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明細書 :形状変形計測方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第2903111号 (P2903111)
登録日 平成11年3月26日(1999.3.26)
発行日 平成11年6月7日(1999.6.7)
発明の名称または考案の名称 形状変形計測方法
国際特許分類 G01B 11/16      
FI G01B 11/16 H
請求項の数または発明の数 3
全頁数 8
出願番号 特願平10-101848 (P1998-101848)
出願日 平成10年3月31日(1998.3.31)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人 精密工学会 第2回知能メカトロニクスワークショップ講演論文集(1997年10月4日発行)第29頁~34頁に発表
審査請求日 平成10年3月31日(1998.3.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396019376
【氏名又は名称】和歌山大学長
発明者または考案者 【氏名】森本 吉春
【氏名】藤垣 元治
個別代理人の代理人 、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外8名)
審査官 【審査官】白石 光男
参考文献・文献 特開 昭61-76906(JP,A)
特開 平7-83637(JP,A)
特表 平4-502506(JP,A)
調査した分野 G01B 11/00 - 11/30
要約 【課題】 物体の形状変形を簡単かつ迅速に計測できる形状変形計測方法を提供する。
【解決手段】 被測定物体に位相シフトしながら格子を投影して、それぞれの位相シフト量における複数の格子画像を撮影して、その複数の格子画像に基づいて各画素について輝度が最大となる位相シフト量を抽出し、任意の時間経過後に、同様に、被測定物体に位相シフトしながら前記格子を投影して、それぞれの位相シフト量における複数の格子画像を撮影し、その複数の格子画像から、各画素について予め抽出した位相シフト量における格子画像を選択して、その選択した格子画像から当該画素の輝度データを抽出し、その抽出される各画素の輝度データに基づいて被測定物体の変形量を表す等変位線画像を得る。
特許請求の範囲 【請求項1】
被測定物体に位相シフトしながら格子を投影して、それぞれの位相シフト量における複数の格子画像を撮影する第1の工程と、
前記複数の格子画像に基づいて、各画素について輝度が最大となる位相シフト量を抽出する第2の工程と、
任意の時間経過後に、前記被測定物体に位相シフトしながら前記格子を投影して、それぞれの位相シフト量における複数の格子画像を撮影する第3の工程と、
この第3の工程で得られる複数の格子画像から、各画素について前記第2の工程で抽出した位相シフト量における格子画像を選択して、その選択した格子画像から当該画素の輝度データを抽出する第4の工程と、
この第4の工程で抽出される各画素の輝度データに基づいて前記被測定物体の変形量を表す等変位線画像を得ることを特徴とする形状変形計測方法。

【請求項2】
被測定物体に位相シフトしながら格子を投影して、それぞれの位相シフト量における複数の格子画像を撮影する第1の工程と、
前記複数の格子画像に基づいて、各画素について輝度が最大となる位相シフト量を抽出する第2の工程と、
任意の時間経過後に、前記被測定物体に位相シフトしながら前記格子を投影して、それぞれの位相シフト量における格子画像を順次撮影し、その順次の撮影において、当該位相シフト量と前記第2の工程で抽出された位相シフト量とが同じ画素の輝度データを抽出する第3の工程と、
この第3の工程で抽出される輝度データに基づいて前記被測定物体の変形量を表す等変位線画像を得ることを特徴とする形状変形計測方法。

【請求項3】
請求項1または2記載の形状変形計測方法において、
前記被測定物体に投影する格子が鋸歯波状の輝度分布を有することを特徴とする形状変形計測方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、工業生産物、構造物、人体等の物体の形状変形を計測する方法に関するものである。

【0002】
【従来の技術】従来、非接触で三次元形状計測を行う方法として、物体に等ピッチの格子を投影し、別の方向からCCD等の固体撮像素子を有するテレビカメラで撮影して、物体の形状に応じて歪んだ格子画像を得、その格子の歪みを走査モアレ法やフーリエ変換モアレ法/格子法等の位相解析法によって解析して、形状分布を表す等高線画像を得る方法がよく用いられている。

【0003】
ここで、走査モアレ法は、格子画像を元の格子のピッチでサンプリングする、すなわち間引く画像処理を行うことで、等高線を意味するモアレ縞を得るもので、単純な画像処理で実現できることから、非常に高速に等高線画像を得ることができるが、得られる等高線画像にノイズが多く含まれるという問題がある。これに対し、フーリエ変換モアレ法/格子法では、滑らかな等高線画像を得ることができるが、処理に時間がかかるという問題がある。

【0004】
そこで、上記の走査モアレ法による問題点を解決するものとして、投影格子の位相をシフトしながら複数枚画像を取り込み、投影格子の位相と間引き処理の位相とを一致させることで、ノイズのない滑らかなモアレ縞を簡単に得ることのできる位相シフト走査モアレ法が提案されている。また、本発明者らは、かかる位相シフト走査モアレ法を適用して、物体の三次元形状の計測を行う装置を既に提案した(精密工学会第1回知能メカトロニクスワークショップ,平成8年7月25日,第214頁~第219頁)。

【0005】
この三次元形状計測装置では、格子投影装置から等ピッチの格子を位相シフトしながら物体に投影して、各位相値の格子画像をテレビカメラで撮影し、その各格子画像を位相シフト量に応じてサンプリングして合成することにより、等高線画像を得るようにしている。

【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した三次元形状計測装置を用いれば、位相シフト走査モアレ法により物体の変形前後のそれぞれの形状を計測し、それらの計測データを比較演算して変形量を計算して、その分布を表示することにより物体の形状変形を計測することができる。

【0007】
しかしながら、かかる形状変形計測方法では、物体の変形前後の形状を計測してから変形量を計算するため、処理が複雑で時間がかかるという問題がある。また、振動物体や動いている物体のように、変形量が時間的に変化する場合には、変形分布の変化を実時間で観察できないという問題もある。

【0008】
この発明の第1の目的は、物体の形状変形を簡単かつ迅速に計測できる形状変形計測方法を提供しようとするものである。

【0009】
さらに、この発明の第2の目的は、上記第1の目的に加え、物体の変形量が時間的に変化する場合でも、その形状変化を実時間で観察できる形状変形計測方法を提供しようとするものである。

【0010】
【課題を解決するための手段】上記第1の目的を達成するため、請求項1に係る形状変形計測方法は、被測定物体に位相シフトしながら格子を投影して、それぞれの位相シフト量における複数の格子画像を撮影する第1の工程と、前記複数の格子画像に基づいて、各画素について輝度が最大となる位相シフト量を抽出する第2の工程と、任意の時間経過後に、前記被測定物体に位相シフトしながら前記格子を投影して、それぞれの位相シフト量における複数の格子画像を撮影する第3の工程と、この第3の工程で得られる複数の格子画像から、各画素について前記第2の工程で抽出した位相シフト量における格子画像を選択して、その選択した格子画像から当該画素の輝度データを抽出する第4の工程と、この第4の工程で抽出される各画素の輝度データに基づいて前記被測定物体の変形量を表す等変位線画像を得ることを特徴とするものである。

【0011】
さらに、上記第2の目的を達成するため、請求項2に係る形状変形計測方法は、被測定物体に位相シフトしながら格子を投影して、それぞれの位相シフト量における複数の格子画像を撮影する第1の工程と、前記複数の格子画像に基づいて、各画素について輝度が最大となる位相シフト量を抽出する第2の工程と、任意の時間経過後に、前記被測定物体に位相シフトしながら前記格子を投影して、それぞれの位相シフト量における格子画像を順次撮影し、その順次の撮影において、当該位相シフト量と前記第2の工程で抽出された位相シフト量とが同じ画素の輝度データを抽出する第3の工程と、この第3の工程で抽出される輝度データに基づいて前記被測定物体の変形量を表す等変位線画像を得ることを特徴とするものである。

【0012】
この発明の一実施形態においては、請求項1または2記載の形状変形計測方法において、前記被測定物体に鋸歯波状の輝度分布を有する格子を投影する。このようにすれば、変位量の増減方向をも知ることが可能となる。

【0013】
まず、等変位線を求める原理について説明する。図1(a)および(b)は、被測定物体の変位と投影格子の位相との関係、および被測定物体の変位と輝度値との関係をそれぞれ模式的に示す図である。ここでは、格子投影装置により鋸歯波状の輝度分布を有する等ピッチの格子を被測定物体に投影し、その格子画像を別の方向からCCDカメラで撮影するものとする。なお、CCDカメラの撮像面での格子ピッチは、N画素(この場合、N=10)とする。被測定物体に初期状態(Δφ=0)の格子を投影した場合、変形前の点Aの位相値はφA となる。また、投影格子をφA だけシフトすると、点Aの位相値は0となる。

【0014】
変形後は、点Aを写していたCCDカメラの撮像面の画素には、点A′が写される。ここで、投影格子をφA だけシフトすると、点A′の位相値はφA ′となる。この位相値φA ′は、点A′の変形前の位相値にかかわらずに決まる値で、変位量dに応じた値となる。すなわち、変位量に応じた輝度値となり、この輝度分布は等変位線を表すことになる。しかも、この場合、投影格子が鋸歯波状の輝度分布を有するので、輝度の変化が変形量の増減の方向を表すことになる。

【0015】
変形前の投影格子の位相分布は、特徴量抽出法を用いて求めることができる。図1において、変形前の表面上の点Aの位相値を求めるには、初期状態(Δφ=0)から、投影格子の位相を等間隔で少しずつ0~2πまでシフトさせながら撮影し、点Aにおいて、最大輝度となる時の投影格子のシフト量を求める。この処理を、撮影された画面内の全ての点において行えば、位相分布を得ることができる。

【0016】
次に、図2(a)~(c)を参照して変形後の等変位線画像を得る原理について説明する。変形前の場合と同様に、投影格子の位相を等間隔で少しずつ0~2πまでシフトさせながら、格子画像を複数枚撮影する。画像内の1点(i,j)に注目して、まず、図2(a)に示す変形前の位相分布から点(i,j)における位相値(位相シフト量)を得る。次に、図2(b)に示す複数枚の変形後の格子画像から、同じ位相シフト量の画像を選択して、その画像内の点(i,j)における輝度データを、図2(c)に示すように、表示画像の点(i,j)における輝度データとする。この処理を全画素について行うと、等変位線分布を表す画像を得ることができる。しかも、投影格子が鋸歯波状の輝度分布を有する場合には、輝度の変化が変形量の増減の方向を表すことになる。

【0017】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図3は、この発明に係る形状変形計測方法を実施する等変位線表示装置の一例の構成を模式的に示す図である。この等変位線表示装置は、格子投影装置1、CCDカメラ2、リニアガイド3、モニタ4、および演算制御装置5を有する。格子投影装置1は、液晶プロジェクタまたはスライドフィルム(格子)の位置を変化できるようにしたスライドプロジェクタを用い、演算制御装置5からの投影格子画像信号またはスライド移動信号により、被測定物体7に鋸歯波状の輝度分布を有する格子を位相シフトしながら投影するようにする。また、CCDカメラ2は、被測定物体7に投影された格子を撮影するように配置し、その撮影した格子画像は演算制御装置5に供給する。なお、CCDカメラ2は、格子投影装置1との相対位置を調整し得るようにリニアガイド3上に取り付け、また、格子投影装置1およびCCDカメラ2の少なくとも一方のレンズにはあおり機構、ズーム機構を設けて、格子投影装置1およびCCDカメラ2の双方のレンズの中心位置が光軸方向に対して同一位置で、かつ、CCDカメラ2で撮影される格子画像の格子ピッチが整数画素となるように調整する。

【0018】
演算制御装置5は、複数の画像メモリを有し、格子投影装置1による投影格子の位相シフトに同期して、CCDカメラ2からの格子画像を取り込んで処理し、その処理画像をモニタ4に表示するようにする。この例では、CCDカメラ2からの格子画像を、そのまま演算制御装置5を経てモニタ4に選択的に表示すると共に、その格子画像を処理した位相分布画像、等高線画像および等変位線画像をモニタ4に選択的に表示するようにする。

【0019】
次に、図3に示す等変位線表示装置によるこの発明に係る形状変形計測方法の第1実施形態について説明する。先ず、変形前(初期状態)の被測定物体7に、格子投影装置1から位相シフト(複数n回、1回あたりの位相シフト量は2π/n)しながら格子を投影し、その各位相シフト量における格子画像をCCDカメラ2で撮影して演算制御装置5内の画像メモリにそれぞれ記憶する。なお、ここでは、説明の便宜上、順次の位相シフト量における格子画像を、図4(a)に示すように、画像メモリA0 ~An-1 に記憶するものとし、その順次の画像メモリA0 ~An-1 をページ数とも呼ぶことにする。

【0020】
その後、演算制御装置5内で、画像メモリA0 ~An-1 に記憶した格子画像を基に、図4(b)に示すように、各画素について、何ページ目の画像で最大輝度となるかを抽出して、そのページ数、すなわち位相シフト量を別の画像メモリ(ここでは、便宜上、画像メモリBとする)に記憶する。

【0021】
次に、任意の時間経過した被測定物体7の変形後または変形中に、変形前と同様にして、被測定物体7に格子投影装置1から位相シフトしながら格子を投影し、その各位相シフト量における格子画像をCCDカメラ2で撮影して、それぞれの格子画像を、図4(c)に示すように、演算制御装置5内の画像メモリ(ここでは、便宜上、画像メモリC0 ~Cn-1 とする)に記憶する。

【0022】
その後、画像メモリC0 ~Cn-1 から、各画素について画像メモリBに記憶されているページ数を選択し、その選択したページ数から当該画素の輝度データを抽出して、図4(d)に示すように、別の画像メモリ(ここでは、便宜上、画像メモリDとする)の対応する画素に記憶する。この処理を全画素について行って、画像メモリDに変形量を表す等変位線画像データを得、その画像データをモニタ4に供給して等変位線画像を表示する。

【0023】
図5は、第1実施形態によって、缶の変形計測を行った表示例を示すもので、図5(a)~(c)は、変形前の格子画像、等高線画像、および特徴量抽出法によって得られた位相分布画像をそれぞれ示し、図5(d)~(f)は、缶の中央部を変形されたのちの格子画像、等高線画像および等変位線画像をそれぞれ示し、図5(g)~(i)は、さらに大きく変形された場合の格子画像、等高線画像および等変位線画像をそれぞれ示す。これらの結果から明らかなように、この実施形態によれば、変形量に応じた良好な等高線画像および等変位線画像を得ることができると共に、変位量の増減の向きを輝度の変化、すなわち等変位線の増減として観察することができる。

【0024】
次に、図3に示す等変位線表示装置によるこの発明に係る形状変形計測方法の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、等変位線画像を実時間でモニタ4に表示する。このため、先ず、第1実施形態の場合と同様に、変形前(初期状態)の被測定物体7に、格子投影装置1から位相シフト(複数n回、1回あたりの位相シフト量は2π/n)しながら格子を投影し、その各位相シフト量における格子画像をCCDカメラ2で撮影して、図6(a)に示すように、演算制御装置5内の画像メモリ(ここでは、便宜上、画像メモリA0 ~An-1 )に記憶する。その後、演算制御装置5内で、画像メモリA0 ~An-1 に記憶した格子画像を基に、図6(b)に示すように、各画素について、何ページ目の画像で最大輝度となるかを抽出して、そのページ数、すなわち位相シフト量を別の画像メモリ(ここでは、便宜上、画像メモリBとする)に記憶する。

【0025】
次に、第1実施形態の場合と同様に、任意の時間経過した被測定物体7の変形後または変形中に、変形前と同様にして、被測定物体7に格子投影装置1から位相シフトしながら格子を投影し、その各位相シフト量における格子画像をCCDカメラ2で撮影して、それぞれの格子画像を演算制御装置5に取り込むが、この第2実施形態では、その各位相シフト量の格子画像の取り込みにおいて、図6(c)に示すように、当該格子画像を画像メモリ(ここでは、便宜上、画像メモリCとする)に記憶したら、この画像メモリCから、画像メモリBに記憶されている同じ位相シフト量の画素の輝度データを抽出して、その輝度データを、図6(d)に示すように、別の画像メモリ(ここでは、便宜上、画像メモリDとする)の対応する画素に記憶する。この処理を、ビデオレートに同期して、順次の位相シフト量の格子画像を取り込む毎に行いながら、画像メモリDに記憶された内容をモニタ4に表示する。

【0026】
このようにすれば、画像メモリDの内容は、位相シフト毎に1/nだけ更新されるので、結果的にはモニタ4には見た目には実時間で等変位線が変化する等変位線画像が表示される。

【0027】
したがって、この実施形態によれば、図5(f)や図5(i)で示したような等変位線画像を実時間で表示することができるので、被測定物体7の形状変化を実時間で観察できる。また、第1実施形態の場合と比較して、画像メモリCが1ページ分で済むという利点がある。

【0028】
なお、上述した各実施形態では、変位量の増減方向をも観察できるようにするため、投影格子に鋸歯波状の輝度分布をもたせるようにしたが、増減方向の観察が不要な場合には、例えばコサイン波状の輝度分布を有する格子を投影して、同様にして等変位線画像を表示することができる。

【0029】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、請求項1に係る発明によれば、物体の変形前後の形状を計測してから変形量を計算することなく、物体の変形量を表す等変位線画像を得ることができるので、物体の形状変形を簡単かつ迅速に計測することができる。

【0030】
また、請求項2に係る発明によれば、物体の変形量を表す等変位線画像を実時間で得ることができるので、上記の効果に加えて、物体の変形量が時間的に変化する場合でも、その形状変化を実時間で計測することができる。

【0031】
さらに、請求項3に係る発明によれば、投影格子に鋸歯波状の輝度分布を持たせるようにしたので、変位量の増減の向きを等変位線の増減として計測することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5