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Specification :(In Japanese)抗腫瘍細胞剤、薬学的組成物および診断剤

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)特許公報(B2)
Patent Number P4753114
Publication number P2006-182747A
Date of registration Jun 3, 2011
Date of issue Aug 24, 2011
Date of publication of application Jul 13, 2006
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)抗腫瘍細胞剤、薬学的組成物および診断剤
IPC (International Patent Classification) A61K  31/4741      (2006.01)
A61K  36/75        (2006.01)
A61K  36/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
C07D 491/056       (2006.01)
A23L   1/30        (2006.01)
G01N  33/48        (2006.01)
FI (File Index) A61K 31/4741
A61K 35/78 K
A61K 35/78 X
A61P 35/00
C07D 491/056
A23L 1/30 B
G01N 33/48 P
Number of claims or invention 3
Total pages 20
Application Number P2004-381320
Date of filing Dec 28, 2004
Date of request for substantive examination Mar 16, 2007
Patentee, or owner of utility model right (In Japanese)【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
【識別番号】595102178
【氏名又は名称】沖縄県
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】屋 宏典
【氏名】岩崎 公典
【氏名】鎌田 靖弘
【氏名】豊川 哲也
【氏名】吉田 安彦
【氏名】花城 薫
Representative (In Japanese)【識別番号】100080034、【弁理士】、【氏名又は名称】原 謙三
【識別番号】100113701、【弁理士】、【氏名又は名称】木島 隆一
【識別番号】100116241、【弁理士】、【氏名又は名称】金子 一郎
Examiner (In Japanese)【審査官】鳥居 福代
Document or reference (In Japanese)特開2004-284961(JP,A)
特開昭58-501074(JP,A)
SHARMA,P.N. et al.,Studies in medicinal plants: Part IV. Alkaloids and coumarins from Toddalia asiatica Lamk,Indian Journal of Chemistry, Section B: Organic Chemistry Including Medicinal Chemistry,1979年,Vol.17B, No.3,p.299-300
岩崎公典 他,サルカケミカン由来の抗腫瘍活性物質の特性,日本農芸化学会大会講演要旨集,2004年 3月 5日,p.279
岩崎公典 他,サラカチ(Toddalia asiatica Lamk)由来の選択的細胞毒性成分の特性,日本農芸化学会大会講演要旨集,2003年,p.118
Field of search A61K 31/4741
A61K 36/75
A61P 35/00
A23L 1/30
C07D 491/056
G01N 33/48
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
次式1
【化1】
JP0004753114B2_000007t.gif
で表される化合物を有効成分として含有し、COLO-201(大腸癌細胞)、MIA-PaCa2(膵臓癌細胞)、A431(類上皮腫細胞)、KATOIII(胃癌細胞)、またはSKBR-3(乳癌細胞)に対して細胞毒性活性を有することを特徴とする抗腫瘍細胞剤。
【請求項2】
次式1
【化2】
JP0004753114B2_000008t.gif
で表される化合物を有効成分として含有する、COLO-201(大腸癌細胞)、MIA-PaCa2(膵臓癌細胞)、A431(類上皮腫細胞)、KATOIII(胃癌細胞)、またはSKBR-3(乳癌細胞)を処置するための薬学的組成物。
【請求項3】
次式1
【化3】
JP0004753114B2_000009t.gif
で表される化合物を含有し、COLO-201(大腸癌細胞)、MIA-PaCa2(膵臓癌細胞)、A431(類上皮腫細胞)、KATOIII(胃癌細胞)、またはSKBR-3(乳癌細胞)に蓄積することを特徴とする腫瘍の診断剤。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍細胞剤薬学的組成物および診断剤に関するものであり、特にその有効成分が腫瘍細胞選択的な細胞毒性作用を有する抗腫瘍細胞剤、健康食品、薬学的組成物および診断剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、我が国での肺癌の死亡率は、1950年以降男女とも増加の一途にあり、1998年では肺癌死亡数は年間50,871人、全悪性腫瘍死の約18%である。そのような中、肺癌に対する抗癌剤を用いた化学療法も行われている。しかしながら肺癌の中で最も主流になっている非小細胞肺癌(扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌等)は、抗癌剤が効きにくく、標準的な化学療法はない。2~3の抗癌剤の併用療法も行われてはいるが、一般に抗癌剤には、副作用の強いものが多く、長期間にわたる使用には適していない。かかる問題は肺癌に限らず他の腫瘍においても同様に存在する。すなわち、抗腫瘍剤は本来腫瘍細胞に対し、選択的に作用し、その分裂・増殖を阻害することが望ましいが、現在のところ正常細胞にも作用し毒性を示すものが多い。
【0003】
かかる状況の下、植物からの抽出物等天然物由来物質は安全性の面に優れるとの観点から、植物由来で腫瘍細胞に毒性を有する物質が種々提案されている(例えば、特許文献1、2等参照。)。特許文献1では、レモン果実由来のアポトーシス誘導剤が、特許文献2では、オウゴンやオウバク等の薬用植物由来の抗腫瘍作用剤および皮膚外用剤並びに健康食品が報告されている。しかしながら、これらの報告においては、抗腫瘍剤の正常細胞に対する毒性評価に関する開示がなされていない。そのため、開示されている抗腫瘍剤による腫瘍治療の際に副作用が伴う可能性は排除されていない。一方、正常細胞に対する毒性評価の開示がなされている抗腫瘍剤として、植物由来のポリフェノール類を有効成分とするアポトーシス誘導性抗白血病細胞剤が報告されている(例えば、特許文献3等参照。)。特許文献3では、実施例において、癌細胞には増殖阻害活性を示し正常細胞に対しては顕著な賦活化活性を示した選択的細胞毒性についての有効性が証明されている。しかしこの抗白血病細胞剤は、白血病細胞に対してのみ、その有効性が開示されており、その他の腫瘍に対する選択的細胞毒性を有する抗腫瘍剤についての開示はなされていない。
【0004】
本発明者らは、腫瘍選択的な細胞毒性を有する抗腫瘍剤を探求し、サルカケミカン(Toddalia asiatica Lamk、沖縄における俗称「サラカチ」)抽出物が、ヒト腫瘍細胞において正常細胞における場合と比較して顕著に強い細胞毒性を有することを見出している(例えば、非特許文献1、2参照)。
【0005】
ところで、アルカロイドは植物体中に存在する多種多様な含窒素塩基性物質であり、今日まで多数のアルカロイドが得られている。これらのアルカロイドには、モルフィン(鎮痛剤)、エフェドリン(喘息薬)、コカイン(局所麻酔剤)、エメチン(アメーバ赤痢薬)等医薬として重要なものがある反面、ストリキニン、アコニチンのような猛毒性のものやモルフィン等の麻薬も含まれている。このようなアルカロイドが、抗腫瘍作用を有するとの報告もいくつかなされている(例えば、非特許文献3等参照。)。非特許文献3では、アフリカ原産のサンショウに類するミカン科植物であるFagara Macrophyllaから抽出されたアルカロイドがマウス白血病に対する抗腫瘍作用を有することが報告されている。また、同文献では、抗腫瘍活性を有するアルカロイドは、以下の化学式に示す、ニチジンクロライド(a)、6-オキシニチジン(b)、および合成物である6-メトキシ-5,6-ジヒドロニチジン(c)であり、5,6-ジヒドロニチジン(12,13-ジヒドロ-2,3-ジメトキシ-12-メチル〔1,3〕ベンゾジオキソロ〔5,6-C〕フェナントリジン)(d)は、マウス白血病に対し、抗腫瘍作用を有さないことが報告されている。
【0006】
【化1】
JP0004753114B2_000002t.gif

【特許文献1】特開2001-199881号公報(平成13年7月24日公開)
【特許文献2】特開2002-53479号公報(平成14年2月19日公開)
【特許文献3】特開2001-226276号公報(平成13年8月21日公開)
【非特許文献1】屋宏典、外6名、「サラカチ(Toddalia asiatica Lamk)由来の選択的細胞毒性成分の特性」、日本農芸化学会大会講演要旨集118、2003年3月5日
【非特許文献2】屋宏典、外7名、「サルカケミカン由来の抗腫瘍活性物質の特性」、日本農芸化学会大会講演要旨集279、2004年3月5日
【非特許文献3】Monroe E.Wall, M.C.Wani, Harold Taylor, J.Nat.Prod., 50,1095(1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来の抗腫瘍剤は、正常細胞にも作用し毒性を示すものが多い。そのため、正常細胞には細胞毒性作用を有さず腫瘍細胞にのみ選択的に強い細胞毒性作用を有する抗腫瘍細胞剤の開発が切に望まれている。本発明者らは、サルカケミカン抽出物が、ヒト腫瘍細胞において正常細胞における場合と比較して顕著に強い細胞毒性を有することを見出している。しかし、サルカケミカン抽出物から細胞毒性作用を有する活性物質を精製することは容易ではなく、かかる活性物質の化学構造はいまだ解析されていない。
【0008】
例えば、上記非特許文献1、2には、サルカケミカン抽出物から細胞毒性作用を有する活性物質を精製する試みについて報告されているが、精製の結果が好ましくなく、報告時点では活性物質の化学構造を特定するまでには至っていなかった。
【0009】
そこで、上記活性物質を化学構造を特定できる程度まで精製し、当該活性物質の化学構造を特定するとともに、さらなる詳細な解析を行い、その成果を活用する技術の開発が強く望まれていた。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、その有効成分が正常細胞には細胞毒性作用を有さず腫瘍細胞にのみ選択的に強い細胞毒性作用を有する抗腫瘍細胞剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、サルカケミカン抽出物から、ヒト腫瘍細胞において正常細胞における場合と比較して顕著に強い細胞毒性を有する活性物質を精製し単一物質を得ることに成功し、この物質が以下の化学式で表される12,13-ジヒドロ-2,3-ジメトキシ-12-メチル〔1,3〕ベンゾジオキソロ〔5,6-C〕フェナントリジン("(1,3)Benzodioxolo(5,6-c)phenanthridine, 12,13-dihydro-2,3-dimethoxy-12-methyl-"、以下、本明細書において、ジヒドロニチジンと略称する。)であることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明にかかる抗腫瘍細胞剤は、上記課題を解決するために、次式1
【0013】
【化2】
JP0004753114B2_000003t.gif

【0014】
で表される化合物を有効成分として含有することを特徴としている。
【0015】
また、本発明にかかる健康食品は、上記課題を解決するために、上記式1で表される化合物を有効成分として含有することを特徴としている。
【0016】
また、本発明にかかる腫瘍を処置するための薬学的組成物は、上記課題を解決するために、上記式1で表される化合物を有効成分として含有することを特徴としている。
【0017】
また、本発明者らは、ジヒドロニチジンを加えた細胞を蛍光顕微鏡で観察したところ、特定の腫瘍細胞において、ジヒドロニチジンの強い蓄積が起こり蛍光が観察されることを見出した。ジヒドロニチジンのこの性質を利用すると、ジヒドロニチジンは腫瘍の診断剤に用いることができる。
【0018】
すなわち、本発明にかかる腫瘍の診断剤は、上記課題を解決するために、上記式1で表される化合物を含有することを特徴としている。
【0019】
また、本発明の抗腫瘍細胞剤、健康食品、および診断剤において、上記腫瘍は肺癌細胞、大腸癌細胞、膵臓癌細胞、類上皮腫細胞、胃癌細胞、または乳癌細胞であることが好ましく、肺胞上皮癌(腺癌)細胞であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる抗腫瘍細胞剤、健康食品および薬学的組成物は、以上のように、ジヒドロニチジンを有効成分として含有するので、正常細胞には細胞毒性を示さず、肺癌をはじめとする腫瘍細胞に特異的に細胞毒性を示す選択的細胞毒性作用を有する。
【0021】
また、本発明にかかる抗腫瘍細胞剤、健康食品および薬学的組成物に有効成分として含有されるジヒドロニチジンは、臨床における化学療法で現在用いられているカンプトテシン(Camptothecin)と比較しても非常に即効性、腫瘍選択性に優れる。それゆえ、従来の腫瘍に対する化学療法では、副作用が強く長期間にわたる使用には適していなかったが、本発明により副作用の少ない腫瘍の治療または予防が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、腫瘍とは、ヒトや動物に発生し、自立性を有する過剰な新生細胞群とそれを支持する組織とからなるものであれば特に限定されるものではなく、悪性腫瘍および良性腫瘍を含む概念である。また、腫瘍には塊を形成するものに限られず、白血病のように血中で増殖するものや、臓器にびまん性に浸潤して腫瘍塊を形成しないものも含まれる。もちろん本発明にかかる抗腫瘍細胞剤は悪性腫瘍に用いることにより、治癒困難な病気を治療し、または進行を遅らせるという大きな効果が得られるものであるが、その増殖を抑制することに利益がある場合には良性腫瘍にも好適に用いることができる。
【0023】
また、本明細書において、癌とは悪性腫瘍のうち上皮性悪性腫瘍に限らず、非上皮性悪性腫瘍すなわち肉腫をも含む概念である。
【0024】
本発明にかかる抗腫瘍細胞剤は、以下の式1
【0025】
【化3】
JP0004753114B2_000004t.gif

【0026】
で表されるジヒドロニチジンを有効成分として含有するものであれば特に限定されるものではない。
【0027】
ジヒドロニチジンは、腫瘍細胞において正常細胞における場合と比較して強い細胞毒性を有するものである。これにより、抗腫瘍細胞剤を用いて、腫瘍の治療を行う際に、副作用を少なくすることが可能となる。
【0028】
有効成分であるジヒドロニチジンは、植物等の天然物から抽出することにより得ることができるが、化学的に合成することによって得ることもできる。
【0029】
植物から、上記ジヒドロニチジンを抽出する方法は、特に限定されるものではなく、各種植物成分の抽出に通常用いられる手段を用いることができる。かかる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば植物中に含まれる他の成分と、ジヒドロニチジンとの有機溶媒に対する親和性の差を利用する方法、溶解度の差を利用する方法、各種樹脂に対する吸着親和力の差を利用する方法等を、単独で、または組み合わせて、あるいは反復して用いることができる。具体的には、イオン交換クロマトグラフィー、非イオン性吸着樹脂を用いたクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、活性炭、アルミナ、シリカゲル等の吸着剤によるクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の各種液体クロマトグラフィー、あるいは、結晶化、減圧濃縮、凍結乾燥等の手段を、それぞれ単独で、または適宜組み合わせて、或いは反復して用いることができる。また、植物は抽出効率の観点から、抽出前に予め凍結乾燥したのち粉砕しておくことが好ましい。
【0030】
また、ジヒドロニチジンは、サルカケミカンに特に多く含まれるが、広く他の植物においても存在するアルカロイドであると考えられる。したがって、本発明で使用されるジヒドロニチジンは、かかるジヒドロニチジンを含む植物から抽出および精製して得ることができる。かかる植物としては、特に限定されるものではないが、例えばミカン科の植物を挙げることができ、具体的には、サルカケミカン、温州ミカン、夏ミカン、ハッサク、イヨカン、ダイダイ、スダチ、カボス、ユズ、レモン、ライム、オレンジ、キンカン、カラタチ、ミヤマシキミ、ヘンルーダ、サンショウ等を挙げることができる。
【0031】
本発明にかかる抗腫瘍細胞剤は、実験用途等に用いられる他、腫瘍細胞選択的に細胞毒性作用を示すので、腫瘍の治療、予防、改善のために好適に用いることができる。本発明の抗腫瘍細胞剤を腫瘍の治療、予防、改善のために用いる場合には、本発明の抗腫瘍細胞剤の投与形態は、経口的に投与するものであっても、非経口的に、静脈内、腹腔内、筋肉内、経皮または皮下に投与するものであってもよい。かかる抗腫瘍細胞剤は、選択される投与方法に応じて、ジヒドロニチジンまたはその薬学的に許容しうる有機酸または無機酸との付加塩を、薬学的に許容しうる担体とともに含有しうる。
【0032】
経口的に投与する場合、上記抗腫瘍細胞剤は、例えば、粉剤、顆粒剤、錠剤、リポソーム、ゼラチンカプセル等の固形製剤や、シロップ剤等の液状製剤とすることができる。また、非経口的に投与する場合、上記抗腫瘍細胞剤は、例えば、注射剤、直腸投与剤、皮膚外用剤、吸入剤等とすることができる。
【0033】
固形製剤は、上記担体として、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、矯味矯臭剤等を用いて、通常用いられる方法で製造することができる。ここで、上記賦形剤、結合剤および崩壊剤としては、通常用いられるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、乳糖、白糖等の糖誘導体;デンプン;デキストリン;結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩;炭酸カルシウム等の炭酸塩等を挙げることができる。また、上記滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩、ワックス、タルク等を挙げることができる。また、安定剤、矯味矯臭剤としても、通常用いられるものであれば特に限定されるものではない。
【0034】
液状製剤は、上記担体として、例えば、水;グリセロール、グリコール、ポリエチレングリコール等の有機溶媒;これらと水との混合物等を用いて通常用いられる方法で製造することができる。また、液状製剤は、さらに、溶解補助剤、緩衝剤、等張化剤、安定剤等を含んでいてもよい。
【0035】
上記抗腫瘍細胞剤は、消化されないで服用者の小腸に送達されるのに十分な時間、服用者の胃の中で胃液または酵素の作用から保護することができる物質で被覆してもよい。また、上記抗腫瘍細胞剤は、通常用いられる技術により、徐放性製剤とすることもできる。
【0036】
また、腫瘍の治療、予防、改善に用いられる場合、本発明の抗腫瘍細胞剤の投与量は、投与方法、服用者の年齢および体重、服用者の状態等によって異なるが、有効成分であるジヒドロニチジンの量が1日当り下限として、40mg/m2であることが好ましく、50mg/m2であることがより好ましい。また、1日当り上限として、150mg/m2であることが好ましく、100mg/m2であることがより好ましい。
【0037】
ジヒドロニチジンおよびこれを有効成分として含有する本発明にかかる抗腫瘍細胞剤が、正常細胞における場合と比較して強い細胞毒性を示す腫瘍細胞としては、例えば、肺(扁平上皮癌を除く)、食道、胃、腸、小腸、結腸、大腸、口腔、咽頭、喉頭、乳房、子宮、卵巣、前立腺、精巣、膀胱、腎臓、肝臓、膵臓、骨、結合組織、皮膚、眼、脳、および中枢神経系の癌;甲状腺の癌;白血病;リンパ腫;多発性黒色腫等の細胞を挙げることができる。また、より強い選択的細胞毒性を示す腫瘍細胞としては、肺癌細胞、大腸癌細胞、膵臓癌細胞、類上皮腫細胞、胃癌細胞、乳癌細胞等を挙げることができる。また、さらに強い選択的細胞毒性を示す腫瘍細胞としては、例えば、肺胞上皮癌(腺癌)細胞を挙げることができる。
【0038】
また、本発明にかかる抗腫瘍細胞剤における有効成分であるジヒドロニチジンの、細胞毒性は、免疫染色解析、フローサイトメーターによる解析、酵素化学的解析、遺伝子発現量解析の結果より、アポトーシス誘導に起因するものであると考えられる。ここで、アポトーシスとは、修復することが困難な障害をもたらされた細胞が、そのまま存続することが不利である場合、その細胞が一連のプログラムによって自己消化する生命現象のことをいい、アポトーシス誘導型の抗腫瘍細胞剤を用いれば、腫瘍細胞が選択的に自己消化するため、正常細胞に対する影響を少なくすることが可能となる。
【0039】
また、ジヒドロニチジンを食品に添加することにより、腫瘍の治療、予防または改善を目的とした健康食品として用いることができる。本発明にかかる健康食品は、本発明の抗腫瘍細胞剤を含有する食品であれば、特に限定されるものではなく、ジヒドロニチジンを既存の食品に一定の割合で配合することにより製造することができる。本発明の健康食品は特に限定されるものではないが、例えば、飲料などの液状物;あめ、タブレット等の固形状物;ゼリー、グミ等の半固形状物等の種々の形態の食品として提供されうる。
【0040】
本発明にかかる健康食品にはジヒドロニチジンを有効成分として含有する食品添加物も含まれる。かかる食品添加物は、乳製品、油脂製品、調味料、菓子、ジュース、清涼飲料等に添加して用いることができる。
【0041】
ジヒドロニチジンは、腫瘍細胞に対し選択的な細胞毒性を示すのみならず、正常細胞には蓄積しないが、一定の腫瘍細胞は蓄積し、適当な波長の光を照射すると蛍光を発することが、蛍光顕微鏡を用いた観察から初めて見出された。本発明にかかる診断剤は、ジヒドロニチジンのかかる性質を利用するものであり、上記診断剤は、ジヒドロニチジンを含有していれば特に限定されるものではない。
【0042】
腫瘍の診断は、上記診断剤に含まれるジヒドロニチジンの腫瘍細胞への蓄積による蛍光の発生を観察することにより行うことができる。蛍光の発生が観察される場合は、ジヒドロニチジンが腫瘍細胞に蓄積していることが示されるのであるから、腫瘍細胞が存在すると判断される。また、蛍光の発生が観察されない場合は、腫瘍細胞は存在しないと判断される。これにより、腫瘍の診断を容易に、高い信頼性で行うことが可能となる。
【0043】
後述する実施例に示すように、ジヒドロニチジンは、この物質が細胞毒性を示すA549(肺胞上皮癌(腺癌)細胞)には強い蓄積を示し、顕著な細胞毒性を示さない腫瘍細胞であるVMRC-LCP(肺扁平上皮癌細胞)や正常細胞(WI-38(肺線維芽細胞)、OUMS-36T-2F(正常繊維芽細胞(hTRT gene))には蓄積しないとが見出されている。このことから、ジヒドロニチジンは、この物質が細胞毒性を示す腫瘍細胞に選択的に蓄積すると考えられる。従って、本発明の診断剤により、診断が可能な腫瘍は、上述した、ジヒドロニチジンおよびこれを有効成分として含有する本発明にかかる抗腫瘍細胞剤が正常細胞における場合と比較して強い細胞毒性を示す腫瘍細胞として例示したものと同様である。
【0044】
また、本発明の診断剤は、ヒトまたは動物に投与すると、腫瘍細胞に選択的に取り込まれ、これに適当な波長の光を照射することにより、診断剤中のジヒドロニチジンは蛍光を発生する。このとき発生する蛍光を観察して腫瘍による病変部位を診断(検出)することができる。このように、ヒトまたは動物に取り込ませて、腫瘍の診断を行う場合に用いる診断剤も、ジヒドロニチジンを含有していれば特に限定されるものではないが、上述した抗腫瘍細胞剤の説明で、経口的にまたは非経口的に投与するための製剤として例示した製剤を好適に用いることができる。かかる場合、本発明の抗腫瘍細胞剤は同時に腫瘍の診断剤として働くため、腫瘍の治療、予防、改善と、腫瘍の診断とを同時に行うことが可能となり、非常に有用である。
【0045】
本発明の診断剤は、波長360nm~430nm、より好ましくは波長398nmの光を照射することにより、蛍光を発生し、腫瘍の診断を好適に行うことができる。
【0046】
ジヒドロニチジンを含有する本発明にかかる薬学的組成物は、その有効成分が腫瘍細胞選択的な細胞毒性作用を有し、正常細胞に対して殆ど影響を与えないことから、腫瘍を治療するための薬学的組成物として好適に用いることができる。かかる薬学的組成物の投与方法、担体、製造方法、投与量については、抗腫瘍細胞剤のところで説明したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
【実施例】
【0047】
〔実施例1:ジヒドロニチジンの製造〕
本発明において有効成分として使用するジヒドロニチジンを以下の方法により製造した。まず、サルカケミカンの乾燥粉末100gをミルで粉砕し、2Lの50%エタノールを加え、室温で48時間撹拌した。その後抽出液を濾過し濾液を得た。得られた濾液を濃縮し、分配クロマトグラフィーに供した。溶媒として、ヘキサン、酢酸エチル、水飽和1-ブタノール、水を用いた。分画したフラクションはMTSアッセイにより、A549(肺胞上皮癌(腺癌)細胞)および正常細胞としてのWI-38(肺線維芽細胞)に対する細胞毒性活性を測定し、腫瘍細胞選択的に細胞毒性活性を示す活性画分を回収した。なお、MTSアッセイには、Promega社のCellTiter 96(登録商標) AQueous Non-Radioactive Cell Proliferation Assay を用いた。まず、A549およびWI-38を各1×103cells/100μL of medium/wellの培養条件で、得られたフラクションの濃縮物(50% EtOHに溶解または懸濁)を1μL未満で添加し、24時間、37℃、CO25v/v%を含む大気中で培養した。その後20μL/wellのMTS溶液(Kitのプロトコールに従って作成)を添加し、0-2時間の間に上昇した490nmの吸光度を測定した。細胞毒性活性はサンプル未処理の細胞の生存数を1とした場合の割合で評価し、当該割合が0.2以下のとき細胞毒性活性であるとした。当該割合が、WI-38で0.8以上、且つ、A549で0.2以下の画分を、目的の腫瘍細胞選択的に細胞毒性活性を示す活性画分として回収した。回収した活性画分をクロロホルム:メタノール=2:1の溶液に懸濁した。なお、このとき、不溶成分も懸濁して使用した。得られた懸濁液を、クロロホルム:メタノール=2:1の溶液で平衡化したシリカゲルカラム(オープンカラム)にて分画した。分画したフラクションについて、上述した方法と同様にして、MTSアッセイによりA549およびWI-38に対する細胞毒性活性を測定し、腫瘍細胞選択的に細胞毒性活性を示す活性画分を回収した。回収した活性画分をクロロホルム:メタノール=9:1の溶液に再溶解した。このとき、不溶性成分は存在しなかった。得られた活性画分の溶液を、クロロホルム:メタノール=9:1の溶液で平衡化したシリカゲルカラム(オープンカラム)にて分画した。分画したフラクションについて、上述した方法と同様にして、MTSアッセイによりA549およびWI-38に対する細胞毒性活性を測定し、腫瘍細胞選択的に細胞毒性活性を示す活性画分を回収した。回収した活性画分を逆相カラム(ULTRA PACK ODS C18スタンダード 26x300mm ; YAMAZEN CORPORATION )により分画した(クロロホルム:メタノール=2:1、2ml/min)。分画したフラクションについて、上述した方法と同様にして、MTSアッセイによりA549およびWI-38に対する細胞毒性活性を測定し、腫瘍細胞選択的に細胞毒性活性を示す活性画分を回収し、シリカゲルカラム(ULTRA PACK シリカゲル 26x300mm ; YAMAZEN CORPORATION )により分画した。クロロホルム、アセトニトリル、アセトニトリル:メタノール=9:1の溶液、アセトニトリル:メタノール=2:1の溶液の順で順次溶出しフラクションコレクターにて回収した。活性の認められたアセトニトリル:メタノール=9:1画分をHPLC(Develosil ODS-UG column 4.6x250mm, メタノール:酢酸=99:1, 0.5ml/min)で確認した結果、図1に示すように、単一のピークを確認した。
【0048】
得られたアセトニトリル:メタノール=9:1画分を濃縮することにより、3mgの粉末を得た。得られた精製品をNMRにより分析した結果、ジヒドロニチジンであることが確認された。図2~図4に13C-NMRの分析結果を、図5に1H-NMRの分析結果を示す。
【0049】
また、得られたジヒドロニチジンについて蛍光スペクトルを測定した結果、図6に示すように、最大励起波長397nm、最大蛍光波長507nmであることが認められた。
【0050】
〔実施例2:種々の腫瘍細胞を用いた細胞毒性試験〕
上記実施例1で得られたジヒドロニチジンについて、腫瘍細胞として、A549(肺胞上皮癌(腺癌)細胞)、COLO-201(大腸癌細胞)、MIA-PaCa2(膵臓癌細胞)、A431(類上皮腫細胞)、KATOIII(胃癌細胞)、SKBR-3(乳癌細胞)の6種を、正常細胞としてWI-38(肺線維芽細胞)、OUMS-36(正常繊維芽細胞)、OUMS-36T-2F(正常繊維芽細胞(hTRT gene))の3種をそれぞれ用い、細胞毒性をMTSアッセイにより試験した。MTSアッセイには、Promega社のCellTiter 96(登録商標) AQueous Non-Radioactive Cell Proliferation Assay を用いた。
【0051】
まず、各細胞を1×103 cells/100μL of medium/wellの培養条件で、段階希釈した目的サンプル(ジヒドロニチジン)(50% EtOHに溶解または懸濁)を1μL未満で添加し、24時間、37℃、CO25v/v%を含む大気中で培養した。その後20μL/wellのMTS溶液(Kitのプロトコールに従って作成)を添加し、0-2時間の間に上昇した490nmの吸光度を測定した。
【0052】
種々のジヒドロニチジンの濃度において、サンプル未処理のコントロールの生存細胞数(吸光度)に対して、50%の増殖阻害を示すジヒドロニチジンの濃度(D50μg/mL)を外挿法により求めた。
【0053】
各細胞におけるD50の値を表1に示す。表1に示すように、ジヒドロニチジンは、A549(肺胞上皮癌(腺癌)細胞)に対して非常に高い細胞毒性を示し、正常組織由来細胞株(WI-38(肺線維芽細胞)、OUMS-36(正常繊維芽細胞)、OUMS-36T-2F(正常繊維芽細胞(hTRT gene))に対しては殆ど影響を与えないことが確認された。50%の増殖阻害をもたらすジヒドロニチジンの濃度は、A519では0.19μg/mLであり、正常細胞WI-38(肺線維芽細胞)と比較して実に1/290の濃度となっている。また、ジヒドロニチジンは、COLO-201(大腸癌細胞)、MIA-PaCa2(膵臓癌細胞)、A431(類上皮腫細胞)、KATOIII(胃癌細胞)、SKBR-3(乳癌細胞)等の他の腫瘍細胞においても強い細胞毒性を示すことが確認された。この結果から、ジヒドロニチジンは、正常細胞には毒性を示さず、腫瘍細胞にのみ特異的に毒性を示す選択的細胞毒性作用を有することが示された。
【0054】
【表1】
JP0004753114B2_000005t.gif

【0055】
また、図7(a)に示すように、ジヒドロニチジンの濃度に依存的な細胞増殖抑制が見られた。なお、図7(a)中、●はA549(肺胞上皮癌(腺癌)細胞)、○はWI-38(肺線維芽細胞)を示す。
【0056】
〔比較例1:VMRC-LCP(肺扁平上皮癌細胞)を用いた細胞毒性試験〕
腫瘍細胞としてVMRC-LCP(肺扁平上皮癌細胞)を用いた以外は、実施例2と同様にして細胞毒性試験を行った。その結果を表1に示す。表1に示すように、ジヒドロニチジンは、腫瘍細胞の中でもVMRC-LCP(肺扁平上皮癌細胞)に対しては殆ど細胞毒性を示さないことが確認された。
【0057】
〔実施例3:カンプトテシンとの比較における細胞毒性試験〕
実施例1と類似の細胞毒性試験を、ジヒドロニチジンおよび臨床において現在抗癌剤として用いられているカンプトテシンについて24時間と48時間との2種類の培養時間で行った。腫瘍細胞の濃度は5×103 cells/100μL of mediumであった。24時間での培養のときには、腫瘍細胞として、A549(肺胞上皮癌(腺癌)細胞)、VMRC-LCP(肺扁平上皮癌細胞)の2種を、正常細胞としてWI-38(肺線維芽細胞)、OUMS-36T-2F(正常繊維芽細胞(hTRT gene))の2種をそれぞれ用いた。また、48時間での培養のときは、腫瘍細胞として、A549(肺胞上皮癌(腺癌)細胞)を、正常細胞としてWI-38(肺線維芽細胞)をそれぞれ用いた。
【0058】
上述した条件以外は、実施例2と同様にして、MTTアッセイをおこない、D50を求めた。得られた結果を表2に示す。表2中「ND」は、50%の増殖阻害を示すような濃度は存在しない、すなわち、細胞毒性が認められないということを示している。
【0059】
【表2】
JP0004753114B2_000006t.gif

【0060】
表2に示すように、ジヒドロニチジンとカンプトテシンとを比較すると、24時間の反応時間では、ジヒドロニチジンは肺腺癌(A549)のみに、カンプトテシンは肺扁平上皮癌(VMRC-LCP)のみに細胞毒性が認められていることが判る。カンプトテシンを48時間反応させると、肺腺癌(A549)にも細胞毒性を示すようなるが、正常肺細胞(WI-38)にも細胞毒性が認められる。これに対して、ジヒドロニチジンにおいては48時間反応させても正常細胞には細胞毒性が認められていないことが確認された。このことから、ジヒドロニチジンはすでに臨床において用いられているカンプトテシンと比較しても、腫瘍選択性が高く、かつ、正常細胞に対する細胞毒性が殆どない優れた抗腫瘍細胞剤であるということができる。また、A549(肺胞上皮癌(腺癌)細胞)に着目すれば、表2に示すように、カンプトテシンがA549(肺胞上皮癌(腺癌)細胞)に対して毒性を示すのに48時間を要し、48時間後には正常細胞に対しても細胞毒性を示すのに対し、本発明で用いられるジヒドロニチジンは、24時間で腫瘍細胞のみを選択的に死滅させることができる。このように、ジヒドロニチジンはすでに臨床において用いられているカンプトテシンと比較しても、非常に即効性に優れ、また副作用も少ない優れた抗腫瘍細胞剤であるということができる。
【0061】
〔実施例4:免疫染色解析〕
本発明の抗腫瘍細胞剤の有効成分であるジヒドロニチジンによる細胞増殖抑制の機構を明らかにするために免疫染色による形態学的観察を行った。
【0062】
肺の正常細胞および腫瘍細胞のパネルとしてWI-38およびA549を用いて、各55×103 cells/100μL of medium/wellの培養条件で終濃度約1.5μg/mlのサンプルを10時間作用させた後、培地を捨て、PBS(-)で洗浄し、上清を除去した。市販の100x AnnexinV、100x PI(プロピヂウムイオダイド)溶液をAnnexinV buffer(試薬に添付)で100倍希釈したものを100μL加え、30分、on iceの後、PBS(-)で洗浄、蛍光顕微鏡で観察した。
【0063】
免疫染色解析の結果を図8に示す。図8(a)は、A549(肺胞上皮癌(腺癌)細胞)にジヒドロニチジンを加えたときの結果を、図8(b)はA549(肺胞上皮癌(腺癌)細胞)にジヒドロニチジンを加えていないときの結果を、図8(c)は正常細胞WI-38(肺線維芽細胞)にジヒドロニチジンを加えたときの結果を、図8(d)は、WI-38(肺線維芽細胞)にジヒドロニチジンを加えていないときの結果を示す。得られた結果より、腫瘍細胞で特異的にアポトーシスが誘導されている可能性が示唆された。
【0064】
次にアポトーシスのメディエーターであるカスパーゼ活性の測定を行った。カスパーゼ活性の測定は、Roche社のHomogeneous Caspases Assay、 Cat. No. 3 005 372 (100 tests on 96-well plates; 400 tests on 384-well plates)に従って行った。カスパーゼ活性の測定も、アポトーシスが誘導されている可能性を支持した。図7(b)に示すように、ジヒドロニチジンの影響で、A549(肺胞上皮癌(腺癌)細胞)に特異的なカスパーゼ活性上昇が認められた。この結果から、ジヒドロニチジンは腫瘍細胞に特異的なアポトーシスを誘発することで、増殖を抑制していることが示された。なお、図7(b)中、●はA549(肺胞上皮癌(腺癌)細胞)、○はWI-38(肺線維芽細胞)を示す。
【0065】
〔実施例5:フローサイトメーターによる解析〕
ジヒドロニチジンが腫瘍細胞に特異的なアポトーシスを誘発することを確認するために、フローサイトメーターによる解析を行った。10倍にスケールアップし、免疫染色と同じ方法でサンプル処理(ジヒドロニチジンを添加)した後に、細胞を0.025%トリプシンでシャーレからはがし、遠心回収した細胞に、市販の100x AnnexinV、100x PI(プロピヂウムイオダイド)溶液をAnnexinV buffer(試薬に添付)で100倍希釈したものを100μl加え、30min、on iceの後、PBS(-)で洗浄、フローサイトメーターに供した。
【0066】
図9(a)~(d)はフローサイトメーターによる解析の結果を示す図である。図9(a)、(b)はサンプル処理を行わない場合、図9(c)、(d)はサンプル処理を行った場合の結果を示す。図9(a)および(c)中、横軸には細胞の大きさ、縦軸には細胞内構造の複雑さがプロットされている。図9(a)および(c)から、サンプル処理により、細胞のサイズが小さくなり、内部構造が複雑になっていることがわかる。また、図9(b)および(d)中、横軸はアポトーシス、縦軸はネクローシスの強さを示している。図9(b)および図9(d)より、サンプル処理によりアポトーシスが誘導された細胞が多くなっていることが示された。
【0067】
〔実施例6:遺伝子発現量解析〕
腫瘍細胞におけるアポトーシス誘導の経路を明らかにするために、DNAチップによる遺伝子発現解析を行った。その結果、細胞周期とアポトーシスに関与する遺伝子群が腫瘍細胞において大きく変動していた。特にDNAダメージに関与する遺伝子群のmRNAレベルが変化していることからは、ジヒドロニチジンはアポトーシスの誘導経路のうち、DNA修復、複製または転写の阻害などを、腫瘍細胞特異的に引き起こしている可能性が示唆された。
【0068】
〔実施例7:リアルタイムPCRによる細胞周期関連遺伝子の発現解析〕
リアルタイムPCRにより、より詳細な遺伝子発現量の変化を解析した。その結果、アポトーシス誘導および細胞周期に関与するいくつかの遺伝子において発現量の変化が認められた。
【0069】
リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析の結果、細胞周期に関与するサイクリンD(CycD)を抑制する遺伝子の発現が著しく増大していた。また、癌抑制遺伝子p53、アポトーシス誘導遺伝子Baxが活性化しており、腫瘍細胞に特異的なアポトーシスが誘導されていることが示された。これらの結果から、この活性成分は腫瘍細胞の細胞周期を抑制し、同時にアポトーシスを誘導することで増殖を阻害していることが示唆された。これらの遺伝子は正常な細胞株では変化していない。
【0070】
〔実施例8:細胞内への蓄積〕
ジヒドロニチジンおよびカンプトテシンを、腫瘍細胞であるA549(肺胞上皮癌(腺癌)細胞)およびVMRC-LCP(肺扁平上皮癌細胞)、並びに正常細胞であるWI-38(肺線維芽細胞)およびOUMS-36T-2F(正常繊維芽細胞(hTRT gene))に加え、波長330nm~385nmの光を照射し、蛍光顕微鏡で観察した。腫瘍または正常細胞の濃度は5×103 cells/100μL of mediumであった。また、加えたジヒドロニチジンおよびカンプトテシンの終濃度は1.5μg/mLであった。
【0071】
結果を図10に示す。図10(a)、(b)、(c)はそれぞれWI-38に何も加えないとき、カンプトテシンを加えたとき、ジヒドロニチジンを加えたときの結果を、図10(d)、(e)、(f)はそれぞれA549に何も加えないとき、カンプトテシンを加えたとき、ジヒドロニチジンを加えたときの結果を、図10(g)、(h)、(i)はそれぞれVMRC-LCPに何も加えないとき、カンプトテシンを加えたとき、ジヒドロニチジンを加えたときの結果を、図10(j)、(k)、(l)はそれぞれOUMS-36T-2Fに何も加えないとき、カンプトテシンを加えたとき、ジヒドロニチジンを加えたときの結果を示す。図10(a)~(l)に示すように、何も加えないとき(NC)と比較するとジヒドロニチジンを加えたときに限り、A549のみに強い蓄積が起こっていることが確認された。同波長の蛍光においては、カンプトテシンの方が強い蛍光を示すが、いずれの細胞においてもカンプトテシンによる蛍光の発生は認められなかった。
【0072】
また、ジヒドロニチジンは細胞核には蓄積していないこともこの結果から明らかになった。カンプトテシンの抗癌作用は、核内におけるDNAトポイソメラーゼの阻害によることが示唆されているが、この結果より、ジヒドロニチジンとカンプトテシンとの作用点の違いが示されていると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
ジヒドロニチジンは、腫瘍細胞において正常細胞における場合と比較して非常に強い細胞毒性を示すため、副作用が少なく、治療効果の高い抗癌剤として利用することができる。また、ジヒドロニチジンは、腫瘍細胞に特異的に蓄積し、蛍光を発するため、簡便で信頼性の高い腫瘍の診断剤として用いることができる。それゆえ、本発明にかかる抗腫瘍細胞剤、健康食品、薬学的組成物および診断剤は、製薬産業、食品産業およびその関連産業において利用することができ、非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】ジヒドロニチジンのHPLC分析結果を示す図である。
【図2】ジヒドロニチジンの13C-NMR分析結果を示す図である。
【図3】ジヒドロニチジンの13C-NMR分析結果を示す図である。
【図4】ジヒドロニチジンの13C-NMR分析結果を示す図である。
【図5】ジヒドロニチジンの1H-NMR分析結果を示す図である。
【図6】ジヒドロニチジンの蛍光スペクトル測定の結果を示す図である。
【図7】ジヒドロニチジンの肺腫瘍細胞および正常細胞の細胞生存率、並びにカスパーゼ活性に及ぼす影響を示す図であり、図7(a)は、ジヒドロニチジンの肺腫瘍細胞および正常細胞の細胞生存率に及ぼす影響を示す図であり、図7(b)はジヒドロニチジンのカスパーゼ活性に及ぼす影響を示す図である。
【図8】ジヒドロニチジンによる細胞増殖抑制における免疫染色の結果を示す図であり、図8(a)は、A549(肺胞上皮癌(腺癌)細胞)にジヒドロニチジンを加えたときの結果を、図8(b)はA549(肺胞上皮癌(腺癌)細胞)にジヒドロニチジンを加えていないときの結果を、図8(c)は正常細胞WI-38(肺線維芽細胞)にジヒドロニチジンを加えたときの結果を、図8(d)は、WI-38(肺線維芽細胞)にジヒドロニチジンを加えていないときの結果を示す図である。
【図9】ジヒドロニチジンによる細胞増殖抑制におけるフローサイトメーターによる解析結果を示す図である。
【図10】細胞内へのジヒドロニチジンの蓄積を蛍光顕微鏡により観察した結果を示す図である。
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
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(In Japanese)【図7】
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(In Japanese)【図8】
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(In Japanese)【図9】
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(In Japanese)【図10】
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