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明細書 :ゲルの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5472844号 (P5472844)
公開番号 特開2009-207963 (P2009-207963A)
登録日 平成26年2月14日(2014.2.14)
発行日 平成26年4月16日(2014.4.16)
公開日 平成21年9月17日(2009.9.17)
発明の名称または考案の名称 ゲルの製造方法
国際特許分類 C12N  11/02        (2006.01)
B01J  13/14        (2006.01)
A61K   9/50        (2006.01)
FI C12N 11/02
B01J 13/02 H
A61K 9/50
請求項の数または発明の数 7
全頁数 13
出願番号 特願2008-051747 (P2008-051747)
出願日 平成20年3月3日(2008.3.3)
審査請求日 平成23年2月18日(2011.2.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】中村 真人
【氏名】逸見 千寿香
【氏名】須山 紅美子
【氏名】西山 勇一
個別代理人の代理人 【識別番号】100088546、【弁理士】、【氏名又は名称】谷川 英次郎
審査官 【審査官】原 賢一
参考文献・文献 特開2007-111591(JP,A)
特開2006-199810(JP,A)
特開2001-232178(JP,A)
特開2004-141740(JP,A)
特開2008-126459(JP,A)
西山勇一、他6名,生体組織作製用3次元バイオインクジェットプリンターの試作および3次元ゲル構造の構築,人工臓器,日本,日本人工臓器学会,2006年10月 1日,第35巻第2号,S-127頁
中村真人、他6名,三次元バイオプリンティングとバイオファブリケーション,人工臓器,日本,日本人工臓器学会,2006年10月 1日,第35巻第2号,S-128頁
調査した分野 B01J 10/00-19/32
A61K 9/00-9/72,47/00-47/48
C07K 1/00-19/00
A01N 1/00
C12N 11/00-11/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ゲル形成性A液と、該ゲル形成性A液と接触するとゲルを生成するゲル形成性B液とを混合してマイクロビーズを製造する方法であって、前記ゲル形成性A液の液滴を、インクジェット法により、前記ゲル形成性B液の外部から前記ゲル形成性B液に噴射することによりマイクロビーズゲルを生成させることを含む、マイクロビーズゲルの製造方法において、前記ゲル形成性A液及び前記ゲル形成性B液の少なくともいずれか一方が、直径25nm以上2000nm以下のナノ粒子を含み、マイクロビーズ内に封入すべき所望の物質である細胞を前記A液及びB液の少なくともいずれかに懸濁しておき、それによって該細胞を内部に封入したマイクロビーズを生成させることを特徴とする、マイクロビーズゲルの製造方法。
【請求項2】
前記ナノ粒子を含むA液及び/又はB液中の前記ナノ粒子の濃度が、0.1重量%~5重量%である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ナノ粒子の粒径が100nm~1200nmである請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記A液とB液の組合せが、(1)アルギン酸塩水溶液とアルカリ土類金属塩水溶液であり、アルカリ土類金属塩水溶液の濃度が30mM~180mMである請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ土類金属塩が、塩化カルシウムである請求項4記載の方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法によりマイクロビーズゲルを形成することを含み、該方法によりマイクロビーズゲルを形成する際に、前記B液の外部から、該B液に、前記A液の到達位置を変えながら前記A液を噴射することを含む、一次元、二次元又は三次元構造を有するゲルの製造方法。
【請求項7】
三次元構造を有するゲルを製造する請求項6記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルの製造方法に関し、特に、マイクロビーズの製造方法及び該製造方法を含む、任意の形状のゲルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルギン酸ゲルから成るマイクロビーズ中に細胞を封入して農薬や免疫学の研究に用いることが知られている。これらのマイクロビーズは、アルギン酸ナトリウム水溶液中に封入すべき細胞を浮遊させ、この細胞浮遊液を塩化カルシウムや塩化バリウムの溶液にノズルから噴霧することにより形成される(特許文献1、非特許文献1)。しかし、これらのマイクロビーズも、細胞浮遊アルギン酸ナトリウム水溶液を空気ジェットノズルから噴霧する、上記したスプレー法により製造されており、製造されるマイクロビーズの粒径は均一ではない。
【0003】
マイクロビーズの粒径が均一でない場合、例えばマイクロビーズ中に封入される物質の量がマイクロビーズ毎に異なってしまい、マイクロビーズを定量的に用いることが困難になる。また、マイクロビーズを薬物送達システム(DDS)等として用いる場合には、所定の範囲のサイズのマイクロビーズ以外はDDSとして機能することが困難である。また、従来法では装置が大掛かりなものになってしまい、手軽に通常の研究室レベルでは作製ができない。さらに、大量に作製する場合は便利だが、少量作製する場合、非効率となる。DDSを目的に作成する場合は、使用する薬剤も多量に必要となる。通常そのような薬剤は高額、または貴重な試料であることが多い。
【0004】
本出願人は、先に、マイクロビーズゲル(マイクロビーズ状のゲル、以下同じ)生成後にソーティング操作を行なわなくても、単一工程で粒径の均一なマイクロビーズゲルを簡便に製造することができ、少量を手軽に作製することが可能なマイクロビーズゲルの製造方法を発明し、特許出願した(特許文献2)。この方法では、接触するとゲルを形成する2種類の液体の一方を、インクジェット法により他方の液体中に噴射することによりマイクロビーズゲルを生成させる。本出願人は、さらに、このマイクロビーズゲルの製造方法を利用し、インクジェット法により噴射する液体の到達位置を変えながら噴射することにより、任意の一次元、二次元及び三次元形状のゲルを製造する方法を発明した(非特許文献1)。
【0005】

【特許文献1】特開2004-99465号公報
【特許文献2】特開2007-111591号公報
【特許文献3】特公平2-51734号公報
【特許文献4】特開昭57-133076号公報
【非特許文献1】人工臓器35巻2号 2006年 S-127~S-128
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された方法では、ゲル形成液中の塩濃度が高いという問題がある。例えば、アルギン酸ナトリウム水溶液を、塩化カルシウム水溶液中にインクジェット法で噴射する方法では、塩化カルシウム水溶液の濃度が高く、特に、ゲル内に細胞等を封入し、三次元形状物を作製する場合には、より強固なゲルが必要になるので、塩化カルシウム水溶液の濃度を高める必要がある。ゲル中に細胞等の生体成分を封入する場合、塩化カルシウム濃度が高いと細胞等に有害な作用を及ぼすので好ましくない。しかし、この方法において、単に塩化カルシウムを下げたのでは、ゲルが形成されにくくなる。
【0007】
本発明の目的は、塩化カルシウム等のゲル形成に必要な塩の濃度が低くてもマイクロビーズゲルを製造することができる、マイクロビーズゲルの製造方法を提供することである。また、本発明の目的は、該マイクロビーズゲルの製造方法を利用し、塩化カルシウム等のゲル形成に必要な有効成分の濃度が低くても任意の一次元、二次元及び三次元形状のゲルを製造することができるゲルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、混合する2液の少なくともいずれか一方の液中に、ナノ粒子を含めておくことにより、ゲルの構造が強固となり、塩化カルシウム等の塩濃度が低い場合であっても良好にゲルが形成されることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、ゲル形成性A液と、該ゲル形成性A液と接触するとゲルを生成するゲル形成性B液とを混合してマイクロビーズを製造する方法であって、前記ゲル形成性A液の液滴を、インクジェット法により、前記ゲル形成性B液の外部から前記ゲル形成性B液に噴射することによりマイクロビーズゲルを生成させることを含む、マイクロビーズゲルの製造方法において、前記ゲル形成性A液及び前記ゲル形成性B液の少なくともいずれか一方が、直径25nm以上2000nm以下のナノ粒子を含み、マイクロビーズ内に封入すべき所望の物質である細胞を前記A液及びB液の少なくともいずれかに懸濁しておき、それによって該細胞を内部に封入したマイクロビーズを生成させることを特徴とする、マイクロビーズゲルの製造方法を提供する。また、本発明は、上記本発明の方法によりマイクロビーズゲルを形成することを含み、該方法によりマイクロビーズゲルを形成する際に、前記B液の外部から、該B液に、前記A液の到達位置を変えながら前記A液を噴射することを含む、一次元、二次元又は三次元構造を有するゲルの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本願発明により、塩化カルシウムのようなゲル形成のための塩の濃度が低濃度であっても良好にマイクロビーズゲルを製造することができる、マイクロビーズゲルの製造方法が初めて提供された。本発明の方法によれば、塩化カルシウムのようなゲル形成のための塩の濃度を公知の方法よりも低くすることができるので、マイクロビーズゲルの内部に細胞等の生体成分を封入する場合、該生体成分に対する毒性を低くすることができる。一方、公知の方法と同じ濃度を採用すれば、より強固なゲル構造が得られる。また、本発明により、このような利点を有する、任意形状のゲルの製造方法が始めて提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記の通り、本発明の方法は、ゲル形成性A液(以下、単に「A液」ということがある)と、該A液と接触するとゲルを生成するゲル形成性B液(以下、単に「B液」ということがある)とを用いる。このようなA液とB液の組合せの好ましい例として、(1)アルギン酸塩水溶液とアルカリ土類金属塩水溶液、(2)トロンビン水溶液、フィブリノーゲン水溶液とカルシウム塩水溶液、 (3)ペプチドハイドロゲル形成性ペプチド水溶液と塩化ナトリウム水溶液の組合せ等の、一方のゲル形成性液中に塩を含むものを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。なお、本発明の方法は、使用する塩の濃度を低くすることができることが重要な利点であるが、公知の方法と同様な成分及び成分濃度を利用してゲルを形成した場合にはゲルの構造がより強固になるという利点があるので、ゲル形成性液の組合せは必ずしも塩を含むものに限定されるものではなく、(4)ホウ酸水溶液とポリビニルアルコール水溶液、及び(5)昇温時ゲル化型熱可逆ハイドロゲル形成性親水性高分子水溶液と温水の組合せ等を採用することもできる。
【0012】
ここで、上記(1)の組合せに関し、アルギン酸塩としては、アルギン酸ナトリウム、アルカリ土類金属塩としては塩化カルシウムや塩化バリウムを例示することができる。アルギン酸塩の濃度は、特に限定されないが、0.5重量%~1.5重量%程度が好ましく、アルカリ土類金属塩の濃度は、特に限定されないが、アルカリ土類金属イオン濃度として30mM~180mM程度が好ましく、特に45mM~90mM程度が好ましい。
【0013】
上記(2)の組合せは、混合すべき成分が3成分あるが、いずれか2成分を含む水溶液と、残りの1成分を含む水溶液を混合する。例えば、フィブリノーゲン水溶液をA液、トロンビンとカルシウム塩を含む水溶液をB液とすることができる。トロンビンの濃度は特に限定されないが、200単位/mL~800単位/mL程度が好ましく、フィブリノーゲンの濃度は、特に限定されないが、50mg/mL~150mg/mL程度が好ましく、カルシウムイオン濃度は30mM~180mM程度が好ましく、特に45mM~90mM程度が好ましい。カルシウム塩としては、塩化カルシウム等を好ましく用いることができる。
【0014】
上記(3)のペプチドハイドロゲル形成性ペプチドとしては、例えば、Ac-Arg-Ala-Asp-Ala-Arg-Ala-Asp-Ala-Arg-Ala-Asp-Ala-Arg-Ala-Asp-Ala-CONH2(配列番号1)や、Ala-Glu-Ala-Glu-Ala-Lys-Ala-Lys-Ala-Glu-Ala-Glu-Ala-Lys-Ala-Lys(配列番号2)で表されるアミノ酸配列を有するもののように、中性アミノ酸、酸性アミノ酸及び/又は塩基性アミノ酸を交互に配置したアミノ酸数12~20、好ましくは16程度のペプチドであり、上記した配列番号1に記載のものは、スリー・ディ-・マトリックス社からPuraMatrixの商品名で市販されている。これらのペプチドハイドロゲル形成性ペプチドは、塩化ナトリウム水溶液中の塩化ナトリウムと反応してペプチドハイドロゲルと呼ばれるゲルを形成する。塩化ナトリウムの濃度は、通常の細胞培養用培地中に含まれる程度の濃度でよく、従って、通常、0.5~0.9wt%程度である。
【0015】
上記(5)の昇温時ゲル化型熱可逆ハイドロゲル形成性親水性高分子は、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)やポリプロピレンオキサイドのような温度感受性ポリマーセグメントと、ポリエチレンオキサイドのような親水性ポリマーセグメントから成るブロックコポリマーであり、例えば、メビオール株式会社からメビオールジェルという商品名で市販されているものである。メビオールジェル(商品名)は、低温時にはゾルであり、37℃以上でゲル化するので、A液として、36℃以下のメビオールジェル(商品名)水溶液を用い、B液として37℃以上の温水を用いることにより、A液をB液内に噴射すればA液がB液内でゲル化する。なお、メビオールジェル(商品名)水溶液は、比較的粘度が高いので、比較的粘度の高いインクを噴射できるインクジェットプリンターを用いる。
【0016】
なお、上記のような組み合わせにおいて、どちらをA液、どちらをB液にしてもよいが、インクジェットで安定して吐出するために粘度の低い液をA液とする方が好ましい。もっとも、どちらの液も十分に粘度が低く、インクジェットで安定して吐出することができる場合には、どちらをA液にしても好ましく、上記(1)の場合には、アルギン酸塩水溶液をA液、上記(5)の場合には高分子水溶液をA液とすることが好ましい。
【0017】
本発明の方法では、上記A液及びB液の少なくともいずれか一方が、直径25nm以上2000nmμm以下、好ましくは直径100nm以上1200nm以下のナノ粒子を含む(なお、直径が1000nm以上の場合、一般的には「ナノ粒子」とは呼ばないかもしれないが、本発明では、25nm以上2000nmの粒子を便宜的に「ナノ粒子」と呼ぶ。ナノ粒子の直径が2000nmを超えるとゲルの形成が阻害され、ナノ粒子の直径が25nm未満では、ゲル形成後にナノ粒子の一部がゲルから離脱する恐れがある。通常、A液及びB液のいずれか一方がナノ粒子を含み、製造時にナノ粒子を無駄にしないよう、A液に含めることが好ましい。ナノ粒子としては、上記の直径を有し、水中で安定で、他の成分や、封入する物質と反応しない粒子であれば、その材質は問わない。上記範囲の直径を有するシリカ粒子や、ラテックス粒子等が広く市販されているので、それらを用いることができる。なお、市販のナノ粒子の直径は非常に均一であり、直径を表示して市販されているので、上記範囲の直径を有する市販品を好ましく利用することができる。また、ナノ粒子の直径は、He・Neレーザーを用いる市販の粒度分布測定装置を用いて容易に測定可能である。ナノ粒子を含む液中のナノ粒子の濃度は、通常、1mg/ml(0.1重量%)~50mg/ml(5重量%)、好ましくは0.3重量%~2.5重量%である。なお、この濃度は、上記直径の範囲に含まれる粒子の濃度である。また、これらのナノ粒子は、所望により、後述する、ゲル内に封入する物質として例示した各種タンパク質や核酸等の生体物質や、蛍光標識や化学発光標識等の標識等を結合してもよく、例えばFITC等の標識を結合したナノ粒子等が市販されている。
【0018】
本発明の方法では、A液の液滴を、インクジェット法により、前記ゲル形成性B液の外部から前記ゲル形成性B液に噴射することによりマイクロビーズを生成させる。A液を噴射している間、B液を撹拌若しくは振とうすること、又は噴霧位置を変えることが好ましい。撹拌や振とうは、マグネティックスターラーを用いたり、シャーレ用の振とう培養機を用いて、B液をいれたシャーレを振とうすること等により行なうことができる。噴霧位置を変える場合は、ノズルを機械的に動かす装置に設置する。ここで機械的に動かす装置は、一般のインクジェットプリンターやプロッターにも使われている2軸ステージ、ディスペンサーロボットなどが利用できる。「インクジェット法」とは、ノズル(以下、「インクジェットノズル」に連通するインクキャビティ内の圧力を増大させて、インクジェットノズルから液滴を噴射する方法であって、インクキャビティ内の圧力を電気パルス信号により制御するものである。インクジェット法は、いわゆるインクジェットプリンターに採用されている方式であり、それ自体周知である。なお、「インクジェット」という語が、プリンターの分野において確立されているので、本願明細書及び特許請求の範囲においても「インクジェット」という語を用い、噴射される液体を「インク」と記載する場合もあるが、本発明では、噴射するものは上記A液であり、ほとんどの場合インクを噴射するわけではない。インクキャビティ内の圧力を電気パルス信号により増大させる方式としては、インクキャビティの一部を圧電素子で形成し、この圧電素子に電気パルス信号を与えて圧電素子を変形させることによりインクキャビティを変形させ、インクキャビティの容積を減少させてインクキャビティ内の圧力を瞬時に高める方式(特許文献3参照)や、インクキャビティ内のインクを電気パルス信号で加熱してインクの一部を気化させ、インクの蒸気によってインクキャビティ内の圧力を瞬時に高める方式(特許文献4参照)等があるが、本願発明では、これらのいずれの方式をも採用することができる。もっとも、後述のように、マイクロビーズ中に、細胞やタンパク質等の生物材料を封入する場合には、熱が悪影響をもたらす恐れがあるので、生物材料を封入する場合には、インクキャビティの変形によりインクキャビティ内の圧力を高める方式が好ましい。なお、インクキャビティはインクタンクに連通しており、インクの噴射によりインクキャビティ内のインクが減少すると、インクタンクからインクが補充される。インクジェット法によれば、液滴の大きさは電気パルス信号により制御されるので、均一な大きさの液滴が噴射される。
【0019】
本発明の方法においては、市販のインクジェットプリンターのインク噴射機構(インクジェットノズル、インクキャビティ、インクタンク、これらを連絡するインク通路、電気制御回路等を含む)をそのまま用いることができる。市販のインクジェットプリンターでは、通常、インクジェットヘッドは複数のインクジェットノズルを具備するが、本発明においても複数のインクジェットノズルから同時にA液を噴射することが生産性向上の観点から好ましい。また、市販のカラーインクジェットプリンターでは、少なくとも黒色、シアン、マゼンダ、イエローの4色のインクがそれぞれ異なるインクタンクに収容され、それぞれ異なるインクジェットノズルから噴射されるが、本発明においても、このようなカラーインクジェットプリンターの噴射機構を好ましく用いることができる。市販のインクジェットプリンターのインク噴射機構を用いる場合、A液は約0.3mL以上であればよく、微量試料を扱う場合に便利である。
【0020】
インクジェットノズルの内径(直径)は、特に限定されず、通常、5μm~100μm程度であるが、ゲル内に細胞を封入する場合には、細胞を含むA液を吐出可能な20μm~100μm程度が好ましい。解像度に応じ、種々のインクジェットノズルの内径を有するインクジェットプリンターが市販されているので、所望のインクジェットノズル径を持つ市販品を選択することができる。
【0021】
なお、インクジェットプリンターは以下の特徴を有する。
1)インクジェット機構により、微小液滴を噴射できる。
2)射出する位置とヘッドの位置により射出信号を制御し、適材適所射出する。(オンデマンド射出)
3)極めて微小な液滴サイズと位置制御により、高解像度の画像を印刷できる
4)1つのノズルから1秒間に数千個以上のインク滴が射出される。
5)印刷対象物に触れることなく、液滴を射出して描画する。
6)インクジェットヘッドを集積させ、多数のノズルで描画ができる。
7)対象物を選ばない。紙であろうが水であろうがインク滴を吐出できる。
8)コンピュータ制御が確立されている。
【0022】
製造するマイクロビーズのサイズ(直径)は、用途に応じて適宜選択できるが、通常、5μm~100μm、好ましくは10μm~40μm程度である。マイクロビーズのサイズは、インクジェットノズルから噴出する液滴の体積を制御することにより制御することができる。液滴の体積は、インクジェットノズルの孔径を調節したり、インクキャビティに加える圧力や加圧時間、加圧頻度等を電気信号で制御することにより制御することができる。例えば、下記実施例で作製した直径40μmのマイクロビーズの場合、噴射する液滴の体積は、球状と見なすと約30~40pL程度である。なお、インクジェットプリンターは、解像度の異なるものが種々市販されているので、所望のサイズのマイクロビーズを与えるプリンターを選択して(解像度の大きいものほど液滴の体積が小さい)その噴射機構をそのまま利用することもできる。
【0023】
本発明の方法によれば、B液の厚さ(深さ)が十分な場合には球状のマイクロビーズが生成する。B液の厚さを小さくする(すなわち、B液の深さを浅くする)ことにより、円盤状のマイクロビーズを形成することができる。円盤状のマイクロビーズは、これまでに知られておらず、本発明の方法により初めて提供されたものである。円盤状のマイクロビーズは、球状のマイクロビーズよりも血管を閉塞しにくいので、血管内投与型DDSのキャリアとして血管内に注入するような場合に有利である。円盤状のマイクロビーズの直径は、特に限定されず、球状のマイクロビーズの直径と同様、通常、5μm~100μm程度、好ましくは10μm~40μm程度である。また、円盤状のマイクロビーズの厚さは、特に限定されないが、通常、直径の10~50%程度である。このような円盤状のマイクロビーズを製造する場合、B液の厚さは、通常のインクジェット吐出では1mm~1cm程度が適当である。なお、「円盤状」とは広い意味で用いており、コンタクトレンズ状(底面が平面ないしは凹状で、上面は中央部分が盛り上がっているもの)やほぼ短円柱状のもの等が包含される。なお、コンタクトレンズ状の場合、上記した「厚さ」は、中央付近の最も厚い部分の厚さである。中に穴が開いたリング状の形状のゲルリングも作り方によっては可能である。
【0024】
本発明の方法により製造されるマイクロビーズの内部には、所望の物質を封入することができる。マイクロビーズの内部に封入する所望の物質は、各種細胞である。より具体的には、血管内皮細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、赤血球、白血球、血小板、がん細胞、さらには、大腸菌、乳酸菌などの細菌(単細胞)等を例示することができ、これらの細胞を封入したマイクロビーズは、乾燥などの細胞の各種障害刺激からの保護、細胞・細菌のキャリアーとして、細胞移植用ビーズ等の治療用機材やバイオチップ等の診断用機材等に利用することができる。

【0025】
マイクロビーズ内に所望の物質を封入しようとする場合、該所望の物質をA液及びB液の少なくともいずれか一方に溶解又は懸濁しておく。各マイクロビーズ内にできるだけ均一な量の物質が封入されるように、物質はA液、もしくはB液中に均一に溶解又は均一に懸濁しておくことが好ましい。A液中に溶解又は懸濁する場合、その物質の濃度は、マイクロビーズ内に封入しようとする量や、マイクロビーズを構成する材料の濃度や粘度、使用するインクジェットノズルの能力によって規定されるが、使用するインクジェットノズルで吐出できる粘度でさえあればよい。通常のインクジェットノズルでは、10センチポアズ以下の粘度であれば安定に吐出可能である。1種類のマイクロゲルビーズであれば、B液中に所望の物質を溶解又は懸濁すれば、さらに高い粘度になっても作製可能である。
【0026】
先に述べた通り、カラーインクジェットプリンターのインク噴射機構は、複数のインクタンクを具備し、異なる色のインクを異なるインクジェットノズルから噴射する。本発明の方法において、各インクタンクに、異なる種類の所望の封入物質を溶解又は懸濁したA液を入れ、異なるノズルから同時に噴射することにより、異なる物質が封入された複数種類のマイクロビーズの混合物を単一工程で調製することができる。例えば、内部に血管内皮細胞を封入したマイクロビーズと、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を封入したマイクロビーズを単一工程で調製することができ、このようなマイクロビーズ混合物は、注入用血管新生ゲルビーズ等に好適に用いることができる。この方法を採用することにより、異なる種類の物質を封入した複数種類のマイクロビーズを別々に調製し、マイクロビーズを定量して所定量ずつ混合するという煩雑な工程を単一工程で行なうことができ、有利である。
【0027】
上記した本発明のマイクロビーズゲルの製造方法を利用し、該方法によりマイクロビーズゲルを形成する際に、前記B液の外部から、該B液に、前記A液の到達位置を変えながら前記A液を噴射することにより、所望の一次元、二次元又は三次元構造を有するゲルを製造することができる。以下、この方法について説明する。
【0028】
この方法では、A液の到達位置を変えながらA液を噴射する。ここで、「到達位置」は、噴射されたA液の液滴が、B液の液面に到達した際のB液の液面における位置を意味する。従って、A液の到達位置を変えながらA液を噴射するということは、A液をインクと見立ててB液上に描画するということである。これは、ノズルを移動しながらA液の噴射を行なうことにより容易に行なうことができる。この際、A液の噴射頻度とノズルの移動速度を、ノズルから連続的に噴射される2個の連続する液滴が、互いに接触するように調整することが好ましい。インクジェットの1つのノズルからは、1秒間に数千個又はそれ以上の液滴が噴射される。10倍、100倍のノズルを集積することも可能である。下記実施例で用いた装置では、1つのヘッドに12個のノズルが具備されている。市販のプリンターでは数百個のノズルが備わっているものもある。インクジェットノズルを移動しながら噴射を行なうと、各液滴のB液面上の到達位置は少しずつずれる。A液の単一の液滴は、B液内でゲル化してマイクロビーズを形成する。ある液滴と、その1個あとに噴射される液滴とが、B液内で接触する噴射頻度及びノズル移動速度で噴射された場合には、2個のゲルマイクロビーズが癒着した形になる。さらに次に噴射される液滴の到達位置が、2個目に噴射された液滴と接触する位置である場合には、3個目のゲルマイクロビーズも癒着し、3個のマイクロビーズが連なる形状となる。このようにして次々にゲルマイクロビーズが癒着していくと、線状のゲルが形成される。インクジェットノズルを任意に移動させながら上記の条件で噴射を行なうことにより、任意の形状(直線や任意の曲線)の線状ゲルを得ることができる。
【0029】
また、この方法により一本の直線状のゲルを形成した後、この直線状のゲルに接触する位置に2本目の直線状ゲルを形成することにより、2本の直線状ゲルが癒着した、一本の直線状ゲルよりも幅広のゲルを形成することができる。さらに、3本目の直線状ゲルを、2本目の直線状ゲルと接触する位置に形成することにより、3本目の直線状ゲルも2本目の直線状ゲルに癒着させることができる。このようにして、次々と直線状のゲルを、その1本前の直線状ゲルと接触する位置に形成していくことにより、シート状のゲルを形成することができる。この場合、各直線状のゲルの長さを同一とし、形成する直線状のゲルを、1本前の直線状ゲルの真横に並べていく場合には、矩形のシートが形成されるが、各直線状ゲルの長さや位置を任意に設定することにより、任意の形状のシートを形成することができる。
【0030】
さらに、上記のようにして形成したシート状ゲルの上に、さらに、同様にしてシート状ゲルを形成することにより、シート状ゲルを積層することができる。次々にシート状ゲルを積層することにより、立体的なゲルを形成することができる。この際、積層する各シート状ゲルの形状を同一のものとすれば、直方体等の柱状のゲルが形成されるが、各シート状ゲルの形状や、積層する位置を任意に設定することにより、任意の立体形状を有するゲルを形成することができる。
【0031】
また、曲線状のゲルの上に曲線状のゲルを順次積層していくことによっても立体形状を有するゲルを形成することができる。例えば、円形の線状ゲルを形成し、その上に順次、円形の線状ゲルを積層していくことにより、チューブ上のゲルを形成することができる。
【0032】
このように、本発明の方法によれば、任意の一次元、二次元又は三次元構造を有するゲルを形成することができる。なお、ここで、「一次元、二次元又は三次元構造」とは、一滴のA液が噴射されて形成されるゲルマイクロビーズを1つの点と考えた場合の構造を意味する。従って、一次元構造は、直線状、二次元構造は、シート状又は曲線状、三次元構造は立体状の構造を意味する。
【0033】
なお、上記の通り、A液の噴射頻度とノズルの移動速度を、ノズルから連続的に噴射される2個の連続する液滴が、互いに接触するように調整することが好ましいが、例えば、シート状のゲルは、所定の面内に、各液滴が最終的に接触するまで、A液をランダムに噴射していくことによっても作製することが可能であるので、必須的ではない。
【0034】
市販のインクジェットプリンターは、ノズルを含むインクジェットヘッドが直線状を移動し、かつ、印刷する紙を移動させながら印刷する。しかしながら、B液を移動させると液面が波立って微細なゲル構造を形成することが困難になるので、B液は移動せず、インクジェットヘッドを移動させながら噴射を行なうことが好ましい。市販のインクジェットプリンターでは、インクジェットヘッドが直線状にしか移動できないので、自由な描画を行なうことができない。従って、本発明の方法では、インクジェットノズルが少なくとも2軸(XY軸)方向、好ましくは3軸方向(XYZ軸)方向に移動するインクジェット噴射装置を用いて行なうことが好ましい。このような装置は、市販のインクジェットプリンターのインクジェットヘッドを、2軸又は3軸のアクチュエーターに搭載することにより容易に作製することができる。2軸又は3軸のアクチュエーターは、広く市販されているので、市販品を用いることができる。従って、噴射装置は、市販の2軸又は3軸のアクチュエーターに、市販のインクジェットプリンターのインクジェットヘッドを搭載する(インクジェット噴射のための、インクジェットプリンターが備える全ての機構もそのまま利用する)ことにより容易に作製することができる。三次元構造を有するゲルを形成する場合には、ノズルと、噴射されたA液滴がゲル化する位置との距離を一定にすること等を可能とするため、3軸のアクチュエーターを用いることが好ましい。
【0035】
インクジェットノズルから噴射されるA液の液滴と、その1個あとに噴射されるA液の液滴とが、B液内で接触する噴射頻度及びノズル移動速度でA液の噴射を行なうことができる噴射速度及びノズル移動速度は、用いるA液とB液の種類や、ノズル径等に応じて異なるが、下記実施例で具体的に記載するように、噴射頻度とノズル移動速度を変更して行なうルーチンな実験により容易に設定することができる。噴射頻度は、インクジェットキャビティに加える電気パルス信号の周波数(打出し周波数)を変更することにより変更することができる。
【0036】
所定の構造を有するゲルを形成していく際、構築中のB液中のゲルの移動を防止するために、B液に増粘剤を含ませておいてもよい。増粘剤としては、ポリビニルアルコール(PVA)やヒアルロン酸又はその塩等の水溶性のポリマーを好ましく用いることができる。増粘剤の濃度は、適宜選択されるが、通常、0.2重量%~1重量%程度である。
【0037】
ゲル内に所望の物質を封入しようとする場合、該所望の物質をA液及びB液の少なくともいずれか一方に溶解又は懸濁しておく。各ゲル内にできるだけ均一な量の物質が封入されるように、物質はA液、もしくはB液中に均一に溶解又は均一に懸濁しておくことが好ましい。A液中に溶解又は懸濁する場合、その物質の濃度は、ゲル内に封入しようとする量や、ゲルを構成する材料の濃度や粘度、使用するインクジェットノズルの能力によって規定されるが、使用するインクジェットノズルで吐出できる粘度でさえあればよい。通常のインクジェットノズルでは、10センチポアズ以下の粘度であれば安定に吐出可能である。1種類のマイクロゲルビーズであれば、B液中に所望の物質を溶解又は懸濁すれば、さらに高い粘度になっても作製可能である。
【0038】
先に述べた通り、カラーインクジェットプリンターのインク噴射機構は、複数のインクタンクを具備し、異なる色のインクを異なるインクジェットノズルから噴射する。本発明の方法において、各インクタンクに、異なる種類の所望の封入物質を溶解又は懸濁したA液を入れ、異なるノズルから同時に噴射することにより、異なる物質が封入された複数種類のゲルを構成要素として所定の位置に含むゲルを形成することができる。例えば、臓器細胞を懸濁したA液と、血管細胞を懸濁したB液を異なるノズルから噴射し、それぞれ上記の方法で、所望の形状のゲルを形成させる(血管細胞含有ゲルは、例えば上記の方法によりチューブ状に形成する)ことにより、臓器内に血管を有する三次元構造を持つ組織を形成することが可能である。このように、本発明によれば、複数種類の細胞からなる、任意の構造の組織を形成することができる。
【0039】
なお、細胞を本発明の方法によりゲル内に包埋することにより次の効果が得られる。
1)ゲルに包埋することによって、細胞の乾燥によるダメージを防げる。
2)ゲルに包埋することによって三次元構造の積層造形を可能にする。
3)ゲルにより、水溶液中でもにじまない。混ざらない。
4)ゲル化を用いるこの方法はインクジェットによる三次元造形を、培養液などの水溶液中での造形を可能にする。これにより、作製した三次元構造物は、作製後も乾燥から保護される。また、そのまま培養・育成も可能になる。
5)水溶液中に作製することにより、水による浮力のため、柔らかいゲルによる構造体であっても、重力でつぶれにくい。
6)細胞が受ける物理的衝撃の緩和にも働く。
【0040】
上記本発明の方法によりゲルを形成した後、溶かすことができる。例えば、アルギン酸ゲルの場合、クエン酸やEDTAなどのカルシウムキレート剤を加えると、カルシウムイオンが奪われて、アルギン酸ゲルはまた溶けてしまうことが知られている(下記参考例2参照)。温度により溶けるゲル(上記した(5) 昇温時ゲル化型熱可逆ハイドロゲル)の場合、温度を変化させて溶かすことができることも知られている。したがって、本発明の方法により一次元、二次元又は三次元構造を有するゲルを形成した後にゲルを溶かせば、打ち出した細胞もしくは内容物のみをその空間に残すことも可能になる。
【0041】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、濃度に関する「%」は特に表示がなければ重量%を意味する。
【実施例】
【0042】
比較例1、2
インクジェットノズルの孔径が60μmであり、ヘッド自体が三軸に動くインクジェットプリンターを用いた。0.8%アルギン酸ナトリウム溶液をインクジェットプリンターから、濃度10%(比較例1)又は5%(比較例2)の塩化カルシウム水溶液(0.5%ヒアルロン酸ナトリウムを含む)に噴射した。噴射は、図1に示すように、形成されるマイクロビーズゲルが直径1mmの円を描くようにノズルを移動させながら行なった(ノズル移動速度20 mm/sec)。形成されたマイクロビーズゲルの円が描かれたら、次に、その描かれた円の上に2段目のマイクロビーズゲルが積層されるようにノズルを移動させ、これを繰り返すことにより、円形に配置されたマイクロビーズゲルを次々に積層していき、三次元的なチューブを形成した。なお、図1中、10はインクジェットノズル、12はマイクロビーズゲルから成る三次元的チューブ、14は塩化カルシウム水溶液(0.5%ヒアルロン酸ナトリウムを含む)を示す。
【0043】
その結果、濃度10%の塩化カルシウム水溶液にアルギン酸水溶液噴射した場合には、マイクロビーズゲルから成る三次元的なチューブが形成されたが、5%塩化カルシウム水溶液にアルギン酸水溶液を噴射した場合には、ゲルの形成が不十分で、三次元的なチューブは形成されなかった。
【0044】
参考例1~4
0.8%アルギン酸ナトリウム溶液に、市販のFITC標識ナノ粒子(直径250nm、ポリスチレン系ラテックス粒子、商品名micromer-greenF、Corefront社製)を3.25mg/ml(0.325)%の終濃度で懸濁させた液をA液として用い、塩化カルシウム水溶液(0.5%ヒアルロン酸ナトリウムを含む)の濃度を10%(参考例1)、2%(参考例2)、1%(参考例3)又は0.5%(参考例4)としたことを除き、比較例1と同様な操作を行なった。
【0045】
その結果、塩化カルシウム水溶液の濃度が10%の場合のみならず、2%、1%、0.5%のいずれの場合にもマイクロビーズゲルから成る三次元的なチューブが形成された。また、ナノ粒子は、ゲル内に保持され、ゲルの外部にはまったく離脱することはなかった。
【0046】
比較例3
0.8%アルギン酸ナトリウム水溶液中に、3.5 x 106個/mlの密度でHeLa細胞を懸濁した細胞懸濁液をA液として用いることを除き、比較例1と同様な操作を行い、HeLa細胞を封入したマイクロビーズゲルから成るチューブを形成した。チューブを形成後、EDTAを添加しゲルを再溶解することにより封入されたHeLa細胞を回収し、回収されたHeLa細胞の生存率を測定した。生存率の測定は、トリパンブルー染色で死細胞を染色し、全体の細胞数と死細胞の細胞数をカウントし、生きている細胞の割合を計算することにより行なった。実験は各濃度で5回ずつ行い、生存率の平均値±標準偏差を算出した。生存率の平均値±標準偏差は、69±6.7%であった。
【0047】
実施例5
0.8%アルギン酸ナトリウム水溶液中に、3.5 x 106個/mlの密度でHeLa細胞を懸濁した細胞懸濁液をA液として用いることを除き、参考例3(塩化カルシウム濃度1%)と同様な操作を行い、HeLa細胞を封入したマイクロビーズゲルから成るチューブを形成した。比較例3と同様にして、ゲル内に封入された細胞の生存率を測定した。生存率の平均値±標準偏差は、85±1.6%であった。
【0048】
比較例3と実施例5を比較すると、ナノ粒子を配合することより、細胞の生存率は69%から85%に上昇したことがわかる。従って、本発明の方法によれば、封入する細胞に与えるダメージを公知の方法よりも小さくすることができる。
【0049】
参考
直径100nmのポリスチレン系ラテックス粒子(商品名micromer100、 Corefront社製、参考)又は直径800nmのポリスチレン系ラテックス粒子(商品名micromer800、 Corefront社製、参考)を用いること以外は参考例1と同様な操作を行い、マイクロビーズゲルから成るチューブを形成した。
【0050】
その結果、どちらのナノ粒子を用いた場合でも、4種類の塩化カルシウム濃度のいずれにおいてもチューブを形成することができた。直径800nmのナノ粒子を用いた場合、より完全な形状のきれいなチューブを形成することができた。
【0051】
参考
A液が、直径25nmのFITC標識ポリスチレン系ラテックス粒子(商品名micromer25、 Corefront社製)を2.5mg/mlの濃度で含むこと以外は参考例2と同様な操作を行なった。

【0052】
その結果、マイクロビーズゲルから成るチューブが形成された。チューブを形成した1時間後、チューブを観察したところ、少量のナノ粒子は、チューブの外部に漏れ出したが、ほとんどのナノ粒子は、チューブ状のゲル内に保持されていた。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の方法によりマイクロビーズゲルから成るチューブを形成する方法を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0054】
10 インクジェットノズル
12 マイクロビーズゲルから成る三次元的チューブ
14 塩化カルシウム水溶液(0.5%ヒアルロン酸ナトリウムを含む)
図面
【図1】
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