点Cの位置関係などから、部分剛性行列KACの独立な成分の数が9より小さい場合があるので、そのときは未知数が9個より少なくなる。
【0048】
この操作は、各変化負荷点Cに独立の「荷重」を与えることで完結する。有限要素法の変位法によれば、「荷重条件」の数は多くても、全体の連立方程式を解く回数は1回でよい。そのため、計算時間が驚異的に短縮される。自動車車体について、この方法により部分剛性行列KACを計算し、剛性指標U*の値を求めた。この方法を用いなければ、実用的な時間では到底実計算できない。
【0049】
なお、U*のように、部分剛性行列KACを利用してスカラー化した剛性指標には、いくつかのU*の関連指標があり、包括してU*群と呼んでいる。U*群とは、部分剛性行列KACを用いたいくつかの指標で、(KACdC)・dAとか(KACdA)・dAなどである。また、エネルギーで定義せず補エネルギーでこれと同等な表現も可能である。U*以外のU*群の例には次のようなものがある。
【0050】
U*IIは、任意の点Cを固定しない場合の負荷点Aと任意の点C間とのばね定数を意味しており、これをU*IIでは点AC間の結合の強さと定義している。U*IIでは、構造物に負荷を与えたときに負荷点Aと点C間のばねに生じるひずみエネルギーを導出し、更に点AC間の相対変位で除することにより、点AC間のばね定数を導出する。U*IIは次の式で表される。
U*II=1-(pA・dA)|dA-dC|2
/{(2|dA|2)×(KACdC-KCAdA)・(dA-dC)}
KCAは、KACの転置行列である。
【0051】
U*IIIは、物理的には任意点Cを固定した場合の負荷点Aと任意点C間とのばね定数を意味しており、U*理論ではこの指標を点AC間の結合の強さと定義している。U*は構造内の点AC間の内部剛性であるKCAをスカラー化することによって、点AC間の結合強さを導出する。U*IIIは次の式で表される。
U*III=1+(pA・dA)/{2(KCAdA)・dA}
【0052】
構造物に負荷点がn個存在する場合のU*IIIは、負荷点A1~Anと点Cとの結合の強さの和として表される。これは、求めたい負荷点Anと点Cとの結合の強さであるKCAnを個々に求め、それらを足し合わせることにより、複数点負荷の境界条件を与えた場合においても、任意の負荷点と点Cとの結合の強さを表すことが可能であることを意味している。多点負荷のU*IIIは次の式で表される。
U*III=1-(1/2){Σ(-KCAndAn・dAn/|dAn|2)}-1
×{ΣpAn・dAn/|dAn|2}-1
【0053】
U*IVは、点ACB間ばね定数を意味しており、これをU*IVでは、点ACB間の結合の強さと定義している。U*IVでは、構造物に負荷を与えたときに生じる点ACB間のばねに生じるひずみエネルギーを導出し、更に点AC間の相対変位で除することによって、点ACB間の結合の強さを導出する。U*IVは次の式で表される。
U*IV=1+{(KBAdA)・dA}/{(KACdC-KCAdA)・dA}
【0054】
U*群中のU*以外の指標は、各点毎の境界条件がU*とは若干異なって定義されている。各点に対しては、変位拘束もせず荷重もかけない、という境界条件で定義されている。これらはいずれも部分剛性行列KACから算出されるので、実施例1、2の方法が適用でき、逆行列計算回数を格段に小さくすることができる。結局、本発明は、「構造物内部で定義されるU*群の各指標値を計算する際に、構造物内部の各点に荷重を与えることにより計算する手法」であるといえる。実施例1、2では、代表としてU*の計算方法を説明するが、他のU*群についても、類似の方法で計算できる。
【0055】
次に、図1を参照しながら、数値構造解析装置の機能の概要を説明する。剛性行列保持手段1に、解析対象構造物の全体剛性行列を保持する。全体剛性行列は、構造データから計算してもよいし、外部から入力してもよい。解析対象構造物の支持点Bを固定し、特定負荷点Aに検査荷重pAをかけた状態に計算パラメータを設定して、有限要素法計算手段2により、全体剛性行列に基づいて有限要素法で解析対象構造物の変形を計算して、特定負荷点Aの変位量dAと、各点の変位量dCを求め、荷重変位保持手段6に保持する。これらの検査荷重pAと変位量dAと変位量dCを、部分剛性行列KACを求めるためのデータと区別するために、基本データとよぶことにする。部分剛性行列計算手段3で、部分剛性行列KACを求める。詳しくは後述する。部分剛性行列KACと基本データの変位量などから、剛性指標計算手段8で剛性指標U*の値を計算し、剛性指標保持手段9に保持する。
【0056】
次に、図2を参照しながら、数値構造解析装置の機能の詳細を説明する。特定負荷点Aと支持点Bを固定し、位置変更手段5で選択した変化負荷点Cに、3つの独立の検査荷重pCを順次かけるように、検査荷重設定手段4で計算パラメータを設定する。この検査荷重をかけた状態について、有限要素法計算手段2により、それぞれ変位量を求め、荷重変位保持手段6に保持する。特定負荷点の荷重値と変化負荷点の変位量に基づいて、連立方程式計算手段7で未知数が9個以下の多元連立一次方程式を解いて、部分剛性行列KACを求める。部分剛性行列KACと、基本データの変位量と荷重値から、剛性指標計算手段8で剛性指標U*の値
U*={1-(pA・dA)/{(KACdC)・dA}}-1・・・・・(9)
を計算し、剛性指標保持手段9に保持する。位置変更手段3で、解析対象構造物の必要なすべての点を順次たどるように、変化負荷点Cを変更して、必要な全ての点のU*の値を計算する。
【0057】
次に、図3を参照しながら、数値構造解析装置の動作手順を説明する。ステップ1において、有限要素法により全体剛性行列に基づく変形を計算して、各点の変位量などの基本データを求める。すなわち、解析対象構造物の支持点Bを固定し、特定負荷点Aに検査荷重をかけた状態に計算パラメータを設定する。全体剛性行列に基づいて有限要素法で解析対象構造物の変形を計算して、変位量を求める。この部分は従来と同じである。ステップ2において、特定負荷点Aと支持点Bを固定して、変化負荷点Cに検査荷重を与えて、有限要素法により特定負荷点Aの荷重値と変化負荷点Cの変位を計算する。全体計算は最初の1回のみ必要である。独立な3つの検査荷重をそれぞれ与えて3回計算し、3つの変位を求める。ステップ3において、式(15)に特定負荷点Aの荷重と変位量を代入して、未知数が9個以下の多元連立一次方程式を解き、部分剛性行列KACを求める。ステップ4において、部分剛性行列KACと、基本データの検査荷重と変位量から、変化負荷点Cに関する剛性指標U*(C)を求める。ステップ5において、解析対象構造物の必要なすべての点について剛性指標U*を計算するまで、ステップ2以降を繰り返す。
【0058】
次に、図4と図5を参照しながら、計算結果を説明する。計算に用いたサーバは、DELL PRECISION 360であり、CPUは、Intel Pentium(登録商標)4、3.00GHzで、RAMは、2GB、HDDは、SATA 120GB×4 (RAID 0)、OSは、Microsoft Windows(登録商標) 2000である。解析ソルバは、MSC.Nastran V2001である。図4(a)は、約68000節点からなるトラック車体モデルの計算結果である。U*を計算した点数を横軸にとり、所要計算時間を縦軸にとっている。図4(a)に示すように、実施例の計算速度は、従来の方法、すなわち1点ずつ止めて、その都度エネルギーを計算するという方法の所要時間に比べて約13.2倍である。図4(b)、図5(a)、図5(b)に、トラック車体モデルの全ての節点に対してU*を計算した分布を3面図で示してある。等高線による分布を用いて表示してある。等高線の間隔は0.5刻みである。可能な範囲でU*の値を記載してある。車体の解析条件は、車体左側取り付け部に上下方向の強制変位を与え、車体上部のルーフ下部を固定したものである。実施例1を用いることにより、高速化したにもかかわらず、従来の方法と同一の等高線分布が得られている。
【0059】
上記のように、本発明の実施例1では、数値構造解析装置を、解析対象構造物の特定負荷点Aと支持点Bを固定して、変化負荷点Cに独立な3つの検査荷重を与えて、有限要素法により全体の変形をそれぞれ計算して3つの変位を求め、内部剛性行列と変化負荷点Cの変位量と特定負荷点Aの荷重値とに基づく未知数が9個以下の多元連立一次方程式を解いて部分剛性行列KACを求め、変化負荷点Cを変えて必要なすべての点CについてU*(C)を求める構成としたので、計算時間を大幅に短縮できる。
【実施例2】
【0060】
本発明の実施例2は、支持点Bに関する要素を除いた全体剛性行列の逆行列を計算し、その逆行列から特定負荷点Aと変化負荷点Cに関する要素を抽出した小行列の逆行列を計算して部分剛性行列KACに対応する要素を抽出し、変化負荷点Cを変えて必要なすべての変化負荷点CについてU*(C)を求める数値構造解析装置である。
【0061】
図6は、本発明の実施例2における数値構造解析装置の構成を示す概念図である。図6において、剛性行列保持手段1は、解析対象構造物の全体剛性行列を保持する手段である。有限要素法計算手段2は、有限要素法により全体剛性行列に基づく変形を計算する手段である。剛性指標計算手段8は、部分剛性行列KACなどからU*の値を計算する手段である。剛性指標保持手段9は、計算結果のU*の値を保持する手段である。第1逆行列計算手段10は、支持点Bに関する要素を除いた全体剛性行列の逆行列を計算する手段である。小行列抽出手段11は、特定負荷点Aと変化負荷点Cに関する要素を抽出して小行列とする手段である。位置更新手段12は、変化負荷点Cを更新する手段である。第2逆行列計算手段13は、小行列の逆行列を計算する手段である。図7は、数値構造解析装置の動作手順を示す流れ図である。
【0062】
上記のように構成された本発明の実施例2における数値構造解析装置の動作を説明する。最初に、計算方法の原理を説明する。この方法は、内部剛性行列を用いずに、直接に構造の全体剛性行列からKACに相当する行列を導く方法である。全体剛性行列の式(11)を改めて示す。
【数5】
JP0004310501B2_000006t.gif
・・・・・(11)
【0063】
支持点Bは固定点であるので、これに関する式(11)の行と列は省くことができる。そのため、式(11)は、下記の式(16)のように、支持点Bに関する行と列を省いて表現される。この過程は、有限要素法では通常の操作手順である。
【数6】
JP0004310501B2_000007t.gif
・・・・・(16)
【0064】
下に、式(13)を改めて示す。ここで注意すべきは、式(16)中の要素(AC)は、式(13)中のKACと同じ量ではないことである。その理由は、右辺の変位ベクトルが各点でゼロではないからである。
【数7】
JP0004310501B2_000008t.gif
・・・・・(13)
【0065】
そこで次に、式(16)の行列の逆行列をとって、両辺に左から乗じて左辺と右辺を入れ替える。これを式(17)に示す。右辺の行列は、有限要素法における撓み性行列である。また、式(13)の行列の逆行列を乗じた式を、式(18)に示す。
【数8】
JP0004310501B2_000009t.gif
・・・・・(17)
【数9】
JP0004310501B2_000010t.gif
・・・・・(18)
【0066】
重要なことは、式(18)の行列要素は、式(17)に示した4個の行列要素と同一な内容を持っていることである。その理由は、式(17)の右辺の荷重ベクトルが、特定負荷点Aと変化負荷点Cを除いてゼロだからである。式(16)の行列要素は、有限要素法を適用する際に既に与えられている。その逆行列である式(17)の行列要素は、それから得ることができる。それはすなわち、式(18)の要素でもある。最後にその逆行列をとって、求めるべき式(13)のKACを求めることが可能となる。この方法の特徴は、検査荷重を必要としないことである。
【0067】
次に、図6を参照しながら、数値構造解析装置の機能を説明する。剛性行列保持手段1に、解析対象構造物の全体剛性行列を保持する。有限要素法計算手段2で、有限要素法により全体剛性行列に基づく変形を計算して基本データを求める。逆行列計算手段で、支持点Bに関する要素を除いた行列の逆行列を計算する。小行列抽出手段で、逆行列から、特定負荷点Aと変化負荷点Cに関する要素を抽出して小行列とする。位置更新手段で、変化負荷点Cを更新する。逆行列計算手段で、小行列の逆行列を計算する。剛性指標計算手段8で、部分剛性行列KACと基本データからU*の値を計算する。剛性指標保持手段9に、計算結果のU*の値を保持する。
【0068】
次に、図7を参照しながら、数値構造解析装置の動作手順を説明する。ステップ21において、有限要素法により全体剛性行列に基づく変形を計算して、各点の変位量などの基本データを求める。ステップ22において、支持点Bに関する要素を除いた行列の逆行列を計算する。ステップ23において、その逆行列から、特定負荷点Aと変化負荷点Cに関する要素を抽出して小行列とし、小行列の逆行列を計算する。ステップ24において、小行列の逆行列からKACに対応する要素を抽出する。ステップ25において、部分剛性行列KACと基本データの変位量などから、U*(C)を求める。ステップ26において、すべての点について計算するまで、ステップ23以降を繰り返す。
【0069】
上記のように、本発明の実施例2では、数値構造解析装置を、支持点Bに関する要素を除いた全体剛性行列の逆行列を計算し、特定負荷点Aと変化負荷点Cに関する要素を抽出した小行列の逆行列を計算してKACに対応する要素を抽出し、変化負荷点Cを変えて必要なすべての点CについてU*(C)を求める構成としたので、計算時間を大幅に短縮できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の数値構造解析装置は、自動車の構造設計や建築物の強度設計など、有限要素法を用いた設計を行うための数値解析装置として最適である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明における数値構造解析装置の概念図である。
【図2】本発明の実施例1における数値構造解析装置の構成を示す概念図である。
【図3】本発明の実施例1における数値構造解析装置の動作手順を示す流れ図である。
【図4】本発明の実施例1における数値構造解析装置による計算結果を示す図である。
【図5】本発明の実施例1における数値構造解析装置による計算結果を示す図である。
【図6】本発明の実施例2における数値構造解析装置の構成を示す概念図である。
【図7】本発明の実施例2における数値構造解析装置の動作手順を示す流れ図である。
【図8】任意の線形弾性構造をモデル化した図である。
【図9】U*算出の境界条件と、U*分布と荷重伝達経路の関係を示した図である。
【符号の説明】
【0072】
1 剛性行列保持手段
2 有限要素法計算手段
3 部分剛性行列計算手段
4 検査荷重設定手段
5 位置変更手段
6 荷重変位保持手段
7 連立方程式計算手段
8 剛性指標計算手段
9 剛性指標保持手段
10 第1逆行列計算手段
11 小行列抽出手段
12 位置更新手段
13 第2逆行列計算手段
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
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(In Japanese)【図7】
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(In Japanese)【図8】
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(In Japanese)【図9】
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