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明細書 :マイクロ波加熱による製鋼スラグの処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第2949221号 (P2949221)
登録日 平成11年7月9日(1999.7.9)
発行日 平成11年9月13日(1999.9.13)
発明の名称または考案の名称 マイクロ波加熱による製鋼スラグの処理方法
国際特許分類 C22B  5/10      
C04B  5/00      
C04B  5/06      
C04B 18/14      
FI C22B 5/10
C04B 5/00
C04B 5/06
C04B 18/14
C22B 7/04
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願平10-050586 (P1998-050586)
出願日 平成10年3月3日(1998.3.3)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 「材料とプロセス」Vol.10(1997)No.4(平成9年9月5日)社団法人日本鉄鋼協会第789ページに発表
審査請求日 平成10年3月3日(1998.3.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012327
【氏名又は名称】東京大学長
発明者または考案者 【氏名】森田 一樹
【氏名】佐野 信雄
【氏名】岡 紀郎
個別代理人の代理人 、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外8名)
審査官 【審査官】長者 義久
参考文献・文献 特開 昭51-121030(JP,A)
特開 昭54-28720(JP,A)
特開 昭52-28419(JP,A)
特開 平6-329452(JP,A)
特開 昭60-259888(JP,A)
「材料とプロセス」,社団法人日本鉄鋼協会,第10巻,第4号,p.789,平成9年9月5日
要約 【課題】 従来有効活用されていなかった製鋼スラグそれ自身を、他の原料として再利用することができるようにするとともに、製鋼スラグに含まれている鉄、リンを資源として効率的に回収する。
【解決手段】 製鋼スラグに炭素系還元剤を配合し、マイクロ波の照射により加熱してこの製鋼スラグ中の鉄分及びリン分を還元し、生成したFe-C-P含有溶融金属に炭酸カリウム及び酸化剤を加えてリン酸カリウムを得る。
特許請求の範囲 【請求項1】
製鋼スラグに炭素系還元剤を配合し、マイクロ波の照射により加熱してこの製鋼スラグ中の鉄分及びリン分を還元除去することを特徴とするマイクロ波加熱による製鋼スラグの処理方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、製鋼スラグの処理方法に関する。より詳しくは、マイクロ波加熱で処理することにより、製鋼スラグの有効活用を可能にする方法に関する。

【0002】
【従来の技術】鉄鋼の製銑工程、製鋼工程においては、副産物としてスラグが多量に生成されている。かかる鉄鋼製造プロセスで生成されるスラグのうち、高炉による製銑工程で生成される高炉スラグは、年間で3000万トン程度であり、高炉における強還元雰囲気での操業条件の下で生成されることから、そのスラグ中にはFeがほとんど含まれておらず、CaO 、SiO2、Al2O3 、MgO を主成分としている。

【0003】
この高炉スラグからは、溶融スラグの処理加工の方法に応じて種々の性状の素材を得ることができ、それぞれの特色を生かした種々な用途で活用されている。例えば、徐冷スラグはコンクリート用粗骨材、道路用路盤材などに用いられ、急冷スラグはセメント用材、コンクリート用細骨材、けい酸質肥料等に用いられて有効活用されている。

【0004】
一方、転炉などの製鋼炉による製鋼工程で生成される製鋼スラグは、年間1000万トン程度であり、CaO 、FeO 、Fe2O3 、SiO2を主成分とし、操業中における石灰の脱リン作用より生成されたリン成分などを含んでいる。この製鋼スラグには、酸化鉄や塩基性成分(CaO )が多量に含まれていることから、SiO2やP2O5やFe2O3 等と結合していない、いわゆるフリーライムが存在する。このフリーライムが水分や空気の侵入に従って逐次水和、炭酸化して膨張崩壊することがあるため、製鋼スラグは高炉スラグのような用途に利用するのは困難であった。また、FeO 、Fe2O3 を含有することにより鉄崩壊が生じる場合があることも、製鋼スラグの有効利用を阻んでいた。したがって、製鋼スラグは、大気中に長時間野積みして崩壊を完了させる処理(エージング)を行った後にアスファルトコンクリート用骨材として用いたり、焼結、高炉操業等の製銑工程で再利用される一部の場合を除いて、大半が埋め立て工事用として投棄に近い状態で処理されていた。しかも、この高炉操業等の製銑工程で再利用する場合であっても、多量の再利用は製鋼スラグ中のリン成分により銑鉄中のリン濃度を高めるおそれがあるため、再利用する量には限りがあった。

【0005】
ところで、製鋼スラグには、15%程度の鉄分、3%程度のマンガン分、1~2%程度のリン分が含まれていて、これらの成分を資源として回収し、有効活用することができれば資源のリサイクルの観点からも望ましい。しかし、現実には、製鋼スラグを粉砕して磁選により金属鉄を回収し製鉄原料として再利用することがあるぐらいで、それ以外は資源として回収するプロセスが確立されていない。

【0006】
製鋼スラグから有用資源を回収するための基礎研究として、鉄中でのリンの化学ポテンシャルを上げるシリコンを共存させた状態で、製鋼スラグを炭素還元する方法が試みられている。かかる基礎研究により製鋼スラグ中からの鉄の回収及びリンの除去が可能になったとされているものの、鉄分は鉄-シリコン合金として回収されることから、銑鉄に再利用するとシリコン濃度を高めるおそれがあり、また、この回収された鉄-シリコン合金から更に金属鉄を分離回収するにはコストと手間がかかるために現実的とはいえなかった。

【0007】
また、リンは肥料原料として有用であり、製鋼スラグからリンを抽出して再利用することが可能になれば、リン系肥料原料の多くを輸入に頼っている現状からみて極めて利用価値が高いのであるが、製鋼スラグからリンを抽出して再利用する技術はこれまでなかった。

【0008】
【発明が解決しようとする課題】前述したように、製鋼スラグは、それ自体、大半が埋め立て用としての消極的な活用しかされておらず、高炉スラグのようなコンクリート用粗骨材、道路用路盤材、セメント用材、コンクリート用細骨材としての積極的な活用ができなかった。また、製鋼スラグ中には、鉄、リンなどの有用成分が含まれているにも係わらず、これらの成分を製鋼スラグから有効に抽出し再利用することは行われていなかった。

【0009】
そこで、この発明は、製鋼スラグそれ自身を、他の原料として再利用することができるようにするとともに、製鋼スラグに含まれている鉄、リンを資源として効率的に回収することのできる製鋼スラグの処理方法を提案することを目的とするものである。

【0010】
【課題を解決するための手段】この発明は、製鋼スラグに炭素系還元剤を配合し、マイクロ波の照射により加熱してこの製鋼スラグ中の鉄分及びリン分を還元除去することを特徴とするマイクロ波加熱による製鋼スラグの処理方法である。

【0011】
【発明の実施の形態】発明者らの研究により、製鋼スラグの再利用、及び製鋼スラグに含まれている鉄、リンの回収を図るには、製鋼スラグを炭素により還元することが肝要であることが明らかとなった。しかしながら、この製鋼スラグの炭素による還元を、鉄浴式溶融還元炉にて酸素を吹き込みつつ燃焼加熱させて行う方法では、現状の製鋼スラグの生成量に対して設備が過剰となって現実的ではない。すなわち、製鋼炉による製鋼プロセスは、一回当たりの処理能力が溶鋼300 トン規模のバッチ式であり、各バッチでは15~20トンの製鋼スラグが排出される。この程度の量の製鋼スラグを加熱還元する場合に、鉄浴式溶融還元炉のような、炭材の燃焼による外部加熱方式では、着熱効率を上げることは容易ではなく、設備コストも嵩む。

【0012】
そこで、この発明の製鋼スラグの処理方法では、マイクロ波により製鋼スラグ及びその還元材である炭材を加熱する。このマイクロ波による加熱によれば、誘電損失の高い物質とマイクロ波との相互作用により物質の内部から加熱するため、物質を均一かつ効率良く加熱することができる。製鋼スラグ中に多く含まれる酸化鉄の誘電損失は非常に高く、また残りの成分の誘電損失も1000℃以上では加熱に十分役立つほどに高くなり、しかも,製鋼スラグの還元のために配合される炭素系還元材は、比表面積が大きい導電性物質であるため、マイクロ波が照射されるとジュール熱を発生する。これらのことから、マイクロ波を照射することは炭材共存下での製鋼スラグの処理に非常に効率的な加熱手段である。実験室規模でマイクロ波加熱により製鋼スラグを炭素還元した場合の昇温挙動の時系列変化を図1に示すように、マイクロ波の周波数や出力等によるが、室温から1700℃までを数分間で加熱することができる。

【0013】
また、マイクロ波加熱は内部から加熱する方法であるため、図2に通常の電気炉加熱(同図(a) )とマイクロ波加熱(同図(b) )のメカニズムを比較して示すように、通常の電気炉加熱に比べて熱効率が高いので有利である。なお、図2において、記号mは加熱しようとする材料、hは電気炉における加熱素子、rは耐火物、iはマイクロ波加熱装置における断熱材、sは金属シール、Mはマグネトロンである。

【0014】
かくして、この発明に従ってマイクロ波照射による加熱処理を行い、製鋼スラグを炭材で還元することにより、この製鋼スラグからFe-C-P含有溶融合金が生成されて分離される。したがって、このFe-C-P含有溶融合金が分離された後の製鋼スラグは、鉄崩壊が生じることがないために高炉スラグと同様の使途で用いることができるようになり、また、しかもリン含有量が低減されているから、焼結・高炉操業等の製銑工程に再利用するときにもリン濃度上昇という不具合がない。

【0015】
また、この発明のマイクロ波照射による加熱処理によって製鋼スラグから分離抽出されたFe-C-P含有溶融合金は、5%程度のリンを含有している。このFe-C-P含有溶融合金に炭酸カリウムを添加することによって、溶融合金中のリンをリン酸カリウムとして分離し、付加価値の高いリン肥料の主原料とすることができる。更に、リンが分離された後のFe-C含有合金は、そのまま溶銑中に供給することができるので、製鋼スラグ中の鉄分が有効活用されることになる。

【0016】
以上のことから、この発明により、製鋼スラグから鉄及びリンを資源として回収することができるとともに、資源回収後の製鋼スラグは従来の用途以外の使途に活用することができるようになる。

【0017】
以下、図面を用いてこの発明をより具体的に説明する。図3に、この発明の製鋼スラグの処理方法を活用した製鉄プロセスの一例の流れ図を示す。高炉1から出銑した銑鉄を転炉2に装入して製鋼処理を行うことにより、溶鋼と製鋼スラグ、すなわち転炉スラグとが生成される。この転炉スラグを炭素系還元材、例えばコークスと共にスラグ処理装置3に導いてマイクロ波加熱して炭素還元処理を行い、Fe-C-P含有溶融合金とCaO -SiO2系スラグに分離する。

【0018】
この炭素還元処理を行うに当たり、転炉から排出された直後の流動性を有する転炉スラグを用いたり、あるいはスラグの温度低下により固化した場合には予め粉砕した転炉スラグを用いたりすることは、還元反応を早め、投入するマイクロ波のエネルギー量を少なくするために好ましい。同じ理由から、コークスも粉状であることが望ましい。

【0019】
炭素系還元材の配合割合は、炭素当量で0~3程度という広い範囲で配合させることができる。ここで、炭素当量とは、被還元酸素に対する炭素のモル比をいう。なかでも好ましい範囲は炭素当量で1.25~1.5 程度である。これは、炭素系還元材の配合割合が1.25よりも小さいと未還元の鉄及びリンがスラグ中に残留し、それぞれをスラグから十分回収できない点で好ましくなく、一方、1.5 よりも大きいと炭素は過剰となり未反応のCがスラグ中に懸濁し、炭材の有効利用を阻害するためである。

【0020】
照射するマイクロ波の周波数は、処理しようとするスラグの量、スラグの組成、炭素系還元材の配合割合などによって異なるが、マイクロ波加熱に用いられる周波数のいずれもが適用でき、例えば800 MHz ~30GHz とする。マイクロ波の出力は、マイクロ波照射による加熱により、転炉スラグが1400℃以上になるような出力とすればよい。というのは、転炉スラグを1400℃以上に加熱できなければ、炭素系還元材によるスラグの還元反応が著しく低下するためである。

【0021】
また、スラグ処理装置3による炭素還元処理をする際に、この転炉スラグ及び炭素系還元剤の他に、SiO2を添加することは、より好ましい。その理由は、炭素還元反応により転炉スラグ中の鉄分(酸化鉄)が分離すると、スラグの融点が上昇するために同一温度では炭素還元反応が進行し難くなるのに対して、SiO2を添加すれば、転炉スラグの液相線温度を下げることができるからである。また、SiO2を添加することにより、このSiO2と転炉スラグ中のフリーライムとが反応してフリーライム量を低減することができることから、転炉スラグの崩壊現象を防止でき、セメント、クリンカー、ケイ酸石灰肥料などといった高炉スラグと同様の使途へ用いるのが容易になる。なお、SiO2は溶銑の予備処理で脱珪処理を行うことで容易に得ることができる。

【0022】
スラグ処理装置3による炭素還元処理により、COガスが発生するが、このCOガスは燃料資源等として有効に活用することができる。また、生成したFe-C-P含有溶融合金は、脱リン処理装置4に導いて、炭酸カリウムを添加して酸化反応させることで、リン肥原料となるK3PO4 が得られる。このK3PO4 を分離させた残りのFe-C含有合金は、銑鉄に加えられて資源として回収される。更に、このFe-C-P含有溶融合金を分離させた後のCaO -SiO2系スラグは、セメント、クリンカー、ケイ酸石灰肥料等に用いられ、また、高炉に他の原料と共に投入される。

【0023】
図4に、この発明に用いて好適なマイクロ波加熱製鋼スラグ処理設備を模式的に示す。スラグ処理装置3は、精錬炉からの製鋼スラグを保持するスラグ処理コンテナ3a及びマイクロ波発生照射装置3bをそなえている。スラグ処理コンテナ3aはキャビティ壁となる鉄皮5で覆われた耐火物6製の容器であり、側壁にはスラグの還元処理によって生成されたFe-C-P含有溶融金属を排出するための開口7を設け、この開口7からマイクロ波が漏洩するのを防止するための可動式の鉄扉8が取り付けられている。耐火物6にはマイクロ波との相互作用の小さいMgO 系又はスピネル系の耐火物を用いることが好ましい。

【0024】
マイクロ波発生照射装置3bは、マグネトロン(ジャイロトロン)9及びカバー10を有し、マグネトロン(ジャイロトロン)9によりマイクロ波の照射を行い、また、カバー10によりスラグ処理時にはコンテナ3aの蓋部となる。なお、このカバー10には生成した反応ガスを排出するための換気装置11が設けてある。脱リン処理装置4はスラグ処理装置3から排出されたFe-C-P含有合金を収容する容器12及びこの容器12に収容されたFe-C-P含有合金に向けてK3CO3 を投入するランス13を有している。

【0025】
図4に示した装置により製鋼スラグを処理するときには、酸化鉄やリンを多く含む製鋼スラグ(精錬後のスラグ及び脱珪スラグ)をコークス等の炭素系還元剤14と共に処理コンテナ3aに装入し、マイクロ波発生加熱装置3bにより加熱処理を行う。酸化鉄を多く含むスラグ自身及びコークスの効率的な加熱により、還元反応が進行し、溶融したスラグ相15の下部にFe-C-P含有合金浴16が生成する。これよりFe-C-P含有合金を分離後のスラグは、原料としての付加価値が向上する。また、還元反応は主にジュール熱による局部加熱されるコークス表面で起こるため、合金生成反応は従来の外部加熱方式の比べて極めて早い。なお、副生成したCOガスは排気装置11から回収して燃料資源とする。

【0026】
還元反応終了後は、コンテナ3aを傾動させて生成した合金を脱リン処理装置4に移し、この脱リン処理装置4において合金浴中に炭酸カリウム粉末を酸素又は酸化鉄と共に吹き込み、合金中に約5%含まれるリンをリン酸カリウムとして分離する。このリン酸カリウムは肥料の主原料となる。リンを除去したFe-C含有合金は従来の溶銑に戻すことで、鉄の歩留まりが1~2%向上する。

【0027】
【発明の効果】かくして、この発明では製鋼スラグに炭素系還元剤を配合し、マイクロ波の照射により加熱してこの製鋼スラグ中の鉄分及びリン分を還元除去することから、以下の効果が得られる。
・製鋼スラグの資源化
従来法では、一部が製銑工程に戻される以外には、精錬後の製鋼スラグは埋め立て用として投棄に近い状態で処理され、資源としての価値がほとんどなかったのに対して、この発明によれば図3に示すように、高炉スラグとほぼ同等の付加価値を有するようになる。

【0028】
また、この発明では、製鋼スラグに炭素系還元剤を配合し、マイクロ波の照射により加熱してこの製鋼スラグ中の鉄分及びリン分を還元し、生成したFe-C-P含有溶融金属に炭酸カリウム及び酸化剤を加えてリン酸カリウムを得ることから、以下の効果が得られる。
・鉄資源の回収
従来、投棄される製鋼スラグ中には15%程度の鉄が含まれているが、有用活用されないために鉄資源とは見なされていなかったのに対し、この発明により製鋼スラグから効率的に鉄を回収することができるため、歩留まりが1~2%上昇する。なお、小規模実験結果でも製鋼スラグの鉄分のうち95%以上が回収されている。
・リン資源の回収
精錬後の製鋼スラグには鉄と同様、リンも1~2%含まれているが、資源としての回収は試みられていなかったのに対して、この発明により、鉄合金中に回収され、それをアルカリ炭酸塩と酸化剤で固定化することで、非常に付加価値の高い肥料の主原料が得られる。図5に示すように、小規模実験では炭素当量が1.25以上になる炭素系還元剤の添加により、50%以上のリンが合金浴に回収されている。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図3】
4