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Specification :(In Japanese)一塩基反復多型解析方法及び一塩基多型解析方法

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P5641465
Publication number P2010-246445A
Date of registration Nov 7, 2014
Date of issue Dec 17, 2014
Date of publication of application Nov 4, 2010
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)一塩基反復多型解析方法及び一塩基多型解析方法
IPC (International Patent Classification) C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI (File Index) C12Q 1/68 ZNAZ
C12N 15/00 A
Number of claims or invention 12
Total pages 29
Application Number P2009-098068
Date of filing Apr 14, 2009
Date of request for substantive examination Oct 20, 2011
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】西森 敬
Representative (In Japanese)【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100120905、【弁理士】、【氏名又は名称】深見 伸子
Examiner (In Japanese)【審査官】西村 亜希子
Document or reference (In Japanese)特表2003-535567(JP,A)
国際公開第2007/119779(WO,A1)
特表2008-517606(JP,A)
特表2001-516594(JP,A)
J. Microbiol. Methods,2008年,Vol.73, No.3,pp.269-272
J. Clin. Microbiol. ,2006年,Vol.44, No.3,pp.777-782
Lett. Appl. Microbiol.,2008年,Vol.46, No.5,pp.600-603
結核,2006年,Vol.81, No.11,pp.697-700
動衛研研究報告,2003年,Vol.109,pp.25-32
結核,2006年,Vol.81, No.9,pp.559-566
Field of search C12Q 1/68
C12N 15/09
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
一塩基反復多型中の反復数を解析する方法であって、以下のステップ:
(a)対象となる一塩基反復が生じ得ることが知られている核酸領域に対応する標識された2種以上の核酸断片を含む遺伝子型判定マーカーを調製するステップであって、該遺伝子型判定マーカー中に含まれる各核酸断片は、該一塩基反復において異なる反復数を有する配列を有するステップ、
(b)被験核酸中の、該遺伝子型判定マーカーに含まれる核酸断片に対応する領域をPCR法を用いて増幅することにより被験核酸断片を調製するステップであって、該被験核酸断片は該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片とは異なる標識物質を用いて標識されているステップ、
(c)該遺伝子型判定マーカーと該被験核酸断片とを混合し、電気泳動による分離処理に供するステップ、及び
(d)該被験核酸断片の移動度を該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片の移動度と比較することにより、該被験核酸断片における対象となる一塩基反復中の反復数を判定するステップ
を含む、上記方法。
【請求項2】
一塩基反復とともにPCR増幅される核酸領域に存在する一塩基多型を解析する方法であって、以下のステップ:
(a)対象となる一塩基多型が生じ得ることが知られている核酸領域に対応する標識された2種以上の核酸断片を含む遺伝子型判定マーカーを調製するステップであって、該遺伝子型判定マーカー中に含まれる各核酸断片は、該一塩基反復において異なる反復数を有する配列を有するステップ、
(b)被験核酸中の、該遺伝子型判定マーカーに含まれる核酸断片に対応する領域をPCR法を用いて増幅することにより被験核酸断片を調製するステップであって、該被験核酸断片は該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片とは異なる標識物質を用いて標識されているステップ、
(c)該遺伝子型判定マーカーと該被験核酸断片とを混合し、電気泳動による分離処理に供するステップ、及び
(d)該被験核酸断片の移動度を該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片の移動度と比較することにより、該被験核酸断片における対象となる一塩基多型を判定するステップ
を含む、上記方法。
【請求項3】
前記核酸断片がDNA断片である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸領域がゲノム領域である、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記遺伝子型判定マーカー中の各核酸断片が、前記対象となる一塩基反復中の反復数において1ずつ異なる配列を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記電気泳動による分離処理をキャピラリー電気泳動により行う、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子型判定マーカー中の核酸断片が、1種類の標識物質を用いて標識されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記標識が蛍光標識である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記核酸領域が細菌のゲノム領域である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記細菌がヨーネ菌である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記核酸領域が配列番号1又は2に示される配列又は該配列の相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
対象となる一塩基反復多型が生じ得ることが知られている核酸領域、又は一塩基反復とともにPCR増幅され、且つ対象となる一塩基多型が生じ得ることが知られている核酸領域に対応する、該一塩基反復において異なる反復数を有する配列を有する標識された2種以上の核酸断片を含む遺伝子型判定マーカー、及び該遺伝子型判定マーカーに含まれる核酸断片に対応する核酸領域を増幅するためのプライマーペアを少なくとも含む、一塩基反復多型中の反復数又は一塩基多型を解析するためのキット。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、一塩基反復多型及び一塩基多型の解析方法に関する。より具体的には、本発明は、遺伝子型判定マーカーを利用して、一塩基反復多型中の反復数を解析する方法、及び一塩基反復の近傍に存在する一塩基多型を解析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲノム、mRNAなどのある生物の核酸は、その生物に関する遺伝情報を含んでいる。個体間での遺伝子配列の変化は、多くの明白な表現型の相違(例えば毛髪、皮膚等の色素形成)及び多くの非明白なもの(例えば薬剤耐性及び疾患の易罹患性)を説明することが可能である。DNA多型を構成する1塩基対置換などのヌクレオチド配列における微小な変化でさえも、タンパク質の性質又は量に対して顕著な影響を及ぼす場合がある。
【0003】
DNA多型はゲノム全体を通じて遺伝子内及び遺伝子間に存在し、種々の型が結果として異なる遺伝子機能をもたらす場合があり、あるいはもたらさない場合もある。遺伝子機能の差異は、同じ配列の2つの別個の型の機能を比較することにより決定される。ほとんどの多型は遺伝子機能を変化させず、そのような場合は中立的突然変異、又は中立多型と称される。その他の突然変異は、例えばタンパク質のアミノ酸配列を変化させることにより、あるいはプロモーターのような制御配列又はRNAスプライシング又は分解シグナルを変化させることにより、遺伝子機能に影響を及ぼす。遺伝子機能に影響を及ぼすDNA多型が疾患に関与することもある。すなわち、疾患の状態を誘発したり影響を及ぼしたりすることに加えて、突然変異は、病原体の変化した病原性、又は患者の疾患への易罹患性及び治療に対する抵抗性をもたらす場合もある。
【0004】
DNA配列内における特定のヌクレオチドの変化又は特定の突然変異を検出する能力は、医療上又は非医療上の目的の多くに有用である。ヌクレオチドの変化を同定することができる方法は、DNA多型に関わる疾患のスクリーニング及び診断を可能にする。多型はまた、疾患に関与する遺伝子を同定するための遺伝子研究において有用である。多型が1以上の遺伝子の機能を疾患への易罹患性が増大するように変化させる場合、そのような多型は、疾患を有さない個体と比較して疾患を有する個体において、より高頻度に存在することになる。統計学的方法を用いることにより、正常な集団と比較した場合に罹患した集団で観察される多型の頻度を評価することができ、多型と疾患の表現型との間の因果関係の確立を容易にすることができる。疾患に相関する配列の変異を迅速に同定できる方法はまた、予防的手段を行う場合、疾患発症の確率を調べる場合、及びこのような疾患の予後を評価する場合において、価値あるものである。
【0005】
中立的突然変異に関しては、これが自然淘汰を受けないために、時間とともに一定の割合で蓄積していく。このことが、中立的突然変異の分子時計としての利用の基礎となっている。中立的突然変異によるDNA多型(中立多型)は、例えば、微生物から高等生物までの系統解析、又は特定の系統の検出に利用されている。一定期間内での変異の頻度が十分に低く、利用に支障がないと推測される多型は、植物品種のDNA鑑定及び法医学的分析などに利用されている。
【0006】
DNA多型のうち、最小単位であるゲノムDNAでの1ヌクレオチド変化は、一塩基多型又は単にSNP(Single Nucleotide Polymorphism)と称される。SNPなどの遺伝的多型の有用性の中核をなすのは、既知の多型に関して個体の遺伝子型を決定する能力である。この問題に対して多くのアプローチがなされてきた。例えば、一部の多型は、偶然にも制限エンドヌクレアーゼの開裂部位において変化をもたらし、これにより、消化されたゲノムDNA試料を電気泳動で分離する場合に観察されるフラグメントのパターンを変化させる。これは、制限酵素断片長多型分析、すなわちRFLP分析により検出することができる。
【0007】
1本鎖高次構造多型(SSCP)分析もまた、増幅されたDNAフラグメント内のSNPを検出できる。この方法においては、増幅されたフラグメントを変性させ、次に非変性ポリアクリルアミドゲル中における電気泳動の間に再アニーリングさせる。1ヌクレオチド配列変化の存在は、野性型配列と比較した場合に、コンホメーション及び試料の電気泳動における移動度に検出可能な変化をもたらし得る。
【0008】
ハイブリダイゼーションに基づく方法では、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブを使用する(例えば、特許文献1及び2参照)。ハイブリダイゼーションに基づく方法には、例えば、プローブRNA:試料DNA2本鎖でのミスマッチにおけるリボヌクレアーゼA切断に基づく検出、又はプローブDNA:試料DNA2本鎖におけるミスマッチについての変性勾配ゲル電気泳動が含まれる(非特許文献1及び2において概説されている)。
【0009】
他のSNP遺伝子タイピング方法は、対立遺伝子特異的増幅(例えば、特許文献3~5参照)、ミニ配列決定法(mini-sequencing methods)、定量的RT-PCR法(例えばいわゆる「TaqManアッセイ」;例えば、Gelfandの特許文献6、Livakらの特許文献7、及びHaalandの特許文献8、並びに非特許文献3~6)、及び1ヌクレオチドプライマー伸長(SNuPE)アッセイ(例えば、特許文献9)及び関連する伸長アッセイ(例えば、特許文献10~14)を使用する。
【0010】
SNPの解析のために、キャピラリー電気泳動(CE)が利用されてきた。ある研究では、1ヌクレオチドポリメラーゼ伸長アッセイの結果を分析するためにCEが使用された(非特許文献7)。その研究においては、多型部位に直接に隣接するプライマーのハイブリダイゼーション及び1個の蛍光標識連鎖ターミネーターによるプライマーの伸長、その後のCE分離と取り込まれた標識の検出とにより、既知のSNPを含むPCR(Polymerase Chain Reaction)増幅DNAを分析している。別の研究においては、既知のSNPを含むPCR増幅DNAは、2つの同一に蛍光標識された連鎖ターミネーターの1つを用いて伸長させ、その後CE分離及び取り込まれた標識の検出を行った。取り込まれたターミネーターの同一性は、オリゴヌクレオチドに関するCE移動度の配列特異的な相違に基づいて決定される。非特許文献8では、共通の上流プライマーを有し3’末端塩基において異なる2つの異なって蛍光標識されたプライマーのセットを用いたPCR、その後のCE及び蛍光検出を含むSNP遺伝子タイピングアッセイを記載している。
【0011】
特許文献15は、グラフ理論技術に従ってサブセットに分配された分子の同時分離のためのCEの使用、及びSNP遺伝子タイピングへのこの方法の適用を教示している。特許文献16は、多型部位にハイブリダイズされたプライマーから蛍光標識を放出させるためにポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性を使用するSNP検出方法におけるCEの使用を記載している。特許文献17もまた、核酸プローブ脱重合活性を含むSNP遺伝子タイピング方法におけるCE分離の使用を記載している。特許文献18は、タグが特定のヌクレオチドに相関する、有機的にタグ付加されたフラグメントを生成させる配列決定法を記載している。フラグメントをCEにより分離し、次にフラグメントからタグを切断し、切断されたタグを非蛍光スペクトル分析又は電位差測定法により検出する。特許文献19は、多型部位にハイブリダイズされたプライマーから識別ヌクレオチドを放出させる脱重合活性を用いるSNP検出方法におけるCEの使用を記載している。
【0012】
SNPと同様に小さな単位で見られる遺伝的多型としては、マイクロサテライトが挙げられる。これは、SSR(Sort Sequence Repeat若しくはSimple Sequence Repeat)又はSTR(Short Tandem Repeat)とも呼ばれる、短い同一配列の反復単位の隣接した反復(縦列反復)を有する領域である。ゲノム配列内での縦列反復は、真核生物のゲノムDNAの密度勾配遠心による分画において形成されるいわゆるサテライトバンドの形成に関与するため、サテライトと称されるようになった。当初検出された反復単位が数百bpであったので、一般に、それよりも小さい10~100bp程度の反復単位を有するものはミニサテライト、さらに小さい1~13bp程度の反復単位を有するものはマイクロサテライトと称される。SSRなどのマイクロサテライトは、以前には原核生物においては存在しないと考えられていたが、種々の遺伝子のシーケンス解析の過程で原核生物にも存在することが明らかとなった。サテライト内の反復単位の反復数には多様性がある場合がある。現在では、真核生物に加えて、ゲノムプロジェクトによりゲノム解析がなされた多くの原核生物においても、この多様性を利用した遺伝子型判別のためのサテライトの利用が可能となっている。例えば、マイクロサテライトは、植物での品種の遺伝子型の同定などに役立てられ、ミニサテライトは、微生物の遺伝子型の同定などに役立てられている(非特許文献9)。
【0013】
SSRの多くはその全体を含む領域で100~200bp程度であることが多いため、PCR増幅を用いて、産物の長さを比較することにより反復数の特定が行われている。しかしながら、反復単位が一塩基である場合には、PCR産物長の比較による多型の同定は比較的困難である。そのような場合には、上記のSNP解析と同様の手法やシーケンス法を用いて反復数の特定を行う必要がある。
【先行技術文献】
【0014】

【特許文献1】欧州特許公開公報EP-237362号
【特許文献2】欧州特許公開公報EP-329311号
【特許文献3】米国特許第5,521,301号
【特許文献4】米国特許第5,639,611号
【特許文献5】米国特許第5,981,176号
【特許文献6】米国特許第5,210,015号
【特許文献7】米国特許第5,538,848号
【特許文献8】米国特許第5,863,736号
【特許文献9】米国特許第5,846,710号
【特許文献10】米国特許第6,004,744号
【特許文献11】米国特許第5,888,819号
【特許文献12】米国特許第5,856,092号
【特許文献13】米国特許第5,710,028号
【特許文献14】米国特許第6,013,431号
【特許文献15】米国特許第6,074,831号
【特許文献16】米国特許第6,322,980号
【特許文献17】米国特許第6,270,973号
【特許文献18】米国特許第6,312,893号
【特許文献19】米国特許第6,156,178号
【0015】

【非特許文献1】Landegrenら、Science 242:229-237,1988
【非特許文献2】Rossiterら、J.Biol.Chem.265:12753-12756,1990
【非特許文献3】Heid,C.A.ら、Genome Research 6:986-994(1996)
【非特許文献4】Gibson,U.E.M.ら、Genome Reseach 6:995-1001(1996)
【非特許文献5】Holland,P.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276-7280(1991)
【非特許文献6】Livak,K.J.ら、PCR Methods and Applications 357-362(1995)
【非特許文献7】Piggeeら、1997,J.Chromatography A.781:367-375
【非特許文献8】McClayら、2002、Anal.Biochem.301:200-206)
【非特許文献9】動物衛生研究所 研究報告 第109号、25-32ページ(2002)(http://ss.niah.affrc.go.jp/publication/kenpo/2002/109-4.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
SSRにおいて、反復単位が一塩基である場合、PCR産物長の比較により簡便に遺伝子型を同定することは困難である。代替として考えられるSNP解析の手法又はシーケンス法は、操作が煩雑である場合が多く、安定性と再現性の点で技術の妥当性を求められる場合もある。また、対象生物が微生物である場合、単一検体中に複数種類の遺伝子型を有する個体が混在していることがある。そのような場合には、一塩基反復多型の反復数の判定はさらに困難となる。また、一塩基反復多型の近傍に一塩基多型が存在する場合、該一塩基反復中の反復数の多様性の影響も想定されるため、増幅産物のサイズなどに依存する従来の一塩基多型の解析方法では解析が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、SSR解析及びSNP解析における上記課題を解決するために、一塩基反復多型を含む領域に対応する遺伝子型判定マーカーを作製して被験試料とともに分離することに想到し、本願発明を完成させた。
【0018】
具体的には、本発明は、以下の特徴を有する。
〔1〕一塩基反復多型中の反復数を解析する方法であって、以下のステップ:
(a)対象となる一塩基反復が生じ得ることが知られている核酸領域に対応する標識された2種以上の核酸断片を含む遺伝子型判定マーカーを調製するステップであって、該遺伝子型判定マーカー中に含まれる各核酸断片は、該一塩基反復において異なる反復数を有する配列を有するステップ、
(b)被験核酸中の、該遺伝子型判定マーカーに含まれる核酸断片に対応する領域をPCR法を用いて増幅することにより被験核酸断片を調製するステップであって、該被験核酸断片は該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片とは異なる標識物質を用いて標識されているステップ、
(c)該遺伝子型判定マーカーと該被験核酸断片とを混合し、分離処理に供するステップ、及び
(d)該被験核酸断片の移動度を該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片の移動度と比較することにより、該被験核酸断片における対象となる一塩基反復中の反復数を判定するステップ
を含む、上記方法。
【0019】
〔2〕一塩基反復多型中の反復数を解析する方法であって、以下のステップ:
(a)対象となる一塩基反復が生じ得ることが知られている核酸領域に対応する標識された2種以上の核酸断片を含む遺伝子型判定マーカーを調製するステップであって、該遺伝子型判定マーカー中に含まれる各核酸断片は、続く分離処理において、該一塩基反復において異なる反復数を有する配列を有する核酸断片とそれぞれ類似する挙動を示すものであるステップ、
(b)被験核酸中の、該遺伝子型判定マーカーに含まれる核酸断片に対応する領域をPCR法を用いて増幅することにより被験核酸断片を調製するステップであって、該被験核酸断片は該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片とは異なる標識物質を用いて標識されているステップ、
(c)該遺伝子型判定マーカーと該被験核酸断片とを混合し、分離処理に供するステップ、及び
(d)該被験核酸断片の移動度を該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片の移動度と比較することにより、該被験核酸断片における対象となる一塩基反復中の反復数を判定するステップ
を含む、上記方法。
【0020】
〔3〕一塩基反復の近傍に存在する一塩基多型を解析する方法であって、以下のステップ:
(a)対象となる一塩基多型が生じ得ることが知られている核酸領域に対応する標識された2種以上の核酸断片を含む遺伝子型判定マーカーを調製するステップであって、該遺伝子型判定マーカー中に含まれる各核酸断片は、該一塩基多型の近傍に存在する一塩基反復において異なる反復数を有する配列を有するステップ、
(b)被験核酸中の、該遺伝子型判定マーカーに含まれる核酸断片に対応する領域をPCR法を用いて増幅することにより被験核酸断片を調製するステップであって、該被験核酸断片は該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片とは異なる標識物質を用いて標識されているステップ、
(c)該遺伝子型判定マーカーと該被験核酸断片とを混合し、分離処理に供するステップ、及び
(d)該被験核酸断片の移動度を該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片の移動度と比較することにより、該被験核酸断片における対象となる一塩基多型を判定するステップ
を含む、上記方法。
【0021】
〔4〕一塩基反復の近傍に存在する一塩基多型を解析する方法であって、以下のステップ:
(a)対象となる一塩基多型が生じ得ることが知られている核酸領域に対応する標識された2種以上の核酸断片を含む遺伝子型判定マーカーを調製するステップであって、該遺伝子型判定マーカー中に含まれる各核酸断片は、続く分離処理において、該一塩基多型の近傍に存在する一塩基反復において異なる反復数を有する配列を有する核酸断片とそれぞれ類似する挙動を示すものであるステップ、
(b)被験核酸中の、該遺伝子型判定マーカーに含まれる核酸断片に対応する領域をPCR法を用いて増幅することにより被験核酸断片を調製するステップであって、該被験核酸断片は該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片とは異なる標識物質を用いて標識されているステップ、
(c)該遺伝子型判定マーカーと該被験核酸断片とを混合し、分離処理に供するステップ、及び
(d)該被験核酸断片の移動度を該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片の移動度と比較することにより、該被験核酸断片における対象となる一塩基多型を判定するステップ
を含む、上記方法。
【0022】
〔5〕前記核酸断片がDNA断片である、上記〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の方法。
〔6〕前記核酸領域がゲノム領域である、上記〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の方法。
〔7〕前記遺伝子型判定マーカー中の各核酸断片が、前記対象となる一塩基反復中の反復数において1ずつ異なる配列を有する、上記〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の方法。
〔8〕前記分離処理をキャピラリー電気泳動により行う、上記〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の方法。
〔9〕前記遺伝子型判定マーカー中の核酸断片が、1種類の標識物質を用いて標識されている、上記〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の方法。
〔10〕前記標識が蛍光標識である、上記〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の方法。
〔11〕前記核酸領域が細菌のゲノム領域である、上記〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載の方法。
〔12〕前記細菌がヨーネ菌である、上記〔11〕に記載の方法。
〔13〕前記核酸領域が配列番号1又は2に示される配列又は該配列の相補鎖に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、上記〔1〕~〔12〕のいずれか1つに記載の方法。
〔14〕対象となる一塩基反復多型又は一塩基反復の近傍に存在する一塩基多型が生じ得ることが知られている核酸領域に対応する、標識された2種以上の核酸断片を含む遺伝子型判定マーカー、及び該遺伝子型判定マーカーに含まれる核酸断片に対応する核酸領域を増幅するためのプライマーペアを少なくとも含む、一塩基反復多型中の反復数又は一塩基多型を解析するためのキット。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、生物の一塩基反復多型を、反復数1のレベルで簡便に解析することが可能となる。また、複数種類の遺伝子型を有する個体が混在する試料についても解析することが可能となる。さらに、一塩基反復の近傍に存在する一塩基多型の簡便な解析も可能となる。これにより、植物品種の遺伝子型解析、及び病原細菌をはじめとする微生物のハイスループットな遺伝子型解析が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】ヨーネ菌ゲノムM1領域に対応する遺伝子型判定マーカーの波形解析を示す図である。
【図1B】ヨーネ菌ゲノムM2領域に対応する遺伝子型判定マーカーの波形解析を示す図である。
【図2】キャピラリー電気泳動で繰り返して同じ試料を解析した場合の相対的移動度のばらつきを表す波形解析像である。
【図3】単一検体から分離された菌株中に異なる遺伝子型を有する複数の菌株が混在している場合(参照株3)があることを示す波形解析像である。
【図4】キャピラリー電気泳動で繰り返して同じ試料を解析した場合の、遺伝子型判定マーカーと被験核酸との相対的移動度の安定性を表す波形解析像である。
【図5A】キャピラリー電気泳動で繰り返して同じ試料を解析した場合の、遺伝子型判定マーカーと被験核酸との相対的移動度の安定性を表すグラフである。標準サイズマーカー、遺伝子型判定マーカー及び被験核酸のピーク検出ポイントの生データとして示している。
【図5B】キャピラリー電気泳動で繰り返して同じ試料を解析した場合の、遺伝子型判定マーカーと被験核酸との相対的移動度の安定性を表すグラフである。遺伝子型判定マーカー及び被験核酸のピーク検出ポイントを標準サイズマーカーのピーク検出ポイントで補正して表している。
【図6】本発明による一塩基多型(SNP)解析の例を示す波形解析像である。
【図7A】従来法による8個の一塩基反復における一塩基多型(SNP)解析が困難な例を示す波形解析像である。
【図7B】従来法による9個の一塩基反復における一塩基多型(SNP)解析が困難な例を示す波形解析像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、以下のステップ:
(a)対象となる一塩基反復が生じ得ることが知られている核酸領域に対応する標識された2種以上の核酸断片を含む遺伝子型判定マーカーを調製するステップであって、該遺伝子型判定マーカー中に含まれる各核酸断片は、該一塩基反復において異なる反復数を有する配列を有するステップ、
(b)被験核酸中の、該遺伝子型判定マーカーに含まれる核酸断片に対応する領域をPCR法を用いて増幅することにより被験核酸断片を調製するステップであって、該被験核酸断片は該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片とは異なる標識物質を用いて標識されているステップ、
(c)該遺伝子型判定マーカーと該被験核酸断片とを混合し、分離処理に供するステップ、及び
(d)該被験核酸断片の移動度を該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片の移動度と比較することにより、該被験核酸断片における対象となる一塩基反復中の反復数を判定するステップ
を含む、一塩基反復多型中の反復数を解析する方法に関する。

【0026】
上記のとおり、SSRの解析にはPCR増幅が用いられているが、反復単位が小さい場合には、PCR産物長の比較による反復数の判別は困難である。PCR産物長の比較には、高性能のキャピラリー電気泳動(CE)が用いられるが、通常の変性CEによる5塩基VNTR(Variable Numbers of Tandem Repeats)又は2塩基STRの蛍光ラベルPCR増幅産物の測定において、サイズマーカーと異なる蛍光ラベルを用いた場合に、ピークの相対サイズ値が真のサイズ値と顕著に異なることが報告されている(Hahn et al.,Electrophoresis,22(13):2691-700(2001))。また、二塩基以上の反復単位の解析においてさえも、検査結果の安定性と再現性を確保するために技術の妥当性の検証を求めるガイドラインも発行されている(「DNA品種識別技術の妥当性確認のためのガイドライン -SSRを中心として-」、種苗管理センター(2008)(http://www.ncss.go.jp/main/DNA/DNAguideline.pdf))。

【0027】
単なるPCR産物長の比較では解析が困難な場合には、SSRの解析にSNP解析と同様の手法やシーケンス解析が用いられる(Amonsin et al.,J.Clin.Microbiol.,42(4):1684-702(2004))。SNPと同様の手法としては、例えば、多型部位に直接隣接するプライマーのハイブリダイゼーションと、一塩基反復領域後で蛍光標識連鎖ターミネーターにより停止されたプライマー伸長産物の解析が報告されている(Cohen et al.,Human Genet.,115:213(2004))。しかしながら、これらの方法は手技が煩雑であり、ハイスループットの検査に用いるのには適さない。

【0028】
本発明の方法を用いることで、シーケンス解析のような煩雑な手順を介さずに、一塩基反復多型の反復数の解析を簡便に、非常に再現性高く実現できる。したがって、本発明の方法は、生物の遺伝子型のハイスループットな解析を可能にする。

【0029】
また、本発明は、以下のステップ:
(a)対象となる一塩基反復が生じ得ることが知られている核酸領域に対応する標識された2種以上の核酸断片を含む遺伝子型判定マーカーを調製するステップであって、該遺伝子型判定マーカー中に含まれる各核酸断片は、続く分離処理において、該一塩基反復において異なる反復数を有する配列を有する核酸断片とそれぞれ類似する挙動を示すものであるステップ、
(b)被験核酸中の、該遺伝子型判定マーカーに含まれる核酸断片に対応する領域をPCR法を用いて増幅することにより被験核酸断片を調製するステップであって、該被験核酸断片は該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片とは異なる標識物質を用いて標識されているステップ、
(c)該遺伝子型判定マーカーと該被験核酸断片とを混合し、分離処理に供するステップ、及び
(d)該被験核酸断片の移動度を該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片の移動度と比較することにより、該被験核酸断片における対象となる一塩基反復中の反復数を判定するステップ
を含む、一塩基反復多型中の反復数を解析する方法にも関する。

【0030】
驚くべきことに、本発明の方法は、以下の実施例に示すように、一塩基多型(SNP)の解析にも応用することができる。すなわち、本発明は、以下のステップ:
(a)対象となる一塩基多型が生じ得ることが知られている核酸領域に対応する標識された2種以上の核酸断片を含む遺伝子型判定マーカーを調製するステップであって、該遺伝子型判定マーカー中に含まれる各核酸断片は、該一塩基多型の近傍に存在する一塩基反復において異なる反復数を有する配列を有するか、又は続く分離処理において、該一塩基反復において異なる反復数を有する配列を有する核酸断片とそれぞれ類似する挙動を示すものであるステップ、
(b)被験核酸中の、該遺伝子型判定マーカーに含まれる核酸断片に対応する領域をPCR法を用いて増幅することにより被験核酸断片を調製するステップであって、該被験核酸断片は該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片とは異なる標識物質を用いて標識されているステップ、
(c)該遺伝子型判定マーカーと該被験核酸断片とを混合し、分離処理に供するステップ、及び
(d)該被験核酸断片の移動度を該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片の移動度と比較することにより、該被験核酸断片における対象となる一塩基多型を判定するステップ
を含む方法により、一塩基反復の近傍に存在する一塩基多型を解析する方法も提供する。

【0031】
一塩基多型(SNP)の解析は上記のように種々の方法で行われているが、このうち、CEによる増幅産物長の比較などによる解析は比較的簡便に行うことができるものである。しかしながら、近傍に一塩基反復が存在する一塩基多型は、該一塩基反復の反復数の多様性により影響を受けるため、上記の増幅産物長の比較などによる簡便な解析が困難であった。本発明の方法によれば、一塩基反復の近傍に存在する、典型的には一塩基反復に隣接する、一塩基多型も容易に解析することができ、そのような一塩基多型に関してもハイスループットな解析を実現することができる。

【0032】
本発明では、一塩基反復多型中の反復数(又は一塩基反復の近傍に存在する一塩基多型)を解析するために、対象となる一塩基反復(又は一塩基多型)が生じ得ることが知られている核酸領域に対応する標識された2種以上の核酸断片を含む遺伝子型判定マーカーを利用する。

【0033】
該遺伝子型判定マーカーを一塩基反復多型の解析に用いる場合には、該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片は、好ましくは、対象となる一塩基反復中の反復数において1ずつ異なる配列を有し、遺伝子型判定マーカー中には、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20種の核酸断片が含まれる。遺伝子型判定マーカー中の核酸断片は、例えば、対象となる一塩基反復において既定の反復数を有する生物個体の核酸を鋳型としてPCR法を用いて増幅する。例えば、反復数5の個体、反復数6の個体、反復数7の個体、反復数8の個体、反復数9の個体、及び反復数10の個体からそれぞれ得た核酸を鋳型として、PCR法を用いて、対象となる一塩基反復においてそれぞれの反復数を有する核酸断片を調製し、それらを混合することによって、対象となる一塩基反復における反復数5~10の遺伝子型判定マーカーが得られる。あるいは、遺伝子型判定マーカー調製のための鋳型として、合成核酸を用いることもできる。例えば、対象となる一塩基反復において反復数5の核酸断片、反復数6の核酸断片、反復数7の核酸断片、反復数8の核酸断片、反復数9の核酸断片、反復数10の核酸断片をそれぞれ公知のオリゴヌクレオチド合成機などにより合成し、これを鋳型として、PCR法を用いて、対象となる一塩基反復においてそれぞれの反復数を有する核酸断片を調製し、それらを混合することによって、対象となる一塩基反復における反復数5~10の遺伝子型判定マーカーが得られる。

【0034】
遺伝子型判定マーカー中の核酸断片として、引き続く分離処理(例えば、電気泳動)において、対象となる一塩基反復において異なる反復数を有する配列とそれぞれ類似する挙動を示す核酸断片の混合物を用いることもできる。そのような核酸断片とは、例えば、核酸断片の調製のためのPCRにおいて、プライマーとして追加の反復配列(鋳型には存在しない一塩基反復配列)を含む配列を有するオリゴヌクレオチドを用い、その追加の反復配列における反復数を変動させることにより、調製することができる。具体的には、対象となる核酸領域中の一塩基反復の反復数を鋳型として用いる核酸に対応するある一定の値(N)に固定し、プライマーに追加のヌクレオチド(好ましくは対象となる一塩基反復内のヌクレオチドと同じ種類)を含ませ、追加のヌクレオチドの数がそれぞれ1ずつ異なる(例えば、それぞれ0、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10)プライマーを用いて個々のPCRを行って遺伝子型判定マーカーに含まれる核酸断片を調製し、これを混合する。これにより、対象となる一塩基反復多型においてN~N+10の反復数を有する配列を有する核酸断片と類似する分離挙動を示す核酸断片の混合物である遺伝子型判定マーカーを得ることができる。このような遺伝子型判定マーカーによっても、本発明の課題を十分に解決できることは、当業者には明白であろう。この場合、遺伝子型判定マーカーに含まれる核酸断片の調製に用いる鋳型核酸は1種類でよく、上記のように複数種類の鋳型を用意する必要がない。これにより、鋳型核酸を天然に存在する個体から調製する場合には非常に労力を省くことができ、また、鋳型核酸を核酸合成により入手する場合でも、通常は鋳型核酸よりもプライマーに用いるオリゴヌクレオチドの方が鎖長が短く合成が容易(若しくは安価)であるので、実施において有利であると言える。

【0035】
遺伝子型判定マーカーを一塩基反復の近傍に存在する一塩基多型の解析に用いる場合には、遺伝子型判定マーカーは、好ましくは対象となる一塩基多型をいずれかの配列(例えば、C→G多型の場合にはC又はGの型の配列、好ましくは解析対象の集団において多数を占める型の配列)に合わせ、かつ一塩基反復については上記のように各反復数の配列を混合することにより調製する。あるいは、上記と同様、一塩基反復の反復数が異なる配列を有する核酸断片と類似する分離挙動を示す核酸断片の混合物を用いることもできる。

【0036】
遺伝子型判定マーカー中の核酸断片は、標識物質を用いて標識されている。核酸の標識は、以下に記載するように行うことができる。

【0037】
次に、被験核酸中の、該遺伝子型判定マーカーに含まれる核酸断片に対応する領域、すなわち、対象となる一塩基反復を含む領域をPCR法を用いて増幅する(PCR法についての詳細は以下に記載する)。

【0038】
本明細書において「被験核酸」とは、一塩基反復多型中の反復数又は一塩基多型を解析する対象の生物個体、又は生物集団を含むサンプルから得られた核酸を意味する。ここで言う「核酸」とは、例えば、ゲノムDNA、mRNA、cDNA、又はプラスミドDNAなどのポリヌクレオチドを意味する。被験核酸としてゲノムDNAなどのDNAを用いる場合には、該被験核酸を鋳型として直接用いてPCR法を実施することができる。被験核酸としてmRNAなどのRNAを用いる場合には、通常のPCR法の前に、逆転写酵素による逆転写を行い、得られたcDNAを鋳型としてPCR法を実施する(RT-PCR)。

【0039】
本明細書中では、被験核酸を用いて増幅された核酸断片を、「被験核酸断片」と称する。

【0040】
被験核酸断片を作製する際に、生成される核酸断片を、遺伝子型判定マーカー中の核酸断片とは異なる標識物質で標識する。これにより、例えばキャピラリー電気泳動などでの核酸の分離に際して、シグナルの性質の違いから、遺伝子型判定マーカー中の核酸断片と被験核酸断片とを区別することができる。

【0041】
続いて、得られた遺伝子型判定マーカーと被験核酸断片とを混合して、分離処理に供する。この分離における被験核酸断片の移動度を、遺伝子型判定マーカーに含まれる核酸断片の移動度と比較することにより、被験核酸における対象となる一塩基反復中の反復数(又は一塩基多型)を決定する。

【0042】
本発明において、核酸断片とは好ましくはDNA断片であり、対象となる一塩基反復多型又は一塩基多型を生じ得ることが知られている核酸領域は好ましくはゲノム領域である。

【0043】
本明細書において「サンプル」又は「試料」という用語は、その自然環境から単離され、ポリヌクレオチドを含む生体材料を指す。本発明に記載の「サンプル」又は「試料」とは、精製又は単離されたポリヌクレオチドからなるか、あるいは、それは、ポリヌクレオチドを含有する組織サンプル、生物学的液体サンプル又は細胞サンプルであってよい。本発明のサンプル又は試料は、ポリヌクレオチドを含有するいずれかの植物、動物、微生物又はウイルスに由来する材料であり得る。生物の染色体又は生物の染色体に関連している配列を含むと推測されるサンプルは、細胞、細胞から単離された染色体(例えば、中期染色体のスプレッド)、(溶液中の又はサザンブロット分析用のような固体支持体に結合した)ゲノムDNA、(溶液中の又はノーザンブロット分析用のような固体支持体に結合した)RNA、(溶液中の又は固体支持体に結合した)cDNAなどを含みうる。

【0044】
本明細書において「多型」という用語は核酸配列の変化を指す。天然の配列と比較した場合に、多型は、集団において0.01%、0.1%、1%又はそれより高い頻度で存在しうる。本明細書においては、多型は、挿入、欠失、重複又は再配列でありうる。本明細書において、「SSR」とは、反復単位の反復を含む領域を指す。本明細書において、「一塩基反復多型」とは、同一塩基の複数個の反復における反復数の多様性を意味する。

【0045】
本明細書において用いられる「SNP」、「SNPs」又は「一塩基多型」という用語は、生物体(例えば、ヒト)のゲノムにおける特定の位置での一塩基の変化を指す。

【0046】
本明細書に用いられる「対立遺伝子」という用語は、所与の配列の変異型を指す(例えば、これらに限定されるわけではないが、1つ又は複数の多型を含む遺伝子)。集団において、複対立遺伝子型として多数の遺伝子が存在する。ホモ接合体は同じ対立遺伝子の2つのコピーを有するのに対して、遺伝子の2つの異なる対立遺伝子を有する二倍体生物は、その遺伝子についてヘテロ接合性であると言われる。

【0047】
本明細書に用いられる「遺伝子型」という用語は、特定の多型(例えば、SSRにおける特定の反復数、特定のSNPの型)を含むゲノム構成を指す。

【0048】
本明細書に用いられる「遺伝子型判定マーカー」という用語は、一塩基反復多型又は一塩基多型が生じ得ることが知られている核酸領域に対応する標識された2種以上の核酸断片を含む核酸断片の混合物を指す。

【0049】
本明細書に用いられる「相補的な」又は「相補性」という用語は、塩基対構成ルールにより関係付けられるポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)に関して用いられる。例えば、配列「5’-A-G-T-3’」は、配列「3’-T-C-A-5’」に相補的である。相補性は、核酸の塩基のいくつかのみが塩基対構成ルールに従って整合されている「部分的」でありうる。又は、核酸間に「完全な」又は「全体的」相補性がありうる。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率及び強さに有意な効果を及ぼす。これは、増幅反応において、加えて、核酸間の結合に依存する検出方法においても特別重要である。

【0050】
本明細書に用いられる「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的核酸の対形成に関して用いられる。ハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの強さ(すなわち、核酸間の結合の強さ)は、核酸間の相補性の程度、関与する条件のストリンジェンシー、構成されたハイブリッドのTm、及び核酸内のG:C比のような因子により強く影響される。

【0051】
本明細書に用いられる「Tm」という用語は、「融解温度」に関して用いられる。融解温度は、二本鎖核酸分子の集団が半分解離して一本鎖になる時の温度である。核酸のTmを計算するための方程式は当技術分野においてよく知られている。標準的な参照文献により示されるように、Tm値の簡単な概算は、核酸が1M NaClの水溶液中にある場合、方程式:Tm=81.5+0.41(%G+C)により計算することができる(Anderson及びYoung、「定量的フィルターハイブリダイゼーション(Quantitative Filter Hybridization)」、「核酸ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)」中、(1985)を参照)。その他の参照には、Tmの計算について配列上の特性及び構造上の特性を考慮に入れる、より非常に複雑な計算法が含まれる。

【0052】
本明細書に用いられる「ストリンジェンシー」又は「ストリンジェントな」という用語は、核酸ハイブリダイゼーションが行われる時の、温度、イオン強度、及び有機溶媒のような他の化合物の存在の条件に関して用いられる。上述のパラメータを、別々に又は一斉に変化させることにより「ストリンジェンシー」条件が変化されうることを、当業者は認識すると考えられる。「ストリンジェントな」条件では、核酸塩基対構成は、相補的塩基配列が高頻度にある核酸断片間にのみ生じるであろう(例えば、「ストリンジェントな」条件下でのハイブリダイゼーションは、約85%~100%の同一性、好ましくは約70%~100%の同一性をもつ相同体の間で起こりうる)。中程度にストリンジェントな条件では、核酸塩基対構成は、相補的塩基配列が中間の頻度にある核酸間に生じるであろう(例えば、「中程度にストリンジェントな」条件下でのハイブリダイゼーションは、約50%~70%の同一性をもつ相同体の間に起こりうる)。このように、遺伝的に多様な生物体由来の核酸については、相補的配列の頻度が通常は、より低いため、「弱い」又は「低い」ストリンジェンシーの条件が要求されることが多い。

【0053】
核酸ハイブリダイゼーションに関して用いられる場合の「ストリンジェントな条件」とは、約500ヌクレオチド長のプローブを使用する場合、例えば、5×SSPE(43.8g/L NaCl、6.9g/L NaH2PO4・H2O及び1.85g/L EDTA、NaOHでpH7.4に調整)、0.5%SDS、5×デンハルト試薬及び100μg/mL変性サケ精子DNAからなる溶液中、42℃で結合又はハイブリダイゼーション、続いて、0.1×SSPE、1.0%SDSを含む溶液中、42℃で洗浄することと等価の条件を含む。

【0054】
核酸ハイブリダイゼーションに関して用いられる場合の「中程度にストリンジェントな条件」とは、約500ヌクレオチド長のプローブを使用する場合、例えば、5×SSPE(43.8g/L NaCl、6.9g/L NaH2PO4・H2O及び1.85g/L EDTA、NaOHでpH7.4に調整)、0.5%SDS、5×デンハルト試薬及び100μg/ml変性サケ精子DNAからなる溶液中、42℃で結合又はハイブリダイゼーション、続いて、1.0×SSPE、1.0%SDSを含む溶液中、42℃で洗浄することと等価の条件を含む。

【0055】
「低いストリンジェンシーの条件」とは、約500ヌクレオチド長のプローブを使用する場合、例えば、5×SSPE(43.8g/L NaCl、6.9g/L NaH2PO4・H2O及び1.85g/L EDTA、NaOHでpH7.4に調整)、0.1% SDS、5×デンハルト試薬[50×デンハルト試薬500mlあたり、5gフィコール(400型、ファルマシア(Pharmacia))、5g BSA(フラクションV;シグマ(Sigma))を含む]及び100g/mL変性サケ精子DNAからなる溶液中、42℃で結合又はハイブリダイゼーション、続いて、5×SSPE、0.1% SDSを含む溶液中、42℃で洗浄することと等価の条件を含む。

【0056】
「増幅」とは、鋳型特異性に伴う特殊な場合の核酸複製である。それは、非特異的鋳型複製(すなわち、鋳型依存性であるが、特定の鋳型に依存しない)と対照的である。鋳型特異性は、ここでは、複製のフィデリティー(すなわち、正確なポリヌクレオチド配列の合成)及びヌクレオチド(リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド)特異性から区別される。鋳型特異性は、「標的」特異性という用語で記載されることが多い。標的配列は、それらが他の核酸から区別されるように求められるという意味において「標的」である。

【0057】
Taq及びPfuポリメラーゼは、高温で機能するそれらの能力によって、プライマーにより結合され、かつこのように限定される配列に対して高い特異性を見せることが見出されているが、その高温は、結果として、その標的配列とのプライマーのハイブリダイゼーションに有利であり、標的非含有配列とのハイブリダイゼーションに有利ではない熱力学的状態を生じる(H.A.Erlich(編)、「PCRテクノロジー(PCR Technology)」、Stockton Press,1989)。

【0058】
本明細書に用いられる「プライマー」という用語は、精製された制限酵素消化物の形で存在していようが合成的に作製されようが、核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘発される条件下に置かれた場合(すなわち、ヌクレオチド及びDNAポリメラーゼのような誘発剤の存在下で、適した温度及びpHで)、合成の開始点としての機能を果たす能力があるオリゴヌクレオチドを指す。プライマーは、増幅において最高の効率のために、好ましくは、一本鎖であるが、又は二本鎖であってもよい。二本鎖の場合には、プライマーは最初、伸長産物を調製するために使用される前にその鎖を分離するために処理される。好ましくは、プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、誘発剤の存在下において伸長産物の合成を開始するのに十分長くなければならない。プライマーの適切な長さは、温度、プライマーの供給源及び方法の用途を含む多くの因子に依存するであろう。

【0059】
通常、PCRには1対(2種類)のプライマーが用いられ、標的のセンス鎖の配列を有するプライマーは「フォワードプライマー」、アンチセンス鎖の配列を有するプライマーは「リバースプライマー」と呼ばれる。生成される増幅産物において、フォワードプライマー由来の配列はセンス鎖の5’末端に位置し、リバースプライマー由来の配列はアンチセンス鎖の5’末端に位置する。

【0060】
本発明においては、好ましくは、PCR増幅に用いる1対のプライマーのうち、少なくとも一方は標識物質で標識されている。

【0061】
PCR増幅においては、ポリメラーゼの性質により、増幅産物の3’末端に、鋳型には対応しない追加のアデニン(A)が付加される場合がある。このA付加は、必ずしも安定して起こるというわけではないため、断片長が一塩基異なる2種類の増幅産物(A付加されたものとされていないもの)が生成される。PCR増幅された断片長によるSSRマーカー又はSNPの電気泳動解析においては、このような異なる断片長を有する増幅産物の混在が解析を困難にする。PCR増幅において、テイルと呼ばれる7塩基の配列(GTTTCTT又はGTGTCTTなど)をリバースプライマーに付加することで強制的にA付加を行わせることができることが知られている(例えば、国際公開第97/16566号を参照のこと)。テイル配列を有するリバースプライマー(テイルドプライマー)を用いてPCR増幅を行なえば、増幅産物はすべてA付加されたものとなり、上記のような断片長の異なる増幅産物の混在の問題を回避することができる。したがって、本発明で用いるプライマーのうち、特にリバースプライマーに、上記のテイル配列を付加することが好ましい。

【0062】
本明細書に用いられる「プローブ」又は「ハイブリダイゼーションプローブ」という用語は、精製された制限酵素消化物の形で存在していようが、合成的に、組換えで、又はPCR増幅により作製されようが、対象となる別のオリゴヌクレオチドに、少なくとも部分的に、ハイブリダイズする能力があるオリゴヌクレオチドを指す。プローブは、一本鎖又は二本鎖でありうる。プローブは、特定の配列の検出、同定及び単離に有用である。プローブは、これらに限定されるわけではないが、酵素(例えば、ELISA、及び酵素に基づく組織化学アッセイ法)、蛍光、放射性、及び発光のシステムを含む、任意の検出系において検出可能であるように「レポーター分子」により標識されているものである。

【0063】
本明細書に用いられる「標的」という用語は、検出されるか又は特徴付けされる核酸配列又は構造を指す。

【0064】
本明細書に用いられる「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)という用語は、クローニング又は精製なしに、ゲノムDNAの混合物において標的配列のセグメントの濃度を増加するための方法を記載した、K.B.Mullisの方法(例えば、参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号及び同第4,965,188号参照)を指す。標的配列を増幅するためのこのステップは、所望の標的配列を含むDNA混合物に2つのオリゴヌクレオチドプライマーの大過剰量を導入すること、続いて、DNAポリメラーゼの存在下のサーマルサイクリングの正確な連続からなる。その2つのプライマー(上記のフォワードプライマー及びリバースプライマー)は、二本鎖標的配列それぞれの鎖に相補的である。増幅を果たすために、その混合物を変性させ、その後、プライマーを標的分子内のそれらの相補的配列へアニーリングさせる。アニーリング後、プライマーは、相補鎖の新しい対を構成するために、ポリメラーゼで伸長される。変性、プライマーアニーリング、及びポリメラーゼ伸長のステップを、所望の標的配列の増幅されたセグメントの高濃度を得るために、多数回、繰り返すことができる(すなわち、変性、アニーリング及び伸長は1つの「サイクル」を構成し、多数の「サイクル」がありうる)。所望の標的配列の増幅されたセグメントの長さは、お互いに関するプライマーの相対的位置により決定され、それゆえ、この長さは、制御可能なパラメータである。増幅ステップの繰り返しによって、その方法は「ポリメラーゼ連鎖反応」(以下「PCR」)と呼ばれる。所望の増幅された標的配列のセグメントが混合物において優勢な配列(濃度に関して)になるため、それらは「PCR増幅」されていると言われる。

【0065】
PCRを用いて、ゲノムDNAにおいて特定の標的配列の単一のコピーをいくつかの異なる方法(例えば、標識されたプローブでのハイブリダイゼーション;ビオチン化プライマーの組込み、続いてアビジン-酵素結合体検出;dCTP又はdATPのような、32P標識化デオキシヌクレオチド三リン酸の増幅されたセグメントへの組込み)により検出可能なレベルまで増幅することが可能である。ゲノムDNAに加えて、任意のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列をプライマー分子の適当なセットで増幅することができる。特に、PCRステップ自身により産生された増幅セグメントは、それら自身、次のPCR増幅のための有効な鋳型である。

【0066】
本明細書に用いられる「PCR産物」、「PCR断片」及び「増幅産物」という用語は、変性、アニーリング及び伸長のPCRステップの2回又はそれ以上のサイクルが完結した後に結果として生じる化合物の混合物を指す。これらの用語は、1つ又は複数の標的配列の1つ又は複数のセグメントの増幅があった場合を包含する。

【0067】
本明細書に用いられる「増幅試薬」という用語は、プライマー、核酸鋳型及び増幅酵素を除いて増幅のために必要とされるそれらの試薬(デオキシリボヌクレオチド三リン酸、緩衝液など)を指す。典型的には、増幅試薬は、他の反応成分といっしょに置かれて、反応容器(試験管、マイクロウェルなど)に入れられている。

【0068】
本明細書に用いられる「標識」という用語は、検出可能な(好ましくは定量可能な)効果を与えるために使用することができ、かつ核酸又はタンパク質に結合させることができる任意の原子又は分子を指す。標識は、これらに限定されるわけではないが、色素;32Pのような放射性標識;ビオチンのような結合部分;ジゴキシゲニンのようなハプテン;発光性、リン光性又は蛍光発生的部分;及び蛍光色素の単独又は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により発光スペクトルを抑制もしくは転換することができる部分との組合わせを含む。標識は、蛍光、放射能、比色、重量測定、X線回折又は吸着、磁気、酵素活性などにより検出可能なシグナルを供給しうる。標識は、荷電した部分(陽電荷又は陰電荷)であることができ、又は電気的に中性でありうる。標識は、その標識を含む配列が検出可能である限り、核酸又はタンパク質の配列を含むか又は構成することができる。

【0069】
本明細書に用いられる「シグナル」という用語は、標識又はアッセイ反応により引き起こされる又は供給されるような任意の検出可能な効果を指す。

【0070】
プライマー、遺伝子型判定マーカー中に含まれる核酸断片を含む、本発明において有用な核酸断片は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、酵素的手段又は化学的手段により検出可能な部分を取り込むことにより、以下に記載するようにして標識することができる。核酸断片に標識を連結又はコンジュゲーションする方法は、当然ながら、使用する標識の種類、及び核酸断片上の標識の位置(即ち、3’末端、5’末端又は本体部分への標識)により異なる。

【0071】
蛍光色素が好ましいが、本発明における使用に適する種々の標識、ならびに核酸断片へのその取り込み方法は当該技術分野で知られており、例えば、相互に作用してシグナルを増強、変化又は減衰させるような、酵素(例えばアルカリホスファターゼ及び西洋ワサビペルオキシダーゼ)及び酵素基質、放射性原子、発色団、蛍光クエンチャー、化学ルミネセンス標識、及び電気化学発光標識、例えばOrigen(商標)(Igen)が包含されるが、これらに限定されない。当然ながら、熱サイクルを伴うPCRに基づく増幅アッセイにおいて標識された分子を使用する場合には、標識は、この自動化工程において必要とされる温度サイクルに耐えうるものでなければならない。理想的には、同様の装置、方法及び/又は基質を用いて検出できる2種以上の標識が好ましい。本発明の標識核酸断片の構築において標識として使用するためのフルオロフォアは、例えばローダミン及び誘導体(例えばテキサスレッド)、フルオレセイン及び誘導体(例えば5-ブロモメチルフルオレセイン)、Cy5、Cy3、JOE、FAM(商標)(6-カルボキシフルオレセイン)、VIC(商標)(2’-クロロ-7’-フェニル-1,4-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン)、NED(商標)(2’-クロロ-5’-フルオロ-7’,8’-融合フェニル-1,4-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン)、Oregon Green(商標)、ルシファーイエロー、IAEDANS、7-Me2N-クマリン-4-アセタート、7-OH-4-CH3-クマリン-3-アセタート、7-NH2-4-CH3-クマリン-3-アセタート(AMCA)、モノブロモビマン、ピレン・トリスルホネート、例えばカスケードブルー、及びモノブロモトリメチル-アンモニオビマンを包含するが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の標識核酸断片の構築において標識として使用するためのフルオロフォアは、FAM、VIC、又はNEDである。一般的に、単色計ではなくフィルターを有する蛍光計の使用を可能にし、検出の効率を上昇させるには、広いストークスシフトを有するフルオロフォアが好ましい。

【0072】
標識は、種々の手法を用いて直接又は間接的にオリゴヌクレオチドに連結することができる。使用する標識又はタグの厳密な種類に応じて、標識は、プライマーの5’末端に位置するか、又はプライマーの内部に位置することができ、あるいは種々のサイズと組成のスペーサーアームと連結することによりシグナル相互作用を促進することができる。5’末端標識が好ましい。市販のホスホルアミダイト試薬を用いて、適切に保護されたホスホルアミダイトを介して5’末端に官能基(例えばチオール又は第1級アミン)を含有するオリゴマーを作製することができ、また、例えば「PCRプロトコル:方法及び適用の指針(PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications)」、Innisら(編)、Academic Press,Ind.,1990に記載されているプロトコルを用いて、これらを標識することができる。

【0073】
典型的には5’末端において、オリゴヌクレオチドプライマー配列内に1以上のスルフヒドリル、アミノ又はヒドロキシル部分を導入するためにオリゴヌクレオチド官能化試薬を使用する方法は、米国特許第4,914,210号に記載されている。5’リン酸基は、ポリヌクレオチドキナーゼ及びγ-32P-ATP又はγ-33P-ATPを用いることにより放射性同位体として導入し、これによりレポーター基とすることができる。ビオチンは、合成の間に導入されたアミノチミジン残基又は6-アミノヘキシル残基をビオチンのN-ヒドロキシスクシンイミドエステルと反応させることにより、5’末端に付加することができる。

【0074】
PCR法は当業者がよく知るものであり、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるMullis及びFaloona,1987,Methods Enzymol.,155:335;Saikiら、1985,Science,230:1350及び米国特許第4,683,202号,同第4,683,195号及び同第4,800,159号に記載されている。その最も簡単な形態において、PCRは、対向する鎖にハイブリダイズし、そして標的DNAの対象となる領域にフランキングする2つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いる、特異的DNA配列を酵素的に合成するためのインビトロの方法である。鋳型の変性、プライマーアニーリング、及びDNAポリメラーゼによるアニーリングされたプライマーの伸長を含む一連の反復反応工程により、プライマーの5’末端によりその末端が定義される特定のフラグメントの指数関数的な蓄積が生じる。PCRは、109倍で特定のDNA配列を選択的に濃縮することができると報告されている。

【0075】
PCRサイクルの各工程の長さ及び温度ならびにサイクル数は、実際にはストリンジェンシーの要件に応じて調節される。アニーリング温度及び時間は、プライマーが鋳型にアニーリングする際の予測される効率及び許容されるミスマッチの程度の両方により決定される。プライマーアニーリング条件のストリンジェンシーを至適化する能力は、当業者によく知られている。20℃~72℃のアニーリング温度が最も一般的に使用されている。鋳型分子の最初の変性は通常は92℃~99℃で4分間のインキュベーションにより達成され、その後、変性(94℃で15秒~1分)、アニーリング(温度は上記したとおりTmに基づき、最も低いTmを有する反応中のオリゴヌクレオチドのTmより通常は約5度低温;通常は1~2分)及び伸長(通常は72℃で1~3分間)からなる20~40サイクルが行われる。

【0076】
本明細書において「核酸分子を分離する」という用語は、サイズ及び/又は電荷に基づいて試料又はその一部分における核酸分子を物理的に分離する過程を指す。本発明による核酸の分離は、例えば電気泳動、HPLC又は質量分析を含む、核酸の分離に適するいずれかの手段により達成することができる。電気泳動による分離が好ましく、キャピラリー電気泳動による分離が最も好ましい。

【0077】
本明細書において「キャピラリー電気泳動」(CE)という用語は、キャピラリー管内で分離を実施する、増幅反応からの一部分中の核酸分子の電気泳動分離を意味する。キャピラリー管は内径が約10~300μmのものが入手可能であり、長さは約0.2cm~約3mの範囲であってよいが、好ましくは0.5cm~20cm、より好ましくは0.5cm~10cmの範囲である。更に、微小流体マイクロキャピラリー(例えばCaliper又はAgilent Technologiesより入手可能)の使用が「キャピラリー電気泳動」の意味に特に含まれる。

【0078】
CEは試料の微量分析に対して効率的な分析分離手法である。CEは、「キャリア電解質(carrier electrolyte)」と称される電気伝導性の媒体を充填した狭い内径のキャピラリーチューブで行う。電場をキャピラリーチューブの両端の間に印加し、試料中の物質種が一方の電極から他方の電極に向けて、各物質種の電気泳動における移動度及びチューブ内の流体移動の速度に依存する速度で移動する。CEは、キャピラリー内でゲル又は緩衝液のような液体を用いて行ってよい。「フリーゾーン電気泳動」として知られている液体方式の1つにおいては、分離は試料の物質種の自由な溶液の移動度における差に基づいている。別の液体方式においては、ミセルを用いて疎水性の相違に基づく分離を行う。これはミセル動電キャピラリー電気泳動(Micellar Electrokinetic Capillary Chromatography,MECC)として知られている。

【0079】
CEは電荷に基づいて核酸分子を分離し、これは効果的にサイズ又はヌクレオチド数によるその分離をもたらす。いくつかのフラグメントが生成する場合、それらはサイズが増大する順に、キャピラリーの端部近傍で蛍光検出器を通過する。即ち、より小さいフラグメントはより大きいものに先立って移動し、最初に検出される。

【0080】
CEは、主に分離速度、必要な試料が少量であること(1~50nLのオーダー)及び高い分割度において、従来の電気泳動よりも顕著な利点を有する。例えば、CEを用いる分離の速度は従来のゲル電気泳動よりも10~20倍高速であり、泳動後の染色も必要ない。CEは高い分割度をもたらし、わずか1塩基対のみ異なる約10~1,000塩基対の範囲の分子を分離する。高い分割度は、部分的には、キャピラリーのより広い表面積が効率的に熱を放散させ、高い電圧の使用を可能にすることから、可能となっている。さらに、バンドのブロード化はキャピラリーの狭小な内径により最小限にされる。フリーゾーン電気泳動においては、電気浸透の現象、すなわち電気浸透流(EOF)が生じる。これは電荷に関わらず試料分子のすべてに影響を及ぼす液体のバルクフローである。特定の条件下では、EOFはフリーゾーンCEの分割度及び分離速度を改善するのに貢献する場合がある。

【0081】
CEは、例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,217,731号;同第6,001,230号及び同第5,963,456号に記載されている、当該技術分野でよく知られた方法により実施できる。ハイスループットCE装置は、例えばHTS9610ハイスループット分析システム及びSCE9610全自動96キャピラリー電気泳動遺伝子分析システムがSpectrumedix Corporation(State College,PA)から販売されている。他には、Beckman Instruments Inc.(Fullerton,CA)のP/ACE 5000シリーズ、及びABI PRISM 3130遺伝子分析器(Applied Biosystems,Foster City,CA)がある。これらの装置の各々は、CEカラムの端部近傍の試料中の分子による光の放射をモニタリングする蛍光検出器を含む。標準的な蛍光検出器は多くの異なる波長の蛍光放射を識別することができ、これにより増幅試料から1回のCE泳動において複数の蛍光標識物質種を検出する能力を与える。

【0082】
CE分離のスループットを増加させる別の手段は、複数のキャピラリー、又は好ましくはキャピラリーのアレイを使用することである。キャピラリーアレイ電気泳動(CAE)装置は、96キャピラリー(例えばMolecular DynamicsのMegaBACE機器)、及び更に1000キャピラリーもの容量を有するものが開発されている。近接して並置されている複数のキャピラリー間の光の分散により生じるDNAからの蛍光の検出に関わる問題点を回避するためには、共焦点蛍光スキャナを用いることができる(Quesadaら、1991,Biotechniques 10:616-25)。

【0083】
本発明において有用な核酸断片検出方法は、蛍光標識の励起スペクトル範囲内の光によって照射される時に、標識核酸断片により放射される蛍光の強度を測定する。蛍光検出手法は高度に発達しており、極めて高感度であり、場合により1分子まで明確な検出が可能である。高感度の蛍光検出は、大部分の市販のプレートリーダー、マイクロアレイ検出セットアップ及びCE装置の標準的態様である。CE装置については、励起及び発光のシグナルの光ファイバー伝達がしばしば用いられる。Spectrumedix、Applied Biosystems、Beckman Coulter及びAgilentはそれぞれ、本明細書に記載した方法に必要な蛍光検出のために十分な蛍光検出器を備えるCE装置を販売している。

【0084】
2以上の異なる蛍光標識から生じる蛍光シグナルは、発光のピーク波長が各々スペクトル中で20nm以上離れている場合に、相互に識別可能である。一般的に専門家は、選択されたフルオロフォアがブロードな発光波長ピークを有する場合には特に、ピーク波長の間の分離がより大きいフルオロフォアを選択する。

【0085】
本発明の一塩基反復多型中の反復数(又は一塩基多型)の解析方法は、いかなる生物についても適用可能である。好ましくは、対象となる生物は植物又は微生物である。より好ましくは、対象となる生物は真正細菌である。最も好ましくは、対象となる生物はヨーネ菌である。この場合、解析対象の核酸領域は、配列番号1又は2に示される配列、又はストリンジェントな条件下で該配列にハイブリダイズする配列を含む。

【0086】
ヨーネ菌(Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis)は、家畜(特に、牛、羊、山羊などの反芻類)においてヨーネ病(Johne’s disease;パラ結核)と呼ばれる慢性肉芽腫性腸炎を引き起こす病原性のマイコバクテリウムである。

【0087】
ヨーネ菌の遺伝子型判別手法としては、従来IS900-RFLP(Pavlik I,et al.,J.Microbiol.Methods,38:155(1999))が用いられてきているが、当該方法の実施には大量の新鮮菌が必要とされるため、コロニー形成に3ヵ月程度要することもある増殖の遅いヨーネ菌に対して有用な手段ではなかった。本発明者らは、従来のヨーネ菌遺伝子型判別手法に代わる手段として、VNTR(Variable Numbers of Tandem Repeats)法と称される方法を開発した(動物衛生研究所 研究報告 第109号、25-32ページ(2002)(http://ss.niah.affrc.go.jp/publication/kenpo/2002/109-4.pdf))。これは、50bp程度の反復単位を有する縦列反復の反復数から、遺伝子型を判別する手法である。配列番号1及び/又は2に示される配列中の一塩基反復の反復数の解析は、これらの従来の手法よりもさらに詳細なヨーネ菌の遺伝子型判別を可能にするものである。

【0088】
集団に含まれるヨーネ菌の遺伝子型を分析することで、判定されたヨーネ菌遺伝子型に応じてヨーネ病に対する防疫処置(予防的淘汰、移動制限、消毒法の変更、感染経路の遮断など)を適切に設定することができる。

【0089】
したがって、本発明は、以下のステップ:
(a)配列番号1又は2に示される配列を含む標識された2種以上の核酸断片を含む遺伝子型判定マーカーを調製するステップ、
(b)被験核酸中の、該遺伝子型判定マーカーに含まれる核酸断片に対応する領域をPCR法を用いて増幅することにより標識被験断片を得るステップ、
(c)該遺伝子型判定マーカーと該被験核酸断片とを混合し、分離処理に供するステップ、及び
(d)該被験核酸断片の移動度を該遺伝子型判定マーカー中の核酸断片の移動度と比較することにより、該核酸断片における対象となる一塩基反復中の反復数(又は一塩基多型)を判定するステップ
を含む、ヨーネ菌の遺伝子型判定方法に関する。

【0090】
この場合、好ましくは、被験核酸は分離培養されたヨーネ菌又はヨーネ菌を含む動物サンプルから得られた核酸である。ここで、動物サンプルとは、動物からの糞便サンプル、体液サンプル、及び腸管などの組織サンプルを含む。

【0091】
また、本発明は、対象となる一塩基反復多型(又は一塩基反復の近傍に存在する一塩基多型)が生じ得ることが知られている核酸領域に対応する、標識された2種以上の核酸断片を含む遺伝子型判定マーカー、及び該遺伝子型判定マーカーに含まれる核酸断片に対応する核酸領域を増幅するためのプライマーペアを少なくとも含む、一塩基反復中の反復数(又は一塩基多型)を解析するためのキットにも関する。好ましくは、プライマーペアのうち一方は標識されている。

【0092】
本明細書に用いられる「キット」という用語は、アッセイ構成要素の組み合わせを指す。反応アッセイに関連しては、そのような組み合わせは、ある場所から別の場所へ、反応試薬(例えば、適当な容器中におけるオリゴヌクレオチド、酵素など)及び/もしくは補助材料(例えば、緩衝液、そのアッセイを実施するための書面にした使用説明書)の保管、輸送又は配達を可能にするシステムを含む。本明細書に用いられる「アッセイ構成要素」という用語は、アッセイを行うことができるシステムの構成要素を指す。アッセイ構成要素は、限定するものではないが、遺伝子型判定マーカー、プライマー、緩衝液などを含む。例えば、キットは、関連性のある反応試薬及び/又は補助材料を含む1つ又は複数の封入物(例えば、箱)を含む。本明細書に用いられる「分割化キット」という用語は、それぞれが全キット構成要素の一部を含む2つ又はそれ以上の別個の容器を含む組み合わせを指す。容器は、意図された受取人へ一緒に又は別々に配達される。例えば、第一の容器はアッセイ用の酵素を含み、一方、第二の容器はオリゴヌクレオチドを含む。それぞれが全キット構成要素の一部を含む2つ又はそれ以上の別個の容器を含む任意の組み合わせが「分割化キット」という用語に含まれる。対照的に、「一体化キット」とは、単一の容器に反応アッセイの構成要素のすべてを含む(例えば、望ましい構成要素のそれぞれを収容する単一の箱において)組み合わせを指す。「キット」という用語は、分割化キット及び一体化キットの両方を含む。

【0093】
特に、本発明は、配列番号1又は2に示される配列を含む領域に対応する標識核酸断片を含む遺伝子型判定マーカー、及び該領域に対応する核酸領域を増幅するためのプライマーペアを少なくとも含む、ヨーネ菌の遺伝子型判定のためのキットに関する。このキットにおいて、該プライマーペアは、好ましくは、配列番号3及び4又は配列番号5及び6に示される配列を有する。

【0094】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0095】
遺伝子型判定マーカーの作製
標識核酸断片の調製
ATCC(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション)から購入したヨーネ菌参照株1~4(それぞれ、受託番号ATCC19698、ATCC49164、ATCC700535、及びATCC19851)、並びに国内のヨーネ病発症事例から分離されたヨーネ菌野外株1~11(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所にて、VNTR型別に関する共同研究及び病性鑑定等のために収集された株の一部)を、それぞれ、マイコバクチン添加ハロルド(Harrold)卵黄寒天培地上で37℃、3ヶ月間培養し、コロニーを形成させた。各サンプルのコロニーを、200μLの核酸精製試薬インスタジーンマトリックス(Bio-Rad社製)に添加し、56℃にて30分間加温した後、ボルテックスで10秒間撹拌し、沸騰水上で100℃にて8分間処理した。再度ボルテックスで10秒間撹拌した後、12000rpmにて3分間遠心分離した。得られたサンプルは、使用まで-20℃で保存した。使用時に、溶解後、ボルテックスで10秒間撹拌し、12000rpmにて3分間遠心分離し、上清を鋳型溶液として後のPCR増幅で用いた。
【実施例1】
【0096】
以下のプライマーは、アプライド・バイオシステムズ・ジャパン社のGeneScan(登録商標)Analysis用カスタムプライマーとして受注作製した。
【実施例1】
【0097】
M1-F2-Fam(配列番号3)
M1-F2-Vic(配列番号3)
M1-R2-Tailed(配列番号4)
M2-F2-Fam(配列番号5)
M2-F2-Vic(配列番号5)
M2-R2-Tailed(配列番号6)
T2-F3-Ned(配列番号8)
T2-R3-Tailed(配列番号9)
【実施例1】
【0098】
上記のプライマーのうち、名称の最後に「Fam」が付されたものは5’末端に6-FAMTM標識を有し、「Vic」が付されたものは5’末端にVICTM標識を有し、「Ned」が付されたものはNEDTM標識を有する。それぞれのプライマーはカッコ内に示された配列番号により示される配列を有するが、名称の最後に「Tailed」が付されたものはそれらの配列に加えて5’末端にテイル配列(GTGTCTT)が付加されている。
【実施例1】
【0099】
各プライマーについて、水で100μMのストック溶液を調製した。それらのストック溶液を水でさらに25μMに希釈してワーキング溶液とし、PCRに用いた。
【実施例1】
【0100】
PCR試薬キットAmpliTaq Gold(登録商標)(アプライド・バイオシステムズ・ジャパン社製)を用いて、以下の組成を有する増幅溶液を調製した:
蒸留水 57μL
10×Goldバッファー 10μL
8mM dNTP 10μL
25mM MgCl2 6μL
DMSO 4μL
25μM標識プライマー 2μL
25μMテイルドプライマー 2μL
Taq Goldポリメラーゼ 1μL
合計 92μL
【実施例1】
【0101】
上記の増幅溶液11.5μLに1μLの上記鋳型溶液を加えて、GeneAmp(登録商標)PCR System9700を用いて、以下の温度サイクルによりPCR増幅を行った:
プレヒート 95℃5分
36サイクル 変性ステップ 95℃10秒
アニーリング 67℃30秒
伸長ステップ 72℃60秒
反応終了 10℃
得られたPCR産物は、以下の5種類である:
M1-Fam
M1-Vic
M2-Fam
M2-Vic
T2-Ned
【実施例1】
【0102】
データベースから得られたM1領域、M2領域、及びT2領域の配列は以下に示す通りである(下線部が反復配列、M1及びM2はCの一塩基反復、T2はCCGの3塩基反復):
M1(配列番号1):GCGGTGTTCGGCAAAGTCGTTGTGCCGGGCGGCGTTTGGCCCGCGGACGTGCTGCCGGAGCCCGGGGCGATGCCGGTCACCACCCAGTGCACGTACGSCCCCCCCCCCCCCCCCCCCGGGGCGTCGGGGTCGTCGACCACCAGGGCCGCACCCGTTGGCGCGGACCACGCCAGCGGCGGTGCGATGCCCTCGCCCTTGCAGGTGTACCGCGGCGGGATCGGGGCGCCGTCGGTGAATGCCGGGCTGGTGATCGTCAA(SはC又はG)
M2(配列番号2):TGCTCAGCAGCCAGGTAGTCCGCATCCCGTGCCGCTCGATGCCGCTCGGCAGACCTGTGGTGGGCTTCGACGTCACCGAAGCCCCCCCCCCGGCAGCTCTGTCGTGCAACTGCGCGGCACGCTCATGGGCATCGCCGGCGGACAGGCGGGCCGCATGCAGACGTTCACGTGCCGCCGCGACACGCTCGGCCGCCTCATCAGCGGACCTACGTGCGGCTCCCGAAACTCTGGACCGCCGTTCGGCGTCGTCGCTCATGCGGCACCTCCAAGCCCACAACGCTAC
T2(配列番号7):CAACGACAATGCCACCGACAATGCCACCGCCGCCGCCGCCGCCCTCCACGCCATCGACCGGCGGTCAAGCCTTCGGCGCCGCCCCGCCGGGTCAGCCCGGCACGTCGGGCGACCCCACGCCGGGCGGCAGCACGCCGGTCAGCGCGACCGCCAAGGGATCGACCCTGACC
【実施例1】
【0103】
シーケンス解析及び波形解析
得られたPCR産物をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、コスモアイ(カイノス社製)キャピラリー電気泳動装置を用いて純度及びDNA量を測定した。この精製PCR産物を鋳型として、5’末端に蛍光標識もテイル配列も付加されていない上記配列を有するプライマーを用いて、BigDye Terminater v3.1(アプライド・バイオシステムズ社製)を用いてサイクルシーケンス反応を行った。ターミネーター反応生成物精製カラムにより反応液から未反応の標識物質等を除去した後、ジェネティックアナライザApplied Biosystems3130(50cmキャピラリー、POP-7)又はABI PRISM(登録商標)3100(80cmキャピラリー、POP-4)にてシーケンス解析を行った。アライメント解析はGENETYX-MAC遺伝子情報処理ソフトウェアを用いて実施した。
【実施例1】
【0104】
また、それぞれの標識PCR産物について、ジェネティックアナライザApplied Biosystems3130(50cmキャピラリー、POP-7)又はABI PRISM(登録商標)3100(80cmキャピラリー、POP-4)を用いてキャピラリー電気泳動を実施し、GeneMapperTMを用いて波形解析を行った。電気泳動に際しては、標準マーカーとしてGeneScanTM600 LIZサイズスタンダード(アプライド・バイオシステムズ社製)をサンプルに混合して、同時に電気泳動に供した。
【実施例1】
【0105】
得られた配列情報から、それぞれの菌株について、以下のようにM1領域(配列番号1)、M2領域(配列番号2)及びT2領域(配列番号7)中の反復数が明らかとなった。カッコ内が反復数であり、下線の数は、波形解析から明らかとなった主要ピークである。
【実施例1】
【0106】
菌株 M1領域 M2領域 T2領域
(カッコ内は
VNTR型別)
参照株1 (7) (10) (5)
(Map-1)
参照株2 (7) (10) (6)
(Map-1)
参照株3 (15、16、17、 (10、11) (5)
(Map-1) 18、19)
参照株4 (10) (9) (5)
(Map-1)
野外株1 (15、1617、 (10) (4)
(Map-2) 18)
野外株2 (8) (11) (5)
(Map-1)
野外株3 (9) (11、12) (5)
(Map-1)
野外株4 (11) (10) (5)
(Map-1)
野外株5 (13、14) (10) (4)
(Map-2)
野外株6 (14、15、16) (10、11) (4)
(Map-2)
野外株7 (18、19、20、 (10、11) (4)
(Map-2) 21)
野外株8 (8) (10) (5)
(Map-1)
野外株9 (9) (11) (6)
(Map-1)
野外株10 (9) (9) (5)
(Map-1)
野生株11 (9) (13、14) (5)
(Map-1)
【実施例1】
【0107】
以上の結果から、単一検体から取得されたそれぞれの菌株中に、実際には異なる遺伝子型の複数の菌株が含まれている場合があることに注目されたい。
【実施例1】
【0108】
遺伝子型判定マーカー調製
上記で明らかになった反復数から、M1領域及びM2領域のそれぞれについて、可能な範囲の反復数(M1:7~21;M2:10~14)を網羅するように菌株の組み合わせを選択し、標識PCR産物を混合し、遺伝子型判定マーカーを作製した。具体的には、M1領域については、参照株1及び野外株2~7から得られたVIC標識PCR産物を混合することにより、M2領域については参照株1及び野外株2、3、11から得られたFAM標識PCR産物を混合することにより、遺伝子型判定マーカーを得た。混合する際には、上記の波形解析から各PCR産物の配合割合を決定し、それぞれの反復数のピーク高ができるだけ均一となるように配合割合を決定した。
【実施例1】
【0109】
それぞれの遺伝子型判定マーカーについての波形解析の結果を、図1A(M1領域)及び図1B(M2領域)に示す。
【実施例2】
【0110】
遺伝子型判定マーカーによる一塩基反復中の反復数判定
一塩基反復多型の解析として、断片長が1塩基レベルで判別できる電気泳動法、特に蛍光標識した核酸試料についてのキャピラリー電気泳動による解析は有望である。しかしながら、通常用いられる既定のフラグメント長を有する標準との比較のみからは、反復数の正確な判別は困難であった。また、キャピラリー電気泳動では、個々のランごとに若干の移動度の差異があり、このことにより、核酸試料を個別に電気泳動に供することのみによる一塩基反復の反復数の正確な判定はますます困難なものとなっていた(図2を参照)。さらに、上記で示されたように、単一検体から分離された菌株の中に、遺伝子型が異なる複数の菌株が含まれている場合があるため、このことが、一塩基反復の解析をさらに困難なものとしていた(図3の「参照株3」を参照)。
【実施例2】
【0111】
そこで、上記のように調製した遺伝子型判定マーカーを被験核酸断片と同時に分離することにより、より精密な一塩基反復の解析を可能とした。
【実施例2】
【0112】
図4に示されるように、被験核酸(参照株1、FAM標識)のピーク(図4の黒色のピーク)は、標準(図4の波形解析の両端の薄い色のピーク)に対しての位置はランごとに若干異なっているが、遺伝子型判定マーカー(図4の中間色のピーク)との相対的な位置はランによって変化することなく一定である。
【実施例2】
【0113】
図5Aに、ピークのデータポイントをグラフ化したものを示す。ここでは、ランごとにデータポイントは変化しているが、点線で示した標準サイズマーカーに比べて、本発明の遺伝子型判定マーカーと被験核酸断片との間では、各ピーク間の距離は非常に安定に保たれていることが見て取れる。図5Bには、標準サイズマーカーの補正による各ピークの相対サイズ値のグラフを示す。この補正によっても、相対サイズ値の変動は残っているが、遺伝子型判定マーカーと被験核酸断片との間のピーク間の間隔は、複数回のランを通して非常に良好に保たれていることが見て取れる。このことから、本発明の遺伝子型判定マーカーを用いることにより、被験核酸の反復数、及び複数の遺伝子型が混在している場合には、その遺伝子型構成(各遺伝子型の混合比)も再現性高く判定できることが明らかである。
【実施例2】
【0114】
ここで、図4及び図5で、被験核酸のピークと遺伝子型判定マーカーのピークとが完全には一致していないが、これは、被験核酸がFAM標識である一方で、遺伝子型判定マーカーはVIC標識として作製されており、それら標識物質は移動度が異なるためである。このことは、被験核酸の反復数の判定を障害しない。なぜなら、標識物質の移動度の違いは多くの場合公知であり、また同一配列で異なる標識のサンプルを電気泳動することで容易に知ることができるからである。蛍光標識サンプルの電気泳動分析では、1つの蛍光物質のシグナルが顕著に強い場合、蛍光がクロストーク(かぶり)を起こし、異なる蛍光物質の小さなピークとして認識されてしまうことは頻繁にある。したがって、図4の実験のように被験核酸と遺伝子型判定マーカーとで移動度の異なる標識を用いることによって、ピークの位置が完全には一致しないことは、そのような蛍光のクロストークの可能性を考えるとむしろ有利であると言える。
【実施例2】
【0115】
これにより、本発明の方法を用いることで、シーケンス解析のような煩雑な手順を介さずに、一塩基反復多型の反復数の解析を簡便に、非常に再現性高く実現できることが示された。
【実施例2】
【0116】
本発明の方法が、具体的に示したヨーネ菌ゲノム配列以外の配列における一塩基反復多型の解析にも適用可能であることは明白である。
【実施例3】
【0117】
遺伝子型判定マーカーの一塩基多型解析への応用
本発明者らは、上記のような遺伝子型判定マーカーを用いた一塩基反復多型の解析を実現する過程で、この遺伝子型判定マーカーにより一塩基多型(SNP)も解析することが可能である場合があることを見出した。
【実施例3】
【0118】
配列番号1に示されるヨーネ菌ゲノムのM1領域の配列中には、一塩基反復に隣接して、一塩基多型が生じる箇所が含まれている(配列番号1の98番目の塩基;C又はG)。ここでは、配列番号1の98番目の塩基がCの場合を「a型」(GC)、Gの場合を「b型」(GG)と称する。
【実施例3】
【0119】
図6に示されるように、当該SNP部位がa型である場合(野外株8及び10)とb型である場合(野外株2及び9)とでは、PCR産物の断片長が等しく、一塩基反復多型での反復数が同じでも、遺伝子型判定マーカーとの移動度の差が異なる。すなわち、この差異を解析することで、当該SNP部位がどちらの型か判定することができる。これに対して、図7に示すように、同じ蛍光物質で標識したa型とb型の混合物は単一のピークを形成し、2つの型のそれぞれのピークに分離することはできなかった。
【実施例3】
【0120】
なお、M1領域の遺伝子型判定マーカーの作製に用いた参照株1及び野生株2~7はすべてb型であった。また、a型は現在のところVNTR型Map-1にのみ検出され、シーケンスを確認したVNTR型Map-1の80株中、68株がa型であった。
【実施例3】
【0121】
上記及び図5で示したように、同時に電気泳動した場合の被験核酸と遺伝子型判定マーカーとのピークの相対的な位置は、ランを繰り返しても非常に安定している。このことが、SNP部位の配列の違いによる移動度の若干の違いも敏感に検出することを可能とし、本発明の方法による一塩基多型の解析までをも可能にした。
【実施例3】
【0122】
このようなSNP解析の方法が、具体的に示したヨーネ菌ゲノム配列以外の配列におけるSNPにも適用可能であることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明によれば、微生物、植物をはじめとする生物の簡便でハイスループットな遺伝子型解析を実現することが可能となる。これは、病原体の遺伝子型解析、植物の品種解析、動物の疾患感受性解析などに応用可能である。したがって、本発明は、ヒトの医療分野、獣医学分野、植物分野など広範な技術分野での利用可能性を有する。
【配列表フリ-テキスト】
【0124】
配列番号1:M1領域
配列番号2:M2領域
配列番号3~6:プライマー
配列番号7:T2領域
配列番号8及び9:プライマー
Drawing
(In Japanese)【図1A】
0
(In Japanese)【図1B】
1
(In Japanese)【図2】
2
(In Japanese)【図3】
3
(In Japanese)【図4】
4
(In Japanese)【図5A】
5
(In Japanese)【図5B】
6
(In Japanese)【図6】
7
(In Japanese)【図7A】
8
(In Japanese)【図7B】
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