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明細書 :ドパミンD4受容体に結合する放射性ヨウ素標識診断剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3041419号 (P3041419)
公開番号 特開2000-128859 (P2000-128859A)
登録日 平成12年3月10日(2000.3.10)
発行日 平成12年5月15日(2000.5.15)
公開日 平成12年5月9日(2000.5.9)
発明の名称または考案の名称 ドパミンD4受容体に結合する放射性ヨウ素標識診断剤
国際特許分類 C07D207/14      
A61K 31/40      
A61K 51/00      
A61P 43/00      
FI C07D 207/14
A61K 31/40
A61P 43/00
A61K 49/02
請求項の数または発明の数 3
全頁数 5
出願番号 特願平10-304162 (P1998-304162)
出願日 平成10年10月26日(1998.10.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り
審査請求日 平成10年10月26日(1998.10.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012442
【氏名又は名称】京都大学長
発明者または考案者 【氏名】佐治 英郎
【氏名】飯田 靖彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100059258、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外8名)
審査官 【審査官】中木 亜希
参考文献・文献 米国特許5725838(US,A)
国際公開95/8533(WO,A1)
国際公開98/1164(WO,A1)
調査した分野 C07D 207/00 - 207/50
A61K 31/40
A61K 49/00
特許請求の範囲 【請求項1】

【化1】
JP0003041419B2_000002t.gifで示される非放射性臭素置換ベンザミド誘導体を原料として、ハロゲン交換反応によりヨウ素-123を導入する事により得られる、
【化2】
JP0003041419B2_000003t.gifで示されるヨウ素-123標識ベンザミド誘導体。

【請求項2】
請求項1記載の化合物からなる、ドパミンD4受容体分布密度の測定剤。

【請求項3】
ドパミンD4受容体への親和性を有し、請求項1記載の化合物からなる、ヨウ素標識された脳神経疾患診断剤。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ドパミンD4受容体の変化の測定を目的とした核医学的用途に有効な、新しい放射性ヨウ素標識診断剤に関する。

【0002】
【従来の技術】ドパミンD4受容体の変化の測定による精神分裂病などの核医学的診断のために、従来ドパミンD4受容体への親和性を有する、炭素-11 で標識されたクロザピンなどが検討されてきた。しかしながら、炭素-11 は半減期が20分と非常に短く、その製造には使用場所である病院内に設置されたサイクロトンが、またその測定には特殊なポジトロン断層撮像装置(PET )が必要であるため、その利用は限られている。

【0003】
【発明が解決しようとする課題】ヨウ素-123は半減期が13時間と炭素-11 よりかなり長く、放射性医薬品製造業者による標識化合物の送達が可能であり、またその測定には多くの医療機関に設置されているシングルフォトン断層撮像装置(SPECT )が利用できるため、一般臨床での利用に極めて適した特性を持ち、この核種で標識された各種の化合物が、放射性診断薬として汎用されている。そこで、ヨウ素-123で標識された、ドパミンD4受容体への高い親和性を有する放射性診断剤が望まれているが、これまでに有効な化合物は得られていない。
【課題を解決しようとする手段】

【0004】
本発明の目的は、ドパミンD4受容体の変化の測定に適した、一般臨床への汎用性に優れる放射性核医学診断剤を提供することにあり、より具体的には、ドパミンD4受容体への高い親和性を有するヨウ素-123標識ベンザミド誘導体を提供することにある。

【0005】
本発明者らは、
【化3】
JP0003041419B2_000004t.gifで示される、ヨウ素-123標識ベンザミド誘導体、(S)-N-(1- ベンジル-3- ピロリジニル)-4-[( シクロプロピルカルボニル) アミノ]-5- ヨード- 2-メソキシベンザミドを用いたドパミンD4受容体の変化の測定による、精神分裂病などの脳神経疾患の核医学的診断剤を提供した。

【0006】
【発明の実施の形態】本発明の化合物であるヨウ素-123標識ベンザミド誘導体、(S)-N-(1- ベンジル-3- ピロリジニル)-4-[( シクロプロピルカルボニル) アミノ]-5- ヨード-2-メソキシベンザミドは、〔化4〕で表される化合物である。
【化4】
JP0003041419B2_000005t.gif【0007】本発明の化合物は、
【化5】
JP0003041419B2_000006t.gifで示される合成経路により得ることができる。

【0008】
すなわち、製造にあたっては、4-アミノ-2- メトキシ安息香酸メチル(1) に臭素を加え、生成物4-アミノ-5- ブロモ-2- メトキシ安息香酸メチル(2) にシクロプロパンカルボン酸クロライドを作用させた後、エステル基を加水分解し、得られた化合物5-ブロモ-4- [( シクロプロピルカルボニル) アミノ]- 2-メトキシ安息香酸(4) に(S)-N-ベンジル- ピロリジニルアミンを縮合させる。得られた(S)-N-(1-ベンジル-3- ピロリジニル)-5- ブロモ-4- [( シクロプロピルカルボニル)アミノ]- 2-メソキシベンザミド(5) に、ヨウ素-123標識ヨウ化アンモニウムを反応させ、目的物(S)-N-(1- ベンジル-3- ピロリジニル)-4-[( シクロプロピルカルボニル) アミノ]- 5-[1 23- ヨード]- 2-メソキシベンザミド(6)を得る。この臭素-放射性ヨウ素交換反応による標識反応には、触媒として硫酸アンモニウムを用いる方法が採られる。反応終了後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、分離精製される。

【0009】
放射性診断剤製造にあたって、pHを調節するための酸、塩基または適当な緩衝液の添加、およびアスコルビン酸などの安定化剤、塩化ナトリウムなどの等張化剤、ベンジルアルコールなどの保存剤の添加は、本放射性診断剤の目的とする用途をなんら妨げるものではない。
【作用】

【0010】
この発明の放射性診断剤は生体内でのドパミンD4受容体の分布密度を測定する機能を有する。添加されるヨウ素-123の放射能は任意であるが、被検者に投与して核医学診断を行うに際して充分な情報が得られるような放射能であり、かつ被検者の放射線被曝を可能な限り低くするような範囲であることが望ましい。投与方法については、一般に静脈内投与が行われるが、診断に有利な投与方法であればよく、他の投与方法も実施できる。
【実施例】

【0011】
4-アミノ-2- メトキシ安息香酸メチル(1)(630 mg,3.48 mmol) を25mlの氷酢酸に溶解した。この溶液をI液とする。別に臭素(200μl,7.73 mmol)を溶解した氷酢酸15mlを用意し、水浴中のI液に滴下した。20時間室温で攪拌後、10%チオ硫酸ナトリウム水溶液(15ml)で未反応の臭素を潰した。反応溶液に6N水酸化ナトリウム水溶液を加え、水層のpHを8 に調整し、酢酸エチルで抽出(60 ml×3)した。この酢酸エチル層を飽和塩化ナトリウム水溶液(60 ml×1)、蒸留水(40 ml×3)でを洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾液を留去し、クロロホルム:メタノール(30:1)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーに付した。ここで得た4-アミノ-5- ブロモ-2- メトキシ安息香酸メチル(2) を含む画分の溶媒を留去し、生成した粗結晶を酢酸エチルにて再結晶することで4-アミノ-5- ブロモ-2- メトキシ安息香酸メチル(2) を791.9 mg(87.6%) 得た。
融点 156 ~158 ℃
元素分析 C H N
実測値 41.78% 3.84% 5.34%
計算値 41.56% 3.88% 5.39%

【0012】
得られた化合物4-アミノ-5- ブロモ-2- メトキシ安息香酸メチル(2)(600 mg,2.31 mmol) とN,N-ジイソプロピルエチルアミン(1004.6 μl,5.77 mmol)を乾燥アセトン15mlに溶解した。この溶液をII液とする。別にシクロプロパンカルボン酸クロライド(519.7μl,5.77 mmol)を溶解したアセトン8ml を用意し、氷冷下でII液に滴下した。室温にて20時間攪拌した後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン2ml を添加し、反応溶液を中性にした。反応溶液を酢酸エチルで抽出(20 ml×5)した後、飽和塩化ナトリウム水溶液(30 ml×5)、蒸留水(30 ml×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去して生成した粗結晶をメタノールから再結晶し、5-ブロモ-4- [( シクロプロピルカルボニル) アミノ]- 2-メトキシ安息香酸メチル(3) を470mg(62.1%)得た。
融点 142 ~144 ℃
元素分析 C H N
実測値 47.55% 4.27% 4.18%
計算値 47.58% 4.30% 4.27%

【0013】
得られた化合物5-ブロモ-4- [( シクロプロピルカルボニル) アミノ]- 2-メトキシ安息香酸メチル(3)(120 mg,0.366 mmol)を60℃に加温したジメチルスルホキシド500 μl に溶解した。室温になるまで放置した後、2Nの水酸化ナトリウム水溶液580 μl を加え、50分間攪拌した。反応液に2Nの塩酸(1050 μl)を滴下し、生成した結晶を吸引濾取、冷水で洗浄し、5-ブロモ-4- [( シクロプロピルカルボニル) アミノ]- 2-メトキシ安息香酸(4) を107.5 mg(93.6%) 得た。
融点 203 ~205 ℃
元素分析 C H N
実測値 45.78% 3.82% 4.40%
計算値 45.88% 3.85% 4.46%

【0014】
得られた化合物5-ブロモ-4- [( シクロプロピルカルボニル) アミノ]- 2-メトキシ安息香酸(4)(100 mg,0.318 mmol)をアセトニトリル10 ml に溶解し、トリエチルアミン(66.5 μl,0.477 mmol) を加えた。0 ℃以下の温度でエトキシカルボン酸クロライド(32.84μl,0.343 mmol) を滴下し、20分間攪拌した。この溶液をIII 液とする。別に(S)-3-アミノ-1- ベンジルピロリジン(60.53 mg,0.343 mmol) を溶解したアセトニトリル400 μl を用意し、温度を0 ℃以下に保ったIII液に滴下し、2時間攪拌した。溶媒を減圧留去した後、残査に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10 ml) を加え、酢酸エチルで抽出(10 ml×3)した。酢酸エチル層を飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄し、無水硫酸カルシウムで乾燥した。濾液を留去し、クロロホルム:メタノール(10:1)を溶出溶媒とするシリカゲルクロマトグラフィーに付し、(S)-N-(1-ベンジル-3- ピロリジニル)-5- ブロモ-4- [( シクロプロピルカルボニル)アミノ]- 2-メソキシベンザミド(5) を140.0 mg(93.1%) 得た。
融点 115 ~117 ℃
元素分析 C H N
実測値 58.15% 5.77% 8.54%
計算値 58.48% 5.55% 8.89%

【0015】
(S)-N-(1-ベンジル-3- ピロリジニル)-5- ブロモ-4- [( シクロプロピルカルボニル)アミノ]- 2-メソキシベンザミド(5) を1 mg/ml になるようにエタノールに溶解した。この溶液をIV液とする。IV液(100μl)に3%硫酸アンモニウム水溶液(200μl)を混和し、[123-ヨード]ヨウ化アンモニウム(113.3μCi) を加え、150 ~160 ℃で20分間反応させた。その後、溶出溶媒に1.3(v/v)% トリエチルアミンを含むメタノール:5 mM 3,3 ジメチルグルタール酸水溶液(3:2) を用い、反応溶液をオクタドデシル系カラムにかけた。クロマトグラムより(S)-N-(1- ベンジル-3- ピロリジニル)-4-[( シクロプロピルカルボニル) アミノ]- 5-[123-ヨード]- 2-メソキシベンザミド(6) を分取し、80.7μCiの(S)-N-(1- ベンジル-3- ピロリジニル)-4-[( シクロプロピルカルボニル) アミノ]- 5-[123-ヨード]- 2-メソキシベンザミド(6) (放射化学的収率 71.2%)を得た。

【0016】
本発明の化合物は、生体内でのドパミンD4受容体の分布密度の測定のために必要なドパミンD4受容体に高い親和性と選択性を示す。即ち、ヒトドパミンD2,D3,D4受容体を個別に発現させたチャイニーズハムスター卵巣細胞またはヒト胎児性腎細胞を用いたラジオレセプターアッセイにより、各受容体への親和性を測定した結果、本発明の化合物は、従来のクロザピンと比較して、D4受容体に対して11倍以上高い親和性を有すること、またD2、D3受容体に対するD4受容体への選択性がそれぞれ14倍、2倍以上に高いことが確認された。ラジオレセプターアッセイの結果を表1に示す。

【0017】
【表1】
JP0003041419B2_000007t.gif【0018】化合物(6) :(S)-N-(1- ベンジル-3- ピロリジニル)-4-[( シクロプロピルカルボニル) アミノ]-5- ヨード- 2-メソキシベンザミド

【0019】
また、本発明の化合物をddY 系雄性マウスの尾静脈内に投与し、一定時間後に屠殺解剖して放射能の体内分布を経時的に測定した結果、脳への高い移行性と脳内でのD4受容体の分布に応じた放射能の分布(線条体と小脳との放射能分布の比は1~2時間後で4 ~6.5 )を確認した。マウス体内分布の経時変化の結果を表2に示す。

【0020】
【表2】
JP0003041419B2_000008t.gif【0021】
【発明の効果】以上の結果より、この発明により、生体内、特に脳内でのドパミンD4受容体の分布密度の測定を目的とした核医学診断の用途に有効な薬剤が提供される。