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Specification :(In Japanese)気分障害又は感情障害の治療薬

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P5266520
Publication number P2009-227631A
Date of registration May 17, 2013
Date of issue Aug 21, 2013
Date of publication of application Oct 8, 2009
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)気分障害又は感情障害の治療薬
IPC (International Patent Classification) A61K  31/4535      (2006.01)
A61K  31/4453      (2006.01)
A61P  25/24        (2006.01)
FI (File Index) A61K 31/4535
A61K 31/4453
A61P 25/24
Number of claims or invention 5
Total pages 12
Application Number P2008-077752
Date of filing Mar 25, 2008
Date of request for substantive examination Mar 23, 2011
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】高濱 和夫
【氏名】白崎 哲哉
【氏名】副田 二三夫
【氏名】緒方 雪乃
【氏名】川浦 一晃
【氏名】本田 宗吉
【氏名】井上 雅子
Representative (In Japanese)【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
Examiner (In Japanese)【審査官】川口 裕美子
Document or reference (In Japanese)国際公開第2007/037258(WO,A1)
国際公開第2007/139153(WO,A1)
Kobayashi T et al.,Inhibition of G protein-activated inwardly rectifying K+ channels by the antidepressant paroxetine.,J Pharmacol Sci,2006年11月,102(3),278-87
Inhibition of GIRK channels by various antidepressants,神経化学,2004年 8月10日,巻:43 号:2/3,510,P2-304
NEW薬理学(改訂第3版),株式会社南江堂,1997年 8月 1日,279-280
Field of search A61K 45/00,31/00
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
Gタンパク質共役型内向き整流性カリウムイオンチャネル(GIRKチャネル)の活性化電流を抑制する作用を有する化合物を含有する、気分障害又は感情障害の治療薬であって、化合物が、クロペラスチン、塩酸クロペラスチン、フェンジゾ酸クロペラスチン、チペピジン、ヒベンズ酸チペピジン及びクエン酸チペピジンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、上記治療薬
【請求項2】
気分障害又は感情障害がうつ病である請求項1に記載の治療薬。
【請求項3】
うつ病が治療抵抗性うつ病である請求項2に記載の治療薬。
【請求項4】
化合物が、クロペラスチン、塩酸クロペラスチン、フェンジゾ酸クロペラスチン、ヒベンズ酸チペピジン及びクエン酸チペピジンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の治療薬。
【請求項5】
化合物が、クロペラスチン、塩酸クロペラスチン及びクエン酸チペピジンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の治療薬。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、気分障害又は感情障害の治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会の複雑化に伴って、うつ病や躁うつ病などの気分障害(感情障害)を患う人が増加している。特に、うつ病は、若年層や中年層に比べて50歳以上の高年層において罹患率が高く、さらに男性よりも女性の罹患者が多い。一般住民の約15人に一人がうつ病を経験するといわれている。うつ病の基本的な症状は、強い抑うつ気分、興味や喜びの喪失、食欲の障害、睡眠の障害、精神運動の障害(制止または焦燥)、疲れやすさ、気力の減退、強い罪責感、思考力や集中力の低下、死への思いであり、他に、身体の不定愁訴を訴える人も多く、被害妄想などの精神病症状が認められることもある。
【0003】
うつ病の治療としては一般的に抗うつ薬の投与がなされている。抗うつ薬としては、イミプラミンやデシプラミン等の薬剤がよく用いられている。しかし、これら従来の薬剤は、抗うつ効果の発現に3~4週間あるいはそれ以上の長い時間が掛かるという欠点や、治療抵抗性うつ病に対してほとんど効果を奏しないなどの問題がある。
【0004】
一方、本発明者らは、過去20数年にわたる中枢性鎮咳薬に関する研究の過程で、鎮咳薬はGタンパク質共役型内向き整流性カリウムイオンチャネル(GIRKチャネル)を抑制することを見出し、このGIRKチャネル活性化電流を抑制する薬物は、脳梗塞に伴う排尿障害も改善することを見出している(PCT/JP2005/004261)。
【0005】
また、特許文献1には、クロペラスチン又は塩酸カラミフェンなどのモルフィナン骨格を有しない非麻薬性の咳嗽反射抑制物質を含有してなる頻尿・尿失禁の予防・治療組成物が記載されている。
【0006】

【特許文献1】特開2000-264849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した通り、うつ病などの気分障害又は感情障害に対する有効な治療薬はなく、優れた治療薬の開発が望まれていた。本発明は、気分障害又は感情障害の治療薬を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討し、鎮咳薬の研究や脳機能に対する環境要因の影響に関する研究で得た実績を基に、GIRKチャネルの活性化電流を抑制する作用を有する化合物は、うつ病などの気分障害又は感情障害を治療するのではないかと考え、うつ病モデルに対する、GIRKチャネルの活性化電流を抑制する作用を有する化合物の作用を検討した。その結果、GIRKチャネルの活性化電流を抑制する作用を有する化合物は、うつ病などの気分障害又は感情障害を改善できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0009】
即ち、本発明によれば、Gタンパク質共役型内向き整流性カリウムイオンチャネル(GIRKチャネル)の活性化電流を抑制する作用を有する化合物を含有する、気分障害又は感情障害の治療薬が提供される。
【0010】
上記気分障害又は感情障害は、好ましくはうつ病であり、より好ましくは治療抵抗性うつ病である。
【0011】
上記Gタンパク質共役型内向き整流性カリウムイオンチャネル(GIRKチャネル)の活性化電流を抑制する作用を有する化合物は、好ましくはモノアミン神経伝達物質、より好ましくはセロトニン、ノルアドレナリン、アドレナリン、ヒスタミン及びドパミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の物質の分泌を促進させる作用を有する化合物である。
【0012】
上記化合物は、好ましくはクロペラスチン、塩酸クロペラスチン、フェンジゾ酸クロペラスチン、塩酸カラミフェン、エタンジスルフォン酸カラミフェン、塩酸エプラジノン、ヒベンズ酸チペピジン、クエン酸チペピジン、及びクエン酸イソアミニルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、より好ましくはクロペラスチン、塩酸クロペラスチン及びクエン酸チペピジンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、気分障害及び感情障害の治療薬に関する。本発明におけるチペピジンやクロペラスチンに代表されるGタンパク質共役型内向き整流性カリウムイオンチャネル(GIRKチャネル)の活性化電流を抑制する作用を有する化合物は、ラットに対して濃度依存的に無動時間を短縮し、壁よじ登り行動を高め、治療抵抗性うつ病モデルに対しては従来の抗うつ治療薬と比べて有意に無動時間を短縮し、さらにドパミンやセロトニンなどのモノアミン神経伝達物質の分泌を促進させる作用を有する。したがって、本発明の治療薬はうつ病などの気分障害及び感情障害の治療に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明する。
本発明による気分障害又は感情障害の治療薬は、Gタンパク質共役型内向き整流性カリウムイオンチャネル(GIRKチャネル)の活性化電流を抑制する作用を有する化合物を有効成分として含むことを特徴とする。このような化合物の具体例としては、非麻薬性の中枢性鎮咳薬として市販されている化合物を挙げることができる。
【0015】
GIRKチャネル活性化電流とは、GIRKチャネルの活性化により、カリウムイオンが細胞膜を横切って流れることに起因する膜電流である。このチャネルはセロトニン(5-HT)やノルアドレナリンなど様々な神経伝達物質受容体と共役しており、例えば5-HT1A受容体やアドレナリン(2受容体をそれぞれ刺激するセロトニンやノルアドレナリンにより活性化できる。
【0016】
本発明による気分障害又は感情障害の治療薬の一次スクリーニングは、GIRKチャネル活性化電流を、好ましくは、Akaike, N. & Harata, N. (1994). Nystatin perforated patch recording and its applications to analyses of intracellular mechanisms. Jpn.J. Physiol., 44, 433-473に記載されているパッチクランプ法により測定することにより行う。パッチクランプ法にはニスタチン穿孔パッチクランプ法とホールセルパッチクランプ法の2種類がある。
【0017】
パッチクランプ法で用いる装置の1例を図5に示す。図5は本発明において膜電流を測定するためのシステムの1例を示した概要図である。図5において、1はニューロン、2はパッチクランプ用ガラス電極、3は試験液が流れるYチューブ、4はYチューブの試験液噴出口、5はチューブ内の試験液を交換するための吸引ポンプ、6は培養皿、7は還流液流入口、8は還流液流出口、9はアンプ、10はアース線である。
【0018】
図6は図5の要部拡大図で、11はY-チューブ、12はその噴出口、13はニューロン、14は膜電流を測定するための記録電極である。
【0019】
膜電流の測定に用いるニューロン、特に好ましい縫線核と中心灰白質の単一ニューロンを単離する方法自体は公知であり、例えば、赤池紀扶, 白崎哲哉.(1992). 神経細胞実験法. (編)岡部進. 生物薬科学実験講座14 臓器機能測定法I. 廣川書店, p3-29で赤池らが提案している方法を採用することができる。この方法では例えば、ラットの脳幹から脳薄切片をスライスし、酵素及び器械的処理により単離することができる。
【0020】
上記装置を用いたパッチクランプ法により膜電流を測定する方法としては、ホールセルパッチクランプ法と、ニスタチン穿孔パッチクランプ法が知られている。ホールセルパッチクランプ法では、記録電極を上記の急性単離した縫線核単一ニューロンに接触させ、電極内を陰圧にしてギガオームシールを形成後、さらに陰圧をかけて電極先端の細胞膜を破壊し、電極内と細胞内を貫通させることでセロトニンなどの細胞外投与による膜電流を記録することができる。ニスタチン穿孔パッチクランプ法では、Akaike, N. & Harata, N. (1994). Nystatin perforated patch recording and its applications to analyses of intracellular mechanisms. Jpn.J. Physiol., 44, 433-473に記載されているように、記録電極にニスタチンを充填し、ギガオームシールを形成すると、電極内のニスタチンが細胞膜に穿孔を形成し、細胞内環境を維持したまま膜電流を記録することができる。
【0021】
膜電位および膜電流の記録にはパッチクランプ増幅器を用いることが好ましい。得られた電流波形は、オシロスコープ等で観察するとともにパソコンで解析し、必要であれば記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、CD-R/RW、DVD、MO等に記録する。また、必要であれば、膜電流と膜電位を磁気テープに記録し、レコーダーで描画する。解析には、パッチクランプ解析システムを用いることが好ましい。
【0022】
GIRKチャネルなどの活性化電流を抑制するか否かの判断は、例えば、電流振幅を平均値±標準誤差として表し、薬物存在下と非存在下の間で統計学的に比較する。危険率p<0.05のとき、その差を有意であるとする。
【0023】
気分障害又は感情障害は、「疾病及び関連保健問題の国際統計分類:International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems(以下「ICD」と略)」の第10版(ICD-10)において、気分(感情)障害(F30-F39)とカテゴライズされている疾病や機能障害を意味し、例えば、うつ病、躁病、双極性感情障害などを挙げることができ、うつ病としては治療抵抗性うつ病を挙げることができる。
【0024】
上記GIRKチャネルの活性化電流を抑制する作用を有する化合物としては、モノアミン神経伝達物質の分泌を促進させる作用を有する化合物を使用することが好ましく、セロトニン、ノルアドレナリン、アドレナリン、ヒスタミン及びドパミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の物質の分泌を促進させる作用を有する化合物を使用することが特に好ましい。
【0025】
Gタンパク質共役型内向き整流性カリウムイオンチャネル(GIRKチャネル)の活性化電流を抑制する作用を有する化合物の具体例としては、例えば、クロペラスチン、カラミフェン、エブラジノン、エタンジスルフォン酸、ヒベンズ酸チペピジン、イソアミニル、メモルファン、オキセラジン、ペントキシベリン、エプラジノン、ベンプロペリン、グアイフェネシン、これらの塩酸塩、リン酸塩、クエン酸塩もしくはフェンジゾ酸塩などがある。これらは混合して用いてもよい。
【0026】
これらの化合物の中ではクロペラスチンまたはその塩酸塩、もしくはフェンジゾ酸塩、塩酸カラミフェン、エタンジスルフォン酸カラミフェン、塩酸エプラジノン、ヒベンズ酸チペピジン、クエン酸チペピジン、クエン酸イソアミニルが好ましく、中でもクエン酸チペピジン及びクロペラスチンが特に好ましい。
【0027】
本発明で好ましい化合物として例示できるクロペラスチンは、下記構造式(1)で表される化合物(1-[2-[(4-クロロフェニル)フェニルメトキシ]エチル]ピペリジン)で、沸点は424℃、分子量は330で、緩和な抗ヒスタミン作用をもつ中枢性鎮咳薬として知られている。
【0028】
【化1】
JP0005266520B2_000002t.gif

【0029】
本発明で好ましい化合物として例示できるカラミフェンは、下記構造式(2)で表される化合物で、これも中枢性鎮咳薬として知られている。
【0030】
【化2】
JP0005266520B2_000003t.gif

【0031】
本発明で好ましい化合物として例示できるチペピジンは、下記構造式(3)で表される化合物で、これも中枢性鎮咳薬としても知られている。
【0032】
【化3】
JP0005266520B2_000004t.gif

【0033】
クロペラスチンを始め上記例示した化合物はいずれも非麻薬性の中枢性鎮咳薬として市販されており、鎮咳薬製造あるいは販売会社から容易に購入することができる。
【0034】
本発明による気分障害又は感情障害の治療薬は、経口的(舌下投与を含む)または非経口的に投与される。このような薬剤の形態としては、錠剤 、カプセル剤 、細粒剤 、丸剤 、トローチ剤 、輸液剤 、注射剤 、坐剤 、軟膏剤 、貼付剤等を挙げることができる。
【0035】
化合物を生体内に投与する際の輸液剤としては、生理食塩水を主成分とし、それに必要に応じて他の水溶性の添加剤、薬液を配合したものを用いることができる。このような水に添加される添加剤としては、カリウム、マグネシウム等のアルカリ金属イオン、乳酸、各種アミノ酸、脂肪、グルコース、フラクトース、サッカロース等の糖質等の栄養剤、ビタミンA、B、C、D等のビタミン類、リン酸イオン、塩素イオン、ホルモン剤、アルブミン等の血漿蛋白、デキストリン、ヒドロキシエチルスターチ等の高分子多糖類等を挙げることができる。
【0036】
このような水溶液における化合物の濃度は、10-7Mから10-5Mの濃度の範囲とすることが好ましい。
【0037】
本発明による気分障害又は感情障害の治療薬はまた、固形剤として生体に投与することができる。固形剤としては、粉末、細粒、顆粒、マイクロカブセル、錠剤等を挙げることができる。このような固形剤の中では、好ましくは嚥下しやすい錠剤の形状をしていることが好ましい。
【0038】
化合物とともに錠剤を形成するための充填剤、粘結剤としては公知のもの、例えばオリゴ糖等を使用することが出来る。錠剤の直径は2~10mm、厚さは1~5mmの範囲にあることが好ましい。本発明の気分障害又は感情障害の治療薬は、他の治療薬と混合されていてもよい。
【0039】
固形剤には通常用いられる種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、安定剤、界面活性剤、可溶化剤、可塑剤、甘味剤、抗酸化剤、着香剤、着色剤、保存剤、無機充填剤等を挙げることができる。
【0040】
界面活性剤としては、高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アシルN-メチルタウリン塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、N-アシルアミノ酸塩等のアニオン界面活性剤;塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等のカチオン界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシ-N-ヒドロキシイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレン型、多価アルコールエステル型、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体等の非イオン界面活性剤があるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
嚥下性等の改良等の目的のため配合される無機充填剤としては、例えば、タルク、マイカ、二酸化チタン等を挙げることができる。
【0042】
安定剤としては、例えば、アジピン酸、アスコルビン酸等を挙げることができる。可溶化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリルアルコール等の界面活性剤、アスパラギン、アルギニン等を挙げることができる。甘味剤として、アスパルテーム、アマチャ、カンソウ等、ウイキョウ等を挙げることができる。
【0043】
懸濁化剤としては、カルボキシビニルポリマー等を、抗酸化剤としては、アスコルビン酸等を、着香剤としては、シュガーフレーバー等を、pH調整剤としてはクエン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0044】
本発明による気分障害又は感情障害の治療薬は、通常1回1~40mg、好ましくは10mg~20mg、1日3回までの範囲で体内に投与される。
【0045】
以下の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0046】
GIRKチャネル抑制作用をもつ中枢性鎮咳薬(チペピジン)の抗うつ作用
(1)材料
実験動物として、Wistar系ラット 190~230gの雄を用いた。実験動物は、透明ケージに木製のチップを敷く室温23±1℃ 明暗サイクル8:00照灯 20:00消灯、水道水と飼料[クレアCE-2]は自由に摂取させる。実験の5日前から飼育(飼育中は1日1回ハンドリング)した。実験器具としては、透明ケージ(41×25×15cm)、アクリル製シリンダー(高さ40cm 直径 20cm)、不透明スクリーン(板)、26G×1/2(0.45×13mm) 注射針 [TERUMO NEEDLE]、保温装置[ICサーモスタットSX-003]、デジタルカメラを用いた。実験薬物として、クエン酸チペピジン(田辺三菱株式会社)を生理食塩水に溶解して用いた。
【0047】
(2)方法
[1]プレテスト(Day1)
2つのシリンダーの間は不透明なスクリーンでもって仕切っておいた(実験室の電灯は白灯)。まず、二つの水(25±1℃)の入ったシリンダー内に優しくいれて、20分間待った(Habituation test)。このときに無動時間は測定しなかった。この操作は、実験シチュエーションに慣れさせ、安定したの無動時間を得るためにおこなった。次いで、20分後シリンダーからラットを取り出しタオルで拭いて、30分間乾かした。乾燥から1時間後に最初のグループに生理食塩水またはチペピジン(10,20,40mg/kg) を腹腔内投与(1回目の投与)しホームケージへ戻した。
【0048】
[2]テスト (Day2)
テストの5時間前に生理食塩水もしくは、チペピジンを腹腔内に投与した(2回目の投与)。次いで、テストの30分前に生理食塩水もしくはチペピジンを腹腔内に投与した(最終投与)。次いで、それぞれのグループのラットをスクリーンで仕切られた二つのシリンダーにいれ、5分間行動を観察し、5分間の無動時間(immobility)、壁よじ登り行動(climbing)を測定した。このとき、水面へ頭を維持するための行動(足を少しバタバタするなど)の時間は無動時間として測定した。
【0049】
(3)結果(図1を参照)
非麻薬性中枢性鎮咳薬であるチペピジン(10,20,40mg/kg)は、対照群と比較すると、濃度依存的に無動時間を有意に短縮させた。また、壁よじ登り行動はチペピジン(40mg/kg)において有意に起こさせた。チペピジン(20mg/kg)では増加傾向であったが有意な差は無かった。
【0050】
一方、非麻薬性中枢性鎮咳薬であるクロペラスチン(40mg/kg)は対照群と比較すると有意に無動時間を短縮させた。壁よじ登り行動についてはクロペラスチン(40mg/kg)は増加傾向であったが、有意な差は無かった。
【実施例2】
【0051】
GIRKチャネル抑制作用をもつ中枢性鎮咳薬(クロぺラチン)の治療抵抗性うつ病モデルに対する効果
(1)実験材料
実験動物として、Wistar系ラット 150g~230gの雄を用いた。実験動物は、木製チップを敷いた透明ケージで飼育した(1ケージ当たり3匹)。室温23±1℃、明暗サイクル8:00照灯~20:00消灯の環境下で、水道水と飼料[クレア CE-2]は自由に摂取させた。実験器具として、透明ケージ(41×25×15cm)、アクリル製シリンダー(高さ40cm、直径20cm)、不透明スクリーン(仕切り板)、注射針26G×1/2 (0.45×13mm) [TERUMO NEEDLE]、保温装置 [ICサーモスタット SX-003]及びデジタルカメラを用いた。実験薬物として、塩酸イミプラミン [SIGMA]、塩酸クロペラスチン[SIGMA-aldrich]、ACTH-(1-24)-zinc (コートロシンZ注) [第一三共]を用いた。塩酸イミプラミンと塩酸クロペラスチンは生理食塩水に溶解させ、ラットに4 ml/kgとなるように腹腔内投与した。投与は強制水泳法のプロトコールに従い、本試験の23,5,0.5時間前に計3回行った。ACTH (コートロシンZ注)は1日1回7日間、AM9:00~10:00の間に、ラット1匹当たり100μg(容量0.2ml)を頚部皮下投与した。ただし、最終投与日は強制水泳のプレテスト(慣れテスト)終了後に投与した。
【0052】
(2)実験方法
5~6週齢(約150g)のラットを搬入後、翌日より5~6日間飼育し、1日1回ハンドリングを行った。ハンドリング期間終了後から7日間ACTHの皮下投与を行い、治療抵抗性うつ病モデル動物を作成した。最終投与日に強制水泳のプレテスト(慣れテスト)を行い、その翌日に本試験を行った。
【0053】
強制水泳法は下記の方法で実施した。
[1]プレテスト日
2つのシリンダーに深さ20cmまで水を入れ、保温装置で水温を25±1℃に保った。2つのシリンダーは不透明スクリーンにより仕切った。ラットを水の入ったシリンダー内に入れ(1つのシリンダーに1匹)、13分間泳がせた(プレテスト)。このとき、無動時間は測定しなかった。この操作は実験シチュエーションに慣れさせ、本試験時により安定した無動時間を得るために行った。プレテスト後、シリンダーからラットを取り出し、タオルで拭いてチップを豊富に敷いたケージに入れ30分間乾かした。乾燥後、ACTHの皮下投与を行った。ACTH投与の1時間後、生理食塩水、塩酸イミプラミン(10mg/kg)または塩酸クロペラスチン(10,20,40mg/kg)を腹腔内に投与し(1回目の投与)、ホームケージへ戻した。
【0054】
[2]本試験日
本試験の5時間前に生理食塩水、塩酸イミプラミン、または塩酸クロペラスチンを腹腔内投与した(2回目の投与)。本試験の0.5時間前に生理食塩水、塩酸イミプラミン、または塩酸クロペラスチンを腹腔内投与した(3回目の投与)。3回目の投与の0.5時間後、ラットをシリンダー内に入れ、6分間、ラットの行動をデジタルカメラにより撮影した。6分間の測定後、ラットをシリンダーから取り出し、本試験終了とした。解析として、撮影した本試験6分間中の無動時間(immobility)を測定した。
【0055】
(3)結果(図2を参照)
治療抵抗性うつ病モデル動物において、イミプラミン投与では無動時間に変化は無かったが、クロペラスチン投与は用量依存的に無動時間の短縮を示した。
【実施例3】
【0056】
GIRKチャネル抑制作用をもつ中枢性鎮咳薬の脳内セロトニンおよびドパミンレベルに対する増加作用
(1)実験材料
実験動物として、Wistar系ラット 260~300gの雄を用いた。実験薬物として、塩酸クロペラスチン〔SIGMA〕を用いた。
【0057】
(2)実験方法
ガイドカニューレの埋め込み手術および静脈内投与経路作成は次の方法で行った。ラットをペントバルビタールナトリウム(50 mg/kg)の腹腔内投与による麻酔後、脳定位固定装置(SR-5N,NARISHIGE) に固定した。頭部の毛を刈り、ヒビテンで消毒を行った後、頭蓋を露出させ、Paxinos and Watsonの脳地図に従って歯科用ドリル(LABO 8N,YOSHIDA)でBregmaから吻側に3.2mm、側方に0.8mmの位置に2~3mm四方の孔をあけ、硬膜を除いた。ガイドカニューレ(AG-4,Eicom)の刺入はパルスモーター式マイクロマニュピレーター(MO-81,NARISHIGE)を用いて行い、Bregmaから吻側に3.2mm、側方に0.8mm、脳組織の表面より下方に1.0mmの位置に刺入した。アロンアルファを頭蓋に塗り乾燥後、歯科用セメント(ジーシーユニファストII,GC)でガイドカニューレを固定した。ガイドカニューレの埋め込み手術後、ラットの左頚静脈にカテーテル(Intramedic PE-10,Becton Dickinson)を挿入し、静脈内に薬物の投与経路を作成した。
【0058】
脳内セロトニン(5-HT)およびドパミン(DA)量の測定として、ガイドカニューレの設置後4~6日目に、マイクロダイアリシス法とHPLC法を用いて脳内の5-HT・DA量の測定を行った。なお、マイクロダイアリシス法とHPLC法の実験条件は以下に示す。
【0059】
[1]マイクロダイアリシス法
リンガー液(147mM Na+,4mM K+,2.3mM Ca2+,155.6mM Cl-)は、マイクロシリンジポンプ(ESP-32,Eicom)を用いて分速2mL で還流した。マイクロダイアリシスのサンプルは6分間分(12mL)ごとにオートインジェクタ(EAS-20,Eicom)を用いて、HPLCのカラムに打ち込みを行った。
【0060】
[2]HPLC法
分析には微量生体試料分析システムHTEC-500 (Eicom)を用いた。分離カラムにはPP-ODSカラム(Eicom)を用いた。移動相は99% 0.1%りん酸緩衝液(pH 6.0)、1% メタノール、500mg/L デカンスルホン酸ナトリウム(SDS)、50mg/L EDTA・2Naの組成のものを用いた。移動相流速は500mL/minとした。作用電極には、グラファイト電極(WE-3G,Eicom)、参照電極には銀/塩化銀(RE-100,Eicom)を用い、設定加電圧は400mVとした。
【0061】
実験開始時に、プローブ(A-I-4-03,Eicom)を挿入し、5-HTおよびDA量が安定した後、6分おきに測定した計10回分の5-HTおよびDA量の平均値をそれぞれのBasalレベルとした。Basalレベルに対する薬物投与後の5-HTおよびDA量の変化を調べた。なお、薬物の投与量は2.5 mg/kg、5mg/kgおよび7.5mg/kgとした。薬物は0.1mLの生理食塩水に溶解し0.1mL/minの速度で静脈内投与した。
【0062】
(3)結果(図3及び図4を参照)
クロペラスチン2.5 mg/kg、5 mg/kg、7.5 mg/kg静脈内投与によってBasalレベルに対して脳内5-HT量が119%、147%、197%、DA量が168%、210%、260%と濃度依存的に増加した。なお、クロペラスチン投与1時間前に生理食塩水を静脈内投与し、5-HT量およびDA量に変化がないことを確認した 。
【0063】
なお、実施例及び図中の記号として、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)は高速液体クロマトグラフィー、IMPはイミプラミン、DAはドパミン、5-HTはセロトニン、CPはクロペラスチン、i.pは腹腔内投与、を示す。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、チペピジン投与によるラットの無動時間及び壁よじ登り行動への影響を測定した結果を示す。
【図2】図2は、治療抵抗性うつ病モデルにおける、クロペラスチンと従来の抗うつ薬であるイミプラミンとの無動時間比較評価結果を示す。
【図3】図3は、クロペラスチン投与によるDA量及び5-HT量の経時変化を示す。
【図4】図4は、クロペラスチン投与によるDA量及び5-HT量の濃度依存的増加を評価した結果を示す。
【図5】図5は、パッチクランプ法で用いる装置の一例を示した概略図である。
【図6】図6は、図5のパッチクランプ法で用いる装置の要部拡大図である。
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
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