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明細書 :凍結食品の解凍方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3079261号 (P3079261)
公開番号 特開2000-157237 (P2000-157237A)
登録日 平成12年6月23日(2000.6.23)
発行日 平成12年8月21日(2000.8.21)
公開日 平成12年6月13日(2000.6.13)
発明の名称または考案の名称 凍結食品の解凍方法
国際特許分類 A23L  3/365     
A23B  4/07      
A23B  7/04      
FI A23L 3/365 Z
A23B 7/04
A23B 4/06
請求項の数または発明の数 3
全頁数 5
出願番号 特願平10-335803 (P1998-335803)
出願日 平成10年11月26日(1998.11.26)
審査請求日 平成10年11月26日(1998.11.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391016956
【氏名又は名称】九州工業大学長
発明者または考案者 【氏名】白井 義人
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
審査官 【審査官】六笠 紀子
参考文献・文献 特開 平11-98974(JP,A)
特開 昭57-50875(JP,A)
特開 平6-327398(JP,A)
調査した分野 A23L 3/365
A23B 4/07
A23B 7/04
A23L 1/00 - 1/035
特許請求の範囲 【請求項1】
凍結食品を加熱することにより解凍する方法において、
(1)解凍すべき凍結食品からドリップが融出しないようなゲル状の層構造を凍結食品の表面のみに形成させる熱処理工程であって、前記熱処理工程の温度及び時間が、それぞれ約70℃ないし約90℃及び約3秒以上約20秒以下である工程と、
(2)前記熱処理工程で得られた凍結食品を室温付近の温度で解凍させる解凍工程とを具備することを特徴とする凍結食品の解凍方法。

【請求項2】
前記熱処理工程の温度が、凍結食品を加熱するために用いられる媒体の温度である請求項1に記載の解凍方法。

【請求項3】
前記熱処理工程が、約-15℃に凍結された魚肉に対して施されることを特徴とする請求項1または2に記載の解凍方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、凍結食品の解凍方法に関する。より詳細には、本発明は、凍結食品からのドリップの融出を防止しつつ短時間で解凍することのできる凍結食品の解凍方法に関する。

【0002】
【従来の技術】マグロなどの魚貝類や肉類などの生鮮食品は、凍結保存することによりその鮮度、品質等を長期間にわたり維持することができる。この凍結保存された生鮮食品の多くは、解凍時に液汁が融出してくる。この液汁は、ドリップと呼ばれているものであり、旨み成分や風味成分の他、栄養成分も高濃度に含有している。従って、解凍時に融出するドリップの量が増加するほど、食品から消失する旨み成分等の量が増加し、食品の品質の低下を招くことになる。

【0003】
従来、解凍時に融出するドリップの量を減らすためには、5℃程度の低温で解凍することが奨励されている。このような低温解凍は、特に肉類などではドリップの融出が最も少ない解凍方法として定着しているものであるが、解凍に長時間を要するという問題点を有している。ドリップ量を減らすための別の方法には、20℃程度の温度で数10分間予備解凍し、5℃程度で本解凍する方法もある。この方法は、全工程を5℃程度で行う前記低温解凍よりは解凍に要する時間を短縮することができるが、室温での解凍に比べると長時間を要するという欠点がある。解凍に要する時間を更に短縮するために、電子レンジによる解凍や、常温の流水などによる液中解凍が試みられている。しかしながら、電子レンジを用いる方法では、解凍ムラが発生する等の問題が、また液中解凍では、可溶性成分が液体へ溶出すること等の問題点があり、いずれも味を含む品質の低下が避けられない。また、特に、流水を用いる液中解凍では、タンクや用水量などにコストを要するという経済上の問題点もある。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、凍結食品を解凍する際に発生するドリップの量が少なく、凍結前の食品が有していた品質の低下が抑えられ、しかも解凍に要する時間が短い凍結食品の解凍方法を提供することを課題とする。

【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、鋭意研究した結果、上記課題は、次の方法を用いることにより解決できることを見い出した。すなわち、本発明は、凍結食品を加熱することにより解凍する方法において、(1)解凍すべき凍結食品からドリップが融出しないようなゲル状の層構造を凍結食品の表面のみに形成させる熱処理工程と、(2)前記熱処理工程で得られた凍結食品を室温付近の温度で解凍させる解凍工程とを具備することを特徴とする凍結食品の解凍方法を提供する。

【0006】
上記解凍方法において熱処理工程の温度は、約70℃ないし約90℃に、時間は、約3秒以上約20秒以下に設定することができる。

【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の凍結食品の解凍方法(以下、単に「本発明の解凍方法」ともいう。)を詳細に説明する。

【0008】
本発明の解凍方法を適用することのできる凍結食品の材料の種類に特に制限はなく、魚貝類、畜肉、野菜、果物、サラダ、加工食品等のいずれもの凍結食品に適用することができる。本発明の解凍方法は、特に、ドリップの問題を生じやすい魚貝類や畜肉等に好ましく適用することができる。

【0009】
本発明の解凍方法は、(1)解凍すべき凍結食品からドリップが融出しないようなゲル状の層構造を凍結食品の表面のみに形成させる熱処理工程と、(2)前記熱処理工程で得られた凍結食品を室温付近の温度で解凍させる解凍工程を具備することを特徴とするものである。

【0010】
上記熱処理工程において食品の表面に設けたゲル状の層構造は、当該層構造よりも内部に保持される食品の水分を保持し、旨み成分を含む液汁が、当該層構造を越えて食品の外へ融出することを防止することができる。さらに、本発明者は、次の様な現象を見い出し、凍結食品の表面のみにゲル状層構造を形成し、その後の解凍温度を好適に設定することにより、短時間でドリップ量が少ない本発明の解凍方法を成したものである。具体的には、冷蔵庫での凍結のように、食塩や葡萄糖を溶解した水溶液を回りから凍結させた場合、溶質が氷内部に凍結濃縮されるにもかかわらず、解凍時には解凍初期に最も濃い液が融出する現象を見い出した。一方、溶液の代わりに寒天等のゲルに食塩や葡萄糖を溶解させ、凍結後、融解させると、成分の融出パターンが解凍温度に大きく依存することを見い出した。すなわち、ゲル溶液の場合、室温での融解では、凍結した水溶液を融解させる場合と同様、濃い濃度の成分から融出するが、80℃付近の高温で解凍した場合は、最初に薄い溶液から融出することが分かった。

【0011】
従来、解凍すべき食品の表面をゲル状にすることにより、ドリップを減少させることができることは知られていなかった。すなわち、上記従来の技術の欄で述べた、20℃の予備解凍の後、5℃程度で本解凍する方法では、氷が一部融解した部分を含むため、瞬時に凍結体表面をゲルに復帰させることができず、十分に保水できない。また、ステーキやハンバーグ等の凍結食品を解凍、調理する方法として、凍ったままの状態で、例えば180℃付近の高温に熱することにより、表面のタンパク質を熱処理し、これらの食品の表面に層状の構造を設けることによりドリップを少なくし、成分の流出量を低下させる方法が知られている。しかしながら、このような高温による処理は、例えばタンパク質のような冷凍食品の成分は完全に熱変性し、凝固状態になっている。

【0012】
これに対して、本発明の解凍方法では、上記解凍方法のように食品の表面を完全に凝固させてしまうのではなく、ゲル状にするものである。ここで、ゲル状とは、寒天等の網目構造を形成する成分中を溶液が均一に分散している状態をいう。

【0013】
従来の方法におけるように、表面が凍結状態にある場合は、氷結晶はゲルの網目構造中で形成され、その氷間に溶液成分が濃縮されて滞留する。また、上記ハンバーグの例における凝固状態では、高温によるゲル成分の変成のため、網目構造が凝集し、ドリップや構成成分の溶出は防止される。一方、室温での解凍や、20℃の後5℃へ温度変化させる解凍では、凝固点降下により凍結濃縮されている成分濃度の高い部分から融解し、ゲル構造が完全に復帰する前に成分が融出してしまう。これに対して、本発明によれば、短時間、高温状態にさらすことにより、凍結体の表面のゲル構造を瞬時に復帰させることにより、その高い保水性により、ドリップや成分の融出を防ぐのである。これらの効果は、実施例の欄で実証される。

【0014】
本発明の解凍方法の熱処理工程において、解凍すべき凍結食品からドリップが融出しないようなゲル状の層構造は、凍結食品を加熱する温度および時間を適切に設定することにより凍結食品の表面のみに形成させることことができる。

【0015】
熱処理工程の温度は、解凍すべき食品材料の種類、物性、重量、凍結温度等に応じて変化し得る。一例を挙げると、-15℃に凍結された15g程度の魚肉を解凍する場合、熱処理工程の温度は、約70℃ないし約90℃に、より好ましくは、約80℃に設定することができる。熱処理温度が低すぎると、凍結体の表面にゲル構造が完全に復帰することがなく、高すぎると製品が変成してしまい好ましくない。なお、ここで規定する温度とは、以下に説明する加熱するための媒体の温度をいい、解凍するべき凍結食品表面の温度ではない。従って、厳密には、凍結食品の近辺ではこの温度よりも低い温度になることもあり得る。

【0016】
熱処理工程の時間は、解凍すべき食品材料の種類、物性、重量、凍結温度等に応じて決定することができるが、上記魚肉を解凍する場合、約3秒ないし約20秒間、より好ましくは5ないし10秒に設定することができる。処理時間が長すぎると、ゲル構造の変性が起こり、短すぎるとゲル構造が十分復帰しなくなり好ましくない。

【0017】
熱処理工程において、湿度等のような、温度および時間以外の条件に特に制限はなく、当業者は、適宜設定することができる。

【0018】
上記熱処理工程の加熱は、それ自体は既知の加熱媒体を用いる方法(例えば、加熱された空気、水蒸気等の単独または混合ガス中での解凍、熱湯への浸析)により行うことができる。当業者は、解凍すべき食品材料の種類、物性、重量、凍結温度等に応じて、いずれの方法により加熱するべきか適宜選択することができる。

【0019】
熱処理工程において、構成成分の融解後の溶出の観点から、凍結食品をプラスチックフイルム等で包装しておくことが好ましいことがある。

【0020】
本発明の解凍方法において、熱処理工程に供することによりゲル状層構造をその表面のみに設けた凍結食品を、室温付近の温度で解凍させる解凍工程に供する。

【0021】
ここで、「室温付近」とは、5~40℃程度の温度、通常は15℃~25℃、すなわち、特別に温度制御の工夫を要しない状態をいう。解凍工程の温度が低すぎると、解凍時間に長時間を要し、高すぎると食品の品質低下につながり好ましくない。

【0022】
解凍工程の時間は、用いる凍結食品の種類、凍結温度、大きさ、形状(扁平か、塊状か等)、使用目的(生の状態で食するか、調理してから食するか等)、食する人の好み、法的規制等に応じて変化し得る。解凍工程の時間それ自体は、をどの程度に設定することにより所望する解凍状態にすることができるか、当業者は容易に理解することができる。一例を挙げると、上述した魚肉を解凍するためには、20分程度に設定することができる。

【0023】
解凍工程において、湿度等のような、温度および時間以外の条件に特に制限はなく、当業者は、適宜設定することができる。

【0024】
解凍工程の加熱は、熱処理工程を経た食品を室温の温度条件下に放置することにより行うことができるが、必要に応じて、それ自体は既知の加熱媒体を用いる方法(例えば、混合ガス中での解凍、水への浸析)により行うこともできる。

【0025】
本発明の解凍工程において、高温処理における成分の溶出防止の観点から、凍結食品をプラスチックフイルム等で包装しておくことが好ましいことがある。

【0026】
【実施例】以下、本発明の解凍方法を実施例により説明するが、本発明の解凍方法は、これらの実施例に限定されるものではない。

【0027】
<実施例1>トロを-15℃で凍結させ、本発明の解凍方法を用いて解凍させた。

【0028】
実験条件は、15gのトロ片を凍結後、塩化ビニルフイルムで包装し、80℃の湯に浸析させた。5秒の浸析時間の後、20℃および5℃でそれぞれ融解させた。比較として、80℃での処理を行わず、20℃および5℃のみでの溶解も試みた。

【0029】
図1にそれぞれの条件での解凍後のドリップ漏出後の重量ロスを示す。図1より、短時間の80℃での処理が、ドリップ量を大きく低下させることが分かる。そのドリップ量は、5℃での融解処理のみの場合とほとんど変わらないことが分かる。

【0030】
<実施例2>ハマチ80gづつを塩化ビニルフルムで包装した後、-15℃で凍結させた。一旦、80℃で5秒間の処理をした後、20℃で放置する本発明の解凍方法と、常時20℃の放置状態を検討した。その後、両者の外観、食感、味について官能試験を試みた。

【0031】
その結果を表1にまとめる。評価の基準は、1を最低、5を最高とする5段階で行った。

【0032】
【表1】
JP0003079261B2_000002t.gif【0033】上記表1から明らかなように、本発明の解凍方法を用いて解凍したハマチは、外観、食感、味の全ての評価項目で比較用の試料よりも優れた評価を得ることができた。

【0034】
<実施例3>凍結食品の融解にかかる時間を比較した。50gのトロを-15℃で凍結後、様々な温度で解凍させた場合の解凍時間を検討した。

【0035】
その結果、5℃のみで融解させた場合、解凍に5時間も要した。また、20℃の場合は40分を要した。

【0036】
これに対して、本発明の80℃、5秒間の熱処理工程および20℃での解凍工程の場合は30分、80℃、5秒間の熱処理工程および5℃の解凍工程の場合は、3時間で解凍することができた。特に、解凍工程を20℃に設定した本発明の解凍方法によれば、実施例1に示したように、解凍食品のドリップ量は、5℃での融解と遜色ないにもかかわらず、融解にかかる時間は1/10に短縮できることが分かる。

【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の解凍方法を用いることにより、ドリップの融出が少なく、解凍による品質の低下を抑えた解凍を短時間に行うことができる。解凍に要する時間が短いことにより、作業効率が上がり、コストを低下させるという経済上の利点の他に、微生物、酵素、空気などの作用を受ける時間が短いので、衛生上の利点もある。

【0038】
また、本発明の解凍方法は、それ自体は既知の装置を組み合わせることにより実施することができるので、本発明の実施ために新たな装置の製造を必要としないという別の経済的な利点もある。
図面
【図1】
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