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明細書 :無線通信システム及び方法並びにそれに使用される送信機及び受信機

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3520341号 (P3520341)
公開番号 特開2003-087210 (P2003-087210A)
登録日 平成16年2月13日(2004.2.13)
発行日 平成16年4月19日(2004.4.19)
公開日 平成15年3月20日(2003.3.20)
発明の名称または考案の名称 無線通信システム及び方法並びにそれに使用される送信機及び受信機
国際特許分類 H04J  1/00      
H04B  3/10      
H04L 27/01      
FI H04J 1/00
H04B 3/10
H04L 27/00
請求項の数または発明の数 18
全頁数 9
出願番号 特願2001-270199 (P2001-270199)
出願日 平成13年9月6日(2001.9.6)
審査請求日 平成13年9月6日(2001.9.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012501
【氏名又は名称】九州大学長
発明者または考案者 【氏名】赤岩 芳彦
【氏名】牟田 修
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】高野 洋
参考文献・文献 特開 平11-163822(JP,A)
特開 平11-284597(JP,A)
特開2000-228656(JP,A)
特開 平11-98102(JP,A)
調査した分野 H04J 1/00
H04J 11/00
特許請求の範囲 【請求項1】
マルチキャリア信号のサブキャリアごとにパイロット信号を内挿する手段と、
全サブキャリアのパイロット信号の少なくとも一部について互いに相違する時刻に送信されるように、前記パイロット信号が内挿されたマルチキャリア信号を、送信する手段と、
前記マルチキャリア信号を受信する手段と、
前記マルチキャリア信号から全サブキャリアのパイロット信号を抽出する手段と、
抽出された全サブキャリアのパイロット信号の同期をとる手段と、
同期をとったパイロット信号のサブキャリア位相をパイロット信号区間の中央で同位相にして合成する手段と、
合成されたパイロット信号からピーク振幅値を検出する手段と、
検出されたピーク振幅値を用いて前記伝搬路の特性を推定する手段とを具えることを特徴とする無線通信システム。

【請求項2】
前記伝搬路の特性を推定する手段が、前記ピーク検出値を用いて前記伝搬路のパラメータの推定値を計算し、その推定値から作成した前記パイロット信号の複製と前記パイロット信号との2乗誤差が最小となる前記伝搬路のパラメータを計算することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。

【請求項3】
前記伝搬路のパラメータを用いて、周波数領域での等化を行う手段を更に具えることを特徴とする請求項2記載の無線通信システム。

【請求項4】
前記伝搬路のパラメータを、試行錯誤的なアルゴリズムを用いて計算することを特徴とする請求項2又は3記載の無線通信システム。

【請求項5】
前記パイロット信号を帯域制限する手段を更に具えることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の無線通信システム。

【請求項6】
マルチキャリア信号のサブキャリアごとにパイロット信号を内挿するステップと、
全サブキャリアのパイロット信号の少なくとも一部について互いに相違する時刻に送信されるように、前記パイロット信号が内挿されたマルチキャリア信号を送信するステップと、
前記マルチキャリア信号を受信するステップと、
前記マルチキャリア信号から全サブキャリアのパイロット信号を抽出するステップと、
抽出された全サブキャリアのパイロット信号の同期をとるステップと、
同期をとったパイロット信号のサブキャリア位相をパイロット信号区間の中央で同位相にして合成するステップと、
合成されたパイロット信号からピーク振幅値を検出するステップと、
検出されたピーク振幅値を用いて前記伝搬路の特性を推定するステップとを具えることを特徴とする無線通信方法。

【請求項7】
前記伝搬路の特性を推定するステップが、前記ピーク検出値を用いて前記伝搬路のパラメータの推定値を計算し、その推定値から作成した前記パイロット信号の複製と前記パイロット信号との2乗誤差が最小となる前記伝搬路のパラメータを計算するステップを有することを特徴とする請求項6記載の無線通信方法。

【請求項8】
前記伝搬路のパラメータを用いて、周波数領域での等化を行うステップを更に具えることを特徴とする請求項7記載の無線通信方法。

【請求項9】
前記伝搬路のパラメータを、試行錯誤的なアルゴリズムを用いて計算することを特徴とする請求項7又は8記載の無線通信方法。

【請求項10】
前記パイロット信号を帯域制限するステップを更に具えることを特徴とする請求項6から9のうちのいずれか1項に記載の無線通信方法。

【請求項11】
マルチキャリア信号のサブキャリアごとにパイロット信号を内挿する手段と、
前記マルチキャリア信号から全サブキャリアのパイロット信号を抽出し、抽出された全サブキャリアのパイロット信号の同期をとり、同期をとったパイロット信号のサブキャリア位相をパイロット信号区間の中央で同位相にして合成し、合成されたパイロット信号からピーク振幅値を検出し、検出されたピーク振幅値を用いて前記伝搬路の特性を推定するために、全サブキャリアのパイロット信号の少なくとも一部について互いに相違する時刻に送信されるように、前記パイロット信号が内挿されたマルチキャリア信号を送信する手段とを具えることを特徴とする無線通信システム用の送信機。

【請求項12】
前記伝搬路の特性を、前記ピーク検出値を用いて前記伝搬路のパラメータの推定値を計算し、その推定値から作成した前記パイロット信号の複製と前記パイロット信号との2乗誤差が最小となる前記伝搬路のパラメータを計算することによって推定することを特徴とする請求項11記載の無線通信システム用の送信機。

【請求項13】
前記伝搬路のパラメータを、試行錯誤的なアルゴリズムを用いて計算することを特徴とする請求項12記載の無線通信システム用の送信機。

【請求項14】
前記パイロット信号を帯域制限する手段を更に具えることを特徴とする請求項11から13のうちのいずれか1項に記載の無線通信システム用の送信機。

【請求項15】
全サブキャリアの少なくとも一部について互いに相違する時刻に送信されるようにパイロット信号が内挿されたマルチキャリア信号を受信する手段と、
前記マルチキャリア信号から全サブキャリアのパイロット信号を抽出する手段と、
抽出された全サブキャリアのパイロット信号の同期をとる手段と、
同期をとったパイロット信号のサブキャリア位相をパイロット信号区間の中央で同位相にして合成する手段と、
合成されたパイロット信号からピーク振幅値を検出する手段と、
検出されたピーク振幅値を用いて前記伝搬路の特性を推定する手段とを具えることを特徴とする無線通信システム用の受信機。

【請求項16】
前記伝搬路の特性を推定する手段が、前記ピーク検出値を用いて前記伝搬路のパラメータの推定値を計算し、その推定値から作成した前記パイロット信号の複製と前記パイロット信号との2乗誤差が最小となる前記伝搬路のパラメータを計算することを特徴とする請求項15記載の無線通信システム用の受信機。

【請求項17】
前記伝搬路のパラメータを用いて、周波数領域での等化を行う手段を更に具えることを特徴とする請求項16記載の無線通信システム用の受信機。

【請求項18】
前記伝搬路のパラメータを、試行錯誤的なアルゴリズムを用いて計算することを特徴とする請求項16又は17記載の無線通信システム用の受信機。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、無線LAN(local area network)による高速無線通信に有効なマルチキャリア変調方式に適用される無線通信システム及び方法並びにそれに使用される送信機及び受信機に関するものである。

【0002】
【従来の技術】無線通信、例えば移動無線通信において、高速及び/又は高品質通信を実現するためには、周波数選択性フェージングによる信号歪みに対処する必要がある。波形歪みに対処する方式として、波形等化方式やマルチキャリア変調方式が知られている。

【0003】
波形等化方式は、伝搬路歪みを除去するのに有効な技術であるが、例えば、20Mbps以上の高速伝送では、シンボル周期に対する伝搬路遅延時間差が大きくなり、等化器の回路規模と信号処理量が増加する。

【0004】
マルチキャリア変調方式は、高速の源信号を複数キャリアを用いて並列低速伝送することによって信号歪みを軽減することができ、高速無線伝送の実現に有効である。

【0005】
しかしながら、マルチキャリア信号は、ピーク対平均電力比がキャリア数に比例して増加するので、電力増幅器における非線形歪みを回避するために大きなバックオフをとることによる電力効率の低下が生じる。

【0006】
したがって、電力効率の観点からは、マルチキャリア信号のサブキャリア数が少ない方が好ましいが、サブキャリア数が少ない場合、信号歪みが十分に軽減されないために誤り率特性が劣化するおそれがある。

【0007】
サブキャリア数が比較的少ないマルチキャリア変調方式において高速伝送を実現するためには、受信側で伝搬路特性を推定し、簡易な波形等化を適用することが有効である。

【0008】
従来、マルチキャリア変調方式において、伝搬路特性を推定する方式としては、情報信号内に既知のパイロット信号を内挿する方式が知られている。パイロット信号方式を内挿する方式としては、周波数領域で既知のパイロット信号(パイロットキャリア)を内挿する方式が知られている。

【0009】
この方式は、周波数領域に内挿された隣接パイロット信号間の周波数間隔がチャネルの相関帯域幅に比べて小さい場合、すなわち、サブキャリア数が十分多い場合は有効であるが、隣接パイロット信号間の周波数間隔が相関帯域幅に比べて広い場合には、伝搬路特性の推定誤差が増加するために、受信誤り率特性が劣化するおそれがある。

【0010】
牟田修,赤岩芳彦,「パイロット信号を内挿したマルチキャリア変調方式における伝搬路応答推定法」2000年 電子情報通信学会総合大会 講演論文集,B-5-1,pp.386,2000年3月において、マルチキャリア変調方式におけるパイロット信号を用いて伝搬路特性を推定する方式が提案されている。なお、この方式を、以後、従来の方式と称する。

【0011】
従来の方式の基本原理を説明すると、先ず、全サブキャリアにパイロット信号を内挿し、その後、全サブキャリアのパイロット信号を、パイロット信号区間の中央で振幅を最大にし、位相を同位相にして合成する。この際、合成後のパイロット信号は、シンボル区間の中央で先鋭なピーク振幅が出現し、サイドローブの振幅が減衰した波形となり、合成後のパイロット信号の時間分解能が上昇する。受信側では、このパイロット信号のピーク振幅値を検出することによって、伝搬路特性を高い時間分解能で推定することができる。

【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の方式では、合成パイロット信号の送信ピーク電力が高くなり、電力増幅器において非線形歪みが生じるおそれがある。

【0013】
本発明の目的は、無線通信の際に、電力増幅器においてパイロット信号に大きな非線形歪みを与えることなく、伝搬路特性を高い時間分解能で推定することができる無線通信システム及び方法並びにそれに使用される送信機及び受信機を提供することである。

【0014】
【課題を解決するための手段】本発明による無線通信システムは、マルチキャリア信号のサブキャリアごとにパイロット信号を内挿する手段と、全サブキャリアのパイロット信号の少なくとも一部について互いに相違する時刻に送信されるように、前記パイロット信号が内挿されたマルチキャリア信号を、送信する手段と、前記マルチキャリア信号を受信する手段と、前記マルチキャリア信号から全サブキャリアのパイロット信号を抽出する手段と、抽出された全サブキャリアのパイロット信号の同期をとる手段と、同期をとったパイロット信号のサブキャリア位相をパイロット信号区間の中央で同位相にして合成する手段と、合成されたパイロット信号からピーク振幅値を検出する手段と、検出されたピーク振幅値を用いて前記伝搬路の特性を推定する手段とを具えることを特徴とする。

【0015】
本発明によれば、全サブキャリアのパイロット信号の少なくとも一部について互いに相違する時刻に送信されるように、パイロット信号が内挿されたマルチキャリア信号を送信する。これによって、合成パイロット信号の送信ピーク電力を従来の方式に比べて低減することができるので、無線通信の際に、電力増幅器においてパイロット信号に大きな非線形歪みを与えることなく、伝搬路特性を高い時間分解能で推定することができる。

【0016】
前記伝搬路の特性を、例えば、前記ピーク検出値を用いて前記伝搬路のパラメータの推定値を計算し、その推定値から作成した前記パイロット信号の複製と前記パイロット信号との2乗誤差が最小となる前記伝搬路のパラメータを計算することによって推定する。信号品質を向上させるために、前記伝搬路のパラメータを用いて、周波数領域での等化を行うのが好適である。前記伝搬路のパラメータを、例えば、試行錯誤的なアルゴリズムを用いて計算する。好適には、前記パイロット信号を帯域制限する。

【0017】
本発明による無線通信方法は、マルチキャリア信号のサブキャリアごとにパイロット信号を内挿するステップと、全サブキャリアのパイロット信号の少なくとも一部について互いに相違する時刻に送信されるように、前記パイロット信号が内挿されたマルチキャリア信号を送信するステップと、前記マルチキャリア信号を受信するステップと、前記マルチキャリア信号から全サブキャリアのパイロット信号を抽出するステップと、抽出された全サブキャリアのパイロット信号の同期をとるステップと、同期をとったパイロット信号のサブキャリア位相をパイロット信号区間の中央で同位相にして合成するステップと、合成されたパイロット信号からピーク振幅値を検出するステップと、検出されたピーク振幅値を用いて前記伝搬路の特性を推定するステップとを具えることを特徴とする。

【0018】
本発明によれば、合成パイロット信号の送信ピーク電力を従来の方式に比べて低減することができるので、無線通信の際に、電力増幅器においてパイロット信号に大きな非線形歪みを与えることなく、伝搬路特性を高い時間分解能で推定することができる。

【0019】
本発明による無線通信システム用の送信機は、マルチキャリア信号のサブキャリアごとにパイロット信号を内挿する手段と、前記マルチキャリア信号から全サブキャリアのパイロット信号を抽出し、抽出された全サブキャリアのパイロット信号の同期をとり、同期をとったパイロット信号のサブキャリア位相をパイロット信号区間の中央で同位相にして合成し、合成されたパイロット信号からピーク振幅値を検出し、検出されたピーク振幅値を用いて前記伝搬路の特性を推定するために、全サブキャリアのパイロット信号の少なくとも一部について互いに相違する時刻に送信されるように、前記パイロット信号が内挿されたマルチキャリア信号を送信する手段とを具えることを特徴とする。

【0020】
本発明による無線通信システム用の受信機は、全サブキャリアの少なくとも一部について互いに相違する時刻に送信されるようにパイロット信号が内挿されたマルチキャリア信号を受信する手段と、前記マルチキャリア信号から全サブキャリアのパイロット信号を抽出する手段と、抽出された全サブキャリアのパイロット信号の同期をとる手段と、同期をとったパイロット信号のサブキャリア位相をパイロット信号区間の中央で同位相にして合成する手段と、合成されたパイロット信号からピーク振幅値を検出する手段と、検出されたピーク振幅値を用いて前記伝搬路の特性を推定する手段とを具えることを特徴とする。

【0021】
【発明の実施の形態】本発明による無線通信システム及び方法並びにそれに使用される送信機及び受信機の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1Aは、本発明による無線通信システム用の送信機のブロック図であり、図1Bは、本発明による無線通信システム用の受信機のブロック図である。

【0022】
送信機は、情報信号の入力部1と、OQPSK変調回路2と、パイロット信号挿入回路3と、帯域制限を行うローパスフィルタ群4と、マルチキャリア変調回路5と、マルチキャリア信号の出力部6とを具える。

【0023】
受信機は、送信機の出力部6からのマルチキャリア信号が入力される入力部11と、マルチキャリア復調回路12と、ローパスフィルタ群13と、パイロット信号抽出回路14と、パイロット信号同期回路15と、パイロット信号再合成回路16と、ピーク振幅検出回路17と、伝搬路特性計算回路18と、等化回路19と、出力部20とを具える。

【0024】
送信側では、入力部1に入力された情報信号を、OQPSK変調回路2によってOQPSK変調する。このようにOQPSK変調された情報信号には、パイロット信号挿入回路3によって一定時間間隔でパイロット信号が挿入される。この際、パイロット信号はキャリアごとに時間差をつけて内挿し、全てのサブキャリアのパイロット信号を、互いに相違する時刻で送信する。パイロット信号挿入回路3の出力は、ローパスフィルタ群4によって帯域制限された後、マルチキャリア変調回路5によって合成され、出力部6から出力される。

【0025】
図2は、本発明で使用されるマルチキャリア信号のスペクトル特性を示す図である。図2は、各サブキャリアがローパスフィルタ群4の対応するローパスフィルタによって帯域が制限され、かつ、各サブキャリアの中心周波数間隔がサブキャリアのシンボルレートに等しいことを示している。なお、図2において、ω-1,ω,ωi+1は、i-1番目、i番目及びi+1番目のサブキャリアの中心周波数をそれぞれ表し、ωはサブキャリアの中心周波数間隔を表す。

【0026】
受信側では、受信されたマルチキャリア信号は、入力部11に入力され、マルチキャリア復調回路12及びローパスフィルタ群13の対応するローパスフィルタによって、各キャリアの信号に分離される。パイロット信号抽出回路14は、各キャリアの信号からパイロット信号を抽出し、抽出されたパイロット信号は、パイロット信号同期回路14に入力される。

【0027】
パイロット信号同期回路14は、送信側のパイロット信号挿入回路3によって付加された各キャリアのパイロット信号間の送信時間差を除去し、全サブキャリアのパイロット信号が同一時刻に配置されるように動作する。パイロット信号同期回路15の出力は、パイロット信号再合成回路16に入力される。

【0028】
パイロット信号再合成回路15では、各キャリアから抽出された各パイロット信号のサブキャリア位相がパイロット信号区間の中央で全て同位相となるように設定されている。

【0029】
再合成された受信パイロット信号は、ピーク振幅検出回路22に入力され、このパイロット信号の最大ピーク振幅が検出される。ピーク振幅検出回路22によって検出された最大振幅値とその出現時刻は、伝搬路特性計算回路18に入力される。

【0030】
伝搬路特性計算回路18では、その情報を用いて伝搬路パラメータの推定値を計算する。この伝搬路パラメータの推定値は、パイロット信号と伝搬路インパルス応答との畳み込み演算によって与えられる受信パイロット信号の複製信号と、実際の受信信号との2乗誤差を極小にする値である。この2乗誤差を最小にするアルゴリズムを、例えば、試行錯誤法とすることができ、後に詳細に説明する。推定された伝搬路インパルス応答をフーリエ変換することによって、伝搬路の周波数伝達特性を計算し、等化回路19によって周波数領域での等化を行う。

【0031】
ここで、パイロット信号挿入回路3を、従来のものと比較しながら、図1A、図3、図4、図5及び図6を用いて説明する。入力部1に入力された情報信号系列をOQPSK変調回路2によってOQPSK変調した後、パイロット信号挿入回路3において、図2のようにパイロット信号を挿入する。

【0032】
情報信号とパイロット信号は共にローパスフィルタ群4によって帯域制限されるため、その時間波形は時間制限されない。したがって、情報信号からパイロット信号への符号間干渉を低減するために、パイロット信号の前後の時刻には、それぞれ数シンボルの情報を伝送しない区間を設ける(図3)。

【0033】
また、図2に示すように、パイロット信号挿入回路3は、サブキャリアごとに時間差をつけてパイロット信号を挿入し、パイロット信号を全て同一時刻で送信しない、すなわち、パイロット信号の少なくとも一部について互いに相違する時刻で送信する。

【0034】
図4は、図3の配置でパイロット信号を内挿した場合の出力部6のパイロット信号波形である。この場合、サブキャリア数を8とする。比較のために、従来の方式におけるパイロット信号の挿入について、図5及び図6を用いて説明する。

【0035】
従来方式では、各サブキャリアのパイロット信号を図5のように内挿する。送信側では、パイロット信号のサブキャリア位相がパイロット信号区間の中央で全て同位相となるように合成する。

【0036】
したがって、パイロット信号の送信信号波形は、図6に示すように、パイロット信号区間の中央で先鋭なピーク振幅値を有する波形となる。従来方式では、パイロット信号の送信ピーク電力が高くなるために、電力増幅器において非線形歪みが生じるおそれがある。

【0037】
それに対して、本発明におけるパイロット信号の送信波形は、図4に示すように、全サブキャリアのパイロット信号を同一時刻で送信しないため、パイロット信号の送信ピーク電力が従来の波形(図6)に比べて低減され、増幅器における非線形歪みが生じるおそれが低減する。

【0038】
次に、パイロット信号同期回路15及びパイロット信号再結合回路16について、図1B、図7及び図8を用いて説明する。入力部11に入力されたパイロット信号は、マルチキャリア復調回路12及びローパスフィルタ群13によって各サブキャリア信号に分離され、パイロット信号抽出回路14によって、サブキャリアごとにパイロット信号が抽出される。

【0039】
抽出されたパイロット信号は、パイロット信号同期回路15において、図7に示すように、全サブキャリアのパイロット信号を同一時刻に配置する。図7のように配置されたパイロット信号は、パイロット信号再合成回路16によって、パイロット信号区間の中央でサブキャリア位相が全て同位相となるように再合成される。

【0040】
したがって、パイロット信号再合成回路16の出力部におけるパイロット信号波形は、伝搬路が無歪みである場合、図8に示すようにパイロット信号区間の中央で先鋭なピーク振幅を持つ波形となる。

【0041】
図1に示す本発明による無線通信システムの具体的な動作を説明する。この場合、送信機からサブキャリア数8のマルチキャリア信号を送信し、各サブキャリアは、図2に示すようにサブキャリアのシンボルレート間隔で配置される。また、ローパスフィルタ群4,13の各ローパスフィルタは、ナイキスト第1基準を満足する伝達特性の平方根の伝達特性を有するものとする。

【0042】
パイロット信号挿入回路3は、図3に示す配置でパイロット信号を内挿する。出力部6の送信パイロット信号波形を、図4に示すものとし、サブキャリア数を8とする。送信側では、送信する情報信号内にパイロット信号を挿入するだけでよく、それ以外については、通常のマルチキャリア変調回路と同一である。

【0043】
受信パイロット信号をr(t)とし、マルチキャリア変調回路5によって、r(t)を分離した得たi番目のサブキャリア内に内挿されたパイロット信号をr(t)とする。r(t)をパイロット信号再合成回路16によって再合成したパイロット信号をR’(t)とする。時刻t=nΔtにおけるパイロット信号再合成回路16の出力r’(t)は、以下の式で表される。
【数1】
JP0003520341B2_000002t.gifここで、ωをi番目のサブキャリアの中心角周波数とし、Nを全サブキャリア数とし、ΔTをサンプリング間隔とする。jΔTは、パイロット信号区間の中央の時刻である。すなわち、t=jΔTでは、
【数2】
JP0003520341B2_000003t.gifとなり、全サブキャリアのパイロット信号の位相が同位相となる。r’(t)はピーク振幅検出回路17に入力され、包絡線電力値が最大となる時刻とそのときの信号振幅値が検出される。検出されたピーク振幅値と発生時刻は、共に伝搬路特性計算回路18に入力される。

【0044】
次に、本発明の実施の形態における伝搬路特性計算回路18の計算アルゴリズムについて説明する。伝搬路のインパルス応答は、以下の式で表される。
【数3】
JP0003520341B2_000004t.gifここで、Cを、伝搬路のi番目のパスの複素振幅とし、Lをパス数とし、τをi番目のパスの伝搬遅延時間とする。また、δ(t)をデルタ関数とする。簡単のため、N=2とすると、次式となる。
【数4】
JP0003520341B2_000005t.gifパイロット信号波形は受信側で既知であるので、受信側のフィルタ(ローパスフィルタ群13のローパスフィルタ)通過後のi番目のサブキャリアのパイロット信号をp(t)とすると、パイロット信号再合成回路16の出力部におけるパイロット信号p(t)は、以下の式で表される。
【数5】
JP0003520341B2_000006t.gifしたがって、受信パイロット信号の複製信号
【外1】
JP0003520341B2_000007t.gifは、以下の式で表される。
【数6】
JP0003520341B2_000008t.gifここで、Δτは、主波と遅延波との間の伝播遅延時間差を表し、Δτ=τ-τである。

【0045】
2乗誤差εを以下の式で定義する。
【数7】
JP0003520341B2_000009t.gifピーク振幅検出回路17によって検出されたピーク振幅値をC’とし、このピーク値の発生時刻をτ’とする。

【0046】
次に、ra(t)=r(t)-C’p(t-τ’)を計算し、ra(t)のピーク振幅値C’’とその発生時刻τ’’を求める。τ’<τ’’のとき、τ=τ’,τ=τ’’とし、τ’>τ’’のとき、τ=τ’’,τ=τ’とする。

【0047】
Δτ=τ-τにより、伝搬路の伝搬遅延時間差Δτを求める。本発明では、式(3)の2乗誤差を最小とする伝播路パラメータC,Cを反復法を用いて試行錯誤的に計算する。反復法のC,Cの初期値として、τ’<τ’’のとき、C=C’,C=C’’とし、τ’>τ’’のとき、C=C’’,C=C’とする。2条誤差εが最小となるときのパラメータ値C,Cを伝搬路特性の推定値とする。以上で、式(2)の伝搬路パラメータが全て求まる。

【0048】
式(1)において、L=3の場合は、先ず、L=2の場合と同様に、C’,C’’,τ’,τ’’を求める。次に、ra2(t)=ra(t)-C’’p(t-τ’’)を計算し、ra2(t)のピーク振幅値C’’’とその発生時刻τ’’’を求める。τ’,τ’’,τ’’’を小さい順にτ,τ,τとする。C’,C’’,C’’’は、式(3)の2乗誤差を最小とする値を、L=2の場合と同様に、反復法により計算する。L=4以上の場合も同様である。

【0049】
本発明による無線通信システムにおける伝搬路特性推定の効果を、本発明によって推定された伝搬路特性を用いて周波数領域で波形等化を行った場合のシミュレーション結果を用いて説明する。なお、シミュレーション条件を以下の表に示す。
【表1】
JP0003520341B2_000010t.gif本発明によって推定された伝搬路インパルス応答h(t)をフーリエ変換することによって、伝搬路の周波数特性H(ω)がわかる。受信された情報信号のフーリエ変換をRI(ω)とおくと、RI(ω)/H(ω)とすることによって伝搬路歪みを除去し、周波数領域等化を等化回路19によって行う。

【0050】
マルチキャリア信号の検波後のアイダイヤグラムを図9に示す。図9Aは、周波数領域等化を適用しない場合の検波後のアイダイヤグラムの一例を示す図であり、図9Bは、周波数領域等化を適用した場合の検波後のアイダイヤグラムの一例を示す図である。図10は、周波数領域等化を適用した場合の平均ビット誤り率特性を示す図である。なお、図10において、比較のために、従来方式の平均ビット誤り率特性も示す。

【0051】
図4及び図6に示すように、本発明による送信パイロット波形のピーク振幅値は、従来方式の送信パイロット信号のピーク振幅値の約1/2である。ここでは、本発明と従来方式の送信ピーク電力が等しくなるように、従来方式のパイロット信号振幅1/2(送信電力を1/4)に低減している。図10に示すように、本発明によって伝搬路特性を推定し、受信側で等化を行うことによって、歪みが軽減され、ビット誤り特性が向上する。

【0052】
また、本発明によれば、パイロット信号の送信電力を低減する必要がないため、従来の方式に比べて雑音に強くなり、誤り率特性が向上する。その結果、無線LANにおける高速無線通信において、簡易な回路規模で通信品質を向上させることができる。
図面
【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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