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電磁環境解析方法、電磁環境解析プログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体
> 明細書
明細書 :電磁環境解析方法、電磁環境解析プログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体
発行国
日本国特許庁(JP)
公報種別
特許公報(B2)
特許番号
特許第3824561号 (P3824561)
公開番号
特開2004-038774 (P2004-038774A)
登録日
平成18年7月7日(2006.7.7)
発行日
平成18年9月20日(2006.9.20)
公開日
平成16年2月5日(2004.2.5)
発明の名称または考案の名称
電磁環境解析方法、電磁環境解析プログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体
国際特許分類
G06F 17/13 (2006.01)
G06F 19/00 (2006.01)
G06F 17/50 (2006.01)
G01R 29/08 (2006.01)
FI
G06F 17/13
G06F 19/00 110
G06F 17/50 612H
G01R 29/08 Z
請求項の数または発明の数
15
全頁数
33
出願番号
特願2002-197574 (P2002-197574)
出願日
平成14年7月5日(2002.7.5)
新規性喪失の例外の表示
特許法第30条第1項適用 電子情報通信学会で発表
審査請求日
平成15年8月1日(2003.8.1)
特許権者または実用新案権者
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者
【氏名】井上 浩
【氏名】春日 貴志
【氏名】田中 元志
個別代理人の代理人
【識別番号】100107010、【弁理士】、【氏名又は名称】橋爪 健
審査官
【審査官】鳥居 稔
参考文献・文献
特開平10-062469(JP,A)
特開2000-246891(JP,A)
小材謙太朗,厚木和彦,2次差分FDTD法による導波路の伝送特性の解析,電子情報通信学会2002年総合大会講演論文集,日本,社団法人電子情報通信学会,2002年 3月 7日,6
調査した分野
G06F 17/13
G01R 29/08
G06F 17/50
G06F 19/00
特許請求の範囲
【請求項1】
マクスウェルの電磁界方程式を空間と時間領域で差分化することで数値計算によって電磁界を解析する有限差分時間領域法(FDTD法)を用いた電磁環境解析方法であって、
処理部は、電磁界の発生源が含まれる第1のセルサイズで分割された内部解析空間(IAS)で電磁界をFDTD法により第1の時間ステップで計算し、計算された内部解析空間の電磁界と、第1のセルサイズのR
A
倍(R
A
は2以上の整数)の第2のセルサイズで分割された外部解析空間(EAS)との変換面上での電磁界とを記憶部に保存する内部解析ステップと、
処理部は、変換面での電磁界を記憶部から読み込み、外部解析空間で電磁界をFDTD法により、第1の時間ステップのR
A
倍の第2の時間ステップで計算し、計算された外部解析空間の電磁界を記憶部に記憶する外部解析ステップと、
を含み、さらに、
(1)前記内部解析ステップは、
処理部は、第1の時間ステップにより、電気的特性が均一な空間又は散乱体・アンテナなどの放射源を含む空間における電界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第1の電界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、モデルに印加される信号を、予め数式又は実測データを用いてそれが記憶されている記憶部の信号ファイルから読取り、電界として設定するステップと、
処理部は、計算時刻が前記外部解析ステップの電界計算のタイミングである第2の時間ステップの整数倍であれば、処理部は、変換面上の電界を記憶部の変換面電界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第1の電界ファイルに記憶された内部解析空間の吸収境界面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、第1の電界と磁界ファイルに記憶された電界と磁界データを読取り、磁界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第1の磁界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、計算時刻が第2の時間ステップの(n
EAS
+1/2)倍であれば、変換面上の磁界を記憶部の第1の変換面磁界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第1の磁界ファイルに記憶された吸収境界面上の磁界を書き換えるステップと、
を含み、
(2)前記外部解析ステップは、
処理部は、第2の時間ステップにより、電気的特性が均一な空間における電界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第2の電界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、変換面上の電界を変換面電界ファイルから読取り、第2の電界ファイルに記憶された変換面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第2の電界ファイルに記憶された吸収境界面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、第2の電界と磁界ファイルに記憶された電界と磁界データを読取り、その電磁界データとパラメータ及び/又はその他のデータとに基づき、磁界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第2の磁界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、変換面上の磁界を変換面磁界ファイルから読取り、第2の電界ファイルに記憶された変換面上の磁界を書き換えるステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第2の磁界ファイルに記憶された吸収境界面上の磁界を書き換えるステップと
を含む電磁環境解析方法。
【請求項2】
マクスウェルの電磁界方程式を空間と時間領域で差分化することで数値計算によって電磁界を解析する有限差分時間領域法(FDTD法)を用いた電磁環境解析方法であって、
処理部は、電磁界の発生源が含まれる第1のセルサイズで分割された内部解析空間で電磁界を、電界と磁界とを第1のセルサイズの1/2ずれて配置して、且つ、電界は第1の時間ステップの整数次の時刻で、磁界は第1の時間ステップの半整数次の時刻で、FDTD法により計算し、計算された内部解析空間の電磁界と、第1のセルサイズのR
A
倍(R
A
は2以上の整数)の第2のセルサイズで分割された外部解析空間との変換面上での電磁界とを記憶部に保存する内部解析ステップと、
処理部は、変換面での電磁界を記憶部から読み込み、外部解析空間で電磁界を、電界と磁界とを第2のセルサイズの1/2ずれて配置し、且つ、電界は第2の時間ステップの整数次の時刻で、磁界は第2の時間ステップの半整数次の時刻で計算し、計算された外部解析空間の電磁界を記憶部に記憶する外部解析ステップと
を含み、
さらに、
前記内部解析ステップは、
処理部は、第1のセルサイズで記憶部の第1の電界ファイル及び第1の磁界ファイルに電界配列及び磁界配列を設定し、記憶部に予め記憶されているパラメータを読み込むステップと、
処理部は、第1の時間ステップにより、読み込んだパラメータに基づき、電気的特性が均一な空間又は散乱体・アンテナなどの放射源を含む空間における電界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第1の電界ファイルに設定された領域に記憶するステップと、
処理部は、モデルに印加される信号を、予め数式又は実測データを用いてそれが記憶されている記憶部の信号ファイルから読取り、電界として設定するステップと、
処理部は、計算時刻が前記外部解析ステップの電界計算のタイミングである第2の時間ステップの整数倍であれば、処理部は、変換面上の電界を記憶部の変換面電界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第1の電界ファイルに記憶された内部解析空間の吸収境界面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、計算時刻を第1の時間ステップの1/2ずつ増やして磁界計算のタイミングとするステップと、
処理部は、第1の電界と磁界ファイルに記憶された電界と磁界データを読取り、その電磁界データとパラメータ及び/又はその他のデータとに基づき、磁界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第1の磁界ファイルに設定された領域に記憶するステップと、
処理部は、計算時刻が第2の時間ステップの(n
EAS
+1/2)倍であれば、変換面上の磁界を記憶部の第1の変換面磁界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第1の磁界ファイルに記憶された吸収境界面上の磁界を書き換えるステップと、
処理部は、計算時刻を第1の時間ステップの1/2増やして電界計算の次のタイミングとして、所望の時間計算が実行されるまで、電界及び磁界の計算処理を繰返すステップと
を含
む電
磁環境解析方法。
【請求項3】
マクスウェルの電磁界方程式を空間と時間領域で差分化することで数値計算によって電磁界を解析する有限差分時間領域法(FDTD法)を用いた電磁環境解析方法であって、
処理部は、電磁界の発生源が含まれる第1のセルサイズで分割された内部解析空間で電磁界を、電界と磁界とを第1のセルサイズの1/2ずれて配置して、且つ、電界は第1の時間ステップの整数次の時刻で、磁界は第1の時間ステップの半整数次の時刻で、FDTD法により計算し、計算された内部解析空間の電磁界と、第1のセルサイズのR
A
倍(R
A
は2以上の整数)の第2のセルサイズで分割された外部解析空間との変換面上での電磁界とを記憶部に保存する内部解析ステップと、
処理部は、変換面での電磁界を記憶部から読み込み、外部解析空間で電磁界を、電界と
磁界とを第2のセルサイズの1/2ずれて配置し、且つ、電界は第2の時間ステップの整数次の時刻で、磁界は第2の時間ステップの半整数次の時刻で計算し、計算された外部解析空間の電磁界を記憶部に記憶する外部解析ステップと
を含み、
さらに、
前記外部解析ステップは、
処理部は、第2の電界ファイル及び第2の磁界ファイルに第1のセルサイズのR
A
倍(R
A
は2以上の整数)の第2のセルサイズで配列を設定し、パラメータの設定を行うステップと、
処理部は、第2の時間ステップにより、読み込んだパラメータに基づき、電気的特性が均一な空間における電界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第2の電界ファイルに設定された領域に記憶するステップと、
処理部は、変換面上の電界を変換面電界ファイルから読取り、第2の電界ファイルに記憶された変換面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第2の電界ファイルに記憶された吸収境界面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、計算時刻を第2の時間ステップの1/2ずつ増やして磁界計算のタイミングとするステップと、
処理部は、第2の電界ファイルに記憶された電界データを読取り、その電界データとパラメータ及び/又はその他のデータとに基づき、磁界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第2の磁界ファイルに設定された領域に記憶するステップと、
処理部は、変換面上の磁界を変換面磁界ファイルから読取り、第2の磁界ファイルに記憶された変換面上の磁界を書き換えるステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第2の磁界ファイルに記憶された吸収境界面上の磁界を書き換えるステップと、
処理部1は、計算時刻を第2の時間ステップの1/2増やし、所望の時間計算が実行されるまで、電界及び磁界の計算処理を繰返すステップと
を含
む電
磁環境解析方法。
【請求項4】
前記R
A
の値が奇数の場合、処理部は前記内部解析ステップの計算タイミングの磁界又は電界のデータを記憶部に記憶し、
一方、前記R
A
の値が偶数の場合、処理部は、前記内部解析ステップの計算タイミングの電界データと、隣接するタイミングの磁界のデータを平均し、前記記憶部に保存することを特徴とする請求項1乃至
3
のいずれかに記載の電磁環境解析方法。
【請求項5】
前記外部解析ステップで、処理部は、変換面での電磁界データを記憶部から読込み、—R
A
/2からR
A
/2までの範囲内で前記内部解析ステップで計算された電磁界データを平均することを特徴とする請求項1乃至
3
のいずれかに記載の電磁環境解析方法。
【請求項6】
計算の時間ステップは、単位セル内を進む電磁波の単位伝搬時間として定義され、Courantの安定化条件を満たすことを特徴とする請求項1乃至
3
のいずれかに記載の電磁環境解析方法。
【請求項7】
空間の境界面で電磁波が反射しない境界条件である吸収境界条件として、Perfect Matched Layers(PMLs)を用いたことを特徴とする請求項1乃至
3
のいずれかに記載の電磁環境解析方法。
【請求項8】
前記内部解析ステップと前記外部解析ステップによる電磁界の解析を並列に行うことを特徴とする請求項1乃至
3
のいずれかに記載の電磁環境解析方法。
【請求項9】
前記セルサイズは、x、y、z方向でそれぞれ独立のサイズであることを特徴とする請求項1乃至
3
のいずれかに記載の電磁環境解析方法。
【請求項10】
マクスウェルの電磁界方程式を空間と時間領域で差分化することで数値計算によって電磁界を解析する有限差分時間領域法(FDTD法)を用いた電磁環境解析
処理をコンピュータに実行させるための電磁環境解析プログラム
であって、
処理部は、電磁界の発生源が含まれる第1のセルサイズで分割された内部解析空間で電磁界をFDTD法により第1の時間ステップで計算し、計算された内部解析空間の電磁界と、第1のセルサイズの R
A
倍(R
A
は2以上の整数)の第2のセルサイズで分割された外部解析空間との変換面上での電磁界とを記憶部に保存する内部解析ステップと、
処理部は、変換面での電磁界を記憶部から読み込み、外部解析空間で電磁界をFDTD法により、第1の時間ステップのR
A
倍の第2の時間ステップで計算し、計算された外部解析空間の電磁界を記憶部に記憶する外部解析ステップと、
を含み、さらに、
(1)前記内部解析ステップは、
処理部は、第1の時間ステップにより、電気的特性が均一な空間又は散乱体・アンテナなどの放射源を含む空間における電界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第1の電界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、モデルに印加される信号を、予め数式又は実測データを用いてそれが記憶されている記憶部の信号ファイルから読取り、電界として設定するステップと、
処理部は、計算時刻が前記外部解析ステップの電界計算のタイミングである第2の時間ステップの整数倍であれば、処理部は、変換面上の電界を記憶部の変換面電界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第1の電界ファイルに記憶された内部解析空間の吸収境界面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、第1の電界と磁界ファイルに記憶された電界と磁界データを読取り、磁界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第1の磁界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、計算時刻が第2の時間ステップの(n
EAS
+1/2)倍であれば、変換面上の磁界を記憶部の第1の変換面磁界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第1の磁界ファイルに記憶された吸収境界面上の磁界を書き換えるステップと、
を含み、
(2)前記外部解析ステップは、
処理部は、第2の時間ステップにより、電気的特性が均一な空間における電界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第2の電界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、変換面上の電界を変換面電界ファイルから読取り、第2の電界ファイルに記憶された変換面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第2の電界ファイルに記憶された吸収境界面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、第2の電界ファイルに記憶された電界データを読取り、その電界データとパラメータ及び/又はその他のデータとに基づき、磁界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第2の磁界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、変換面上の磁界を変換面磁界ファイルから読取り、第2の電界ファイルに記憶された変換面上の磁界を書き換えるステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第2の磁界ファイルに記憶された吸収境界面上の磁界を書き換えるステップと
をコンピュータに実行させるための電磁環境解析プログラム。
【請求項11】
マクスウェルの電磁界方程式を空間と時間領域で差分化することで数値計算によって電
磁界を解析する有限差分時間領域法(FDTD法)を用いた電磁環境解析処理をコンピュータに実行させるための電磁環境解析プログラムであって、
処理部は、電磁界の発生源が含まれる第1のセルサイズで分割された内部解析空間で電磁界を、電界と磁界とを第1のセルサイズの1/2ずれて配置して、且つ、電界は第1の時間ステップの整数次の時刻で、磁界は第1の時間ステップの半整数次の時刻で、FDTD法により計算し、計算された内部解析空間の電磁界と、第1のセルサイズのR
A
倍(R
A
は2以上の整数)の第2のセルサイズで分割された外部解析空間との変換面上での電磁界とを記憶部に保存する内部解析ステップと、
処理部は、変換面での電磁界を記憶部から読み込み、外部解析空間で電磁界を、電界と磁界とを第2のセルサイズの1/2ずれて配置し、且つ、電界は第2の時間ステップの整数次の時刻で、磁界は第2の時間ステップの半整数次の時刻で計算し、計算された外部解析空間の電磁界を記憶部に記憶する外部解析ステップと
をコンピュータに実行させ、
さらに、
前記内部解析ステップは、
処理部は、第1のセルサイズで記憶部の第1の電界ファイル及び第1の磁界ファイルに電界配列及び磁界配列を設定し、記憶部に予め記憶されているパラメータを読み込むステップと、
処理部は、第1の時間ステップにより、読み込んだパラメータに基づき、電気的特性が均一な空間又は散乱体・アンテナなどの放射源を含む空間における電界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第1の電界ファイルに設定された領域に記憶するステップと、
処理部は、モデルに印加される信号を、予め数式又は実測データを用いてそれが記憶されている記憶部の信号ファイルから読取り、電界として設定するステップと、
処理部は、計算時刻が前記外部解析ステップの電界計算のタイミングである第2の時間ステップの整数倍であれば、処理部は、変換面上の電界を記憶部の変換面電界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第1の電界ファイルに記憶された内部解析空間の吸収境界面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、計算時刻を第1の時間ステップの1/2ずつ増やして磁界計算のタイミングとするステップと、
処理部は、第1の電界と磁界ファイルに記憶された電界と磁界データを読取り、その電磁界データとパラメータ及び/又はその他のデータとに基づき、磁界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第1の磁界ファイルに設定された領域に記憶するステップと、
処理部は、計算時刻が第2の時間ステップの(n
EAS
+1/2)倍であれば、変換面上の磁界を記憶部の第1の変換面磁界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第1の磁界ファイルに記憶された吸収境界面上の磁界を書き換えるステップと、
処理部は、計算時刻を第1の時間ステップの1/2増やして電界計算の次のタイミングとして、所望の時間計算が実行されるまで、電界及び磁界の計算処理を繰返すステップと
をコンピュータに実行させるための電磁環境解析プログラム。
【請求項12】
マクスウェルの電磁界方程式を空間と時間領域で差分化することで数値計算によって電磁界を解析する有限差分時間領域法(FDTD法)を用いた電磁環境解析処理をコンピュータに実行させるための電磁環境解析プログラムであって、
処理部は、電磁界の発生源が含まれる第1のセルサイズで分割された内部解析空間で電磁界を、電界と磁界とを第1のセルサイズの1/2ずれて配置して、且つ、電界は第1の時間ステップの整数次の時刻で、磁界は第1の時間ステップの半整数次の時刻で、FDTD法により計算し、計算された内部解析空間の電磁界と、第1のセルサイズのR
A
倍(R
A
は2以上の整数)の第2のセルサイズで分割された外部解析空間との変換面上での電磁界とを記憶部に保存する内部解析ステップと、
処理部は、変換面での電磁界を記憶部から読み込み、外部解析空間で電磁界を、電界と磁界とを第2のセルサイズの1/2ずれて配置し、且つ、電界は第2の時間ステップの整数次の時刻で、磁界は第2の時間ステップの半整数次の時刻で計算し、計算された外部解析空間の電磁界を記憶部に記憶する外部解析ステップと
をコンピュータに実行させ、
さらに、
前記外部解析ステップは、
処理部は、第2の電界ファイル及び第2の磁界ファイルに第1のセルサイズのR
A
倍(R
A
は2以上の整数)の第2のセルサイズで配列を設定し、パラメータの設定を行うステップと、
処理部は、第2の時間ステップにより、読み込んだパラメータに基づき、電気的特性が均一な空間における電界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第2の電界ファイルに設定された領域に記憶するステップと、
処理部は、変換面上の電界を変換面電界ファイルから読取り、第2の電界ファイルに記憶された変換面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第2の電界ファイルに記憶された吸収境界面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、計算時刻を第2の時間ステップの1/2ずつ増やして磁界計算のタイミングとするステップと、
処理部は、第2の電界ファイルに記憶された電界データを読取り、その電界データとパラメータ及び/又はその他のデータとに基づき、磁界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第2の磁界ファイルに設定された領域に記憶するステップと、
処理部は、変換面上の磁界を変換面磁界ファイルから読取り、第2の磁界ファイルに記憶された変換面上の磁界を書き換えるステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第2の磁界ファイルに記憶された吸収境界面上の磁界を書き換えるステップと、
処理部1は、計算時刻を第2の時間ステップの1/2増やし、所望の時間計算が実行されるまで、電界及び磁界の計算処理を繰返すステップと
をコンピュータに実行させるための電磁環境解析プログラム
。
【請求項13】
マクスウェルの電磁界方程式を空間と時間領域で差分化することで数値計算によって電磁界を解析する有限差分時間領域法(FDTD法)を用いた電磁環境解析
処理をコンピュータに実行させるための電磁環境解析プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
であって、
処理部は、電磁界の発生源が含まれる第1のセルサイズで分割された内部解析空間で電磁界をFDTD法により第1の時間ステップで計算し、計算された内部解析空間の電磁界と、第1のセルサイズの R
A
倍(R
A
は2以上の整数)の第2のセルサイズで分割された外部解析空間との変換面上での電磁界とを記憶部に保存する内部解析ステップと、
処理部は、変換面での電磁界を記憶部から読み込み、外部解析空間で電磁界をFDTD法により、第1の時間ステップのR
A
倍の第2の時間ステップで計算し、計算された外部解析空間の電磁界を記憶部に記憶する外部解析ステップと、
を含み、さらに、
(1)前記内部解析ステップは、
処理部は、第1の時間ステップにより、電気的特性が均一な空間又は散乱体・アンテナなどの放射源を含む空間における電界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第1の電界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、モデルに印加される信号を、予め数式又は実測データを用いてそれが記憶されている記憶部の信号ファイルから読取り、電界として設定するステップと、
処理部は、計算時刻が前記外部解析ステップの電界計算のタイミングである第2の時間ステップの整数倍であれば、処理部は、変換面上の電界を記憶部の変換面電界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第1の電界ファイルに記憶された内部解析空間の吸収境界面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、第1の電界と磁界ファイルに記憶された電界と磁界データを読取り、磁界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第1の磁界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、計算時刻が第2の時間ステップの(n
EAS
+1/2)倍であれば、変換面上の磁界を記憶部の第1の変換面磁界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第1の磁界ファイルに記憶された吸収境界面上の磁界を書き換えるステップと、
を含み、
(2)前記外部解析ステップは、
処理部は、第2の時間ステップにより、電気的特性が均一な空間における電界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第2の電界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、変換面上の電界を変換面電界ファイルから読取り、第2の電界ファイルに記憶された変換面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第2の電界ファイルに記憶された吸収境界面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、第2の電界と磁界ファイルに記憶された電界と磁界データを読取り、その電磁界データとパラメータ及び/又はその他のデータとに基づき、磁界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第2の磁界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、変換面上の磁界を変換面磁界ファイルから読取り、第2の磁界ファイルに記憶された変換面上の磁界を書き換えるステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第2の磁界ファイルに記憶された吸収境界面上の磁界を書き換えるステップと
をコンピュータに実行させるための電磁環境解析プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項14】
マクスウェルの電磁界方程式を空間と時間領域で差分化することで数値計算によって電磁界を解析する有限差分時間領域法(FDTD法)を用いた電磁環境解析処理をコンピュータに実行させるための電磁環境解析プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
処理部は、電磁界の発生源が含まれる第1のセルサイズで分割された内部解析空間で電磁界を、電界と磁界とを第1のセルサイズの1/2ずれて配置して、且つ、電界は第1の時間ステップの整数次の時刻で、磁界は第1の時間ステップの半整数次の時刻で、FDTD法により計算し、計算された内部解析空間の電磁界と、第1のセルサイズのR
A
倍(R
A
は2以上の整数)の第2のセルサイズで分割された外部解析空間との変換面上での電磁界とを記憶部に保存する内部解析ステップと、
処理部は、変換面での電磁界を記憶部から読み込み、外部解析空間で電磁界を、電界と磁界とを第2のセルサイズの1/2ずれて配置し、且つ、電界は第2の時間ステップの整数次の時刻で、磁界は第2の時間ステップの半整数次の時刻で計算し、計算された外部解析空間の電磁界を記憶部に記憶する外部解析ステップと
をコンピュータに実行させ、
さらに、
前記内部解析ステップは、
処理部は、第1のセルサイズで記憶部の第1の電界ファイル及び第1の磁界ファイルに電界配列及び磁界配列を設定し、記憶部に予め記憶されているパラメータを読み込むステップと、
処理部は、第1の時間ステップにより、読み込んだパラメータに基づき、電気的特性が均一な空間又は散乱体・アンテナなどの放射源を含む空間における電界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第1の電界ファイルに設定された領域に記憶するステップと、
処理部は、モデルに印加される信号を、予め数式又は実測データを用いてそれが記憶されている記憶部の信号ファイルから読取り、電界として設定するステップと、
処理部は、計算時刻が前記外部解析ステップの電界計算のタイミングである第2の時間ステップの整数倍であれば、処理部は、変換面上の電界を記憶部の変換面電界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第1の電界ファイルに記憶された内部解析空間の吸収境界面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、計算時刻を第1の時間ステップの1/2ずつ増やして磁界計算のタイミングとするステップと、
処理部は、第1の電界と磁界ファイルに記憶された電界と磁界データを読取り、その電磁界データとパラメータ及び/又はその他のデータとに基づき、磁界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第1の磁界ファイルに設定された領域に記憶するステップと、
処理部は、計算時刻が第2の時間ステップの(n
EAS
+1/2)倍であれば、変換面上の磁界を記憶部の第1の変換面磁界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第1の磁界ファイルに記憶された吸収境界面上の磁界を書き換えるステップと、
処理部は、計算時刻を第1の時間ステップの1/2増やして電界計算の次のタイミングとして、所望の時間計算が実行されるまで、電界及び磁界の計算処理を繰返すステップと
をコンピュータに実行させるための電磁環境解析プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項15】
マクスウェルの電磁界方程式を空間と時間領域で差分化することで数値計算によって電磁界を解析する有限差分時間領域法(FDTD法)を用いた電磁環境解析処理をコンピュータに実行させるための電磁環境解析プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
処理部は、電磁界の発生源が含まれる第1のセルサイズで分割された内部解析空間で電磁界を、電界と磁界とを第1のセルサイズの1/2ずれて配置して、且つ、電界は第1の時間ステップの整数次の時刻で、磁界は第1の時間ステップの半整数次の時刻で、FDTD法により計算し、計算された内部解析空間の電磁界と、第1のセルサイズのR
A
倍(R
A
は2以上の整数)の第2のセルサイズで分割された外部解析空間との変換面上での電磁界とを記憶部に保存する内部解析ステップと、
処理部は、変換面での電磁界を記憶部から読み込み、外部解析空間で電磁界を、電界と磁界とを第2のセルサイズの1/2ずれて配置し、且つ、電界は第2の時間ステップの整数次の時刻で、磁界は第2の時間ステップの半整数次の時刻で計算し、計算された外部解析空間の電磁界を記憶部に記憶する外部解析ステップと
をコンピュータに実行させ、
さらに、
前記外部解析ステップは、
処理部は、第2の電界ファイル及び第2の磁界ファイルに第1のセルサイズのR
A
倍(R
A
は2以上の整数)の第2のセルサイズで配列を設定し、パラメータの設定を行うステップと、
処理部は、第2の時間ステップにより、読み込んだパラメータに基づき、電気的特性が均一な空間における電界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第2の電界ファイルに設定された領域に記憶するステップと、
処理部は、変換面上の電界を変換面電界ファイルから読取り、第2の電界ファイルに記
憶された変換面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第2の電界ファイルに記憶された吸収境界面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、計算時刻を第2の時間ステップの1/2ずつ増やして磁界計算のタイミングとするステップと、
処理部は、第2の電界ファイルに記憶された電界データを読取り、その電界データとパラメータ及び/又はその他のデータとに基づき、磁界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第2の磁界ファイルに設定された領域に記憶するステップと、
処理部は、変換面上の磁界を変換面磁界ファイルから読取り、第2の磁界ファイルに記憶された変換面上の磁界を書き換えるステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第2の磁界ファイルに記憶された吸収境界面上の磁界を書き換えるステップと、
処理部1は、計算時刻を第2の時間ステップの1/2増やし、所望の時間計算が実行されるまで、電界及び磁界の計算処理を繰返すステップと
を処理をコンピュータに実行させるための電磁環境解析プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁環境解析方法、電磁環境解析プログラム及びそのプログラムを記録した記録媒体に係る。特に、本発明は、電磁界解析法である有限差分時間領域法(Finite Difference Time Domain:FDTD method;以下FDTD法と略す)を改良した電磁環境の解析・計算手法に関し、あらゆる電磁界解析に応用が可能である。なお、本発明の電磁環境解析方法は、明細書中、FDTD-MAS法(Finite Difference Time Domain with Multiple-Analysis-Space Method)と呼ぶ。
【0002】
【従来の技術】
一般に、FDTD法は時間と空間領域における電磁界の差分計算法である。FDTD法は時間領域計算法であることや、モデル化が容易なことから、近年電磁界解析で良く用いられる方法である。この計算手法は、差分計算法であることから、空間や時間のセルサイズが細かいほど計算精度がよいが、細かいセルによって空間をモデル化すると計算プロセスが増大するという短所がある。そこで、一般的に、例えば、セルサイズを波長の1/20以下程度の細かいセルサイズで設定すれば計算精度が保証されるが、プリント回路基板などの微細なモデルからの電磁界放射を計算する場合、必ずしも波長の1/20程度のセルサイズで解析モデルを構成することはない。電磁環境問題では、電波暗室内での3m法、10m法によるノイズ測定によって、放射ノイズを推定する方法が一般的であるが、全ての解析を細かいセルで構成することは難しく、FDTD法でシミュレーションする場合、散乱源からある一定距離離れた閉曲面上の電磁界から遠方電界を計算する手法が採られてきた。他にも、解析空間の途中でセルサイズを変えて計算するサブグリッド法や、散乱モデルをダイポールなどの等価モデルに置き換えて計算する手法なども一般的に用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来用いられてきた遠方電界計算法は、放射源の近傍界で閉局面を設定し、例えば、3mもしくは10mでの電界を計算するため、途中の電磁界分布を計算することは出来ない。また、サブグリッド法による計算は、近傍から遠方までの計算が同時に行えるものの、計算が非常に不安定であることが知られており、またセルサイズが変化するサブグリッド境界面において、電磁波の反射が起こる事も知られている。さらに、放射源モデルをダイポールに置き換える方法は、単純なモデルの場合良く一致するという報告がされているが、複雑なモデルへの応用は未だ行われていない。しかるに、従来、微細な放射源からの安定かつ、広範囲でのFDTDシミュレーション法は未だに実現されていない。
【0004】
本発明は、以上の点に鑑み、電磁界シミュレーション法である有限差分時間領域法(Finite Difference Time Domain:FDTD method)において、大規模なFDTDシミュレーションを簡略化し、計算時間やメモリを削減することを目的とする。また、本発明は、特に二つ以上のセルサイズの異なる解析空間(例えば、二つなら内部解析空間と外部解析空間)を用い、二つ以上の解析空間における電磁界解析はお互いに独立した計算を行うことにより、広範囲の計算、もしくは非常に微細なモデルの電磁界解析を行うことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の解決手段によると、
マクスウェルの電磁界方程式を空間と時間領域で差分化することで数値計算によって電磁界を解析する有限差分時間領域法(FDTD法)を用いた電磁環境解析方法であって、
処理部は、電磁界の発生源が含まれる第1のセルサイズで分割された内部解析空間で電磁界をFDTD法により第1の時間ステップで計算し、計算された内部解析空間の電磁界と、第1のセルサイズの R
A
倍(R
A
は2以上の整数)の第2のセルサイズで分割された外部解析空間との変換面上での電磁界とを記憶部に保存する内部解析ステップと、
処理部は、変換面での電磁界を記憶部から読み込み、外部解析空間で電磁界をFDTD法により、第1の時間ステップのR
A
倍の第2の時間ステップで計算し、計算された外部解析空間の電磁界を記憶部に記憶する外部解析ステップと、
を含み、さらに、
(1)前記内部解析ステップは、
処理部は、第1の時間ステップにより、電気的特性が均一な空間又は散乱体・アンテナなどの放射源を含む空間における電界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第1の電界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、モデルに印加される信号を、予め数式又は実測データを用いて記憶されている記憶部の信号ファイルから読取り、電界として設定するステップと、処理部は、計算時刻が前記外部解析ステップの電界計算のタイミングである第2の時間ステップの整数倍であれば、処理部は、変換面上の電界を記憶部の変換面電界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第1の電界ファイルに記憶された内部解析空間の吸収境界面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、第1の電界と磁界ファイルに記憶された電界と磁界データを読取り、磁界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第1の磁界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、計算時刻が第2の時間ステップの(n
EAS
+1/2)倍であれば、変換面上の磁界を記憶部の第1の変換面磁界ファイルに記憶するステップと、処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第1の磁界ファイルに記憶された吸収境界面上の磁界を書き換えるステップと、
を含み、
(2)前記外部解析ステップは、
処理部は、第2の時間ステップにより、電気的な特性が均一な空間における電界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第2の電界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、変換面上の電界を変換面電界ファイルから読取り、第2の電界ファイルに記憶された変換面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第2の電界ファイルに記憶された吸収境界面上の電界を書き換えるステップと、
処理部は、第2の電界と磁界ファイルに記憶された電界と磁界データを読取り、その電磁界データとパラメータ及び/又はその他のデータとに基づき、磁界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部の第2の磁界ファイルに記憶するステップと、
処理部は、変換面上の磁界を変換面磁界ファイルから読取り、第2の磁界ファイルに記憶された変換面上の磁界を書き換えるステップと、
処理部は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件を計算し、第2の磁界ファイルに記憶された吸収境界面上の磁界を書き換えるステップと
を含む電磁環境解析方法、各ステップをコンピュータに実行させるための電磁環境解析プログラム及びそのプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体が提供される。
【0006】
本発明の第2の解決手段によると、
マクスウェルの電磁界方程式を空間と時間領域で差分化することで数値計算によって電磁界を解析する有限差分時間領域法(FDTD法)を用いた電磁環境解析方法であって、
処理部は、電磁界の発生源が含まれる第1のセルサイズで分割された内部解析空間で電磁界を、電界と磁界とを第1のセルサイズの1/2ずれて配置して、且つ、電界は第1の時間ステップの整数次の時刻で、磁界は第1の時間ステップの半整数次の時刻で、FDTD法により計算し、計算された内部解析空間の電磁界と、第1のセルサイズのR
A
倍(R
A
は2以上の整数)の第2のセルサイズで分割された外部解析空間との変換面上での電磁界とを記憶部に保存する内部解析ステップと、
処理部は、変換面での電磁界を記憶部から読み込み、外部解析空間で電磁界を、電界と磁界とを第2のセルサイズの1/2ずれて配置し、且つ、電界は第2の時間ステップの整数次の時刻で、磁界は第2の時間ステップの半整数次の時刻で計算し、計算された外部解析空間の電磁界を記憶部に記憶する外部解析ステップと
を含む電磁環境解析方法、各ステップをコンピュータに実行させるための電磁環境解析プログラム及びそのプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
1.解析空間
図1に、FDTD-MAS法の解析空間についての説明図を示す。
本実施の形態は、セルサイズの異なる独立したFDTD解析を複数回行うことで、広範囲の計算、もしくは非常に微細なモデルの電磁界解析を行う方法である。例えば、この図に示す二つの解析空間による計算法の場合、内部解析空間(20)(Internal Analysis Space:IAS;以下IASと略す)で計算した変換面S上での電磁界を一時保存し、外部解析空間(30)(External Analysis Space:EAS;以下EASと略す)に与え、さらに遠方界を計算する。IAS(20)内には、電磁界の発生源(10)が含まれる。発生源(10)としては、例えば、ダイポール、点電荷等の各種のものを与えることができる。
【0008】
2.ハードウェア
図2は、本実施の形態に関するハードウェアの構成図である。
このハードウェアは、中央処理装置(CPU)である処理部1、入力部2、出力部3、表示部4及び記憶部5を有する。また、処理部1、入力部2、出力部3、表示部4及び記憶部5は、スター又はバス等の適宜の接続手段で接続されている。記憶部5は、IAS及びEAS電界ファイル51-1及び51-2、IAS及びEAS磁界ファイル52-1及び52-2、パラメータファイル53、信号ファイル54、変換面電界ファイル55、変換面磁界ファイル56を含む。処理部は記憶部4の適宜のファイルにデータを書込み又は適宜のファイルからデータを読取る。また処理部1は、各種処理を実行し、入力部2、出力部3、表示部4とデータの送信を行う。
【0009】
3.FDTD-MAS法の理論
FDTD法についての基本的な理論は以下の通りである。
電磁界シミュレーション法の1つの方法として有限差分時間領域法(Finite Difference Time Domain Method:FDTD Method)がある。FDTD法は式(1)、(2)に示すマクスウェルの電磁界方程式を差分化し、空間と時間領域で差分化することで数値計算によって電磁界を解析する方法である。
【0010】
【数1】
【0011】
FDTD法はアンテナや導波管の解析など、電磁界の高周波領域で用いられることが多い。FDTD法は、Yeeのアルゴリズムによって成り立つ。また、有限の解析空間内でシミュレーションするため、解析空間での最外壁において、吸収境界条件を設ける必要がある。ここでは、Yeeのアルゴリズムと吸収境界条件を説明することで、FDTD法の基礎について述べる。
本実施の形態では、Yeeのアルゴリズムに関連して1)時空間についての差分、2)電磁界の時間配置、3)電磁界の空間配置、を含み、さらに4)計算時間ステップ、5)吸収境界条件を含む。以下に、これら各項目について説明する。
【0012】
1)時空間についての差分
まず、マクスウェルの電磁界方程式を差分化する際、FDTD法では1次の差分公式が用いられる。高次の差分公式を用いた定式化も可能であるが、複雑かつ不安定になりやすいため1次の差分公式が用いられる。差分には前進差分、中心差分、後進差分があるが、ここでは、中心差分が最も精度が良いため、中心差分を用いる。いま、任意の座標位置(i,j,k)、時間ステップnにおける関数Fを式(3)のように定義すると、中心差分を用いて考慮した空間、時間差分は式(4)、(5)のように表せる。
【0013】
【数2】
【0014】
FDTD法では解析空間を微小セルによって分割し、かつ時間領域でも差分化する。式(3)より微小セルの各格子に割り当てられるセルの幅はΔx、Δy、Δzと表すことができ、時間ステップはΔtである。
【0015】
2)電磁界の時間配置
中心差分方式を用いたことによって、電界と磁界は時間的に交互に配置される。
図3に電磁界の時間配置の説明図を示す。電界はt=(n-1)Δt、nΔt、(n+1)Δt…の整数次の時刻に、磁界は(n-1/2)Δt、(n+1/2)Δt…の半奇数次(半整数次)の時刻に割り当てられる。従って、電界と磁界の計算はΔt/2時間ごとに計算が行われる。
【0016】
媒質を等方、非分散性とし、式(1)、(2)を構成方程式B=μH、D=εE,J=σEを用いて電界、磁界に直すと、
【数3】
【0017】
となる。ここでε、σ、μはそれぞれ誘電率、導電率、透磁率である。式(6)の右辺のEに関する時間微分は電界の存在する時刻がt=(n-1)Δt、nΔt…であることから、t=(n-1/2)Δtで行う必要がある。同様に磁界はnΔtで行う必要がある。しかし、右辺の電界がt=(n-1/2)Δtにおける値となっているため、このままでは電界に関する定式化ができない。σE
n-1/2
の近似法として、
【0018】
【数4】
【0019】
の3つのパターンが考えられる。式(8a)で近似した場合は発散することが知られており、式(8b)もしくは式(8c)で近似した場合では、計算精度はほぼ同程度であることが知られている。このため本実施の形態では式(8c)の近似式を用いることにする。式(1)、(2)のマクスウェルの方程式に当てはめると、時間に関する差分式は次式となる。
【0020】
【数5】
【0021】
3)電磁界の空間配置
電磁界の配置は中心差分を用いたことにより電界と磁界も空間的に交互に配置される。
図4に単位セルの説明図を示す。電界はセルの各辺に沿って、磁界は面の中央に垂直に割り当てられる。そのため、FDTD法では電界と磁界は1/2セルだけずれて配置される。このことから、比誘電率と比透磁率が1以外の媒質を不均一に含まれるモデルに応用する場合に工夫が必要になる。
単位セルの配置に従い、z成分について時間と空間で差分化した式を式(11)、(12)に示す。
【0022】
【数6】
【0023】
x、y成分についても同様に差分化することができ、3次元解析空間の場合、図示の単位セルを積み重ねた解析空間において、電界と磁界の6つの式によって数値計算が行われる。FDTD法では、解析モデルの電気的な特性であるε、σ、μをマクスウェルの電磁界方程式に与えることによってモデル化される。例えば、解析空間中に金属が存在する場合、金属のσは∞であるため、金属面での電界成分は0となる。
【0024】
4)計算時間ステップ
時間ステップΔtは、単位セル内を進む電磁波の単位伝搬時間として定義され、Courantの安定化条件、
【0025】
【数7】
【0026】
によって与えられる。式(13)より算出されたΔt値よりも大きな時間ステップによって計算した場合、計算は不安定となり発散するため、時間ステップはCourantの条件を満たす必要がある。
【0027】
5)吸収境界条件
単位セルを積み重ねることで構成される解析空間であるが、無限に空間を構成することは不可能であり、有限の解析空間を構成する必要がある。この際、空間の最外壁の境界は完全導体となり、電磁波は境界面で全反射する。本来電磁波が透過する境界で反射が起こると計算誤差の要因となる。そこで、空間の境界面で電磁波が反射しない境界条件を設ける。これを吸収境界条件(Absorbing Boundary Condition:ABC)と呼ぶ。ABCにはMur、Higdon、Perfect Matched Layers(PMLs)などが一般的に用いられるが、これらに限らず各種の条件を適宜用いることができる。
【0028】
図5に、MurのABCモデルの説明図を示す。MurのABCは境界面での電界成分の反射波を0として定義している。この手法は、定式化が簡単であり、メモリ量も少なくてすむため、最もよく使われる手法である。しかし、電磁波が境界に対して斜めに入射した場合、境界面での反射が起きるため、計算精度としてはあまり良くない。
【0029】
図6に、PMLのABCモデルの説明図を示す。一方、PMLは境界面でインピーダンスのマッチング条件を満たすように構成される。マッチングのとれた電界と磁界の層を何層か重ね合わせることによって、垂直入射や斜め入射に対してもマッチングがとれるように構成されている。PMLの中ではマクスウェルの方程式は成り立たない。PMLはABCのなかで最も計算精度が良く、MurのABCと同様によく使われる手法であるが、メモリ量が大きく複雑であり、MurのABCよりも計算時間がかかる。
【0030】
4.FDTD-MAS法のフローチャート
以下、本FDTD-MAS法のフローチャートの動作について説明する。
図7は、FDTD-MAS法のIAS計算アルゴリズムを示すフローチャートである。また、図8は、FDTD-MAS法のEAS計算アルゴリズムを示すフローチャートである。IASとEASの解析はお互いに独立した解析空間を有する。IASは全解析空間に対して微細なモデルを細かいセルで計算し、IASに対して粗いセルで構成されたEASでは、さらに外部の広い空間を解析することが出来る。IASで計算された変換面上の電磁界の平均データは、EASの時間ステップΔt
EAS
の間隔でハードディスクなどの記憶部5に保存する。EASでは電界計算、電界データの読込、磁界計算、磁界データの読込を繰り返し行うことで計算が行われる。一方、IASのデータをハードディスクなどに保存せず、IASとEASの解析を並列に行う方法も考えられる。並列に計算する方法は、ハードディスクとのデータの読み書きの時間が節約できることが特徴であるが、IASとEASの解析に使用するコンピュータメモリを確保する必要があり、メモリ量が増大する。一方、これらのフローチャートは、一例として、IASとEASの解析を単独で行う方法であるが、IASとEASの計算を並列に行う場合に比べて、少ないコンピュータメモリで計算することが出来る。メモリ量を必要としないモデル解析では、並列計算が有効であるが、メモリ量を必要とするモデル解析では、これらのアルゴリズムが有効であると考えられる。これらのフローチャートでは、吸収境界条件の一例としてPMLを用いているが、吸収境界条件は解析空間の最外壁境界面に適用する境界条件であり、FDTD法で一般的に用いられる境界条件である。
【0031】
IASとEASのセルサイズ比R
A
はR
A
=Δ
EAS
/Δ
IAS
と定義する。ここで、Δ
EAS
(=Δx
EAS
=Δy
EAS
=Δz
EAS
)とΔ
IAS
(=Δx
IAS
=Δy
IAS
=Δz
IAS
)はそれぞれIASとEASの単位セルサイズである。一方、時間ステップはCourantの安定化条件(前述参照)によって求めることできることは一般的によく知られており、最大時間ステップは空間の単位セルサイズによって決定される。Courantの安定化条件を適用すると、IASとEASの最大時間ステップ比はR
A
=Δt
EAS
/Δt
IAS
と決定できる。ここでΔt
EAS
とΔt
IAS
はそれぞれEASとIASの時間ステップである。IASに比べEASの時間ステップ数は1/R
A
であることから、計算に有するEASの時間もIASに比べ1/R
A
になる。
【0032】
1)IASのフローチャート
IASは、解析空間に対して、アンテナやプリント回路基板等による電磁環境を詳細に計算するパートである。従って、電気的特性が均一な空間における電磁界計算の他に、アンテナやプリント回路基板といった放射源の電磁界計算についても計算を行う。
【0033】
まず、処理部1は、配列の初期化、パラメータの設定を行う(S101)。そのため、処理部1は、記憶部5のIAS電界ファイル51-1、IAS磁界ファイル52-1にセルサイズΔIASで配列の領域を確保し、また、入力部2からパラメータファイル53に入力したパラメータ、又は、パラメータファイル53に予め記憶されているパラメータを読み込む。処理部1は、必要に応じて、他の適宜のファイルからその他のデータを読取るようにしてもよい。つぎに、処理部1は、IASの時間ステップΔt
IAS
において、読み込んだパラメータに基づき、電気的特性が均一な空間又は散乱体・アンテナなどの放射源を含む空間における電界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部5のIAS電界ファイル51-1に設定された領域に記憶する(S103)。なお、最初の計算ルーチンでは、信号源が入力されていない状態となる。つぎに、処理部1は、モデルに印加される信号を、予め数式又は実測データを用いて記憶されている記憶部5の信号ファイル54から読取り、電界として設定する(S105)。処理部1は、計算時刻tがEASの電界計算の時間タイミングである時間ステップΔt
EAS
の整数倍であれば、ステップS109に進み、そのタイミングでなければS111に進む(S107)。ステップS109では、次に、処理部1は、後のEASフローチャートで用いるため、EASの電界計算のタイミングnΔt
EAS
における、IASとEASとの変換面上の電界を記憶部5の変換面電界ファイル55に記憶する。つぎに、ステップS111では、処理部1は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件ABCをPML等により計算し、ステップS103で計算された電界ファイル51に記憶された吸収境界面上の電界を書き換える(S111)。
【0034】
処理部1は、計算時刻tをΔt
IAS
/2ずつ増やして磁界計算のタイミングとする(S113)。つぎに、処理部1は、IAS電界ファイル51-1に記憶された電界データを読取り、その電界データとパラメータ及び/又はその他のデータとに基づき、磁界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部5のIAS磁界ファイル52-1に設定された領域に記憶する(S115)。処理部1は、計算時刻tがEASの電界計算の時間タイミングΔt
EAS
の(n
EAS
+1/2)倍であればステップS119に進み、そのタイミングでなければS121に進む。ステップS119では、処理部1は、後のEASフローチャートで用いるため、EASの磁界計算のタイミング(n
EAS
+1/2)Δt
EAS
における、IASとEASとの変換面上の磁界を記憶部5の変換面磁界ファイル56に記憶する。つぎに、処理部1は、n
EAS
を1増やし(S120)、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件ABCを、例えばPMLにより計算し、ステップS115で計算されたIAS磁界ファイル52-1に記憶された吸収境界面上の磁界を書き換える(S121)。
【0035】
処理部1は、計算時刻tをΔt
IAS
/2増やして電界計算の次のタイミングとする(S123)。処理部1は、所望の時間計算が実行されるまで、ステップS103からの処理を繰返し(S125)、その後、処理を終了する。
【0036】
2)EASのフローチャート
EASは、解析空間に対して、アンテナやプリント回路基板等による比較的遠位の広範囲空間内の電磁界環境を計算するパートである。
【0037】
EASのフローにおいて、主に、データの読込み以外、各ステップの処理はIASと同様である。ステップS205、S213における変換面上の電界・磁界データの読込みでは、処理部1は、IASフローチャートのステップS109、S119で保存されたデータを記憶部5の変換面電界ファイル55及び変換面磁界ファイル56から読込み、EAS電界ファイル51-2及びEAS磁界ファイル52-2のそれぞれ対応する電界及び磁界に書き込む。
【0038】
まず、処理部1は、EAS電界ファイル51-2及びEAS磁界ファイル52-2のセルサイズでΔ
EAS
による配列の初期化、パラメータファイル53によるパラメータの設定を行う(S201)。つぎに、処理部1は、EASの時間ステップΔt
EAS
において、読み込んだパラメータに基づき、電気的特性が均一な空間における電界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部5のEAS電界ファイル51-2に設定された領域に記憶する(S203)。なお、最初の計算ルーチンでは、IASの変換面上の電界データが入力されていない状態となる。つぎに、処理部1は、IASとEASとの変換面上の電界を変換面電界ファイル55から読取り、ステップS203によりEAS電界ファイル51-2に記憶された変換面上の電界を書き換える(S205)。処理部1は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件ABCをPML等により計算し、ステップS203で計算されたEAS電界ファイル51-2に記憶された吸収境界面上の電界を書き換える(S207)。
【0039】
処理部1は、計算時刻tをΔt
EAS
/2ずつ増やして磁界計算のタイミングとする(S209)。つぎに、処理部1は、EAS電界ファイル51-2に記憶された電界データとEAS磁界ファイル52-2に記憶された磁界データを読取り、その電磁界データとパラメータ及び/又はその他のデータとに基づき、磁界の計算を行い、計算結果を配列として記憶部5のEAS磁界ファイル52-2に設定された領域に記憶する(S211)。つぎに、処理部1は、IASとEASとの変換面上の磁界を変換面磁界ファイル56から読取り、ステップS211によりEAS磁界ファイル52-2に記憶された変換面上の磁界を書き換える(S213)。処理部1は、空間の最外壁境界面での電磁波が反射しないような吸収境界条件ABCを、例えばPMLにより計算し、ステップS211で計算されたEAS磁界ファイル52-2に記憶された吸収境界面上の磁界を書き換える(S215)。
【0040】
処理部1は、計算時刻tをΔt
EAS
/2増やして電界計算の次のタイミングとする(S217)。処理部1は、所望の時間計算が実行されるまで、ステップS103からの処理を繰返し(S219)、その後、処理を終了する。
【0041】
3)各ステップの詳細処理
以下、各ステップにおける処理部1の具体的処理ついて説明する。
(ステップS101、S201.配列の初期化、パラメータの設定)
FDTD法における配列は、主として空間の電磁界を計算するためのex、ey、ez、hx、hy、hz(E
x
n
、E
y
n
、E
z
n
、H
x
n+1/2
、H
y
n+1/2
、H
z
n+1/2
)と、吸収境界条件(Absorbing Boundary Condition:ABC)用の配列に分けることが出来る。ここで、ABCの配列は、ABCの種類によって異なるため、配列の種類については適宜定めることができる。パラメータは、空間の電磁界計算やABCを計算するために設定する。電磁界計算用のパラメータとしては、誘電率ε、透磁率μ、導電率σ、である。この他、抵抗や容量素子等を計算するために必要な電気的パラメータを設定する場合もある。ABCのパラメータとしては、ABCをPML(Perfectly Matched Layer)で構成した場合、ABC内の導電率σ
x
、σ
y
、σ
z
、反射係数、導電率の分布を与えるための次数を与える。なお、ABCについての詳細は後述する。
【0042】
(ステップS103、S115、S203、S211.電界・磁界の計算)
電磁界はx、y、zの各スカラー量を計算する。各成分の電界の基本式は、次の通りである。
【0043】
【数8】
【0044】
一方磁界は、次の基本式で計算することができる。
【数9】
【0045】
ここで、電界と磁界の配列中に1/2ステップずれているのは、中央差分方式で差分化しているため、電界と磁界のセル配置が1/2ずれているからである。しかし、プログラム中で1/2ステップの配列を計算することは出来ないので、プログラム上では-1/2した形で計算を行う。
【0046】
電界計算中におけるεとσはそれぞれ誘電率と導電率である。誘電率は真空中でε
0
=8.854×10
-12
であるが、誘電体中における誘電率は真空中の誘電率ε
0
と誘電体の比誘電率ε
r
の積である。一方、導電率が非常に大きい完全導体は、σが無限大と仮定して電界成分を0とする。磁界中のμは透磁率であり、比透磁率が1の場合、1.2566306×10
-6
を与える。
【0047】
(ステップS105.信号の印加)
入力信号は電界と磁界で与える場合があるが、信号を電界で与える場合、電界計算終了後に信号を電界の形で与える。FDTD法は時間領域での計算のため、あらかじめ別に用意した時間波形を、1のパラメータの設置で取り込み、ここで与える方法がある。また、時間の関数で与えられる信号(例えば正弦波)などは、時間に応じた信号を計算しながら電界として与えることが出来る。
ここで、電圧信号を電界に変換する式は次式である。
【0048】
【数10】
【0049】
(ステップS109、S119.電界・磁界の出力)
図9に、時間配置に関連するタイムチャートを示す。
ここでは、一例として、R
A
=6となっている。Δt
IAS
とΔt
EAS
は間隔が異なるため、IASとEASの時間間隔が一致した時に、電界もしくは磁界が出力される。n
IAS
とn
EAS
をそれぞれIASとEASの時間ステップ数としたとき、電界の場合、R
A
の値によらず(n
EAS
)Δt
EAS
=(n
IA
S
)Δt
IAS
の関係が成立する。しかし、磁界の場合はR
A
が奇数と偶数でその出力タイミングが異なる。R
A
が奇数の場合、(n
EAS
+1/2)Δt
EAS
=(n
IAS
+1/2)Δt
IAS
でIASとEASの磁界がそれぞれ一致するので、処理部1はそのタイミングの電磁界のデータをそのまま用いて、記憶部5の変換面磁界ファイル56に記憶すればよい。しかし、R
A
が偶数の場合、(n
EAS
+1/2)Δt
EAS
=(n
IAS
+1/2)Δt
IAS
では、IASの電界E
IAS
とEASの磁界H
EAS
が一致するため、この時間でH
EAS
を構成するIASの磁界H
IAS
は存在しないので、そのまま出力することが出来ない。そこで、処理部1は、R
A
が偶数の場合は(n
IAS
-1/2)Δt
IAS
と(n
IAS
+1/2)Δt
IAS
のデータを平均し変換面磁界ファイル56に保存する。なお、磁界のタイミングをIASとEASで一致させて、電界のタイミングを上述のように決定してもよい。
【0050】
次に、図10に、空間配置に関連する変換面の詳細図を示す。
IASとEASのセル間隔はR
A
倍である。EASのデータは、処理部1がハードディスクなどの記憶部5に保存されたデータを読込み、—R
A
/2からR
A
/2までの範囲内でIASの電磁界データを平均することで求めることができる。x-y平面におけるEASの電磁界は次式のように定義するようにしてもよい。
【0051】
【数11】
【0052】
ここで、E
xEAS
、E
yEAS
、E
zEAS
、H
xEAS
、H
yEAS
、H
zEAS
はそれぞれEASの電磁界、E
xIAS
、E
yIAS
、E
zIAS
、H
xIAS
、H
yIAS
、H
zIAS
はIASにおける電磁界である。kは図におけるke1もしくはke2である。z-xもしくはy-z平面上の電磁界も同様に変換される。
【0053】
(ステップS111、S121、S207、S215.PML吸収境界条件)
PMLは吸収境界条件(ABC)の一つである。真空中の波動インピーダンスZ
0
、吸収境界表面での波動インピーダンスZはそれぞれ
【0054】
【数12】
【0055】
で与えられるから、インピーダンスマッチング条件Z
0
=Z、すなわち
σ/ε
0
=σ
*
/μ
0
を満たせば周波数に無関係に反射係数は0になり、電磁波は反射なしで媒質へ浸透する。ただし、σ
*
は磁気導電率である。しかも、σ、σ
*
を充分大きくすればすぐに減衰する。しかし、斜め入射の場合にはマッチング条件を満たしたとしても、反射は完全に0にならない。そこで、斜め入射に対してもマ ッチング条件が満足するような非物理的な媒質をABCとして用いたのがPMLである。
【0056】
PML媒質中の波をx方向に進む波とy方向に進む波とに分けて考えた場合、y方向の波数kyはスネルの法則より真空中のy方向の波数と等しいから、y方向には真空と同じように伝搬すると考えることが出来る。一方、x方向の波数は現実の媒質では不連続になるが、インピーダンスマッチングを満足させるためにはx方向の波数もまた連続でなければならない。言い換えると、x方向にもy方向にも独立に平面波が進む様にし、x方向にだけインピーダンスマッチングが取れるような媒質を考える事になる。y方向には元々インピーダンスマッチングが取れているから何も操作しない。
3次元のPMLにおいて、電界と磁界の全ての成分を次のように二つのサブコンポーネントに分ける。
【0057】
【数13】
【0058】
このときの基本式は、
【0059】
【数14】
【0060】
となり、他の電磁界成分も同様である。また、マッチング条件は、
【0061】
【数15】
【0062】
である。ただし、x軸に垂直な面に対してはσ
y
=σ
z
=0、yに対してはσ
x
=σ
z
=0、zに対してはσ
x
=σ
y
=0、である。
【0063】
マッチング条件における導電率σと磁気導電率σ
*
は、先にも述べたとおりPML中で変化する。実際には、自由空間とPMLの境界面でσ=0となり、最外壁で完全電気壁(σ=∞)または完全磁気壁(σ
*
=∞)となるように導電率を変化させる。導電率は次式によって定義される。
【0064】
【数16】
【0065】
となる。ただし、LはPMLの層数、Mは導電率の分布を与える次数である。σ
max
は外壁での導電率であり、次式によって表される。
【0066】
【数17】
【0067】
PML、ABCのいずれのパラメータも、ステップS101、S201の配列の初期化、パラメータの設定の項目で設定される。
本アルゴリズムでは、吸収境界条件として精度の良いPMLを用いたが、ABCには他にも幾つか提案されており、適宜の境界条件を用いることができる。
【0068】
5.メモリ量及び計算時間
計算機の資源(メモリ量、計算時間)はFDTDシミュレーションにおいて重要な問題である。今、単一セルΔによって構成した解析空間の大きさをNX、NY、NZとし、時間ステップ数をNTとする。単精度でプログラミングし、電磁界6成分の4バイト配列でメモリ量を計算すると、
NX×NY×NZ×(6成分×4バイト) (24)
のメモリ量を必要とする。一方、FDTD-MAS法を適用すると、外部解析空間(EAS)のセル数は
NX
EAS
=NX/R
A
NY
EAS
=NY/R
A
NZ
EAS
=NZ/R
A
(25)
となる。ここで,EX
EAS
,NY
EAS
,NZ
EAS
はEASのx,y,z方向の最大セルサイズである.よって、EASのメモリ量は、
NX
EAS
×NY
EAS
×NZ
EAS
×(6成分×4バイト)
={(NX×NY×NZ)/R
A
3
}×(6成分×4バイト) (26)
である。FDTD-MAS法では内部解析空間(IAS)の計算も行われるが、EASとIASの計算は全く別の計算であるため、IASのメモリ量は
NX
IAS
×NY
IAS
×NZ
IAS
×(6成分×4バイト) (27)
となる。ここで,EX
IAS
,NY
IAS
,NZ
IAS
はIASのx,y,z方向の最大セルサイズである.ただし、Δ
IAS
とΔのセルサイズは等しい。最大メモリ量は、IASとEASのメモリサイズの大きい方に支配される。今、NX
IAS
×NY
IAS
×NZ
IAS
< NX
EAS
×NY
EAS
×NZ
EAS
ならば、FDTD-MAS法を適用するとメモリ量は1/R
A
3
に削減できる。
【0069】
一方、単一セルによって構成した解析モデルの総演算回数は
NX×NY×NZ×6成分×NT (28)
となる。FDTD-MAS法はIASとEASの演算数の和になるので、FDTD-MAS法の総演算回数は次式となる。
NX
IAS
×NY
IAS
×NZ
IAS
×6成分×NT
IAS
×NX
EAS
×NY
EAS
×NZ
EAS
×6成分×NT
EAS
=NX
IAS
×NY
IAS
×NZ
IAS
×6成分×NT
IAS
+(NX×NY×NZ×6成分×NT)/R
A
4
(29)
単一セルサイズΔによって構成したモデルとFDTD-MAS法の演算量を比較すると次式となる。
【0070】
【数18】
【0071】
6.ノイズ放射の解析例
3MHzで駆動するプリント回路基板(Printed Circuit Board:PCB)からのノイズ放射の解析を具体的な例として検討する。
【0072】
図11に、3MHz駆動のPCBモデルから放射する3mまでの電磁界解析の各パラメータの説明図を示す。PCBとその周辺を解析するIASのセルサイズをΔx=2.5mm、Δy=5mm、Δz=0.35mm、時間ステップΔtを1.15psとする。今、3m法の解析空間を想定して、7×7×1m
2
の解析空間を構成する場合、セル数は2800×1400×2857である。500MHzまでの計算を想定してセルサイズ比R
A
を6とすると、EASのセルサイズは表1の通りである。今、EASのセル数は、IASのセル数よりも多いことから、単一セルサイズによる解析よりも1/R
A
3
だけメモリを削減できるため、メモリ量は1/216に削減できる。
【0073】
一方、演算量について検討すると、Δt
IAS
で3MHzの1周期を計算するために必要な時間ステップ数は289855ステップであり、式(28)に代入すると、FDTD-MAS法は単一セルの解析モデルに比べて1/251の演算時間で解析を行うことが出来る。IASの解析空間で、64GFLOPSのベクトル、並列型スーパーコンピュータによってNY=1000回の計算を行ったとき、16並列でCPU時間が178sであった。ベクトル化、並列化による時間短縮や計算機の持つメモリ量を無視して、単純に計算にかかる時間を想定すると、FDTD-MAS法は17.4時間であるのに対して、単一セルサイズの計算には182日かかる。このため、本手法によって計算効率が格段に良くなることがわかる。
【0074】
7.ダイポールを用いた遠方電界計算
遠方電界を定量的に検討するため、1GHzの半波長ダイポールを用いて、3mまでの距離特性と3mでの指向性特性を計算した。
【0075】
ダイポールの遠方電界解析モデルは、図1に示した通りである。ダイポール長Lは0.15m、アンテナ半径は0.3mm(L/500)とした。給電点インピーダンスは73.13Ωである。ダイポールはy方向に配置した。IASとEASのセルサイズ比R
A
を10と仮定し、単位セルサイズはΔ
IAS
=1mm、Δ
EAS
=10mm、時間ステップはそれぞれΔt
IAS
=1.92ps、Δt
EAS
=19.2psとした。吸収境界条件はPMLを用いた。
【0076】
図12に、電界|E
y
|の距離特性図を示す。この図は、ダイポールからの電界E
y
成分のFDTDシミュレーション値と理論値を比較したものである。また、図13に、電界|E
θ
|の指向特性図を示す。この図は、r=3mにおける|E
θ
|の指向性特性のFDTDシミュレーション値と理論値を比較したものである。理論値の電流最大値I
0
はFDTDシミュレーション結果を用い、23.3mAとした。距離特性並びに指向性特性において、FDTD値と理論値は約1dBの差であり、本手法により3mまでの電磁ノイズがFDTDシミュレーション可能である。
【0077】
8.付記
本発明の電磁環境解析方法又は電磁環境解析装置・システムは、その各手順をコンピュータに実行させるための電磁環境解析プログラム、電磁環境解析プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、電磁環境解析プログラムを含みコンピュータの内部メモリにロード可能なプログラム製品、そのプログラムを含むサーバ等のコンピュータ、等により提供されることができる。また、本発明は、セルサイズの異なる3つ以上の解析空間の解析にも適用することができる。
【0078】
【発明の効果】
本発明によると、以上のように、電磁界シミュレーション法である有限差分時間領域法(Finite Difference Time Domain:FDTD method)において、大規模なFDTDシミュレーションを簡略化し、計算時間やメモリを削減することができる。また、本発明によると、特に二つ以上のセルサイズの異なる解析空間(例えば、二つなら内部解析空間と外部解析空間によって構成され、二つ以上の計算はお互いに独立した計算を行うことにより、広範囲の計算、もしくは非常に微細なモデルの電磁界解析を行うことができる。
【0079】
また、空間の途中でセルサイズを変える手法としては、サブグリッド法がよく知られている。しかし、本発明は、次の点でサブグリッド法よりも優れていると考えられる。
(1)サブグリッド法は解析の構造上、ローカルグリッド(LG)とメイングリッド(MG)のセルサイズ比は奇数に限定されるが、本FDTD-MAS法はデータ変換に平均値を用いていることから、セルサイズ比は特に限定されない。
(2)サブグリッド法は時間的に不安定であるが、本FDTD-MAS法はCourantの安定化条件を満たしていれば、安定であることが挙げられる、このことから、長時間の演算が可能であり、広空間かつ、広帯域な電磁界計算を可能とする手法である。
(3)IAS、EAS共に解析空間の途中にセルサイズが変わる境界が存在しないため、境界からの反射による誤差がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】FDTD-MAS法の解析空間についての説明図。
【図2】本実施の形態に関するハードウェアの構成図。
【図3】電磁界の時間配置の説明図。
【図4】単位セルの説明図。
【図5】MurのABCモデルの説明図。
【図6】PMLのABCモデルの説明図。
【図7】FDTD-MAS法のIAS計算アルゴリズムを示すフローチャート。
【図8】FDTD-MAS法のEAS計算アルゴリズムを示すフローチャート。
【図9】時間配置に関連するタイムチャート。
【図10】空間配置に関連する変換面の詳細図。
【図11】3MHz駆動のPCBモデルから放射する3mまでの電磁界解析の各パラメータの説明図。
【図12】電界|E
y
|の距離特性図。
【図13】電界|E
θ
|の指向特性図。
【符号の説明】
10 電磁界の発生源
20 内部解析空間
30 外部解析空間
1 処理部
2 入力部
3 出力部
4 表示部
5 記憶部
51 電界ファイル
52 磁界ファイル
53 パラメータファイル
54 信号ファイル
55 変換面電界ファイル
56 変換面磁界ファイル
図面
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】